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音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 2/16 見どころ 【ハーフタイムショーよりもゲーム内DJの効果?】

 

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 こんばんは。今週はスーパーボウルが集計期間内に開催され、ハーフタイムショーの効果がチャートに反映される週ですが、果たして……?? (あと更新が1日遅くてすいません)

 (画像はMarshmello ft. Bastille - Happier (Official Fortnite Music Video) - YouTube

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・ハーフタイムショーよりもゲーム内「仮想」DJ? Marshmelloの“Happier”が2位浮上、”Alone”が28位に再登場

・“Girls Like You”は10位にステイ。これでトップ10滞在が歴代最長タイの33週目に(”Shape of You”に並ぶ)

・21 Savageの”a lot”が12位へ浮上

・Billie Eilishの”bury a friend”が14位に

 

・今週のトップ10

      2月9日   R D S
- 1 Ariana Grande 7 rings 10 1 1
2 Marshmello & Bastille Happier 4 5 2
  3 Halsey Without Me 2 4 6
  4 Post Malone & Swae Lee Sunflower 7 3 3
- 5 Travis Scott SICKO MODE 8 8 5
  6 Panic! At the Disco High Hopes 1 10 27
  7 Ariana Grande thank u, next 3 16 13
  8 J. Cole MIDDLE CHILD - 17 4
- 9 Post Malone Wow. 18 9 9
- 10 Maroon 5 feat. Cardi B Girls Like You 6 6 20

R=Radio、D=Download、S=Streaming

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

◇96 Billie Eilish – ocean eyes

 Billie Eilishの“Ocean Eyes”が96位に再登場。新曲”bury a friend”に誘発される形で他の曲もストリーミングで再注目されています。

※この動向について補足記事を書きました!

 

☆95 Kelsea Ballerini – Miss Me More

 Kelsea Balleriniの“Miss Me More”が95位に登場。今週カントリー系ラジオで?位。カントリー曲ながらもややリズミカルでポップ成分の強い曲です。

 Kelsea Balleriniはこれで7曲目のHot 100入り。Kelsea Balleriniは2017年のグラミー新人候補にノミネートされており、今週52位の“This Feeling”でタッグを組んでいるThe Chainsmokersとはその新人候補の「同期」です。(実際に受賞したのはChance the Rapper)

 

◇64 Mustard & Migos – Pure Water

 (DJ)MustardとMigosの“Pure Water”が64位に再登場。最初に登場した時よりも高い順位を記録しています。このまま勢いに乗って順位を伸ばせるでしょうか?

 2週前にHot 100入りした時よりもYouTubeSpotifyの成績が伸びています。(Apple Musicは上位を“キープ”)

 

☆56 Gunna – One Call

 Gunnaの“One Call”が56位に登場。この曲は来週末にリリースのアルバム”Drip or Drown 2”からの先行曲。この作品は「デビュー・スタジオアルバム」という形でリリースされる模様です。(それまでの作品は“ミックステープ”)

 この曲は主にApple Musicで人気。リリース以降、再生数はトップ10付近を推移しています。ほかSpotifyでも38位ですが、YouTubeではまだ圏外です。

 

▽41 Khalid & Noramani – Love Lies

 今週51週目とロングヒットの“Love Lies”。今週ポップ系ラジオのチャートでは45週目を迎え、このラジオチャートでは歴代最長タイの滞在となりました。

45週 Khalid & Normani – Love Lies

45週 Dua Lipa – New Rules

42週 Lauv – I Like Me Better

41週 Edwin McCain – I’ll Be

 

 とこのように最近の曲が多いです。ポップ系ラジオチャートにもリカレントルールが存在します(21週目以降、15位以下に落ちると外れる) リカレントの対象になる順位が高めなので、このチャートで長く残るには純粋にロングヒットということも必要ですが、「遅咲き」ということも重要です。

 

 そんなロングヒットで滞在1年が間近な“Love Lies”ですが、来週チャートから姿を消す可能性もあります。来週のチャートではAriana Grandeのアルバム”thank u, next”のリリースが反映されるのですが、このアルバムの収録曲が軒並みストリーミングで大人気のため、これらの曲がHot 100上位に多くランクインする可能性が高いです。

