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Hot 100 9/15 見どころ 【Eminemの1位アルバムにも寄与したプロデューサー・Ronny Jとは?】

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 今週はEminemがチャートの主役ですね!アルバム1位を記録したうえに、Hot 100には11曲を送り込みました。今週はそのEminem、そして“The Ringer”などのプロデューサーRonny Jにスポットライトを当てていこうと考えています。

 

☆今週のHot 100 ショートハイライト

Eminemが自身9回目のアルバム1位を記録。Skitを除く全曲がHot 100にエントリー、2曲はトップ10入り

・“In My Feelings”が首位をキープ。Drakeは2018年28週目の首位を記録。1年の1位獲得週数が2004年のUsherと並んで最多に

・“Boo’d Up”でブレイクしたElla Maiの次シングル”Trip”が32位とトップ40入り

・6ix9ineのラテン新曲が30位に登場

 

・今週のトップ10

―1 Drake – In My Feelings

―2 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You 

―3 Cardi B, Bad Bunny & J Balvin – I Like It

△4 6ix9ine feat. Nicki Minaj & Murda Beatz – FEFE 

▽5 Post Malone – Better Now

☆6 Eminem feat. Joyner Lucas – Lucky You 

▽7 Juice WRLD – Lucid Dreams 

☆8 Eminem – The Ringer 

▽9 Travis Scott – SICKO MODE

▽10 Tyga feat. Offset – Taste 

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

☆97 Chris Young – Hangin’ On

 カントリー歌手・Chris Youngの“Hangin’ On”が97位に登場。昨年のアルバム”Losing Sleep”から2曲目のシングル。今週カントリー系ラジオの9位にまで浮上しています。

 カントリー曲はラジオのポイントをベースにチャート入りすることがほとんどです。カントリー系ラジオでトップ10まで到達するとだいたいHot 100に入ります。(ストリーミングなど他の指標での数字が良いとカントリー系ラジオであまり高くなくてもHot 100入りできる)

 

☆94 Labrinth, Sia & Diplo (LSD) – Thunderclouds

 Labrinth、Sia、Diploによるポップユニット、LSDの“Thunderclouds”が94位に登場。LSD名義では初のHot 100入りです。(メンバーはそれぞれ自身の曲でHot 100入り経験あり)

 この曲は主にビデオ、DLなどからポイントを得ています。おそらくビデオでの好調がHot 100に入ることができた要因です。ほかSpotifyでも調子を上げています。

 

▽81 BTS feat. Nicki Minaj – IDOL

 先週11位だったBTSの“IDOL”が81位まで順位を落としました。先週高かったDLやYouTube再生数の数字が落ちたことが要因です。7月からHot 100がYouTubeの再生数を2/3でカウントするようになった煽りをかなり受けている印象です。

 来週はNicki Minaj入りのビデオの再生数が集計に入るので、もしかしたら順位が伸びるかもしれませんが、その後順位をキープするにはラジオなどYouTube以外でのポイントを稼いでおきたいですね。

 先週1位だったアルバムは今週8位。こちらはそこまで大きくは落ちていません。(BTSアルバムアーティストだと考えて良いと思います)

 

☆54 Childish Gambino – Feels Like Summer

 Childish Gambinoの“Feels Like Summer”が54位で新登場*1!ビデオ効果でのHot 100入りです。同時にリリースされていた”Summertime Magic“も100位で再登場しています。

 この曲は “This Is America”と同様、この曲はビデオに力が入っています。アニメ仕立てのビデオで、道路の中央を歩くChildish Gambinoの周りで様々な人物が登場します。バスケをするMigos、洗車をするWill Smith、そしてブロック遊びをしているNicki Minajを邪魔するTravis Scottなど……ウィキペディアには詳しいリストが掲載されています。

Feels Like Summer (Childish Gambino song) - Wikipedia

 

 あとYouTubeのコメント欄の一番上にある解説も分かりやすいです。(なぜかJustin Bieber??) 実際のコメント欄ではこの解説が最後のパートまで続いています。

 Childish Gambino - Feels Like Summer - YouTube

 

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△32 Ella Mai – Trip

 “Boo’d Up”でブレイクしたElla Maiが次シングルでも好調!”Trip”が32位まで浮上し、ヒットの目安とされるトップ40まで到達しました。

 この曲は“Boo’d Up”同様、R&B / Hip-Hop系ラジオや、Apple Music・YouTubeで人気です。特にApple Musicでは好調で現在トップ10にまで到達しています。この勢いが続けば”Boo’d Up”と同じくトップ10入りを達成できるかも。

