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音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 6/22 見どころ 【Jonas Brothers、バンドルの力を借りつつ圧倒的なアルバム1位 】

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こんばんは!アルバムチャート、バンドル・ストリーミングの2つが主要な戦術になってきていると感じます。

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

Chris BrownとDrakeの“No Guidance”が9位に登場。DrakeはThe Beatlesと並ぶ34曲目のトップ10に

・Jonas Brothersがアルバム1位に。初週41.4万は今年最大の数字。ツアーチケットのバンドルの恩恵を受ける

ネクストOld Town Roadとも評されるカントリー調の“The Git Up”が66位に登場

 

 

・今週のトップ10

      6月22日   R D S
- 1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road 🚩 3 1 1
- 2 Billie Eilish bad guy ✅ 13 4 2
- 3 Khalid Talk 1 12 7
4 Jonas Brothers Sucker  2 14
5 Ed Sheeran & Justin Bieber I Don't Care  5 2 8
-   6 Post Malone Wow. 6 18 11
-   7 Post Malone & Swae Lee Sunflower  16 21 6
-   8 DaBaby Suge 27 - 5
  9 Chris Brown feat. Drake No Guidance 🍎 - 9 4
  10 Sam Smith & Normani Dancing With A Stranger 4 31 27

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

※“Sucker”はなぜかDL50位圏外になっていますが、iTunesの数字などからDL10位以内のはずで、Hot 100もDL10位以内の成績で計算されていると思います。

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

緑背景はその指標がトップ10内で最高、赤背景は最低

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆100 Sech feat. Darell – Otro Trago

 現在スペイン語圏で旋風を巻き起こしているSechの“Otro Trago”が100位に登場。パナマ出身のラッパーSechは初のHot 100。客演のDarellは昨年の大ヒット”Te Boté”に続いて2回目のHot 100エントリー。

 主にYouTubeで人気(今週31位)。Apple MusicやSpotifyでもトップ100圏内に突入しています。ほかラテン系ラジオで27位に入っています。

 この曲は今週YouTubeでグローバル2位、Spotifyでグローバル4位とかなり上位につけています。メキシコのSpotify*1では1日の再生数の記録を更新しています(約96万)

 

☆93 Jonas Brothers – Only Human

 今週のアルバム1位はJonas Brothersに。3回目のアルバム1位。ツアーチケットのバンドルの力を借りつつ、2019年最大の41.4万の総合売上を初週に記録しました。

 41.4万のうち35.7万が純セールスで、これがアルバム1位の原動力なのは間違いありませんが、ストリーミングも5.2万とかなりの好成績を収めています。

 これを再生数に換算すると6809万で、ポップアルバムとしては歴代6番目に高いストリーミングです。(“かぶり“は除く 例:”thank u, next”は2週目でも”÷“を上回る再生数を記録している)

    再生(M)
1 Ariana Grande / thank u, next 307
2 Billie Eilish / WHEN WE ARE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO 194
3 Ed Sheeran / Divide (÷) 127
4 Ariana Grande / Sweetener 126
5 Justin Bieber / Purpose 77
6 Jonas Brothers / Happiness Begins

68

 

 アルバムからは3曲がHot 100入り。既存シングルの“Sucker”は5位→4位、”Cool”は59位→44位と浮上。そしてアルバム内でこの2曲の次に配置されている”Only Human”が93位に登場しています。

 アルバムでは多くの売れっ子ソングライターが登場。“Sucker”でのFrank Dukes、Louis Bellのほか、Greg Kurstin、Joel Little、Justin Tranterなどが登場。Hot 100に登場した”Only Human”にはShellbackが参加しています。

 ビルボードは直近の号で”How To Make A Hit”と題してソングライター特集を組んでいます。表紙は“Sucker”にも参加したFrank DukesとLouis Bell、そしてVictoria MonétとStarrahが飾っています。

June 15, 2019 - Issue 15

 

 

☆92 Ozuna – Amor Genuino

 Ozunaの“Amor Genuino”が92位に登場。ストリーミングで人気を博しました。Apple Music > YouTube > Spotifyの順で人気。

 Apple Musicではリリース直後に一時期(USで)トップ10に入りましたが、次第に順位が下降。来週はチャートから外れそうです。

 

☆87 Future – Please Tell Me

 FutureのEPがアルバムチャートの5位にランクイン。総合売上は4.2万で、純売上は5000でした。ポイントのほとんどをストリーミングから得ています。

 収録曲のうち3曲がHot 100に登場。”Please Tell Me”が87位、“XanaX Damage”98位、”Government Official”99位に登場しています。

