チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

10/20 リリース新曲/新作の初動を観察 【今年3枚目のアルバム1位なるか??? 】

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今週のトピックはFutureとYoung Thugが緊急リリースしたミックステープ!ここでかかる期待は今年3回目のアルバム1位!?仮に達成すればThe Monkees(1年に4枚)、Elvis Presley、The Kingston Trio、The BeatlesGlee Castに次ぐ6人(組)めの偉業です!ラッパーとしては初。果たして…………

ほかAndrew Watt と Andrew Wyatt について

 

Spotify デイリーのトップ10 (金曜日=10/20)

1 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
2 Taylor Swift Gorgeous
3 Post Malone I Fall Apart
4 21 Savage  Bank Account
5 Logic feat. Alessia Cara & Khalid 1-800-273-8255
6 Lil Pump Gucci Gang
7 Cardi B Bodak Yellow
8 Gucci Mane feat. Migos I Get The Bag
9 Camila Cabello feat. Young Thug Havana
10 Khalid Young Dumb & Broke

 

Post Maloneのrockstarが変わらず1位。Camila CabelloのHavanaが9位まで浮上!ラジオ・ダウンロードともに好調で、ビデオなどの「もうひと押し」があればトップ10に手が届きそう。アルバムの制作陣はかなり気合の入った豪華な面子が揃いそうで、個人的に期待しています。ディーバ界の救世主にもなり得るか????

 

そしてTaylor Swiftの新曲Gorgeousが2位で登場!前シングル”Look"がダウンロード・ストリーミングだけでなく最近ラジオでも落ちはじめ、ピークが終わりつつあるので、その次シングルとして役割を果たせるでしょうか。

前の”Look"は初日のストリーミング回数がUSでSpotify史上2位など、スタートは凄まじかったですが、尻すぼみ気味なので重要なのはこの調子をどこまでキープできるかですかね……

 

② 新曲/新アルバムからのシングル Spotifyデイリー順位 (金曜日)

16 Future & Young Thug feat. Offset Patek Water
34 Kygo feat. The Night Game Kids in Love
42 Future & Young Thug No Cap
46 Liam Payne Bedroom Floor
48 Future Feed Me Dope
✫50 Niall Horan Slow Hands
58 Future & Young Thug All da Smoke
59 Future & Young Thug Three
66 Niall Horan & Maren Morris Seeing Blind
✫68 Niall Horan Too Much To Ask
75 Young Thug Cruise Ship
76 Future & Young Thug 200
84 Maroon 5 feat. A$AP Rocky Whiskey
88 Future & Young Thug Drip on Me
92 Future 4 da Gang
96 Future & Young Thug Real Love
104 Young Thug Killed Before
111 Marshmello  You & Me
✫114 Niall Horan This Town
119 Rita Ora Anywhere
122 Future & Young Thug Mink Flow
123 blackbear feat. Cam'ron bright pink tims
145 Niall Horan On The Loose
158 Future Group Home
177 Chris Brown feat. Ty Dolla $ign & Verse Simmonds Only 4 Me
182 Young Dolph Drippy
187 Niall Horan Flicker

✫=新曲ではないが、新アルバムに入った曲

 

タイトルでも言ったように、FutureとYoung Thugのミックステープが最注目。Offsetが客演のPatek Waterの16位を筆頭に収録曲の全部がSpotify200位圏内に。事前にアルバム情報が無く、緊急リリースだったのですがそれでも全収録曲が入るあたり、Futureがいかに人気か(特にストリーミングで)が分かります。

FutureがDrakeとのWhat a Time To Be Aliveの時でアルバム1位になったように今回もアルバム1位を取ることができるでしょうか??仮に取れればYoung Thugにとっては初のアルバム1位に。

一方、アルバム1位争いにおけるライバルのNiall HoranもSpotify 200位圏内にそれなりの曲数が登場。6/10曲が圏内に。ソロデビューアルバムが全曲が200位圏内だったZayn・Harry Stylesと比べるとやや見劣りしますが、ポップアルバムがそこまでストリーミングで人気ではないことを考慮すると十分な成績だといえると思います。1番人気は現在シングルとして多くラジオでかかっているSlow Hands、2番人気は昨年グラミーの新人賞候補に上がったカントリーシンガーのMaren MorrisとのSeeing Blind。

Zayn、Harry Stylesに続いてアルバム1位のバトンをつなぐことができるか……?

 

その元同僚、Liam Payneも今週新曲をリリース。この曲のソングライトにはChalie Puthなどが参加、そして前シングルStrip That Downに引き続きSteve Macがプロデュース。今年引っ張りだこのプロデューサーです。

 

また今週はDJ/プロデューサーが多くの曲をリリース。KygoのKids in Loveは34位と順調なスタート。Silenceで勢いに乗るMarshmelloのYou & Meは111位スタート。今週半ばにリリースされるSelena GomezとのWolvesにも期待がかかります。それと、Rita OraのAnywhereもAlessoプロデュースとの情報が。真偽は微妙*1

 

ほか、今年は幅広く客演活動をしているA$AP RockyMaroon 5の新曲Whiskyなどが登場。

 

iTunesップ10+新曲の順位 (金曜日)

1 Taylor Swift Gorgeous
2 Imagine Dragons Thunder
3 Ed Sheeran Perfect
4 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
5 Portugal. The Man Feel It Still
6 Camila Cabello feat. Young Thug Havana
7 Liam Payne Bedroom Floor
8$ Demi Lovato  Sorry Not Sorry
9$ Maroon 5 feat. SZA What Lovers Do
10 Halsey Bad at Love

 

12 Kelsea Ballerini Miss Me More
20 Chris Stapleton Millionaire
✫29 Niall Horan Slow Hands
30 The Super Mario Players feat. Kate Davis Jump Up, Super Star
✫35 Chris Young Loosing Sleep
43 Kygo feat. The Night Game Kids in Love
45 Future & Young Thug feat. Offset Patek Water
47 Niall Horan On the Loose
51 Maroon 5 feat. A$AP Rocky Whiskey
✫60 Niall Horan Too Much To Ask
62 Niall Horan & Maren Morris Seeing Blind
63 Marshmello feat. Khalid / Illenium Silence (Illenium Remix)
68 Jason Aldean  I Won't Back Down
77 Rita Ora Anywhere
80 Chris Brown feat. Ty Dolla $ign & Verse Simmonds Only 4 Me
84 Niall Horan Flicker
86 Pentatonix feat. Jennifer Hudson How Great Thou Art
✫90 Chirs Young Where I Go When I Drink
91 Chris Young She's Got a Way
94 Pentatonix Away In a Manger
100 Nick Jonas Home

