チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 / Billboard 200まとめ 4月号 【The Weekndがアルバム4タテなど無双】

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 今月のチャートは先月と比べると落ち着いているかな、といった印象です。その中でもThe Weekndの強さが際立ちました。*1

 

 

◇今月のHot 100上位推移

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◇今月のBillboard 200上位推移

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各週のハイライト

 

4/4 ハイライト◇

・The Weekndが44.4万相当の売上でアルバム1位!今年最大の数字。チケットやグッズを駆使したセールス、ストリーミングともに高水準の成績を記録

・ストリーミング人気によって収録曲すべてがHot 100入り。うち10曲がトップ40圏内に

・そして”Blinding Lights”が1位獲得!プロデューサーMax Martinは4Decade連続1位を達成

・”Say So”がトップ10入り(9位)

・Megan Thee Stallionの”Savage”が20位まで浮上

 

4/11 ハイライト◇

・The WeekndがHot 100&アルバム1位の座をキープ

・Dua Lipaのシングル”Break My Heart”が21位に登場。アルバムは4位

・NAV、Gunna、Travis Scottの”Turks”が17位に登場

・PARTYNEXTDOORとRihannaの”BELIEVE IT”は23位に登場。後者は約2年ぶりのHot 100

・”Lose You To Love Me”がチャートから外れる

 

4/18 ハイライト◇

・Drakeの”Toosie Slide”が1位に登場!キャリア7曲目の1位

・DaBabyの”Find My Way”が22位に登場

・The Weekndが3週目のアルバム1位

・アルバム2位はRod Wave。収録曲8つがHot 100入り(下位のランクインが中心)

・”death bed”、”WHTAS POPPIN”など複数曲がトップ40入り

 

4/25 ハイライト◇

・The WeekndがHot 100首位に返り咲き。アルバムチャートでも4週連続1位

・twenty one pilotsの新曲が23位に登場

・Doja Catの”Say So”が5位に浮上、”Boss Bitch”も100位に登場

・Selena Gomezの”Boyfriend”が59位に登場

・Jonas Borhtersの”What A Man Gotta Do”が12週の滞在で圏外へ

 

 

主なトピックス

 

・The Weekndがシングル・アルバム両チャートを制圧

 アルバムは4タテし今月のチャートの主役となったのはThe Weeknd。初週には今年最大の44.4万枚(相当)を売り上げることに成功しています。

 R&Bアルバムとしては歴代最多の再生数(2.21億)を叩き出すなど、ストリーミングも優秀だったのですが、ここまで初週の数字が伸びたのは純セールスに依る部分が大きいです。初週44.4万のうち27.5万は純セールスから来ています。チケット戦略やグッズ戦略が有効に働いたようです。その後もアルバムチャート首位を守り、結局4月の4週全てを制覇することに成功しました!

 またシングルチャートでも”Blinding Lights”が4週のうち3週を制圧。アルバム効果でストリーミングが伸びたこと、さらに従前からのラジオの伸びが有効に働きHot 100首位獲りに成功しました。うまいことアルバムとラジオのタイミングが合ったことが複数週に渡る首位獲得の要因でしょう。

 "Blinding Lights"が首位に浮上したことで、この曲のプロデューサーのMax Martinは4つのDecadeで連続して首位曲を獲得することに成功しています。

1990年代:…Baby One More Time

2000年代:It's Gonna Be Me, I Kissed A Girl, So What, My Life Would Suck Without You, 3

2010年代:California Gurls, Teenage Dream, Last Friday Night, E.T. Raise Your Glass, Hold It Against Me, Part Of Me, One More Night, We Are Never Ever Getting Back Together, Roar, Dark Horse, Blank Space, Shake It Off, Bad Blood, Can't Feel My Face, Can't Stop the Feeling!

