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Hot 100 7/21 見どころ 【Iggy Azalea2年ぶりにHot 100 / チャレンジ効果を支えたラジオ】

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 こんばんは!今週注目だったのはIggy AzaleaのHot 100エントリーでしょうか!2年ぶりにHot 100エントリーを果たしています。ほかDrakeの新シングルのラジオ効果、Futureのミックステープなど *1

 

☆今週のHot 100ハイライト

・Drakeの“In My Feelings”が首位に浮上。成績が圧倒的で今後しばらく1位に居座る可能性も

・Futureのストリーミングのみで公開したミックステープがアルバムチャート3位で登場。“Wifi Lit”など4曲がHot 100にエントリー

・Meek MillのEPから2曲がHot 100に

・苦労人Lauv、チャート入りから22週目でトップ40に到達

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲           Drake – In My Feelings

今週最もダウンロードが上昇した曲 Drake – In My Feelings

今週最もストリーミングが伸びた曲 Drake – In My Feelings

最も高い順位で新登場した曲           Future – Wifi Lit

 

曲の個別解説

↓この週のHot 100の順位表です。

 

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

☆96 Iggy Azalea feat. Tyga – Kream

 Iggy AzaleaとTygaの“Kream”が96位で登場!Iggy Azaleaにとっては約2年ぶりと久しぶりのHot 100エントリーとなりました。

 Twerkダンスが際立つビデオ(YouTube今週19位)やDL(今週41位)の人気によってHot 100入りを遂げました。

 

 この2人は今年のコーチェラで一緒にいる所が目撃されてから、交際説が浮上しているようです

  

※Tygaのシングル、”Taste"は現在絶好調で近いうちにトップ10まで達するかもしれません。

 

☆88 Tiësto & Dzeko feat. Preme & Post Malone – Jackie Chan

 TiëstoやPost Maloneなどの“Jackie Chan”が88位で登場。もともとはPremeとPost Maloneのみによる曲でしたが、TiëstoとDzekoがリミックスしてシングル化したところ人気が出ました。

 DzekoとPremeは初のHot 100入り、Tiëstoは“Red Lights”や”Wasted”がヒットした2014年以来のHot 100入りです。

 この曲はポップ系ラジオやストリーミング(主にSpotify)で人気。アメリカ以外では、オーストラリア23位、イギリスで12位など、既にチャート上位に食い込んでいます。

 アメリカではチャートにラジオが導入されている、またストリーミングの競合が多い、などの理由でSpotifyのチャートに与える影響力が他国と比べると、やや低めな傾向にあります。(逆にUS以外の国はSpotifyのランキングとシングルチャートの並びがかなり似ている傾向にある)

 

 この曲のサビでは”I Just Ordered Sushi from Japan”と寿司が登場します。Hot 100に登場した曲で、歌詞に「寿司」が入っている曲は他にもそこそこあるようです。(Lil Uzi VertとNicki Minaj*2の“The Way Life Goes”やChris Brownの”Look At Me Now"など)

 

☆83 Lil Pump – Drug Addicts

 Lil Pumpの“Drug Addicts”が83位で登場。Lil Pumpにとって4曲目のHot 100エントリー。

 ストリーミングで人気の1曲。YouTube(今週30位)、Spotify(今週72位)などで主に人気です。

 

☆73 Meek Mill feat. Swizz Beatz – Millidelphia

 Meek Millが出所後では初となる作品、4曲入りのEP “Legends of the Summer”をリリース。アルバムチャートでは9位にランクインし、収録曲のうち2曲がHot 100入りを果たしました。

 Swizz Beatzを迎えた“Millidelphia”が73位、JeremihとPnB Rockを迎えた”Dangeros”が79位で登場しています。

 ほかの収録曲もBubbling Under(101-125位相当のチャート)には入っています。(Miguelとの“Stay Woke”は120位相当、”1am”は123位相当)

 

☆60 twenty one pilots – Jumpsuit

 twenty one pilotsの2年ぶりのカムバックシングル“Jumpsuit”が60位に登場しました!この曲は水曜日リリースで、今週のチャートではリリース後1日目・2日目分の数字しか集計されていないものの、その短い間で多くのDL(今週6位)やストリーミングを記録し、今週のチャートに滑り込みました。

 来週は1週間まるごと集計の対象となるため、大きな順位上昇が見込まれます。また同時にリリースした“Nico and the Niners”もHot 100に登場する見込みです。

 “Jumpsuit”は現在、オルタナティブロック系の絶大な支持を得ています。来週か再来週あたりには、このオルタナティブロック系ラジオの1番人気になりそうです。

 

☆53 Future – Wifi Lit

 Futureがミックステープ“Beast Mode2”をストリーミングのみでリリース。アルバムチャートの3位に食い込み、ストリーミングのみで公開された作品としてはアルバムチャートの最高位を記録しました。(以前の記録はChance the Rapperの”Coloring Book”による8位*3

