チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

2017年前半 Hot 100 見どころ記事 まとめ

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2017年前半のHot 100見どころ記事を一つにまとめた記事です。

復習するなり、懐かしむなり何かの役に立てば幸いです。

ちなみに【表紙】とはリンクの窓にある画像のことを指していて、個人的に雑誌の表紙っぽいので自分で勝手にそう命名しています。

 

以下が過去のアーカイブです。

 

 

 

1/7 : Starboyがついに1位獲得 【表紙:The Weeknd】


 

1/14: George Michaelへの追悼 【表紙:Migos】


 

1/21: Bad and Boujeeがストリーミング・パワーで1位 【表紙:Bebe Rexha】


 

1/28: Ed Sheeranが初の「トップ10デビュー曲を同時に2曲以上送り込む」という記録を達成。数週後にDrakeも達成しましたが 【表紙:Khalid】


 

2/4: プエルトリコの経済を発展させた?曲のHot 100デビュー 【表紙:Migos】


 

2/11: PandoraがHot 100の集計に入った週 【表紙:Alessia Cara】


 

2/18: Migosのアルバムから7曲がHot 100に 【表紙:G-Eazy】

 

 

2/25: Million Reasonsの復活、Big Seanの1位アルバム 【表紙:Big Sean】

 

 

3/4: グラミー+Fifty Shade Darkerサントラの週 【表紙:Katy Perry


 

3/11: Futureアルバム第一弾(5曲登場)【表紙:Zayion McCall & Zay Hilfigerrr


 

 3/18:Futureアルバム②(2曲がHot 100へ) 【表紙:Future】


 

3/25:Ed Sheeran÷の週 【表紙:Ed Sheeran】


 

4/1: Nicki MinajのHot 100エントリー数が女性で最多に 【表紙:水原希子


 

4/8: DrakeのMore Life週、ポイントはイギリス人 【表紙:Skepta】


 

4/15: 今年最も評価された曲の一つXO TOUR Llif3がHot 100に 【表紙:Katy Perry


 

4/22: HUMBLE.リリース、カントリーのアウォードなど 【表紙:Kendrick Lamar】


 

4/29:Futureが客演以外で初のトップ10、Harry Styles新曲 【表紙:Future、Drake】


 

5/6: DAMN.の週 【表紙:Kendrick Lamar、Drake】


 

5/13: That's What I Likeが首位浮上 【表紙:Hayley Williams from Paramore


 

5/20: I'm the One1位デビュー、Bon Appétit登場 【表紙:Lorde】

 

 

5/27: Despacito1位浮上 【表紙:Justin TimberlakeChris Brown


 

6/3:Malibuトップ10入り、Bad Liar登場 【表紙:Demi Lovato】


 

6/10:それぞれソロでは初、Strip That DownとCrying in the Clubが登場 【表紙:チャート表】

 

 

6/17:Post MaloneのCongratulationsがトップ10入り 【表紙:Lauren Jauregui・Halsey】

 

 

6/24 Fifth HarmonyのDownが登場 【表紙:Fifth Harmony】


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


 


 

Billboard Hot 100 7/15 見どころ 【Believer がトップ10入りで今年初の……?】

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こんばんは。Imagine DragonsのBelieverがアルバムリリースの効果もあって、6位まで上昇したのが今週の最大のポイントではないでしょうか。ちなみに今年初のロックのトップ10入りです。ちなみに昨年の現時点では4曲*1、2年前の現時点では3曲のロック曲がトップ10に入っていました。

 

 

 

94 Goldlink feat. Brent Faiyaz & Shy Glizzy – Crew (New)

ヒップホップ系ラジオで注目を集めていたGoldlinkのCrewが94位で登場。アルバムではKaytranadaがプロデューサーの1人に。MeditationというシングルではKaytranadaのシングルTrack Unoを大幅にサンプリングしています。

 

89 Kendrick Lamar – ELEMENT. (Re)

週の途中にビデオがリリースされた効果で4週間ぶりにチャートに再登場。Kendrick LamarのELEMENT. アルバムのなかではHUMBLE. DNA. LOVE. LOYALTY. に次ぐ5番人気の曲でしたが、ビデオは3番目にリリースされました。ちなみにELEMENT.とLOVE.はシングル化されていない=ラジオでかかっていないため、主にストリーミングでHot 100に残っています。

 

79 Drake feat. Quavo & Travis Scott – Portland (↓)

DrakeのPortlandが15週目で79位。最初の週に9位で登場して移行は少しずつ順位を落としていって現在の位置へ。この曲はHip-Hop / R&B系 ラジオチャートで2週、48位、49位とチャートインしたのみでほとんどラジオでかからず。ストリーミングでは人気があるものの、ポイントの取り方が偏っているためHot 100では順位が下がってしまっています。これからラジオでかかり始めての再浮上を期待したいところですが、Drakeは新曲Signsをリリース。これからラジオでかかるのはSignsのほうでしょう。リリースタイミングの妙で、ストリーミングでの人気のわりにHot 100での順位が奮わないままチャートから外れてしまうかも、ということです。この調子だと、トップ10デビューしたにも関わらず年間100位以内に入れるか怪しいです。

ある意味曲のポテンシャルの割には「飼い殺し」状態であるのかもしれません。ラジオと比べて、元々の知名度がそこまでパワーを持たず、ストリーミングでなかなか奮わない大物アーティストもいるなか、これはかなりの「贅沢」な悩みでしょう。Drakeほどのリリース量だとこのような曲が出てくるのも仕方がないのでしょうか。

※似たようなケースにThe ChainsmokersのAll We Knowがあります。(スタートHot 100で18位 / リリース週にSpotifyで7位 などストリーミングで人気も、巨大シングルに挟まれてラジオでそこまでかからず、だんだん順位を落として不完全燃焼に)

※ちなみに世界的にヒットしたといえるPassionfruitと比べると、Portlandはややアメリカのローカルヒット気味です。

 

78 Bruno Mars – Versace On The Floor (Re)

Bruno MarsのVersace On The Floorが78位で再登場。アルバムリリース期に2週入って以来の再登場。元はバラード調の一曲でしたが。David Guettaと組んでディスコ風にリメイク。既に各種ラジオチャートで上昇中、3シングル連続のトップ10は現実的な目標といえそうです。

 

71 Metro Boomin feat. Offst & Drake – No Complaints (New)

Metro BoominがOffsetとDrakeを迎えたNo Complaintsが71位で登場。Migosのメンバー、OffsetはMet Galaに続いて2曲めのソロ名義でのHot 100。Metro Boominは21 Savageと連名の2曲(X,No Heart)に続いて3曲めの自身の名義の曲でのHot 100です。

