熱心なファンだったら既に知っている曲も多いらしいです。そんなアルバムでも1位を獲得したDrake。
◇今週のHot 100 ハイライト◇
・”Old Town Road”が19週目の1位。2位”bad guy”の1.2倍のポイントを記録。両方ともポイント下落
・Ariana GrandeとSocial Houseの“Boyfriend”が8位に登場
・Drakeの“Care Package”がアルバム1位。6曲がHot 100に登場
・“High Hopes”と”SICKO MODE”が1年の滞在の末にチャートを後に
・今週のトップ10
8月17日 | R | D | S | ||||
- | 1 | Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus | Old Town Road 🚩 | 21 | 1 | 1 | |
- | 2 | Billie Eilish | bad guy | 3 | 7 | 4 | |
- | ◎ | 3 | Shawn Mendes & Camila Cabello | Señorita | 7 | 5 | 5 |
- | 4 | Lizzo | Truth Hurts | 6 | 4 | 6 | |
- | 5 | Khalid | Talk | 1 | 24 | 13 | |
- | 6 | Chris Brown feat. Drake | No Guidance 🍎 | 11 | 22 | 2 | |
- | 7 | Ed Sheeran & Justin Bieber | I Don't Care | 2 | 16 | 14 | |
☆ | ◎ | 8 | Ariana Grande & Social House | Boyfriend | 40 | 2 | 7 |
▽ | ◎ | 9 | Post Malone feat. Young Thug | Goodbyes | 10 | 18 | 10 |
- | ◎ | 10 | Lil Tecca | Ransom ✅ | - | - | 3 |
R=Radio、D=Download、S=Streaming
🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位
◎ は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す
緑背景はその指標がトップ10内で最高、赤背景は最低
1~100位までの順位表は↓
曲の個別解説
☆99 Matt Stell – Prayed For You
カントリー系ラジオで浮上した曲がいくつかHot 100デビュー。うちMatt StellとLindsay Ellは初のHot 100入りを果たしています。
99位:Matt Stell – Prayed For You (カントリーラジオ17位)
97位:Brantley Gilbert & Lindsay Ell – What Happens In A Small Town (同12位)
94位:Cole Swindell – Love You Too Late (同15位)
90位:Keith Urban – We Were (同16位)
☆93 Tool – Fear Inoculum
Toolの10分越えの新曲“Fear Inoculum”が93位に登場。2回目のHot 100エントリーです。
結成1990年の大御所バンドはこの週に過去のディスコグラフィーをiTunes / ストリーミングに開放。特にDLで人気を集め、今週のDigital Song Sales(DL)チャートの50位以内に11曲を送り込みました。またストリーミングでもSpotifyの圏内に5曲がエントリーするなど、一定の注目を集めました。
“Fear Inocolum”は今週DL8位。“Sober”はこれよりも高いDL6位を記録していますが、この曲は1993年リリースで「過去曲はHot 100に登場するのに50位以上にエントリーする必要がある」というルールに引っかかりHot 100入りならず。
☆82 Ambjaay – Uno
Ambjaayの“Uno”が82位に登場。初のHot 100入りを果たしました。Apple Music、Spotify、YouTubeの3つ全てでトップ100圏内にランクイン。リズミック系で27位とラジオでのオンエアも始まっています。
タイトルはスペイン語で1を表す“Uno”ですが、歌詞は基本的に英語です。(スペイン語的描写も所々見られますが)
◇81 Khalid – Right Back
Khalidの新シングル“Right Back”が81位に再登場。アルバムの週以来のHot 100です。シングルカットと共にビデオをリリースし、YouTubeで51位にランクインしています。
他の媒体ではA Boogie Wit da Hoodieを新たに迎えたバージョンが人気を集めており、Apple Musicで70位程度、Spotifyで125位に入っています。リズミック系で33位とラジオにもかかり始めています。
☆67 Sarah Jeffery – Queen Of Mean
ディズニー映画“Descendants 3”のサントラからの1曲、“Queen Of Mean”が67位に登場。歌を担当するSarah JefferyはHot 100初登場。
この曲はポイントの取り方がかなり偏よっています。YouTubeでは2位ですが、Apple & Spotifyでは200位圏外です。ほかDLが31位でした。
☆58 Drake – Trust Issues
