チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

個人的ベストアルバム・2018

 

 

f:id:djk2:20181230010102p:plain

↑今年のベストアルバム40枚、それに加えて5作品の特別表彰があります!

 

 今年のテーマは「ポップスの進化」と「アルバム構築の美しさ」です。最後に5作品の特別表彰、そして「年間ベストを作る上での重要なテーマ」という小話の「おまけ」を付けたので良かったらそちらもご覧ください。

 

※ちなみに全作品にオートで「とりあえず聞いてみたらわかると思うので、ぜひ聞いてみてください!」というメッセージが付いています。上位なのに説明が短めな作品もありますが、それは「言葉に表せない部分もあるけど、魅力があります!」ということです。(サウンド重視で選考したからなのかもしれません) 

 

 

40 BlocBoy JB – Simi

 今年の流行をTay Keithとともに作り上げたBlocBoy JB。彼の作り上げたシュートダンスは世界中に伝わり、いたるところで見かけました。(彼が作ったということを知らない人が多そうですが) 

 そのダンスを作り上げた、人々を踊らせる彼のラップを楽しむことができるアルバムです。彼の「ウォウ」を存分に楽しみましょう。アルバムでは多くの曲をTay Keithがプロデュースしていますが、そうではない曲もあります。

 

39 BTS – Love Yourself: Tear

 BTSは今年残念なニュースがありました。言い訳のしようが無い行動だと思いますし、事務所等の対応も後手だった印象がありました。しかし、彼らの今年のアメリカでの大躍進、そして彼らの音楽が否定されたわけではありません。

 彼らのアルバム1位はアジア圏からの作品、という以外にも「大きくない事務所に所属している」、「ファン層が何よりも強固」など珍しい点がいくつかありました。その中でも私が特に珍しさを感じたのはポップスのアーティストがコンセプト重視でアルバムを作り上げたということでした。ポップスでコンセプト、セールスを両立できるアーティストはなかなかいないと思います。

 このアルバムはアジア圏というくくりだけではなく、ポップスのありかたに対して新しい形を提示したという意味でも、意義があったアルバムだったと思います。

 

38 Mija – How To Measure The Distance Between Lovers

 MijaはSkrillexのレーベルOWSLAに所属する女性DJです。DJ、そしてEDM……これらの言葉から想定されるのは「明るい」「朗らか」などですが、このアルバムでMijaが極めているのは「暗さ」です。

 まるで怨念を感じるようなメロディー、尾を引くようなサウンド……23分と尺は短いですが、かなりずっしりと染み込むようなアルバムです。

 

37 Snail Mail - Lush

 19歳のSSW、Snail Mailによる作品。心に染み渡るサウンドや、特徴のある歌唱が魅力の1枚。幼少期はParamoreAvril Lavigneなどに憧れていたSnail Mailによるローファイロック調の1枚です。

 特に“Pristine”や”Heat Wave”などが持つ雰囲気のようなものに引き込まれて、このアルバムを好きになっていきました。

 

36 MNEK – Language

 Beyoncé、Madonna、Dua Lipaなどのヒットシングルを担当してきたMNEK。その名・裏方が初めて自身の姿を見せた、ような作品がこのアルバムです。

 自分の名前の間違えを紹介するユニークな自虐ではじまるこのアルバムは、MNEKが今までソングライトで見せてきたR&B的センスとファルセットを駆使した美しいメロディーが融合した1枚です。Hailee Steinfeldを迎えたポップな“Colour”や、リズミカルな”Tongue”や“Girlfriend”など、親しみやすい曲が並ぶと同時に、アルバム全体でも緩急がついていて、まとまりも良いと感じました。

 

 

35 RIN – Planet Megatron

 ドイツのラッパー。こもったような歌声と跳ねるようなトラックが融合し、なかなかクセになるような曲が並んでいます。特に”Dior 2001”はドイツでシングル4位に入るヒットを記録しました。

 ドイツは同じ言語圏が少ないためか、海外にはそこまで広まらない(オーストリアやスイスくらい)ので、必然的に世界的な注目度は低めになりますが、ドイツ国内では様々なアーティストが盛り上がりを見せています。アメリカと同様、昨今のドイツではラップの人気がかなり高く、ストリーミングでラップのアルバム曲郡が上位を独占するような現象が多く発生しています。

 ドイツの音楽市場規模はアメリカ、日本に次ぐ3位。そんな「世界3位」のドイツから生まれた、なかなか面白いアルバムだったと思います。

 

34 Kanye West - ye

 Kanye Westは今年「目立ちました」 Twitterを再開したKanye Westはツイートを連発。今も絶えずツイートをしているので、気づいたら自分のタイムラインが地球儀だらけになることも多いでしょう(今のカニエのTwitterのアイコンが地球儀)

 Kanye Westは今年音楽のリリースも積極的でした。Pusha T~Kanye自身~Kids See Ghosts~NAS~Tenaya Taylorと自身が関わったアルバムを5連続でリリースし、それらのアルバムはストリーミングで多くの再生を記録し、商業的に成功を収めました。

 またそれらのアルバムが全て7曲で短めの構成だったことや、ほかPusha Tのビーフなどが話題となり、このシリーズは商業以外の側面でも注目を集めることに成功しました。

 これだけ注目を集めたKanye Westですが、そんな彼のアルバム”ye”はやや影が薄かった印象があります。Kanye Westは常に批評メディアから高い評価を受け続けていましたが、今回のアルバムはベストリスト等にほぼ掲載されず。これらのリストではKids See GhostsやPusha Tの影に隠れているのです。

