チャート・マニア・ラボ

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Hot 100 11/10 見どころ 【Nicki Minaj100回目のHot 100・クイーンとキングの活躍!?】

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 今週の注目ポイントは「クイーンとキングの活躍」。クイーンとはNicki Minajのことで、今週100回目のHot 100入りを達成。女性としては史上初の偉業!*1

 ちなみに往年の名バンドのほうのQueenも最近大活躍中。映画”Bohemian Rhapsody"の効果でQueen楽曲が大いに注目されていて、ストリーミングやiTunesで絶賛再浮上中です。

 キングはMichael Jacksonのことで、“Thriller”がハロウィンの効果で31位に再登場しています!

 

☆今週のHot 100 ショートハイライト

・TygaとNicki Minajの“Dip”が83位に登場。Nicki Minajはこれで100曲目のHot 100エントリーを達成!女性としては史上最多のHot 100エントリー

・2つの曲がトップ10に浮上!Halseyの“Without Me”が9位に、Sheck Wesの”Mo Bamba”が10位に上昇

テノール歌手Andrea Bocelliがアルバム1位。クラシックの作品がアルバム1位になるのは10年ぶり

・“Thriller”がハロウィン効果で31位に再登場

 

 

・今週のトップ10

-1 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You 

―2 Travis Scott – SICKO MODE

△3 Marshmello & Bastille – Happier 

▽4 Juice WRLD – Lucid Dreams

―5 Post Malone – Better Now

―6 Kodak Black feat. Travis Scott & Offset – ZEZE

―7 5 Seconds of Summer – Youngblood 

-8 Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard 

△9 Halsey – Without Me 

△10 Sheck Wes – Mo Bamba 

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

1~100位までの順位表は↓

  

曲の個別解説

 

☆97 Lil Mosey – Kamikaze

 Lil Moseyの“Kamikaze”が97位に登場。今週82位の”Noticed“に次ぐ2回目のHot 100エントリーです。

 Lil Moseyはシアトル出身16歳のラッパー。前シングル“Noticed”で注目を集めたのち、アルバム”Northbest”をリリース。このアルバムはApple Musicなどストリーミングで一定の人気を集めアルバムチャートで29位にランクイン。

 その中で人気だった”Kamikaze”がアルバムリリース後も注目され、Hot 100にまで到達しました。

 

☆94 Dean Lewis – Be Alright

 オーストラリア出身SSW、Dean Lewisの“Be Alright”が94位に登場。Spotifyで2ヶ月前くらいから注目を集め、その人気がラジオにも飛び火。ラジオの好調を受けてHot 100に登場しました。一番人気を集めているのはアダルトポップ系統。

 Spotifyでヒットした曲はラジオにリーチするまで時間がかかることもありますが、この曲は比較的早いタイミングでラジオで人気を得ることに成功していると思います。

 この曲は母国オーストラリアで1位、イギリス11位、ドイツ12位など各国のシングルチャート上位に入っています。主にSpotifyによって人気が拡大しました。

 

 

☆89 Steve Aoki feat. BTS – Waste It On Me

 Steve AokiがBTSを迎えた“Waste It On Me”が89位に登場。BTSにとって初の英語シングルに。DLで高い数値を記録し、Hot 100にエントリー。ビデオはまだ公開されていないので、YouTubeのポイントはあまり高くないです。

 BTSにとっては5曲目のHot 100エントリーに。これでPSYを超えてK-Popミュージシャンの中でHot 100エントリー数が最多となりました。

 Steve Aokiは4曲目のHot 100エントリー。Steve AokiとBTSがコラボするのは“MIC Drop”のリミックス、”The Truth Untold”に次いで3回目。

 

☆83 Tyga feat. Nicki Minaj – Dip

 TygaとNicki Minajの”Dip”が83位に登場。この曲は数週前にリリースされた曲ですが、Nicki Minajがリミックスで加わって以降注目度が急上昇しました。

 これでNicki Minajは100回目のHot 100エントリーに!(うち約半数=56曲が客演の曲 *2

 女性としては史上最多で、つまり女性とは史上はじめて100回目のHot 100エントリーを成し遂げた、ということになります。

 

 

 全体では5番目のHot 100エントリーの多さ。女性で2番目にHot 100エントリーが多いのはTaylor Swiftで77曲です。それに次ぐのはAretha Franklinの73曲。

 

☆80 Trippie Redd – Topanga

 Trippie Reddの“Topanga”が80位に登場。この曲は2週間前の月曜日にリリースされ、以降ストリーミングを伸ばし今週のHot 100にエントリーしました。

