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Hot 100 10/6 見どころ 【BROCKHAMPTONアルバム1位の要因とは? + Avril Lavigne 新曲が登場】

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 今週はやや動きが少なめの週でした!今週はアルバム1位とその戦略について、またAvril Lavigneの新曲などについて触れていこうと思います。

 写真は今週アルバム1位のBROCKHAMPTONについてです。彼らはHot 100未登場ながらもアルバム1位を獲得するという珍しい記録を達成。その戦略とは……?*1

 

☆今週のHot 100 ショートハイライト

Avril Lavigne久々の新曲“Head Above Water”が64位で登場

・ラジオで好調の“Lucid Dreams”が2位まで上昇!

・Lil Peep、XXXTENTACIONによる”Falling Down”が13位に浮上

・ストリーミングで人気、好調Sheck Wesの“Mo Bamba”が31位とトップ40入り!

・French Montana + Drakeの“No Stylist”が47位に登場

・アルバム1位はBROCKHAMPTON

 

・今週のトップ10

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

―1 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

△2 Juice WRLD – Lucid Dreams 

△3 Post Malone – Better Now

▽4 Drake – In My Feelings

▽5 Eminem – Killshot 

△6 Travis Scott – SICKO MODE 

▽7 Cardi B, Bad Bunny & J Balvin – I Like It

―8 6ix9ine feat. Nicki Minaj & Murda Beatz – FEFE

▽9 Kanye West & Lil Pump – I Love It

―10 5 Seconds of Summer – Youngblood 

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

☆96 Maren Morris – Rich

 Maren Morrisの“Rich”が96位で登場。グラミー新人賞ノミネートにも繋がった2016年のアルバム”Hero”から4曲目のシングル。このアルバムからシングルカットされた曲は全てHot 100に登場しています。

 他のカントリー曲と同様に、カントリー系ラジオで主に好調。

 

☆92 Pardison Fontaine feat. Cardi B – Backin’ It Up

 新人ラッパー、Pardison FontaineがCardi Bを迎えた“Backin’ It Up“が92位に登場。Pardsion Fontaineは初のHot 100。主にYouTubeApple Musicで人気。

 Kanye Westによると、このParadison Fontaineは今年のアルバム”ye”に収録された”Violent Crimes”のソングライトに参加していたようです。

(参考:Kanye West Says Pardison Fontaine Wrote The Verses On "Violent Crimes" | Genius

 

☆74 The Chainsmokers feat. Kelsea Ballerini – This Feeling

 The Chainsmokersがカントリー歌手Kelsea Balleriniを迎えた“This Feeling”が74位で登場。過去の曲でも見られる客演の歌手+The ChainsmokersのAndrew Taggartのダブルボーカル体制。

 曲の印象としては”Something Just Like This”風サウンドにカントリーのエッセンスを少し足したような感じ。この曲はApple MusicのThe A-List: CountryやSpotifyのHot Countryにも入っています。

 

☆64 Avril Lavigne – Head Above Water

 Avirl Lavigneの久々のシングル、“Head Above Water”が64位で登場。”Hello Kitty”以来4年ぶりのHot 100エントリー。

 2010年代に入ってからはまだトップ40ヒットが2曲(”What the Hell”=11位 と“Here’s to Never Growing Up”=20位 )しか無いAvril Lavigneですが、久々にチャート上位へ顔を出せるでしょうか。この曲は主にDLで数字を稼いでいます。

 

※2000年代には”Girlfriend”=1位、“Complicated”=2位、”I’m With You”=4位、“My Happy Ending”=9位、”Sk8er Boi”=10位 と5曲でトップ10入りを果たしています。

 

 

△56 Lil’ Duval feat. Snoop Dogg & Ball Greezy – Smile (Living My Best Life)

 Lil‘ Duvalの“Smile”がじわじわチャートを上昇中。今週63位→56位。この曲はラップ~R&Bに分類される曲としては珍しくラジオを得意とし、ストリーミングを苦手にしています。

 3週前にSpotifyの人気プレイリスト、RapCaviarに追加されたもののSpotifyのランキング200位圏内にはまだ入ることができていません。

 

☆47 French Montana feat. Drake – No Stylist

 French MontanaとDrakeによる“No Stylist”が47位に登場。London on da Trackプロデュースのダンサブルな1曲。昨年の大ヒット”Unforgettable”を彷彿とさせるノリやすい1曲です。

 French Montanaはこの曲と同時に”Juice”、“Nervous”という曲も公開しています。(この3曲合わせて ”No Stylist Single” という括りらしいです)

 