 

テイラーの新曲が1位に。2位Thunderとの差もあり、またストリーミングも前述のように順調な滑り出しだったので、Hot 100でトップ10スタートしそうな気がします。

他で好調だったのはLiam PayneのBedroom Floor、そしてグラミー新人賞候補だったKelsea Balleriniの新曲あたり。

個人的に注目しているのはMarshmelloのSilenceのIlleniumリミックス。先週半ばあたりからiTunesで浮上。この曲は最近ラジオでもかかり始めていて、次の週あたりからHot 100でも順位を上げるかもしれませn。

ほか、マリオについてオシャレに歌い上げるJump Up, Super StarがiTunesの30位に登場。Hot 100には登場しなさそうな規模ですが、珍しいです。ゲームといえば昨年、ビルボードのアルバムチャートに登場しないくらいの規模でポケモンサンムーンのサウンドトラックがiTunesアルバムにランクインしていました。

アルバム1位争いの観点からみると、Niall Horanが一番ポイントを稼いでいますね。(アルバムチャートにはシングルのセールスが加算)

 

iTunes アルバム順位

1 Niall Horan Flicker
2 Chris Young  Loosing Sleep
3 Future & Young Thug Super Slimey
4 Turnpike Troubadours A Long Way from Your Heart
5 Darius Rucker When Was the Last Time
6 P!nk Beautifurl Trauma
7 Trivium The Sin and the Sentence
8 Young Dolph Thinking Out Loud
9 Demi Lovato Tell Me You Love Me
10 Lindsey Stirling  Warmer in the Winter

 

Niall Horanが首位。ストリーミングも悪くなく、シングルセールスも稼いだのでそのまま彼がアルバム1位でしょうか。アルバムセールスが安定しているカントリーの、Chris Young・ストリーミングで大きく稼ぎそうなFuture & Young Thugも侮れません。

 

⑤ 各ラジオ局で今週かかりはじめた曲

✫ポップ系

46 Calvin Harris feat. Kehlani & Lil Yachty Faking It
48 Linkin Park One More Light
49 NF Let You Down

Calvin Harrisの新シングル、そして先週Hot 100に登場したことないながらもアルバム1位を獲得したNFのLet You Downが登場。このLet You Downは現在ストリーミングで絶好調でHot 100にも近く登場しそう。Linkin ParkのOne More Lightはロック系ラジオよりも先にポップ系で登場。

 

✫アダルトポップ系

47 Nick Jonas Find You
48 Andreas Moss Stuck In My Feelings
49 Niall Horan Too Much To Ask
50 Alice Merton No Roots

ポップ系の後を追う形でNick Jonas、Niall Horanが登場。

 

✫リズミック系

36 Macklemore feat. Kesha Good Old Days
41 NF Let You Down
48 Marshmello feat. Khalid Silence

同じくNFが登場。

 

✫アーバン系

今週は新エントリーなし。

 

✫カントリー系

49 Lady Antebellum Heart Break

アルバム表題曲。

 

 

今週からイギリス・日本のSpotifyトップ10も載せてみます。参考情報としてご活用ください。

イギリスSpotify トップ10

1 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
2 Camila Cabello feat. Young Thug Havana
3 Dua Lipa New Rules
4 ZAYN feat. Sia Dusk Till Dawn
5 Sam Smith Too Good At Goodbyes
6 Logic feat. Alessia Cara & Khalid 1-800-273-8255
7 Avicii feat. Rita Ora Lonely Together
8 Post Malone I Fall Apart
9 Yungen feat. Yxng Bane Bestie
10 Marshmello feat. Khalid Silence

 

ダウンロードでは優勢のHavanaが次週のシングルチャート1位を狙います。

 

日本 Spotify トップ10

1 Ed Sheeran Shape of You
2 DAOKO & 米津玄師 打上花火
3 Taylor Swift  Look What You Mede Me Do
4 Dua Lipa New Rules
5 TWICE One More Time
6 Maroon 5 feat. SZA What Lovers Do
7 Justin Bieber & BloodPop Friends
8 清水翔太 My Boo
9 Luis Fonsi & Daddy Yankee feat. Justin Bieber Despacito (Remix)
10 Demi Lovato Sorry Not Sorry

 

日本Spotifyでは、一回上位に入ると長いことトップ10をキープするようです。Shape of Youはリリースから286日中、260位も1位をキープしているようです。またMy Booはストリーミングで長く愛されているうちに少しずつ上昇。リリースから約1年経った今になってSpotifyでピーク順位を更新したようです。日本では初のストリーミング発ヒットといえそうです。

 

*1:歌詞分析サイトGeniusではAlessoの名前がクレジット。ただしソングライターが表記してあるApple MusicにはAlessoの名前なし

Hot 100 (2017) 10/28 見どころ 【Feel It Still、ロック曲としては4年ぶりのラジオ1位!かかる期待は?】

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今週Portugal, The manのFeel It Stillがラジオ1位に。ロック曲としては珍しい躍進で、とある期待がかかっています。写真はCharli XCXのBoysのビデオに出演した時のPortugal, The ManのボーカルJohn Gourley。

※この週の1位~100位までの順位表↓

  

 

97 Quality Control feat. Quavo, Takeoff & Offset – Too Hotty (New)

レコードレーベルのQuality ControlとMigos3名によるシングルToo Hottyが97位で登場。なぜMigosの3名が分けて表記されているのか明らかにはされていませんが、おそらく全員のパートがあるということを強調したかったのでしょうか。Calvin HarrisとのSlide、またBig SeanとのSacrificesなど、feat. Migos表記ながらもTakeoffのパートが無い曲もあるのでこの表記だと全員が登場することが分かりやすいです。自身のBad and Boujeeでも実はTakeoffのパートが無かったです。

※Quality Controlが新たにリリースしたLil Yachty, Young ThugとのOn MeはYachtyの昨年のミックステープLil Boat時代のスタイルの1曲。

 

95 MAX feat. gnash – Lights Down Low (New)

優上がりの歌手MaxのLights Down LowがHot 100に登場。95位。ポップ系ラジオでゆっくりと数字を伸ばしています。客演は昨年i hate u, i love uでブレイクしたgnash。Maxは過去にLil Uzi Vertと共演したことも。別名Max Schneider。

Spotifyでのピークは約半年前で、さらにポップ系ラジオで40位圏内に入ってからも12週がすでに経過していて、「Hot 100入れそうで入れない」時期が長かった苦労人的な1曲です。

※2018年、ブレイク後客演で見かける機会が増えました。

 