2020年代:Blinding Lights

 

 

・セールス戦略の大戦争

 The Weekndは2週目以降ストリーミングの数字が過半数を占めていたものの、純セールスも地味に高かったです。4週目までつねにビルボードの記事ではマーチの存在が明記されており、このマーチによる微妙なプラス分が無ければ4週連続1位にはならなかったかもしれません。

 特に僅差だったのは2週目です。ストリーミングでの継続的な人気に加え、このマーチによるセールス、そして2位の5SOS側に不運があったことも合わさって僅差のレースを制しました。(詳しくは↓の記事に書いています)

 

 ちなみに3週目と4週目も、仮に純セールスが0ならばアルバム2位に逆転されてしまいます。さすがに0になることは考えづらいですが、この連続したマーチ戦略が4週連続アルバム1位にある程度貢献しているということです。

 彼のように2週目以降もマーチの存在がビルボードの記事内で明記されているのは珍しいです。*2

 

各週の総合売上 / 純セールス (純セールスの割合)

4/4 44.4万 / 27.5万 (61.9%)

4/11 13.8万 / 4.7万 (34.1%) 2位:13.3万

4/18 9.0万 / 2.3万 (25.6%) 2位:7.2万

4/25 7.5万 / 2.0万 (26.7%) 2位:6.4万

 

 

・Dua Lipa

 上記で述べたようなマーチを使用していないようで、純セールスは低かったですが、ストリーミングは好成績に感じます。おそらくアメリカ以外出身の女性シンガーのアルバムでは歴代最高のストリーミング成績だと思われます。(2位はLordeの2.4万枚相当?)

 アルバムチャートでは週間4位と地味な成績ですが、シングルの大成功と合わせて基本的に商業面でも*3大成功を収めたアルバムという認識で良いと思います。ヒットシングルがある&ストリーミング好調なので、年間アルバムチャートでもそれなりに上位に入る気がします。

 

 

・Drakeも1位を獲得

 The Weekndチャート完全制覇に唯一風穴を開けたのはDrakeでした。Spotify / Appleの両方で1位に立ち、見事首位奪取。2週目以降も同様にストリーミングでは首位でしたが、”Blinding Lights”との再生数の差は縮まり、元からあったラジオの差によりHot 100首位を譲りました。(Rolling Stone Chartsでは2週目以降も1位)

 ラジオの再生数は一気には伸びないので、新曲は既存の曲よりもラジオ再生が劣ることがほとんどです。とはいえ”Toosie Slide”もリリース初期の割には、すでにラジオでガンガン数字を伸ばしてきています。リズミック&アーバンのDrake鉄板の2系統に加え、ポップ系でも比較的人気を得ています。

 この曲はダンスを作ってからリリースという経緯もあり、かなりTikTokを意識しているようです。実際TikTokで人気を得ているとされています。

 Drakeはこれでキャリア通算の1位滞在週数を50まで伸ばしています。(歴代4位タイ)

1 Mariah Carey 82週

2 Rihanna 60週

3 The Beatles 59週

4 Boyz Ⅱ Men 50週

4 Drake 50週

※Hot 100の前進を含めるとElvis Presleyも計79週

 

 この曲のプロデューサーはスイス出身のOZです。彼は主にTravis Scottと組むことが多く、”SICKO MODE”、”HIGHEST IN THE ROOM”なども彼のプロデュースです。この“Toosie Slide”はそれらに次ぐ3回目のHot 100首位獲得です。他にもDrakeとは過去に”Omertá”や”Life Is Good”などでタッグを組んでいました。

 彼はスイス出身という土地柄か、近隣国ドイツ圏のラッパーのプロデュースを受け持つこともあります。Shindyの”DODI”はドイツで1位を獲得。ほかAaliyah & 50 Centサンプリングの”Nautilus”、Fat Joeの同名の曲をサンプリングした”What’s Luv”など、Shindyらとともにドイツで多くのヒットを飛ばしています。

 他にもドイツ圏のラッパーはUSのラッパーやプロデューサーを時折起用しています。(Ronny JやMurda Beatz、GunnaやFutureなど) USのラッパー側がドイツ圏のラッパーを迎えることはあまり無いですが、一部で人材の交流が見られています。

 

 ちなみにビルボードはこの曲が1位を獲得した週のトップ10特集の記事タイトルを”Historic Debut at No.1~”としています。ビルボードっぽい表記の仕方だと感じます。DrakeがHot 100首位「デビュー」を果たすのが3回目で、それが史上最多「タイ」だからHistoricalと称しているのですが、それを言うなら4回目で単独最多になった時の方が良いのでは?と思いますね……

