チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 12/15 見どころ 【ストリーミングでのアルバム激戦区!】

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 今週はストリーミングで人気を得たアルバムが多くありました。Meek Millは収録曲が15曲、Lil Babyは6曲、Ski Mask the Slump Godは2曲がHot 100に入りました。出入りの激しい週ですね。

 

☆今週のHot 100 ショートハイライト

・Meek Millがアルバム首位。Drakeとの“Going Bad”が6位など、計15曲がHot 100入り

・”thank u, next”がHot 100首位復帰

・”All I Want for Christmas Is You”が7位浮上!この時点でピーク更新

・Lil Babyのアルバムから6曲がHot 100入り

・Ski Mask the Slump Godが初のHot 100入り

・27曲が入れ替わる激動の週

 

・今週のトップ10

△1 Ariana Grande – thank u, next 

▽2 Travis Scott – SICKO MODE 

△3 Halsey – Without Me 

▽4 Marshmello & Bastille – Happier 

―5 Panic! At the Disco – High Hopes 

☆6 Meek Mill feat. Drake – Going Bad 

△7 Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You 

▽8 Kodak Black feat. Travis Scott & Offset – ZEZE

▽9 Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard

▽10 Sheck Wes – Mo Bamba

 

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

1~100位までの順位表は↓

  

曲の個別解説

 

☆67 Mark Ronson feat. Miley Cyrus – Nothing Breaks Like A Heart

 Mark RonsonがMiley Cyrusを迎えた“Nothing Breaks Like A Heart”が67位に登場。Mark Ronsonはキャリア4曲目のHot 100(”Uptown Funk“、DiploとのSilk Cityの”Electricity”、A$AP Rockyの“Everyday”に次ぐ)

 同じくMark Ronson+ポップシンガーという組み合わせの、“Uptown Funk”のヒットから約4年が経過。Mark Ronsonは再びメインストリームに旋風を起こすことができるでしょうか。イギリスでは10位デビューと順調なスタート

 

☆64 Kodak Black – Calling My Spirit

 Kodak Blackのシングル“Calling My Spirit”が64位に登場。Southsideプロデュース。この週は注目アルバムが多くリリースされていましたが、それらに負けないストリーミング数を記録してHot 100に登場しました。 (※アメリカのストリーミング、特にApple Musicのリスナーは曲をアルバム単位で消費する傾向にある)

 彼は今週にアルバムをリリース予定。大ヒットの先行シングル“ZEZE”も収録。ほかJuice WRLD、Lil Pumpなどが参加。

 

☆63 Ski Mask the Slump God feat. Juice WRLD – Nuketown

 フロリダのラッパーSki Mask the Slump Godの「デビュー」スタジオアルバム がストリーミングで人気。アルバムチャート6位を記録し、さらに自身初のHot 100入りも達成。

 Apple MusicのプレイリストA List:Hip-Hopに入った“Foot Fungs”が81位に、Juice WRLDを迎えた”Nuketown”が63位に登場しています。

 

☆60 Nicki Minaj feat. Lil Wayne – Good Form

 Nicki Minajのアルバム“Queen”からの新シングル、“Good Form”が60位に登場。シングル化にともない、ビデオのリリース、Lil Wayneのヴァース追加などを行っています。

 今週アメリカ内でのYouTubeの再生数が8位(783万回)を記録しています。

 

☆46 Lil Baby – Pure Cocaine

 Lil Babyの“Street Gossip”がアルバムチャート2位にランクイン。純セールスはわずか5000枚ながらも、ストリーミングで82000枚相当の成績を叩き出し、アルバムチャート上位に入りました。5月の“Harder Than Ever”、10月のGunnaとのジョイント作”Drip Harder”に次ぐ今年3枚目のアルバムです。

 そのストリーミング人気から、収録曲のうち6曲がHot 100に登場。46位の“Pure Cocaine”が最高位。ほかMeek Millを迎えた”Time”、盟友Gunnaとの“Ready”、Quay Globalプロデュースの”Global”などがHot 100入り。