▽40 Machine Gun Kelly – Rap Devil

 Eminemへのアンサー曲、“Rap Devil”に続いてMGKはEP、”Binge”をリリース。アルバムチャートでは24位に登場。

 その“Rap Devil”もそのEPに収録されているものの、EPリリースの恩恵*2はシングルチャートには反映されず、今週22位→40位と順位を落としています。

 ディスに対応するための「緊急シングル」だったので、今後はあまりプロモーションされずに次第に落ちていくかもしれません。

 

▽39 Drake – Nice For What

 来週のHot 100にはLil Wayneのアルバム曲が大量に登場する見込み。それに伴い、Hot 100に今週いた曲が多くチャートから外れる見込み。

 特に今週30位以下で滞在が20週を超えている曲は外れる可能性がいくらかありそうです。

 今週45位の“God’s Plan”、44位の”Tequila”辺りは高確率でチャートから外れそうです。ほか今週39位の“Nice For What”、37位の“The Middle”、35位”Psycho”辺りも危険水域。

 運が悪ければ34位の“I Like Me Better”、33位”SAD!”、32位“no tears left to cry”、30位”Meant to Be”も外れてしまうかも。

(あとは21位の“Perfect” ルール上、この曲に限っては26位以下に落ちると外れる)

 

△31 Sheck Wes – Mo Bamba

 ストリーミングで調子を上げている“Mo Bamba”が31位にまで浮上!ヒットの目安とされるトップ40圏内に突入しました。

 この曲はApple Music、Spotifyの両方でトップ10に入っています。ラジオでも少しずつ再生数を伸ばしており、そのうちHot 100のトップ10にも手が届きそうな予感がします。

 

△24 Lil Uzi Vert – New Patek

 Lil Uzi Vertの“New Patek”が38位→24位と浮上。この曲は水曜日リリースで先週はリリースから3日分しか集計されていませんでしたが、今週は7日分フルで集計されたので、その分ストリーミングが伸びてHot 100の順位を上げました。

 

△13 Lil Peep & XXXTENTACION – Falling Down

 Lil PeepとXXXTENTACIONの“Falling Down”が47位→13位と浮上。この曲も水曜日リリースで、順位を上げた理由は上の”New Patek”と同じです。ストリーミングだけでなくDLの数字も高く、それが高い順位浮上に結びついています。

 この活躍に伴い、Lil Peepの昨年のEP ” Come Over When You're Sober” がアルバムチャートに再登場(199位)しました。

 この曲はオーストラリアで7位、イギリスで10位、ドイツで12位など他国でもかなり高い順位を記録しています。

 

△2 Juice WRLD – Lucid Dreams

 今週2位まで順位を伸ばして首位に接近したのは“Lucid Dreams”! 元々ストリーミングでは高い人気を保ってきましたが、ここ最近ラジオのポイントが急浮上中。これらが組み合わさり、Hot 100の順位上昇に繋がっています。

 特に規模が最も大きいポップ系ラジオでの上昇が大きいです。ラップはこのポップ系であまりポイントを稼げないことも多いですが、この曲はサンプリング元“Shape of My Heart”の親しみやすさもあってか、ポップ系ラジオでも人気を得ています。

 

 来週は現在1位の“Girls Like You”、そして新登場予定、Lil WayneとKendrick Lamarの”Mona Lisa”とHot 100首位の座を争います。 “Better Now”は目立ったプラスが無いので、まだ首位に立つことはなさそうです。

 

※“Mona Lisa”はストリーミングでは爆発的なポイントを稼いでいるものの、DLやラジオのポイントがそこまで高くなく、本来ならば1位を取るレベルのヒットではないのですが、ここ数週のHot 100が「デフレ」中なので、1位取りの可能性も考えられるようです。

 

▽× The Chainsmokers feat. Emily Warren – Side Effects

 The Chainsmokersの“Side Effects”が今週チャートから外れました。ピーク66位、滞在6週とあまり振るわず。

 一時期ラジオでの人気に火が付き、上昇の兆しを見せていましたが、そのラジオがここ数週で急落したことによりHot 100から外れてしまいました。

 今週Hot 100に登場した次シングル“This Feeling”のリベンジに期待がかかります。

 

今週チャートから外れた曲 (6曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

99 Eminem - Kamikaze (🗻16位 /⏰3週)

94 Eminem feat. Royce da 5’9 – Not Alike (🗻24位 /⏰3週)

90 Carrie Underwood – Cry Pretty  (🗻48位 /⏰12週)

88 The Chainsmokers feat. Emily Warren – Side Effects (🗻66位 /⏰6週)

78 Brett Young - Mercy (🗻29位 /20週)

76 6LACK feat. J. Cole – Pretty Little Fears (🗻76位 /⏰1週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

