チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100に登場した日本関連の曲+ 2021

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 主にHot 100のデータを参照しながら、今年(この記事では2021年を指します)日本関連の人物やワードが、どのように活躍/言及されているかを書いていきます。

 

 

1:日本関連人物の活躍

 

(ピコ太郎以降の日本人Hot 100エントリー)

2016:1曲=ピコ太郎

2017:0曲

2018:2曲=植野有砂、オノヨーコ(過去のクリスマス曲)

2019:3曲=宇多田ヒカル、Joji×2

2020:1曲=Joji

2021:0曲

 

 ピコ太郎以降、コンスタントにHot 100入りが見られるようになりましたが、今年はゼロ。上記のアーティストのうち、(この期間で)複数回Hot 100入りしているのはJojiのみ。その彼が今年新曲をリリースしなかったことが、理由としては大きいかもしれません。

 

 そのJojiは過去曲がUSのSpotifyで驚異的な持続性を見せています。”SLOW DANCING IN THE DARK”はUSのSpotifyランキング(デイリー)での滞在日数が1233日に到達しており、これは歴代9位(2022年2/20付でのデータ)の長さです。現在もランキング中位に位置しており、さらなる記録更新に期待が出来そうです。

 

 もう一人Spotifyランキングで結果を残したのはMitski。2018年にリリースされた”Nobody”と“Washing Machine Heart”が、今年に入ってから初めてUSのSpotifyランキング入り。さらにその後にリリースされた新曲”Working for the Knife”もUSやGlobalのランキングに入りました。(記事的な時空?的には未来の話になりますが、2022年にリリースされたアルバムからも多数の曲が同ランキング入りをしています)

 

 二人とも、過去曲が人気を得ているという点が共通。新曲よりはアピールの少ない過去曲にリスナーが到達しているということは、「アーティストとしてのパワー/引力」のようなものがあるということでしょう。今後も活躍が期待できそうです。

(両者ともに日本出身で、現在はアメリカ拠点での活動、歌詞は英語)

 

 

・Globalの話

 日本人の活躍が見られたビルボードのチャートといえば、2020年の下半期にローンチされたGlobal系のチャートです。全世界を対象としているこのチャートでは、海外でヒットしたか否かに関わらず、日本の音楽市場の規模ゆえにランク入りすることが可能です。

 全世界対象のGlobal 200、アメリカを除く全世界が対象のGlobal Excl. US 200と2種類のチャートが存在。それぞれの年間ランキングには以下の曲がランクインしました。基本的に日本中心のヒットですが、中にはYOASOBIやLiSAなどアジア圏で一定の存在感を示すアーティストも。

 

(Global 200)

55 YOASOBI – 夜に駆ける

141 YOASOBI – モンスター

183 優里 – ドライフラワー

 

(Global Excl. US 200)

24 YOASOBI – 夜に駆ける

49 優里 – ドライフラワー

62 YOASOBI – モンスター

90 YOASOBI – 群青

107 LiSA – 炎

118 Ado – うっせぇわ

124 Eve – 廻廻奇譚

142 Official髭男dism – Cry Baby

150 DISH_ – 猫

180 藤井風 – きらり

200 Ado – 踊

 

 

2 歌詞

 

 Hot 100に登場した曲のうち、歌詞に日本関連のワードが含まれるものを紹介します。

 関連ワードなどをGenius歌詞検索で探してリストアップしています。Geniusに感謝🙏(手作業で探しているため、抜け落ちの可能性もあることをご容赦ください、見つけ次第訂正します)

 

 ワード解説の前にチャート上の特性のようなものを紹介します。日本関連のワードを検索すると、多く出てくるのはラッパーたちの曲です。歌詞内の言葉数が多いからでしょうか。そしてラッパーたちはアルバム単位で大量のHot 100エントリーをするようなことも多いです。その採用数+Hot 100エントリー曲数の2種類の多さにより、このコーナーに登場する曲はラッパーの曲が自然と多くなります。

 

 しかし非シングル曲の場合、アルバムのリリース直後以降は急速に勢いが衰え、ピーク順位からは想定するようなヒットではなくなっている場合もあります。それを示すために、今年の記事では滞在週数も記載します。このような曲(滞在が1週の曲など)は、熱心なファンには知られてはいるけれど、一般的な浸透度では他に劣る可能性があるということです。

 

(表記)

・客演等で複数名義の曲は、日本語歌詞部分を担当しているアーティストを太字にしています

・(位/週)は2021年最終週時点での成績。2022年にピークを更新した/滞在が伸びた場合には、“+“が付いています。

・リミックス等がある場合、ビルボードがメインとしたバージョンのものを集計しています。

 

 

①:Bad Bunny - Yonaguni (🗻1位 /⏰20週)

“今日はセックスしたい

でもあなたとだけ

どこにいますか?