91 Maren Morris feat. Vince Gill – Dear Hate (New)

ラスベガスのカントリー系フェスで発生した銃撃事件を受けて2週前の火曜日に緊急リリースされたMaren MorrisのDear Hateが91位で登場。客演は大ベテランカントリー歌手のVince Gill。火曜日リリースなので、集計システムの都合上チャートではやや不利です。(一番ポイントの入る期間はリリース直後ですが、その該当週ではチャートの集計が3日間のみだったため。※集計は金曜日~木曜日)

 

72 Kane Brown – Heaven (New)

Kane Brownがデビューアルバムをデラックス新装版としてリニューアルしてリリース。その新装版で追加されたHeavenが72位で登場。この曲は今週ダウンロード8位を記録しています。新装版リリースでセールスが伸びたこともあって、アルバムチャートでも56位 → 5位と急浮上しました。彼のブレイクのきっかけとなったシングル、What Ifsも今週カントリー系ラジオ1位、Hot 100でも27位と好調です。

 

60 Charlie Puth – How Long (New)

Charlie Puthの新曲How Longが60位で登場。来年リリース予定のアルバム、Voicenotesに前シングルのAttentionとともに収録予定です。

そのAttentionが先週までラジオ総合で1位だったなど、ラジオを得意とするCharlie Puth。早速ポップ系ラジオでは34位にランクインしていて、2曲連続のHot 100でのトップ10に向けて順調なスタートを切っています。

 

55 Sam Smith – Pray (New)

Sam SmithのTimbalandプロデュースの新シングル、Prayが55位で登場。Timbaland関連のバラードといえば、One RepublicとのApologizeですが、それを多少は意識しているのでしょうか。この曲とともにアルバム情報をリリース。タイトルはThe Thrill of It All、リリース日は11/3。リリース日がMaroon 5の新アルバムと重なっていて熾烈でハイレベルなアルバム1位争いが繰り広げられる予感がします。果たして……

※個人的にはアメリカ出身の地の利が生きてMaroon 5が勝つと予想しているのですがどうなるでしょうか……逆にイギリスではSam Smithが勝つでしょうね。

 

40 Halsey – Bad At Love (↑)

HalseyのBad At Loveがポップ系ラジオでの上昇などによりトップ40に到達。今週40位。これで4曲目のトップ40に。現在ツアーで同行しているCharli XCX(3曲)より多くのトップ40を記録したことに。ただ、Charliは3曲ともトップ10に行っているので、トップ10の数ならCharliのほうが多いです……

彼女の初のシングルヒット、New Americanaではオルタナティブ系ラジオから人気になったように、元はロックにも近いアーティストでしたが、Justin Bieber、The Chainsmokersとポップ系アクトの客演として活躍したことから、ここセカンドアルバムからのシングルはオルタナティブ系ラジオではかからず、ポップ系ラジオでの人気が際立つように。このラジオの系統変化によってHot 100での順位がファーストアルバムの頃と比べて上がっています。(オルタナティブ系ラジオよりもポップ系ラジオのほうの規模が大きいため)

 

32 Lil Pump – Gucci Gang (↑)

今週アルバムチャートで台風の目となった2000年生まれのラッパーLil Pump。純セールスは24位ながらもストリーミングで数字を稼いでアルバムチャート3位で登場。そのアルバムからの代表シングルGucci Gangも32位に順位を上げ自身初のトップ40を記録しています。2番人気のBossは今週101位相当で惜しくもHot 100入りならず。

今週のアルバムチャートの1位は白人ラッパーのNFが獲得。Hot 100へのエントリーが今まで無くシングルヒットには恵まれないものの、目立ったライバルのいない週のアルバムリリースだったため、アルバム1位を獲得。

Hot 100へのエントリー歴が無いにも関わらずアルバム1位を獲得するケースは、LCD Soundsystem、Brand Newに次いで今年3例目。2015,2016年はそのようなケースは無し。2014年はLecraeがこれに該当。彼は現在Tori KellyとのI’ll Find YouでHot 100に接近中です。

 

20 Lin-Manuel Miranda feat. Artists For Puerto Rico – Almost Like Praying (New)

プエルトリコでのハリケーン災害へのチャリティソング、Almost Like Prayingが今週1番のダウンロードを記録して20位で登場。指揮者Lin-Manuel MirandaのもとLuis Fonsi、Camila Cabello、Jennifer Lopez、Marc Anthonyなど総勢20名のラテン系スターが歌っています。

 

7 Sam Smith – Too Good At Goodbyes (↑)

Sam SmithのToo Good At Goodbyesが7位に浮上でトップ10に復帰。もともとラジオの順調な上昇によって追い風が吹いていたこの曲でしたが、Saturday Night Live(SNL)でのパフォーマンスによってダウンロードが上向いたことがトップ10復帰につながりました。

2014年末以降、アルバムチャートにはシングルのダウンロードも集計されるようになったので、代表シングルがアルバムリリース時にどこまでダウンロードを稼げるかもアルバムチャート1位争いの密かな焦点だったりもします。

 

5 Portugal. The Man – Feel It Still (↑)

今週5位まで浮上したPortugal. The ManのFeel It Still。特にラジオでの好調が際立ち、今週ラジオで1番聞かれた曲となっています!ビルボードが「ロック」と分類した曲としては4年ぶりのラジオ1位に!ラジオではまだまだ伸びているので、Hot 100でもさらなる上昇が見込めそうです。

※「ロック」と分類された曲*1で、2010年代でラジオ1位を獲得しているのはGotyeのSomebody That I Used to KnowとFunのWe Are YoungとLordeのRoylas。この2曲はいずれもHot 100でも1位を獲得しているので、このFeel It Stillもそれに続けるか?という期待がかかりますね!ストリーミングの拡大で相対的にラジオの比率が落ちているので、以前のようにどこまでうまくいくかは分かりませんがロック曲がどこまでHot 100で躍進するのか、同じく好調*2Imagine DragonsのThunderと合わせて注目です。

 

※※ちなみに、2014年にラジオ1位に到達したTove LoのHabitsも途中までは「ロック」扱いでした。ただ主流のラジオ局がポップ系へ移行したため途中でHot Rock Songsから外れ「ロック」曲ではなくなりました。(ラジオ1位を取ったタイミングではロック曲ではない) このHabitsのHot 100でのピークは3位でした。

※※LordeもMelodrama期のシングルからは「ロック」扱いではなくなりました。主流の局はロック系なので、なぜ「ロック」から外したかはよく分かりませんが……というよりもそもそもLordeやTove Loが「ロック」なのかは疑問…………

