今週の注目ポイントは遅咲きヒットとなったKhalid、Noramaniによる”Love Lies"、そしてアルバム1位を再び獲得したBTSではないでしょうか。BTSはシングルチャートでとあるルール変更の影響を受けています。ほか”Love Lies"から見るビルボードの報道の傾向など。
・目次
☆今週のHot 100 ショートハイライト
・BTSがアルバム1位、“IDOL”が11位に登場
・Khalid & Noramaniの“Love Lies”が28週目でトップ10入りと遅咲きヒット。元Fifth HarmonyのNormaniはソロで初のトップ10
・Shawn Mendesの“In My Blood”が短めのチャート滞在(23週)でHot 100から外れる
・Ozunaがアルバム7位&1曲がHot 100に新登場
・今週のトップ10
―1 Drake – In My Feelings
―2 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You
―3 Cardi B, J Balvin & Bad Bunny – I Like It
△4 Post Malone – Better Now ◎
▽5 6ix9ine feat. Nicki Minaj & Murda Beatz – FEFE
―6 Juice WRLD – Lucid Dreams ◎
△7 Travis Scott – SICKO MODE ◎
△8 Tyga feat. Offset – Taste ◎
△9 Khalid & Normani – Love Lies ◎
▽10 Ariana Grande – God is a woman ◎
◎ は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す
1~100位までの順位表は↓
曲の個別解説
☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降
☆90 Zedd & Elly Duhé – Happy Now
ZeddとElly Duhéによる“Happy Now”が90位に登場。この曲は主にポップ系ラジオやSpotifyで好調。前シングル”The Middle”のようなロケットスタートとなりませんでしたが、ラジオが順調に伸びればHot 100の順位も次第に伸びていきそうです。
ボーカルを担当するElly Duhéはアラバマ出身のシンガー。同じく彼女がボーカルを担当するGryffinの“Tie Me Down”もSpotifyで好調(今週66位) *1
この曲にはZeddの昨年のヒット“Stay”にも携わったNoonie Baoがソングライターとして参加しています。
◇88 Meek Mill feat. Jeremih & PnB Rock – Dangerous
Meek Millのシングル、“Dangerous”が88位に再登場。今週特別伸びたわけではないですが、ラジオの上昇、プレイリストへの追加によるストリーミングの若干の増加、Ariana Grandeのアルバム曲減少によって「枠が空いた」ことによってHot 100に舞い戻りました。
この曲は先週、Apple MusicのHip-Hop A List、SpotifyのRapCaviar(いずれも人気プレイリスト)の両方に入ったのですが、Spotifyでは人気が出ず1週間でプレイリストから外されてしまいました。Apple Musicでは一定の人気があります。
☆今週はAriana Grandeのアルバム曲が多く外れたことの影響でHot 100に再登場した曲が多めです。↓
88 Meek Mill feat. Jeremih & PnB Rock – Dangerous (2週目)
89 Migos – Narcos (13週目)
95 Drake – Mob Ties (8週目)
96 Wiz Khalifa feat. Swae Lee – Hopeless Romantic (3週目)
97 Juice WRLD feat. Lil Uzi Vert – Wasted (6週目)
98 Khalid, Ty Dolla $ign & 6LACK – OTW (15週目)
☆87 Charlie Puth – The Way I Am
ポップ系やアダルトポップ系のラジオで人気浮上中、Charlie Puthの“The Way I Am”が87位で登場。彼のアルバム”Voicenotes”から4曲目のシングルです。*2
曲の入り方が特徴的な1曲です。(個人的な感想:曲の入り方が“Welcome to the Jungle”っぽい)
同じくラジオで人気、Chris Jasonの“Drunk Girl”も今週86位でHot 100に登場しています。この曲はカントリー系ラジオで人気。
☆83 Lil’ Duval feat. Snoop Dogg & Ball Greezy – Smile (Living My Best Life)
R&B / Hip-Hop系ラジオで好調(今週9位)の“Smile”が83位でHot 100に登場!コメディアン系シンガーのLil’ Duval、そして客演のBall Greezyにとっては初のHot 100に。
Snoop DoggはKendrick Lamarのアルバム“Too Pimp a Butterfly”で客演をつとめた” Institutionalized“以来、3年ぶりのHot 100入りに。
☆82 Sheck Wes – Mo Bamba
Sheck Wasの”Mo Bamba”が82位で登場。Sheck Wasにとっては初のHot 100入りに。(彼はTravis Scottの“NO BYSTANDERS”にボーカルとして参加しているものの、客演[feat.]として表記されなかった)
Soundcloudでは既に1年以上前にリリースされていましたが、最近正式音源化&Spotifyのプレイリスト、RapCaviarに入ったことなどにより人気が急上昇。Hot 100まで到達しました。現在はSpotifyだけでなくApple Musicでも人気が出ています。
曲名の“Mo Bamba”はNBA選手の名前に由来。
☆72 Ozuna – Única
ラテン系シンガー、Ozunaの2枚目のアルバム“Aura”が好調。ラテン系のミュージシャンとしては歴代最多のストリーミング(5534万再生)を記録し、アルバムチャートの7位に食い込みました!
