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【アルバム・レビュー】 裏切らない DJ Snake 【Encore】

【アルバム・レビュー】 裏切らない DJ Snake 【Encore】

 

先週、DJ Snakeが自身初のスタジオ・アルバムEncoreをリリースしました。オーストラリアのアルバムチャートで10位、またこのアルバムに収録されているJustin BieberとのLet Me Love Youがオーストラリアで3位、イギリスで2位、またDJ Snakeの母国フランスでは1位を記録するなど存在感を発揮しています。

 

そんな昨今存在感を発揮している彼のアルバムのレビューを今回してみようかと思います。DJ Snakeさんは当アカウントのツイートをなぜかたまにお気に入りしてくるので、不思議な縁も感じております笑

 

そんなDJ Snakeさんのアルバムのアルバムを一言で表すと、「裏切らない」と思っています。この言葉を軸にレビューしていきます。

 

・「裏切らない」良トラックの数々

Turn Down For Whatで世界を震撼させるデビューの後、DJ Snakeは様々なトラックを作ってきました。Major Lazerと組んだLean Onは世界中で特大ヒットを記録し、またこのアルバムにも収録されているMiddleも同じく、オーストラリアとイギリスでトップ10入りするなど、こちらもヒット。このようにTurn Down For What以降、彼は様々なジャンルの良トラックを作れることを証明してきました。

このアルバムでも、それが証明されています。既にヒットしているJustin BieberとのLet Me Love Youは近年流行しているサウンドを取り入れた、耳に残るメロディラインが特徴的なヒット間違いなしな1曲。ヒップホップ系のゲスト(Jeremih、Young Thug、Swizz Beatz)を迎えたThe Halfは、ポップ、ヒップホップ、エレクトロニックの3ジャンルをバランスよく掛けあわせた面白い1曲。その中でも個人的なお気に入りはアルバム最後のHere Comes the Night。Mr. Hudsonの力強い声もさることながら、この曲の最大の特徴は心を揺り動かすような、ドロップ部分のメロディ。アルバムを仕上げる美しいトラックである。

また、Turn Down For Whatで披露したような、(良い意味で)狂ったサウンドも健在。SkrillexとのSahara、Yellow ClawとのOcho CincoPropagandaでこの手のサウンドが見られる。Turn Down For WhatのDJ Snakeを求めるファンも裏切らないアルバムとなっている。

 

・「裏切らない」のはDJ Snakeはどうなのだろう!

上で言ったように、期待を裏切らないアルバムだし、このアルバムには満足しています。ただ、「裏切らない」DJ Snakeにはどこか物足りなさも覚える。

DJ Snakeは良い意味で私達を裏切り続けてきた気がします。

Turn Down For WhatではEDMの常識を裏切って、MiddleLean Onでは幅広さを見せ、新たなスタイルを見せて予想を裏切り、さらには今年のUltraでは突如彼のスタイルとはかけ離れたOasisWonderwallをかけ(Ultraが初披露ではないらしいですが)、またLean OnとMashupするという超絶パフォーマンスで予想を裏切ってきたDJ Snake。

このように、私達を裏切り、新しいものを作り続けたのがDJ Snakeな気もします。

このアルバムでは、その「裏切り」が足りないと思います。自分はLet Me Love Youが好きです。今すぐカラオケに導入してもらって、10回歌いたいほど好きです。ただ、この曲のサウンドが「予想の範囲内」だったことは否めません。流行のサウンドに、Lean On風のドロップ。Let Me Love Youの出来には満足してはいますが、それと同時に「Turn Down For Whatを歌うJustin Bieber」を期待していた自分もいる気がします。

このEncoreに悪いトラックなど1曲も存在しないのですが、アルバム全体として眺めると、予想の範囲内だな、と思ってしまうのです。個人的にはFlosstradamus の Soundclash のEPをアルバムサイズに広げたようなアルバムを作って度肝を抜いてくるDJ Snakeを期待していた部分もあります。ただ、それは至難の技でしょうし、売り上げ的な部分に悪影響を及ぼす気もします。

ここでPitchforkのこのアルバムに対するレビューの一節を訳してお送りします

「アルバムというフォーマットはDJ Snakeの実力を発揮するのにふさわしくない」

個人的にすごく腑に落ちた一節です。やはりEDMはシングル単位で完結させて、それを後でアルバムとしてまとめるというスタイルをとることが多いので、アルバムの構築は困難を極めることが多い以上、仕方がないことなのかもしれません。

 

このアルバムは大好きです!でも今度はDJ Snakeの良い意味で狂ったアルバムを見てみたいかな、と思います。そして、EDMの限界に挑戦して音楽に新しい風を巻き起こしてほしいかな、と思っています!

 

まとめ

・個性豊かなクオリティの高いトラックが収録されているアルバム

・ただ、DJ Snakeならもっと衝撃的なアルバムを作れた気もする。

 

・参考

 

 

 

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