Drakeの過去アルバムから漏れた曲を集めた“Care Package”がアルバム1位に。これで9回目のアルバム1位。EPバージョンのSo Far Gone、今年再リリースされたSo Far Gone以外の作品は全てアルバム1位になっています。
総合売上は10.9万で、うちストリーミングからの数字は9万を記録。再生数に換算すると1.155億です。他のアルバムや作品群と比べると見劣りする数字ですが、既にどこかでリークされている曲=熱心なファンなら知っているような曲も多く、それにも関わらずアルバム1位を獲得できていることの凄さが際立ちます。
Apple Musicではリリース日にランキング1位-4位を独占する一方、Spotifyでは最も人気な“How Bout Now”でも12位と2つのサービスでやや人気に差がありました。
そのストリーミング人気から6曲がHot 100に入りました。これでDrakeはHot 100歴代エントリー数を203まで伸ばし、これが最多のGlee Cast(207)に迫っています。
(Hot 100登場曲)
58位:Trust Issues
60位:How Bout Now
61位:The Motion
68位:Dreams Money Can Buy
85位:Club Paradise
95位:Days in the East
1番人気の“Trust Issues”はDrake自身も参加した2011年のDJ Khaledのヒット”I’m On One”の歌詞を引用。(成立順は不明ですが)ソングライトのクレジットにはThe Weekndの名が。
△48 YK Osiris – Worth It
先週までラジオの伸びによって特例でチャートに残っていた“Worth It”が48位まで浮上。これでラジオが伸びなくてもチャート残留が可能に。ただしラジオがマイナスに転じ始めているので、来週にもチャートから外れてしまうかもしれません。
このラジオの伸びによる5週分のチャート残留によって、年間チャートまで手が届いたかも。アベレージ60位だと22週程度の滞在で、またアベレージ70位ならば27週程度で年間チャートに乗るイメージです。
同じような理由でチャートに残っているFlorida Georgia Lineの“Talk You Out Of It”は今週25週目で57位。
△33 Dan + Shay – All To Myself
今週カントリー系ラジオ2位の“All To Myself”がトップ40に突入。ラジオの成績だけでなく、ストリーミングでも一定の数字を記録。AppleとSpotifyの両方で200位圏内には入っています。Dan + Shayはカントリーラジオ以外への波及力が強めで、過去シングルはポップ系やアダルトポップ系のラジオ、またはストリーミングで人気を得ています。前シングルの”Speechless”は今週28位。アダルトポップ系ラジオでは今週5位。
同じくカントリー系ラジオで上位につける(3位)、Jason Aldeanの“Rearview Town”も40位でトップ40入りを果たしています。こちらはApple & Spotifyのランキング圏内には入っていませんが、YouTubeで78位に入っています。
☆8 Ariana Grande & Social House – Boyfriend
Ariana GrandeがポップデュオのSocial Houseとタッグを組んだ“Boyfriend”が8位に登場。”thank u, next”期よりもR&B方面に若干進んだ印象のある1曲です。
各ストリーミングで好成績を記録。最も人気だったのはSpotifyで2位。次いでビデオもリリースされたYouTubeでは4位、そしてApple Musicでもトップ10に入る期間が長かったです。ほかDLでも2位にランクインしました。
既にラジオでも40位にランクインしています。ポップ>リズミック>アダルトポップ系の順で人気です。
Social Houseは初のHot 100入り。元々裏方としてソングライトやプロデュースを担当していたようですが、2018年から自身のシングルもリリースするようになりました。
ちなみにこの曲はRolling Stone Chartsでは首位。RS Chartsの主要なポイント源であるAppleやSpotifyで最も人気なのは“Ransom”ですが、DLでの差が大きくこちらが1位になりました。
―1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road
今週も1位を守った“Old Town Road”。19週目の1位に。今週も”bad guy”の1.2倍のポイントを記録しています。両者ともポイントを落としており、依然デフレのレースが続いています。(”Old Town Road”が-15%、”bad guy”が-12%)
先週に引き続き“Señorita”が次の1位最有力候補ですが、他にも”Hot Girl Summer”、“Ransom”などが候補に浮上。
来週のチャートでリリースが反映される“Hot~”はリリース初日にiTunesでApple Musicで首位を獲得。2日目以降はやや勢いを落としましたため、来週すぐに1位を獲得するのは難しそうですが、ビデオなどでインパクトを得て再び勢いづけば1位まで届く可能性もあります。
既に10位まで上り詰めた“Ransom”は今週末にリリースされるJuice WRLDリミックスがどこまでプラスになるか。ストリーミングでは既に高い人気を得ているので、ラジオやDLをどこまで克服できるかもカギになります。もう少し順位を伸ばしそうですが、1位はさすがに難しいか……?
