今週も多様な曲が登場し、賑わいました。中でも注目は”All I Want for Christmas Is You”再登場でしょうか。そして今週は2019年間チャート集計の最終週の可能性もあります。
◇今週のHot 100 ハイライト◇
・"All I Want for Christmas Is You"が39位に再登場。昨年よりも1週早いタイミングで
・アルバム1位はLuke Combs。現行シングルは11位まで浮上
・Lil Babyの"Woah"が19位に登場
・TikTok発とされる曲が複数デビュー("Yellow Hearts"=81位 "Valentino"=92位)
・今週のトップ10
―1 Lewis Capaldi – Someone You Loved
―2◎ Post Malone – Circles
―3 Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita
△4◎ Lizzo – Good As Hell
△5◎ Maroon 5 – Memories
▽6 Lizzo – Truth Hurts
―7 Chris Brown feat. Drake – No Guidance
▽8 Selena Gomez – Lose You to Love Me
▽9 Lil Nas X – Panini
―10 Dan + Shay & Justin Bieber – 10,000 Hours
🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位
🍎="Woah"(19位) ✅="Roxanne"(27位) 🚩="Old Town Road"(21位)
◎ は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す
1~100位までの順位表は↓
曲の個別解説
☆92 24kGoldn – Valentino
今週のTikTok発その1。TikTokで知名度を得た”Valentino”が92位に登場。最初に注目されてから少々経過したタイミングでのHot 100入りです。
現時点で主に人気なのはSpotify。今週41位にランクイン。(現在がピーク) Apple Musicでは現在200位圏外になっていますが、約2ヶ月前にはトップ100に入っていました。
☆90 Alicia Keys feat. Miguel – Show Me Love
Alicia Keysが迎えたシングル”Show Me Love”が90位に登場。Alicia Keysは2012年~2013年の”Girls On Fire”以来のHot 100入り。
この曲はラジオ人気が高く、アダルトR&B系統で上位に入っています。ほかアーバン系でもオンエアされています。一方、ストリーミングでは影が薄くYouTubeで88位に入った以外は圏外です。21 Savageが参加したリミックスもあるようです。
☆83 Tory Lanez & T-Pain – Jerry Sprunger
アルバム”Chixtape 5”に先駆けてリリースされたTory Lanezの”Jerry Sprunger”が83位に登場。タッグを組んだT-Painは2014年の”Up Down”以来のHot 100入りです。
人気が高かったのはApple Music。20位前後にランクインしています。SpotifyとYouTubeではいずれも100位前後でした。(それぞれ103位、99位)
来週のチャートで反映されるその”Chixtape 5”はアルバムチャート2位に登場する見込み。ストリーミングの人気が高いため、この曲も来週順位を上げそうです。
☆81 Ant Saunders – Yellow Hearts
今週のTikTok発その2。Ant Saundersの”Yellow Hearts”が83位に登場しています。こちらはブレイク後すぐにHot 100まで到達しました。
Spotifyで20位、Appleで32位とかなり優秀な順位。YouTubeでも68位に入っています。ただ次の週から伸びが鈍化しています。
今週はこれらに加えてTikTok発の先輩?”LaLaLa”も今週94位に再登場しています。今週はこれ以外にも再登場する曲が多かったです。
◇94 Y2K & bbno$ - LaLaLa
◇89 Kelsea Ballerini – homecoming queen?
◇84 J Balvin & Bad Bunny – LA CANCIÓN (ピーク更新)
◇39 Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You (後述)
☆78 Karol G & Nicki Minaj – Tusa
コロンビア出身のKarol GとNicki Minajが組んだ”Tusa”が78位に登場。ビデオリリースによる効果が大きいです。(YouTubeで9位)
ほかAppleで150位~100位程度、Spotifyでは圏外です。Karol Gがメインでラテンに分類される曲で、Nicki Minajも一部ヴァースをスペイン語で歌っています。(ただ大半は英語)
☆74 Billie Eilish – everything i wanted
集計2日弱ながらも、その短い間に注目を集めたBillie Eilishの新曲。”everything i wanted”が74位に登場しました。
ストリーミング人気が際立ち、DLもそれなりに獲得しているため来週はトップ10まで順位を伸ばすか?