Lorde のHomemade DynamiteにはLorde当人とTove Lo、そして上記のFunのメンバーJack Antonoffという3人の「ロック王」がソングライターとして集合していています。リミックス版では今週”rockstar”でHot 100の1位になったPost Maloneが加わります。

 

1 Post Malone feat. 21 Savage – rockstar (↑)

3週の2位を経て、ついにHot 100の頂に登りつめたPost Maloneと21 Savageのrockstar。両者にとって初の1位。ストリーミングとダウンロードは元から好調ですが、ラジオ*3の数字が増えてきた(今週はじめてラジオ50位圏内に登場)ことが1位奪取の要因だと思います。UKやカナダでも現在1位を記録しています。

現在Spotifyではアメリカ・グローバルともに2位に大差をつけて1位についているrockstar。アメリカや他国でどこまで大規模のヒットになるか?今後も注目です。

これで今年ラップがHot 100で1位になるのは5曲めで、これは史上最多タイの多さ(2006年と並ぶ)。今年のチャートはあと4回ですが、それまでに1-800-273-8255またはその他のラップが1位を取れば記録を更新できますが、rockstarが強すぎるのでそれは難しいか……?今年はラップが躍進を遂げた1年というのは確かです。

またこのrockstarのヒットを受けてストリーミングやセールスが上昇していた彼のアルバムStoneyがついに今週ピークを更新!今週アルバムチャート4位に。ストリーミング主体による44週目でのピーク更新は「ストリーミングと音楽のセールス」というテーマの話題を語る上で記念碑的な重要な出来事ではないでしょうか!一部では、来週アルバムチャート3位とまたピークを更新するのでは?との予想も。

 

ここでPost Malone関連の小ネタを二つ。

 

✫その1 穴?を埋める?1995年生まれ初の1位!

ここまでで1990年~1994年生まれ、その下の1996年と1997年生まれのミュージシャンがHot 100で1位を獲得していましたが、今回は1995年生まれのPost Maloneが1位を獲得しその穴?を埋めています。1998年はまだですが、Shawn Mendesというエースがいるので将来有望です。彼はStitchesで記録した4位が最高位ですが、同じ1998年生まれのSilento(Watch Me)、Daya(Don’t Let Me Down)はそれを上回る3位を記録しています。

ちなみに…… 1990年生まれ=The Weekndなど 1991年生まれ=Ed Sheeranなど 1992年生まれ=Miley Cyrusなど 1993年生まれ=Zaynなど 1994年生まれ=Justin Bieberなど 1996年生まれ=Lorde 1997年生まれ=Desiigner です。

 

その2 100本のギターを壊したいPost Malone

Post Maloneは先日、宅配サービスPostmatesにTwitterでこのようなリプを送りました。

 

 

https://twitter.com/PostMalone/status/920102183000883202

「Postmateさん、ツアーで破壊するために100本のギターを注文したんだけど、上限が10本でできなかった。注文できる?」

真のrockstarを目指すべく?大量のギターをツアーで破壊する予定があるらしいPost Malone。先日NirvanaをカバーするPost Maloneの動画が話題となりましたが、今後はギター破壊も導入するようで、彼のライブにはギターが欠かせませんね。

 

× Childish Gambino – Redbone (↓)

44週という非常に長い期間のチャート滞在を記録したChildish GambinoのRedbone。今週チャートを後に。見事なロングヒットでした。ピークは12位。このロングヒットの理由はストリーミング → アーバン系ラジオ → ポップ系ラジオ と少しずつ規模を拡げていったことにあると思います。また、規模が拡大していく間もストリーミングでのポイント減少がゆるやかだったことも大きいです。

ビデオが無く大きなプロモーションも行われていなかったながらも、ストリーミングをじわじわ稼いでラジオで次第に拡大しロングヒット、というこの曲のプロセスはストリーミング時代の理想的な形の一つだと思います。

知名度の高いアーティストならリリース時からダウンロード・ストリーミング両方を抜群に稼ぎラジオでもロングヒットという形がチャート上では最強(CloserやShape of Youなど)。知名度がそこまで高くなくても、上記のような形を取れば優秀なロングヒットになります。

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Imagine Dragons – Thunder

今週最もダウンロードが上昇した曲 Sam Smith – Too Good At Goodbyes

今週最もストリーミングが伸びた曲 Lil Pump – Gucci Gang

最も高い順位で新登場した曲          Lin-Manuel Miranda feat. Artists For Puerto Rico – Almost Like Praying

 

 

今週チャートから外れた曲 (7曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Meek Mill feat. Chris Brown & Ty Dolla $ign – Whatever You Need (🗻51位 /⏰13週)

92 Old Dominion – No Such Thing As A Broken Heart (🗻46位 /⏰19週)

88 Brothers Osbore – It Ain’t My Fault (🗻79位 /⏰16週)

86 A Boogie Wit da Hoodie feat. PnB Rock & YoungBoy Never Broke Again – Beast Mode (🗻86位 /⏰1週)

84 A Boogie Wit da Hoodie feat. 21 Savage – Undefeated (🗻84位 /⏰1週)

68 Bhad Bhabie – Hi Bich (🗻68位 /⏰1週)

50 Childish Gambino – Redbone (🗻12位 /44週)

 

 

 

Hot 100以外の場所で好調なものの、Hot 100にエントリーしていない曲をピックアップしました。

(調査対象:Spotifyデイリー、Shazam、Pandora、Apple Music、各種ラジオなど)

Gucci Mane feat. Migos – I Get the Bag (Apple2位)

Gucci Mane feat. The Weeknd – The Curve (Apple 7位)

Gucci Mane feat. Slim Jxmmi & Young Dolph – Stunting Ain’t Nuthin (Apple 9位)

 

個人的な感覚で、火曜日あたりにApple Musicでトップ10に入るくらいのストリーミングを稼いでいると、Spotifyでのポイントが低めでもHot 100に入る印象があります。

なので、今週のストリーミング王Gucci Maneのアルバムからは上記3曲が来週のHot 100に入るのでは?と予想

 

P!nk feat. Eminem – Revenge (iTunes など)

P!nkのアルバムの中で、Hot 100に登場しそうな有力候補です。ストリーミングはほぼ無いですがダウンロードをそれなりに記録しています。来週のチャートでは今年屈指の数字でP!nkがアルバム1位の見込み。

 

Kris Wu feat. Travis Scott – Deserve (iTunes など)

登場するなら来週ですが、少し数値が足りない気もします……果たして……

 

 

 


 

 

*1:ビルボードMaroon 5やOne Republicをロックとしていない。ロック系のラジオよりもポップ系のラジオでかかることが理由として考えられる

*2:ラジオの上昇幅が最大。自身はポイントが上昇したものの、他の曲の一時的な急上昇があったのでHot 100では順位を落としています

*3:どんな曲でもラジオは一気には上がらず、弧を描くような軌道のチャートアクションをとる

10/13 リリース新曲/新作の初動を観察 【アルバム首位争いで有利なのは + 元EXOのKris Wu】

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前アルバムでは1位を獲得したP!nk、ストリーミングで波に乗るGucci Mane、そして前作ではグラミーのAlbum of the Yearを獲得したBeckと、大物がアルバムをリリース。アルバム1位は誰が獲得しそう……?