 

☆30 6ix9ine feat. Anuel AA – BEBE

 6ix9ineがラテン曲に挑戦!全編スペイン語の新シングル“BEBE”がHot 100の30位に登場しています。客演のAnuel AAはHot 100初登場。

 この曲は他の6ix9ineの曲と同様にYouTubeで最も人気。今週YouTubeの再生数4位にランクインしています。ほかのストリーミング媒体でも好調です。

 6ix9ineがスペイン語曲に挑戦したのは、ファン層を拡大する狙いがあると思われますが、その思惑は功を奏しており、メキシコやコロンビアのSpotifyでトップ10入りを果たしています。

 また6ix9ineはそれ以外にもドイツのラッパーGRiNGO44と共演し、ドイツのシングル6位まで到達するなどワールドワイドに存在感を示しています。(ただしこの曲での6ix9ineのヴァースは英語)

 

☆プロデューサー・Ronny Jについて

 この曲ではRonny Jがプロデューサーを務めています。彼のプロデュース曲の中では、Bhad Bhabieの“Hi Bich”=68位が今まで最高位だったのですが、今週この”BEBE”がランクインし、初のトップ40を記録。それだけでなく、彼はEminemのアルバムでも2曲プロデュースを担当しており、うち“The Ringer”はトップ10入りを果たしています。

 今週チャートの面で大きな飛躍を見せたRonny Jですが、来週もさらなる躍進を見せそうです!

 彼がプロデュースしたKanye WestとLil Pumpの“I Love It”がApple MusicとSpotifyで1位に!さらに、同じく彼がプロデュースしたMachine Gun Kellyの”Rap Devil”はiTunes首位で、いずれも来週のHot 100で高い順位に登場しそうです!

 ヒット連発のプロデューサー、Ronny Jに今後注目が集まりそうです!曲の最初に名乗る掛け声(タグ)は 「オマガー ローニー」です。

 

※彼はドイツのラッパーUfo 361の“Power”をプロデュースしてドイツシングル7位を記録したこともあります。ほかRich Brian(インドネシア)、Kieth Ape(韓国)とXXXTENTACIONの曲をプロデュースするなど、ワールドワイドにも活動しています。

 

 

☆6 Eminem feat. Joyner Lucas – Lucky You

 Eminemが9作品連続でアルバム1位を獲得。1999年の“Slim Shady LP”は2位でしたが、それ以降のスタジオアルバムはすべて1位を獲得しています。(ただし他人とのコラボを含むベスト盤、サントラ作品などまで考慮すると、アルバム1位になっていないケースもある)

 今回のアルバムはストリーミング込みで43.4万枚相当の売上を記録。CDがまだ公開されておらず、また緊急リリースだったにも関わらず、かなりの好成績を叩き出しています。

 43.4万枚のうち、純セールスは25.2万枚、ストリーミングは16.8万枚、シングルDLは1.4万を記録しています。 

 この売上43.4万枚(相当)という数字は、Drakeの“Scorpion”(73.2万枚)、Travis Scottの”Astroworld”(53.7万枚)、Post Maloneの“Beerbongs & Bentleys”(46.1万枚)に次いで今年4番目に大きいです。前アルバムの”Revival”=26.7万枚も大きく上回っています。

 ストリーミングの人気から、Skitを除くアルバム全曲がHot 100に登場。“Lucky You”(6位)と”The Ringer”(8位)の2曲はトップ10に登場しました。“Lucky You”で客演を務めているJoyner Lucasは初のトップ10を達成。

 Eminemはキャリア通算のトップ10曲数を19まで伸ばしています。トップ10曲数の多さは歴代4位。

1 Drake 31曲

2 Jay-Z 21曲

3 Lil Wayne 20曲

4 Eminem 19曲

5 Ludacris 18曲

 

 

―1 Drake – In My Feelings

 Drakeの“In My Feelings”が首位をキープ。これで9週目の1位に。Drakeはこれによっていくつかの記録を樹立しました。

 まずは同じ年での最長1位滞在記録です。Drakeは今週、2018年での1位滞在週数を28週まで伸ばしました!これでDrakeは、1年における1位滞在週数が歴代最長のUsherと並びました!

