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Billboard Year-End 2021(年間チャート) を10のポイントで見る

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 こんばんは。12月初旬、ビルボードから各種年間チャートが発表されました。Hot 100の年間チャートを中心に、これを振り返っていきます。各年間チャートは以下のリンクから閲覧できます。

 

https://www.billboard.com/charts/year-end/ (年間チャート窓ページ)

https://www.billboard.com/charts/year-end/hot-100-songs/ (Hot 100)

https://www.billboard.com/charts/year-end/top-billboard-200-albums/ (アルバム)

https://www.billboard.com/charts/year-end/billboard-global-200/ (Global 200)

※窓ページから下に行き、Categoryを選ぶと、ジャンル別のチャートが閲覧できます

 

 また、年間チャートの記事を補足するデータ表を自分でいくつか作成したのですが、かなりサイズが大きいので、別の記事に分けて掲載します。

 

 年間チャートの集計期間は正式に公開はされていませんが、2020年の11/21~2021年の11/13付のチャートまでだと考えられています。(=2020年の11/6~2021年の11/4までの動向が集計の対象)

 

 

 

 

 

1 週間で1位にならずとも年間1位!

 

 今年の年間チャートで最も注目を集めたのは、“Levitating”の年間1位獲得でしょう。週間で1位を取らずして、年間で1位を獲得するという快挙を達成したのです。2000年の”Breathe”、2001年の“Hanging By A Moment”に次ぐ3回目の出来事です。

 週間で飛び抜けた成績を記録せずとも、長期にわたり安定したヒットを飛ばすことで、トータルの成績が反映される年間チャートでは上位に入るのです。この3曲はいずれもHot 100滞在期間が1年を超えています

 また、「ラジオの伸びが長期にわたる」という共通点もあります。“Breathe”はカントリー→アダルトポップ、”Hanging~“はロック→アダルトポップ、とクロスオーバーヒットしたことにより、ラジオがじわじわと伸び、結果Hot 100でもロングヒットになりました。

 “Levitating”はクロスオーバーではない形でラジオがじわじわ伸びました。最初は通常のラジオヒットで、1回は普通にピークを迎えていました。そのピークの少し後に、TikTok等の影響でストリーミングが再浮上します。ラジオがこの動きに呼応し、「2回目の上昇」を果たし、曲の寿命が大幅に伸びました。Mediabaseというラジオ関連のチャートが、この動きに対して新ルール(1回外れた曲が復帰可能に)を作ったという点から、珍しいチャートアクションだったことが伺えます。

 ストリーミングに呼応し始めたラジオが、このロングヒットを生み出しましたのです。

 

 昨年以降、週間1位を巡って激しい争いが繰り広げられました。週間1位獲得に一定ブランド性があるからなのでしょう。しかし“Levitating”が週間1位を獲得せずに、年間チャート1位ことはそのような考え方に影響を与え、ロングヒット重視の姿勢に傾く可能性もあるのかもしれません。*1

 

 

2 これ以外は「素直」?な年間トップ10

 週間2位の曲が年間1位になる、という点ではイレギュラーな今年の年間チャートですが、他のトップ10を見渡すと比較的「素直」なように感じます。

 

1 Dua Lipa – Levitating

2 The Weeknd & Ariana Grande – Save Your Tears

3 The Weeknd – Blinding Lights

4 24kGoldn feat. iann dior – Mood

5 Olivia Rodrigo – good 4 u

6 Doja Cat feat. SZA – Kiss Me More

7 Silk Sonic – Leave The Door Open

8 Olivia Rodrigo – drivers license

9 Lil Nas X – MONTERO

10 Justin Bieber feat. Daniel Caesar & Giveon – Peaches

 

 これらの曲、ほとんどが1位を獲得しています。獲得していないのは“Levitating”、”Kiss Me More”の2曲ですが、これらも2位、3位と週間順位も高めです。(“Blinding Lights”も、今年の集計期間だけを考慮すると3位ピークになります)

 昨年は年間トップ10に、週間12位(“The Bones”)と週間6位(”Adore You”)の曲が入っていたので、それと比べると「ずいぶんストレートだな」ということです。

 さらに、「素直」と考えた理由はもう一つあります。今年の年間トップ10曲の、ラジオやストリーミングの年間成績の表です。

 

  R     D     S    
1 Levitating 1 4 1
2 Save Your Tears 3 11 2
3 Blinding Lights 4 7 7
4 Mood 2 32 12
5 good 4 u 10 18 3
6 Kiss Me More 7 27 6
7 Leave the Door Open 5 9 15
8 drivers license 13 14 4
9 Montero (Call Me by Your Name) 12 26 5
10 Peaches 8 22 14

R=Radio, D=DL(Digital Songs), S=Streaming

 

 ラジオ、ストリーミングはどの曲も年間15位以上に入っており、いずれの媒体でもHot 100の年間トップ10に相応しい活躍をしていることが分かります。ちなみに昨年はストリーミングが年間50位(“Memories”)、年間61位(”The Bones”)の曲がHot 100の年間トップ10入りを果たしていました。その昨年と比べると、偏ったヒットが無く、順当なように感じるランキングと評することもできそうです。

 さらに、ストリーミング本格導入以降のHot 100年間トップ10の、ラジオ、DL、ストリーミングの平均成績の表です。

 

  R       D       S      
2021 6.5 17.0 6.9
2020 9.7 16.1 18.6
2019 10.7 10.9 8.3
2018 9.5 6.6 9.4
2017 12.6 10.2 11.4
2016 12.2 7.2 8.1
2015 9.3 7.9 8.2
2014 8.5 7.2 7.4

 ラジオ、ストリーミングともに導入以降では、最もHot 100年間の成績と「合致」していることが分かります。代わりに、DLが最も「不一致」になっています。しかし、現在DLの規模はかなり限られてきており、影響力が小さくなるのは自然な流れかと思います。

