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音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

2021 Best Albums

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 こんばんは!私チョイスのベストアルバム2021を発表いたします。ランキングの前に、軽く選考基準等を説明します。

 

・2020年12/25以降の作品が対象です

サウンド重視で音楽を聴く習慣が自分に根付いているため、選考はサウンド面に重きを置いています。

・「自分が好み」・「曲の影響力/意義」の2つの基準で選考しています。バランス的には「自分の好み」の方が強いです。

・もちろん作品の質的な高さ、が選考の基準ですが、それだけで絞り切るのは難しいため、「仮に自分がメディアだとしたら、どのような“路線”を推すのか?」という視点を導入しています。

・自分の「路線」に当たるのは「アウトサイド/ネクスト・ポップ」のようなイメージです

・「どのような作品か」よりも「なぜこの作品を選んだか」の記述が多いかもしれません

・Album of the Yearの情報を、一部レビューの参考にしています

 

 

40 Lady Gaga - Dawn Of Chromatica

 リミックスアルバムながら単なる曲の羅列になっておらず、通しで聴く作品として成立していると考え、リストに入れました。個性あるアーティストの手によって生まれ変わったバンガーの数々がとにかく強力。またそれらを引き立てるように、アルバム内では緩急がつけられています。

 ほか元の作品とは違った曲がシングル格になっており、オリジナルでは気が付かなかった楽曲の魅力を再発見することも。

 

 

39 Bladee – The Fool

 フニャフニャした声質のラッパー。このスタイルには若干慣れるまで時間を要しますが、慣れればその豊かなプロダクションとの融合を楽しむことが出来ます。

 PC Music系列とも通ずるものを感じる、少し不気味ながら温かみもあるプロダクションが特徴的。何曲かはLil Uzi Vertの“Eternal Atake”のようなビートも。

 

 

38 Lana Del Rey – Blue Banisters

 基本的には、変わらぬ実力。変わらぬスタイルといった感じ。ダブルコーラスの“Dealer”、初聴では絶対に驚く”Interlude – The Trio”など、所々流れの中で工夫をこらし効果的に歌声を響かせています。

 

 

37 Duda Beat - Te Amo Lá Fora

 ブラジル産アートポップ。もしくはオルタナティブR&B。創意工夫とポップさの両方を感じ取ることのできる作品。まだ批評メディアでは取り上げられていないものの、インターネットのリスナーの間では評価の高い作品。

 

 

36 Zara Larsson – Poster Girl

 良い感じのBOPを多数擁するアルバム。特大ヒットはしておらず、作品通しての分かりすいセールスポイントも無いですが、夏色ポップな“Need Someone”や、Young Thugを迎えた遊び心のある“Talk About Love”、ほか”Look What You’ve Done”など収録曲は粒ぞろい。

 

 

35 serpentwithfeet - DEACON

 荘厳さ、ポップさをどのように両立すれば良いかを試みている作品。収録時間は30分にも満たない短い作品ですが、しっかりと重みを持った曲が多く、物足りなさはありません。

 メインストリームにおいては、長くてダラダラしたアルバムも少なくないですが、それとは逆の短い尺でどう重さとバランスを生み出すか、という試みは興味深いです。

 

 

34 Madison Beer – Life Support

 個性や統一性を感じる、ポップなR&Bアルバム。そのボーカルを全面に押し出した、強力なシングルの数々が特徴的。デビュー作ということもあってか、緩急の付け方等で荒削りな部分もありますが、そこよりもシングルの強力さ、際立つキャラクターなどを評価してのリスト入り。

 

 

33 Billie Eilish – Happier Than Ever

 華々しいデビューを飾り、革命児のような評判を得た前作。さすがにその前作ほどのインパクトは無いですが、完成度的には万人を納得させる高品質となっています。

 また自分のブランドやアーティスト性を維持しながら、しっかりとヒット曲も生み出している点も、チャート観察者的には高評価に値します。表題曲の“Happier Than Ever”は、当初シングルではない扱いながらも、ストリーミングの人気を受けて時間差でシングルカットされています。

 

 

32 Slayyyter – Troubled Paradise

 2019年にミックステープで強烈な印象を残したSlayyyterによる、初のスタジオアルバム。初のアルバムということで、今後アーティストとして進化していくために作風の模索、ブラッシュアップ等を試みた印象。そのように幅を広げつつも、持ち前の破壊性あるポップの数々は健在。10~11の”Over This!”~“Villain”の流れが好き。

 

 

31  Iglooghost – Lei Line Eon

 ダークで不気味な世界観を終始響かせる、完成度や統一性が持ち味のアルバム。どっぷりとムードに浸るタイプの作品。プロダクションの細部のこだわりも感じます。

 

