今月もマイペース更新になってしまいましたが、ビルボード5月まとめです!上記のサムネからも分かるように、今月はシングル/アルバムチャートの両方で毎週異なる作品が1位に立つ、という動きの多い月でした!
各週のハイライト
◇5/2 ハイライト
・DaBabyがアルバム1位!ストリーミング人気によりHot 100には12曲が登場。Roddy Ricchとの”ROCKSTAR”は9位に登場
・”Circles”のトップ10滞在が歴代最長=34週に
・Playboi Cartiの”@ MEH”が35位に登場
・Sam SmithとDemi Lovatoの”I’m Ready”が36位に登場
・”Yummy”、”The Man”、”The Other Side”などが短い滞在で圏外に
◇5/9 ハイライト◇
・Travis Scott・Kid Cudiによる”THE SCOTTS”が首位に登場!Kid Cudiは初のHot 100首位。ストリーミングでの大人気に加え、グッズ等と合わせた販売戦略が功を奏す
・Travis Scottは他にもフォートナイト内イベントがきっかけで過去曲にも光が。”HIGHEST IN THE ROOM”と”goosebumps”が再登場。
・Megan Thee Stallionの”Savage”が4位に浮上。初のトップ10。Beyoncéのリミックスが集計に入るのは2日分
・Juice WRLDの”Righteous”が11位に登場
・YoungBoy Never Broke Againがアルバム1位。収録曲5つがHot 100入り
◇5/16 ハイライト◇
・リミックス効果で”Say So”が首位浮上!Doja CatもNicki Minajも初の首位
・女性同士のコラボがHot 100首位を獲得するのは史上6回目
・同じくリミックスをリリースした“Savage”は2位
・チケット戦略を活用したKenny Chesneyがアルバム1位(9回目)
・2.69億再生とストリーミングで人気を博したDrakeは惜しくもアルバム2位。収録曲全てがHot 100入り
◇5/23 ハイライト
・”stuck with u”が1位に登場!複数戦略を利用し、今年最大のセールスを記録(10.8万)これがハイレベルな首位争いを制するのに大きく貢献しました
・6ix9ineの”GOOBA”は3位に登場。YouTubeで圧巻の再生数を記録し、DLもそれなりに稼ぎましたが、2位1位に及ばず。ラジオはほとんど皆無
・NAVがアルバム1位。100種以上のグッズ販売戦略でセールスを稼ぐ(数字の半分以上はセールスから)
・Kehlaniがアルバム2位
◇5/30 ハイライト◇
・”Savage”がHot 100首位獲得!CDやヴァイナルを活用したセールス増が生きる
・Futureがアルバム1位。13曲がHot 100入りし、通算エントリー数を歴代4位の110曲まで伸ばす
・Polo Gがアルバム2位。9曲がHot 100入り
・Jonas Brothersの”X”が33位に、Katy Perryの”Daisies”が40位に登場
・ラジオの計算方法が変更になった可能性?
主なトピック
・全ての週で異なる曲が1位に! 多くの販売戦略が1位獲得をサポート
一つの月の間、首位が毎週異なる曲だったのは2017年の5月以来です。また5週連続で異なる曲が首位に立ったのもその時以来です。(その時は”Shape of You” → ”HUMBLE.” → ”That’s What I Like” → ”I’m the One” → ”Despacito”)
ちなみに次の週(6/6)”Rain On Me”と合わせると、6週連続で異なる曲が首位となり、2010年11月~12月以来のことです。(”We R Who We R” → ”What’s My Name” → ”Like a G6” → ”Only Girl” → ”Raise Your Glass” → ”Firework”)
仮に次の週も別の曲(”ROCKSTAR”とか?)が首位に立ち、7週連続で異なる曲が首位になったとしたら、1990年以来のことです。
こんなに多くの新規首位曲が誕生したのは、販売戦略が広く活用されたことが大きいです。最初の週の首位の”Blinding Lights”は純粋なラジオヒットでしたが、その他の週の1位はビルボードの記事内で何らかの「販売戦略」が報告されていました。
CDやヴァイナルなどのシングルに関連するグッズを販売。それに音源DLが可能な権利を添付し、その分のセールスを当該の週に集中させてポイントを稼ぐ、というのが「販売戦略」です。そのCDなどにはサイン入りのものが含まれるケースもあります。