2004年:Usher (Yeah! =12週、Burn =8週、Confession Part 2 =2週、My Boo =6週)

2018年:Drake (God’s Plan =11週、Nice For What =8週、In My Feelings =9週)

 

 そして、キャリア通算の1位滞在週数を48週まで伸ばし、Usherを「抜かし」ソロの男性としてはキャリア通算の1位滞在が最も長い歌手となりました。(グループではまだBoyz Ⅱ MenとThe Beatlesよりも下)

 

1 Mariah Carey:79週

2 Rihanna:60週

3 The Beatles:50週

3 Boyz Ⅱ Men:50週

5 Drake:48週

6 Usher:47週

 

 両方とも競合相手がUsherで混乱しそうですが、「同じ年」での1位滞在週数の記録ではUsherに「追いつき」、「キャリア通算」の1位滞在週数ではUsherを「抜かして」います。

 

 このように今年の好調で様々な記録を打ち立てているDrakeですが、“In My Feelings”がこのまま1位を突っ走るかと言われると、微妙です。ラジオは既に落ち始めていて、さらに頼みの綱ストリーミングも今週1位から陥落。競合の突き上げが足りないので1位をキープできていますが、自身のポイントがかなり落ちていることから、そろそろ首位交代が来るかも。(来週はまだ1位な気がしますが)

 今週2位の“Girls Like You”がiTunes割引を敢行したものの、思ったよりはDLが伸びず2位のまま。”In My Feelings”も対抗してiTunes割引を行っていましたが、こっちもDLはあまり伸びませんでした。

 

 

▽× Childish Gambino – This Is America

 “This Is America”が今週チャートから外れました。デビュー時は勢いが凄まじく、登場からいきなり1位だったのですが、そこから急激に勢いを落としチャートを落下。チャート滞在17週という短い期間でHot 100から外れました。

 毎週YouTubeの再生数など、ストリーミングの数字が急激なペースで落ちていたことが印象的です。インパクトが強すぎて、「気軽」に再生できなかったことが要因でしょうか???その動きの影響を受けてか、ラジオがそこまで伸びなかったことも痛かったですね。

 Hot 100で1位を獲得した曲のチャート滞在が20週未満になるのは、2011年のBritney Spearsの“Hold It Against Me”(17週)以来です。

 ちなみにHot 100で首位を獲得するも、チャート滞在が短い……というチャートアクションは2000年代のアメリカン・アイドル優勝者によく見られました。優勝の記念にセールスで莫大な数字を記録してHot 100首位に立つも、その後続かず短命で終わる……のような……

 2004年の優勝者、Fantasiaの“I Believe”はHot 100で首位に立つものの、短命(滞在10週)に終わり、その年の年間チャートトップ100入りを逃してしまいました。(Hot 100で首位に立って年間チャートに入れなかったのは歴代でこの曲だけのようです)

 

 

▽× XXXTENTACION – Moonlight

 XXXTENTACIONの“Moonlight”がチャートから外れました。ピークは13位、チャート滞在は20週でした。

 この曲はアルバム内の人気曲として高いストリーミングを記録し、Hot 100に登場。その後一旦はチャートから外れるものの、XXXTENTACIONの訃報を受けて再登場。以降ずっとチャートに滞在していました。

 この曲はシングルという扱いではなく、ほとんどラジオでかかっていなかったのですが、ストリーミングで高い支持を受け続け、シングルのようなチャートアクションをとっていました。

 今週彼の“changes”もチャートから外れました。

 

▽× Calvin Harris & Dua Lipa – One Kiss

 Calvin HarrisとDua Lipaの“One Kiss”が今週チャート圏外へ。ピークは26位、チャート滞在は21週でした。ヒット具合では昨年のCalvin Harrisのシングル(”Slide”や“Feels”)とほぼ同等といった印象です。母国イギリスでは8週連続で1位を記録するなど無双していました。

 Eminemの曲で2つ客演を務めたJessie Reyezはこの“One Kiss”のソングライトを担当しています。

 

▽× Camila Cabello – Never Be the Same

 Camila Cabelloの“Never Be the Same”が今週チャートから外れました。ピークは6位、チャート滞在は37週と、”Havana”ほどでは無いですが、ロングヒットでした。

 ロングヒットの秘訣はラジオでの強さです。“Never Be the Same”は”Havana”に引き続き*2、ポップ、アダルトポップ(Adult Top 40)と規模の大きい二つのラジオ系統を制していました!

