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音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 10/5 見どころ 【DaBabyがアルバム前に好発進、来週はチャート席巻する見込み】

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 今週最も高い順位で初登場したのはDaBabyの”Intro"。アルバムが反映される来週のチャートではさらなる躍進が期待できそうです! ただ全体的に見ると今週は静かな週でした。

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・ストリーミング、主にApple Musicで絶好調のDaBabyの”INTRO”が17位に登場。アルバムが反映される来週はさらに上昇する見込み

Maroon 5の”Memories”が22位に登場。DLが今週首位

・シングル&アルバム共に1位は変わらず。それぞれ”Truth Hurts”が5週目の1位、Post Maloneが3週目の1位。

・YNW Mellyの”223’s”がトップ40まで突入

・入れ替わりが7曲と動きが少ない週

 

・今週のトップ10

1 Lizzo – Truth Hurts

2 Shawn Mendes & Camila Cabello - Señorita

3◎Lewis Capaldi – Someone You Loved

4◎Lil Tecca - Ransom

5◎Chris Brown feat. Drake – No Guidance

6 Lil Nas X – Panini 🚩

7 Billie Eilish – bad guy

8◎Post Malone – Circles ✅

9 Post Malone feat. Young Thug – Goodbyes

10 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road

 

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

🍎=”INTRO” =17位

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆96 DJ Snake, J Balvin & Tyga – Loco Contigo

 DJ SnakeがJ BalvinとTygaと組んだ”Loco Contigo”が96位に登場。英語にすると”Crazy With You”。リリースから一定の時間が経過してのHot 100入り。ラテン系やリズミック系ラジオでの上昇が要因。

 一方ストリーミングではピークが過ぎている印象。Spotifyではおよそ1ヶ月前の順位が最も高く、同サービスの最大手プレイリストToday’s Top Hitsではこの週限りで曲がリストから外れています。 *1

 この曲はラテン圏でもヒットしましたが、それ以上にヨーロッパ圏で流行していた印象です。例えばSpotify順位もフランスやドイツ、オランダ(トップ5)のほうがラテン圏最大手のメキシコ(13位)よりも高い順位を記録しています。UKでは流行らず。

 

☆93 Lil Mosey & Gunna – Stuck In A Dream

 Lil Mosey、GunnaのXXL Freshman 2019コンビによる”Stuck In A Dream”が93位に登場。Apple Musicで30位程度、Spotifyで88位にランクイン。YouTubeではまだ100位圏外です。

 

☆86 Tainy, Anuel AA & Ozuna – Adicto

 レゲトンのプロデューサーTainyがAnuel AA / Ozunaと組んだ“Adicto”が86位に登場。YouTubeで8位とかなり好調。ほかApple Musicでは100位前後、Spotifyでは198位。ラジオではまだ未オンエア。

 この曲はグローバル単位で見るとさらに人気。(規模の大きいラテン圏が入るため)YouTubeではグローバル4位、Spotifyではグローバル31位にランクイン。

 

▽52 Ariana Grande, Miley Cyrus & Lana Del Rey – Don’t Call Me Angel

 “Don’t Call Me Angel”が13位→52位と大きく下降。予想以上のマイナス幅に。スターが集う大型シングルは、たいていラジオが2週目から大きく伸びて1週目からの反動のマイナス幅を抑えます。(一般的に、リリース直後の1週目は自然に注目が集まり、DLもストリーミングも高いため、その反動で2週目は数字を落とすことが多い)

 しかしこの曲はラジオがあまり伸びなかったこと、ストリーミングが予想以上に減少したことにより順位を大きく落としました。来週以降も引き続き順位を落としそうです……

 ラジオは一応数字を伸ばしているものの、リリースが1週遅いMaroon 5の“Memories”にすでに順位を抜かされています。ほかストリーミングの稼ぎ頭であったYouTubeSpotifyではそれぞれ2位→43位、5位→23位と大幅に順位を落としています。

 

 

△39 Chris Lane – I Don’t Know About You

 Chris Laneの”I Don’t Know About You”がカントリー系ラジオで首位に立つとともに、Hot 100でもトップ40入りを達成。彼にとって初のトップ40です。

 