(近年報告されたシングルの販売戦略)
昨今のシングルチャートで、セールスは平均値が低いため存在感が控えめですが、依然ポイントのレートが比較的高めに設定されているため、ここを稼げば一気に順位を上げることが可能です。
一部で出回っている計算システム*1を参照にすると、1セールスで250のストリーミング(有料会員)分が賄うことができます。より少ない人数をターゲットにすることで高ポイントを狙えるのです。
そのため、初週にブーストをかけて高順位を狙う場合や僅差を制したい場合に有効な戦略として活用されます。
ただし初週にこれで1位を取りに行った場合、その反動で2週目に大きく順位を落とすことがあります。セールス増で1位を取っていても、本質的には2位~5位程度のヒットという場合は、特に順位を落としやすいです。
実際に初週で1位を獲得した”THE SCOTTS”と”Stuck with U”は2週目にトップ10圏外まで落ちています。
一方、初週「ではない」タイミングでこの戦略を活用した“Say So”や”Savage”はラジオの数字が安定していたため、次の週も大きくは落ちませんでした。
現在は史上屈指に「狙って」1位を取りやすくなっている時代だと思います。セールスの全体的な低さによって、ここを稼げば他の曲を出し抜くことが容易になったことが大きいです。そしてストリーミングでリリース直後の注目度が高くなりやすいこともこれの追い風になっていると思います。(=販売戦略をかける週とストリーミングのピークを一致させることが容易になる)
このような戦略の恩恵を受けて、多くのアーティストが初の1位を達成。
・THE SCOTTS (Travis Scottは3曲目・Kid Cudiは初)
・Say So (Doja CatもNicki Minajも初)
・Stuck With U (Ariana Grandeは3曲目・Justin Bieberは6曲目)
・Savage (Megan Thee Stallionは初、Beyoncéは7曲目)
Beyoncéは3つのDecadeで連続した首位獲得を達成。グループ時代(Destiny’s Child)も含めると4つのDecade連続になります!
1990年代:Bills, Bills, Bills
2000年代:Say My Name, Independent Woman Part 1, Bootylicious(ここまでグループ時代) Crazy in Love, Baby Boy, Check On It, Irreplaceable, Single Ladies
2010年代:Perfect
2020年代:Savage
また“Say So”でプロデューサーを務めたDr. Lukeも3つのDecade連続での首位獲得を成し遂げています。
2000年代:Girlfriend, I Kissed A Girl, My Life Would Suck Without You, Right Round
2010年代:TiK ToK, California Gurls, Teenage Dream, E.T., Last Friday Night, We R Who We R, Hold It Against Me, Part Of Me, Roar, Wrecking Ball, Timber, Dark Horse
2020年代:Say So
そして今月際立ったのは女性同士のコラボの首位獲得です。女性ソロシンガー同士*2がコラボした首位曲は歴代でわずかでしたが、今月一気に2つも出ました
1979年 Barbra Streisand & Donna Summer – No More Tears
1998年 Brandy & Monica – The Boy Is Mine
2001年 Christina Aguilera, Lil Kim, Mya & P!nk – Lady Marmalade
2011年 Rihanna feat. Britney Spears*3 – S&M
2014年 Iggy Azalea feat. Charli XCX – Fancy
2020年 Doja Cat feat. Nicki Minaj – Say So
2020年 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé – Savage
そして翌月には……(2020年 Lady Gaga & Ariana Grande – Rain On Me)
・アルバムチャートも全て異なる作品が1位に。今月もバンドルが躍動?