 あとやはり個人的に「デビュー」かどうかは重要ではないと考えています?理由としては、近年は途中の週に1位を獲得するよりも初週の勢いで1位を獲得することのほうが難易度的に低いように思うこと、初週1位の曲はその後尻すぼみになる可能性があること、時代によってデビュー首位の難易度が変わることが挙げられます。

 もちろん初週にそれだけの数字を集めるということは、「曲」ではなくすでにアーティストとしての地位がとても高いということで、それはそれで重要なことですが。

 あとは記録上ではデビューでなくとも、実質首位デビューを果たしている曲もあります。Taylor Swiftも「名目上」では首位デビュー曲が3つあります。“We Are Never~”と“Look What You~”は正式なデビュー週の前に、ラジオの成績のみでHot 100入りしてしまったため首位デビューとはなりませんでしたが、意味合い的にはこれらも「首位デビュー」に相当します。*4これと実際に首位デビューだった”Shake It Off”も合わせて合計3曲、ということです。

 

 私は厄介なオタクなので、その“Historical”や”Debut”に関してここまで注釈を付けたくなりますが、やっぱり目立つワードで言い切った方がチャートの盛り上がりを誘発できる、みたいな狙いがあるのですかね……? *5

 

 

・”Say So”と”Adore You”がラジオ増加に伴いHot 100でも浮上

 もともとストリーミングで人気が高かった曲ですが、ラジオでも人気が伴うことによってHot 100でもトップ10入りを果たしました。”Say So”はかかっているラジオ系統の幅が広いことから、まだまだ伸びるかもしれません。*6

 

 この枠に次入りそうなのは”My Oh My”ですかね。ストリーミングではゆっくり下降線を描いていますが、ラジオで上昇を見せているためトップ10にじわじわ接近中。あとは後の項目で登場するTikTok発の”Savage”、またはカントリーの”The Bones“や”I Hope”などにもチャンスがありますかね

 

 

・”Circles”のトップ10滞在が33週まで到達。次週にも記録更新?

 “Circles”のトップ10滞在が歴代最長タイの33週まで到達。ラストの週に7位で、かつ目立った落下が無いため次週にもこの記録を更新しそうです。(もう執筆時点では更新した)

 

トップ10滞在週数ランキング

33週 Ed Sheeran – Shape of You (2017)

33週 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You (2018-2019)

33週 Post Malone & Swae Lee – Sunflower (2018-2019)

33週 Post Malone – Circles (2019-2020)

 

 ラッパーらしいストリーミングの高さ、そしてラッパーらしからぬラジオ分布を両立したことが記録更新の要因だと思います。

 ポイントとなるのはアダルトポップ系での躍進。この系統はあまりラップがかからないのですが、ラップ成分が弱かった“Circles”は見事この系統で1位を取ることに成功します。逆にリズミック系では10位止まりでしたが。*7

 このアダルトポップ系統はヒットの流行サイクルが遅いことも多く、Hot 100で長きに渡って中位に居座っているような曲は、この系統のラジオ再生数がポイント源となっている場合が多いです。この系統ではラップがあまりかからないため、ストリーミング人気をかなり保てないとラッパーはHot 100でのロングヒットが難しいのですが、“Circles”はこの系統にもフィットする曲調だったため、その壁を乗り越えることに成功しました。

 

 ちなみにこの記録の上位に最近の曲が多いかと言うと、ラジオ・DL・ストリーミングで人気の曲が異なり、それらを両立する曲が上位で無双するようになったからだと考えられます。またストリーミングはDLと違い、繰り返せることも理由の一つかもしれません。

 

 

・”Savage”が大きくジャンプアップ。今月のTikTok曲は?

