チャート・マニア・ラボ

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Hot 100 2020年1月まとめ 【激動の1ヶ月、Roddy Ricch大活躍など】

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 今年からHot 100の記事は週ごとではなく、テーマ別で記事をまとめようと考えています。毎週の記事はテーマがある週のみまとめ、代わりに月末にその月の動向を振り返るというスタイルにしようと考えています。理由はテーマ別の方が後から参照しやすい、記事を書くほどテーマが無い週もある……などです。まあ今月はテーマが多くて結局毎週更新していたのですが! 

 

・今月のトップ10(シングル)推移

  1月4日 1月11日 1月18日 1月25日
1 All I Want for … Circles The Box The Box
2 Rockin' Around … Memories Yummy Life Is Good
3 Jingle Bell Rock The Box Circles Circles
4 A Holly Jolly … Someone You Loved Memories Memories
5 Circles ROXANNE 10,000 Hours Lose You to Love Me
6 ROXANNE Good As Hell Someone You Loved Someone You Loved
7 It's The Most Dance Monkey Dance Monkey 10,000 Hours
8 Someone You Loved Highest in the Room
Good As Hell Dance Monkey
9 Memories 10,000 Hours ROXANNE ROXANNE
10 Good As Hell Lose You to Love Me Lose You to Love Me Yummy

※表の都合で一部曲名を短縮しています

 

 

・今月のアルバムトップ5推移

  1月4日 1月11日 1月18日 1月25日
1 Fine Line / Harry Styles
89,000
JACKBOYS / JACKBOYS
154,000 👕
Please Excuse me for… / Roddy Ricch 97,000 Rare / Selena Gomez
112,000 🎫👕
2 Christmas / Michael Bublé
77,000
Please Excuse me for… / Roddy Ricch 74,000 Hollywood's Bleeding / Post Malone 65,000 Please Excuse me for… / Roddy Ricch 110,000
3 Please Excuse me for… / Roddy Ricch 73,000 Hollywood's Bleeding / Post Malone 64,000 Fine Line / Harry Styles
49,000
Time Served / Moneybagg Yo 66,000
4 Merry Christmas / Mariah Carey 71,000 Fine Line / Harry Styles
54,000
JACKBOYS / JACKBOYS
47,000
Hollywood's Bleeding / Post Malone 60,000
5 WHEN WE ALL FALL… / Billie Eilish 64,000 Soundtrack / Frozen 2
46,000
Soundtrack / Frozen 2
42,000
Kirk / DaBaby
43,000

※緑背景はその週にリリースされたアルバム

 

 

~各週のハイライト~

 

1/4のハイライト◇

・クリスマス曲が1位~4位を独占。全体で25曲がランクイン。(うち24曲がトップ50)

・”All I Want for Christmas Is You”が1位キープ。再生数は7270万

・集計対象は昨年12月ながらも、チャート日付は新年1月のため、Mariah Careyは4Decade連続での1位獲得を達成。史上初の快挙

・アルバム1位は2週連続でHarry Styles

 

1/11のハイライト◇

・クリスマス曲が全て去る。合計27曲が新登場/再登場する出入りの激しい週に

・1位がPost Maloneの”Circles”、2位がMaroon5の”Memories”、3位がRoddy Ricchの”The Box”(初のトップ10入り)

・アルバム1位はTravis Scott率いるJACKBOYS。インスト曲一つを除き、全曲がHot 100入り

・クリスマス期に1度はリカレントで外されたヒットが7曲再登場

 

1/18のハイライト◇

・Roddy Ricchの”The Box”がJustin Bieberを退け首位浮上!ストリーミングの数字が圧倒的(6820万)。彼はアルバムも1位

・Justin Bieberの”Yummy”は2位。セールスとラジオで抜群の成績も、ストリーミングは”The Box”の半分以下

・BROCKHAMPTONが初のHot 100入り!”SUGAR”が70位

YouTubeに関する集計変更で”Old Town Road”が15位→46位に。”Ransom”は33位から圏外に

 