 商業的には最初の週の注目度は高かったですが、長くは続かず。リリース週はアルバム曲全てがHot 100のトップ40に入っていたのですが、これらの曲は長くても10週程度でチャートを外れています。

 

 個人的にはこのアルバムに関して、彼らしい大胆な展開や壮大なメロディー展開が見られて非常に楽しむことができました。しかし、7曲で30分未満という構成はこのアルバムには合っていないように思いました。どこかアルバムが焦っているような気がして、アルバムを通して「物足りなさ」のようなものがあるのもまた事実なのです。

 

33 Tomm¥ €A$H - €¥$

 エストニアのラッパー。曲の多くにPC Musicの面々が関与しており、純粋なラップというよりは、かなりオルタナティブなラップという側面が強いと思います。ややポップスに近い面もあります。

 その実験的なビートと、それを巧みに乗りこなすTomm¥ €A$Hのラップが魅力な1枚です。冒頭で「ピーパッパパラッパ」と叫び、ユーロビートにも近いプロダクションが特徴的な“X-Ray”が最もインパクトのある1曲です。feat.では表記されていませんが、ChairliftのCaroline PolachekやCharli XCXも参加しています。

 

 

32 Courtney Barnett – Tell Me How You Really Feel

 Courtney Barnettが前作で見せたような、まったりしたサウンドと、うねるようなサウンド、そして時折見せる早口歌唱などの融合が魅力のアルバム。ファーストの“Pedestrian at Best”のような革新的なトラックこそ無いですが、曲の数々がそのサウンドを楽しめる1枚に仕上がっています。

 

31 Pusha T – DAYTONA

 このアルバムで人々の関心を大きく集めたのはDrakeとのビーフでした。話題は様々に及び、アンサーとそれに対するさらなるアンサー……など5月6月あたりはこの2人の話題で盛り上がっていました。

 しかし私がこのアルバムで気に入っているのはPusha Tの鋭いラップとサウンドプロダクションです。このアルバムはほかのKanye Westシリーズと同様に7曲30分未満と短い構成ですが、Pusha Tの切れ味が細部まで染み渡り、短い時間でも確かなインパクトが残ります。

 ビーフがこのアルバムを盛り上げることに寄与したのは間違いありませんが、このアルバムの純粋な質が高かったことも見逃せません。

 

 

30 Years & Years – Palo Santo

 Years & Yearsによるセクシーさが際立つポップスアルバム。セクシーな“Sanctify”ではじまるこのアルバムには、荘厳な佇まいを持つアルバム表題曲”Palo Santo”や、このアルバムからの一番のヒットで接しやすいポップスの“If You’re Over Me”など多様なトラックが収録されています。それを、Years & Yearsが持つポップセンスがまとめあげています。

 ちなみに、このアルバムは今回選出したアルバムのなかで唯一Apple Musicで曲名がカタカナ表記されています と思ったけどカニエもだった……

(後にKacey Musgravesも目をつけられて?曲名がカタカナになっています)

 

29 Lil Baby – Harder Than Ever

 今年一番「トレンド」だったラッパー、Lil Baby。Drakeとの“Yes Indeed”で注目を集めた直後、この”Harder Than Ever”をリリース。その後リリースしたGunnaとのジョイント“Drip Harder”、そして新ミックステープ”Street Gossip”も注目を集めて大成功を収めました。

 ヒットシングル“Yes Indeed”とともに、彼がブレイクするきかっけを作り上げたのはこのアルバムだと思います。Tay KeithやWheezyなど今年大人気だったプロデューサーも参加したこのアルバムはキャッチーで中毒性のある曲が並んでいます。

 特に盟友GunnaとLil Babyが交互にヴァースを担当した後、Lil Uzi Vertが力強く〆る”Life Goes On”は個人的に再生数が伸びた1曲でした。

 

28 Denzel Curry – TA13OO

  いわば「サウンドクラウド発」と称されるラッパー、Denzel Curryによるデビュー作。ダークな雰囲気をまとった作品はどの曲も粒ぞろいで魅力があります。

 「サウンドクラウド発」の系統のラッパーは主に親しみやすいトラックをきっかけにブレイクすることが多いですが、このアルバムは親しみやすいというよりはアルバム内の雰囲気が重視されていて「アルバムアーティスト」といった様子があります。出自ばかりに気を取られては仕方ないですが、(メインストリームでの)ブレイク前のラッパーがこれだけアルバムを作り込んだことに私は面白さを感じたのです。

 アルバムではGoldlink、J.I.D.のほか、密かにBillie Eilishも参加しています(“SIRENS Z1RENZ”)。

 

27 Cosha – R.I.P. Bonzai

 かつてBonzaiの名前で知られていたR&Bシンガーが、改名をきっかけにリリースしたアルバム。BonzaiをR.I.P.しているのはそういう理由です。

 Coshaはもともとプロデューサーとの関係が強く、今までMura Masaそして今年はNile Rodgers & Chicとも共演を果たしています。このアルバムでも同様にプロデューサー陣が充実しており、そのMura MasaやPC MusicのDanny L Harle、さらには元Vampire WeekendのRostamが参加。

 その彼らが織りなすユニークで魅力あるビートと、Coshaの歌声の融合を楽しめる1枚です。

 