 今月もTikTok発とされる曲がチャートで活躍しました。上昇が大きかったのはMegan Thee Stallionの“Savage”。先月末に下位に登場した後、トップ20まで到達しました。このストリーミングでの飛躍を見て、ラジオシングルもこの曲に切り替わった*8ことも今後追い風になりそうです。(TikTok発でヒットしていても、ラジオとうまく連携が取れていない場合もあります)

 ちなみにこの曲は私が作成したTikTok影響力ランク(3月)で1位になりました!4月号なのになぜ3月?と思うかもしれませんが、Hot 100の4月の集計期間の半分弱(12/28日)は3月です。この影響力ランクについては、今後記事にして説明する予定です。*9

 またこの曲の躍進に伴い、“Captain Hook”もTikTokで注目を集め、Hot 100にも再登場しています。

 他にも”death bed”や”Roses”、”Sunday Best”など、TikTok発とされる曲が続々トップ40まで到達しています。

 

 次に来そうな曲として”Skechers”、”Play Date”、”After Party”を挙げます。“Skechers”は様々な意味で興味深いです。

 まずTikTokで人気だった「編集側」が曲をリリースしてヒットさせたということです。この曲をリリースしたDripReportは元々Indian Style Remixなるものを作成していた人物で、このRemixもTikTokで同様に人気でした。この流れを引き継ぐ形で、TikTok内でLo-FiリミックスをヒットさせるLlusionや、マッシュアップを多くヒットさせているRapidSongsなども自身の曲でヒットを飛ばせるのでは?と少し期待しています。

 もう一つ興味深いのは、英語曲ながらもプレイリストでの立ち位置に恵まれていないことです。具体的に言うと、Spotifyでグローバルトップ50圏内ながらもToday’s Top Hitsに入っていないのです。非英語曲ならば、この順位でもリスト入りしないことは多いですが、英語曲で入らないのは珍しいです。過去に例があるのは、特定アーティストの4番手以外の曲、または倫理性に問題がありそうなアーティスト*10などですが、DripReportはどちらも当てはまりません。他に何かリストに入れない「因子」があるのでしょうか。

 ちなみにApple MusicのToday’s Hits(US版)でも同様にリスト入りしていません。

 

 “After Party”は少し”Savage”っぽい流れでヒットしています。というのも、元々注目されていたアルバムの曲が、あまり時間を置かずにTikTokでヒットし始め、曲の評価(プレイリストの配置など)も同時に上がっているところが似ていると思います。

 “Play Date”はTikTokで最初注目され始めてから若干時間が経って大ヒットしたところが面白いです。各TikTokヒットリストには半年前くらいから登場していました。“Sunday Best”も同じく発掘~実際のヒットまで時間差があったみたいです。

 

 

 

・大躍進のカントリー曲。Gabby BarrettとMaren Morrisが特に期待の星?

 複合的なラジオ人気で長く上位をキープするMaren Morrisの”The Bones”、ストリーミング人気もあるGabby Barrettの”I Hope”、そして夫婦共演でDL人気もあるBlake SheltonとGwen Stefaniの”Nobody but You”の3曲がトップ20まで到達。

 “The Bones”はカントリー系だけでなく、アダルトポップ系ラジオでも首位に立ち、クロスオーバーに成功。この2系統でのピークは過ぎましたが、現在もポップ系ラジオでも伸びを見せているため、まだトップ10入りの可能性は残っていると思います。カントリー人気が高いAmazon Musicのほか、ラジオ型ストリーミングのPandoraで人気。一方AppleSpotifyでは圏外。

 “I Hope”はあまりカントリーがヒットしないAppleSpotifyでもランク入り。もちろんAmazon Musicでも上位に入っています。カントリー系ラジオでのピークは既に来ましたが、その後もヒットが続くかもしれません。この曲はCharlie Puthとのリミックスをリリースしたのですが、これは「ポップ系ラジオでもオンエアしますよ」という合図に感じるので、その読み通り他のラジオ系統でもヒットすればトップ10にも手が届くと思います。

 “Nobody but You”はDLの成績高めです。カントリー人気の強いAmazon、Pandoraでは上位に。Spotifyでも一応200位圏内には入っています。このヒットで気になったのはGwen Stefaniが久々に上位入りしたということです。本人名義のトップ40入りは”Great Escape”の2007年以来、またNo Doubt名義まで含めると”Settle Down”の2012年以来です。