どこにいますか?

今日はセックスしたい

でもあなたとだけ

どこにいますか?

どこにいますか?Eh”

 

 ヒット度が高く、何より日本との関連性が非常に深いため、今年このテーマで最も存在感のあった曲。曲名が日本の与那国島を指していることに加え、なんとガッツリ日本語ヴァースが。以前から日本関連ワードへの言及が多かったBad Bunnyが、さらなる日本への造詣を披露しました。

 日本拠点のアーティストでも、Hot 100エントリーするのは英語歌詞曲だったりするので、これ以上に日本語歌詞が多いケースは少ないと思います。*1

 日本語歌詞は基本的に「示唆する」ようなものが多いため、ここまで直球な表現はかなり新鮮です。

 

 ちなみに彼のライブでは、この日本語部分を客が歌う模様。(リンク:Bad Bunny - Yonaguni Live at Denver Colorado (El Último Tour del Mundo) - YouTube

 

 

②:Doja Cat – Need To Know (🗻8位 /⏰27+週)

“Prolly thinkin' I'm a telekinetic

Oh, wait, you a fan of the magic?

Poof, pussy like an Alakazam”

 

 ヒット度では”Yonaguni"以上。最初、Alakazam(=フーディン)なんて一般人からしたらマニアックなポケモン行ったな、という印象を持っていたのですが、この“Alakazam”という単語はマジックを魅せる時にも登場する一般的な単語のようで、普通の人はそっちの意味で取るかもしれません。

 しかし、過去曲等からゲームへの造詣の深さが伺えるDoja Catの脳内では、間違いなくフーディンの方が浮かんでいるでしょう。

 Geniusの解説では、”poof”の部分が進化前のAbra(ケーシィ)がテレポートで逃げる音を再現している、という熱心な考察がされています。

 

③:Drake, Future & Young Thug - Way 2 Sexy (🗻1位 /⏰15+週)

“I'm too sexy for Milan

Too sexy for Milan

New York or Japan”


 ここまでの3曲がヒット度では頭一つ抜けています。歌っているのはここにクレジットが載っている3人ではなく、サンプリング元のRight Said Fred

④:Young Stoner Life – Ski  (🗻18位 /⏰15週)

“(Tsunami)”

Wheezyがたまに使うプロデューサータグ。この単語が歌詞に登場するとモヤモヤするかもしれませんが、津波という現象自体は海外でも頻繁に起こる現象なようで、語源こそ日本語ですが、津波=日本とはそこまで思われていない可能性もあります。

 

⑤:Gunna & Future – Too Easy  (🗻38+位 /⏰9+週)

“Yeah, I'm gon' chop a brick like judo, snatch a Lamborghini (Chop it up)”

空手チョップ。空手への言及は過去にもありましたが、繰り出す技は様々。

 

⑥:Latto – Big Energy (🗻69+位 /⏰8+週)

“Daddy from the street, so he move lowkey

Tryna ride that mic' like karaoke (Oh)”

曲名のBig EnergyはBig (Dick) Energyということで、この歌詞部分のマイクもその暗喩でしょう。女性ラッパーの方がよく使う印象のある単語です。Ariana GrandeのPete Davidsonに対するツイートが流行のきっかけとする説も?

 

⑦:YoungBoy Never Broke Again – Life Support (🗻48位 /⏰5週)

・“Comme des Garçons, she say she like on me”

“On my Kawasaki, tryna do a heel clicker”

同じ曲の違う箇所に、複数言及がある曲。Comme des Garçonsはハートの比喩として使われることが多いようです。

 

⑧:Drake – Papi’s Home (🗻8位 /⏰4週)

“Turn me up (Mario)”

マリオはUpとの組み合わせが多いです

 

⑨:J. Cole – a m a r i (🗻5位 /⏰3週)

“Imagination turned a Honda into Wraith”

ホンダは庶民向け、Wraithは高級車とされています。(つまり成り上がりを意味する歌詞)

 

⑩:J. Cole – 9 5 . s o u t h (🗻8位 /⏰3週)

“Could put a M right on your head, you Luigi brother now”

前半部分の「頭にMがある」はマリオへの言及でしょう

 

⑪:Young Stoner Life feat. Lil Duke & Yak Gotti – Slatty (🗻99位 /⏰1週)

“Flathead the pull up, the Honda, the Civic (Skrrt)”

Honda製品の中で言及率高めの、Civic

 