こちらも全て異なる作品が1位に。その中でも驚きだったのは、Drakeを破ってアルバム1位を獲得したKenny Chesneyでしょうか。チケット戦略を活用して、大幅にセールスを稼ぐことに成功しました。総合売上23.3万のうち、純セールスは22.2万。そのうちの多くがチケット+音源戦略によるセールスのようです。*4次のツアーがいつ行われるか不透明な状況ですが、ここまでチケット戦略で音源を売りさばくのは、「安定した人気がある」とも「商売が巧み」とも取れます。
一方Drakeもストリーミングで十分な成績(20.1万枚相当)を記録しましたが、セールスが相対的に低かった(1.9万)ことも響き2位に。1曲あたりの平均再生数ならば“More Life”をも上回る優秀な数字。しかしアルバムチャートでは2位ということで、Drakeクラスのストリーミングすらも打ち破るバンドル戦略の力強さを痛感しました。
(歴代ストリーミングが多いアルバム)
(2020年以降ビデオが集計対象になったため、以前よりも僅かに数字が高い)
(単位はMillion = 100万)
それでもDrakeはストリーミングで強かったため、2週目にアルバム1位を獲得する可能性がありました。そして2週目もストリーミング数が最多でしたが、マーチを活用したNAVに敗れて、アルバムチャート3位でした。(アルバム2位は同様にマーチを活用したKehlani、しかしポイントの過半数はストリーミングから)
3週目以降はアルバム1位から遠い数字になったので、これでDrakeは”Thanks Me Later”から9作続いていたアルバム1位は途絶えてしまいました
ちなみにNAVはレーベルのボスThe Weekndと似たような手法を取っていました。週半ばのデラックス版、100種以上のマーチをリリースという点が共通しています。総合売上の過半数をセールスが占めています。
最近ビルボードはマーチの「数」を記載するようになりました。分かりやすくて良いと思います。
・今月のマーチ利用
5/23 NAV 100種 / 7.3万 [13.5万]
5/23 Kehlani 20種以上 / 2.5万 [8.3万]
5/30 Future 17種 / 1.6万 [15.3万]
5/30 Polo G 22種 / 1.4万 [9.9万]
(マーチの種類数 / セールスの数字 [総合売上])
・Drakeのトップ10曲数が38まで到達
ストリーミングではばっちり人気を得たDrakeのアルバム。そこから“Pain 1993”が7位に入り、累計トップ10曲数を38まで伸ばし、Madonnaと並んで歴代最多タイとなりました。
このデータを見た時に、Drakeは2週目以降順位を落としたアルバム曲で「カサ増し」してないか?と私は直感的に思いました。そこで、「トップ10に入ったものの、ガクッと調子を落とした曲」を探るために、「週間のトップ10に入らながらも、年間チャートの100位以内に入らなかった曲」をそれぞれカウントすることにしました。
Drake:6曲 (今年の曲は除く)
Madonna:6曲
そんなことは無かったです。両者ともトップ10入り後に順位をガクッと落とした曲は同等にあるようです。ただ今回の”Pain 1993”は年間チャート入りが絶望的ですが……
2人の間で明確な違いがあるのは客演の多さです。Madonnaは全て自分の曲でトップ10入りしたのに対しDrakeは13曲が客演によるものです。またMadonnaは自信の曲でも客演を迎えたのは”4 Minutes”と”Give Me All Your Luvin’”の2曲だけなので、ほとんど独力でこの記録を達成したということになります。
ほかトップ10に囚われない「年間チャート入り曲数の多さ」も調べると、Drakeは48曲(うち22曲が客演)、Madonnaは35曲(全て自身の曲)でした。Drakeはトップ10に入らずとも一定以上のヒットを記録することが多いようです。時代の違いはありますが。
・Chris BrownとFutureが100曲超え / アルバム曲の時代?
この2人のHot 100累計エントリー数が今月100まで到達しました。Chris BrownはDrakeの客演を務めた“Not Yoo Too”で、Futureは自身のアルバムでこの記録を達成しています。
◇Hot 100エントリー数が多いアーティスト
1位 222曲:Drake
2位 207曲:Glee Cast
3位 168曲:Lil Wayne
4位 110曲:Future
5位 109曲:Elvis Presley (Hot 100発足以降の成績のみ)
5位 109曲:Nicki Minaj
7位 107曲:Kanye West
8位 101曲:Chris Brown
9位 100曲:Jay-Z
10位 97曲:Taylor Swift
この記録はアルバム曲大量登場時代か、によって難度が異なります。シングルではない曲も注目され、チャート入りするようになったのはデジタル時代特有の出来事なので、物理販売時代のアーティストは非シングルによるエントリーはほぼ期待できません。これは主にストリーミング人気によるアルバム曲大量登場のことを指していますが、Glee CastはストリーミングではなくDL人気によってエントリー数を多く稼ぎました。
ほか客演の多さや、リリースペースの早さによっても達成の難度が変わってきます。そう考えるとElvis Presleyの記録が異質であることがわかります。