 このEPはリリース直後、特にApple Musicでは注目を集めていましたが週の後半になるにつれてストリーミング数がかなり尻すぼみになっていきました。

 

 主に2017年以降Futureはストリーミングでの人気から、作品のリリース時には収録曲が複数Hot 100エントリーに入ります。リリースのペースはかなり早いですが、頻繁なリリースの中でも毎回しっかりストリーミングでの人気を確保しています。

 

2017 Future:7曲

2017 HNDRXX:2曲

2017 Super Slimy:6曲 (w/ Young Thug)

2018 Beast Mode 2:4曲  (w/ Zaytoven)

2018 Wrld On Drugs:4曲 (w/Juice WRLD)

2019 The WIZRD:7曲

2019 SAVE ME:3曲

 

☆83 Avicii – Heaven

 今週アルバムチャート11位に入ったAviciiのアルバム”TIM”。このアルバム曲は主にSpotifyで人気を集め、ColdplayのChris Martinを迎えた(feat.の表記はされていない)“Heaven”が83位にエントリーしました。

 

☆69 Bad Bunny & Tainy – Callaita

 Bad BunnyとTainyによる“Callaita”が69位に登場。リリース週にあたる先週よりもポイントを伸ばして今週Hot 100圏内に入りました。

 Apple Musicでは1週目と同じくらいの順位ですが、SpotifyYouTubeで2週目に順位を上げたため、リリース2週目にあたる今週にHot 100デビューをしました。AppleSpotifyYouTubeの全てでトップ50圏内に入っています。

 ラテン系ラジオで24位に入っています。Bad Bunnyは9曲目、プロデューサーのTainyは自身の名義では2曲目のHot 100入りです(”I Can’t Get Enough”に続く)

 

 ビルボードはTainyにインタビューする動画を公開しています。Don Omarの”Bandolero”が自国(プエルトリコ)を代表する曲と考えているようです。

 

 

☆66 Blanco Brown – The Git Up

 「ネクストOld Town Road」とも評されるカントリー系ミーム“The Git Up”が66位に登場。このタイプの曲としては珍しくDLから多くのポイントを得ています。

 DLでは今週8位に入っていますが、Streaming Songsでは50位圏外。YouTubeでは94位に入っていますが、今週の集計時点でApple Music / Spotifyではまだ100位圏外です。(来週の集計分=現時点ではAppleSpotifyでも順位を上げています)

 

 “Old Town Road”と同様にノリの良いカントリー調の1曲。この曲はHot Country Songsにはエントリーしていますが、Hot Hip-Hop / R&B Songsにはエントリーしていません。今後ヒットしてラジオでかかり始めたらこのジャンル系統を変更する可能性があるのか?ビルボードの采配に注目したいです。

(”Old Town Road”はラジオでかかり始めたタイミングでHot Country Songsから外された。そのかかっていたラジオ系統が理由?)

 

 ビルボードはこの曲を単独記事で紹介。“Old Town Road”と同様にTikTok発のミームであることが説明されています。

 

☆62 Luke Combs – Even Though I’m Leaving

 Luke CombsのEP“The Prequel”がアルバムチャートの4位に登場。総合売上4.8万のうち純売上が2.2万、残りをシングルDL&ストリーミングから得ています。

 収録曲はシングル単位でもかなり注目を集めていて、シングルDL・ストリーミングともに高水準の成績を記録しています。作品のリリース時にこのような動きがあるのはカントリーのアーティストとしては珍しいと思います。

 今週DL3位を記録した“Even Though I’m Leaving”は62位に登場。その他の収録曲もDL&ストリーミングで好成績を残してBubbling Under(101位~125位相当)には入っています。(これらの曲はラジオではかかっていない)

 シングルの“Beer Never Broke My Heart”は22位まで浮上しています。(キャリアハイにはわずかに及ばず。 “Beautiful Crazy”の21位がキャリア最高位)

 

△11 Polo G feat. Lil Tjay – Pop Out

 ヒットシングル“Pop Out”で注目を集めるPolo Gのデビュー作がアルバムチャートで6位に登場。総合売上3.8万のうち、ほとんど(3.7万)をストリーミングから得ています。

 その“Pop Out”は今週22位→11位と大きく浮上。アルバムリリースに伴うストリーミング増加だけではなく、”Pop Out Again”と称されたLil Baby & Gunnaを迎えた別バージョンのリリースもプラスに働きました。