 

26 U.S. Girls – In a Poem Unlimited

 サイケ~インディーポップを得意とするプロジェクト、U.S. Girlsによるアルバム。「オルタナティブ」に分類されることもありますが、個人的にはポップスリスナーとも相性の良いアルバムだと感じました。

 私がこのアルバムを聞いたきっかけは「今年ポップスで良かったのはRae Morris、U.S. Girls、Kali Uchisだった」というAlbum of the Yearへの書き込みでした。

 スローで声に加工がかかる冒頭トラック“Velvet 4 Sale”や、ポップさを伴ったバンガー”M.A.H.”などがアルバムのハイライトだと思います。

 

25 Joji – BALLADS 1

 「関西人は哀愁的なんですよきっと、浪漫ですよ!いやウチは三重やけど。」 これはこのアルバムに収録されているシングル“Slow Dancing in the Dark”についてのMitskiによるコメントです。三重って関西じゃないの!?というのはさておき、この音楽を聞いて「関西」というワードが出てきたことは非常に興味深いです。

 Jojiは日本とオーストラリアの両親のもとに生まれ、日本で育ったシンガー。高校ぐらいまでは日本に住んでいたようですが、後に北米に移住。そして音楽キャリアを開始しました。 

 アルバムではこの曲をはじめとした哀愁的な雰囲気のナンバーが並び、リスナーを物寂しげなムードへ誘います。

 この作品はUSのアルバムチャートで3位に輝きました。日本人としては史上最高位の成績です。日本人がここまでチャートで躍進するとは快挙です。それも「関西」という自身のバックボーンの魅力も反映されたというのは興味深いです。

 

24 Bebe Rexha – Expectations

 “Meant to Be”のシンガーがグラミーの新人賞候補に選ばれたぞ!実際にそのような意見を私が見たわけではないですが、Bebe Rexhaの経歴や選ばれる時期から見て、そのように考えている人はある程度いるのでは?と考えています。Bebe Rexhaは客演やソングライトのヒット歴がいくつかありますが、自身の曲で大きくヒットしたのはこの曲が初で、この曲のヒットを期にアルバムを出したので、そう捉えるのがむしろ「自然」なのかもしれません。

 しかし私はこのBebe Rexhaを前から認知していました。そしてなぜアルバムを出さないか?と気になっていました。自身がヒットを出さなかったからだと思います。

 Bebe Rexhaはヒットシングルを出すためにいろんなジャンルを組み合わせるなどして試行錯誤を繰り返していました。その一環で出たのがカントリーを組み合わせた“Meant to Be”なのだと思います。では、このアルバムも様々なジャンルが組み合わさったポップアルバムなのでしょうか? いいえ、違います。一貫してBebe Rexhaのボーカルを味わうために設計されたサウンドが続き、「アルバム」という単位で楽しむことができる作品です。

 このアルバムは……苦悩の試行錯誤の末に生まれた「信念」なのです。

 

 

23 Cardi B – Invasion of Privacy

 期待度MAX。“Bodak Yellow”はHot 100で首位を獲得しメインストリームで注目を集めただけでなく、Pitchforkが選ぶ2017年のベストソングにも選定。新星の女性ラッパーのデビュー作にかかる期待はとてつもなく高くなっていました。

 そんな高いハードルがあったこのアルバムですが、商業的にも批評的にも成功を集めます。チャートではアルバム1位を無事獲得しただけではなく、ロングヒットにもなり年間チャートの6位にランクイン。さらに批評まとめサイトAlbum of the Yearが集計する全サイト合算リストでは5位にもランクインしたのです!

 ゲストに食われ気味の曲もありますが、そのゲストの力も借りつつ、商業的・批評的、両方の成功を果たすだけの説得力があるアルバムに仕上がっていると思います。

 

 

22 Christine and the Queens – Chris

 フランス出身のシンガー、Christine and the Queens。2016年の英語版シングル“Titled”のイギリスでのヒットなどによって英語圏でも注目を集めるようになりました。

 英語版とフランス版が同時に収録されているこのアルバムは、より広い世界を意識し、スケールアップしています。ファンクミュージシャンのDâm-Funkを迎えたクールな“Girlfriend”を先行曲に据える一方、”Doesn’t Matter”などの親しみやすいポップスも完備。その結果、評論・商業(イギリス3位、フランス1位など)の両方での成功を掴みました。ポップスのリスナーもインディーのリスナーにも愛される、そんな1枚だと思います。

 

21 Sophie – OIL OF EVERY PEARL’S UN-INSIDERS

 今までSophieは謎の存在でした。私は2016年に彼の公演に行きました。その激しいビートを生で聞いて、その狂気を十分に味わいました。しかし、暗かったこともありよく顔は見えませんでした。その当時はあまりインターネットにも彼(?)の写真は上がっておらず、まさに「覆面のプロデューサー」のような印象でした。

 しかし、今年アルバムをリリースするにあたって徐々に写真を上げるようになります。そしてその風貌から、メディアでSophieを報じる時の呼称は「He=彼」から、「She=彼女」に変わりました。

 かつては姿が謎に包まれていたSophieですが、今回のアルバムでは自身の写真をジャケに採用し、「自分とは何者か?」と大々的に紹介するアルバムだったと思います。Sophieが昔から武器とするバキバキビートのほか、バラードなどの側面も見せています。

 