一方Futureはこの時代の潮流にうまく乗っての記録達成という印象が強いです。エントリー数110曲のうち、ちょうど半分にあたる55曲が非シングルでした。(Wikipedia参照) もちろん彼の人気の高さが要因の一つですが、リリースペースが早いことも関係しそうです。
ストリーミングによるアルバム曲大量Hot 100エントリーが見られるようになった2015年以降、アルバムチャートの5位以上に入ったFutureの作品数は11もあります。(他にもストリーミングに無いミックステープ等がいくつか存在する)
ちなみにChris Brownの非シングルのエントリーは8曲だけでした。
また今月はFutureの他にもストリーミングに優れるアルバムが多く、5つのアルバムが5曲以上を同時にHot 100に送り込みました。
・該当作品のHot 100入り数
5/2 DaBaby:12/13曲
5/9 YoungBoy Never Broke Again:5/17曲
5/16 Drake:14/14曲
5/30 Future:13/20曲*5
5/30 Polo G:9/16曲
(ほかアルバムのデラックス版をリリースしたLil Babyは、そこで追加された6曲のうち5曲がHot 100入りを果たしています)
今年はこれまで累計17つのアルバムが収録曲を同時に5曲以上Hot 100に送り込みました。このようなアルバムは昨年で通年22つだったので、今年はかなりのハイペースですね。
後に説明するラジオの減算の効果が続けば、このストリーミングに牽引されたアルバム曲エントリーは増えると思います。(ラジオが減算されれば、その分違う指標が伸びるため。5/30以降の話)
このような大量エントリーは新規アルバムへの食いつきが強いApple Musicによって牽引されている場合が多いです。
・フォートナイト、再び
今月Travis Scottがフォートナイト内イベントを行い、同時接続数1230万など注目を集めました。前回のMarshmelloと同様にチャートにも影響がありました。
まずはKid Cudiと組んだ“THE SCOTTS”がHot 100で首位獲得。ただフォートナイト無しの”HIGHEST IN THE ROOM”も1位だったので、このイベント効果が無くとも1位を獲得していた気がします。(ちなみにどちらの曲もCD等の販売戦略を活用しています)
功績として光るのは過去曲を再浮上させたことだと思います。”HIGHEST IN THE ROOM”が38位に、”goosebumps”が49位に再登場。”SICKO MODE”も30位程度の成績を収めていたと考えられます。(再登場には25位以上になる必要があり、登場せず)
Hot 100ではこの過去曲は1週で外れてしまいましたが(=51位以下に落ちる)、他の媒体では「瞬間的」なものではなく2週目以降もある程度数字が持続していました。Spotifyの週間グローバル / US順位の推移を見てみます。
※4/16の週~5/28の週のデータ。4/30の週に最も大きく効果が表れた
“goosebumps”はイベント開始前にSpotifyグローバル順位のピークを更新。いずれもイベント「後」も以前よりも高い水準の順位をキープしています。
ほかYouTubeではグローバル・USともに複数曲が現在も100位圏内に残留。イベント前はこれらの曲は100位圏「外」でした。一方Apple Musicでは、イベントの効果自体はあったものの2週目以降すぐに順位を落としました。
このようなイベントは、過去曲の再発掘消費が盛んなストリーミングで有効な戦略だと思います。きっかけを与えてリスナーに「自発的な」再生を促すことによって、イベント「後」もそのリスナーの「YouTubeのおすすめ」や「SpotifyのDaily Mix」での登場率が上がり、再びアクセスする可能性が高まると考えられます。
またTravis Scottはイベント内で大量のグッズを売ることにも成功したようで、ブランド面でも有効性があるようです。
現在フォートナイトなどのゲームは人を多く集められるプラットフォームであること、また普段は音楽にあまり触れない層にもリーチできるポテンシャルがあることから、ゲーム内音楽イベントは「花形」であるような気がします。
もちろんこのようなイベントが増えてくればプレイヤーも「慣れてきて」、次第に注目度も薄れていくと思うので、成功を収めるためには工夫を凝らす必要性が出てきそうですが。
参照/関連記事:トラヴィス・スコット×フォートナイト なぜ「歴史的」だったのか? - コラム : CINRA.NET
・今後どうなる?最終週でラジオに大きな変化が
5/30週にビルボードの記事内で、“Blinding Lights”のラジオ再生数が1.146億から8900万まで一気に下落。Mediabase*6などの他のラジオ観測媒体ではこのような下落は記録されていなかったことに加え、”Blinding”以外の曲も同様にビルボードの記事内で大きく再生数を落としていることを鑑みると、この曲が調子を落としたことによる減少ではないと思います。
全体でおよそ2割が減少しているようで、ラジオを主要なポイント源とする曲の順位下降も一部見られました
(例)
・Break My Heart 31位→38位