 この作品の収録曲は12曲。既に上位にランクインしている”7 rings”と”thank u, next”を除くと10曲が上位に新たに登場するということになり、その分上位の「枠」が埋まり、下位の曲は10位程度順位が「押し下がる」可能性があるのです。

 10枠分埋まるというと、来週チャートを外れる可能性があるのは主にリカレントが適用される41位-50位の曲。

 これに当てはまるのはBazziの“Beautiful”(47位)、Dan + Shayの”Speechless”(44位)、そしてKhalid + Normaniの“Love Lies”(41位)です。ほか40位の”Baby Shark”、39位の“I Like It”、38位の”Trip”あたりも外れる可能性があります。

 果たしてロングヒットの“Love Lies”はArianaのアルバム曲ラッシュを乗り越え、チャート滞在1年を迎えることが出来るでしょうか?仮に来週チャートに残っても、再来週は確実にチャートからは外れてしまいますが……

 

◇おさらい リカレントルールについて◇

21週目以降:51位以下に落ちるとチャートから外れる

53週目以降:26位以下に落ちるとチャートから外れる

ただし、ピークを更新する見込みがある曲は例外でチャートに残る場合もある

 

 

△32 A Boogie Wit da Hoodie – Look Back At It

 目立ったリリースが無かった今週、アルバムチャート1位に返り咲いたA Boogie Wit da Hoodie。ストリーミングで人気のアルバムは2週目以降も一気に数字を落とさない(DLなどのセールスと比べて、2週目以降も繰り返し再生できるので)ため、このような注目リリースが無い週は少し前のアルバムが1位に返り咲くことがあるのです。

 このアルバムは今週、総合売上47,000のうち45,000をストリーミングから計上。アルバムの純売上は1,000未満で、自身が持つ1位アルバムの歴代最低「純売上」の数値を再び更新したようです。(※ストリーミングなどを含む「総合売上」は最低数値ではない)

 そのアルバムの収録曲では“Look Back At It”が好調。最近ではシングル化され、ラジオでもかかり始めているようです。ビデオも新しく公開されています。

 

◇28 Marshmello – Alone

 MarshmelloがスマホNintendo Switch対応ゲーム、“Fortnite”上での「仮想」DJイベントを行いました。世界で1000万人もの参加したといわれるこのイベントはチャートに大きな効果を与え、Marshmelloの各シングルがDLやストリーミングで再浮上を果たしました。

 中でも大きなインパクトがあったのは“Alone”。この曲は2016年末にはじめてチャート入りしピーク60位、チャート滞在10週という成績を残しましたが、約2年の歳月を経てその当時よりも大幅に高い順位でHot 100再登場を成し遂げたのです!

 数字の伸びが際立ったのはYouTube。先週までは週間再生数が101位以下でしたが、今週一気に6位までジャンプアップしています。

 このDJの様子をまとめたEP、“Fortnite Extended Set”アルバムチャートの45位に登場しています。

 

 詳しくは後述しますが、今週スーパーボウルがチャートに与えた影響は限定的でした。(披露された“Girls Like You”や”SICKO MODE”は順位が変動しなかった) それぞれの音楽の好みの細分化や、ストリーミングのレコメンド機能などで自ら音楽を発掘しやすくなったことなどから、このような「多くの人に向けた音楽イベント」の影響力が低下している印象が個人的にあったので、ここまで仮想DJイベントの影響力があるとは意外でした。このような多くの人に向けたプロモーションイベントも開発の余地があるのかもしれません。

 あとはマスクさえかぶればMarshmelloになれるというキャラ設定もこのイベントとの親和性があります。2次元化も楽に行えます。

 

 ちなみにこの“Fortnite”はゲーム内でシュートダンスの動きを”Hype”と称し、まるでオリジナルかのように扱ったため、シュートダンスの考案者であるBlocBoy JBはゲーム会社を訴えるとの報道もあります。良くも悪くも音楽との関わりが深いゲームなようです

 

△18 Khalid – Better

 Khalidの“Better”が23位→18位と上昇。今週リズミック系で1位など、ラジオでの好調が際立ちます。

 この曲は滞在21週目で、他の曲ならばピークを過ぎていることも多いのですが、まだまだ伸びしろがありそうです。ほかKhalidが参加するbenny blanco、Halseyとの“Eastside”も30週目ながらも現在ラジオがよく伸びており、ロングヒット中。

 先に述べた51週目の“Love Lies”など、Khalidが参加する曲はロングヒットになりやすい傾向があります。(幅広い系統のラジオと相性が良いからでしょうか!)