また、その他韓国のグループEXOに以前所属していたKris WuがTravis Scottと組んだ新曲も!では今週もよろしくおねがいします

 

Spotify デイリーのトップ10 (金曜日=10/13)

1 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
2 Logic feat. Alessia Cara & Khalid 1-800-273-8255
3 Post Malone I Fall Apart
4 21 Savage  Bank Account
5 Cardi B Bodak Yellow
6 Lil Pump Gucci Gang
7 Lil Uzi Vert XO TOUR Llif3
8 Gucci Mane feat. Migos I Get The Bag
9 Khalid Young Dumb & Broke
10 Post Malone feat. Quavo Congratulations

 

Lil PumpのGucci Gangが先週のアルバムリリースで上昇し、そのまま上位をキープしています。そしてアルバムをリリースしたGucci ManeのI Get The Bagが8位まで浮上!ストリーミングでの強さを見せています。

 

② 新曲/新アルバムからのシングル Spotifyデイリー順位 (金曜日)

✫50 P!nk What About Us
✫54 Gucci Mane feat. The Weeknd Curve
72 Gucci Mane feat. Ty Dolla $ign Enormous
78 Cheat Codes feat. Fetty Wap & CVBZ Feels Great
86 blackbear feat. Lil Aaron  playboi shit
88 Kris Wu feat. Travis Scott Deserve
92 Gucci Mane feat. Slim Jxmmi & Young Dolph Stunting Ain't Nuthin
101 P!nk For Now
117 Tory Lanez feat. Future Real Thing
124 Chris Borwn feat. Future & Young Thug High End
132 Morgan Wallen feat. Florida Georgia Line Up Down
135 Gucci Mane feat. Chris Brown Tone it Down
142 Gucci Mane Work In Progress
147 Gucci Mane Back On
152 Lost Kings First Love
158 Daya New
185 Gucci Mane Money Make Ya Handsome
193 Kiiara Wishlist
196 Alesso & Anitta In That For Me
197 P!nk Beautiful Trauma

✫=新曲ではないが、新アルバムに入った曲

 

上位に入ったI Get The Bagに続き、目立つのはGucci Mane。しかし自分の予想ほどはSpotify 200位圏内にエントリーしておらず、アルバム全体の半分より少ない計8曲が200位圏内に。さらにI Get The Bag以外は順位がそこまで高くないです。

今週のアルバム争いにおいて、Gucci Maneはストリーミングでの強さが持ち味と思われますが、Spotifyではそこまで多くのポイントを稼げず。もう一つの大手ストリーミング・Apple MusicではSpotifyよりも多くのポイントを稼ぐと思われますが(I Get The Bagがリリース前から2位!)、セールスの不利を大きくひっくり返すほどの規模にはならなさそうです。

一方ライバルのP!nkはWhat About Usなど3曲が圏内に登場。アルバム唯一の客演あり曲、EminemとのRevengeは200位圏内に入らず。

 

シングル個人的に注目したいのは二つのグローバルなコラボ。

ひとつは元EXOのKris WuがTravis Scottと組んだDeserve。Spotifyデイリー88位と上々なスタート。他の曲とずれた時期のリリース(水曜日半ば)だったことから、一時期iTunesの1位にも登りつめる快挙を達成。現在はiTunes 30位程度まで落ちてしまっていますが、今後iTunes、ストリーミングでそれなりの数字をキープすれば、BTSに次いでK-Pop界隈再びのHot 100入りなるか?K-Pop界隈で伸びやすいYouTubeのビデオが無いのは痛いですが、Spotifyなどストリーミングサービスでの踏ん張り次第では可能性はあるでしょうか。

※韓国のグループ、EXOにかつて所属したことからK-Popと表記しましたが、本人は中国生まれ・カナダ国籍持ち。

もうひとつはスウェーデン出身のDJ / プロデューサーAlessoとブラジルのスターAnittaのコラボ。Iggy Azaleaと組んだSwitch、Major Lazerと組んだSua CaraはAnittaの母国ブラジルでは好調だったものの、それ以外ではインパクトを残せず。今回はHailee SteinfeldとのLet Me Goが順調に伸びていて、ポップ系のプロデューサーとしても頭角を表しつつあるAlessoと組んで英語圏のヒットを狙います。

 

その他、客演Fetty WapがラップではなくシンガロングするCheat Codesの新曲、客演Futureの新曲×2、昨年Hot 100の年間チャートに3曲がエントリーするなど密かにブレイクしたDayaの新曲など。

 

iTunesップ10+新曲の順位 (金曜日)

1 Imagine Dragons Thunder
2 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
3 Ed Sheeran Perfect
4 Portugal. The Man Feel It Still
5 Camila Cabello feat. Young Thug Havana
6 Taylor Swift Look What You Made Me Do
7$ Cardi B Bodak Yellow
8 Maroon 5 feat. SZA What Lovers Do
9 P!nk What About Us
10 Imagine Dragons Believer

 

14 Louis Tomlinson Just Like You
23 P!nk feat. Eminem Revenge
30 Kris Wu feat. Travis Scott Deserve
34 Kathie Lee Gifford He Saw Jesus
36 Tim McGraw & Faith Hill The Rest of Our Life
39 Trent Reznor & Atticus Ross John Carpenter's Halloween
50 Morgan Wallen feat. Florida Georgia Line Up Down
✫51 Gucci Mane feat. Migos I Get the Bag
✫67 P!nk Beautiful Trauma
78 Chris Borwn feat. Future & Young Thug High End
96 P!nk Whatever You Want

 

今週はダウンロードで目立った曲は無く、既存の曲が上位に。Imagine DragonsのThunderが相変わらず好調で1位。いずれもラジオで急上昇中のrockstar、Perfect、Feel It Still、Havanaが2位~5位に。

P!nkのWhat About Usはアルバムリリース効果で9位まで浮上。他23位にEminemとのRevenge、67位にアルバムタイトル曲、96位にWhatever You Wantが入るなど、アルバムチャートの要素の一つ、「シングルダウンロード」でも好調を見せています。ライバルのGucci Maneは51位のI Get the Bagのみ。