・Here And Now 59位→77位
・Don’t Rush 84位→圏外
・Be A Light 86位→100位
※これらの曲はMediabaseでは上昇している曲なので、Hot 100のラジオ減算が順位下降の理由であると推測される
これは仕様変更なのか、一時的なものなのかは不明です。
感染症によって外出が減少→車に乗る機会が減少→ラジオを使う機会が減少、というシナリオが浮かびましたが、それがあるとすれば「次第に」再生数が減少するはずなので、その可能性は低いと最初は考えていました。
しかしこの状況に適応した再生数のカウント方が最近になって確立され、それが今週に適応された、という考え方をするとこのシナリオも合点がいきます。
このラジオ減算に伴い、上位の順位が事前の予想と異なるなど、順位に影響があるのは確かだと思います。この減算の真相は不明なので、今後しばらく様子を見たいです。
・名義を載せる / 載せない問題
5/30のトップ10記事で、ビルボードは“Say So”からNicki Minajの名義を抜くと記載。オリジナルの方が主要なポイント源と判定されたためです。過去の週の分の名義は残るので、1位を取った功績はそのままとのこと。ただ現在もビルボードのサイト内では名義が残っていますが……
一度与えられた名義が無くなる、ということは以前Ed SheeranとBeyoncéの”Perfect”でもありました。
名義に関する議論は今月もう一つありました。それはビルボードがJonas Brothersとの“X”をKarol Gの「2曲目」のトップ40としたことです。ここで「1曲目」にあたるのは2018年の”Dame Tu Cosita”です。
.@jonasbrothers' "X," featuring @karolg, debuts at No. 33 on this week's #Hot100.
— Billboard Charts (@billboardcharts) 2020年5月26日
It's the Jonas Brothers' 15th career top 40 hit, and Karol G's second.
基本的にこれはビデオの面白さ中心にヒットしていたEl Chomboによる曲ですが、しかしラジオでのオンエア時にPitbull x El Chombo x Karol G Featuring Cutty Ranksと名義が変更されました。
Hot 100に入っていた時はEl Chombo以外の名義は一度も載らなかったです。そもそもPitbullバージョンのリリースは8月で、Hot 100に入っていた時(7月の1週目に外れた)にはこの名義のバージョンは「存在しない」のです。
つまりKarol Gはこの曲の「トップ40入り」には全く寄与していないながらも、ラジオ用バージョンには参加したことから、キャリアにおけるトップ40として後付けで記録されたのです。
正直チャートを見ていてこの名義何で無いの? / 何であるの?ということは時折あります。名義を載せる・載せない問題は謎が多いです。 *7
・ビルボードによる声明?
「ビルボード」の動きでもう一つ注目したいのは”GOOBA”に関するチャートのカウントを説明したことです。ファンを使って閲覧数稼ぎ?(○○○?Vote!など)のような記事を頻発する割には、ファンの意見に応えることが少なかったビルボードですが、6ix9ine当人の抗議もあってか声明を出しました。
このファンに対応すること自体は良い方向性だと思います。しかし「透明性のために……」と冒頭で述べながらも、「詳細なデータはアーティスト側に提供できない」「Hot 100のポイントシステムを表に出すことはない」など、データは伏せるスタンスを繰り返し見せていたため、けっこう肩透かしだった印象はありました。
・今月のTikTok
大きく順位を伸ばしたのは“Party Girl”。4週でトップ40まで到達し、勢いを感じます。ちなみにこれ以外に”After Party”、Flo Milliの”In the Party”と、”Party”がつく曲がサービス内で複数流行しています。前者はHot 100に登場、後者はサービス外ではあまりヒットしていません。
既存のTikTok曲も着実に勢力を伸ばして定着しています。注目したいのは上位曲です。直近(5/30)のトップ10のうち、”Intentions”以外は何らかの形でTikTok曲と認識されています。
5種類のソースを参考にすると、下記の表のようにどれかには当てはまることが多いです。
Wiki | Visicks | Tunes | Apple | 公式 | ||
1 | Savage | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
2 | Say So | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
3 | Blinding Lights | ○ | ○ | ○ | ||
4 | ROCKSTAR | ○ | ○ | ※ | ||
5 | Toosie Slide | ○ | ||||
6 | Life Is Good | ○ | ||||
7 | The Box | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