 Lil Babyは他に“Drip Too Hard”、”Close Friends”、6ix9ineの客演を務めた“Tic Toc”もチャートに残っていて、今週9曲がHot 100に入っています。

 

△44 6ix9ine feat. Tory Lanez – KIKA

 先週のアルバムチャートでは3日弱の集計ながらも、アルバムチャート2位に食い込んだ6ix9ineのアルバム“Dummy Boy”。今週のチャートでは7日分がフルに集計されるため、アルバム1位獲りが期待されましたが、結局3位に。 

 このアルバムの数字は先週よりも伸びた(6.6万→8.3万)のですが、他のアルバムの数値が高く、自身初のアルバム1位とはなりませんでした。

 先週から収録曲がいくつかHot 100入りを果たしていましたが、順位を伸ばす曲もあれば下げた曲もありました。Hot 100に新登場する曲はありませんでした。

 

 

☆36 Gene Autry – Rudolph The Red-Nosed Reindeer

 先週に引き続き、クリスマス曲が好調を維持。まだ12月の序盤ですが、例年では登場しない曲もHot 100に登場しはじめています。

 Gene Autryの“Rudolph The Red-Nosed Reindeer” が36位、Dean Martinの”Let It Snow, Let It Snow, Let It Snow”が41位に「初」登場しています。

 

 Dean Martinは50年ぶりのHot 100登場に。「ぶり」が歴代最大だったのは、今年Kids See Ghostsの客演でHot 100に登場したLouis Prima。(57年ぶりのHot 100だった)

 

※なんでクリスマス曲がこんなに好調なのか、研究しがいのありそうなテーマですね……例えばSpotifyでは、1日の最高再生数がクリスマス曲の国もあり(アメリカは違う)、クリスマス期は再生数が拡張する「書き入れ時」になっています。

 

・クリスマス曲がSpotifyの1日の最高再生数になっている国の一例

イギリス   :Last Christmas (約136万再生)

ドイツ    :Last Christmas (約128万再生)

オーストラリア:All I Want for Christ Mas Is You (約53万再生)

 

 

△7 Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You

 Mariah Careyの“All I Want for Christmas Is You”が7位へ浮上!なんとこのタイミングでピークを更新しました!

 クリスマス曲は他のムーブメント(最近の“Bohemian Rhapsody”など)とは違ってラジオでも曲がかかることが強みです。これにより、複合チャートのHot 100でも上位進出を狙えるようになります。

 また、現在は偏ったポイントの取り方をする曲も多い中、ダウンロード・ラジオ・ストリーミングの3つのポイントをバランスよく獲得できているのもクリスマス曲の強みです。(つまり幅広い層に支持されている)

 

 これ以外のクリスマス曲もチャートを浮上。“Last Christmas”が初のトップ40入りを果たすなど、ほとんどの曲がピークを更新しています。(唯一の例外は“Rockin’ Around the Christmas Tree”)

 

☆6 Meek Mill feat. Drake – Going Bad

 今週の主役に躍り出たのはMeek Mill。アルバムチャートで首位に輝いただけでなく、Hot 100にも収録19曲のうち、15曲がエントリー。

 そのうち一番人気があったのはDrakeとの“Going Bad”。この曲は6位に登場しています。かつてビーフ関係にあったDrakeとの「再会」を果たした曲でもあり、名前だけでもインパクトのある曲です。プロデューサーはWheezy。”Wheezy Outta Here”のタグで知られる彼は、Tay Keithと並んで今年躍進を果たしたプロデューサーの1人です。“Yes Indeed”、”Fine China”などを担当しています。

 ヒットの目安とされるトップ40圏内に登場した曲が他にいくつかあります。Jay-ZとRick Rossが参加した“What’s Free”が20位に、Meek Millの元カノNicki Minajの天敵(?)Cardi Bが参加した”On Me”が30位、既存シングルだった“Dangerous”が31位に、さらにSpotifyのRapCaviarに入っているノリの良い”Uptown Vibes”が39位に登場しています。チャート上位に入る曲はストリーミングだけでなく、DLの数値も高いことが多いです。

 他にも複数曲がHot 100に登場。77位の“Splash Warning”に参加したRoddy Ricchは初のHot 100入り。

 