20 Vince Staples – FM!

 言うなれば「スマート」なアルバム。22分という短い尺のアルバムは、曲と曲の間も詰められており、ひたすらシュッとしています。

 アルバム内ではfeat.の表記が無いものの、客演はTy Dolla $ign、E-40、Jay Rock、Kehlaniと数多く、アルバムを彩っています。

 短いアルバムですが、そのゲストの多様さ、1曲1曲の濃さ、Interludeなどの細かい工夫などもあり十分に濃いアルバムだったと思います。

 メインストリームでは曲数の多い「ファット」なラップアルバムもありますが、これはひたすらにシュッとしています。

 

19 Let’s Eat Grandma – I’m All Ears

 イギリスの2人組プロジェクトLet’s Eat Grandmaによる2枚目のアルバム。インディーポップに分類される作品で、そのサウンドプロダクションが特徴的なアルバムです。

 個人的なハイライトはSophieがプロデュースした“Hot Pink”。最大限にいびつさを引き出したインパクトのある1曲です。他にも”Falling Into Me”がアルバム内でアンセムとしての地位を確立しています。

 

18 Allie X – Super Sunset

 カナダのポップシンガー、Allie Xによるセカンドアルバム。8曲で22分と短いですが、どれも粒ぞろいのポップチューンが揃っています。

 “Not Sot Bad in LA”や”Science”のような淋しげでサッドなナンバーもあれば、明るく開けた“Little Things”や”Girl of the Year”などもあります。

 彼女の持つポップセンスがうまく表れている作品だと感じました。

 

17 Kylie Minogue – Golden

 ポップスの大ベテラン、Kylie Minogueによるアルバム。「14」枚目のアルバム、というリリースしてきたアルバムの多さが、いかにキャリアが長いかを物語っています。

 私ははじめてKylie Minogueを知った時、その曲のキャッチーさ・そしてビデオでのなんとなくの雰囲気から、かなり若いシンガーだと思い、実際の年齢やキャリアを知った時はかなり驚きました。

 仮に、その時の私にこのアルバムを聞かせたとしても似たように若いシンガーと勘違いするような気がします。自身の持つポップス性、そしてカントリーという新要素をまとったこのアルバムはみずみずしいです。

 

16 Kids See Ghosts – Kids See Ghosts

 短いながらもうまく威力を発揮した1枚です。カニエシリーズの個人的なベストです。2010年代のアーティストに大きく影響を与えたKid CudiのハミングにKanye Westのプロダクションが効果的に融合した1枚です。

 カニエシリーズに共通する7曲・30分未満という構成に一番フィットしていたのはこの作品だったかと思います。

 ちなみに“4 th Dimension”の客演としてクレジットされたLouis Primaは57年ぶりにHot 100に登場。これは史上最も長い「ぶり」です。彼らが幅広い引き出しを持っていることが伺えるエピソードの一つだと思っています。

 

15 CupcakKe – Ephorize

 個性的なキャラクター、そしてまくしたてるような力強いラップ……CupcakKeは様々な武器を持ち合わせて登場し、今年脚光を浴びました。

 そのキャラを前面に押し出した“Duck Duck Goose”、そしてLGBTアンセムと言われている”Crayons”、力強いラップが際立つ“Cinnamon Toast Crunch”など魅力ある曲が並んでいます。

 どのようなプロデューサーやアーティストとの交流を進めていくのか……などの、今後彼女がどのような方向性でキャリアを重ねていくのかが楽しみです。そしてその結果、彼女がこのキャラクターのままメインストリームへの侵攻を成功させたら、これ以上に最高なことは無いと思います。

 

14 Rae Morris – Someone Out There

 イギリスのシンガーRae Morrisの2枚目のアルバム。エレポップに分類され、親しみやすさとアルバムを通しての雰囲気が両立している作品です。

 ハイライトはアルバム表題曲の“Someone Out There”です。透き通った声が映えるこのバラードはアルバムの中で一番引き込まれる部分です。この曲以外でも、"Atletico (The Only One)"や”Do It”などの明るいエレポップ曲たちがアルバムを彩っています。

 

13 Rico Nasty – Nasty

 女性ラッパーRico Nastyによるミックステープ。力強いラップと、激しく、そしてユニークな(“Ice Cream”など)サウンドプロダクションが魅力の1枚です。

 メディアで多く取り上げられた“Countin’ Up”も魅力的な1曲ですが、個人的にインパクトが残ったのはBlocBoy JBとの”In the Air”でした。この曲はBlocBoy JBの相方、かつ今年大活躍だったプロデューサーTay Keithが参加。

 Tay Keithの他の曲のプロダクションとは少し違うロック寄りのアプローチが見られるこの曲は、Rico NastyやBlocBoy JBのパワフルなラップもあってかなり破壊力があります。例えるならば、昨年のKendrick Lamarの“HUMBLE.”や”DNA.”と似たような魅力があります。

 ここまでで紹介したCardi B、CupcakKe、そしてRico Nastyのほか今年はTierra Whackなど多くの女性ラッパーが注目を集めました。来年以降も女性ラッパーの飛躍に期待したいです。

 

12 Kacey Musgraves – Golden Hour

 このアルバムに対して最初抱いた感想は「これ、カントリーなの??」でした。そのジャンル分け説明の謎、そして多くの批評メディアによる高評価……このアルバムに対する「?」は溜まる一方でした。