プロデューサーとしても著名なMetro Boominですが、現時点で今年最も多くのトップ10を輩出したプロデューサーになっています。(次点はMike Will Made-ItとThe Chainsmokersの3曲)個人的に来年のグラミーの「最優秀プロデューサー(クラシック以外)」の最有力候補だと思っているのですが、如何でしょうか。

 

68 DJ Khaled & Calvin Harris feat. Travis Scott & Jeremih – Don’t Quit (New)

アルバムのセールスでは2位で、1位のImagine Dragonsにダブルスコアの差をつけられているものの、ストリーミング等で逆転してアルバムチャート1位の座を獲得したDJ Khaled。アルバムからは2位3位のI’m the One、Wild Thoughtsという2枚看板以外にも、BeyoncéとJay-Z夫妻コンビのShining (再登場 98位)、アルバムリリースと同時にビデオがリリースされたOn Everything (新登場 88位)、DrakeとのTo the Max (73位に上昇)とCalvin Harrisのアルバムの「予告編」のようなシングル、Don’t Quitの7曲がHot 100に。

 

39 A Boogie Wit da Hoodie feat. Kodak Black – Drowning (↑)

トップ40手前で足踏み状態だったAboogie Wit Da HoodieのDrowningがついにトップ40入り。彼にとっては初の、客演のKodak Blackにとっては2曲めのトップ40に。両者とも今後の飛躍が期待される若手です。

 

36 Drake – Signs (New)

DrakeのSignsが36位で登場。ちなみにMore Lifeに当てはめると、2 ChainzとYoung Thugを迎えたSacrificesと同じ順位。(More Lifeのなかで7番人気)シングルのジャケットのデザインがルイヴィトンとのコラボシングルとだけあってか、おしゃれ。

 

25 Miley Cyrus – Malibu (↓)

リリース時にはトップ10に入ったMiley CyrusのMalibuでしたが、ここ最近は20位前後に留まっています。先週はiTunes値下げを行うもそこまで順位を伸ばせず。ラジオでの伸びしろはまだまだありますが、どこまで順位を上げられるか。今週24位のSelena GomezのBad Liarも似たようなシチュエーションにあります。(値下げ済み、ラジオでは伸びしろあり、もう少し順位を伸ばしたい)

 

11 Zedd & Alessia Cara – Stay (↓)

18週目のZeddとAlessia CaraのStayが11位とトップ10圏外へ。トップ10滞在は8週間でした。この曲、Zeddのかつてのトップ10ヒットClarityと比較すると曲のピークが訪れるのが早めで、Stayが18週目でトップ10から落ちる一方、Clarityは18週目の時点でトップ10に入っていませんでした。当時より知名度が上がって、曲のリリース時から注目を集めていることが理由だと思います。(作風変化も理由の一つだと思いますが)、Clarityはロングヒットでピーク8位ながらも年間24位に食い込みましたが、Stayも同じくここから粘りを見せてロングヒットになるでしょうか。

ちなみに先週まで粘っていたAlessia CaraのScars to Your Beautifulは今週チャートから外れました。

 

6 Imagine Dragons – Believer (↑)

今週アルバムセールス1位のImagine Dragons。値引き、元からのラジオの好調、さらにアルバムリリースに伴うストリーミングでの浮上の効果で一気にBelieverが6位まで浮上。彼らにとってRadioactiveに次ぐ2番目に高いピーク順位です。(Demonsも同じくピーク6位)。Thunderも54位まで浮上しています。アルバムでは彼ららしい重厚なサウンドのBelieverに加え、新スタイルを見せたThunderが世界的に受けて、ロックの受けが悪いとされるストリーミングで上位につけるなど(例Spotify グローバルで最高7位)、まさにアルバムタイトル”Evolve”に相応しい活躍を見せていたと思うのですが、惜しくもアルバム1位は取れず。前述したようにストリーミングでもロック系アクトとしては大健闘だったのですが、キャレドのアルバムの曲数が多いこともあって、ストリーミングで逆転されアルバムチャート1位の座は取れませんでした。曲数の多さがアルバムチャート勝負の分かれ目になるのは少し考えものですかね……

 

5 Ed Sheeran – Shape of You (→)

今週チャート滞在25週目ながらもまだトップ5圏内をキープ。昨年の年間1位はEd Sheeranが関わったLove Youreselfでしたが、Hot 100での成績は1位に2週、トップ10に24週でした。一方Shape of Youは1位に12週、トップ「5」に25週と、昨年の年間1位すらも圧倒する驚異的な強さを見せています。

 

× XXXTENTACION – Look At Me! (↓)

2016年1月頃のリリースながらも、最近発見され一時期34位まで登りつめたXXXTENTACIONのLook At Me!がチャートから外れました。ブレイクのきっかけになったこの曲はチャートから外れましたが、独自のスタイルは大きく注目を集めていて今後の活躍に期待ができそうです。

 

今週チャートから外れた曲

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位/チャート滞在週数)】

100 Plies feat. Kodak Black – Real Hitta (100位/1週)

98 Enrique Iglesias feat. Descemer Burno, Zion & Lennox – Subeme La Radio (81位/6週)

97 Trey Songz – Nobody Else But You (92位/3週)

88 Zac Brown Band – My Old Man (68位/4週)

83 Young Thug feat. Future – Relationship (83位/1週)

61 Kodak Black – First Day Out (61位/1週)

60 XXXTENTACION – Look At Me! (34位/20週)

45 Alessia Cara – Scars To Your Beautiful (8位/43週)

 

 

近いうちのヒットが期待されるシングルたち

Hot 100以外の場所で好調なものの、Hot 100にエントリーしていない曲を集めました。

(調査対象:Spotifyデイリー、Shazam、Pandora)

Yo Gotti & Mike Will Made-It feat. Nicki Minaj – Rake It Up (Shazam 24位)

※Miley Cyrus – Party In The U.S.A. (Spotify 40位)

The Revivalists – Wish I Knew You (Shazam 42位)

Lauv – I Like Me Better (Spotify 44位)

JAY-Z feat. Damian Marley – Bam (Shazam 46位)

Jon Pardi – Heartache On The Dance Floor (Pandora 48位)

Chris Lane – For Her (Pandora 49位)

LoCash – Ring On Every Finger (Pandora 54位)

Jonas Blue feat. William Singe – Mama (Spotify 54位)

Carly Pearce – Every Little Thing (Pandora 58位)

Axwell ∧ Ingrosso – More Than You Know (Spotify 58位)

Khalid – Young Dumb & Broke (Spotify 60位)