 

~トップ10曲の短評~

 

1 Levitating:1章で説明したため割愛

 

2 Save Your Tears

 元々強力なラジオヒットですが、そこにAriana Grandeのリミックスを追加し、盤石な体制を築きました。さすがに“Blinding Lights”には劣りますが、かなりの規模のヒットになりました。

 

3 Blinding Lights

 昨年の年間チャートで1位でしたが、今年も3位にランクイン。複数年にわたり年間チャートのトップ10に入るのは史上5曲目のことです。そして、複数年にわたり年間トップ5以上に入るのは史上初です。

Chubby Checker – The Twist (1960:10位 1962:9位)
Elton John – Candle In The Wind 1997 (1997:1位 1998:8位)
LeAnn Rimes – How Do I Live (1997:9位 1998:5位)
The Chainsmokers feat. Halsey – Closer (2016:10位 2017:7位)
The Weeknd – Blinding Lights (2020:1位 2021:3位)

 

4 Mood

 ラップでもありながらポップに近く、さらにオルタナティブ系ラジオでもオンエアされるなど、その属性の広さがロングヒットに繋がりました。

 

5/8 good 4 u / drivers license

 “drivers license”の大ヒットだけでも超サプライズでしたが、その後も同等以上のヒットを飛ばし、スターとしての地位を確立させたOlivia Rodrigo。女性アーティストで、かつラッパー以外で年間チャートのトップ10にダブルで入ったのは2011年のKaty Perry以来です。

 

(年間トップ10ダブルのアーティスト)

2021 The Weeknd, Olivia Rodrigo
2020 Roddy Ricch
2019 Post Malone
2018 Drake, Post Malone, Cardi B
2017 The Chainsmokers, Quavo
2016 Justin Bieber, Drake, The Chainsmokers
2015 The Weeknd
2014 Iggy Azalea
2013 Macklemore & Ryan Lewis
2012 なし
2011 Katy Perry
2010 Taio Cruz

 

6 Kiss Me More

 昨年は週間で1位になった“Say So”が年間11位。ギリギリで年間トップ10入りを逃したDoja Catでしたが、そのリベンジを達成。今年も複数のヒットを生み出し、着実にスター性を高めています。

 

7 Leave The Door Open

 評判の高さ、そしてヒット度を両立させた1曲。Anderson. Paakをスターダムに押し上げました。

 

9 MONTERO

 復帰シングルが1位デビューと、華麗なるスタートを切ったLil Nas X。以降も調子を維持して年間トップ10入り。”good 4 u”と並び、今年最も評価されている曲の一つです。

 

10 Peaches

 今年も元気だったJustin Bieber。Giveon、Daniel CaesarというR&B実力肌をメインストリームに紹介するという、トップスターらしい好仕事を果たした1曲でした。

 

 

3 エントリーの多いアーティスト

 

 続いて、全体を見渡すようなデータから今年の年間チャートを見ていきます。まずは誰が多くの曲を年間チャートに送り込んだか?というデータからです。

 

6 Drake, Doja Cat, Justin Bieber

5 Megan Thee Stallion

4 Lil Baby, Ariana Grande, The Weeknd, Lil Durk, Olivia Rodrigo

3 DaBaby

 

 年間チャートのエントリー数を増やすには、純粋な活躍具合ももちろんですが、それだけでなくシングルの回転の速さ+客演の活用などの戦略性も必要になってきます。上記のアーティストで客演を活用していないのはOlivia Rodrigoのみです。(ダブルでメインアーティスト扱いだったとしても、他のアーティストのアルバム曲ならば、ここでは便宜上客演扱いにしています)

 

 年間チャートに到達するにはHot 100である程度長く滞在する必要があり、そのためにはラジオのサポートが重要になります(ストリーミングだけでは曲の持続に限度があります)。しかし、ラジオも特定アーティストにだけ贔屓するわけにもいかず、同時に送り出せるシングル数は限られてきます。それの有力な対策になりうるのが、シングルのサイクルを早めることや、客演の活用になります。

 例えばOlivia Rodrigoの”drivers license”はピーク時の勢いが凄まじかったですが、Hot 100滞在は28週のみで、長くありません。ポテンシャル的にはもっとロングヒットする素質はあったかもしれませんが、後続シングルのヒットを優先し、切り替えを行ったのです。“deja vu”や”traitor”はその恩恵を受けて年間チャートで高めの順位に位置することに成功しています。*2

 

 ちなみに、ラジオ抜きで年間チャート入りするのは難易度が高いですが、不可能ではありません。Drakeの“Wants And Needs”と“Knife Talk”、Doja Catの”Streets”はラジオの成績がかなり低いですが、年間チャートに入っています。(週間のラジオ50位以内に入らず、系統別に見てもリズミックの下位に入る程度) このようなラジオに囚われないプラスがあると、エントリー数増加の大きな手助けになります。この恩恵を受けたDrakeとDoja Catは最多タイのエントリー数を記録しています。

 この2人と同一成績でトップのJustin Bieberはシングル裁きが見事でした。特に大きなシングルの間に挟まれる“Lonely”と”Anyone”の扱いがうまいと思います。この時期のシングルなら、プロモ用曲でラジオにかからないこともありますが、ラジオでもオンエア。しかしアルバムで“Peaches”がヒットするや否や、こちらに素早く切り替える……という機を見た見事な裁きが、年間チャート入りが増えた要因になったかと思います。

 もちろん戦略以外にも、純粋なヒット度が高いからこそ成し遂げられた記録ということも大切です。

 