 

 PitchforkはこのアルバムをBest New Music認定しています。(現時点でこのアルバムに注目しているのはPitchforkぐらいで、ほかメディアはまだこのアルバムのレビューをしていない)

 

 

☆9 Chris Brown feat. Drake – No Guidance

 Chris BrownがDrakeを迎えた“No Guidance”が9位に登場。Apple Music1位などストリーミングで大きな人気を集めたほか、DLでも9位にランクインしています。ラジオでも既に多くオンエアされています。(リズミック系、アーバン系)

 Drakeは客演ですが曲の冒頭に登場するのはDrakeのため、「あ、Drakeの曲だ」という印象を与えているような気がします。

 かつてRihannaを巡って敵対関係にあったとされる2人のコラボということもあって注目を集めました。(↓DrakeとChris Brownの歴史)

 

 Chris Brown自身の曲では2014年の“Loyal”以来のトップ10に。客演も含めると昨年の”Freaky Friday”以来のトップ10入り。

 この曲でDrakeのトップ10曲数は34まで到達し、The Beatlesと並んで歴代2位になりました。

 

38曲 Madonna

34曲 The Beatles

34曲 Drake (うち客演12曲)

31曲 Rihanna (うち客演6曲)

30曲 Michael Jackson (うち客演1曲)

28曲 Mariah Carey

28曲 Stevie Wonder

27曲 Janet Jackson (うち客演1曲)

27曲 Elton John

25曲 Elvis Presley

※(うち客演……と書いていないアーティストは全て自身の曲でトップ10入り)

 

 ただDrakeとThe Beatlesのトップ10は「内訳」が違うので「DrakeとThe Beatlesは並んだ」ということを真に受けて良いかは考えものです。

 上記のようにDrakeは客演の曲が多く、自身の曲のみをカウントするとトップ10曲数はずいぶん減ってしまいます。またThe Beatlesはソロメンバーのトップ10入りもいくつかあるので、その辺りも考慮するとチャートでの実績にはまだ差があるのではと考えています。

 Drakeは非シングルのアルバム曲がトップ10入りし、すぐにチャートから落ちてしまうケースもあります。これも「内訳の違い」に入るかと思ったのですが、意外とThe Beatlesも10週足らずでチャートから外れてしまう曲が多く、ここの点は共通しています。時代が違うので判断しづらい部分もありますが。

 

 DrakeはRick Rossとの新曲“Money in the Grave”が来週Hot 100でトップ10に入るかもしれません。

 

 

―3 Khalid – Talk

 Khalidの“Talk”がラジオ再生数で1位に!ポップ系3位、アダルトポップ系21位、リズミック系2位、Hip-Hop / R&B系5位と現在1位になっている系統は無いものの、幅広い系統でのオンエアによって総合の再生数は1位になっています。

 ポップ系での好調の影響なのか、一時期落ち始めていたリズミック系などでも再生数が再浮上してきています。

 今週ポップ系ラジオではPost Maloneの“Wow.”が1位に立っています。Post Maloneは”Psycho”以降、ポップ系ラジオ > Hip-Hop / R&B系ラジオになりやすいです。

 

×× BTS feat. Halsey – Boy With Luv

 BTSの“Boy With Luv”が今週チャート圏外に落ちました。ピークは8位、チャート滞在は8週でした。チャート滞在はBTSの曲としては長い部類に入りますが、最も長い”MIC Drop”=10週には及ばず。

 おそらく以前のシングルよりはラジオを意識した曲調で、実際リリース直後はポップ系ラジオで数字を伸ばしていたのですが長くは続かきませんでした。

 超強力なファンベースの効果で、アルバムチャートでは安定して1位を獲得できるようになってきましたが、シングルヒットを飛ばすことには苦労している印象です。

 

 また、BTSはCharli XCXとのコラボ“Dream Glow”をリリースしたのですが、わずかにHot 100に届かず。(Bubbling Under入り) DLは10位でSpotifyでも75位と健闘しましたが、ビデオなどのプロモーションはありませんでした。(BTSのゲームのサントラからの1曲です)

 Charli XCXは3年連続で何かしらの曲がBubbling Underに入っています(2017年=“Boys” 2018年=”Girls”) Hot 100へのエントリーは2014年からありません。

 

 ほか今週LogicとEminemの“Homicide”もチャート圏外に。この曲はピーク5位、チャート滞在5週と“Boy With Luv”よりも高速にチャートから姿を消してしまいました。ラジオでかかっておらず、ビデオも無いことが要因として挙げられますが、それを差し引いてもストリーミングを落とすスピードが早すぎるような気もします。