Maren Morris – I Could Use A Love Song (Pandora 60位)

 

 

注目点は主に3つ。まずは「アメリカ建国記念日特需」アメリカを称えるような曲が一部、建国日限定で再浮上。具体的には

Miley Cyrus – Party In The U.S.A. (Spotify 40位)

Lynyrd Skynyrd – Sweet Home Alabama (Spotify 75位)

Bruce Springsteen – Born In The U.S.A. (Spotify 78位)

Snoop Dogg & Wiz Khalifa feat. Bruno Mars – Young, Wild & Free (Spotify 90位)

Marvin Gaye – Ain’t No Mountain High Enough (Spotify 92位)

Zac Brown Band – Chicken Fried (Spotify 98位)

 

iTunesでも上昇している曲もありますが、効果は限定的でHot 100エントリーとまではいかないと思います。

 

2つめはJay-Zのアルバムのシングル。Tidal限定配信のアルバムの曲が一部Shazamのチャートに登場。なぜShazamの数が増えるのかは個人的に疑問。Shazamは主にラジオに向けて使われるものだと思っていたのですが、それ以外にも主要な使い方はあるのでしょうか……?そこまで一気にいくつものシングルがラジオにかかり始めるとは思えませんし……

 

最後にJonas Blue。MamaがSpotifyで上昇中。世界的にストリーミングでヒットしているものの、アメリカではHot 100の100位にすら入らないというケースは多々あり、Jonas Blueの曲も過去にそのケースに当てはまったことがあって、例えば昨年のSpotify グローバルランキング(年間)100位以上のうち

89 Cheat Codes & Dante Klein - Let Me Hold You (Turn Me On)

76 Snakehips feat. Chance the Rapper & Tinashe - All My Love

71 Timeflies - Once in a While

69 Joel Adams - Please Don't Go

67 MØ - Final Song

57 David Guetta feat. Zara Larsson - This One's For You

55 Jonas Blue feat, JP Cooper - Perfect Stragers

45 Mike Perry feat. Shy Martin - The Ocean

39 Kygo feat. Maty Noyes - Stay

35 Cheat Codes & Kriss Kross Amsterdam – Sex

 

↑の10曲がHot 100の100位にすら入りませんでした。Jonas Blueのような「ダンスポップ」が当てはまる場合が多いです。世界的にヒットしていてもこのようなダンスポップ系の曲でも、アメリカでも壁にぶち当たることは多いです。一回Hot 100に入ったことのあるJonas Blueですが(Fast Carで)、再び壁を打ち破ってHot 100に入れるでしょうか!

 

 

*1:そのうち2曲がPrinceですが……

YouTubeにアルバムが全曲公開される? 【YouTubeにおけるアルバム公開の分析】

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Calvin HarrisはアルバムリリースまではFeelsのビデオ以外ではYouTubeに音源すらアップロードしていませんでしたが、(Previewと称して途中までの音源のみ)一転してアルバムリリースとともに全曲がYouTubeで公開されました。

え!?YouTubeで全曲公開してしまって大丈夫なんんですか?と思う方もいるかと思いますが、この手法は現在ではもの珍しいものではなく実はそれなりの頻度で行われているものなのです。そんなYouTubeとアルバム公開の関係性について過去を振り返り、どのような傾向があるか等を分析してみようと思います。

 

どのような分析をするか?

過去にBillboard 200(アルバムチャート)で1位を獲得した曲がYouTubeにどれくらいアップロードされているかを確認して(全シングル公開=YouTubeのみでアルバムのように聞ける / 一部公開 / 全く公開されていない)のうちどれか、ということを確認していきました。

そして、どれくらいの割合で全シングル公開されているかを%で計算しました。事例が特殊なコンピレーション/サウンドトラックは計算から除外しました。(打ち消し線を引いてあります)

期間は2010年代~にしました。ちなみにVevoYouTube音楽配信サポート会社)が始まったのも2009年末からでした。それでは古い方から順に年ごとに分析してみます。

 

この記事の切り口になったCalvin Harrisのアルバムですが、アルバム1位を取れずこの調査の対象外に……残念……


2010

2-Jan Susan Boyle I Dreamed a Dream 一部
23-Jan Kesha Animal 一部
30-Jan Vampire Weekend Contra 一部
6-Feb Various Artists Hope for Haiti Now  
13-Feb Lady Antebellum Need You Now 一部
27-Feb Sade Soldier of Love のちに全公開
27-Mar Ludacris Battle of the Sexes 一部
10-Apr Justin Bieber My World 2.0 一部
17-Apr Usher Raymond v. Raymond 一部
8-May Glee Cast Glee: The Music, The Power of Madonna  
15-May B.o.B The Adventures of Bobby Ray 一部
22-May Godsmack The Oracle 一部
5-Jun Glee Cast Glee: The Music, Volume 3 Showstoppers 一部
19-Jun Jack Johnson To the Sea 一部
26-Jun Glee Cast Glee: The Music, Journey to Regionals 一部
3-Jul Drake Thank Me Later 一部
10-Jul Eminem Recovery 一部
14-Aug Avenged Sevenfold Nightmare 一部
21-Aug Arcade Fire The Suburbs 一部
11-Sep Katy Perry Teenage Dream 一部
18-Sep Disturbed Asylum 一部
25-Sep Sara Bareilles Kaleidoscope Heart 一部
2-Oct Linkin Park A Thousand Suns のちに全公開
9-Oct Zac Brown Band You Get What You Give 一部
16-Oct Kenny Chesney Hemingway's Whiskey 一部
23-Oct Toby Keith Bullets in the Gun 一部
30-Oct Lil Wayne I Am Not a Human Being 一部
6-Nov Sugarland The Incredible Machine 一部
13-Nov Taylor Swift Speak Now 一部
27-Nov Susan Boyle The Gift 一部
11-Dec Kanye West My Beautiful Dark Twisted Fantasy

一部

全シングル公開率=0/27 0%

 

調査初年度はYouTubeに全公開されたアルバムは無し。今はYouTubeで音楽を聴くということが普通のように思いますが、この時代だと音のみ(Audio)のようなものは少なく、ほぼビデオのみだったと思います。つまり、聴くためのミュージックビデオではなく、見るためのミュージックビデオが想定されていたのだと思います。ちなみに2010年の全世界でのスマホの普及率は現在よりも低く、そう考えるとたしかにYouTubeで音楽を聞くという発想も出にくかったのかもしれません。

 