 この3人に次ぐ5曲がエントリーしたのはMegan Thee Stallion。彼女もまたシングル裁きに長けており、サイクルを早めて多くの曲を活かすのが特徴的。ストリーミングのペースに合わせて素早くラジオが呼応していき、早いタイミングでラジオがピークを迎えます。そしてストリーミングの熱が冷めないうちに次のシングルへとスイッチし、元のシングルはオンエアを落とす……という流れが多いです。彼女のシングル“Body”、”Thot Shit”、“Cry Baby”がいずれも20週の滞在でチャートを後にしているのは、この戦略のためです。

 

 最後に4曲勢。ここで注目したのはLil BabyとLil Durkです。コラボアルバムもリリースしたこの2人は、Apple Musicなどの「ラップ界」で覇権を握っている印象。この2人が関与した曲はラップリスナーの間で人気を集めやすいです。

 ただ2人とも、ポップへのクロスオーバーはまだ不足しているため、世界的な注目度は若干足りない、というのが現状です。

 

 

4 ジャンル別エントリー

 

 次に、ジャンル別のエントリー数を確認していきます。ジャンル分けはビルボード準拠。例えばHot Country Songに入っている曲=カントリー曲とします。どのジャンルにも属していない曲、または複数ジャンルに属している曲はポップ扱いとします。

 

R&B / Hip-Hop 39(-10)

ポップ 29 (+5)

カントリー 19 (+1)

Rock / Alternative 9 (+3)

ラテン 4 (+4)

ダンス 0 (-3)

 

(推移表)

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 R&B / Hip-Hopの覇権は変わらず。ただしストリーミングが本格開花した2017年以降では最も低いエントリー数でした。ポップと比べると、どうしてもラジオの規模では劣るため、Hot 100がラジオに重きを置くと自然と劣勢になってしまうジャンルではあります。

 その裏でやや復権したのはポップ。過去と比べるとまだ少ないですが、R&B / Hip-Hopの背中も少し見えてきました。

 

 そして近年強化されているのはカントリー。ストリーミングをある程度克服し、さらにHot 100で欠かせないラジオも変わらず強い、ということで存在感を強めています。カントリー系ラジオでは多くの曲が「順番に」1位を獲得していくため、仮に特定のアーティストが良かったり悪かったりしても、ジャンルトータルでヒット度が安定していることが特徴です。

 このような傾向から、ビルボードがルールをいじらない限り、今後もカントリーの年間チャート入り数は安定して多いと考えています。

 ちなみに今年ストリーミングで多大な人気を得たMorgan Wallenですが、途中ラジオで「キャンセル」されたこともあり、年間チャート入りはゼロでした。しかし、今年後半からラジオが復活したため、来年以降は彼の存在がプラスに働く可能性も?

 

 続いてRock / Alternative。2020年から、Rockに加えてAlternative領域が合算され、対象曲が増加しました。24kGoldnの“Mood”、The Kid LAROIの”WITHOUT YOU”がここに含まれるなど、かなり対象は広いようです。

 この対象の広さも増加の理由の一つですが、実際にRockの復権は地味に進んでいるように思います。その象徴はGlass Animalsの“Heat Waves”の上位躍進(16位)でしょう。この曲は従来の区分けでもRockに含まれていたと思います。”Levitating”と同じ過程での、ラジオの二段階成長をしています。

 Spotifyでは過去曲や知名度の低い曲を含め*3、Rock成分の曲が人気を集めることが珍しくなく、じわじわと復興の芽を伸ばしているジャンルのように感じます。

 

 ラテンは4曲。過去の傾向と明確に違うのは、英語曲の客演を迎えていないことです。ラテン圏でヒットするのみでは少し規模が足りないので、英語ヴァースをリミックス等で追加し、ラテン以外のラジオにもかかるようにする……というのが従来のラテン曲ヒットの手法でしたが、今年の4曲はそれを採用していません。

 Kali Uchisの”telepatía”だけは、元から半分程度英語ヴァースが含まれていますが、それ以外の曲はスペイン語一本で勝負しています。それで結果を残したということは、ラテンの勢力拡大を感じます。

 Bad Bunny(2曲)は絶大な人気を集め、特別戦略を立てずとも、ヒットを飛ばせるようになっています。実際に“Dakiti”はスペイン語ヴァースのみながらも、リズミック系ラジオにランクインしました。

 もう一つの“Todo De Ti”はサウンドで勝負。ディスコ・バイブスでクロスオーバー的な人気を得て、ラジオはラテン系のオンエアのみながらも、ストリーミング人気で年間チャート入りを果たしました。

 

 最後に、0曲のダンス。元々USで注目の薄いジャンルではありましたが、ついに0に。MarshmelloがとのJonas Brothers“Leave Before You Love Me”でHot 100の年間入りを果たしましたが、該当ジャンルのチャートには含まれていませんでした。

 ヒットのパターンは2つあって、USでも人気の超ビッグアーティスト、もしくはヨーロッパ圏のヒットが主にポップ系ラジオ経由で流入するか。昨年で言うと、前者がLady Gaga、後者が“Roses”と”ily”です。

 Lady Gagaは必ずしもダンス系のミュージシャンではなく、次回以降もこのジャンルに含まれるか分かりません。そして現在は他に際立ったダンスアーティストが見当たらないため、後者のパターンが頼りになります。今年はこのパターンのヒットで、HVMEの“Goosebumps”が惜しい所まで来ていました。来年はElton JohnとDua Lipaの”Cold Heart”に期待が持てそうです。

 

 

5 N年連続エントリー

 

13年連続 Drake

9年連続 Ariana Grande

7年連続 Justin Bieber

6年連続 Young Thug

5年連続 Kane Brown, Maroon 5, Cardi B, Luke Combs

4年連続 Marshmello, Lil Baby, Chris Brown, Dan + Shay

3年連続 Lil Nas X, Billie Eilish, Megan Thee Stallion, Jonas Brothers, DaBaby, Gunna

 