 

×× YNW Melly – Murder On My Mind

 YNW Mellyの“Murder On My Mind”がチャートから外れました。ピークは14位、チャート滞在は20週でした。

 ストリーミングでもともと一定の人気があったこの曲ですが、YNW Mellyに殺人容疑がかけられたことによって、状況とマッチする題名のこの曲の再生数が大きく浮上しました。

 正直こんな不謹慎な動機でバズるのはいかがなものか?と個人的には感じました。もちろんバズるための意図的な行動ではないとは思いますが、殺人容疑がヒットにつながるという事例が出来てしまったことはあまり宜しくないと考えています。(バズ狙いの危険行為を促してしまう可能性も……?) まだ「容疑」の段階なので、実は潔白なのかもしれませんが……

 この曲はこのような背景からか、ほとんどラジオではかかっていません。しかしストリーミングで長く上位に留まっていたため年間チャートに入るクラスのヒットとなりました。

 

今週チャートから外れた曲 (11曲)

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

100 Jon Pardi – Night Shift (🗻56位 /⏰16週)

95 Nipsey Hussle feat. Roddy Ricch & Hit-Boy – Racks in the Middle (🗻26位 /⏰10週)

94 Trippie Redd – Under Enemy Arms (🗻94位 /⏰1週)

91 John Rich feat. The Five – Shut Up About Politics (🗻91位 /⏰1週)

90 BTS feat. Halsey – Boy With Luv (🗻8位 /⏰8週)

85 Logic feat. Eminem – Homicide (🗻5位 /⏰5週)

84 DJ Khaled feat. Meek Mill. J Balvin, Lil Baby & Jeremih – You Stay (🗻44位 /⏰3週)

79 Joyner Lucas feat. Logic – ISIS (🗻59位 /⏰2週)

70 NF – The Search (🗻70位 /⏰1週)

69 YNW Melly – Murder On My Mind (🗻14位 /20週)

54 Miley Cyrus – Mother’s Daughter (🗻54位 /⏰1週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Jonas Brothers – Happiness Begins 🎫

3 Santana – Africa Speaks 🎫

4 Luke Combs – The Prequel (EP)

5 Future – SAVE ME (EP)

6 Polo G – Die A Legend

11 Avicii – TIM (ほぼ今週新登場)

17 Tyga – Legendary

20 Tee Grizzley – Scriptures

27 Motionless in White – Disguise

83 Silversun Pickups – Widow’s Weeds

100 Bob Dylan – The Rolling Thunder Revue: The 1975 Live Recordings

108 Neil Young & Stray Gators – Tuscaloosa

183 Peter Frampton Band – All Blues

191 Chon – Chon

200 Grateful Dead – Aoxomoxoa

 

◇アルバムチャート長期滞在

1周年:5 Seconds of Summer – Youngblood (今週169位)

 このアルバムが初週に1位を取った要因はツアーチケットのバンドルでした。しかしヒットシングルの存在が大きく、2週目以降も堅調に数字をキープすることに成功しました。(バンドルで数字を稼いだアルバムは2週目以降ガクッと順位を落とすことも多い)

 初週にバンドルで数字をある種の「ドーピング」しても、シングルヒット or ストリーミング人気があれば2週目以降も落ちずに人気を保つことは可能です。

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Khalid - Talk

Chris Brown feat. Drake - No Guidance

・Ed Sheeran & Justin Bieber - I Don’t Care

Katy Perry - Never Really Over

・Billie Eilish - bad guy

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・ROSALÍA & J Balvin feat. El Guincho – Con Altura

 リリースから???ヶ月が経過したものの、現在も好調をキープしておりUSのYouTubeなどでも上昇の兆しを見せ始めています。かなり遅いタイミングでのHot 100入りの可能性が考えられます。

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

🍎:Meghan Thee Stallion feat. DaBaby – Cash S**t (今週22位程度)

✅:Avicii feat. Aloe Blacc - SOS (今週33位)

🚩:Jhay Cortez, J Balvin & Bad Bunny – No Me Conoce (今週29位) 

 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

🍎=Apple Music、✅=Spotify、🚩=YouTube

 

 

関連 / 参考記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

ビルボードスタッフが議論するシリーズ

 

 今週のテーマは……まだ記事が来ていないです。

 

*1:規模がアメリカに次ぐ、2番手国候補の一つ。他の候補はイギリス、ドイツ、ブラジル