8 | Don't Start Now | ○ | ○ | ○ | ○ | |
9 | Intentions | |||||
10 | Circles | ○ | ○ |
・Wiki = WikipediaにTikTokで人気があるとの記載がある
・Visicks = Visicks氏のTikTok Songsシリーズで紹介されたことがある (YouTube / 登録者数60.5万)
・Tunes = TikTokTunesというチャンネルに曲がアップされたことがある (YouTube / 登録者数203万)
・Apple = Aliya Carpenter氏のTikTokプレイリストに掲載されている (Apple Music) *8
・公式 = 認証マーク付き、TikTokによるプレイリストに掲載されている (Spotify)
※公式の最終更新は5月上旬なので、その時期にまだ“ROCKSTAR”は人気を得ていない
“Savage”、”Say So”、”The Box”は全てで掲載され、誰がどう見てもTikTokヒットのようです。“Don’t Start Now”もなかなかです。
一方興味深いのは“Toosie Slide”。Wikipediaでは「TikTokで人気」との記述があるのですが、他の媒体はそう捉えていないようです。果たして正しいのはどちら!?「TikTokで流行っている」がどのような状況なのか、明確な定義がないためこの判定は難しいですがね。(個人的には”Toosie Slide”は「流行っている」判定で問題は無いと考えていますが、それがDrake側の想定を超えた規模だったのか?という点に関しては微妙です。)
最近このような調査も始めました。
・その他の曲を短評
・Post Malone – Circles
5月も全ての週をトップ10で駆け抜け、トップ10滞在週数を38まで伸ばしています。ラジオの安定感があり、かつこの手の曲としてはストリーミングが強めなことが有効に働きました。ラッパーにはあまり縁のないアダルトポップ系で人気を得たことが大きかったです。ラップ~ポップまで複数フィールドを自在に駆け回るPost Maloneならではの記録と言えると思います。
・Justin Bieber – Yummy
“The Box”に敗れ2位デビューした後、長く続かず。「完走」を果たせず15週で圏外へ。期待はずれのチャートアクションに。ただ後続の”Intentions”は現在もトップ10に残るロングヒットになっており、そちらに注目を集中させた、という点では”Yummy”は意味ある犠牲だったという読み方もできます。
USのSpotifyでは既に圏外ですが、グローバルではまだ直近の週でも100位以内で粘っています。
この曲もTikTokで流行したとされています。前述の5つのソースのうち、Wikipediaと公式のリストに掲載されています。大物アクト+TikTokでの流行という要素を重ね合わせても、曲がうまくヒットしなかったのは興味深いですね。
・Gabby Barrett – I Hope
カントリーとしてはストリーミングでの人気を得たこともあり、ラジオのピーク後もある程度上位に
ビルボードも他の媒体でも、On-Demandがおおよそ17位程度の成績を記録しているとされていますが、しかしそのストリーミングがどこから判別できないのです。
カントリーは一般的にAmazon Musicで人気、この曲も実際にトップ10入りと「表示」されています。しかしAmazon Musicでこの曲と同等以上の人気があり、かつSpotifyとAppleでも“I Hope”を大きく上回る”Dance Monkey”は各種On-Demandランクで40~50位程度に入っています。
またAmazon Musicのランキングは「どの地域のランキング」か「どの日のランキングか」の記載が全く無いため、ここも謎が残ります。(ただしカントリー曲が多くエントリーしている以上、アメリカのランキング or アメリカの比重が高いグローバルランキングのいずれかの気がしますが……)
Amazon Musicのチャート(?):Amazon Music
※PCからのみ閲覧可能 (スマホからPCビューにしても表示されない)
他にもこの勢力図をひっくり返すようなサービスがあるのかは分かりませんが、「どこで人気」がはっきりしない曲です。
(他のUSランキングが分かった媒体)
・Deezer:Dance Monkey4位 I Hope圏外
・Tidal:いずれも圏外 ただしランキングが20位までしか無い
・Chris Brown feat. Drake – No Guidance
R&B/Hip-Hop Airplay*9で27週1位。”Adorn”を上回り、この系統の最長1位記録を更新した曲。このラジオヒットにより、Hot 100でに46週も滞在し続けました。これはChris Brown、Drakeいずれにとっても最長のHot 100滞在となりました。
もちろんストリーミングでも人気。久々の両者のコラボは想像を超える大成功だったと評価できます。
・Karol G & Nicki Minaj – Tusa
21週目のタイミングでまだラジオが微妙に伸びていたので、51位以下ながらもチャートに残留。次の週にチャートから外れたものの、この+1週分が大きく、年間チャートに滑り込む可能性も?