 ほか現在25位、Morgan Wallenの”Chasin’ You”も期待がかかります。(”I Hope”と以上にストリーミング人気が高め)

 

 Sam Huntがアルバムをリリースした週にはカントリーのストリーミングが再生数でも割合でも歴代最多を記録しました ラジオと比較すると、割合的にまだ小規模に感じますが、どこまで数字を伸ばしますかね。

Country Music Streams Hit Record High in U.S. | Billboard

 

 もちろんカントリーがストリーミングに適合した曲をリリースしているという面もあると思います。Sam Hunt、Dan + Shay、Luke Combsなどは主要なAppleSpotifyなどのサービスでも活躍が見られます。

 しかしながらAppleSpotifyで躍進せずとも「ストリーミングが伸びた」とされる曲も多く、カントリーのリスナーは特定のサービスに寄っているような印象もあります。この伸びは「カントリーのリスナーがストリーミングを始めだした」という部分も大きいかと思います。

 

 またビルボードは月末に最近のカントリーの躍進についての記事を出しました。他ジャンルのアーティストとコラボすることで、カントリー歌手への注目が集まったことなどが書かれています。

The Bones Are Good: Inside Country's Recent Resurgence on the Hot 100 | Billboard

 

 ちなみに記事内でも書かれているカントリー曲のトップ40増加ですが、これは純粋なカントリー曲の躍進だけではなく、Hot 100のバランス調整も影響していると思います。2018年半ばと2020年初頭にストリーミングに関する調整(無料会員や非公式ビデオの減産)が行われ、相対的にラジオが強くなったため、ラジオの指数が高いカントリー曲は以前よりも上位に入りやすくなっています。

 仮にここにテコ入れが入れば、またカントリー曲がHot 100で奮わなくなる可能性もあります。

 

 

・アルバム後に生き残る曲? Lil Uzi Vert、Bad Bunny、Lil Babyなど

 ストリーミング中心の現在の環境では、アルバム曲がHot 100に大量登場することが増えました。しかし追加でプロモーションが行われない非シングル曲は次第に脱落していき、Hot 100でもすぐに順位を落としていきます。ただ上位に入りヒットのポテンシャルを持っているような曲を放置しておくのはもったいない、ということで多岐にわたるシングル展開をするアーティストもいます。

 最近の例として挙がるのはPost Maloneで、彼はラジオの系統によってシングルを使い分けて、多くの曲がラジオにかかりました。”Circles”はポップ系へ、”Enemies”はリズミック系へ、”Take What You Want”は主にハードロック系でオンエアされHot 100にも長く残りました。ほか”Allergic”もオルタナティブ系ラジオへかかっていました。

 ただこのようなラジオを駆使した戦略は、彼のように広範なラジオ人気、さらには多くの系統でかかるような音楽面での幅広さが求められるので他のアーティストに簡単にできることではないです。

 先月アルバムをリリースしたLil Baby、Bad Bunny、Lil Uzi Vertは複数曲が現在(4月最終週のこと)もHot 100に残っています。彼らがどのような戦略で複数曲をHot 100に残しているのかを見ていきます。

 Lil Babyは”Sum 2 Prove”がラジオに。ほか多くの曲でビデオを作りましたが、ビデオ作成曲と他のストリーミングの人気曲は一致しないので、ビデオの効果はあまり無いと思われます。とはいえ複数曲がプレイリスト入りし、ラジオシングル以外も人気を保っています。

 Bad Bunnyはビデオの効果が大きく、特に“Yo Perreo Sola”はビデオが公開された週には、アルバムの週よりも高い順位でHot 100に再登場しました。これがきっかけでラジオシングルにもなりました。ほかビデオ&ラジオ無しながらもストリーミングで人気のある”Safaera”がHot 100に残っています。

 Lil Uzi Vertは”That Way”がラジオでかかったくらいで、あまり目立ったプロモーションをしていない印象です。一応リリックビデオはありますが。これをプロモしましょう!という明確な指示が無いため、SpotifyAppleでプレイリストに入る曲や人気曲が一部異なっています。

 

Spotify (4/28付けHot 100に相当する週)