 しかし再びこのアルバムに触れると、その魅力がようやく分かりました。たしかに私の想定した「カントリー」とは違ったのですが、そんなジャンル分けなど気にならないくらいとにかく美しく、研ぎ澄まされた世界がそこにはありました。メロディーと歌声が融合した美しいアルバムです。

 「?」のままで終わらず、聞き直して本当に良かったです。

 

11 Kali Uchis – Isolation

 コロンビア出身、アメリカ育ちのR&BシンガーKali Uchisのデビュー作。インディーロック界隈とR&Bの魅力が高い次元で融合した1枚です。

 Gorillaz、BadBadNotGood、Kevin Parkerなど豪華なゲストが参加したプロダクションはそれだけでも楽しむことができるもので、Kali Uchisの歌声をより引き立てています。そして同じくR&BシンガーのJorja Smithと共演した“Tyrant”も見どころの一つです。次世代のR&Bシンガー二人によって奏でられる雰囲気のある魅力的な1曲です。

 プロダクションとKali Uchisの才能あるボーカルが出会った、完成度が極めて高い1枚だと感じました。

 

10 Camila Cabello – Camila

f:id:djk2:20181230010638j:plain

 いよいよトップ10です。ここからはアルバムジャケを載せます。

 Camila Cabelloは元から目立つ存在だったのか、Fifth Harmonyを脱退前からいくつかソロでシングルに参加。脱退間際にリリースされた“Bad Things”はヒットし、ソロでの成功を予感させるものでした。その後リリースされた”Crying in the Club”や客演での“Know No Better”はアメリカでは成功しなかったものの、次の”Havana”はアメリカを含む世界各国で大成功。再びキャリア軌道に載せたのです。

 シングルにおける成功を受け、自然とアルバムへの期待も高まります。リリース前は客演としてEd Sheeran、Dua Lipa、Chance the Rapperなどの豪華ゲストの参加が一部で予想されていました。しかし蓋を開けてみるとゲストは“Havana”で参加したYoung Thugのみ。ゲストに頼らず、アルバムを成功させることを試みたのです。

 結果、アルバムは見事に1位を獲得。そして何よりも、ストリーミングで一定の数字(5700万再生)を記録したことが見事でした。これはゲストのいない“Havana”以外の曲も注目を集めたということを意味し、ゲストに頼らずアルバム全体が注目されたということなのです。

 アルバムは全体的に統一されたコンセプトを感じます。Camila Cabelloのキューバ系という出自を意識したサウンドR&B調の曲などこだわりを感じる曲が多かったです。

 自身の今後が全て決まるといっても過言ではないソロデビュー作で、自分の「意地」を貫き通し、ゲストに頼らないコンセプトある作風のアルバムを作り上げたCamila Cabelloの選択に拍手を送りたいと思います。

 

9 Metro Boomin – NOT ALL HEROES WEAR CAPES

f:id:djk2:20181230010706j:plain

 ラップにおける「タグ」とは。ラップの序盤でよく聞くフレーズってありませんか?例えば"Mustard on the beat, ho!"のような。これは、ラップの音を作るプロデューサーが自己紹介のために入れているもので、これをある程度マスターすれば曲を聞くだけで、誰がこの曲を作ったのか?ということが分かるようになります。

 “If Young Metro don't trust you, I'm gon' shoot you”のタグ で紹介されるプロデューサー、Metro Boomin初のスタジオアルバムは、彼の持つダークな雰囲気を存分に楽しむことができるアルバムです。Interludeなども駆使し、曲と曲の間を丁寧につなぎ合わせ、途切れることなくMetro Boominのイズムにハマることができます。

 このアルバムの最大の見所と感じたのは”Don’t Come Out the House”の終盤。ここでは

If Young Metro don't trust you, I'm gon' shoot you

Tay Keith, fuck these niggas up

 とプロデューサーの名前が二人紹介されています。ここ2年ぐらいのラップのトレンドを作り上げた2人の邂逅……!そこに心を打たれたのです。

 

8 Ariana Grande – Sweetener

f:id:djk2:20181230010719j:plain

 Ariana Grandeは女性ポップスシンガーでいま一番調子が良いアーティストではないか?私はアルバムのリリース前から少し感じていました。

 ポップスのシンガー(特に女性)は、アメリカにおいては一般的にあまりストリーミングを得意にはしていないのですが、彼女の場合は“no tears left to cry”、”God is a woman”と2シングル連続である程度ストリーミングのランキング上位に入り、結果を残しました。

 そしてさらにアルバムではストリーミングで大きく注目を集め、女性のポップシンガーとしては歴代最多の1億2760万再生(初週、アメリカでの成績)を記録しました。これに次いで多いのがCamila Cabelloの5700万再生なので、いかにストリーミングでの数字が抜けているかが分かります。

 このエピソードから何を言いたいかというと、ラップを中心に聞いているストリーミングのリスナーを振り向かせ高い再生を記録するだけの魅力が、このアルバムにはあるということです。近年のポップス傾向を意識した、“God is a woman”に見られるような早い歌いまわしとポップセンスを融合は見事だったと思います。

 そんな彼女には唯一Hot 100のシングル1位だけがありませんでしたが、アルバムの後“thank u, next”で首位を獲得。このHot 100首位獲りはアルバム”Sweetener”の成功から導かれたもの、私はそう考えています。

 