 哀愁のあるトラックにTrippie Reddが持つ個性的な声が乗った1曲。Maurette Brown Clarkの”It Ain’t Over”という曲をサンプリングしています。

 

☆76 Tory Lanez & Rich the Kid – TAlk tO Me

 Tory Lanezの新作“LoVE me NOw?” がアルバムチャート4位に登場。この”LoVE me NOw?"はApple Musicで首位(アルバム)に立つなどストリーミングで人気でした。

 アルバムからは1曲がHot 100に登場。“TAlk tO Me”が76位に。その他4曲が101-125位に相当するBubbling Underに登場しました。

 アルバム全曲が大文字・小文字が不規則に並ぶ表記になっています。

 

☆54 Takeoff – Last Memory

 Migosの最年少メンバー、Takeoffによるソロ曲“Last Memory”が54位に登場。ソロとしてのHot 100登場は、Quavo, Travis ScottのジョイントJack Hunchoの客演を務めた”Eye 2 Eye”以来2回目です。

 来週のチャートでは11/2にリリースしたアルバムのポイントも反映される予定で、何曲かがまた新たにHot 100に登場するかも。(“Casper”や”She Gon Wink”あたりが候補。また、“Last Memory”も順位を上げると思います)

 

◇31 Michael Jackson – Thriller

 ハロウィン特需によってKing of Popがチャートに帰還!Michael Jacksonの“Thriller”が31位に再登場しました。3年ぶりのHot 100登場に。毎年ハロウィンに再浮上するこの曲の毎年のチャート成績は以下の通りです。

 

2013:42位 (はじめての“再”登場)

2014:35位

2015:45位

2016:登場せず

2017:登場せず

2018:31位

 

 ここ2年Hot 100に再登場していなかったのに、今年再登場したのはダウンロードが理由かもしれません。上記の2013年以降のハロウィンでは、iTunesの首位に立ったことがなかったのですが、今年のハロウィンではiTunesの首位に立っていました。

 

※ちなみに“Thriller”が最もダウンロードで高い順位を記録したのはMichael Jacksonが亡くなった時でした。(DLチャートで2位まで到達) *3

 

 

☆28 XXXTENTACION & Lil Pump feat. Maluma & Swae Lee – Arms Around You

 XXXTENTACION、Lil Pumpに加えMalumaとSwae Leeが参加した“Arms Around You”が28位に登場。プロデュースはSkrillexという豪華な布陣。この曲はストリーミングで人気のほか、DLでも高い数字を記録しています。

 XXXTENTACIONは自身の死後リリースされたシングルが2連続でトップ40入り。 Malumaはこの曲でキャリアピークを更新、かつキャリア初のトップ40です。また彼のシングル”Mala Mia"は今週ラテン系ラジオで1位になっています。(Hot 100には登場せず)

 

※同じくSwae Leeが客演していたEllie Goulding(とDiplo)の“Close To Me”は今週121位相当で惜しくもHot 100入りならず。

 

△13 Cardi B – Money

 Cardi Bの“Money”は13位に浮上。先週はリリースから2日分しか集計されていませんでしたが、今週は7日分フルで集計されたため、そのギャップにより順位を上げました。

 ストリーミングとDLの両方でかなりポイントを稼いでいます。(DLのチャート=Digital Songs、ストリーミングのチャート両方でトップ10に入っている)

 Cardi Bは“Invasion of Privacy”からのシングル、Kehlaniとの“Ring”も好調。今週40位に浮上し、アルバムリリース週以来のトップ40入りとなりました。(アルバム内の曲としても、シングルとしても両方で成功したということになります)

 

△10 Sheck Wes – Mo Bamba

 Sheck Wesの“Mo Bamba”がついにトップ10まで到達!Spotifyで1位に立つなど、元から高かったストリーミングがさらに伸びたことや、ラジオやDLも伸びてきたことがトップ10入りの要因です。

 ラップ曲はトップ10入りする時は多くの場合、最初の週からいきなりトップ10に入っているので、この“Mo Bamba”のように次第にヒットして気づけばトップ10……のようなヒットの仕方はやや珍しいです。

 

※今年Hot 100のトップ10入りした48曲のうち、34曲*4が最初の週からトップ10圏内に登場しています。(つまりラップ曲はリリース時が注目度のピークになることも多い)

 

△9 Halsey – Without Me

 Halseyの“Without Me”が9位へ浮上!キャリア3曲目のトップ10に!(”Closer”、“Bad at Love”に次ぐ)

 ラジオ、DL、ストリーミングの全てで高水準の成績を記録していることに加え、ビデオリリースによるポイント増がトップ10入りの要因です。特にポップスがあまり得意としない傾向にあるストリーミング(Apple MusicやSpotify)での健闘が際立ちます。