 

△14 Billie Eilish – bury a friend

 Billie Eilishの”bury a friend”が14位へジャンプアップ。先週はリリースからの集計期間が短かったですが、今週は7日分フルで集計されたため順位を伸ばしました。

 この曲はストリーミングで全般的に人気。Apple Musicではこの週12位前後、YouTubeでは今週9位、そしてSpotifyでは今週3位でした。ほかDLでも今週7位と優秀な成績を収めています。

 ストリーミングでは人気が高く、過去曲にも注目が集まるBillie Eilishですが、ラジオの対応は非常に遅れています。現在ラジオ系のチャートに登場した曲は”you should see me in a crown”のみで、この曲も中規模のオルタナティブロック系ラジオでしかかかっていません。(最も大規模なのはポップ系ラジオ。Billie Eilishの曲はかけるならこの系統だと思いますが、まだかかっていません)3月のアルバムリリース頃にはラジオでも人気が出るでしょうか?

 

△12 21 Savage (feat. J. Cole) – a lot

 出身がイギリスであったことが発覚し、不法入国と判定され逮捕されるという騒動があった21 Savage。彼は今までアトランタ出身であったとされてきましたが、実際はアトランタに「移住してきた」ということだったようです。

 これに関して「なんで嘘をついたんだ!偽物!」と評する人はあまり見受けられず、それよりもこれまでの功績が評価され多くの場所で#free21が見られました。

 例えば、SpotifyのプレイリストRapCaviarはサムネイルを#free21とし、彼の楽曲”a lot”をリストの先頭に持ってきました。Apple MusicのプレイリストThe A-List: Hip-Hopも”a lot”を先頭にしています。

 

 

 このような流れから、今週”a lot”はストリーミングやDLを伸ばしました。Hot 100では26位→12位と順位を伸ばし、”Bank Account”で記録したキャリア最高位と並びました。(客演は除く)

 

 このような活動の甲斐もあってか、先日21 Savageは釈放されたようです!

 

―10 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

 スーパーボウルのハーフタイムショーを務めたMaroon 5。彼らの“Girls Like You”は10位をキープし、トップ10滞在が33週目に。これは2017年の”Shape of You”と並んで歴代最長タイの記録です。

 無難なパフォーマンスに終始したことからか、やたらと評判の悪い彼らのパフォーマンスですが、(参考:「ハーフタイムショー」はなぜ物議を醸した? Maroon 5出演背景からパフォーマンスまで解説 - Real Sound|リアルサウンド

 DLやストリーミングでは一定の伸びが見られました。(特にDLはよく伸びています)その結果、トップ10に残ることができました。しかし来週はAriana Grandeの曲に押し出される形でトップ10から外れそうです。(おそらく今週がトップ10ラストの週)

 “She Will Be Loved”や”Sugar”も一定のDLをこの週記録しましたが、Hot 100再登場とはなりませんでした。これらの曲はルール上50位以上に登場する必要があるが、そうでなくてもDLが不足している印象です。(=100位圏内にも登場していたか微妙)ストリーミングではあまりポイントを稼げていません。

 ほか彼らのデビュー作“Songs About Jane”がアルバムチャートで98位に再登場しています。

 

参考:2017年のLady Gagaと2019年のMaroon 5

(Download はその週DLが何番目に多かったか?ということ)

Maroon 5 (2019) Download Hot 100
Girls Like You 6 10
She Will Be Loved 18 -
Sugar 29 -
Moves Like Jagger 44 -
This Love 48 -

 

Lady Gaga (2017) Download Hot 100
Million Reasons 1 4
Bad Romance 9 50
Born This Way 7 -
Poker Face 14 -
Just Dance 26 -
Telephone 39 -
The Edge Of Glory 44 -
Perfect Illusion 50 -

 →過去曲である”Bad Romance"の再登場が印象的です

 