7 Tove Styrke – Sway

f:id:djk2:20181230010730p:plain

 スウェーデンのシンガーによる3枚目のアルバム。そのキュートな歌声を活かしたポップスが並んだ1枚です。表題曲で、ベースラインが気持ち良いキャッチーな“Sway”、早口の歌唱が際立つ”Changed My Mind”、オートチューンも駆使した感傷的なチューン“I Lied”など多種多様なポップスが並んでいます。個性のある、傑作シングルが並ぶポップスの名作です。

 また私の昨年のアルバム1位のLordeとの関係も親しく、アルバムではLiabilityのアレンジも収録されています。彼女はLordeのツアーに同行し、仲の良さそうな様子を見せました。

 ちなみにこのアルバムはリリース時には無かった“Vibe”という曲が7曲目に追加されるというストリーミング時代らしい「修正」が行われています。

 

 

6 Kim Petras – Turn Off the Lights, Pt.1

f:id:djk2:20181230010742j:plain

 昨年から今年にかけて、「ポップス中のポップス」を数多く「シングル単位」でリリースしていたKim Petras。彼女はまだ「アルバム」をリリースしていないのですが、それに先駆け今年10月にハロウィンをテーマとしたミックステープをリリースしました。

 このミックステープで驚かされたのはKim Petrasの幅の広さです。何に驚いたかというと(ほぼ)声なしトラックの存在です。この作品には従来と同じくポップ性の高い曲も大きく並んでいます。しかし、そこにInterludeのような形でまるでJusticeのような曲が挟まっていたのです!

 「ポップス中のポップス」でリスナーを魅了させる一方、こんなインディー的な引き出しまで持っていたとは。本当に今年はKim Petrasの才能に驚かされっぱなしでした。来年にリリースされるかもしれないフルアルバムにも大いに期待しています。

 

5 MGMT – Little Dark Age

f:id:djk2:20181230010803j:plain

 トップ5、とかなり上位まで来ました。個人的には5位~1位のアルバムは順不同、といった感じでこの5つはどれを1位にするか結構迷いました。

 昨年終盤にリリースされた“Little Dark Age”、そして今年はじめにリリースされた”Hand It Over”。それぞれ違う魅力を持った先行曲がリリースされ、私の中でMGMTへのアルバムの期待感が高まっていきました。その期待を上回り、この作品はポップで、かつダークでサイケな一面も持ち合わせる傑作だったと思います。

 このアルバムは私にとって「リアルタイムで」聞くはじめてのMGMTの作品でした。私はそもそも音楽を聞き始めたのが遅いうえに、しっかりと情報を追って音楽を聞くようにする習慣が付き始めたのは2014年あたりからだったので、これがある意味「初MGMT」でした。(音楽チャートを見始めたのもその時期くらいからです) 

 初めてだったからこそ、気づくことのできた魅力もあったのかもしれません。多くの人にとって、MGMTとは“Kids”や”Time to Pretend”の“Oracular Spectacular”で、それを超えるのは簡単ではないと思います。しかし私のような新しいリスナーにとっては、とても魅力のあるアルバムであった、ということをここで伝えたいと思います。

 

 

4 Kero Kero Bonito – Time ‘N’ Place

f:id:djk2:20181230010816j:plain

 サラ・ミドリ・ボニート。Kero Kero Bonitoのボーカル。日本人とイギリス人の両親のもとに生まれた彼女は幼少期を北海道で過ごしました。今年、あいにく通っていた小学校が閉校になってしまったようですが……

 そんな出自を活かして、日本語と英語を織り交ぜた歌詞がKero Kero Bonitoの最大の特徴でした。最大のヒット“Flamingo”や、前のアルバム”Bonito Generation”ではその歌詞が際立つポップなサウンドが特徴的でした。

 しかし、そんな最大の特徴を変えて今年バンドは新しい路線に挑戦します。それはローファイ+ポップパンクの融合です。この路線変更は少し驚きだったのですが、それはサウンドの面白さとポップさが高い次元で融合した“Only Acting”を聞いた時に一気に期待へと代わります。この曲のリリースで注目を集めたのち、EPをリリース。そのEPも十分魅力的でしたが、10月にはフルアルバムもリリースしました。

 アルバムを通して、日本語歌詞は出てきませんが、新たに確立したアイデンティティー、「ローファイポップ・パンク」の魅力が十分に伝わってくる作品です。“Only Acting”を軸に魅力のあるポップスが並んでいます。新たに”Time Today”や“Dear Future Self”などまた一味違う曲も追加されています。

 Pitchforkはこのアルバムを「試みは面白いけれど、質があまり伴っていない」のような評価しましたが、私は「新しい試みをしているし、魅力が十分にあるアルバム」だと感じました。

 

3 Travis Scott – Astroworld

f:id:djk2:20181230010833j:plain

 Travis Scottは前アルバムのリリースは2016年です。つまりこのアルバムはおよそ2年を空けてリリースされたアルバムということになります。2年を空けて……これがバンドやポップシンガーならばごく普通の数字ですが、ラッパーでは非常に珍しいです。

 Drakeが何かしらの作品を毎年リリースしているように、ラップは昨今ストリーミングの流れをうまく活かしつつ、リリースを多くすることによって成功を集めてきました。そこでは客演やプロデューサーなど新しい魅力が次々に登場し、リスナーを飽きさせません。このような環境においては、ラッパーは自身の存在感を消さないためには続々と作品をリリースすることが解決法の一つになります。