△62 Lil Mosey & Gunna – Stuck In A Dream
Lil Moseyが2枚目のアルバムをリリース。ストリーミングで人気を獲得し、アルバムチャート12位に登場。
このリリースによる効果で”Stuck In A Dream”が62位まで浮上。Spotifyでの人気が特に高い(9位)です。Spotifyではラップのプレイリスト(RapCaviar)だけでなく、総合ヒットプレイリスト(Today’s Top Hits)にも入っています。
Doja Catの”Juicy”も似たような動きを今週見せました。アルバムが19位にランクインし、そのストリーミング人気からシングルの”Juicy”は67位→47位と上昇しました。
☆56 Rod Wave – Heart On Ice
フロリダ出身21歳のラッパー、Rod WaveがHot 100初登場。”Heart On Ice”が主にApple Musicで人気を集めて56位に登場しました。この曲はYouTubeでも39位にランクインしています。Spotifyでは圏外。
彼のアルバム“Ghetto Gospel”は今週アルバムチャートで10位にランクイン。オリジナルの”Heart On Ice”は収録されていませんが、Lil Durkが参加したリミックスバージョンが収録されています。(順位はオリジナル>リミックス)
(ちなみにビルボードは”Heart On Ice”のLil Durkリミックスがアルバム人気に寄与した、と記述していますが、これはダウト。このアルバムが主に人気なApple Musicでは収録曲中8番人気。YouTubeでも”Cuban Links”のほうの人気があります)
◇39 Mariah Carey – All I Want For Christmas Is You
もうクリスマス開始!?今週の集計は11/8~11/14ながらも、”All I Want for Christmas Is You”が39位に再登場しました。昨年よりも1週早いタイミングでの登場です。(昨年は例年よりも1週早かった)
2018 再登場:12/1 ピーク:3位
2017 再登場:12/16 ピーク:10位
2016 再登場:12/17 ピーク:16位
2015 再登場:12/18 ピーク:11位
2014 再登場:12/20 ピーク:35位
2013 再登場:12/21 ピーク:27位
2012 再登場:12/22 ピーク:21位
(2018は2017よりも2週早いようにも見えますが、2018年にチャート日付の訂正が行われたため、「1週早い」ということになります)
ストリーミングがポイントの中心ですが、ラジオとDLもゼロでは無いです。(ストリーミング8割、残り2割程度)
仮にクリスマスの週の1位が低い成績ならば、初のHot 100首位も射程圏内になります。(ちなみに最近のHot 100首位の成績は低い) 今年はクリスマスが含まれる週の集計が12/20~12/26で、クリスマスムード「ではない」日が26のみなので、日程的にも有利です。
☆19 Lil Baby – Woah
Lil Babyの新曲”Woah”が19位に登場。ストリーミングで高い人気を誇り、Apple Musicではリリース以降1位をキープ。(後に”Jerry Sprunger”に1位の座を奪われるが、それは来週の集計期間の話 後に”Woah”が1位を奪い返している) ほかSpotifyで11位、YouTubeでも14位(ビデオはまだ)と好成績を収めています。
ストリーミングで大人気の一方、DLやラジオは現状ほとんど無いです。2週目もストリーミングで大人気のため、次週以降も順位をある程度キープしそうですが、この週がピークになる可能性も。(DLやラジオがそこまで期待できないため)
△11 Luke Combs – Even Though I’m Leaving
今年の出世株の一人、Luke Combsがアルバム1位を獲得!総合ユニットは17.2万。チケットやグッズ戦略を活用して10.9万のセールスを得ています。ほかシングルDLが0.6万、ストリーミングが5.8万でした。
ストリーミングの5.8万、再生数にすると7400万再生はカントリーのアルバムとしては史上最高の成績です。これまでカントリーのアルバムで最も再生数が多かったのは、複数のクリスマス曲を擁するGene Autryの” Rudolph the Red Nosed Reindeer and Other Christmas Classics”でした。(4371万再生)
アルバムの効果で”Even Though I’m Leaving”は11位まで浮上!単にアルバム効果でストリーミングが伸びただけでなく、カントリー系ラジオのピークも同時に迎えたことが大きいです。
これ以外の収録曲では、”Better Together”が72位に登場しています。
×× Megan Thee Stallion feat. DaBaby – Cash Shit
Megan Thee StallionとDaBaby、今年大きく飛躍した2人のラッパーがタッグを組んだ”Cash Shit”が今週チャートから外れました。ピークは36位、滞在は20週でした。