 この曲はブリッジ(日本語で言うCメロ)の部分にJustin Timberlakeの“Cry Me A River”の引用があり、このことから”Without Me”には“Cry Me A River”のソングライター3人全てがクレジットに載っているとビルボードは説明しています。

 

▽× Ariana Grande – no tears left to cry

 Ariana Grandeの”no tears left to cry”が今週チャートから外れました。ピークは3位、チャート滞在27週でした。

 リリース時には初のHot 100首位獲得を試みて、すぐiTunes割引を敢行するなど様々な策を試みましたが、結局3位デビューに。その後も1位は獲得できずに終わりましたが、一定の人気を誇り、27週滞在と悪くはない成績を残しました。デビュー作から続く「アルバムの先行シングルが全てトップ10圏内にデビュー」という記録も継続に成功しました。

 

 この“no tears left to cry”はチャートから外れてしまいましたが、後続のシングルは好調をキープ。”God is a woman”は今週ポップ系ラジオで首位を獲得!これはAriana Grandeキャリア4回目*5の記録です。Hot 100でも今週20位に浮上。

 そして“breathin”も好調で、今週32位とトップ40に帰還しています。ラジオで好調をキープしています。(つまり現在2つのシングルが両立しています)

 

 さらに期待が持てそうなのは、今週日曜日頃にリリースされた”thank u, next”。この曲はリリース以降高いDLをキープし、さらにストリーミングでは以前の曲とは桁違いの再生数を記録。週の途中リリースながらも、この調子で行けばキャリア初のHot 100首位もありえるのでは!?果たして……

 

※この曲のチャート動向で驚いたのは、Apple Musicのランキングでも1位を獲得したこと。アメリカのストリーミングは現在「アーバン天国」な傾向があり、特にApple MusicではラップやR&Bの人気が顕著。現にApple Musicの今日のトップ100のうち、ラップやR&B「ではない」曲はわずか12曲しか無いのですが、そのような環境下での1位獲得は「快挙」と言える気がします。

 この曲は同様にSpotifyでも首位を獲得し、今年初のラップ・R&B「以外」でアメリSpotifyランキング首位に立った曲となりました。そして女性として史上最多の再生数(デイリー)を記録しました。(4,190,968回) 今までこの記録を持っていたのは“Look What You Made Me Do”の3,828,478回。*6

 女性としては史上最多のSpotify再生数ですが、全体では12番目の再生数です。

 

Spotifyアメリカ)で、1日で多くの再生数を記録した曲

ピーク再生数 達成日
1 Drake - Nonstop 5,749,019 2018/6/29
2 Drake - Survival 5,219,711 2018/6/29
3 Drake - Emotionless 4,842,941 2018/6/29
4 Drake - In My Feelings 4,805,299 2018/6/29
5 Drake - God's Plan 4,739,798 2018/1/25
6 Drake - Elevate 4,686,139 2018/6/29
7 Lil Wayne feat. Kendrcik Lamar - Mona Lisa 4,444,027 2018/9/28
8 XXXTENTACION - SAD! 4,437,612 2018/6/19
9 Travis Scott - STARGAZING 4,244,308 2018/8/3
10 J. Cole - KOD 4,233,070 2018/4/20
11 Lil Wayne feat. XXXTENTACION - Don't Cry 4,213,664 2018/9/28
12 Ariana Grande - thank u, next 4,190,968 2018/11/5
13 Drake - 8 Out Of 10 4,170,547 2018/6/29
14 Travis Scott - SICKO MODE 4,129,691 2018/8/3
15 Kendrick Lamar - HUMBLE. 4,060,034 2017/4/14
16 Drake - I'm Upset 3,945,109 2018/6/29
17 Drake - Mob Ties 3,859,100 2018/6/29
18 Taylor Swift - Look What You Made Me Do 3,828,478 2017/8/25
19 Drake feat. Jay-Z - Talk Up 3,823,354 2018/6/29
20 Post Malone - Paranoid 3,694,438 2018/4/27

☆黄色い背景の曲は「非ラップ」

☆ピーク日が青い曲はアルバムリリースのタイミング「以外」でのピーク。現在アメリカのストリーミングでは多くの場合アルバムリリース時がピークになる。

 