 このような流れで2年アルバムを空けることは勇気がいることなのです。これを防ぐためにミックステープやEPなどで「繋ぐ」ラッパーも多いですが、Travis Scottはそれもあまりしませんでした。他とのコラボは多かったですが(Quavoとのジョイントアルバムなど)

 それだけこのアルバムにかける期待が高かったということでしょう。そんな期待をかけ、丹念に作り上げたアルバムは大成功を集めます。

 このアルバムはセールス、ストリーミングともに凄まじい人気を誇り、シングルDLも合わせると初週のみで53.7万枚もの売上を記録。これはDrakeの“Scorpion”に次ぐ今年2番目の数字です。さらには収録曲の”SICKO MODE”はシングル1位を獲得。アルバム、シングルの両方で抜群の結果を残したのです。

 Travis Scottの地元にあった遊園地をモチーフにしたこのアルバムは、最初から最後まで信念のようなものが感じられます。Kevin Parker、Stevie Wonder、Thundercatなどラップ関連以外のアーティストも招聘して作られたアルバムは細部までこだわりが感じられます。2年分の期待を余裕で上回ったこの作品は、「アルバム」を作り込む決断が成功だったことを意味していると思います。

 

2 Poppy – Am I A Girl?

f:id:djk2:20181230010844j:plain

 皆さんはPoppyというシンガーを知っていますか?私の予想では、この記事を読んでいる方の6割くらいはPoppyを知らないと思っています。そして残りの4割のうち2割は、「Grimesと揉めた人」ぐらいの認識だと思います。残りの2割は……アルバムを聞いたかもしれません。そして「最後の展開に驚いた」「最後が衝撃だった」のような感想を抱いていると思います。

 私もこのアルバムを最初聞いた時は驚きました。なんかメチャクチャな展開で正直「引いた」部分もありました。しかし再生回数を重ねていくうちに、自然とアルバムの最後のほう、詳しく言えば最後の曲“X”の”Take Me Back To the Place Where We Began”という歌詞に文字通り「帰りたくなっていく」のです。そして次第にこのアルバムの再生数も増えていきました。

 このアルバムはかなり破壊的です。その最後あたりの展開は「やっつけ」感があるのも否定はしません。しかしそれと同時にこの作品は細部までこだわりが見られるポップアルバムでもあると感じます。その高い質と、破壊的な展開から、このアルバムを聴くたびに、「もしかしたらこのアルバムは後にポップスに大きく変えるアルバムになるのでは?」そんな期待感が浮かび上がるのです。

 しかし実際には、このアルバムは商業的にも批評的にも「無風」な1枚でほとんど注目を集めていません。正直個人レベルでもこのアルバムをべストリストに入れている人をほぼ見ません。

 私のこのアルバムに期待しすぎなのかもしれません。「無風」の評価に終わるにはもったいないアルバムだという確信は持てます。これを期にPoppyを知らなかった人も、Grimesとの揉め事しか知らなかった人も、そして衝撃のあまり腰が引けて再生回数が1で止まった人も、これが一体どのようなアルバムなのか?ということをチェックしてみてほしいです。

 

1 Troye Sivan – Bloom

f:id:djk2:20181230010901j:plain

 Troye Sivanは美しいです。まず身も蓋もない話をすると、その見た目や佇まいがとても美しいです。私はTroye SivanがTwitterなどで自撮りを上げるたびにそれを楽しく閲覧し、スワイプして拡大しています。

 そして、それ以上に彼の音楽は美しいです。2015年のデビューアルバム、“Blue Neighborhood”から既に完成されたドリームポップを披露していた彼ですが、今回のアルバムではさらに磨きがかかりこの上ない作品に。特に個人的に気に入ったのは”My My My!~“The Good Side”~”Bloom”までの流れです。ここでは緩急をうまく使い分けることでリスナーをアルバムの雰囲気へ大いに引き込みます。

 そんな私にとって美しく、完璧な存在であるTroye Sivanにも障壁は存在します。それは表題曲“Bloom”のリリック問題です。

 Pitchforkの記事によると、インタビューなどからこの曲は「ゲイセックスをテーマにした曲だ」ということが判明すると、リリース前からその「テーマ」にのみ興味が移り、曲とは少し違う部分で盛り上がりを見せたようです。そして本人はテレビでこの曲を披露するなどしたものの、レーベル側がラジオで流すのを控えてしまい、ヒットのポテンシャルがある曲ではあるが、機会に恵まれなかったようです。

 

 ここまで紹介したアーティストの中でも、実は何人かLGBTに該当するアーティストもいます。しかし個人的には曲を聞く時にアーティストがLGBTなのかストレートなのかはあまり気にしておらず、曲を聞いてから「この人はLGBTだったんだ!へー」と後で気づくことも多く、(曲の評価とバックグランドは別問題と考えているからかもしれません)そういうことから、あまり「このシンガーはバイセクシュアルで……」のようなな説明はあまりしてきませんでした。

 このアルバムに関してもそうです、このアルバムがゲイのアーティストによる作品であっても、そうでなくても完成度が高いことは変わりないと思うのです。(かといってそのアーティストのバックグランドを無視しすぎると、その歌詞を軽視していることにもなるので難しい面もありますが)

 しかしこんな完璧なアルバムにすら障壁があることには驚き、このエピソードを掲載しました。そんな障壁を乗り越えて、これからも末永く語り継がれるようなアルバムになってほしいです。

 

 

☆☆おまけ☆☆

 