 

ほか14位にLouis Tomlinsonの新曲Just Like You。Spotifyでは今回200位圏内にも登場出来ませんでしたが……その他コラボアルバムが予定されるTim McGrawとFaith Hillのコラボ曲など。

 

iTunes アルバム順位

1 P!nk Beautiful Trauma
2 Gucci Mane Mr. Davis
3 Beck Colors
4 Jessie James Decker Southern Girl City Lights
5 Wu-Tang The Saga Continues
6 P!nk Beautiful Trauma
7 Dirty Heads SWIM TEAM
8 St. Vincent MASSEDUCTION
9 Russell Dickerson Yours
10 Tom Petty & The Heartbreakers Greatest Hits

 

Pinkが二つのバージョンで1位と6位にランクイン。店頭でも売上が伸びそうなこと、シングルのダウンロードが好調なことから、この週のアルバム1位はおそらくP!nkでしょう。今回アルバム1位になれば自身2回め。意外にも2012年の前アルバムがP!nkの初アルバム1位でした。

Gucci ManeがそのP!nkを逆転するには、ストリーミングでの数字がかなり必要そうです。Spotifyの数字が微妙だった以上Apple Musicでの数字がほしいでしょうが、どこまでいけるでしょうか……

実はひっそり個人的にBeckのアルバム1位を期待していたのですが、アルバム1位争いは上記の2人に絞られたと言えそうです。

ほかSt.VincentがiTunesアルバム8位に。2014年にアルバムチャートで12位と躍進しましたが、今回はどこまで上位に食い込めるでしょうか!

 

⑤ 各ラジオ局で今週かかりはじめた曲

✫ポップ系

38 Charlie Puth How Long
40 Macklemore feat. Kesha Good Old Days
44 Niall Horan Too Much To Ask
47 DJ Snake feat. Lauv A Different Way

 

ポップ系ラジオで1位になったことを皮切りに、ラジオ総合でも現在1位をキープするCharlie PuthのAttention。そんな彼の新曲How Longがラジオで順調なスタートを切っています。

MacklemoreとKeshaのGood Old DaysはGloriousと入れ替わるような形で上昇中。

Ed SheeranとSteve Macがソングライトに参加したDJ SnakeとLauvのA Different Wayも登場。Ed Sheeran + Steve MacのコンビはShape of You、Strip That Downで今年2回ポップ系ラジオの1位を獲得していますが、この曲は果たして……?

 

✫アダルトポップ系

42 Charlie Puth How Long
49 Haim Little Of Your Love

 

Haimが登場!前のアルバムからはForeverがポップ系ラジオ、アダルトポップ系ラジオでかかり30位程度まで進出。惜しくもHot 100には入りませんでしたが、今回はその時以上のラジオヒットになるか?、またHot 100入りにも期待です。

 

✫リズミック系

40 Quality Control feat. Quavo, Takeoff & Offset Too Hotty
44 2 Chainz feat. Travis Scott 4AM
45 Lil Uzi Vert The Way Life Goes
50 Ayo & Teo Better Off Alone

 

Lil Uzi Vertの新シングルはThe Way Life Goesに決定!2 Chainz の4 AMがアーバン系に続いてリズミック系でも登場。

 

✫アーバン系

45 Lil Uzi Vert The Way Life Goes
47 Lil Baby My Dawg

 

同じくLil Uzi Vertのシングルが登場。

 

✫カントリー系

50 Tim McGraw & Faith Hill The Rest Of Our Life

 

前述のコラボ曲が登場。

 

それと、オルタナティブ系ラジオで今週Francis and the Lights、Chance the RapperのMay I Have This Danceが登場!昨今Post Malone、Lil Uzi Vertなどロックへの関心を見せるアーティストが多く、ロックとラップの関係性に注目が集まっているので、この曲がオルタナティブ系ラジオでどこまで上昇するのかは気になる事象だと思います!

ストリーミングは古い曲を発掘する? Post Maloneの2曲が突如Hot 100に登場した現象を探る

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 個人的に先週のHot 100で見どころだったのはPost Maloneの2曲の登場。2位のrockstarの影響を受ける形で数曲がHot 100に舞い戻りました。

 Go Flexが100位に再登場。I Fall Apartが65位で再登場。

 そのチャートアクションをビルボードも単独で記事にしています。それだけ珍しいチャートアクションを取っているということです。

www.billboard.com

 

 今回のこの登場の何が面白いかというと、シングルでもない曲が突然人気になったということです。通常、Hot 100で順位を伸ばすタイミングは ① 曲のリリース自体が注目を集め、ダウンロードなどが増える ② ラジオで伸びを見せ、それ自体が宣伝にもなってダウンロードなどが上がる の主に2つです。

 Post Maloneの今回のケースはこの2つに当てはまらない、新しいものなのです。

 

 近年はストリーミングでじわじわ人気が伸びて、それがラジオに飛び火して……のようなパターンも増えてきました。他には突然のニュース(多くは訃報)でダウンロードなどが伸びて再注目を浴びるようなケースもあります。

 大きく分類すれば、Post Maloneの今回のケースはストリーミングのパターンに当てはまります。しかし、個人的には今回のケースは従来のストリーミングでの人気上昇とパターンが違うように思いました。今回はそれぞれのヒットの経緯を確認し、それらがなぜ驚きなのか?ということを読み解いていこうと思います。

 

パターン1 ライブ映像の威力を倍増させたストリーミング

 

 今までシングルでもなく、そこまで注目されていなかったI Fall Apartが突如Hot 100に復活したのはライブ映像がTwitterに上がったから、と分析されています。このことは上記のビルボードの記事にも書いてありますし、Geniusも似たような分析をしています。

Post Malone's "I Fall Apart" Is Surging In Popularity Nearly A Year After Its Release | Genius

 

 このライブ映像で突如スポットライトを浴びたI Fall Apartはストリーミングで急上昇。それだけでなくiTunesのダウンロードも一定数記録し、Hot 100で65位に入ったのです。

 特にストリーミングは絶好調で、現在Spotifyで2位・Apple Musicでは3位。ほんの3週間前ぐらいには200位圏外だったことを考えると驚異的な躍進といえます。

 なぜこんなに伸びたのか?もちろん、Post Maloneの曲 / パフォーマンスが凄かったということが重要な理由の一つですが、ストリーミングでの環境も理由の一つだと思います。このストリーミングの事例を分析する前に、ひとつ比較として挙げたい日本の事例があります。

 

約6.2万リツイート 約14万いいね!!!!!