1/25のハイライト◇

・FutureとDrakeの“Life Is Good”が2位に登場。Futureにとってはキャリア最高位

・DrakeのHot 100エントリー数が207に。歴代最多のGlee Castと並ぶ

・”The Box”が首位を守る。ストリーミング数は7720万まで到達

・Selena Gomezがアルバム1位。リリース6週目のRoddy Ricchとは僅差(2000枚)

・上位デビューが相次ぐ。Mac Miller、Lil Baby、Halsey、Selena Gomezの新曲がトップ40圏内に登場

 

 

今月トップ40(以上)に入った曲

(☆=新登場 ◇=再登場 △=順位上昇 初はトップ40入りが初のアーティスト)

 

1/4

◇36 Chuck Berry – Run Rudolph Run

◇31 Kelly Clarkson – Underneath the Tree

◇29 Derlene Love – Christmas (Baby Please Come Home)

△24 Andy Williams – Happy Holiday / The Holiday Season

 

1/11

☆38 JACKBOYS feat. Young Thug – OUT WEST

△36 Maren Morris – The Bones 

△32 blackbear – hot girl bummer

△31 Trevor Daniel – Falling (初)

 

1/18

△40 Lady Antebellum – What If I Never Get Over You

△35 Roddy Ricch feat. Mustard – High Fashion

☆2 Justin Bieber – Yummy

 

1/25

△39 YNW Melly – Suicidal

☆30 Selena Gomez – Rare

☆29 Halsey – You should be sad

☆17 Mac Miller – Good News 

☆16 Lil Baby – Sum 2 Prove

☆2 Future feat. Drake – Life Is Good 

 

今月Hot 100から外れた主な曲 

※滞在が10週以上、またはピーク順位が高い曲

 

1/4

87 Matt Stell – Prayed For You (🗻36位 /⏰20週)

45 Jonas Brothers – Only Human (🗻18位 /⏰27週) ※のちに再登場

22 Juice WRLD – Lucid Dreams (🗻2位 /⏰48週)

 

1/11

92 DaBaby feat. Offset – Baby Sitter (🗻59位 /⏰20週)

79 Ellie Goulding & Juice WRLD – Hate Me (🗻56位 /⏰20週)

+すべてのクリスマス曲

1 Mariah Carey – All I Want For Christmas Is You (🗻1位 /⏰37週) など

 

1/18

98 Anuel AA, Daddy Yankee, 等... - China (🗻43位 /⏰18週)

80 Joji – SLOW DANCING IN THE DARK (🗻69位 /⏰13週)

47 Lil Baby & DaBaby – Baby (🗻21位 /⏰21週)

33 Lil Tecca – Ransom (🗻4位 /⏰31週)

 

1/25

89 Post Malone feat. DaBaby – Enemies (🗻16位 /⏰18週)

50 DaBaby – Suge (🗻7位 /⏰37週)

46 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road (🗻1位 /⏰45週)

45 Ed Sheeran feat. Khalid – Beautiful People (🗻13位 /⏰26週)

 

 

主なトピックス

 

・Roddy Ricchの“The Box”が大躍進

 今月の主役は彼。昨年にアルバム1位を獲得して以降、徐々にシングルもヒット。そしてクリスマス後に本格的に花開きました。新鋭のラッパーがビッグスター(Justin Bieber)の1位を阻むという構図は昨年の“Old Town Road”を彷彿とさせるものがあります。どこまで1位支配が続くか見ものです。ビデオが未リリース、さらにラジオも伸びている途中と、まだまだポイントが上昇する余地が残っています。

 “High Fashion”などその他のシングルも好調。”The Box”も”High Fashion”もTikTokでよく使われているようです

  

・クリスマス後の特別措置。ただし……

 今年は過去最大の25のクリスマス曲がランクイン。そのぶんチャートから外れた曲が多く、このクリスマスが曲のチャート入り「最後」になったと思われた曲がいくつかありました。

 しかしクリスマス明けの週、これらの曲を特別に再登場させました。「リカレントルール」でチャートから外れた曲は、何か特別な再浮上が無い限り再登場しないのですが、「クリスマス曲に押し出されるのは不当」と考えたのでしょうか。特別措置が取られました。これは昨年までは無かったことです。