×× Pedro Capó & Farruko – Calma
Pedro CapóとFarrukoの“Calma”がピーク71位 / 滞在20週という成績でチャートを後に。ラテン界では大ヒットだったものの、その他の層へはそこまで波及せず順位は伸びませんでした。しかし20週チャートに残ったのはラテン曲としては優秀な成績だと思います。
YouTubeでは現在14.9億再生まで到達。途中にAlicia KeysやAlan Walkerのリミックスが登場したもののそこまで大きな影響力を持ちませんでした。
この曲でブレイクしたPedro Capóは、Camiloとの“Tutu”が新たに浮上中です。直近のSpotifyグローバルランキングで48位。
“SICKO MODE”が1年の滞在の末に大往生。ピーク1位&滞在52週と文句なしの特大ヒットでした。トップ10に32週滞在(歴代3位タイ)と上位にいた期間も長かったです。
ストリーミングでの根強い人気に加え、複数系統でのラジオの人気がロングヒットの要因となりました。リズミック&アーバン系で1位を獲得したのち、およそ3ヶ月後にポップ系でのピークを迎えました。この系統によるヒット時期のズレがHot 100でのロングヒットの要因になりやすいです。
ちなみに滞在最後の週が50位だったので「21週目以降51位に落ちると~」・「53週目以降26位に落ちると~」、どちらのルールが適用されてチャートから外れたかは不明。ここ数週チャートから外れそうな順位に滞在していましたが、最後に粘りを発揮し滞在1周年を迎えることに成功しました。
私は年間チャート半年前予想!という記事で、「直近の週の順位下降が大きい」という理由でこの曲を年間トップ10から外してしまいましたが、確実に年間トップ10に入りそうです。元々は年間トップ10有力と思っていましたが記事を作る直前に外してしまったので、この外しは悔しいですね💦💦
×× Panic! At the Disco – High Hopes
“High Hopes”も今週1年の滞在の末にチャートから外れました。ピークは4位。最後の週が32位だったので、「ロングヒット度」で見ると”SICKO MODE”を上回ります。
この曲を大きく支えたのはラジオのヒットです。ポップ、アダルトポップ、オルタナティブ系と3つの系統で首位に立ち、総合ラジオ再生数は14週にわたり1位を記録。歴代屈指のラジオヒットとなったのです。
ただしストリーミングがラジオの成績と比べると低め*1で、Hot 100では4位止まりに。ラジオで10週以上1位になった曲の中でHot 100首位にならなかったのは“High Hopes”と”I Love You Always Foever”(2位)の2曲だけです。(ルールで阻害された曲を除く) ※Radio Songsが始まったのは1991年末から
(Radio Songs1位最長ランキング)
18週:Goo Goo Dolls – Iris (1998)
16週:No Doubt – Don’t Speak (1996-1997)
16週:Mariah Carey – We Belong Together (2005)
16週:Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You (2018)
14週:Céline Dion – Because You Loved Me (1996)
14週:Alicia Keys – No One (2007-2008)
14週:Panic! At the Disco – High Hopes (2018-2019)
ピーク時の順位は見劣りしますが、滞在は長い方(上記の曲で52週滞在した曲は少数派)で、総合のヒット度はそこまで低くはないと思います。
時代が違えば複数週にわたりHot 100で1位を獲得できたのかもしれません。近年のHot 100では極端に滞在が短い曲もあれば、ピークが際立たなくてもロングヒットになる曲もあり、チャートアクションが多様化しているので、デビュー順位 or ピーク順位に囚われず長い目で観察することが大切だと思います。
今週チャートから外れた曲 (15曲)
【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】
100 Halsey – Nightmare (🗻15位 /⏰11週)
99 Lady Antebellum – What If I Never Get Over You (🗻86位 /⏰2週)
97 Jonas Brothers – Cool (🗻27位 /⏰17週)
96 Pedro Capó & Farruko – Calma (🗻71位 /⏰20週)
95 Chance the Rapper feat. Death Cab For Cutie – Do You Remember (🗻95位 /⏰1週)
94 Chance the Rapper feat. John Legend – All Day Long (🗻94位 /⏰1週)