25位:P2 

26位:Myron 

32位:That Way 

59位:Lo Mein

76位:Futsal Shuffle 2020

 

Apple Music (4/28付けのHot 100に相当する週の最終日)

20位:Myron

45位:Baby Pluto

48位:Lo Mein

51位:Yessirskiii

53位:That Way

 

 

・今月外れた曲たち

 

・Lizzo – Good As Hell

 4/4に外れました。ピーク3位、滞在30週。ラジオでは1位に立ちましたが、ストリーミングでは最高21位でした。先に芽が出たのはストリーミングの方でしたが。

 Lizzoはこのシングルの次に、”Cuz I Love You”をカットしポップ系ラジオなどでオンエアされましたが、Hot 100には届きませんでした。この曲は”Truth Hurts”や”Good As Hell”とは違い2019年のアルバム向けにリリースされた曲です。(表題曲です)

 

・Selena Gomez – Lose You To Love Me

 4/11に外れました。ピーク1位、滞在23週でした。首位に立った割に滞在が短い点が気になったので、他のケースと比較してみたらラジオの成績が低めでした。2010年代にHot 100首位を獲得したポップ曲としては3番目(タイ)にラジオ順位が低かったです。ちなみにその1番目2番目はHot 100首位に立った経緯が独特です。

 

Lady Gaga & Bradley Cooper – Shallow ラジオ10位、滞在45週

Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You ラジオ12位*11、滞在37週

Selena Gomez – Lose You To Love Me ラジオ5位、滞在23週

Taylor Swift – Look What You Made Me Do ラジオ5位、滞在20週

Britney Spears – Hold It Against Me ラジオ5位、滞在20週

 

 同じラジオ5位の2曲は滞在20週きっかりで終わっているので、それと比べると粘りました。Selena Gomezはラジオ成績の最高位が3位で、元からそこまでラジオには恵まれていない印象です。

 このことから、デビュー時に大きく注目を集めることに成功しキャリア初の1位を獲得に成功。ただ最終的な成績では従来と同程度に終わった、ということでしょう。とはいえ初の栄冠を獲得してキャリアに泊を付けたという意義は大きいと思います。

 

 ちなみに2010年代の全ての首位曲のラジオ成績を集計したので、それに関する記事を今後書くと思います。おそらく。

 

・Khalid & Disclosure – Know Your Worth

 4/18に外れました。ピーク57位、滞在8週でした。ラジオもストリーミングも滑り出しは悪くなかったですが、長くは持ちませんでした。Khalidはここ最近のシングルが軒並みトップ40まで届いておらず、苦戦傾向です。そろそろ巻き返したいところですね。

 

Right Back 🗻73位・⏰11週

Up All Night 🗻89位・⏰1週

Eleven 🗻83位・⏰1週

Know Your Worth 🗻57位・⏰8週

 

・YoungBoy Never Broke Again – Make No Sense

 4/18に外れた曲です。ピーク57位、滞在20週でした。TikTokで人気を得たこと、そしてラジオシングルになったことによって、アルバム最大のヒットとなりました。

 ラジオではアーバン10位、そしてリズミック37位と微妙な成績に見えますが、アーバン系は彼の最高位、リズミックではJuice WRLDとの“Bandit”に次ぐ2番目に高い成績と彼の曲としてはかなりラジオ人気があったことが分かります。彼はストリーミングでの人気ぶりの割に、ラジオにかなり恵まれていません。曲のリリースペースが早すぎて、シングルを選定しているうちに次のシングルをリリースするからでしょうか。

 

 

今月のデータ

 

新たにトップ40入りした曲

 

4/4

☆16 The Weeknd – In Your Eyes

△20 Megan Thee Stallion – Savage

☆21 The Weeknd – Alone Again

☆24 The Weeknd – Scared To Live

☆25 The Weeknd – Hardest To Love

☆28 The Weeknd – Too Late

☆32 The Weeknd – Snowchild

☆39 The Weeknd – Escape From LA

 

4/11

☆17 NAV, Gunna & Travis Scott – Turks (NAVは初)