 

 

△1 Ariana Grande – thank u, next

 Ariana Grandeの”thank u, next”が1位に返り咲きです。元からの好調に加え、ビデオが高い再生数を記録したことが要因です。

 ストリーミングサービスでの元からの好調に加え、ビデオの再生数が加わり今週9380万のストリーミングを記録。これは歴代4位の記録で、かつ女性としては最高の数字です。

 

1位 Drake – In My Feelings 1億1610万

2位 Baauer – Harlem Shake 1億310万 *2

3位 Drake – God’s Plan 1億170万

4位 Ariana Grande – thank u, next 9380万

5位 Taylor Swift – Look What You Made Me Do 8450万

 

※Drakeの曲は複数週に渡って高いストリーミングを記録していますが、ここではピーク時のものだけを載せています。

 

 ビデオはアメリカのYouTubeのみで5120万再生を記録。これはEminemの“Killshot”を上回り観測史上最高の数字です。

 ラジオも絶好調のため、今後も1位をキープしそうです。ライバルはHalsey。DLは”Without Me”のほうが高く、また先にリリースされたためラジオの数値もまだこちらのほうが高いです。

 

 

▽× Ella Mai – Boo’d Up

 Meek Millのアルバム曲などが大量登場したことなどで、今週はなんと27曲がHot 100に新たにエントリー。これにより、チャート下位にいた曲やヒット後数字を落としていた50位~40位付近にいた曲が代わりにチャートから外れました。

 先週50位だったElla Maiの“Boo’d Up”がチャートから外れました。イギリス出身のElla Maiですが、DJ Mustardの誘いで拠点をアメリカへ。昨年のEP、”Ready”からのシングルカットだった“Boo’d Up”はHip-Hip / R&B系ラジオ、YouTubeApple Musicなどで支持されてHot 100上位へ。最終的には5位まで到達しました。

 その後も長く人気を保ち、35週という長めのチャート滞在を記録しました。ちなみにHip-Hop / R&B系ラジオでは現在も12位にエントリーしています。

 この“Boo’d Up”はチャートから外れてしまいましたが、彼女の次のシングル”Trip”は今週も23位でHot 100に残っています。また、Meek Millの客演を務めた”24/7”も新たに54位に登場しています。

 

▽× Drake – Nonstop

 “Going Bad”で共演をし、ビーフに終止符を打ったDrakeとMeek Mill。しかしそのMeek Mill大量登場の影響で、Drakeの楽曲が3つチャートから外れてしましました。

 まずは先週46位だったTay Keithプロデュースの“Nonstop”。この曲はアルバム”Scorpion”リリース時にストリーミングで一番人気だった曲で、Hot 100登場時は2位でした。ちなみにアメリカのSpotifyの1日の再生数記録を持っているのはこの曲です (約575万再生)

 リリースから少し経過すると、“In My Feelings”に注目が集まったため、一旦は順位を落としましたが、シングルカットされラジオでかかると再浮上。 ?位まで順位を戻しましたが、ロングヒットとはならず、結局22週の滞在でチャートから外れてしまいました。

 

 次に先週44位だったLil Babyとの“Yes Indeed”。 Drakeが参加したことでこの曲はヒット。リリース時には一気に6位まで浮上。その後も比較的長持ちし、29週の滞在でチャートを後に。この曲はApple Musicでの人気が高く、年間の再生数が6位でした。ラジオでも長持ちで現在もHip-Hop / R&B系ラジオで8位に位置しています。この曲にはピカチュウが歌詞中に何回か登場します。

 

 そして先週37位だった“In My Feelings”。12週前にはHot 100首位に立っていたこの曲ですが、ピークが過ぎてからの下降が早く、もうチャートから外れていました。首位に立っていた時の勢いはすごかったですが、”God’s Plan”=36週、”Nice For What”=25週よりも短いチャート滞在に終わりました。

 

▽× Dan + Shay – Tequila

 Dan + Shayの“Tequila”がチャートから外れました。カントリー曲はおおむね20週程度でチャートを外れることが多いのですが、この曲はチャート滞在38週という驚異的な粘りを記録しました。