 

30 파란노을 (Parannoul) - To See the Next Part of the Dream

 韓国発のシューゲイズバンド。ジャケがアルバムの内容とよく合っていると思います。気持ちよく浸り続けられるアルバム。

 

 

29 Tinashe - 333

 Tinasheの快作。個性的なプロダクションを採用しつつも、適度なポップさも同時に持ち合わせ、良い塩梅に仕上がっています。この出来栄えならば、もう少しメインストリームで注目されても良いと思いますけどね。(USアルバムチャートで175位……)

 

 

28  CL - Alpha

 K-Pop界のレジェンド、待望のデビュー作。その長きにわたる期待にしっかりと応える、たしかな完成度の作品です。

 

 

27 Boy Sim - Rowdy

 端から端までみずみずしいダンスポップの数々。特に“Monster”は強力なアンセム。全体的なジャンルの統一感に加え、アルバムの印象を左右する始まり・終わりに精度を感じました。最初の部分は、ためてから”Monster”を繰り出す。最後の部分は、メロディックに締める。

 

 

26 Kacey Musgraves – star-crossed

 美しく甘いメロディ、という彼女の持ち味が存分に発揮されている作品。個人的には最後2曲の終わり方が好み。きらびやかな“there is a light”、意外ながらも不思議と馴染む”grasicas a la vida”。

 

 

25 Ashnikko - DEMIDEVIL

 ラッパー、ポップ、オルタナティブを横断するような作風を持つアーティストによる、強烈なアンセムを多数擁するアルバム。まだ荒削りな部分もあるような気もしますが、そのキャラクター性の面白さの方を強く感じました。

 

 

24 Clairo - Sling

 多数のアンセムを含むローファイポップを試みた前作。それに対し、今作ではインディーフォークな方面にシフト。音楽をジャンルや特徴別に「地図」にした際、私の主要なカバー範囲の場所からは若干離れていったことは否めませんが、そんな私でも楽しめるよく出来た作品でした。

 

 

23 Turnstile – GLOW ON

 批評メディアの間で高評価を得るハードロックのアルバム。その評価も納得の、楽しめる作品。緩急をつけ、効果的にロックを響かせています。インディー系のリスナーやメディアが高評価している印象がありますが、ポップリスナーでも楽しめる作品のような気がします。

 

 

22 Tyler, The Creator - CALL ME IF YOU GET LOST

 前作よりもラップ寄りの作風に。その完成度はやはり間違いないです。YoungBoy Never Broke Again、42 Dugg等の特徴的な声を持つ客演の取り込み方が巧みと感じます。

 この高い完成度や評価を保ちながら、前作から連続でUSアルバム1位を獲得し、ヒット面でも結果を残している点も注目に値します。

 

 

21 St. Vincent – Daddy’s Home

 アーティストとしての実力が見える1枚。完成度が非常に高く、今年のアルバムなのに既に何年も聞かれてきたような名盤のような佇まいを感じます。

 

 

20  Silk Sonic – An Evening with Silk Sonic

 広いリスナー層から支持を得る普遍的な魅力、アーティストとしての実力の両面を強く感じるアルバム。真新しい点は無いかもしれませんが、極上のエンターテインメントが体感できる作品です。

 

 

19 underscores - fishmonger

 インディーポップ、またはHyperpop系統の作品。多彩で豊かなプロダクションを、弾けるポップに昇華させています。

 

 

18  Lorde – Solar Power

 前作とのギャップのせいか、思うような評価を得られなかった作品。しかし私は決して悪くない作品と考えています。

 そんな評価を見てから私はアルバムを聞いたため、期待度を高めすぎず、フラットな状態で聞けたのが良かったのかも??アルバムを聞くタイミングも、評価を左右する要因の一つなのかもしれません。

 Lordeの声質が特徴的で独自のVibesがあり、その点が他の作品にはないポイントの一つではないか、と私は考えています。

 

 

17 Bo Burnham – Inside (The Songs)

 コメディアン。ながらも絶品なシンセポップな数々でその音楽アルバムが注目を得た、という流れ。それに加え、それを引き出す声質の良さもポイントの一つだと思います。

 Hot 100入りこそ無いですが、複数曲がBubbling Under入り。またアルバムチャートでは複数週にわたりトップ10入りとヒット。そして評価も高め。音楽家としては「ダークホース」の立場でしたが、その質の高さもあって、大きな話題となりました。

 

 