2011

29-Jan Cake Showroom of Compassion 一部
5-Feb The Decemberists The King Is Dead 一部
12-Feb Amos Lee Mission Bell 一部
19-Feb Nicki Minaj Pink Friday 一部
26-Feb Various Artists Now 37  
5-Mar Justin Bieber Never Say Never – The Remixes 一部
12-Mar Adele 21 一部
26-Mar Lupe Fiasco Lasers 一部
9-Apr Chris Brown F.A.M.E. 一部
16-Apr Britney Spears Femme Fatale 一部
30-Apr Foo Fighters Wasting Light 一部
11-Jun Lady Gaga Born This Way 全シングル
2-Jul Bad Meets Evil Hell: The Sequel 一部
9-Jul Jill Scott The Light of the Sun 一部
16-Jul Beyoncé 4 一部
30-Jul Blake Shelton Red River Blue 一部
13-Aug Eric Church Chief 一部
27-Aug Jay-Z and Kanye West Watch the Throne 一部
10-Sep Game The R.E.D. Album 一部
17-Sep Lil Wayne Tha Carter IV 一部
1-Oct Lady Antebellum Own the Night 一部
8-Oct Tony Bennett Duets II のちに全公開
15-Oct J. Cole Cole World: The Sideline Story 一部
22-Oct Scotty McCreery Clear as Day 一部
29-Oct Evanescence Evanescence 一部
12-Nov Coldplay Mylo Xyloto 一部
19-Nov Justin Bieber Under the Mistletoe 全シングル
26-Nov Mac Miller Blue Slide Park 一部
3-Dec Drake Take Care 一部
10-Dec Michael Bublé Christmas

一部

全シングル公開率=2/29 7%

 

翌2011年になると、ついに全公開されるアルバムが登場します。それはLady GagaのBorn This Wayでした。このアルバムはBillboard 200の歴史から見ても革命的なアルバムでした。このアルバムはリリース初週で約111万枚を売り上げて、これは2010年代で4番目に大きい数字*1なのですが、ここまでの数字を叩き出した理由はアマゾンのセールにあります。なんと0.99$(シングルよりも安い)という破格の値段をつけた結果、その1日だけでアマゾンから44万ものダウンロードを記録し、リリース初週でミリオンを達成したというわけです。

その結果を受けて2011年末、ビルボードは3.49$以下の場合、新*2アルバムの「セールス」をカウントしないというルールを新設しました。

このように、驚異的な値段設定で結果を出す → ルール改正ということで、Born This WayはBillboard 200(アルバムチャート)の歴史で革新的な1枚だと私は思っているのですが、YouTubeでも全曲公開という珍しい行動に出ていたのですね。「音楽の価格破壊」というテーマを議論する時には最重要なアルバムといえそうです。

また、それ以外にもYouTube出身のスター、Justin BieberもLady Gagaに続いて全曲公開をしています。

 

2012

24-Mar Bruce Springsteen Wrecking Ball 一部
31-Mar One Direction Up All Night 一部
7-Apr Soundtrack The Hunger Games: Songs from District 12 and Beyond  
14-Apr Madonna MDNA 一部
21-Apr Nicki Minaj Pink Friday: Roman Reloaded 一部
28-Apr Lionel Richie Tuskegee 一部
12-May Jack White Blunderbuss 一部
19-May Carrie Underwood Blown Away 一部
2-Jun Adam Lambert Trespassing 一部
9-Jun John Mayer Born and Raised 一部
30-Jun Usher Looking 4 Myself 一部
7-Jul Justin Bieber Believe 全シングル
14-Jul Linkin Park Living Things のちに全公開
21-Jul Chris Brown Fortune 一部
28-Jul Zac Brown Band Uncaged 一部
4-Aug Nas Life Is Good 一部
18-Aug Rick Ross God Forgives, I Don't 一部
25-Aug Various Artists Now 43  
1-Sep 2 Chainz Based on a T.R.U. Story 一部
8-Sep Trey Songz Chapter V 一部
15-Sep TobyMac Eye on It 一部
22-Sep Matchbox Twenty North 一部
29-Sep Dave Matthews Band Away from the World 一部
6-Oct Pink The Truth About Love 全シングル
13-Oct Mumford & Sons Babel 一部
3-Nov Jason Aldean Night Train 一部
10-Nov Taylor Swift Red 一部
1-Dec One Direction Take Me Home 一部
8-Dec Rihanna Unapologetic 一部
15-Dec Alicia Keys Girl on Fire

一部

全シングル公開率=2/28 7%

 

Justin Bieberが前年に引き続き全公開、そしてP!nkも全公開をしていましたが、その2例だけで、7%とまだまだ少数派です。

 

2013

19-Jan Soundtrack Les Misérables: Highlights from the Motion Picture Soundtrack  
26-Jan Chris Tomlin Burning Lights 一部
2-Feb ASAP Rocky Long. Live. ASAP 一部
9-Feb Gary Allan Set You Free 一部
16-Feb Justin Bieber Believe Acoustic 全シングル
23-Feb Josh Groban All That Echoes 一部
16-Mar Bruno Mars Unorthodox Jukebox 全シングル
23-Mar Luke Bryan Spring Break...Here to Party 一部
30-Mar Bon Jovi What About Now 一部
6-Apr Justin Timberlake The 20/20 Experience  一部
27-Apr Paramore Paramore 全シングル
4-May Fall Out Boy Save Rock and Roll 全シングル
11-May Michael Bublé To Be Loved 一部
18-May Kenny Chesney Life on a Rock 一部
25-May Lady Antebellum Golden 一部
1-Jun Vampire Weekend Modern Vampires of the City 一部
8-Jun Daft Punk Random Access Memories のちに全公開
22-Jun Queens of the Stone Age ...Like Clockwork 一部
29-Jun Black Sabbath 13 一部
6-Jul Kanye West Yeezus 一部
13-Jul Wale The Gifted 一部
20-Jul J. Cole Born Sinner 一部
27-Jul Jay-Z Magna Carta Holy Grail ゼロ
10-Aug Selena Gomez Stars Dance 全シングル
17-Aug Robin Thicke Blurred Lines 一部
24-Aug The Civil Wars The Civil Wars 全シングル
31-Aug Luke Bryan Crash My Party 一部
14-Sep Avenged Sevenfold Hail to the King 一部
21-Sep Ariana Grande Yours Truly 一部
28-Sep Keith Urban Fuse 一部
5-Oct Jack Johnson From Here to Now to You 一部
12-Oct Drake Nothing Was the Same 一部
19-Oct Justin Timberlake The 20/20 Experience – 2 of 2 一部
26-Oct Miley Cyrus Bangerz 一部
2-Nov Pearl Jam Lightning Bolt 一部
9-Nov Katy Perry Prism 一部
16-Nov Arcade Fire Reflektor 一部
23-Nov Eminem The Marshall Mathers LP 2 一部
30-Nov Lady Gaga Artpop 一部
14-Dec One Direction Midnight Memories 一部
21-Dec Garth Brooks Blame It All on My Roots: Five Decades of Influences  
28-Dec Beyoncé Beyoncé のちに全公開