今週チャートから外れた曲 (11曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

98 Lil Yachty feat. Playboi Carti – Get Dripped (🗻98位 /⏰1週)

96 Weezer – Africa (🗻51位 /⏰15週)

93 Dua Lipa & BLACKPINK – Kiss and Make Up (🗻93位 /⏰1週)

92 Juice WRLD – Make It Back (🗻92位 /⏰1週)

91 Lil Yachty feat. Juice WRLD – Yacht Club (🗻91位 /⏰1週)

89 Khalid – Vertigo (🗻89位 /⏰1週)

88 Khalid feat. Empress Of – Suncity (🗻88位 /⏰1週)

83 Khalid – Saturday Nights (🗻83位 /⏰1週)

82 Future & Juice WRLD – Astronauts (🗻78位 /⏰1週)

72 Future & Juice WRLD feat. Young Scooter – Jet Lag (🗻72位 /⏰1週)

50 Ariana Grande – no tears ledt to cry (🗻3位 /27週)

 

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Andrea Bocelli – Si

3 Joji – BALLADS 1

4 Tory Lanez – LoVE me NOw?

26 John Legend – A Legendary Christmas

33 Pentatonix – Christmas Is Here!

35 Greateful Dead – Dave’s Picks Volume28

40 Robyn – Honey

41 Josh Turner – I Serve A Savior

52 Various Artists – NOW 68

60 Jeremih & Ty Dolla $ign – MIH-TY

79 Thom Yorke – Suspiria: Music For The Luca Guadagnino Film

89 Lukas Graham – 3 (The Purple Album)

94 Ingrid Michaelson – Ingrid Michaelson’s Songs For The Season

98 MadeinTYO – Sincerely, Tokyo

102 The Struts – Young & Dangerous

103 Chris Tomlin – Holy Roar

127 Francesca Battistelli – Own It

139 Chevelle – 12 Body Spies: B-Sides And Rarities

 

・Joji – BALLADS1 → 88rising所属の日系シンガーが大躍進!88risingのメンバーの中では最高位のアルバムチャート3位を記録!Spotifyなどストリーミングで人気だったほか、グッズ+音源戦略でもセールスを伸ばしました。これを「日本人の記録」と捉えたとすれば、歴代最高の成績になります (日本人のアルバムチャート最高位は1963年、坂本九の14位)

 シングルでは“SLOW DANCING IN THE DARK”が101位相当で、惜しくもHot 100入りならず。本当に惜しい……

 

・Lukas Graham - Purple Album → 英語圏ではあまり話題に上がりませんが、北欧や東南アジアなどでは現在も人気。先行シングル“Love Someone”は計7カ国*7Spotifyでトップ10入りしています。

 

 あとBlack Eyed Peasの新作はリリース日からして、チャートに入るなら今週ですが200位以内に登場せず。

 

来週以降の動向など

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Ariana Grande – thank u, next

 “no tears~”の項目で述べたように、来週Hot 100首位獲得の可能性あり。今週DL1位だった”Shallow”の2~3倍のDLを記録しているうえ、さらにストリーミングでも絶好調。5日分しか集計され無いことは少々痛いですが、果たして……?

 

・K/DA feat. Madison Beer, (G)I-DLE & Jaira Burns – POP/STARS

 先週はDua LipaとBLACKPINKの“Kiss and Make Up”、今週はSteve AokiとBTSの”Waste It on Me”と連続でK-PopグループがHot 100に登場しましたが、来週のHot 100にも新たにK-Popグループが登場?

 League of Legendsというゲーム発祥のアニメグループK/DAの“POP/STARS”が各媒体で注目を集めています。ポップシンガーMadison Beer、Jaira Burns、K-Popガールズグループ(G)I-DLEのメンバーがボーカリストとして参加しています。(というよりも、このアニメキャラのボーカルを代わりに担当しているという感覚です)

 全員がHot 100未登場のアーティストです。コンセプトも参加しているアーティストも全く目新しいですが、チャートを掻き回すことが出来るでしょうか?

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:"No Frauds"のビデオにおけるNicki Minaj

*2:“Bang Bang”のような全員が&で括られている曲は自身の曲としてカウントしました。Britney Spearsの“Till the World Ends”のリミックスでの客演もカウントされているのが意外でした

*3:この曲が最初にリリースされた時はダウンロードという概念が無い

*4:リリースのタイミングの都合上、チャート1週目が7日分集計されていない曲 “Chun-Li”と”Yes Indeed”の2つ は「事実上」トップ10圏内デビューと見なしています

*5:“Problem”, “Side to Side”, “no tears left to cry”に次ぐ

*6:え?Cardi Bじゃないの?と思う人がいるかもしれないですが、意外とCardi BはSpotifyだと人気控えめ?で、実は”Bodak Yellow”もSpotifyだと1位になっていません

*7:デンマークスウェーデンノルウェー、フィリピン、マレーシア、シンガポールベトナム