ラテン圏でいくらヒットしていても、英語ヴァースがないとラテン以外のラジオではほとんどかからないため、Nicki Minajの存在はUSでのヒットでは重要です。
・Halsey – you should be sad
ピーク26位、滞在18週と満期を待たずにチャートを後に。しかし多くの期間、中位だったため年間チャートには入りそうです。
・Harry Styles – Watermelon Sugar
5/30の週、ビデオ公開&シングルカットに伴い64位に再登場。アルバム後のシングルカットに苦戦するアーティストも多いなか、ここまで鮮やかにシングルカットが決まるのはお見事。特にカット後にSpotifyやAppleでも浮上したのは珍しく感じます。
・Maren Morris – The Bones
・SAINt JHN – Roses
・Lil Mosey – Blueberry Faygo
6月にトップ10に到達するかもしれない曲です。“The Bones”は複数系統のラジオで上位に入っており、粘りを見せています。また”I Hope”と同様にApple / Spotify / Amazonで観測される数字以上にストリーミングランクで上位に入っています。(Apple / Spotifyでは200位圏外、Amazonは20位前後)
“Roses”と”Blueberry Faygo”はストリーミング人気を保ちつつ、ラジオが伸びてきたことが浮上の要因です。
・Drake feat. Giveon – Chicago Freestyle
・Drake feat. Fivio Foreign & Sosa Geek – Demons
・Drake feat. Playboi Carti – Pain 1993
ミックステープの効果で客演のラッパーにも恩恵が。Giveon、Fivio Foreign、Sosa Geekの3名はここでHot 100デビュー。Playboi Cartiは初のトップ10入りを記録しました。
・Lil Baby & 42 Dugg – We Paid
最近よく見られるアルバムのデラックス版。大ヒット作品であっても、デラックス版はそこまで大きな注目を受けない印象ですがLil Babyはデラックス版で一定の成功を収めました。
デラックス版で新規追加された6曲のうち、5曲がHot 100入り。その後も安定してアルバムチャート上位に残っています。Apple Musicでの支持が強いです。
※Lil Uzi Vertも名義上「デラックス版」で成功を収めていますが、形態としてはデラックス版というよりも、「2週連続で新アルバムをリリースした」に近いと思うので、一般のデラックス版とは異なる事例だと考えています。
・Young T & Bugsey feat. Headie One – Don’t Rush
異色 of 異色のヒット。まずHot 100では珍しいUKラッパーという点(全員)。現在各地でラップが流行していますが、USラップが他地域でヒットすることはあっても、逆はほとんどありません。
そしてもう一つ珍しいのはTikTok発なのにラジオヒットという点。TikTokでの人気によりiTunesで上位入りし、その後ラジオでオンエア。しかしSpotifyやApple Musicではランキング入りした実績が無いのです。
例の「5つのソース」では、WikipediaとVisicksに掲載されています。*10
・Diplo feat. Morgan Wallen – Heartless
SpotifyやAppleといった媒体で人気を得て、じわじわとHot 100を浮上するDiploのカントリープロジェクト曲。Morgan WallenはSpotifyやAppleでも中位以上にランクインしています。
ラジオの伸びしろがまだまだあることから、年の後半さらにヒットするかも?