 この特別措置で再登場した曲はほとんど既にピークを過ぎた曲で、「新しい曲の枠のために古い曲を外す」というリカレントルールの目的に反するもので、この特別措置による再登場はあまり賛成できない、というのが私の意見です。

 またここで再登場した曲はほとんどラジオで人気の曲だったので、Hot 100における「ラジオの濃さ」が増すことにもなります。

 ここで再登場した7曲のうち、3曲が2週のうちにチャートから再び外れています。他の曲はどこまでチャートに残留するでしょうか。

 

☆クリスマス週に関する詳細な記事

Hot 100 1/4 特集 [チャート上では2020] 【クリスマス2019特集】 - チャート・マニア・ラボ

 

☆クリスマス後の再登場に関する詳細な記事

Hot 100 1/11 特集 【クリスマス後のリフレッシュ / 新方針?一度外れた曲を戻す】 - チャート・マニア・ラボ

 

 

・ルール変更によって弾かれた“Old Town Road” グラミーに向けて残念?

 集計期間が2020年に入り、1/18付けのチャートからHot 100でルール変更がありました。YouTubeでユーザーが作成したビデオを減算するように。具体的には、複数曲が含まれるコンピレーションなどが対象外に、ユーザーによる曲単体のアップロードは3/4に減算されました。詳しくは↓の記事に。

Hot 100 1/18 特集 【ルール変更:YouTubeの集計は公式ビデオが中心に】 - チャート・マニア・ラボ

 

 これの影響を受けた曲の数は少ないですが、その影響を受けた一部の曲はかなり順位を落としました。特にミームで人気だった曲はマイナスが大きいようです。

 “Old Town Road”はその週15位→46位と順位を落としました。そして次の週にはチャートから外れてしまいました。(=51位以下相当)

 個人的にはこれはグラミーに向けて少し残念です。なぜかというと、久々にグラミーがチャートに影響を与える現象が発生するかも?と考えていたからです。

 インターネットでの話題作りに定評のある彼の“Old Town Road”ならばグラミーで再浮上するかな?と考えていたのですが、チャートから外れてしまった以上その現象をチャートで観察することは難しそうです。

 他にも若者への影響力が強そうな”bad guy”も同様に再浮上するかもしれませんが、この曲もグラミー前にチャートから外れてしまう可能性があります。(”bad guy”も同様にルール変更で順位を大きく落とした) ※次のHot 100が勝負所です。

 

 

・短評①:”Life Is Good”

 Drakeを迎えたFutureの”Life Is Good”が2位にランクイン!Futureは“Mask Off”=5位を上回りキャリアピークを更新しました。Drakeのヴァースで始まり、ダイナミックに展開していく、という近年のfeat. Drakeでの黄金パターンを採用した1曲です。

 この曲はストリーミングでかなり人気を集め、セールスもその週の1位になるなど優秀な成績を収めたのですが、“The Box”の壁はとても高く2位スタートに。

 とはいえSpotifyではUSの週間再生数が歴代15位の約1986万を記録するなど、成功を収めたと言える成績を収めています。ちなみに“The Box”は歴代5位の約2497万再生。Apple Musicでは瞬間的に1位を獲得することはありましたが、週トータルで見ると”The Box”の方が1位に立っている期間が長かったです。

  DrakeはこれでHot 100エントリー数を207まで伸ばし、歴代最多のGlee Castと並びました。彼が次の曲をリリース次第、この記録を打ち破るでしょう。

 

・短評②:”Yummy”

 注目デビューながらも①の“Life Is Good”と同様に”The Box”に敗れ、2位スタートとなった“Yummy”。この曲はアルバムチャートで行われているような手法を採用して本気で1位を奪いに来ました。サイン入りヴァイナルなどを活用してセールスを伸ばし、さらにはJustin Bieber当人のインスタグラムで国外のファン向けに居住地偽装すればUS1位を取れる!などの画像を一瞬投稿して物議を醸しました。