 Drakeは最多エントリー数とともに記録を伸ばしています。ヒットの度合いも、リリースの数も多いアーティストなので、この記録はなかなか途切れなさそうです。

 次点はAriana Grande。自身のシングルのほか、The Weekndとのコラボも活用し、4曲がエントリー。ただしいずれも年の前半のヒットだったため、来年も記録を持続するには、来年の夏までに何らかのリリースが必要です。

 

 続く7年はJustin Bieber。2015年の“Purpose”で復活を遂げて以降、常にポップシーンの最前線を走り続けており、今年も6曲エントリーと大活躍。この調子とリリースペースで行けば来年も記録を維持しそう。今年後半にヒットした”Essence“や、それなりに上位の”Ghost”あたりの現行シングルにも来年の年間チャート入りの可能性があります。

 

 6年連続Young Thug。独自のスタイルを持つ存在として、客演仕事は絶えず。自身も今年2回アルバム1位を獲得しています(“Punk”の方は今年の年間チャートの集計外)

 

 5年連続、4年連続の面子はラジオで堅実にヒットを重ねるアーティストが多い印象。派手にヒットせずとも、堅くラジオでの人気をつかめる曲があれば、○年連続の記録は維持できます。Cardi BとLil Babyはこの印象ではないですが。

 

 次に、「脱落組」にも目を向けていきます。昨年までは連続で年間チャート入りしていたものの、今年途切れたアーティストのことです。

6 Shawn Mendes, Camila Cabello, Selena Gomez
5 Post Malone, Travis Scott, Halsey
4 J Balvin, Khalid, Quavo, Swae Lee
3 Juice WRLD
↑昨年までの継続年数

 

 6年の継続が切れたのはShawn Mendes、Camila Cabello、Selena Gomezの3人。サイドプロジェクトのラテンしかリリースのなかったSelena Gomezはともかく、気合の入ったシングルもあった“Señorita”な2人は悔しいのではないでしょうか。

 当該曲こそヒットしましたが、それ以降の楽曲で下降線を描いているような……成功したのか、失敗なのかは分かりませんが、2人は破局し、この「戦略??」は終わりを迎えました。

 次に5年が切れた組。Post Maloneは新シングルの“Motley Crew”がまさかの失敗。年間チャート入りを逃すほどコケるとはさすがに想定外だったのではないでしょうか。ラップ回帰を感じさせる曲でしたが、評判は芳しくなく……。この路線は諦めたのか、次シングル”One Right Now”は再びポップに(この曲はリリースが遅すぎて年間チャート入りは無理)

 ほかリリースが少なかったTravis Scott、作風がメインストリームから遠のいたHalseyが同様に5年連続で記録をストップさせています。

 

 最後に4年が切れた組。客演等でよく見かけていたアーティストが多いです。特に印象的なKhalid。2017年以降は幅広い活動で、「どこでもKhalid」のような活躍を見せていましたが、この記録が切れていることから分かる通り、若干息切れの傾向が見られます。

 

 

6 ラジオが低い曲 / ストリーミングが低い曲

 

 踏み込んだ視点その1。特定の項目の成績が低い曲を見ていきます。まずはラジオが低い曲です。ラジオが週間50位以内(=Radio Songs圏内)に入らないながらも、年間チャートに入った曲は以下の通りです。

 

・ラジオが低い曲

曲名 (ジャンル別ラジオチャートの成績)

Drake feat. Lil Baby – Wants and Needs (リズミック32)

SZA – Good Days (リズミック16、アーバン*417、ポップ33)

Doja Cat – Streets (リズミック31)

Bad Bunny – Yonaguni (リズミック39、ラテン1)

Drake feat. 21 Savage & Project Pat – Knife Talk (年間チャート集計期間では無し)

Billie Eilish – Happier Than Ever (集計の期間後にRadio Songs入り)

Rauw Alejandro – Todo De Ti (ラテン1)

 

 裏を返せばストリーミングで強かった曲です。Drakeの2曲、そしてDoja Catの“Streets”は、ラジオの成績が低すぎるので、正式にシングルカットされていなかったと推測されます。(”Knife Talk”は集計期間後にあたる現在はシングルカットされています)

 

・ストリーミングが低い曲

Ava Max – Kings & Queens
Thomas Rhett – What’s Your Country Song
Keith Urban & P!nk – One Too Many
Duncan Laurence – Arcade
Parmalee & Blanco Brown – Just The Way
Cole Swindell – Single Saturday Night
Chase Rice feat. Florida Georgia Line – Drinkin’ Beer, Talkin’ God, Amen
Ritt Momney – Put Your Records On
Lainey Wilson – Things a Man Oughta Know

 

 以前よりは改善したとはいえ、やはりカントリー曲はストリーミングで人気を得ないことも多いようです。(上記のうち、6曲がカントリー)

 しかしカントリーでは無い曲もいくつか。“Kings & Queens”、”Arcade”、“Put Your Records On”の3曲。ただこれらの曲はそこまでストリーミングが苦手、という印象は薄く、”Kings & Queens”と“Arcade”の2曲はストリーミングありきのGlobal 200の年間チャートに入っています。世界的なストリーミングヒットを受け、それを受けてUSのラジオもオンエア。結果USではラジオではハマったものの、ストリーミングは微妙のような流れだと考えられます。

 もう一つの”Put Your Records On”もSpotify Globalでは18位まで到達しています(Spotify USでも16位) ヒットの時期が年またぎのタイミングだったことも影響しているかもしれません。

 

 

7 週間ピークの低い曲の「層が薄い」?