 複数のラジオ系統で人気を得ると、Hot 100に長く滞在し、ロングヒットになる傾向が強いです。

 Camila Cabelloの次なるシングルは“Real Friends”。シングル化に伴いSwae Leeを加えたバージョンもリリースしましたが、まだ芽が出ていません。そのうちラジオなどでかかり徐々に上昇するでしょうか?

 

▽× Marshmello & Anne-Marie – FRIENDS

 グローバルヒットMarshmelloとAnne-Marieの“FRIENDS”が今週チャートから外れました。ピークは11位、チャート滞在は29週でした。惜しくもトップ10には手が届きませんでしたが、十分ヒットしたと言える成績だったと思います。(昨年の“Issues”とチャートアクションが似ています)

 Marshmelloは既にBastilleとの“Happier”がチャートを上昇中で、この曲に次ぐヒットの期待が持てます。

 一方、Anne-Marieはようやく”2002”がHot 100に接近中。(現在106位相当) 母国イギリスなどではもう既にピークが過ぎた曲ですが、アメリカでも遅れてヒットとなるでしょうか?

 このように今週はEminemの大量エントリーの影響で、多くの曲がHot 100から外れましたが、Ed Sheeranの“Perfect”は今週もチャートに残留。規定によって、ロングヒットのこの曲は26位以下に落ちるとチャートから外れてしまうのですが、今週も25位としぶとくチャートに残っています。なんと今週54週目。

(53週目から26位以下に落ちるとチャートから外れる規定)

 

 

今週チャートから外れた曲 (16曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Chilidish Gambino – This Is America (🗻1位 /⏰17週)

99 Becky G & Natti Natasha – Sin Pijama (🗻70位 /⏰12週)

98 Khalid, Ty Dolla $ign – OTW (🗻57位 /⏰15週)

97 Juice WRLD feat. Lil Uzi Vert – Wasted (🗻67位 /⏰6週)

95 Drake – Mob Ties (🗻13位 /⏰8週)

94 Backstreet Boys – Don’t Go Breaking My Heart (🗻63位 /⏰10週)

92 Trippie Redd – Taking A Walk (🗻46位 /⏰3週)

91 Ciara – Level Up (🗻59位 /⏰6週)

90 Zedd & Elly Duhé – Happy Now (🗻90位 /⏰1週)

78 XXXTENTACION – Changes (🗻18位 /20週)

72 Ozuna – Unica (🗻72位 /⏰1週)

48 Kenny Chesney – Get Along (🗻22位 /21週)

47 XXXTENTACION – Moonlight (🗻13位 /20週)

43 Calvin Harris & Dua Lipa – One Kiss (🗻26位 /21週)

42 Camila Cabello – Never Be the Same (🗻6位 /37週)

41 Marshmello & Anne-Marie – FRIENDS (🗻11位 /29週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Eminem – Kamikaze (9作目のアルバム1位)

4 Troye Sivan – Bloom (キャリアピークを更新!)

9 Why Don’t We – 8 Letters (デビュー作でトップ10を達成・ボーイバンド)

49 Amos Lee – My New Moon

51 Tash Sultana – Flow State

63 Fu*k Everybody 2

68 Alkaline Trio – Is This Things Cursed?

93 Don Q – Don Season 2

100 YoungBoy Never Broke Again – 4Freedom (EP)

134 Jesus Culture – Living With A Fire

150 Bun-B – Return Of The Thrill

 

(参考)Eminemのほかの作品

35 Eminem – Curtain Call: The Hits (63位から浮上)

86 Eminem – Revival (再登場)

145 Eminem – Recovery (再)

179 Eminem – The Eminem Show (再)

199 Eminem – The Marshall Mathers LP 2 (再)

 

来週以降の動向・プレイリストなど

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

Kanye West – Lil Pump – I Love It

 話題の1曲。注目度が次第に上昇していて、現在SpotifyApple Musicの両方で首位に!YouTubeでも再生数を稼ぎそうで、来週はトップ10圏内で登場見込みです。

 

・Machine Gun Kelly – Rap Devil

 Eminemにディスられたことに対する切り返しの1曲。先週はYouTubeのみでの公開のようでしたが、現在は正式にリリースされ、iTunes首位に立っています。

 

 

・プレイリスト

 

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

 

 

*1:曲のリリース当初はHot 100に登場しなかった

*2:“Havana”はこの2系統に加え、リズミック系統も制している