 個人的にはSophieプロデュースという点で記憶していたこの曲ですが、安室奈美恵さん引退のタイミングで、このようなツイートの形で大きくバズりました。ライブ映像ではないですが、「話題の歌手の意外な曲がSNSでバズる」という形式は同じです。

 しかし、こっちのB Who I Want 2 Bはあまりヒットにはなりませんでした。

 安室奈美恵さん引退の発表を期にiTunesでは多くの曲がダウンロードされ、該当週のBillboard Japan Hot 100では安室奈美恵さんの曲が12曲もエントリー!邦楽アクトとしては最多(と思われる)記録を残しました。 *1 ですが、このB Who I Want 2 BはJapan Hot 100に入らず。さらに、このツイートがされた9/24から1週間くらいのデータを参照しても、iTunesのトップ100にすら入っていませんでした。

  つまり、この話から何が言いたいかというと、SNSでバズってもそれがイコール直接的なヒットにつながらない場合もあるということです。

 

 話をPost Maloneに戻します。同じようにPost Maloneがバズったきっかけのツイートを見てみます。

約13万リツイート 約23万いいね。こちらのほうが規模は大きいですね。

 アメリカのTwitterユーザーは日本のTwitterのユーザーの2倍以上いるらしいので、人口に対するインパクトを考えると日本と同じくらいでしょうか……?

 つまりツイート自体の「バズり」度でいえば、あまり変わらないとも言えます。

 

 では、なぜこの2つにヒット度の差が出たのか?

 まず挙げられるのはダウンロード習慣の根付きの違いという点です。日本ではCDが健在で、↓の調査では、日本で「ダウンロードを今年した」という人は「CDを今年購入した」人の半分ということが明らかになっています。

 

  一方、アメリカではシングルCDのようなモノは既に幻となっていて、シングルを「買う」ならダウンロードに限られているというのが現状です。 *2

 つまり、日本では曲を知った → じゃあiTunesで買おう!ではなく、CDを買おう!になるのでiTunesで売上が伸びず、Japan Hot 100に入らなかったという分析ができます。

 

 そしてもう一つ挙げられるのが、「ストリーミングでの宣伝効果」です。

 最初に述べたように、この2曲のヒットのはじまりはPost Maloneの新曲rockstarのヒットになります。rockstarがヒットした結果、まず何が起こったかというと彼の前アルバムStoneyへの再注目です。

 rockstarのヒットともにStoneyのストリーミング数が上昇。リリースからずっとアルバムチャートで少なくとも25位以上には入るなど、元からストリーミングを中心に長く愛されていたアルバムでしたが、これを期にさらにストリーミングが上昇。セールスも少し上昇したことからStoneyはリリースから42週目にして、リリース時と同じ6位までアルバムチャートでの順位を上げています。

 

 そして、今回のこのI Fall ApartはStoneyの収録曲です。つまり、どういうことが言えるか?というと、I Fall Apartはライブ動画+Stoneyの全体的な上昇、という2つもの上昇の要素を持っているというわけです。この2つが相互的に作用した結果、ストリーミングで急上昇。ほんのすこし前までは圏外だった曲が、現在ではSpotify2位!Apple Music3位!まで上昇するに至ったのです。

 

 このストリーミングでの急上昇を受けて、シングル化(=ラジオでかかる)も決定。このストリーミングの急上昇自体がニュースになり、ストリーミングでの隆盛が良い宣伝となりそれがダウンロードにも繋がったと私は考えています。

Post Malone's 'I Fall Apart' Announced As Official Single After Live Performance Goes Viral | HipHop-N-More

 

① ライブの動画はバズったけれど、いきなりはじめて知った曲をダウンロードのはハードルが高い。じゃあまずはストリーミングで聞いてみよう。 (音楽好きだけどI Fall Apart知らなかった人) → おお良い曲だ!ダウンロードしてみようか!

② え?I Fall Apartっていうのがヒットしているの?あんま詳しくないけどとりあえずダウンロードしてみようか (音楽そこまで詳しくないけれど、興味はある人)

 

 ↑は自分が考えたあくまで一例ですが、曲を知る → ダウンロードというハードルの高い過程の間に、ストリーミングが「途中の段階」として入ることにより、無理なく少しずつ規模が大きくなり、最終的に大きなヒットになったということが今回のケースでいえることだと思います。

 

 一方、安室奈美恵のB Who I Want 2 BはYouTubeには上がっているものの、各ストリーミングでは取り扱われていないので、このツイートをきっかけに新アンセムとして「定着」するような動きは見られませんでした。それがバズの割にiTunes で伸びなかった原因の一つかもしれません。(まあ、日本のストリーミングの規模は小さいので、ストリーミングでヒットしても話題にはならないかもしれませんが……) このケースを見ると、日本では音楽は単価が高いぶん、一つ一つを丁寧に扱う傾向があるのかも……???(要分析)

 

 新曲リリースがヒットして、過去の作品への注目が集まるケースは以前からあります。例えば昨年Stressed Out、Rideなどがヒットしたtwenty one pilotsは、それらが収録されたアルバムBlurryface (2015:年間31位 → 2016:年間6位) だけではなく、その一個前のVessel (2015:年間119位 → 2016:年間38位) も上昇。またストリーミングが本格的に来る前の時代でも、Adeleの21(2011と2012で年間1位)ヒットを期にその一個前のアルバム19 (2009:年間62位 → 2010:年間200位圏外 → 2011:年間37位 → 2012年間16位) が上昇するなど、アルバムでは過去の作品への再注目はよくありました。

 ただシングルでの過去作への再注目で、かつここまで目立ち、シングルにまでなった*3 ケースはなかなか見られなかったので、これは「ストリーミング時代の新しいヒットの仕方」と呼べるのではないでしょうか!

 

パターン2 アルバムのストリーミング上昇のみで復活!

 

 I Fall Apartではライブ動画+Stoneyの全体的な上昇が、Hot 100登場の理由でしたが、このGo Flexは後者のみでの登場なのです!

 上記した通り、Stoneyはリリース以降長く人気で、Go FlexはストリーミングでCongratulationsに次ぐ2番人気の座を確保していました。現在はI Fall Apartに抜かれて3番人気となりましたが、その3番人気のGo FlexでもHot 100に入る程度のポイントを稼いでいる、ということなのです!