 

 踏み込んだ視点その2です。年間チャートに入った曲を週間のピークが低い順に並べると以下のようになります。

 

【2021】

週ピーク、曲、(年間順位)

52 Keith Urban & P!nk – One Too Many (81)

32 Rauw Alejandro – Todo De Ti (100)

32 Lainey Wilson – Things A Man Oughta Know

31 Dua Lipa – We’re Good (90)

31 Parmalee & Blanco Brown – Just The Way (88)

31 Moneybagg Yo – Time Today (76)

31 Mooski – Track Star (75)

 

 最も週間順位が低い“One Too Many”が異彩を放っています。この曲は21週目次点でラジオにまだ上昇傾向が見られたため、51位以下ながらも残留(通常21週目以降51位以下ならチャートから外れる)。その状態が長く続き、34週目までHot 100に滞在し続けました。その滞在の長さから、低いピークながら十分なポイントを稼ぎ、年間チャートに届きました。

 その「ラジオの上昇傾向」というのが曖昧で、ほぼ横ばいに近かったため、途中で外される判定が下される可能性もあったかと思います。ちなみに似たような形で、Florida Georgia Lineが週間57位で2019年の年間チャート入りを果たしています。数週ではなく、長きにわたる「特殊残留」を実現するためには、謎のラジオの横ばい状態が長く続く必要があります。(かつその時点がラジオのピーク*5でなければ外れるので、難度が高い。)

 「年間チャート入り」にさほどブランド性は無さそうなので、これを狙ってやっているとはさすがに思いませんが、あえて「戦略」として捉えるならば、低いヒット度で年間チャート入りを実現できるので、効率は良い手段とは思います。

 

 この“One Too Many”も面白い現象ではありますが、もう一つ注目ポイントがあります。2017年までも同様に、週間ピークが低い順に抜き出すと以下のようになります。

 

2021 52, 32, 32, 31, 31, 31, 31
2020 43, 41, 40, 39, 38, 35, 31
2019 57, 49, 48, 38, 38, 36, 36
2018 49, 43, 41, 36, 36, 34, 32
2017 41, 40, 38, 38, 38, 36, 34

 

 今年は“One Too Many”の52位こそ飛び抜けているものの、2番手以降は他の年よりも順位が高めということが分かります。「低めのピークながらも年間チャート入りする曲」の層が薄いということです。

 このことと、年間トップ10で高順位の曲が多かったことと照らし合わせると、年間チャートに入る曲が週間チャートでも評価されるようになった、と考えることもできます。ただし全体の週間順位のピークの平均を年ごとに見比べると、大差が無いため、「チャートアクションが極端な曲が減った」というのが正しそうです。

 偶然なのか、それともビルボードのルール変化による産物(ラジオの相対的強化?)なのかは分かりませんが、この「週間順位と年間チャート順位の接近」は、今後の密かな注目テーマかもしれません。

 

 

8 アルバムチャート

 

1 Morgan Wallen – Dangerous: The Double Album

2 Olivia Rodrigo – SOUR

3 Pop Smoke – Shoot For The Stars Aim For The Moon

4 Taylor Swift – evermore

5 Drake – Certified Lover Boy

6 The Kid LAROI – F*ck Love

7 Luke Combs – What You See Is What You Get

8 Ariana Grande – positions

9 Dua Lipa – Future Nostalgia

10 Lil Baby – My Turn

 

 基本ストリーミング中心。Pop Smoke、Drake、The Kid LAROI、Lil Babyはアルバムセールス年間トップ100に入っていないです。両方でトップ10は”evermore”と“SOUR”のみ。

 

 年間で首位に入ったのはMorgan Wallenの“Dangerous: The Double Album”。今年序盤に起こした件(Nワードを発していたことが発覚)で失速も考えられましたが、さほど影響は受けず。毎週の数字を見る限りおそらく2位以下に大差をつけての1位だったと思います。

 要因として大きいのは年の序盤にリリースしたこと。Billboard 200では、仮に先行シングルがヒットしていようとも、先行期間の分はカウントされず、アルバムのリリース時からのカウントになるので、リリース時期によって蓄積に大きく差が付きます。*6

 その時期的な要素に加え、ストリーミングも長く安定して獲得していたので、年間アルバム1位を獲得できました。先に述べた件で、ラジオでは一時期オンエアが停止していましたが、ストリーミングにはほとんど影響が無かったです。一応プレイリストから消えるなどの対応はありましたが。

 このアルバムで一つ気になるのは、最近Olivia Rodrigoの“SOUR”を週間チャートで上回ることがある点です。”SOUR”の方のリリースが直近で、さらにヒットシングル的な面でもこちらに分があるはずなので、逆に”Dangerous~”の粘りがどこから来ているのか気になります。曲数の関係―“Dangerous”が30曲、”SOUR”が11曲―ということが真っ先に思い浮かびますが、果たして……? もしかしたらジャンル別のリスナーのアルバムへの接し方等も理由として考えられるかもしれません。

 

 以下2位はOlivia Rodrigo。集計が半年ほど過ぎてからのリリースですが、さすがは今年の主役と言える大ヒットを遂げました。

 3位はPop Smoke、の昨年のアルバム。強力なシングルを複数擁していたこともあり、今年も人気が持続しました。一方、今年出した方のアルバム“Faith”は年間167位でした。

 4位は”evermore”。昨年の作品ですが、初週から今年の集計の範囲内です。セールスとストリーミングの両面で、初週の成績に優れるTaylor Swiftは初週が入るかどうかによって成績が大きく変わるでしょう。

 5位はDrake。ストリーミングの王だけあって、集計期間はわずか9週ながらもここまで順位を上げました。

 6位はThe Kid LAROI。バージョンアップを重ね、次第に曲数が加わるという作品。“Stay”擁する第3弾をリリースした時に、初めて週間1位を獲得しました。その”Stay”、そして“WITHOUT YOU”と強力なシングルの恩恵が大きいでしょう。

 7位はLuke Combs。ストリーミングでも人気のあった“Forever After All”がデラックス版で追加されたことも効いているでしょう。

 8位はAriana Grande。特に序盤は複数のヒットシングルもあり、ポイントを稼いでいました。今年の年間チャートの集計が始まる、一つ前の週にリリースされています。ポイントの大きい初週の数字は入りませんが、年間通しての蓄積はあります。