ラジオやApple Musicで次第に人気を得たこの曲は、彼女の前シングル”Big Ole Freak”を超えるヒットに。ついにトップ40まで到達しましたが、彼女が選んだのはこの曲をさらに伸ばすことではなく、次シングルのリリースでした。 (例えば”Cash Shit”はビデオが無い)
Nicki MinajとTy Dolla $ignを迎えた新曲”Hot Girl Summer”は大きく注目を集め、Hot 100に11位でデビュー。リリース初日はiTunesとApple Musicで首位に立っていました。
その後ラジオではかなり順調に数字を伸ばすものの、ストリーミングの数字をキープできなかったためやや尻すぼみ気味になっています。現在59位/14週目のため、滞在が20週まで到達しない可能性もあります。
×× Taylor Swift – You Need To Calm Down
Taylor Swiftのアルバムからのセカンドシングル”You Need To Calm Down”が今週外れました。ピークは2位、滞在21週でした。
微妙な成績にも見えますが、アルバム”reputation”以降、Hot 100に21週以上残った曲は”Delicate”の1曲のみなので、21週滞在でも最近のテイラーとしては実はそこまで悪くない成績です。
この曲の次のシングル”Lover”は今週Shawn Mendesリミックスの恩恵を受けて今週43位→26位と上昇しています。今週はまだリリースから2日分程度しか集計されていないので、来週はさらなる上昇が期待できます。トップ10に復帰する可能性もあります。うまくいけば”You Need To Calm Down”以上のヒットになりそうです。
アルバム“Lover”は近年の定番シングル戦略に則ってシングルカットがされています。結果、アルバムリリース時にはシングルが軒並み高順位を記録することに成功しました。
1 単にシングルとしてリリースされる曲 (”ME!” “thank u, next” “God’s Plan”)
2 アルバムを匂わせる次のシングル (”You Need~” “7 rings” “Nice For What”)
3 アルバムとほぼ同時にカットされるシングル (”Lover” “break up~” “In My~”)
(ストリーミングのピークはアルバム時に来やすいことから、これ以上のカットはあまり注目を集めない傾向がある)
ちなみに仮に登場があと1週早ければ、因縁の相手?Kanyeのアルバム大量登場の煽りを受けてチャートを外れています。
今週チャートから外れた曲 (13曲)
【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】
100 Gucci Mane feat. Kodak Black & London On Da Track – Big Boy Diamonds (🗻100位 /⏰1週)
98 Kygo & Whitney Houston – Higher Love (🗻63位 /⏰3週)
96 Kanye West – On God (🗻23位 /⏰2週)
95 Diplo feat. Morgan Wallen – Heartless (🗻78位 /⏰2週)
92 Kanye West – Selah (🗻19位 /⏰2週)
90 Kane Brown – For My Daughter (🗻90位 /⏰1週)
86 Cole Swindell – Love You Too Late (🗻49位 /⏰14週)
85 Frank Ocean – In My Room (🗻85位 /⏰1週)
84 Kanye West – Closed On Sunday (🗻17位 /⏰2週)
81 Lil Tjay – F.N (🗻56位 /⏰13週)
80 Megan Thee Stallion feat. DaBaby – Cash Shit (🗻36位 /⏰20週)
79 Trippie Redd – Love Me More (🗻79位 /⏰1週)
46 Taylor Swift – You Need To Calm Down (🗻2位 /⏰21週)
・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品
1 Luke Combs – What You See Is What You Get 🎫👕
10 Rod Wave – Ghetto Gospel
11 Dave East – Survival
12 Lil Mosey – Certified Hitmaker
19 Doja Cat – Hot Pink (実質デビュー週)
20 Jacquees – King Of R&B
44 iann dior – Industry Plant
54 FKA twigs – MAGDALENE
56 George Michael & Wham! – Last Christmas
81 Yungeen Ace – Step Harder
108 Nick Cave & The Bad Seeds – Ghosteen
123 Ali Gatie – YOU