今月のデータ
新規のトップ40入り
5/2
☆9 DaBaby feat. Roddy Ricch – ROCKSTAR
☆17 DaBaby feat. YoungBoy Never Broke Again – Jump
☆35 Playboi Carti - @ MEH
☆36 Sam Smith & Demi Lovato – I’m Ready
△40 Luke Combs feat. Eric Church – Does To Me
5/9
☆1 Travis Scott & Kid Cudi – THE SCOTTS
☆11 Juice WRLD – Righteous
△39 Carly Pearce & Lee Brice – I Hope You’re Happy Now
△40 Thomas Rhett feat. Jon Pardi – Beer Can’t Fix
5/16
☆7 Drake feat. Playboi Carti – Pain 1993
☆14 Drake feat. Giveon – Chicago Freestyle
☆19 Future, Drake & Young Thug – D4L
☆25 Drake feat. Chris Brown – Not You Too
☆27 Drake feat. Future – Desires
☆29 Marshmello & Halsey – Be Kind
☆30 Drake – Time Flies
☆32 Drake – Deep Pockets
☆34 Drake feat. Fivio Foreign & Sosa Geek – Demons
☆35 Drake – When To Say When
☆39 Drake – Landed
5/23
☆1 Ariana Grande & Justin Bieber – stuck with u
☆3 6ix9ine – GOOBA
△37 Lewis Capaldi – Before You Go
△38 Travis Denning – After A Few
△39 BENEE feat. Gus Dapperton – Supalonely
5/30
☆30 Polo G feat. Juice WRLD – Flex
☆32 Future feat. Travis Scott – Solitaires
☆33 Jonas Brothers feat. Karol G – X
☆34 Future feat. YoungBoy Never Broke Again – Trillionaire
△38 StaySolidRocky – Party Girl
☆40 Katy Perry – Daisies
主に外れた曲
5/2
47 YNW Melly & Juice WRLD - Suicidal (🗻20位 /⏰20週)
77 Luke Bryan – What She Wants Tonight (🗻46位 /⏰17週)
87 Dustin Lynch – Ridin’ Roads (🗻47位 /⏰20週)
94 Justin Bieber - Yummy (🗻2位 /⏰15週)
97 Megan Thee Stallion – B.I.T.C.H. (🗻31位 /⏰10週)
5/9
43 DaBaby - BOP (🗻11位 /⏰30週)
48 Chris Brown feat. Drake – No Guidance (🗻5位 /⏰46週)
62 Russ & BIA – BEST ON EARTH (🗻46位 /⏰20週)
70 Karol G & Nicki Minaj - Tusa (🗻42位 /⏰21週)
5/16
33 Arizona Zervas - Roxanne (🗻4位 /⏰26週)
37 The Weeknd – Heartless (🗻1位 /⏰23週)
38 Travis Scott – HIGHEST IN THE ROOM (🗻1位 /⏰22週)
46 Dan + Shay & Justin Bieber – 10,000 Hours (🗻4位 /⏰30週)
49 Travis Scott - goosebumps (🗻32位 /⏰25週)
61 Lady Gaga – Stupid Love (🗻5位 /⏰9週)
5/23
75 H.E.R. feat. YG - Slide (🗻43位 /⏰20週)
97 Summer Walker & Usher – Come Thru (🗻42位 /⏰19週)
5/30
40 Rod Wave – Heart On Ice (🗻25位 /⏰27週)
73 Ingrid Andress – More Hearts Than Mine (🗻30位 /⏰20週)
75 Demi Lovato – I Love Me (🗻18位 /⏰10週)
83 Brett Young - Catch (🗻29位 /⏰16週)
93 Jake Owen – Homemade (🗻39位 /⏰16週)
96 Jordan Davis – Slow Dance In A Parking Lot (🗻37位 /⏰19週)
97 Halsey – You should be sad (🗻26位 /⏰18週)
98 Lil Uzi Vert – That Way (🗻20位 /⏰10週)
・各指標の1位推移
群雄割拠です。
・Rolling Stone Chartsトップ10
"THE SCOTTS"が2週目以降もトップ10圏内に残留しているのが特徴的です。ほか"Stuck with U"と"GOOBA"も2週目はトップ10に残りました。
・各週の動向まとめ表
Twitterで毎週配信している、その週の動向ショートまとめです。
この月の各週Hot 100へのリンク
5/2:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-05-02
5/9:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-05-09
5/16:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-05-16
5/23:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-05-23
5/30:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-05-30
(過去の月へのリンク)
・4月号
・3月号
・2月号
・1月号
*1:6ix9ineがリークしたものが現在の計算システムとして推測されています。ただリーク以前からファンの間で推測されていたシステムでもセールス vs 有料会員ストリーミングの比率は同じだった
*2:わざわざ「ソロ」と明記しているのが個人的に気になります。ソロではない女性同士のコラボ、例えばグループ+別の女子ソロシンガーなどのコラボが存在するのでしょうか……??
*3:これは後述のラジオを考慮した名義追加の可能性もあると考えられます
*4:ビルボードの記事で”largely powered by”
*5:リミックスはまとめて集計されることを考慮
*6:を元にしたKworb
*7:まだまだ資料は集められていませんが、名義はラジオ優先という「印象」はあります。印象レベルなので未検証ですが……
*8:以前検索で上位に登場したものです
*10:私が行っているTikTok上位ランカーの動画を見る企画では、観察をはじめた3月以降、今の所1回も見たことがないです