イギリスのシングル年間チャートの考察をしていきます。
年間チャートの順位表は↓にあります。
-1 世界的な存在になったDrake
イギリスでの年間1位はOne Dance。さらには、それに加えてイギリスでも年間チャートに送り込んだ曲が最多(タイ)の5曲。
2014年まではイギリスでのヒットが殆どなかった彼でしたが(Hold On~と、リアーナと組んだ曲くらい)、2015年のHotline Bling以降は存在感を発揮し、2016年はイギリスのシングルチャートの主役に。
今まであまり縁がなかったイギリスのシングルチャートも制し、さらに上のステージに進んだ感があります。
-2 主役その2Justin Bieber
Drakeと同じく5曲を年間チャートに送り込んだのはJustin Bieber。Love Yourself, Cold Water, Sorry, Let Me Love You, What Do You Mean、というアメリカの年間チャートと共通の曲がイギリスの年間チャートにも入りました。
ただ、集計時期がアメリカよりも約1ヶ月半あとなので、Purposeからのシングルはアメリカより低めです。
※アメリカの年間チャートの集計2015年11月半ば ~ 2016年11月半ば
イギリスの年間チャートの集計2016年1月 ~ 2016年12月
そしてPurposeのリリースは11月。つまりイギリスの場合、少し2015年分にカウントされる分がある、ということです。
―3 Siaはイギリスのほうが人気?
上記の2人の5曲に次ぐ多くの曲を年間チャートに送り込んだのはSia (4曲)。Cheap Thrillsが3位に入ったほか、The Greatest, Bang My Head, Chandelier(!?後述します)
チャート方法の集計の違いもあるので一概には言えませんが、2016年のCheap Thrills(イギリス3位・アメリカ11位)、2015年のElastic Heart(イギリス32位・アメリカ52位)、そして2016年の年間チャートに送り込んだ曲の数(イギリス4曲・アメリカ2曲)などと、イギリスでの人気の方が少し高いのかな、と感じました。
(ちなみにSiaはオーストラリア出身)
-4 Rihannaの安定感
Siaと同じ4曲が年間チャートに。うち2曲はDrakeと組んだ曲で、Too Goodはなんと週間ピークが3位まで到達し、Drakeのイギリスでの躍進を強力にサポートしていました。ちなみに3位ピークはOne Danceに次いでDrakeメインの曲の中では2番目の成績です。
またNeeded Meは週間ピークがとかなり低い数字の38位ながらも年間チャートに入りました。
アルバムAntiは以前と違う作風でしたが、Rihannaの人気は不変のようです。
―5 イギリスの年間チャートでの期待の新人
上記の4人以外で多くの曲を年間チャートに送り込んだのはCalvin Harris, Adele等の以前から活躍するイギリス人、そしてアメリカでも活躍したDJ Snake, The Chainsmokers, Major Lazer等のDJ/プロデューサー など。(いずれも3曲が年間チャートに)
彼らと同じ3曲を年間チャートに送り込んだ期待の新人が。
それはZara Larsson。Lush Lifeが年間6位に入ったほか、Tinie TempahとのGirls Like、MNEKとのNever Forget Youが年間チャートに。This One’s For Youは惜しくも年間チャート入りならず。
Ain’t My Fault、I Would Likeとその後もヒットを連発し、さらには2017年序盤にアルバムをリリース予定と今年も大活躍しそうです。2017年の年間チャートは、2016年よりも多くの曲を送り込む可能性もあるかもしれませんね。
―6 イギリス代表のポップグループ
One Directionが活動休止し、人々の興味がメンバーそれぞれのソロ活動に移りましたが、Little Mixは健在。Shout Out to My Ex、Secret Love Song、Hairの3曲が年間チャートに。年間チャートに3曲も入るのはLittle Mixにとって初で、イギリス代表のポップグループの座を確保したと言えそうです。アメリカでのヒットはまだ少ないので、今後のアメリカでのヒット具合も気になります。
―7 客演で存在感を示したのは?
客演で最も存在感を示したのはSean Paul。Cheap Thrills、Rockabye、Hairと全て客演でのエントリーですが、ダンスホール風の曲の流行に乗った見事な復活劇と言えそうです。今年も客演仕事が多く舞い込むのでしょうか。また、Dua Lipaを客演に迎えたNo Lieという自身がメインの曲もリリースしたようで、アルバム等、彼メインの活動も気になります。
※その他3曲を年間チャートに送り込んだのは、MØとAriana GrandeとThe Weeknd。
―8 ブリティッシュな面々1
ここではイギリスらしい面子をチェックしていきます。まずはロック編。ColdplayがHymn For The Weekend, Adventure of Lifetimeを年間チャートに送り込んでいて、これはアメリカと同じなのですが、BastilleのGood Grief, The 1975のThe Soundというアメリカの年間チャート(シングル)にいない面々が。
この2曲は両方ともアメリカでは週間のHot 100に入っておらず、イギリス特有のヒットとも言えるのかも。しかしBastilleは2014年にPomepiiがアメリカで年間12位のヒット、The 1975も昨年アルバムがアメリカで1位獲得など、アメリカでの知名度はあるはずなので、アメリカのHot 100で受けなかったのは意外な結果ではあるかも。
-9 ブリティッシュな面々2
上記のようにDrakeが存在感を発揮した2016年でしたが、イギリス人のヒップホップアーティスト達はどうなのでしょうか。年間チャートに入ったのは、Girls Like (Tinie Tempah)、When The Bassline Drops, Nothing Like This (いずれもCraig David)、Shut Up (Stormzy)、IN2 (WSTRN)。中でもCraig Davidはアルバムも1位など、2016年活躍した一人といえるでしょう。スタイルはヒップホップというよりもハウス寄りでしたが。
評論面ではSkeptaが賞賛されていましたが、年間チャート入りはならず。グライム自体も93位のShut Upくらいで、チャートでの存在感は示せませんでした……
-10 超低ピークの年間チャート入り
最後にチャートマニアなポイントです。
2014年の半ばにストリーミングが導入されたイギリスのチャート。それ以降曲のチャートの動き方がかなり変わってきました。
それ以前は曲のセールスのみの判定だったので、曲がリリースされた週が勝負!それ以降は落ちるのみ…という感じでトップ10が目まぐるしく入れ替わっていたのですが、ストリーミング導入以降はセールスが落ちてもストリーミングでカバーできるため、上位に入った曲が順位をキープしやすくなりました。その結果何が起こるかというと、週間のピークが高くなくても、低空飛行を続ければ年間チャートにも入ることが可能になったというわけです。
例えば
2015年の年間チャートに入った曲の中でピークが最も低いのはOne Last Timeの24位。(2015年当時のピーク)
2016年の年間チャートに入った曲の中でピークが最も低いのはNeeded Meの38位。
さらに
ストリーミング導入前の最後の年の2013年の年間チャートでピークがトップ10に達していないのは8曲(Latch, Explosions, I Will Wait, Chocolate, A Thousand Years, Treasure, Do I Wanna Know, Radioactive)
2016年だとそれがなんと27曲!とてつもない増え方です。
前述したChandelierも、2016年のピークは35位ながらも低空飛行を続け、2014年リリースの曲ながらも2016年のチャートにも入ることができました。
ちなみにアメリカだと21週目以降51に”落ちる”とチャートから消えるルールがあるので、51位以下の低空飛行は年間チャートの対象外になるのでこのような現象は起こりません。
このように、ストリーミングの導入がイギリスのシングルチャートを大きく変えていて、このテーマは研究し甲斐があると考えています。
おまけ
アメリカVSイギリス、誰が多く曲を年間チャートに送り込んだか