・EP賞

 アルバムとは別枠でEPもいくつか紹介したいと思います。

 

・King Princess – Make My Bed

 今年日本ではKing & Princ”e”というグループが大ブレイクしたそうです。他にもKing of Prismというアニメもあるようで、日本では多くの「キンプリ」が存在するようです。

 しかし今年、私を魅了した「キンプリ」はこの1998年生まれのシンガー、King Princessでした。今年シングル”1950”でブレイクした後、EPをリリース。このシンガーソングライター肌のポップシンガーによる作品です。

 このEPには入っていませんが、彼女は今年“Pussy is God”というユニークなタイトルのシングルもリリースしています。

 

・Young Thug – On The Rvn

 Young Thugは2018年着実に前進したと思います。“Havana”の客演で自身初のシングル1位を獲得。そして後の”This Is America”ではfeat.の表記は無いものの、一部ヴァースで声を担当し、この曲の首位獲得に貢献しました。

 さらにYoung Thugの影響が強く感じられるLil BabyやGunnaといったラッパーも大ブレイク。ちなみにGunnaはYoung Thugのレーベル所属です。

 そんなYoung Thugによる今年のEP“On the Rvn”です。Elton Johnをサンプリングし、「歌うYoung Thug」が見られるなど、なかなかの意欲作だと感じました。

 

・Raye – Side Tapes

 イギリスのR&B女子RayeのEP。Ashantiの"Always On Time"を引用した“Decline”や、甘いR&B調の”Confident”など、キュートなトラックが多く並んでいます。Mabel、Stefflon DonというイギリスR&B~ラップ界の同士を集めた“Cigarette”も注目のトラックです。

 6曲19分と短く、あまりアルバムの雰囲気には浸かりきれませんがRayeの持つセンスが十分に表れているアルバムだと思います。

 

・Hatchie – Sugar & Spice

 オーストラリアのドリームポップシンガー。表題曲“Sugar & Spice”など、EP内では壮大な世界観が広がっています。5曲で19分と短い作品ですが、曲のひとつひとつが壮大でパワーがあるので、物足りなさは感じず、かなり圧倒されます。

 この作品は初のEPで、アルバムはまだのようですが、アルバムリリースなど、今後の活動が楽しみなアーティストです!

 

・特別賞

・21 Savage – i am > i was

 

 選考が終わってから来た佳作です。豪華なゲストの「選び方」も注目ポイントの一つでしたが、それに加えて21 Savageの声が持つ魅力、そしてプロダクションが充実した作品だったと思います。i am > i wasのタイトルどおり、ここ1年でスケールアップした21 Savageが感じられます。

 

 

 

小話~年間ベストの2大テーマ+なぜ年間ベストを人々は選ぶのか?~

 

 細かいことでも考えることが好きな性格な私は、続々と発表される多種多様な年間ベストのリストを目の前に「どうして人々は年間ベスト」を作るのだろうということをいちいち考えていました。厄介な人間ですね💦

  年間ベストには2つのテーマがあると思います。それは「学習」と「主張」です。「学習」とは「この1年間何を見てきたか」を表現するか、ということです。

 例えば「ラップのメインストリーム流入を意識して見てきたので、今年はAriana GrandeやCardi Bは外せない……」や「批評サイトで情報を集めており、その影響力から○○は外せなかった……」など。年間ベストのリストとは、音楽に関する「世間」や「シーン」をどう理解したかを表明する場でもある、と私は考えたのです。(ただしこの「学習」のテーマをどこに置くかも一種の「主張」になり得ます。)

 そのうえで、「では自分はそれらのアルバムがどう捉えたのか?」という「主張」も重要な要素だと思います。これはいくら影響力があれども、自分が好きじゃないアルバムをベストアルバムに選出しても仕方がない、のようなことです。

 他人の影響や評判を気にして、自分の主張が無いリストならば、ベストアルバムの票をまとめるAlbum of the Yearのようなサイトを見れば良いや!となってしまいますし……(別にそういうリストが実際にあるわけでも無いのですが)

 個人的に年間ベストを見る楽しみは結局、「その人が何を考えているか」を見るということにあると思います。ある程度の「学習」のラインを守りつつも、同時にその人の「色」が強く見ることのできるリストが一番面白いと感じます。

 ちなみにメディアで一番これがうまいと感じるのはSPINです。自らの主張をしつつ、抑えるべきところはしっかりと抑えており、いつも楽しみにしています。

 

 あと感じたことはメディアと個人の年間ベストで「学習」と「主張」の重要性の比率が違うということです。メディアの年間ベストは多くの人によって見られ、影響力があるので、読者の正確な理解を促すために「学習」が重要になります。

 しかし一方で個人の作成する年間ベストは、あくまでも「個人」が作るということを理解して読まれているのであまり「学習」の重要度は下がると思います。むしろ、個人の作る年間ベストだからこそ出来ることを考えると、こちらでは「主張」が肝になると考えました。

 まあ、そんな小難しいことは考えずに普通に自分の好きな音楽を選ぶことが大切ですけどね!

 

 このような考えを踏まえ、私は「チャートマニア」として学習したことを活かしつつ、他のメディアで取り上げられていないようなアルバムも積極的に取り入れたランキングを作成しました。

(逆に世間の評価がバリバリ高いアルバムのうち、自分でそこまでピンと来なかったアルバムは、「他人に任せます」という考えのもとで、いくつか外しました、すいません💦💦)