16 PinkPantheress – to hell with it

 最大の特徴として目立つのはやはり短さ。曲の大半が2分以下で、全体の長さも20分未満。それでいて、Spotify Globalに複数曲がランクインするなどで、メインストリームに新風を吹き込んだという点は評価に値するでしょう。短いながらも、その鮮やかさで満足度は十分。

 しかしそれと同時に、プロダクションの珍しさも見逃せません。Drum and Bassを活用したスタイルは、現在メインストリームで他にあまり見当たらず、その点でも新鮮です。

 

 

15  WILLOW – lately I feel EVERYTHING

 アンセム”t r a n s p a r e n t s o u l”で見られたような、ポップパンクを主軸としたアルバム。30分に満たない尺ながら、緩急をしっかりと付けて、スケールは大きいです。

 ポップパンクを試みるアーティストは多いですが、その際に忘れられがちなポイント「パンクサウンドに負けない声のパワー」を高次元で持ち合わせるのがWILLOWの長所です。

 彼女は今年、昨年リリースの”Meet Me At Our Spot”もヒット。その曲や、このアルバムの影響もあり、私はWILLOWの過去作を再チェックしてみたのですが、どれも個性と実力が同居しており、彼女のアーティストとしての魅力を存分に感じました。

 

 

14 4s4ki – Castle in Madness

 アーティスト名の読みはアサキ。日本語歌詞のアルバム。Apple MusicのGlitchというプレイリストに何回か登場しており、その影響で私も昨年からEP等を聞いていました。これまでの各EPでは「可能性を試す」的な側面を強く感じましたが、今年のアルバムでは作品としての完成度グッと上がり、嬉しいサプライズとなりました。

 彩り豊かなプロダクションに支えられた、パワフルなバンガーの数々が最大のポイント。このバンガー群のパワーは今年有数。ほか緩急の付け方など、アルバム全体を効果的に響かせる工夫も感じました。

 

 

13 Poppy - Flux

 近年の彼女に見られるようなハードロックなテイストを維持しつつ、様々な可能性を模索しているような印象。ノイズロックをベースに、ポップ的な明るさ、そして重さや暗さのギャップを混ぜたような作品。

 

 

12  Namasenda – unlimited ammo

 PC Musicのシンガー。遊び心溢れるプロダクション、そして不思議な温かみのあるサウンド。レーベル、またはそのコミュニティーが積み重ねてきた歴史のようなものを感じる作品でした。

 Hyperpopへの注目度は変わらず高いです。それ自体は私も歓迎することなのですが、関連性があり、ジャンルへの貢献度も高いであろうPC Music関連のアーティストへの注目度が低めなので、そこにもスポットライトが当たったら嬉しいなと思っています。

(ちなみに最近のTwitterでは、PC Musicと検索するとHyperpopのツイートも同一ワードとして引っかかる模様)

 

 

11 Porter Robinson – Nurture

 彼がメロディセンスを発揮し、郷愁や優しさといったムードを全面に押し出す作品。アルバムをその世界観に浸り切る、という目的で見た場合には随一の存在。

 聞くたびに評価に開きがある気がするので、聞く環境に気をつけた方が良いのかも。なんというか、心や周りがザワザワしていると上手く音楽が入ってこないような。ジャケにあるような環境や心持ちでアルバムに臨むことが大切なのかも……?

 

 

10 Olivia Rodrigo - SOUR

 今年の主役。まず見逃せないのはその戦略の巧みさ。“drivers license”が予想外の特大ヒットだけでもサプライズですが、そこから次々とヒットを連発。一つの曲のヒットだけでは満足せず、動きを止めずにアルバムまで成功させてアーティストとしての地位を早々と確立させた判断は見事でした。

 もちろん、アルバムもその活躍を納得させるための出来でした。ロック、やインディーポップとも取れる作風ですが、むしろこれが「ポップ」としての正解なのかもしれません。というのも、近年ストリーミングでアルバムという媒体が強力で、「アルバム聴き」するような若干ディープなを納得させるような作風が再生数を得る上でも重要なためです。

 純粋なアルバムの聴き応えと並んで、このようなヒットを生み出す上での判断、センス等を私は高く評価しました。

 ほか売れている影響で、多くの曲がシングルのように感じてきます。若干バラードの比率が多いこのアルバムですが、それらもシングルのように感じ、その構成にもなんだか納得するのです。

 

 

9 Wolf Alice – Blue Weekend

 UKのロックバンド。所々で変化を加えながら、そのサウンドを響かせています。メディアからの評判も良く、特に地元UKでは最高級の評価を得ているようです。

 

 

8 Trippie Redd – Trip At Knight

 先行曲の“Miss the Rage”が素晴らしいな~と思っていたら、まさかそのタイプの楽曲がアルバム全体で聞けるとは!このタイプの曲が絶え間なく並べられ、その連続性から大きなパワーが生み出されます。