 多くの場合、カントリー曲はカントリーのラジオでしかかからないのですが、この曲は他の系統にも進出。

 

 これ以外ではKanye WestとLil Pumpの“I Love It”、Bebe Rexhaの”I’m A Mess”、Kane Brownの“Lose It”などが今週チャートから外れています。

 

今週チャートから外れた曲 (27曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

99 Lil Mosey – Noticed (🗻80位 /⏰10週)

98 Lil Peep & XXXTENTACION – Falling Down (🗻13位 /⏰11週)

97 Kanye West & Lil Pump – I Love It (🗻6位 /⏰12週)

96 Billie Eilish – Ocean Eyes (🗻96位 /⏰2週)

95 Metro Boomin feat. 21 Savage – Don’t Come Out The House (🗻38位 /⏰4週)

94 Jason Aldean – Girl Like You (🗻94位 /⏰2週)

93 Daniel Caesar feat. H.E.R. – Best Part (🗻75位 /⏰19週)

92 Kip Moore – Last Shot (🗻90位 /⏰3週)

91 Metro Boomin feat. Gunna – Space Cadet (🗻51位 /⏰4週)

89 Russell Dickerson – Blue Tacoma (🗻52位 /⏰15週)

87 Maren Morris – Rich (🗻62位 /⏰8週)

86 6ix9ine feat. Anuel AA – BEBE (🗻30位 /⏰5週)

85 Lil Baby & Gunna feat. Drake – Never Recover (🗻15位 /⏰8週)

83 Billie Eilish & Khalid – Lovely (🗻78位 /⏰7週)

80 Tyga & Nicki Minaj – Dip (🗻63位 /⏰5週)

79 Chris Young – Hangin’ On (🗻63位 /⏰13週)

78 Bebe Rexha – I’m A Mess (🗻35位 /20週)

72 Trippie Redd feat. Juice WRLD – 1400 / 999 Freestyle (🗻55位 /⏰3週)

70 Metro Boomin feat. 21 Savage – 10 Freaky Girls (🗻42位 /⏰4週)

69 Billie Eilish – Come Out And Play (🗻69位 /⏰1週)

66 Trippie Redd – Topanga (🗻52位 /⏰5週)

50 Ella Mai – Boo’d Up (🗻5位 /35週)

46 Drake – Nonstop (🗻2位 /22週)

45 Dan + Shay – Tequila (🗻21位 /38週)

44 Lil Baby & Drake – Yes Indeed (🗻6位 /29週)

41 Kane Brown – Lose It (🗻28位 /20週)

37 Drake – In My Feelings (🗻1位 /22週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Meek Mill – Championships

2 Lil Baby – Street Gossip

4 The 1975 – A Brief Inquiry Into Online Relationships

6 Ski Mask the Slump God – Stokeley

17 Earl Sweatshirt – Some Rap Songs

48 Various – A Christmas Gift For You From Phil Spector

71 Alessia Cara – The Pains of Growing

82 Trey Songz – 11

87 Jeff Tweedy – Warm

101 Def Leppard – The Story So Far.The Best Of Def Leppard

141 Clean Bandit – What Is Love?

147 Trey Songz – 28

152 Andy Williams – The Andy Williams Christmas Album

169 Dolly Parton – Dumplin’

176 Louis Armstrong & Friends – What A Wonderful Christmas

187 Wheeler Walker Jr.

200 Granger Smith – They Were There: A Hero’s Documentary

 

 

来週以降の動向など

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Ariana Grande – Santa Tell Me

 Spotifyで人気のクリスマス曲。しかし、Spotifyで人気のクリスマス曲が必ずしもHot 100に載っているような感じはしないので、「クリスマス曲がストリーミングで人気」の源がどのサービスなのか不明……

 

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

*1:@champagnepapi on Instagram: “This really gave me peace of mind tonight. Healing and moving forward created one of the most electric and gratifying moments of my career.…”

*2:当時のデータが取り揃ってはいないため、断定はできないですが、この数字はYouTubeの一般人によるムーブメントを集計しすぎという持論があります。