全シングル公開率=6/39 15%

 

この年に入ると、全公開するアルバムが続々増えました。Justin Bieberが引き続き、またBruno MarsやSelena GomezなどのスターもYouTubeに全公開。この年はParamoreFall Out Boyも全公開していますが、ロックバンドは全公開するケースがやや多めです。YouTubeに上げても購買層がしっかりしている、ということでしょうか。

また気になったのはビヨンセJay-Z夫妻。ビヨンセがすべての曲にビデオを作ってそれをYouTubeにアップロードした一方、Jay-ZYouTubeに何もアップロードせず。ビデオのあるシングルもあるのですが、Facebookでの公開だったそうです。今思うとこの時から"Tidal Exclusive"の片鱗のようなものが伺えます。

ちなみに、Daft Punkのように時間をずらして公開範囲を変えることを「ウィンドウ戦略」というようです。*3

 

2014

18-Jan Soundtrack Frozen   
1-Feb Bruce Springsteen High Hopes 一部
22-Feb Various Artists Now 49  
1-Mar Eric Church The Outsiders 一部
15-Mar Schoolboy Q Oxymoron 一部
22-Mar Rick Ross Mastermind 一部
24-May Various Artists Now 50  
31-May The Black Keys Turn Blue 一部
7-Jun Coldplay Ghost Stories 全シングル
21-Jun Miranda Lambert Platinum 全シングル
28-Jun Jack White Lazaretto 一部
5-Jul Lana Del Rey Ultraviolence 一部
12-Jul Ed Sheeran x 一部
19-Jul Trey Songz Trigga 全シングル
26-Jul Sia 1000 Forms of Fear 一部
2-Aug "Weird Al" Yankovic Mandatory Fun 一部
9-Aug 5 Seconds of Summer 5 Seconds of Summer 一部
16-Aug Tom Petty and the Heartbreakers Hypnotic Eye ゼロ
23-Aug Soundtrack Guardians of the Galaxy:  
30-Aug   Awesome Mix Vol. 1  
6-Sep Wiz Khalifa Blacc Hollywood 全シングル
13-Sep Ariana Grande My Everything 一部
20-Sep Maroon 5 V 一部
27-Sep Lecrae Anomaly 全シングル
4-Oct Barbra Streisand Partners ゼロ
11-Oct Tony Bennett and Lady Gaga Cheek to Cheek 一部
18-Oct Blake Shelton Bringing Back the Sunshine 全シングル
25-Oct Jason Aldean Old Boots, New Dirt 一部
1-Nov Florida Georgia Line Anything Goes 一部
8-Nov Slipknot .5: The Gray Chapter 全シングル
15-Nov Taylor Swift 1989 一部
6-Dec One Direction Four 一部
27-Dec J. Cole 2014 Forest Hills Drive 一部

全シングル公開率=7/28 25%

 

全公開率15% → 25%と上昇。昨年まで無かったヒップホップ、カントリーのミュージシャンによる全公開もこの年は見られました。ちなみにこの年はFrozen Soundtrackが長くアルバムチャート1位を支配していて、1位アルバムの数が少なめです。

ちなみにこの年の12月からアルバム内シングルのセールス、ストリーミングがアルバムチャートに集計されることになりました。1500ストリーミング=10シングルセールス=1アルバムセールスの集計です。

 

2015

31-Jan Meghan Trainor Title 一部
7-Feb Fall Out Boy American Beauty/American Psycho 全シングル
28-Feb Drake If You're Reading This It's Too Late 一部
7-Mar Imagine Dragons Smoke + Mirrors 一部
14-Mar Big Sean Dark Sky Paradise 一部
21-Mar Kelly Clarkson Piece by Piece 一部
28-Mar Soundtrack Empire: Original Soundtrack from Season 1  
4-Apr Kendrick Lamar To Pimp a Butterfly 一部
18-Apr Wale The Album About Nothing 一部
25-Apr Soundtrack Furious 7 全シングル
2-May Shawn Mendes Handwritten 全シングル
9-May Alabama Shakes Sound & Color 一部
16-May Zac Brown Band Jekyll + Hyde 一部
23-May Mumford & Sons Wilder Mind 一部
30-May Soundtrack Pitch Perfect 2  
6-Jun Twenty One Pilots Blurryface 全シングル
13-Jun ASAP Rocky At. Long. Last. ASAP 一部
20-Jun Florence and the Machine How Big, How Blue, How Beautiful 一部
27-Jun Muse Drones 一部
4-Jul James Taylor Before This World 一部
11-Jul Breaking Benjamin Dark Before Dawn 全シングル
18-Jul Meek Mill Dreams Worth More Than Money 全シングル
1-Aug Tyrese Black Rose ゼロ
8-Aug Future DS2 一部
15-Aug Jill Scott Woman 全シングル
22-Aug Soundtrack Descendants 全シングル
29-Aug Luke Bryan Kill the Lights 一部
12-Sep Disturbed Immortalized 全シングル
19-Sep The Weeknd Beauty Behind the Madness 一部
10-Oct Drake and Future What a Time to Be Alive ゼロ
17-Oct Fetty Wap Fetty Wap 全シングル
24-Oct Janet Jackson Unbreakable 一部
31-Oct Selena Gomez Revival 一部
7-Nov Pentatonix Pentatonix 一部
14-Nov 5 Seconds of Summer Sounds Good Feels Good 一部
21-Nov Chris Stapleton Traveller 一部
5-Dec Justin Bieber Purpose 全シングル
12-Dec Adele 25 一部

全シングル公開率=10/34 29%

 

少し増えて29%。なかでもJustin BieberのPurposeは (PURPOSE : The Movement) と題してすべてのシングルにビデオがつくなど、YouTubeでのプロモーションが活発的でした。逆にDrake & Futureのミックステープからは一曲も公開されず。これ以降DrakeはHotline BlingのビデオしかYouTubeにあげていません。にも関わらずシングルヒットは連発なので、この時期あたりからYouTubeと音楽が密接なものになるのと同時に、YouTubeはプロモーション上必須でもないということも言えるのかもしれないです。

 