 アルバムチャートでこのようなグッズ戦略を用いた作品は2週目に大きく数字を落とします。シングルでも同様に過去にこの戦略を行ったTravis Scottの“HIGHEST IN THE ROOM”が1位→6位に、The Weekndの”Heartless”が1位→17位、そして“Yummy”は2位→10位と順位を落としました。

 ここまでなんかネガティブな情報だらけですが、ラジオでは大成功を収めており成績自体はさほど悪くはないと考えています。この曲の評価は今後どこまで長持ちするか?という点、具体的にはトップ10に何週残るか?で下したいと思います。トップ10滞在は10週までは伸ばしたいところです。

 

・短評③:”Suicidal”

 YNW Mellyは現在殺人容疑で収監中。その素行を問題視されているのか、ラジオでほとんどオンエアされていません。しかしストリーミングでは安定した人気を得ており、ここまで”Murder On My Mind”、”223’s”、そして今回の”Suicidal”と3曲がトップ40まで到達。ラジオの割合が高いHot 100でかなり健闘しています。

 ラジオとセールスが低いので、かつてのHot 100ではランクインしていなかったタイプの曲です。

 “Suicidal”は最近Spotifyの最大手プレイリストToday’s Top Hitsに入りました。(よりヒットしていた”Murder On My Mind”は入っていなかった)

 Spotifyは以前、素行面に問題のあったR. Kellyをプレイリストから削除したことがあったので、この追加は意外でした。

 

短評④:”Hate Me”

 TikTok効果で再浮上を果たした“Hate Me”ですが、20週の満期を迎えてチャートから外れました。チャート入り第一期はラジオ効果、第二期はTikTokによるストリーミング効果。第一期での最高位は72位、第二期での最高位は56位とTikTok後にピークが来ています。

 仮に第二期にラジオのピークが来ていれば相乗効果でもっと高い順位まで到達するのですが、TikTokでのヒットは未知の曲 or 意外な過去曲が多いので、狙ってラジオとTikTokのヒット周期を合わせるのは現実的ではないでしょう。

 

 

短評⑤:”Enemies”

 Post Maloneの「サブシングル」の曲がピーク16位、18週という成績でチャートを後に。彼のメインシングルは“Circles”ですが、主にオンエアされていたのはポップ系ラジオです。こちらの”Enemies”は”Circles”があまり広がらなかったラップリスナー向けのシングルです。(リズミック系で1位)

 ストリーミングでアルバム単位の人気が出た場合、アルバムのリリースから時間を置いてカットされるシングルは奮わない傾向が強いので、サブシングルも活用して適切な時期にシングルをカットするのは良い戦略だと思います。彼のように複数ジャンルのシングルを使い分けられるアーティストは希少ですが。

 

 

・来月以降

 まずは来週に大きく動きます。EminemMac Millerのアルバム曲が大量に登場し、どの曲がチャートに残るか?が大きなテーマでしょう。古い曲が2020の年間チャートに入るためには、ここで粘ってチャートに残る必要性があります。

 

 注目の既存シングルは”Don’t Start Now”、”BOP”、”High Fashion”、”Blinding Lights”あたり。“Don’t Start Now”は現在14位で、キャリア2曲目のトップ10が間近に迫っています。

 “BOP”も同様にトップ10入りの可能性がある曲。ビデオリリース時に大きな上昇を見せたものの、クリスマス曲に阻まれてトップ10入りならず。そこから現在に至るまでトップ10の壁を破れていませんが、果たして?

 “High Fashion”は非シングルながらもストリーミング人気によって27位まで到達。この曲がどこまで順位を伸ばすのか、いつシングルカットされるのか、などに注目。

 “Blinding Lights”はストリーミングでの人気を受けてシングルカットされ、浮上中。SpotifyでもAppleでもこっちの方の順位が上。SpotifyのToday’s Top Hitsでは”Heartless”の方は既にリストから外されています。

 この”Blinding Lights”はドイツでThe Weekndにとって初のシングル1位を獲得、ほかオーストラリアで1位、イギリスで4位などUS以外で絶賛ヒット中です。

 

 

・各週のHot 100順位リンク

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-01-04

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-01-11

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-01-18

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-01-25