92 Nicki Minaj – MEGATRON (🗻20位 /⏰5週)
88 Mustard feat. NAV, Playboi Carti & A Boogie Wit da Hoodie – Baguettes in the Face (🗻88位 /⏰3週)
86 NF – The Search (🗻70位 /⏰2週)
85 NF – Leave Me Alone (🗻85位 /⏰1週)
79 Taylor Swift – The Archer (🗻69位 /⏰2週)
77 Ed Sheeran feat. Chance the Rapper & PnB Rock – Cross Me (🗻25位 /⏰10週)
69 The Chainsmokers & Illenium feat. Lennon Stella – Takeaway (🗻69位 /⏰1週)
50 Travis Scott – SICKO MODE (🗻1位 /⏰52週)
32 Panic! At the Disco – High Hopes (🗻4位 /⏰52週)
・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品
1 Drake – Care Package
4 Lil Durk – Love Songs 4 The Streets 2
7 サウンドトラック – Descendants 3
12 Tyler Childers – Country Squire
17 Skillet – Victorious
27 Volbeat – Rewind, Replay, Rebound
39 Various Artists – NOW That’s What I Call Music! 71
51 Clairo – Immunity
59 Tool – Opiate (EP)
170 Rich The Kid, Famous Dex & Jay Critch
198 Mabel – High Expectations
(DLなどで開放され、再登場したToolの作品)
10 Ænima
16 Lateralus
18 10,000 Days
19 Undertow
◇アルバムチャート長期滞在
1周年:Nicki Minaj – Queen (今週186位)
100週目:Thomas Rhett – Life Changes (今週131位)
2週目の“ASTROWORLD”に敗れアルバム1位を獲得できなかったNicki Minajの”Queen”ですが、ストレートでアルバムチャート1周年を達成。悪くない成績を残していますが、“ASTROWORLD”は今週???位で、これと比べると見劣りします。
・今週ラジオで伸びた曲
☆Ariana Grande & Social House – Boyfriend
・Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita
・Lizzo – Truth Hurts
・Ed Sheeran feat. Khalid – Beautiful People
・Sam Smith – How Do You Sleep?
・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲
・MONSTA X feat. French Montana – Who Do You Love?
Hot 100に入るほどの成績ではないですが、ポップ系ラジオの39位に登場。K-Popアクトがラジオで活躍するのは珍しいです。BLACKPINKですらポップ系ラジオチャートへのエントリー歴が無いです。
・Herve Pagez & Diplo feat. Charli XCX – Spicy
同じくポップ系ラジオチャートの下位に登場。
・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲
🍎 Dreamville... – Under the Sun (今週36位程度)
✅ Lizzo – Good As You (今週26位)
🚩 Trippie Redd feat. Lil Baby & Lil Duke – Mac 10 (今週21位)
※Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)
関連 / 参考記事
・ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)
・ビルボードスタッフが議論するシリーズ
今週のテーマはDrakeの“Care Package”についてです。
① ファンが既に知っていたかもしれない曲で高い再生数を記録したことについて
② コンピレーションアルバムは今後も重要な作品の一部か?廃れるか?
③ 次に未収録曲をストリーミングに流しそうなアーティストは?
④ Care Package正式リリース以前に知っていた曲はありますか?
⑤ これで9枚目のアルバム1位ですが、いずれ最多のThe Beatles(19枚)を抜くか?