2016

30-Jan David Bowie Blackstar 全シングル
6-Feb Panic! at the Disco Death of a Bachelor 全シングル
20-Feb Rihanna Anti 一部
27-Feb Future Evol 一部
19-Mar The 1975 I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful yet So Unaware of It 一部
26-Mar Kendrick Lamar untitled unmastered. ゼロ
9-Apr Gwen Stefani This Is What the Truth Feels Like 一部
16-Apr Zayn Mind of Mine 一部
23-Apr Kanye West The Life of Pablo 一部
30-Apr The Lumineers Cleopatra 一部
7-May Prince The Very Best of Prince  
14-May Beyoncé Lemonade 一部
21-May Drake Views 一部
23-Jul Blink-182 California 全シングル
20-Aug DJ Khaled Major Key 一部
27-Aug Soundtrack Suicide Squad: The Album  
10-Sep Frank Ocean Blonde ゼロ
17-Sep Barbra Streisand Encore: Movie Partners Sing Broadway 一部
24-Sep Travis Scott Birds in the Trap Sing McKnight 一部
1-Oct Jason Aldean They Don't Know 全シングル
15-Oct Shawn Mendes Illuminate 一部
22-Oct Solange A Seat at the Table 一部
29-Oct Green Day Revolution Radio 一部
5-Nov Kings of Leon Walls 一部
12-Nov Lady Gaga Joanne 一部
19-Nov Jeezy Trap or Die 3 全シングル
26-Nov Bon Jovi This House Is Not for Sale 全シングル
3-Dec A Tribe Called Quest We Got It from Here... Thank You 4 Your Service 一部
10-Dec Metallica Hardwired... to Self-Destruct 一部
17-Dec The Weeknd Starboy 一部
24-Dec Various Artists The Hamilton Mixtape  
31-Dec J. Cole 4 Your Eyez Only 全シングル

全シングル公開率=7/29 24%

 

前年よりもやや減って24%。全公開のほうは変化が少ないものの、気になるのはゼロのほう。アルバムから漏れた曲を集めたuntitled unmasteredはミックステープ的性格が強いので、そこまでプロモーションは必要ではないのでYouTubeに曲が上がらないのも納得ですが、注目はBLONDE。このアルバムはApple Music限定(先行)配信、かつYouTubeに音源ゼロなので「音楽を聞く場の移ろい」のようなものを感じます。つまり、YouTubeは誰でも無料で「音楽と出会える一番敷居の低い場所」でしたが、このように限定公開が増えると、その敷居の低い場所がストリーミングサービスに移るのでは?という考えです。ストリーミングサービスは音楽の価格破壊をしていると槍玉に挙げることもありますが、YouTube → ストリーミングサービスと移行することを考えると、必ずしもそうではないのかもしれません。(1再生あたりのアーティストへの支払いが、YouTubeは圧倒的に低いとされる 参考

 

2017

7-Jan Pentatonix A Pentatonix Christmas 一部
18-Feb Migos Culture 全シングル
25-Feb Big Sean I Decided. 一部
4-Mar Soundtrack Fifty Shades Darker: Original Motion Picture Soundtrack  
11-Mar Future Future 一部
18-Mar Future Hndrxx ゼロ ※
25-Mar Ed Sheeran ÷ 全シングル
8-Apr Drake More Life ゼロ
29-Apr The Chainsmokers Memories… Do Not Open 全シングル
6-May Kendrick Lamar DAMN. 一部
27-May Logic Everybody 一部
3-Jun Harry Styles Harry Styles 全シングル
10-Jun Linkin Park One More Light 全シングル
17-Jun Bryson Tiller True to Self 一部
24-Jun Halsey Hapeless Fountain Kingdom 全シングル
1-Jul Katy Perry  Witness 全シングル
8-Jul Lorde Melodrama 一部

全シングル公開率=7/16 44%

※FutureのHNDRXXはボーナストラックのみ公開

 

ゼロも全公開も増えて、アーティストが繰り広げるYouTubeでのプロモーションはますます多様化しているといえます。これはストリーミングサービスに加入した音楽ファンが増えていることが関係しているのかもしれません。YouTubeに全曲あろうが、ゼロ曲だろうが、ストリーミングサービスで聞けるから関係ないという考えもできるからです。

 

 

YouTubeが現在ポピュラー音楽で大きな役割を果たしているのは間違いありませんが、その使われ方はアーティスト、年代によって多種多様ということが分かりました。

YouTubeのような場所での音楽開放は進んでいる」という印象を受けがちですが、YouTube公開0曲のアルバムもあり、一概にその一方向に進んでいるわけでもないということが分かりました。

今後「YouTubeでアルバムを聞く」ことが習慣化するほど全公開が増えることはありえるのか……!?その変化をこれからも追っていきたいです。

 

 

 

 

*1:1位Adeleの25、2位Taylor Swiftの1985、3位Taylor SwiftのRed

*2:リリース後から4週目まで

*3:ダフト・パンクは、新作『Random Access Memories』の全収録曲の音源をYouTubeで無料公開して、ウィンドウ戦略を開始した。ウィンドウ戦略とは、あるコンテンツに関して、その活用期間を複数期間ずらして設定することで収益を得る戦略のことだ。” 高野修平 (2014)『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティングリットーミュージック

6/30 リリースの新曲/新作 の初動を観察 【Calvin Harrisはどこまでヒット?】

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今週のリリースの目玉はCalvin Harris。実は今までアメリカでアルバム1位を獲得したことのないCalvin Harrisですが、今回はどこまでヒットとなるのでしょうか。

写真はYouTubeに公開された、アルバムトレイラーからのワンカット。アルバムリリース前はFeelsのビデオ以外は音源をアップロードされていませんでしたが、昨日になったら全曲音源がYouTubeに上がりました。「アルバム単位で聞いてください」という彼からのメッセージでしょうか?