 9位はDua Lipa。この中で唯一週間1位を獲得していませんが、シングルで好調だったこともあり、上位入賞。

 そして最後に10位のLil Baby。昨年のアルバムチャート覇者が、今年も人気を保ちトップ10入り。今年にかけてのヒット曲は無かったですが、それでもストリーミング人気は堅かったようです。今年リリースしたLil Durkとのコラボ作“The Voice of the Heroes”は年間38位。

 

【その他のデータ】

 

・エントリーが多い

7 Drake

6 Taylor Swift

3 Pop Smoke, Juice WRLD, Lil Durk, Bad Bunny, The Weeknd(含ベスト盤), Billie Eilish, YoungBoy Never Broke Again, Post Malone, Rod Wave, Kanye West, Polo G, Future, Lil Uzi Vert

 

・Hot 100年間チャート入りシングルなし の上位作品

1 Morgan Wallen – Dangerous: The Double Album
10 Lil Baby – My Turn
11 Juice WRLD – Legends Never Die
12 Taylor Swift – folklore
13 Post Malone – Hollywood’s Bleeding
16 Harry Styles – Fine Line
22 Juice WRLD – Goodbye & Good Riddance
23 Queen – Greatest Hits
25 Soundtrack – Hamilton: An American Musical
27 Billie Eilish – WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?
28 J. Cole – The Off-Season
29 Luke Combs – This One’s For You

 

・2018年以前 の上位作品

22 Juice WRLD – Goodbye & Good Riddance
23 Queen – Greatest Hits
25 Soundtrack – Hamilton
29 Luke Combs – This One’s For You
34 Fleetwood Mac – Rumors
43 Elton John – Diamonds
47 Creedence Clearwater Revival featuring John Fogerty – Chronicle The 20 Greatest Hits
48 Eminem – Curtain Call: The Hits
53 Kendrick Lamar – good kid, m.A.A.d city
57 Chris Stapleton - Traveller

 

・2011年以前の作品 (除:ベスト盤)

34 Fleetwood Mac – Rumors
68 AC/DC – Back In Black
73 Michael Jackson – Thriller
78 Drake – Take Care
94 Bruno Mars – Doo-Wops & Hooligans
96 The BeatlesAbbey Road
97 NirvanaNevermind
99 Metallica - Metallica
106 Kid Cudi – Man On the Moon: The End Of Day
130 Kanye West – Graduation
136 Michael Bublé - Christmas
152 Kanye West – My Beautiful Dark Twisted Fantasy
153 EaglesHotel California
177 Nat King Cole – The Christmas Song
178 Mariah Carey – Merry Christmas
184 Vince Guaraldi Trio – A Charlie Brown Christmas
196 Linkin Park – [Hybrid Theory]
198 Adele - 21

 

 

9 US固有?のヒット (Global 200と比較)

 

 昨年途中から創設されたGlobal 200チャート。今年は1年分の集計が出来たため、初の年間チャートが発表されました。Global 200とHot 100の大きな違いは4つあります。

 

1:USだけではなく、全世界が対象 (チャート名の通り)

2:週間チャートも年間チャートも200位まである (チャート名の通り)

3:ラジオが集計されない (基本的にストリーミングが主役)

4:リカレントルールが無い (過去曲が強い)

 

 このチャートを活用し、まずはUS固有のヒットを探ります。シンプルに、Hot 100の年間チャートに入りながらも、Global 200の年間チャート(200位まで)に入らなかった曲をリストアップします。合計で31曲もありました。それらを特徴ごとに分類します。

 

 

1:カントリー曲 (17曲)

40 Gabby Barrett feat. Charlie Puth – I Hope
53 Chris Stapleton – Starting Over
57 Luke Combs – Better Together
61 Ryan Hurd & Maren Morris – Chasing After You
62 Gabby Barrett – The Good Ones
64 Dan + Shay – Glad You Exist
69 Chris Young & Kane Brown – Famous Friends
70 Nelly & Florida Georgia Line – Lil Bit
80 Thomas Rhett – What’s Your Country Song
81 Keith Urban & P!nk – One Too Many
84 Niko Moon – Good Time
85 Jason Aldean & Carrie Underwood – If I Didn’t Love You
88 Parmalee & Blanco Brown – Just The Way
91 Eric Church – Hell Of A View
95 Cole Swindell – Single Saturday Night
96 Lainey Wilson – Things A Man Oughta Know
99 Chase Rice feat. Florida Georgia Line – Drinkin’ Beer. Talkin’ God. Amen.

 

 分かりやすく弱くなったジャンル。そもそもUS外であまり人気が薄いジャンルで、さらに強みのラジオが無いため、このチャートでは弱体化します。逆にGlobal 200にエントリーしたのはLuke Combsの“Forever After All”、Walker Hayesの“Fancy Like”の2曲のみで、どちらも100位以下です。

 

2 ラップ/R&B (11曲)

41 Moneybagg Yo – Wockesha
58 Yung Bleu feat. Drake – You’re Mines Still
59 DJ Khaled feat. Lil Baby & Lil Durk – EVERY CHANCE I GET
71 Megan Thee Stallion – Thot Shit
72 Roddy Ricch – Late At Night
75 Mooski – Track Star
76 Moneybagg Yo – Time Today
77 Megan Thee Stallion feat. DaBaby – Cry Baby
79 Coi Leray feat. Lil Durk – No More Parties
97 BRS Kash – Throat Baby (Go Baby)
98 Rod Wave – Tombstone

 

 次に目立つのはラップ/R&B。Hot 100にエントリーした39曲のうち、14曲が脱落したことになります。実はこれらの曲には共通する2つの特徴があります。それは……

 

Apple Musicの順位>Spotifyの順位

アーバン ラジオの順位≧リズミック ラジオの順位

(”Late At Night”と“You’re Mines Still”は両系統で週間1位を獲得していますが、期間はアーバンの方が長い)