☆21 Dua Lipa – Break My Heart

☆23 PARTYNEXTDOOR & Rihanna – BELIEVE IT

△32 Blake Shelton & Gwen Stefani – Nobody But You

△36 Morgan Wallen – Chasin’ You 

△37 Jordan Davis – Slow Dance In A Parking Lot (初)

△39 SAINt JHN – Roses (Imanbek Remix) (初)

△40 Brett Young – Catch

 

4/18

☆1 Drake – Toosie Slide

☆22 DaBaby – Find My Way

△33 Powfu feat. beabadoobee – death bed (ともに初)

△36 Jack Harlow – WHATS POPPIN (初)

△37 Ingrid Andress – More Hearts Than Mine (初)

△40 Sam Hunt – Hard To Forget

 

4/25

☆23 twenty one pilots – Level Of Concern

△38 Surfaces – Sunday Best

 

 

主に外れた曲

 

4/4

44 Lizzo – Good As Hell (🗻3位 /⏰30週)

52 Lil Uzi Vert – Silly Watch (🗻9位 /⏰2週)

94 Lil Uzi Vert – Futsal Shuffle 2020 (🗻5位 /⏰11週)

 

4/11

47 Selena Gomez – Lose You To Love Me (🗻1位 /⏰23週)

65 Kelsea Ballerini – homecoming queen?  (🗻65位 /⏰13週)

87 Lil Uzi Vert – Lo Mein (🗻8位 /⏰3週)

 

4/18

46 Lil Baby - Woah (🗻15位 /⏰21週)

83 YoungBoy Never Broke Again – Make No Sense (🗻57位 /⏰20週)

97 Bad Bunny - Vete (🗻33位 /⏰18週)

99 Idina Menzel & AURORA – Into the Unknown (🗻48位 /⏰12週)

 

4/25

48 Kane Brown - Homesick (🗻35位 /⏰21週)

98 Jonas Brothers – What A Man Gotta Do (🗻16位 /⏰12週)

 

 

・各週ラジオで伸びた曲

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※ソースはKworbのラジオのページ

※太字は伸び幅が大きい曲

※赤背景はその週にHot 100に入っていない曲

 

 

・各指標の1位曲

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 Kenny Rogersの"The Gambler"、Bill Withersの"Lean On Me"は訃報を受けてのDL1位。ただし古い曲(かつリカレント)なので、Hot 100に登場しませんでした。(このような曲は50位以上相当のポイントを得なければHot 100い再登場できない)

 

 

・Rolling Stone Chartsトップ10曲

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 Hot 100ではまだトップ10入りしていない”Savage”や”Blueberry Faygo”の躍進が際立ちます。

 

 

 

この月のHot 100リンク

4/4:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-04-04

4/11:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-04-11

4/18:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-04-18

4/25:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-04-25

 

 

・3月号

・2月号

 

・1月号

 

 

 

 

 

*1:もう5月第1週のチャートが発表されましたけれど、暦の上ではまだ4月だからヨシ!

*2:ただビルボードは1位以外の内訳について詳しく記載しないため、2週目以降マーチがあっても1位でないとそれを書いていないのかもしれません

*3:批評方面でも高い評価を得ています

*4:ラジオが前の週に出てくるくらい盛り上がっている、という意味では、初週に首位デビューするよりも圧倒的な首位デビューを果たしているという解釈ができる

*5:こうやって初週に「これだけすごい記録を成し遂げました!」って強調するからには、最終的にどうなったか?をセットで報じることがフェアだと私は感じますが、ビルボードはそれをしませんね……

*6:Nicki Minajリミックス発表前に書いていました。リミックスが無い段階でもかなり有望だったので、リミックスが来れば1位も期待できるかも。Nicki Minajがビルボードにクレジットされるかどうかは不明ですが

*7:“Congratulations”以降のメインシングルでは最低位

*8:それまでは”B.I.T.C.H.”

*9:ちなみに2位:Why Everything Is Chrome 3位:Supalonely 4位:Dangerously in Love 5位:She Belong to the Streets とTikTokで人気でも曲として人気ではないものも多いです

*10:2019年の前半YNW Melly、しかしその後リスト入りを果たした

*11:Hot 100で首位を取った年のラジオ成績