151 Radio Company – Vol. 1
◇アルバムチャート長期滞在
1周年:Roddy Ricch – Feed Tha Streets II (今週178位) ※ピーク67位
200週目:Bryson Tiller – T R A P S O U L (今週135位)
200週目:The Notoriuous B.I.G. – Greatest Hits (今週153位)
300週目:Eagles – Their Greatest Hits 1971-1975 (今週152位)
350週目:Drake – Take Care (今週74位)
600週目:Bob Marley And The Wailers – Legend: The Best Of... (今週86位)
1周年のRoddy Ricchはピーク67位ながらも1年も滞在……つまり、リリース時にはそこまで注目を集めなかったものの、ストリーミングで根強い人気を保ち続けたということです。
“T R A P S O U L”はストリーミング初期の2015年に複数シングルがヒットした作品。現在もストリーミングで人気があります。
Drakeの出世作として現在ストリーミングでの人気が高い”Take Care”はリリース以降、ほとんどの年でアルバム年間チャートに入り続けています。
2012年:3位
2013年:192位
2014年:圏外
2015年:102位
2016年:58位
2017年:63位
2018年:58位
(2011年リリースですが、2011年の年間チャートには入らないタイミングだった)
・今週ラジオで伸びた曲
☆Lizzo – Good As Hell
・Selena Gomez – Lose You to Love Me
・Dua Lipa – Don’t Start Now
・Tones And I – Dance Monkey
・Luke Combs – Even Though I’m Leaving
・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲
・Trevor Daniell – Falling
次のTikTok発? ストリーミングを爆速で駆け上がり、SpotifyのToday’s Top Hitsもリストに入れています。来週はまだHot 100に入らないかも(再来週?)
・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲
🍎 Summer Walker feat. Jhené Aiko – I’ll Kill You (今週21位程度)
✅ Lil Tjay – F.N (今週27位)
🚩 YoungBoy Never Broke Again – Lost Motives (今週2位)
※Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)
YouTube驚異の2位でも登場せず!?これは他の媒体で公開されていないこと(彼の曲にありがち)、そして最近YouTube上位の曲が少ない傾向にあることが理由だと思います。
今週最も再生数の多い”Ransom”の2850万再生が、2017年以降で1位の再生数としては最小を記録でした。ただしこれは「ストリーミングの危機」などではなく、各媒体で人気曲が異なるからだと感じます。(なので人気アーティストが曲をリリースすれば一気に伸びる?)
また、ビルボードはOn-Demand Streaming(AppleやSpotifyなど)の総量は順調に伸びていることを指摘しています。ただ独自調査をしたところ、YouTubeの再生数は減少の傾向が見られました。
YouTubeは再生「数」で曲をカウントすると影響力を持ちますが、「額」で見ると影響力が少ないため、ここが減少しても「市場」としては成長すると考えられます。
関連 / 参考記事
・ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)
個人的に気になるのはタイトルでレーベルの話をしているという点。今週のトップ10は動きがかなり少なく、話題が少ないのは分かりますが、それでもレーベルの話ってタイトルに入れるほどの話題なの?という疑問はあります。リスナーは現在どれくらいレーベル区分を気にしているのでしょうか……
(ちなみに1963年の方の記録は坂本九です)
Luke Combs Lands First No. 1 Album With Record-Setting Week on Billboard 200 Chart | Billboard
・各指標の順位
・Spotify:https://spotifycharts.com/regional/us/weekly/2019-11-08--2019-11-15
・Apple Music:【魚拓】Top 100: USA on Apple Music
・YouTube:https://charts.youtube.com/charts/TopSongs/us/20191108-20191114
・ラジオなど:https://kworb.net/