アルバムの中からは“Única”がHot 100に登場。72位でした。この曲にはWisin、Yandel、Anuel AAが参加したリミックスもあります。(このバージョンもアルバムに収録されている)
※ちなみに、ラテン系シンガーのアルバムはSpotifyよりもApple Musicで人気な印象があります。
☆69 YoungBoy Never Broke Again feat. Kevin Gates & Quando Rondo – I Am Who They Say I Am
YoungBoy Never Broke Againが4曲入りEPをリリース。4曲全てにKevin Gatesが客演として参加しています。アルバムチャートでは19位にランクインしました。
アルバムからは“I Am Who They Say I Am”がHot 100に登場。この曲はYouTubeやApple Musicなどで人気。一方Spotifyでは今週200位圏外とあまり注目されませんでした。
△39 Bebe Rexha – I’m A Mess
Bebe Rexhaのシングル“I’m A Mess”が39位へと浮上。自身6曲目のトップ40です。主にポップ系ラジオやYouTubeで人気。
“Meant to Be”のヒットの勢いを継続し、アーティストとしての地位を着実に固めていっていますね!(自身がメインの曲では、”Meant to Be”に次いで2番目に高いチャート順位を記録している)
△36 Thomas Rhett – Life Changes
Thomas Rhettの“Life Changes”が36位へと浮上。自身6曲目のトップ40になりました。昨年リリースしたアルバム”Life Changes”の表題曲です。
そのアルバム“Life Changes”からのシングルは4つ全てカントリー系ラジオの首位に立っています。(”Craving You”、“Unforgettable”、“Marry Me”、”Life Changes”)
☆11 BTS feat. Nicki Minaj – IDOL
BTSのアルバム“Love Yourself: Answer結”が再びUSのアルバム1位に!ストリーミングなどを含めた初週の総合セールス*3は18.5万枚で、前回の数字(“Tear”は13.5万枚)を上回っています。
そのアルバムのメイン曲、“IDOL”がHot 100の11位で登場!前シングル”FAKE LOVE”ではUSのシングルトップ10入りを果たしたBTSですが、今回はトップ10入りならず。
“FAKE LOVE”の時よりも高いDLとYouTube再生数を記録したものの、Hot 100が今年の7月からYouTubeの再生数を少なめにカウント(2/3)するようになったことの影響を受け、今回はトップ10に手が届きませんでした。
BTSはアルバム曲がいくつか101位~125位相当のチャート、Bubbling Underに登場。“Euphoria”が105位、”I’m Fine”が107位、”Trivia: Seesaw”が122位相当に登場しました。
この“IDOL”のチャートインに対しては個別の解説記事があります↓
※ちなみに“IDOL”の歌詞には“Anpanman”が登場。前アルバム”Love Yourself: Tear”で曲のタイトルにしていたことに由来すると思われます。今年Hot 100では“Pikachu”が歌詞に登場する”Yes Indeed”がトップ10入りしていましたが、ピカチュウに次いでアンパンマンがUSでトップ10入り!とはならず。
※BTSにとっては4曲目、K-POP全体では11曲目のHot 100エントリーです。
△9 Khalid & Normani – Love Lies
KhalidとNormaniによる“Love Lies”が28週目にしてトップ10に突入!遅咲きのヒットとなりました。この曲は映画”Love, Simon”のサントラに収録されています。
ストリーミングのピークはリリース直後の時期でしたが、代わりにラジオで次第に人気を得て、トップ10まで到達しました。ストリーミング→ラジオへのゆっくりとした変化が遅咲きでロングヒットになった要因です。
元Fifth HarmonyのメンバーNormaniはソロでは初のトップ10入り。元Fifth Harmonyのメンバーがソロでトップ10に入るのはCamilaに次いで2人目。Khalidにとっては”1-800-273-8255”に次いで2曲目のトップ10です。
※“Love Lies”から見るビルボードのチャート報道の傾向
この曲は28週目でトップ10入りと遅咲きの曲です。ビルボードはこの曲について、「デュエットの曲としては最も遅いタイミングでのトップ10入り」と紹介しています。この着眼点は、ビルボードの特徴が表れているように思います。
たしかに「デュエット」では最も遅いトップ10入りというと、「遅咲き」ということが明確に伝わってきますが、「範囲を限定しすぎではないか?」という印象があります。
ビルボードは「広い範囲での7位(たとえの順位。実際この曲が何番目に遅いトップ10入りなのかは不明)」よりも「狭い範囲でのナンバーワン / 初の記録」のほうが有効に「遅さ」を伝えられると考えたのか、「デュエットで最も遅いトップ10入り」を推していますが、個人的にはこれは範囲が狭すぎて、実際にどれくらいの遅咲きなのかがいまいちピンと来ないようにも思います。
ビルボードのチャート最近の報道の仕方を見ていると、「広く分かりやすい範囲での7番目」などよりも、ジャンル別のチャートなどを使いつつ、「狭い範囲での初!」や「狭い範囲での記録更新!」を重視しているように思います。(言い回しを工夫して”First”という言葉を引き出そうとしているようにも見受けられる)
このビルボードのチャートの報道方法を研究してみるのも面白いかもしれません。*4