 

 です。基本的にApple Musicで人気の曲とアーバン系で人気の曲は傾向が近く、リスナー層も似ているのだと思われます。クロスオーバーのパターンを見ると、ポップとある程度互換性があるのはリズミック、そして遠い関係にあるのがアーバンです。

イメージ:アダルトポップ⇔ポップ⇔リズミック⇔アーバン

 

 世界的に伝搬しやすいジャンルはポップで、そこと距離が近いリズミックな曲はその「ポップの流通経路」にある程度乗ることが出来ますが、距離が遠いアーバンな曲はそこに入るのは難易度が高い、という構図だと考えています。

 このタイプのヒットだとしても、ヒット度が高ければGlobal 200には入れています。“Calling My Phone”、”Back In Blood”あたりはこれに当てはまります。この2曲はUSのSpotifyでトップ10入りを果たしています。*7

 しかしWizkidの“Essence”はこのタイプのヒットで、かつSpotifyの成績がかなり低い(週間チャートへのエントリー無し)ですが、Global 200に入っています。195位ではありますが。

 この”Essence”は今年のヒットでAppleSpotifyの順位差が最も大きかった曲と言っても過言ではないです。Spotify大手プレイリストにも入っており、さらに近いジャンルの“love nwantiti”や”Sad Girls Luv Money”等はSpotifyでヒットしていたことを考えると、この注目度の低さは不思議です。

 

 一般的なジャンル分けとは微妙に違うラジオ区分には、ヒットの経路を考えるヒントが眠っているような気もします。

 

3 ラジオヒット (3曲)

56 AJR – Bang!
87 Ariana Grande – pov
93 Ritt Momney – Put Your Records On

 

 カントリー、ラップ/R&Bではないが、入らなかった曲。どの曲もHot 100ではラジオ基調で年間チャート入りしたものの、ラジオの無いGlobal 200では苦戦したというわけです。”pov”は一時期ストリーミングでも高い人気でしたが、そこまで長く続かず。しかしラジオでは正式シングルとして比較的長めにオンエアが続いたため、Hot 100の年間チャートには入ることができました。

 

 

10 Global Chart

 

 最後に、Global 200の各種データを紹介していきます。まずは、Hot 100の年間チャートに入らなかったGlobal 200上位曲から。

 

20 Tiësto – The Business
22 Tones And I – Dance Monkey
23 Harry Styles – Watermelon Sugar
24 Maluma – Hawai
28 Lewis Capaldi – Someone You Loved
29 Ed Sheeran – Perfect
30 Dua Lipa – Don’t Start Now
35 SAINt JHN – Roses
37 Jawsh 685 & Jason Derulo – Savage Love
38 Joel Corry & MNEK – Head & Heart

 

 多いのは過去曲。この過去曲の多さが、逆にHot 100でのリカレントルールの効果の大きさを感じさせます。ほかUSでは人気の出づらいダンス曲などがランクイン。

 

 続いて、週間のHot 100にも入らなかった曲のうち、上位のもの。

49 Riton & Nightcrawlers feat. Mufasa & Hypeman – Friday (E)
55 YOASOBI – 夜に駆ける
66 Nathan Evans – Wellerman (E)
76 Måneskin – I WANNA BE YOUR SLAVE (E)
84 DJ Nelson Presenta Jay Wheeler & Myke Towers – La Curiosidad (L)
92 J Balvin & Maria Becerra – Que Mas Pues? (L)
96 Pareja del Ano – Sebastian Yatra & Myke Towers – Pareja del Ano (L)
104 Meduza & Dermot Kennedy – Paradise (E)
109 Rauw Alejandro & Anuel AA – Reloj (L)
112 ATB, Topic & A7S – Your Love (9PM) (E)

 

 逆にUSで何がヒットしづらいか、が伺えます。「夜に駆ける」、”Paradise”、”Your Love”の3曲以外はUSのBubbling Under(=Hot 100の101~125位相当)には入っています。

 大まかに分けると、ラテン系とヨーロッパ系。(E)がヨーロッパ系で、(L)がラテン系です。

 ヨーロッパ系ヒットは主にダンス曲です。ヨーロッパだと人気が高いジャンルですが、USだと注目が薄いですね。ヨーロッパで人気の曲は、USのポップ系ラジオでオンエアされやすいので、そこでの経路にまず乗ることが大切です。そこからの反応次第でヒットする可能性もあります。

 “I WANNA BE YOUR SLAVE”はダンス曲ではありませんが、USでヒットせず。ラジオシングルにならなかったことが大きいかもしれません。

 

 「夜に駆ける」はこの2つに当てはまりません。YOASOBIは日本のアーティストとしては海外人気が高いのか、他の日本曲よりも格段に順位が高くなっています。まだアジア以外では不透明*8ですが、ストリーミングのランキング等を見るとアジアでの人気が高まっている印象で、海外目線での「日本を代表するアーティスト」に名乗りを上げたと言って良さそうです。この曲など、合計で3つの日本の曲がGlobal 200にエントリーしています。

 

55 YOASOBI – 夜に駆ける

141 YOASOBI – モンスター

183 優里 – ドライフラワー *9

 

 

・ランクインの多いアーティスト

 

11 Justin Bieber

8 Olivia Rodrigo, Doja Cat, Drake

7 Dua Lipa, Ed Sheeran

6 Bad Bunny

5 The Weeknd, BTS, Travis Scott, Rauw Alejandro

4 Ariana Grande, Lil Nas X, Pop Smoke, Lil Baby, DaBaby, Billie Eilish, Myke Towers, J Balvin

3 Jhay Cortez, Harry Styles, Post Malone, Megan Thee Stallion, Farruko, Sech, Coldplay

 