 このミックステープはプロデューサー・Zaytovenとの共作で、2015年にリリースされた“Beast Mode”の続編にあたります。

 “Beast Mode 2”のうち、4曲が今週のHot 100に登場。53位で登場した”Wifi Lit”が最高位。ほか”31 Days”が65位、“Cuddle My Wrist”が71位、”Racks Blue”が76位で登場しています。

 またほか4曲がBubbling Under(101-125位相当のチャート)に入っています。

 

 ちなみに今週のアルバムチャートはストリーミングの効果で、「純セールス」の比率が恐ろしく低くなっています。↓の表のように、多くのアルバムがセールス「以外」の指標(主にストリーミング)でアルバムを「売り上げて」います。

 

アルバム 合計 セールス 割合
1 Drake / Scorpion 335,000 29,000 8.7%
2 Post Malone / Beerbongs & Bentleys 71,000 6,000 8.5%
3 Future / Beastmode 2 57,000 0 0.0%
4 XXXTENTACION / ? 51,000 2,000 3.9%
5 Cardi B / Invasion of Privacy 44,000 3,000 6.8%
6 Juice WRLD / Goodbye & Good Riddance 41,000 1,500 3.7%
7 Soundtrack / The Greatest Showman 30,000 16,000 53.3%
8 The Carters / EVERYTHING IS LOVE 29,000 6,000 20.7%
9 Meek Mill / Legends of the Summer 26,000 6,000 23.1%
10 Lil Baby / Harder Than Ever 26,000 400 1.5%

 

合計=ストリーミングなどを含むアルバムの「トータル売上」 

割合=アルバムの「合計」のうちセールスが何%を占めているか

※ちなみに、今週の”Scorpion"は歴代のアルバム1位で最もセールスの比率が低いです。(アルバム1位の作品のうち、セールスの割合が10%を下回ったのは今回が初)

 

△40 5 Seconds Of Summer – Youngblood

 5 Seconds Of Summerのアルバム表題シングル、“Youngblood”が好調。ポップ系ラジオやSpotifyの好調を受けて、トップ40入りを果たしました!(トップ40はHot 100でヒットの基準とされているラインです)

 5 Seconds of Summerにとって、前アルバムのシングル”She’s Kinda Hot”以来3年ぶりのトップ40入りに*4。以前はダウンロードの人気を中心に「一気に上がり、一気に落ちる」というチャートアクションが多かったですが、今回の曲は「じっくり上昇」しています。楽曲がより幅広い層に支持されるようになった、ということでしょうか。

 この曲は彼らの母国オーストラリアでは絶大な支持を得ていて、現在8週連続でシングル1位をキープしています。

 

△37 Florida Georgia Line – Simple

 Florida Georgia Lineの“Simple”が37位へ浮上。彼らにとってキャリア12曲目のトップ40に。カントリー系ラジオで人気のほか、ストリーミングでもそれなりに数字を稼いでいます。(Spotify今週70位、Apple Musicでは120位前後)

 先週のチャートからのルール変更(無料会員のストリーミングを2/3に、など)によって若干ラジオで強い曲の順位が上がっているように見え、ラジオで強いカントリーに追い風が吹いているような気がします。

 カントリー界のエース・Florida Georgia Lineにかかる期待は大きいです。

 

△35 Kenny Chesney – Get Along

 カントリー界のベテラン・Kenny Chesneyの”Get Along”が35位へ浮上。彼にとってキャリア26曲目のトップ40に! ちなみにトップ40は多いものの、トップ10入りの経験は無いです。

 この曲は主にラジオで人気。カントリー系ラジオで今週の一番人気です。彼は来週にキャリア17枚目のアルバム“Song for the Saints”をリリース予定です。

 

△33 Lauv – I Like Me Better

 Lauvの“I Like Me Better”がついにトップ40入り!チャート入りから22週目でピークを更新し続けており、かなりの遅咲きです。

 Spotifyのピークからは約1年が経過していますが、ラジオでは今がまさにピーク。このピークの「ズレ」はプラスに働くこともマイナスに働くこともありますが、この曲の場合はプラスに働いている印象があります。*5

 Lauvはまだこの曲でしかHot 100入りの経験がありませんが、DJ Snakeとの“Different Way”がBubbling Underに入ったことも

 

△5 Ella Mai – Boo’d Up

 Ella Maiの“Boo’d Up”が好調をキープしています。今週はラジオでの浮上やNicki Minaj、Quavoとのリミックスのリリースなどがあり、11位→5位とジャンプアップしました。

 現在はR&B / Hip-Hopやリズミックなどのラジオ系統で人気を集めていますが、ポップ系ラジオでも人気を得ることができれば、さらなるヒット or ロングヒットになりそうです。

 

△1 Drake – In My Feelings

 Drakeの“In My Feelings”が首位に浮上。DLやストリーミングで他を圧倒する数字を叩き出していて、今後しばらく一位をキープする可能性もあります!