ちなみにビルボードは“Before He Cheats”が全体で一番遅いトップ10入りを果たしたことには言及していますが、この”Love Lies”が全体で何番目に遅いトップ10入りの記録なのかは言及していません。(残念ながら自分にはこれが何番目に遅い記録なのか、という知識がありません。ちなみに2番目に遅いトップ10入りは Creedの”Higher”=36週目です。 参考:Maroon 5 Flip-Flops With T-Pain To Rule Hot 100 | Billboard)
▽× Alessia Cara – Growing Pains
Alessia Caraの“Growing Pains”が8週のチャート滞在でHot 100から外れてしまいました。ピークは65位でした。
リリース直後に一気に再生数が伸びるなど、ラジオでの注目度は非常に大きかったですが、結局そのラジオで数字をうまく伸ばせず、あまりヒットになりませんでした。ラジオ以外の指標(ストリーミングなど)でポイントをあまり稼げなかったことも痛かったです。
▽× Shawn Mendes – In My Blood
Shawn Mendesの“In My Blood”が今週チャートから外れました。ピークは11位と惜しくもトップ10に届かず。Hot 100から外れてしまったのはラジオのポイント下落が要因です。
“Stitches”はチャート滞在52週、”Treat You Better”は39週、“There’s Nothing Holdin’ Me Back”は34週、”Mercy”は32週など、Shawn Mendesのシングルはロングヒットする傾向にありましたが、この“In My Blood”は普段より短めなチャート滞在=23週に終わってしまいました。
今週チャートから外れた曲 (14曲)
【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】
100 Nicki Minaj – Chun-Li (🗻10位 /⏰16週)
99 Ariana Grande – pete davidson (🗻99位 /⏰1週)
93 Chris Lane feat. Tori Kelly – Take Back Home Girl (🗻55位 /⏰12週)
92 Alessia Cara – Growing Pains (🗻65位 /⏰8週)
91 Nicki Minaj feat. Ariana Grande – Bed (🗻42位 /⏰10週)
89 Ariana Grande feat. Nicki Minaj – the light is coming (🗻89位 /⏰2週)
88 Janet Jackson & Daddy Yankee – Made For Now (🗻88位 /⏰1週)
87 Ariana Grande – goodnight n go (🗻87位 /⏰1週)
86 Morgan Evans – Kiss Somebody (🗻53位 /⏰8週)
84 Carrie Underwood – Cry Pretty (🗻48位 /⏰11週)
72 Ariana Grande – R.E.M. (🗻72位 /⏰1週)
62 Ariana Grande – everytime (🗻62位 /⏰1週)
55 Ariana Grande - sweetener (🗻55位 /⏰1週)
42 Shawn Mendes – In My Blood (🗻11位 /⏰23週)
・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品
1 BTS – Love Yourself: Answer
7 Ozuna – Unica
12 Alice in Chains – Rainier Fog
19 YoungBoy Never Broke Again – 4 Respect (EP)
23 Interpol – Marauder
35 Bas – Milky Way
70 The Amity Affliction – Misery
72 Florida Georgia Line – Florida Georgia Line (EP)
98 Blood Orange – Negro Swan
136 Comethazine – Bawskee
170 Murder By Death – The Other Shore
アルバムチャートのトップ10には非英語で歌われるアルバムが登場
来週以降の動向・プレイリストなど
・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲
・Eminem – The Ringer
・Eminem feat. Joyner Lucas – Lucky You
Eminemがサプライズリリースしたアルバム“Kamikaze”がストリーミングで絶好調。アルバムの大半がHot 100に入りそうです。その中でも上記の2曲はトップ10入りの可能性もありそうです。
・プレイリスト
・ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)
*1:ただし”Happy Now”と違ってラジオでかかっていないので、Hot 100にはまだまだ遠い
*2:ウィキペディアには“Change”もシングルとされているが、この曲はラジオでかかっていた形跡が無いので、シングルではないと考えています
*4:ビルボードの毎週のチャートの取り上げ方で、個人的に違和感を覚える部分を修正する、というのが毎週のHot 100記事の私なりの意義です。そこまでチャートを突っ込んで考える人なんていないと思いますが💦 音楽チャートは社会研究的な要素を持ちながらも、同時にビルボードは会社として利益を追求しなくてはならないので、このように工夫して報道をしなくてはならないのだと思います。難しいですね、これ……