 このサウンドはRage Beatと呼ばれ、これを最も全面に押し出しているアルバムはこの作品といって良いでしょう。今後、一つの指標になりそうなアルバムです。

 最後のレイジではない数曲が、構成上謎ですが、それを差し引いてもアルバムとしてのインパクトは絶大でした。

 

 

7 Little Simz – Sometimes I Might Be Introvert

 その完成度の高さから、今年最高級の評価を得ている作品。それ以外に、私独自の評価点かもしれないのが多彩なInterludeの数々。この効果もあり、1時間超え作品ながらも平坦にならず、端まで躍動感があります。

 

 

6 dltzk - Frailty

 熱狂的なローファイパンク。またはノイズポップ。曲として際立つのはアンセム“Your Clothes”のほか、様々な側面を持つ”Kodak Moment”など。不思議なサウンド空間の中に、熱狂や郷愁を感じるような作品。幅広いリスナーの両方を魅了できる作品だと考えています!

 

 

5 Lil Nas X - MONTERO

 素晴らしいポップアルバム。強力なシングル級の曲が多く配置される一方で、流れも巧みに構成。ダークな曲が増える終盤の聴き応えもなかなかです。

 音楽性の高さと同時に、ビデオ等で彼のパーソナリティも誇示。彼がスターであることを疑う人は、もうほとんどいないでしょう。

 

 

4 Japanese Breakfast - Jubilee

 スウィートなポップな数々。アルバムのどころを切り出しても、その甘美さを味わうことが出来ます。通しでの聞き心地やバランスなども巧みに調整されています。

 

 

3 Playboi Carti - Whole Lotta Red

 進化の仕方が面白い。評判の良かった前作からスタイルを変更し、新ジャンルを作るかのような異質なサウンドを形成。その勇気のある試みは素晴らしく、アルバムではライブのような熱狂が繰り広げられています。

 新しい作風を効果的に響かせていること、また常に新しいものを作り続けるという、その「アーティストとしての歩み」も素晴らしいです。今後への影響力も大きそう。

 

 

2 Aly & AJ - a touch of the beat gets you up on your feet...

 長年ベスト企画をする醍醐味の一つ。それは密かに取り上げてきたアーティストが素晴らしい作品を生み出した瞬間。

 近年育んできたシンセポップを軸に、みずみずしい曲の数々。彼女らにかねてから期待していた私でさえ、その出来栄えには驚かされました。

 

 

1 Danny L Harle - Harlecore

 完成度、アンセムのパワー、そして個性のどれを取っても素晴らしい。私の中ではぶっちぎりのアルバム1位でした!Danny L Harleが持つ美しいメロディセンス、そしてユーロトランスを引用した遊び心のあるプロダクション、全体に根底する世界観。

 忘れがたい、人生でも屈指の素晴らしい「アルバム体験」をすることができました。

 

 

 

一覧表

40 Lady Gaga Dawn Of Chromatica
39 Bladee The Fool
38 Lana Del Rey Blue Banisters
37 Duda Beat Te Amo Lá Fora
36 Zara Larsson Poster Girl
35 serpentwithfeet DEACON
34 Madison Beer Life Support
33 Billie Eilish Happier Than Ever
32 Slayyyter Troubled Paradise
31 Iglooghost Lei Line Eon
30 Parannoul To See the Next Part of the Dream
29 Tinashe 333
28 CL Alpha
27 Boy Sim Rowdy
26 Kacey Musgraves star-crossed
25 Ashnikko DEMIDEVIL
24 Clairo Sling
23 Turnstile GLOW ON
22 Tyler, The Creator CALL ME IF YOU GET LOST
21 St. Vincent Daddy's Home
20 Silk Sonic An Evening with Silk Sonic
19 underscores fishmonger
18 Lorde Solar Power
17 Bo Burnham Inside (The Songs)
16 PinkPantheress to hell with it
15 WILLOW lately I feel EVERYTHING
14 4s4ki Castle in Madness
13 Poppy Flux
12 Namasend unlimited ammo
11 Porter Robinson Nurture
10 Olivia Rodrigo SOUR
9 Wolf Alice Blue Weekend
8 Trippie Redd Trip At Knight
7 Little Simz Sometimes I Might Be Introvert
6 dltzk Frailty
5 Lil Nas X MONTERO
4 Japanese Breakfast Jubilee
3 Playboi Carti Whole Lotta Red
2 Aly & AJ a touch of the beat gets you up on your feet…
1 Danny L Harle Harlecore

 

 

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