アルバムで聞けるYouTubeのプレイリスト ↓

 

 

まずは現在のSpotify トップ10から。

1 Luis Fonsi & Daddy Yankee feat. Justin Bieber Despacito
2 Lil Uzi Vert XO TOUR Llif3
3 DJ Khaled feat. Justin Bieber, Quavo, Chance the Rapper & Lil Wayne I'm the One
4 DJ Khaled feat. Rihanna & Bryson Tiller Wild Thoughts
5 Kendrick Lamar HUMBLE.
6 French Montana feat. Swae Lee Unforgettable
7 Post Malone feat. Quavo Congratulations
8 Drake Signs
9 Calvin Harris feat. Frank Ocean & Migos Slide
10 Childish Gambino Redbone

アルバムリリースのタイミングでSlideが上昇。ピークタイの9位まで上昇しました。注目はXO TOUR Llif3。現在世界的に大ヒット中のWild Thoughtsを抜いて2位まで浮上。Hot 100では先週12位とトップ10から落ちてしまいましたが、まだ伸びしろはあるのでしょうか……!どの曲がDespacitoをいつ抜くのか、見ものだと思います。

ちなみにイギリスではWild ThoughtsがSpotifyで首位になっています。

 

※11 Calvin Harris feat. Pharrell Williams, Katy Perry & Big Sean  Feels
※16 Calvin Harris feat. Future, Khalid Rollin
38 Calvin Harris feat. Travis Scott & A-Track Prayers Up
50 Tyler, The Creator feat. Frank Ocean 911 / Mr. Lonely
51 Calvin Harris feat. Kehlani & Lil Yachty Faking It
55 Calvin Harris feat. ScHoolBoy Q, PartyNextDoor & DRAM Cash Out
※74 Calvin Harris feat. Young Thug, Pharrell Williams & Ariana Grand Heatstroke
75 J Balvin Mi Gente
76 Future feat. Chris Brown PIE
77 Tyler, The Creator feat. A$AP Rocky Who Dat Boy
80 Future feat. YG Extra Luv
90 Calvin Harris feat. Snoop Dogg, John Legend & Takeoff Holiday
101 Calvin Harris feat. Nicki Minaj Skrt On Me
141 Calvin Harris feat. Jessie Reyez Hard to Love
178 Desiigner Liife
190 LANY Super Far

※新リリースではないものの、新アルバムのシングル

 

Calvin Harrisのアルバム全曲が圏内に。アルバムラストのHard to Loveの141位が底。好調なのは既発曲が中心。現在Hot 100でチャートイン中のFeelsは上昇、Rollinは再登場の線が強いと思います。Prayers Upは現状当落線上ですかね。ただアルバム通しで37分と短めなので、リピート回数が増えて現状の再生回数を維持できればより多くの曲がHot 100に入るかもしれません!

 

Q.結局Calvin Harrisはアルバム1位を取れそう……?

おそらく。現状iTunesのアルバム1位で、かつストリーミングでの数字も上々。さらにライバルとなりそうな勢いのあるアクトがいないので、高確率でアルバム1位になると思います。同週にJay-Zもアルバムをリリースしましたが、ダウンロードすらまだ不能なTidal限定なのでさすがに1位にはならないでしょう。ただ、ストリーミングはTidalのみでリリースだった*1昨年のBeyoncéのLemonadeはリリース時の「ストリーミング総合チャート」でSorryが8位、Hold Upが11位、6 Inchが12位など全曲が50位圏内に入ったという事例もありました。つまりTidalのみでも十分なストリーミング成績を残すことは可能ということを意味します。Tidal限定でもストリーミングである程度の数字を記録し、そこそこの順位でアルバムチャートに登場する可能性もあります。

18 Monthではアルバム19位、Motionではアルバム5位と着実に地歩を固めてきたCalvin Harris。さらなる飛躍へ……!

 

その他の注目点はTyler, The Creatorの2曲。Frank Ocean、A$AP Rockyという影響力のある客演の効果もあって好調な滑り出し。客演以外で初のHot 100の可能性も。

Futureは今年リリースしたアルバムFuture、HNDRXXのボートラという形で新曲を追加。Chris Brown、YGを迎えた2曲ともそれなりに注目を集めているようです。

最後にJ Balvin。ラテン系スターとしては上々の滑り出しを記録。Despacitoに続くヒットが出るか出ないか、ラテン系スターのリリースにも注目が集まると思います。

 

そしてiTunes。表にはありませんが、Charlie PuthのAttentionが割引で2位になっています。CassieのMe & Uはドキュメンタリー番組の効果のようです。

28 Tyler, the Creator  Who Dat Boy
39 J Balvin Mi Gente
52 Future feat. YG Extra Luv
57 One Republic Truth To Power
59 Adam Lambert Two Fux
61 Future feat. Chris Brown PIE
65 Dirty Heads Vacation
77 Bruno Mars & David Guetta Versace On The Floor
79 Dylan Scott Hooked
※86 Cassie Me & U
 

*1:ダウンロードは可能

Billboard Hot 100 7/8 見どころ 【ネキネキ高順位デビューの理由は……?】

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ネキネキするRihanna。そのWild Thoughtsが高い順位で登場しています!

 

100 Plies feat. Kodak Black – Real Hitta (New)

10年前にトップ10を記録したこともあるベテランのPliesがKodak Blackを迎えたReal Hittaが100位で登場。

 

89 Portugal. The Man – Feel It Still (New)

今週アルバムが32位で新登場したPortugal.The Man。アルバムリリースのタイミングで初のHot 100入りを達成。Feel It Stillが89位で登場。ラジオが主要なポイント源で、ロック系ラジオの一種のAlternativeラジオチャートでは、今週1位に登りつめました。ちなみに彼らはポルトガルではなく、アメリカのバンド。

※国のポルトガルといえば、今年のユーロビジョンの優勝者はポルトガル人でした。ユーロビジョンとは主にEU圏で行われる音楽コンテストなのですが、このイベントはアメリカでは注目されていないようで、優勝者の楽曲がデイリーのiTunes100位圏内にも入ることはなかったようです。イギリスではシングル97位を記録しています。

 

83 Young Thug feat. Future – Relationship (New)

新作Beautiful Thugger Girlsがアルバムチャートで8位だったYoung Thug。シングルではFutureとのRelationshipが83位で登場。2016年3月のSlime Season 3、2016年8月のJefferyに続いての3作連続アルバムチャートでトップ10登場と、人気を確立しつつあるようです。

 

79 Fifth Harmony feat. Gucci Mane – Down (↓)

Fifth HarmonyのDownがタイトル通り今週もダウン。登場から42位→71位→79位。最初の週はダウンロードが集まり、新曲ということでストリーミングでも注目度が高いこともあって高い順位でデビュー。しかしその次はそのダウンロードが落ちることの反動(ダウンロードは普通2回しない)により、2週目は順位が落ちるのがチャートの定番です。ただ3週目以降は、ヒットとなるにはラジオが伸びてきて巻き返すことが必要なので、来週もDownしてしまうと少し雲行きが怪しくなりますね。ちなみに元Fifth HarmonyのCamilaのCrying in the Club2週連続で順位を+1して、現在54位です。この2曲のチャートバトルも見ものです。

 

61 Kodak Black – First Day Out (New)

Kodak Blackの出所祝いソング、First Day Outが61位で登場。前述のReal Hitta (100位)など彼の曲が4曲Hot 100に。彼の行動が制限されている間にアルバムがリリースされ、またTunnel Visionが一時期Hot 100で6位まで上昇しましたが、現在は44位まで落ちてしまいました。ちょっと浦島太郎状態?ですかね。