 Drakeはこれで通算6曲目の1位に(“What’s My Name”、”Work”、”One Dance”、“God’s Plan”、”Nice For What”に次ぐ)なり、シングル1位が最も多いラッパーとなりました!(Diddy、EminemLudacrisがこれに次ぐ5曲の1位を記録している)

 

 

 

 この曲のヒットの要因は「チャレンジ」の効果が取り上げられますが、個人的にその動きを下支えしたラジオに注目しています。

 当初、シングルとしてラジオに主にかかっていたのはMichael Jacksonを迎えた“Don’t Matter To Me”だったようですが、このチャレンジの人気を受けてシングルを”In My Feelings”へとスイッチ。

 そのシングル選定の結果、“In My Feelings”DLやストリーミングだけではなく、ラジオからもポイントを得て、Hot 100で破格の強さを誇っています。

 チャレンジでの人気を見て、ラジオ局(かレーベル?)の素早い「シングル切り替え」は称賛に値すると私は考えています。

 昨年の“More Life”ではラジオ局ごとにかけるシングルがバラバラで、結局明確なシングルがあまり定まらないまま終わってしまいましたが、今回はシングルを一本化することで新たに大ヒットが生まれています。

 

 この記事にラジオ局のシングル選定の悩みについて書かれています。レーベル側からは“Free Smoke”をシングルにするとの指定があったようですが、ストリーミングのチャートを見て、ラジオ局の判断で”Passionfruit”にシングルを変更しました。

 

 また、ここ7週連続で首位が交代していますが、“In My Feelings”が破格の強さを誇っているため、しばらく1位が動かなさそうです。(今週まで、Nice For What→Psycho→Nice For What→SAD!→I Like It→Nice For What→In My Feelingsの順番で変化)

 

▽× Charlie Puth feat. Kehlani – Done For Me

 Charlie PuthとKehlaniの“Done For Me”が今週チャートから外れました。ラジオではある程度好調だったものの、ストリーミングで数字が伸びなかったことが祟り、ピーク53位・チャート滞在9週と微妙な成績でチャートを後にしています。

 Charlie Puthに限らず、ポップ系のラジオで支持を受けているアーティストはストリーミングが弱い傾向にあります。しかし逆に、ポップ系ラジオの支持とストリーミングを両立できれば、Hot 100上位を席巻することが可能です。(最近の“Girls Like You”がこれに当てはまる)

 

 

今週チャートから外れた曲 (14曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Blake Shelton – I Lived It (🗻63位 /⏰18週)

98 XXXTENTACION – The Remedy For A Broken Heart (🗻55位 /⏰5週)

97 Reik feat. Ozuna & Wisin – Me Niego (🗻77位 /⏰3週)

96 Famous Dex – Japan  (🗻28位 /⏰15週)

95 Bad Wolves – Zombie (🗻54位 /⏰17週)

94 Sam Hunt – Downtown’s Dead (🗻94位 /⏰2週)

92 Kanye West – Yikes (🗻8位 /⏰5週)

91 XXXTENTACION – Everybody Dies in Their Nightmares (🗻42位 /⏰7週)

88 Lil Pump – Esskeetit (🗻24位 /⏰12週)

78 Charlie Puth feat. Kehlani – Done For Me (🗻53位 /⏰9週)

63 Queen Naija - Karma (🗻63位 /⏰1週)

57 Drake – March 14 (🗻57位 /⏰1週)

56 Drake – Final Fantasy (🗻56位 /⏰1週)

52 Drake – Ratchet Happy Birthday (🗻52位 /⏰1週)

 

来週以降の動向・プレイリスト

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲を特集

 

・Lauren Daigle – You Say

 今週の途中からiTunes2位を長くキープ。DLのポイントを中心に、来週のHot 100デビューなるか?

 

・Wiz Khalifa feat. Swae Lee – Hopeless Romantic

・Wiz Khalifa feat. Lil Skies – Fr Fr

 Wiz KhalifaのアルバムからHot 100に登場するかもしれない2曲です。

 

・その他の新曲情報はこちらを参照してください!

 

 

 

・アルバムチャートの上位に新登場した作品

※アルバムチャート(Billboard 200)で50位以上に新登場した作品です

 

3 Future / Beastmode2 (ストリーミングのみ)

9 Meek Mill / Legends of the Summer

 今週はアルバムのリリースが少なめです。(Drakeのアルバムの影響でアルバム1位を取りづらいと判断したからでしょうか???)Years & Yearsのアルバム は75位。

 

・プレイリスト

 

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

*1:画像はIggy Azalea & Tyga Fuel Romance Rumors at Coachella | Rap-Up より

*2:とOh Wonder

*3:ただしそのChance the Rapperが今週アルバムをリリースする噂があり、この記録はすぐに塗り替えられてしまうかも

*4:ちなみにファーストアルバムの時はDLの勢いが凄まじく、アルバムから5曲もがトップ40入りしていました

*5:ラジオとSpotifyのピークがズレて、惜しい状態が続きながらもHot 100に入れないケースもある。その場合はズレがマイナスに働いているといえる。