⑫:Juice WRLD – From My Window (🗻86位 /⏰1週)

“Mario, Luigi, my bros to the bitter end”

マリオルイージのセット

 

⑬:Playboi Carti – Slay3r (🗻72位 /⏰1週)

“She suckin' my dick, I was on the PlayStation (Woo, woo)”

Geniusの解説では、Playboi Cartiの元カノのIggy Azaleaへの言及であると推測されています

 

⑭:Migos – Modern Day (🗻61位 /⏰1週)

“Huncho the sensei ('Cho)”

Hunchoから分かる通り、Quavoのパートより

 

⑮:YoungBoy Never Broke Again – Forgiato (🗻80位 /⏰1週)

“You already know, nigga, we tote big Glocks, be like Yamaha

Hot 100エントリー数の多い彼

 

⑯:Juice WRLD – You Wouldn’t Understand (🗻64位 /⏰1週)

“Remember Huaraches and stealin' food out of Hibachi, wouldn't catch me tippin' (On God)”

Hibachiとは日本でいう鉄板焼のこと

 

⑰:DJ Khaled feat. Nas, Harmonies by The Hive, James Fauntleroy & JAY-Z – Sorry Not Sorry (🗻30位 /⏰1週)

“Circular ice on Japanese whiskey, on my mezzanine”

Jay-Zとお酒

 

 

※Bubbling Underに入った曲での言及

・Young Thug – Stupid / Asking:Kawasaki

・Young Boy Never Broke Again – Level I Want To Reach:COMME des GARÇONS

・Young Thug – Die Slow:COMME des GARÇONS

・Migos (Offset) – Roadrunner:Honda

・Young Stoner Life (Young Thug) – Litty:Honda

・Trippie Redd – Super Cell:Dragon Ball, Super Cellなど計10以上のドラゴンボール関連ワード

(↑ Hot 100入りこそしていませんが、これも今年のインパクトのある日本関連の曲の一つでした。ほかBubbling Underには入っていませんが、アルバム内には”Baki"という曲も)

 

(リミックス等)

Kanye West – Jesus Lord pt 2:Honda

Kanye WestJunya pt 2:Hibachi, Karate(Ty Dolla $ignのパート)

 

 

3 統計

 

・多かったワード (同一曲での繰り返しは1カウント)

  2021 2020 2019 2018
5+       Japan (7)
4       Chun-Li, Kamikaze
3   Honda, Tsunami, Godzilla, Sensei, Karate, Comme des Garuçons Japan Mario, Tokyo, Sumo
2 Japan, Honda, Mario, Luigi Sushi, Kamikaze, Tokyo, Nintendo, Sasuke, Judo, Benihana, Tekken Honda, Sensei, Nobu, Benihana, Tsunami Kawasaki, Pikachu, Karate, Sushi, Teriyaki, Ninja
1 Kawasaki, Comme des Garuçons, Playstation, Judo, Tsunami, Snensei, Karaoke, Alakazam, Yamaha, Hibachi Pokémon, Super Saiyan, Nobu, Kawasaki, Murakami, Yu-gi-oh, Suzuki, Anime, Hadoken, Japón, Sumo, Mario Ichiro, Tokyo, Kawasaki, Mazda, Goku, Super Saiyan, Manga, Ryu & Ken, Luigi, Pokémon / Ash, Pikachu, Dojo, Sushi, Ramen, Karaoke Toyota, Honda, Anpanman, Goku, Playstation, Judo, Kimono, Murakami, Benihana, Saké, Pokémon, Tsunami

※Honda、Kawasaki、Tsunamiが4年連続でエントリー

 

 

・言及曲数が多いアーティスト (同一曲での繰り返しは1カウント)

Juice WRLD 2

YoungBoy Never Broke Again 2

J. Cole 2

Doja Cat 1
Latto 1
Migos 1
Future 1
Playboi Carti 1
Drake 1
Yak Gotti 1
Jay-Z 1
Bad Bunny 1

その他 2(サンプリング、タグ)

 

 

参照・関連記事

昨年の記事:Hot 100に登場した日本関連の曲 2020 - チャート・マニア・ラボ

 

(参照)

Genius | Song Lyrics & Knowledge

https://www.billboard.com/charts/year-end/ *2

https://www.billboard.com (アーティスト名+ビルボードで検索すると、チャート履歴が閲覧できる)

https://kworb.net/spotify/country/us_daily_totals.html

 

*1:おそらくこれより多いのは、坂本九と植野有砂のみ

*2:Globalの年間チャート、最初は200位まで見られたのですが、なぜか今は100位までです(?)