△38 YNW Melly & 9lokknine – 223’s

 YNW Mellyの”223’s”が38位までジャンプアップ。”Murder On My Mind”に次ぐ2回目のトップ40入り。

 前シングルと同様にラジオでのオンエアはほぼ皆無ですが、ストリーミングの勢いで躍進。すでにApple & Spotifyではトップ10入り。YouTubeでも25位にランクイン。

 

▽36 Post Malone feat. DaBaby – Enemies

 今週もPost Maloneがアルバム1位の座をキープ。2週目以降も安定しているストリーミング数が強さの要因です。アルバム収録曲のうち11曲が今週のHot 100にランクインしています。(先週から3曲減少)

 その中で現在メインのシングルになっているのは”Circles”。今週ラジオの伸び幅が最大で、今後の上昇に期待が持てます。(前アルバムでいう”Better Now”の枠でしょうか)

 これ以外にも”Enemies”をシングルカット。これはポップ、リズミック、アダルトポップとポップ寄りの系統でかかっている“Circles”に対して、ラップリスナーを意識したシングルだと思います。前のアルバムでの”Ball For Me”の枠です。この曲は現在リズミック系でオンエア中、今後アーバン系でもかかると予想しています。

追記:Ozzy Osbourneを迎えた"Take What You Want"はハードロック系ラジオでかかっているようです!

 

 ちなみにEd Sheeranも今年のアルバムでこのような複数シングル戦略を取っていました。メインのシングルは”Beautiful People”。そしてリズミック系ラジオでは“Antisocial”、ハードロック系ラジオでは”BLOW”、さらに地元UKではStormzyが参加した“Take Me Back To London”など複雑なプロモーションを行っています。

 

☆22 Maroon 5 – Memories

 Maroon 5の新曲”Memories”が22位に登場。前アルバムの先行曲”What Lovers Do”は事実上のデビュー週が27位だったので、それと同じくらいのスタートです。

 ダウンロードは今週1位。一方でストリーミングは50位圏外でした。ただしSpotify24位、Apple50位程度とそこまで悪くない位置につけているうえ、YouTubeも次週以降伸びる可能性があるので、次週以降にストリーミングが改善する可能性もあります。

 新曲に一気に注目が集まるApple & Spotifyに対して、YouTubeはビデオが無い場合はかなり初動が鈍いケースが多く見られます。そのような曲はリスナーへの浸透とともに、ゆっくり上昇する場合も多いです。ほかMaroon 5は昨年ビデオを大ヒットさせた実績もあるので、ビデオをきっかけとしたヒットにも期待が持てます。

 ほかラジオではポップ系、アダルトポップ系の2系統で順調に数字を伸ばしています。

 

☆17 DaBaby – INTRO

 DaBabyの“INTRO”が17位に登場。Apple Musicで首位、YouTube6位とストリーミングでかなり高水準の成績を誇ります。一方DLは50位圏外で前述のMaroon 5とは逆のチャートアクションを見せています。

 アルバムのリリースが反映される来週のチャートでこの曲はさらなる上昇が見込まれます。アルバムはストリーミング(特にApple Music)でかなり好調で、来週アルバム1位が有力。収録曲すべてがHot 100に登場する可能性もあります。

 

△14 Jonas Brothers – Sucker

 Jonas Brothersの”Sucker”が15位→14位と推移。トップ10から外れた後も、ラジオを中心に粘りを見せて順位の下降幅を最小限に抑えています。特にアダルトポップ系での粘りが際立ちます。

 この粘りから年間チャートでの上位(10位)入りが期待できそうです。また年間チャートのトップ10争いでライバルになりそうな”Talk”をそのうちHot 100で抜き返すかもしれません。

 

△5 Chris Brown feat. Drake – No Guidance

 “No Guidance”が2つ順位を上げて5位に浮上。Chris Brownがトップ5に入るのは2008年の”Forever”以来11年ぶりのことです。”Forever”~”No Guidance”の期間に、客演も入れて計5曲がトップ10入りしていましたが、いずれも5位までは到達しませんでした。一番惜しかったのは“Look At Me Now”の6位。

 今週順位を上げたのは、上位にいた“Panini”と”bad guy”がポイントを落としたことが大きいと思われます。”No Guidance”自身も少しだけラジオのポイントを伸ばしています。

 

 