🎫=チケットを絡めた戦略を展開(CD購入でチケット割引・先行購入など)

👕=アーティストのグッズを絡めた戦略 (シャツにCDがおまけで付くなど)

 

1 BROCKHAMPTON – iridescence 👕

2 Josh Groban – Bridges 🎫

11 Prince – Piano & A Microphone 1983

15 Young Dolph – Role Model

17 Young Thug – On The Rvn!! (EP)

19 The Story So Far – Proper Dose

24 Machine Gun Kelly – BINGE

26 Joe Bonamassa – Redemption

27 Slash feat. Myles Kennedy & The Conspirators – Living The Dream

41 YoungBoy Never Broke Again – Decided

51 Kid Rock – Greatest Hits: You Never Saw Coming

60 Lupe Fiasco – Dragas Wave

73 Billy F Gibbons – The Big Bad Blues

95 Metric – Art Of Doubt

121 Gateway – Greater Than

160 Frank Foster – ‘Til I’m Gone

174 Quando Rondo – Life After Fame

 

※ 👕 ←グッズ戦略、Travis Scottの“Astrowrold”で確認されて以降、多くのアーティストによって利用されています。今週、BROCKHAMPTONのアルバムのセールスは、ほとんどこのグッズ戦略から来ているようです。(ほかストリーミングでも一定の数字を記録した)

 

 例えば今週この戦略を使ったBROCKHAMPTONは15$でシャツとアルバムの音源を販売。USにおける金銭感覚はよく分からないですが、公演でのグッズ販売を思い浮かべると15$のシャツはかなり安い気が…… その上に音源がつくとは、音源はほぼ「タダ同然」という読み取り方もできるかも。

 今後、この戦略を取るアーティストは増え続けるのか、またビルボードはこの戦略に規制をかけることはあるのか、🎫戦略と合わせて注目の事象です。

 ちなみに今週のBROCKHAMPTONによるアルバム1位は、史上20回目のHot 100に登場したことが無いアーティストによるアルバム1位。

 Bob Newhart(1960年・1961年)、Slipknot(2008年・2014年)、Vampire Weekend(2010年・2013年) の3組はHot 100登場経験が無いながらも複数回アルバム1位を記録しています。 *3

 

※2011年 Lady Gagaはわずか0.99$という値段でアルバム“Born This Way”を販売。(Amazon限定) その安さに多くの人が食いつき、アルバムは爆発的な売り上げ(約111万)を記録。

 しかしその動きをビルボードは宜しくないと捉え、以降アルバムチャートに反映される「セールス」は3.49$以上の作品に限る(初週のみ適用)、というルールを制定。

» ‘Billboard’ Changes Rules Thanks To Lady Gaga’s ‘Born This Way’ 99 Cent Sale

 

 このルールを踏まえると、CDやアルバム音源が「タダ同然」で買えてしまうグッズ戦略やチケット戦略に対してテコ入れをする必要があるのかもしれません。この場合、どこからどこまで制限するのかが難しそうですが……

 

来週以降の動向など

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Lil Wayne feat. Kendrick Lamar – Mona Lisa

 Lil Wayneのアルバムがストリーミングで爆発的人気。Apple Musicでは全23曲がそのままランキングで1位~23位を独占するなど、かなりの人気。ほとんどの曲がHot 100に登場しそうです。

 それに伴い、今週30位以下だった曲は、来週Hot 100から外れてしまう可能性もあるかも。“Nice For What”辺りが危険水域。可能性は低いが、”no tears left to cry”辺りも外れる可能性は0ではないかも。

 

・Kevin Gates – Discussion

・Logic feat. Ghostface Killah など – Wu-Tang Forever

 Lil Wayneに次ぐアルバムたち。この2人もある程度Hot 100に入るかもしれません。

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

*1:https://shop.brckhmptn.com/products/the-number-one-boyband-in-show-business-brockhampton-tee-navy-digital-album-bundle?variant=19669995913274 より

*2:EPを出したことによって曲をもう一回聞く、などの恩恵

*3:参考:Weekly Chart Notes: Amos Lee, Far*East Movement, Kelly Clarkson | Billboard この記事が完成以降、N.W.AとArcade FireはHot 100入りを達成し、このリストから「抜けた」 アップデート版はウィキペディアに載っています

https://en.wikipedia.org/wiki/Billboard_200#Albums_to_top_the_Billboard_200_by_artists_who_have_never_appeared_on_the_Hot_100