※同じくパフォーマンスされたTravis Scottの“SICKO MODE”も少し数字を伸ばして、Hot 100で5位をキープ。これで27週目のトップ10滞在に。これに関して、先週「ラップ曲としては最長」としましたが、29週トップ10に滞在していた”Party Rock Anthem”もラップ曲としてカウントされる可能性もあり、その場合はまだラップ曲としては最長の滞在ではないので、その点を訂正いたします。(この曲はラップ系のラジオではほぼかかっていなかったようですが、歌い方はラップなので、そう捉えられる可能性もある)

 

 

△2 Marshmello & Bastille – Happier

 仮想DJ効果は絶大で、“Happier”を8位から2位に押し上げました。ラジオやストリーミングでのピークは過ぎており、ここ数週はゆるやかにポイントを落としていたこの曲でしたが、予想外の形で再注目されました。これまでのピーク(3位)を更新することにも成功しています。

 もともとのラジオの高ポイントに加え、DLやストリーミングが大きく伸びたので2位にたどり着きました。

 

※勢いよく順位を伸ばしたので、今後1位を取りそうと考えることも出来ますが、この仮想DJ効果は今週限りなので、来週以降はまたゆっくりと順位を落としていくと思われます。

 

×× Jimmie Allen – Best Shot

 カントリーシンガー、Jimmie Allenの“Best Shot”がチャートから外れました。ピークは37位、滞在は20週とHot 100初登場としては大健闘でした。

 彼は車内生活を送っていた時期もある苦労人のようです。 

Who Is Jimmie Allen? 5 Things You Need to Know

 

 

今週チャートから外れた曲 (7曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

99 Russell Dickerson – Blue Tacoma (🗻52位 /⏰19週)

97 XXXTENTACION – BAD!  (🗻16位 /⏰11週)

90 Daddy Yankee feat. Snow – Con Calma (🗻90位 /⏰1週)

89 XXXTENTACION – Sauce!  (🗻89位 /⏰1週)

86 Lauv & Troye Sivan – i’m so tired...  (🗻86位 /⏰1週)

77 Anuel AA & Karol G – Secreto (🗻68位 /⏰2週)

55 Jimmie Allen – Best Shot (🗻37位 /20週)

 

※ Karol Gの“Secreto”はチャート登場時にHot 100「初登場」という扱いでしたが、後に”Dame Tu Cosita”にもクレジットされたため、「後付け」で2曲目のHot 100入りということになりました。

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

18 Luis Fonsi – VIDA

26 Grateful Dead – Dave’s Picks, Volume 29

32 Various Artists – NOW 69

41 G Herbo – Still Swervin

45 Marshmello – Fortnite Extended Set

86 Set It Off – Midnight

97 Linda Ronstadt – Live in Hollywood

129 Within Temptation – Resist

164 Mandolin Orange – Tides Of A Teardrop

 

 

その他のアルバムチャート情報

・今週106位の、Black Panther: The Albumがアルバムチャート滞在1周年(52週)を迎える 

Maroon 5の“Songs About Jane”が96位に再登場

 

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Ariana Grande – 7 rings

・Sam Smith & Normani – Dancing With a Stranger

・Post Malone & Swae Lee – Sunflower

・Luke Combs – Beautiful Crazy

・Post Malone – Wow.

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Ariana Grande – break up with your girlfriend, i’m bored

 Ariana Grandeのアルバム収録曲全てがHot 100に登場する見込み。全てがトップ40に入る可能性もあります。(“in my head”と”make up”の2曲はトップ40に入るかどうか怪しい)

 Break up~は1位か2位に登場しそうです。これが実現すれば”7 rings”と合わせてAriana Grandeは女性アーティスト史上2人目のHot 100トップ2同時支配を成し遂げます。(客演を含むと4人目)

 

2002 Ashanti 1:Foolish 2:What’s Luv?(客演)

2005 Mariah Carey 1:We Belong Together 2:Shake It Off

2014 Iggy Azalea 1:Fancy 2:Problem(客演)

2019 Ariana Grande(???) 

 

(ちなみに“Shake It Off”といえば、Taylor Swiftは2014年の11/29に1:Blank Space 3:Shake It Offで、この記録をニアミスで逃しています)

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)