 

55 2 Chainz feat. Travis Scott - 4AM (↑)

アルバムリリースがチャートに反映され、その恩恵を受けた2 Chainz。新エントリーは無かったものの、先週からHot 100に入っていた3曲がすべて上昇。Good Drankは94位→70位、It’s A Vibeは95位→58位、そしてこの4AMは85位→54位。アルバムチャートでも2位を記録しています。ちなみに今週のアルバム1位のLordeは今週のHot 100に1曲もエントリーせず。

 

51 Calvin Harris feat. Pharrell Williams, Katy Perry & Big Sean – Feels (New)

ついに今週リリースされるCalvin Harrisのアルバム Funk Wav Bounces Vol. 1からの4曲目の先行シングルFeelsが51位で登場。先行シングル4曲ともすべてHot 100に入っていますが、今回のFeelsはSlideに次いで2番目に登場時の順位が高いです。ほかの先行シングルはビデオがありませんが、この曲はビデオがリリースされました。

 

45 Alessia Cara – Scars To Your Beautiful (↑)

Alessia CaraのScars To Your Beautifulが落ちそうで落ちないです。43週目で45位と粘りを見せています。チャート入り初期はダウンロードやストリーミングが主要ポイント源ですが、いかにロングヒットになるかはラジオにかかっています。複数ジャンルのラジオでかかると尚良しです。Hot 100では45位のScars To Your Beautifulですが、ラジオチャートでは今週18位と高めの順位を保っています。

 

34 Liam Payne feat. Quavo – Strip That Down (↑)

Liam PayneのStrip That Downが34位に上昇でソロでは初のトップ40入りを記録。One Directionメンバーのソロデビューのうち、Zayn、Harry、Louisはデビュー週が最高位でしたが、それに対してLiamは今週デビュー時の順位(42位)を上回るなど、じわじわ上昇していますね。ここからどこまで順位を上げられるでしょうか。

 

17 James Arthur – Say You Won’t Let Go (↓)

最も遅いトップ10入り(38週目)も更新できるのでは?というぐらいに遅咲きヒットとなっているJames ArthurのSay You Won’t Let Goですが、今週12位 → 17位とトップ10が遠ざかりました。トップ10入りはやや厳しいか。アメリカで初のヒットとなったこの曲、ピーク11位でかつロングヒットなので、年間チャートでは高めな順位を期待できると思います。年間25-20位くらいですかね。ちなみにピーク11位は、彼がXファクターで優勝した時にカバーしたShontelleの原曲のImpossibleのピーク13位を上回っています。

 

4 DJ Khaled feat. Rihanna & Bryson Tiller – Wild Thoughts (New)

DJ KhaledとRihanna、Bryson TillerのSantanaのMaria MariaをサンプリングしたWild Thoughtsが4位で登場。Bryosn Tillerにとっては初のトップ10。Rihannaがトップ5に入ったことにより、先週まで12週続いたトップ5の女性不在をストップしました。この曲、ダウンロードとストリーミングが2位というのも目を引きますが、それ以上に注目したいのはラジオで今週23位ということ。この数字はラジオチャートでの登場順位としてはここ1年で最も高い数字です。ダウンロード、ストリーミングの熱が冷めないうちにラジオがさらに上がってくれば、Hot 100で1位も取れると思います。Despacitoの次の1位の最有力候補だと思います。

 

× Katy Perry feat. Migos – Bon Appétit (↓)

シングルではなくなった=ラジオではかからなくなった、こともありアルバムリリースで順位を上げた先週から一転、チャート圏外へ落っこちたBon Appétit。中毒性があって個人的には好きなのですが、チャートでは完全に奮わなかったですね……後続のSwish Swishも84位と少しピンチです。

 

× Rae Sremmurd – Swang (↓)

Black Beatles後のシングル、Swangがピーク26位 / 26週滞在という悪くない成績を残してチャートから外れました。この曲のTravis Scott Remix好きです。

ちなみにこの曲の代わりにRae Sremmurdの片割れ、Swae Leeが客演を務めるFrench MontanaとのUnforgettableが現在16位と躍進中です。

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Imagine Dragons - Believer

今週最もダウンロードが上昇した曲 Miley Cyrus - Malibu

今週最もストリーミングが伸びた曲 2 Chainz feat. Travis Scott – 4AM

最も高い順位で新登場した曲          DJ Khaled feat. Rihanna & Bryson Tiller – Wlid Thoughts

 

 

上記以外でチャートに登場/再登場した曲

88 Zac Brown Band – My Old Man

 

今週チャートから外れた曲

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位/チャート滞在週数)】

99 Major Lazer feat. Travis Scott, Camila Cabello & Quavo – Know No Better (87位/2週)

98 Drake – Gyalchester (29位/11週)

96 Josh Turner – Hometown Girl (56位/16週)

86 Dierks Bentley – Black (56位/19週)

85 Katy Perry feat. Migos – Bon Appétit (59位/6週)

83 Linkin Park feat. Kiiara – Heavy (50位/17週)

50 Rae Sremmurd – Swang (26位/26週)

 

 

近いうちのヒットが期待されるシングルたち

Hot 100以外の場所で好調なものの、Hot 100にエントリーしていない曲を集めました。

(調査対象:Spotifyデイリー、Shazam、Pandora)

Drake – Signs (Spotify 8位)

Metro Boomin feat. Offset & Drake – No Complaints (Spotify 26位)

The Revivalists – Wish I Knew You (Shazam 37位)

Yo Gotti & Mike Will Made-It feat. Nicki Minaj – Rake It Up (Shazam 36位)

DJ Khaled & Calvin Harris feat. Travis Scott & Jeremih – Don’t Quit (Spotify 42位)

Goldlink – Crew (Shazam 48位)

Sia feat. Labrinth – To Be Human (Shazam 55位)

Lauv – I Like Me Better (Spotify 56位)

Chris Lane – For Her (Pandora 57位)

 

来週高い順位で登場しそうなのは2つのDrakeの曲。Signsはストリーミングで高い支持を得ていて、ダウンロードもそれなりにあります。

そして大型アルバムをリリースするDJ Khaled。大量にHot 100エントリーすると私は考えていましたが、実際は入ったとしてもCalvin HarrisとのDon’t Quit程度かも。Imagine Dragonsとのアルバムチャート争いも注目です。ちなみにImagine DragonsのBelieverは来週トップ10入りすると思います。もしかしたら5位くらいまで行くかも……?