 Global 200年間チャートにエントリーの多いアーティスト。リカレントルールが無い分、今年以外のヒット曲もあるとエントリー数が伸びます。7曲以上エントリーの6人のうち、Olivia Rodrigo以外は昨年前半以前の曲が入っています。

 ほかHot 100に無い勢力とすれば、ラテンアーバン勢が目立ちます。ジャンルとして人気なだけでなく、コラボレーションが多いのがエントリー増加の要因でしょう。

 また、Hot 100では年間チャート連続入りを逃していたTravis Scottが強さを発揮しています。過去曲が強い故、その章で言及したShawn Mendes、Camila Cabello、Selena Gomez、Travis Scott、Post Malone、Halsey、J Balvin、Khalid、Quavo、Swae Leeの全員がこちらにはランクインしています。Selena GomezとJ Balvinは今年の曲のエントリーでしたが。

 

 

・2018年以前の楽曲 (上位)

29 Ed Sheeran – Perfect
41 Post Malone & Swae Lee – Sunflower
44 Ed Sheeran – Shape Of You
48 Pinkfong – Baby Shark
53 Imagine Dragons – Believer
63 Lady Gaga & Bradley Cooper - Shallow
64 Fleetwood Mac - Dreams
65 The Neighbourhood – Sweater Weather*10
69 Billie Eilish & Khalid – lovely
87 QueenBohemian Rhapsody

 

・2011年以前の曲

64 Fleetwood Mac - Dreams
87 QueenBohemian Rhapsody
90 Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You
111 Journey – Don’t Stop Believin’
113 Nirvana -Smells Like Teen Spirit
126 EaglesHotel California
142 Guns N’ Roses – Sweet Child O’Mine
143 Wham!Last Christmas
156 Bruno Mars – Talking To The Moon
169 Brenda Lee – Rockin’ Around The Christmas Tree
171 Coldplay – Yellow
194 AC/DC - Thunderstruck

 

 

おまけ

 

・リミックスが存在する場合、基本的にポイントの割合が多い方のバージョンを表記に採用すると思われますが、そこまで厳密ではなさそうです。“Levitating”はDaBaby入りの期間が圧倒的に長く、こちらの方がポイントを稼いでいるはずですが、年間チャートでは表記から外れています。まあ、理由が理由だけに仕方がないですが……

 

・Brenda Leeは年間チャートに初登場が1960年、そして今年の年間チャートにも登場。この初登場~直近の登場の差が歴代最長。これまでの記録はPaul McCartneyの1964年~2015年。まあヒットしているのが過去曲なので、少し複雑な記録ですが……

 

 

・半年前予想の答え合わせ

 

(予想)

1 Levitating ◎

2 Mood

3 Blinding Lights ◎

4 drivers license

5 Peaches

6 Save Your Tears

7 Leave the Door Open ◎

8 Butter ❌

9 Forever After All ❌

10 good 4 u

リンク: Billboard(US) 動向 5月号 【活発な月。"Save Your Tears"、"good 4 u"、J. Coleなど】 - チャート・マニア・ラボ

 

 トップ10正答率が8、ピタリが3。去年の成績が悪かったので、ある程度改善できて良かったです。しかし当時の時点でもヒットしていた曲が多く年間トップ10に連ねたので、当てようと思えばもっと当てられたかもしれません。

 

 

・関連 / 参照

 

・同テーマの記事 過去の分

2020年:Billboard Hot 100 Year-End / 年間チャート・2020を10のポイントで見る - チャート・マニア・ラボ

2019年:Hot 100(USシングル) 2019年間チャートを10のポイントで振り返る - チャート・マニア・ラボ

2018年:Hot 100(USシングル) 2018年間チャートを10のポイントで振り返る - チャート・マニア・ラボ

2017年:Hot 100(USシングル)・2017年間チャートを10のポイントで振り返る - チャート・マニア・ラボ

 

 

・参照

https://www.billboard.com/charts/year-end/

https://www.billboard.com/charts/hot-100/ (Hot 100)

https://www.billboard.com/artist/the-weeknd/ Billboard + アーティスト名で検索すると、過去のチャート成績が閲覧できます(例としてThe Weekndのリンクを掲載) 

https://spotifycharts.com/regional/us/daily/latest

Top 100: USA on Apple Music

https://kworb.net/

 

 

 

 

*1:ファンダム等はAged Like○○で曲のロングヒット性に言及していることがあります。Aged Like Fine Wineなら、良い年月の送り方をしている、つまり時間が経過しても味わいのあるロングヒット。逆にAged Like Milkなら、すぐに腐る、出落ちの曲ということです。

*2:2曲程度ならシングルの両立が可能なため、特大ヒットの”good 4 u”は、”drivers license”を「キープ」していたとしても、ラジオで人気を確保していた可能性があります

*3:今年Mother MotherやSurf Curseなど、知名度が低く、今年の曲でもない曲が複数ヒット

*4:グラミーでは取り下げられた言葉ですが、ラジオ区分を指す用語としては引き続き使用されており、代替語もほとんど台頭していないので、便宜上この言葉を使います

*5:おそらく特定の系統のピークであればOK。ここら辺のルールは明記されておらず、ケースバイケースでの判定

*6:ちなみにHits Daily Doubleのチャートでは先行シングル分もカウントされます

*7:逆に上で挙げた11曲はどれもUSのSpotifyで週間トップ10入りを果たしていない

*8:一応TIMEの選ぶBest Songトップ10にランクインする実績も

*9:どうでも良いんですが、Global 200だと“Dry Flower”表記で、Apple Musicで設定言語を英語にすると”Dried Flower”表記になります

*10:今年印象的な再浮上を遂げた曲の一つ。最初のヒット時はHot 100で年間75位、そしてUS中心のヒットでした。その当時の順位をこのチャートで上回っていることを考えると、過去のヒットではなく今年のヒット曲という解釈もできるかもしれません。