×× Cardi B – Press

 Cardi Bの“Press”がチャート圏外に。ピークは16位ながらも滞在は16週にとどまりました。つまり満期になってチャートを外れたのではなく、ポイントが純粋に100位に届かない水準になったということです。

 リリース時は注目を集め、いつもと同じような順位でデビューしましたが、その後の粘りがやや足りませんでした。Cardi Bはラップ系統のラジオで高い人気がありますが、この曲はリズミック・アーバンの2系統で自身のシングルでは最も低い順位を記録しています。(リズミック:18位、アーバン:5位)

 “Bodak Yellow”以降、シングルが軒並み大ヒットして絶好調でチャートを駆け抜けてきたCardi Bですが、やや勢いが落ちてきた印象です。次シングルで巻き返せるか。

 

×× Dan + Shay – All To Myself

 カントリーデュオDan + Shayの“All To Myself”がチャートから外れました。ピークは31位、滞在は20週でした。この曲はカントリー系ラジオで人気を博したほか、ストリーミングからも一定のポイントを得たことから、ほかのカントリー曲よりも一回り大きい規模のヒットになっています。

 前シングル“Tequila”と”Speechless”は1回チャートを外れてから、カントリー以外のラジオでの人気によってHot 100再登場を果たしています。しかしこの曲はこの2曲ほどのヒットにはなっていないことから再登場の可能性はあまり高くないと思われます。

 

 

今週チャートから外れた曲 (7曲)

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

97 Luke Combs & Brooks & Dunn – 1,2 Many (🗻97位 /⏰1週)

90 Cardi B – Press (🗻16位 /⏰16週)

78 Post Malone – Allergic (🗻37位 /⏰2週)

77 Dan + Shay – All To Myself (🗻31位 /20週)

76 A Boogie Wit da Hoodie – Mood Swings (🗻76位 /⏰1週)

71 Post Malone – I’m Gonna Be (🗻33位 /⏰2週)

70 Post Malone feat. SZA – Staring At The Sun (🗻34位 /⏰2週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

2 Zac Brown Band – The Owl 🎫

3 Blink-182 – Nine

13 Brittany Haward – Jaime

39 Jeremy Camp – The Story’s Not Over

50 As I Lay Dying – Shaped By Fire

52 Upchurch – Parachute

61 Tove Lo – Sunshine Kitty

75 King Von – Grandson, Vol. 1

95 Riley Green – Different ‘Round Here

118 Greateful Dead – Giant Stadium 1987,1989, 1991 Boxset

172 William McDowell – The Cry: A Live Worship Experience

 

チケット戦略を活用したZac Brown Bandが2位。Blink-182は2016年の前アルバムで、Drakeの“Views”の連続支配に風穴を開けることに成功しましたが、今回は1位奪取なりませんでした。

 

◇アルバムチャート長期滞在

1周年:Lil Wayne – The Carter V (今週91位)

250週目:Taylor Swift – 1989 (今週132位)

 

 Taylor Swiftは”Fearless”に次ぐ滞在250週超えで、これを複数アルバムで達成するのは女性アーティストでは初のことのようです。ちなみにAdeleは”21”の方は432週滞在していますが、”25”のほうは173週滞在です。

 

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

🍎 Summer Walker feat. A Boogie Wit da Hoodie – Stretch You Out (今週28位程度)

✅ Mustard feat. ... – Baguettes in the Face (今週45位)

🚩 Tee Grizzley - Satish (今週14位) 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

 

関連 / 参考記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

ビルボードスタッフが議論するシリーズ

  今週のテーマはLewis Capaldiの躍進についてです。

 

① 20週目ながらも未だに伸びています。長持ちしている理由は?

② “Divinely Uninspired to a Hellish Extent”という彼のアルバム名をどう感じる?

③ SNSを巧みに操る彼。「うまい」と感じた彼の行動は?

④ “Someone”のつく他の曲で好きなのは?

⑤ 彼が今後「ネクスト・Ed Sheeran」としてヒットを飛ばし続ける可能性は何割?

 

 

 

※その他のお知らせ

Noteで1つ記事を試しに作ってみたので、よかったらそちらも……

 

*1:このリストはあまりラテン曲を入れない傾向にあるので、実はここまで残されているのは珍しいです。 メインが英語圏で見慣れたアーティストだったこと、英語のヴァースがあることなどが理由でしょうか