 

 このGo Flex、元はシングル(=ラジオでかかっている)でしたが、現在はCongratulationsやrockstarに移行しているので、ほぼシングルではない状態です。つまり「アルバム曲」でありながら、ストリーミングのパワーでラジオでかかっているような曲を上回っているのです。

 

 このような事例はアルバムリリースのタイミングではよくありますが(アルバム全部がHot 100に入る事例も一部あります 参考)*4が、リリースから時を経ての(事実上)非シングルの登場というのは、あまり類を見ない登場の仕方だと思います。

 それをほぼ「rockstarのヒットによるStoneyへの再注目」のみで成し遂げた、という点がなんとも興味深いです。

 

この事例における着眼点

 この二つの事例を「興味深い」と述べてきましたが、どう興味深いか?という点(2個)を少しかみ砕いて説明します。

 

 ストリーミングがアルバムを長持ちさせる、という新しい可能性が見えた

 

 ダウンロード等の売上を減らすストリーミングは音楽を殺すのか?…………そんな論調のテーマは多く語られていると思いますが、昨年アメリカではストリーミングの急成長により、音楽産業の成長率がなんと20年ぶりに2ケタ成長を記録。ストリーミングがポジティブな結果を残しつつあります。

 

 アーティスト、特に若い層に人気のアーティストはiTunesでの先行予約にあたる“Pre-Download”だけではなく、Spotifyで予め保存*5を表す”Pre-Saved” という言葉を使い出すなど、アーティスト側からもストリーミングでの聴取を推奨するような記述も見られるようになっています。

(Pre-Savedの一例) 

 

 このようにポジティブな形で定着してきているストリーミングですが、今回のケースでさらなる新しい可能性が見えたように思います。

 ストリーミング(特にSpotify)では新作 / 新曲が出るたびに、それらの再生数が上昇し、リスナーが新リリースを欠かさずチェックしていることが分かります。 しかし、そのように新曲をチェックし続けていると、新しいものを聞くのに精一杯で消費スピードが加速して聞きたいアルバムが溢れてしまわないか?という疑問が生まれます。実際、音楽好きのTwitterでもそのような「嬉しい悩み」が多く聞かれています。

 その消費スピードが早まった末に何が起こり得るか?というと新曲の消費一辺倒になり、過去の作品をゆっくり「味わう」時間が減ってしまうのでは、という危惧です。音楽以外で例えるなら短いヘッドラインニュースのチェックに時間を取られて、まとまった内容の文書をチェックする時間が無くなってしまう、というようなことです。

 

 しかし、この2曲のヒットはその杞憂を吹き飛ばしているような気がします!新曲rockstarが凄まじい再生数を記録すると同時に、さらなる+αの興味を持って過去作品のチェックもしていく……ストリーミングは消費スピードが速すぎる「ミーハー」を増やすサービスではなく、リスナーの興味を増幅させ「マニア」へと進化させる。この過去作品への興味は、そのような新たな可能性が垣間見えたアクションだったように思いました。

 『ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略』*6という本でこのような記述がありました。

ネットでは古い/新しいという概念はあまり関係無くて、その時その時に楽しめるかどうかが大事です。

 

 若いストリーミング世代にとっては、「旧譜は出会った瞬間に新譜」になるという現象が発生すると思います。新しい音楽を探求するのも楽しいのですが、このように各リスナーがストリーミングを通して「マニア」と化してそれぞれ思い思いの曲を発掘し、様々な曲がアンセムとして長く愛される……という展開もそれはそれで面白いと思います。

 

② 「音楽から音楽を知る」というネット時代の音楽との接し方

 

 ストリーミングが「新時代のラジオ」の一つになるかも?ということです。かつてmp3ファイルシェアサイトのナップスターが一斉を風靡していましたが、限りなく黒に近いグレーなサイトだったので、後に閉鎖されてしまいました。その「黒」っぷりからよく音楽の売上が減った戦犯のように扱われますが、ポジティブな側面もあったのです。

例えば2000年に”『Kid A』は、発売される数ヶ月前からNapsterで公開され、何百万回もダウンロードされることになった。そして、それまでは、大衆的には無名といっていいイギリスのバンドえあったレディオヘッドが、2000年10月のビルボードでアルバムが第1位となる結果になった。“*7

 のようにむしろナップスターがプロモーションの役割を果たす場面もありました。このような活躍から、

ナップスターは「新時代のラジオ」”*8 

ナップスターは単なる共有サービスではなかった。永遠のデジタルジュークボックスだった。しかもタダだった” *9

のように表現されています。

 

 ストリーミングはナップスターとは違い、違法性は無いですが、上記のような魅力を兼ね備えています。完全にタダではないですが、各ストリーミングは文字通りの永遠のデジタルジュークボックスです。そして、今回のケースでストリーミングは「ラジオ」としてのさらなる可能性も示したと思います。

 

 ここでいう「ラジオ」とは、「知らなかった曲との出会いを提供してくれる」のようなニュアンスで使われていると思います。ストリーミングサービスでは人の作ったプレイリスト経由で知らない曲を知り、それがだんだんと広がりゆくゆくは巨大なヒットになる、ということは最近では定番となりつつあります。特にSpotifyはこの機能が強く、プレイリスト文化が最も進んだストリーミングだと思います。

 今回のGo Flexも同様に、人々がストリーミングで「知らなかった曲」を知り、それがヒットにつながったのですが、実は微妙に従来のケースと違う点があるのです。

 

 上にも登場した『ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略』で「音楽の知り方」として3つの方法が提示されていました。

"人から音楽を知る””音楽から音楽を知る””音楽以外から音楽を知る”

 

「人から音楽を知る」は、人から音楽を教えてもらうこと。「音楽から音楽を知る」のは、音楽の情報をつてに新しい音楽を知ること。「音楽以外から音楽を知る」は、例えば映画などのサントラのことです。

従来のプレイリスト経由、今回のGo Flexとでは「知る」手段に違いがあるのです。

 

 従来の「人が作った」プレイリスト経由の場合、あくまで人伝えで情報を入手しているので分類は「人から音楽を知る」になると思います。しかし今回のGo Flexの場合は、rockstar良いな → じゃあPost Malone聞こうか という流れで、「自発的」に「音楽伝えで音楽を知っている」ので、似て非なる音楽の知り方をしている、ということが分かると思います。

 

 上記の『ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略』の著者の一人、高野修平は自身の『音楽の明日を鳴らす』*10の中で “Spotify は「音楽から音楽を知る」ミュージックグラフのツールとして非常に期待したい” と述べていて、今回のこのケースはまさにその期待に応えたるかのようなものになっていると思います。

 

 つまり、今回のケースでは「音楽を媒介して、ストリーミングの効果もあって、別のシングルがヒットした」という点が目新しいのです。

 

 

まとめ

 このPost Maloneの2曲の登場は、ストリーミングの新たな「ヒットを生み出す可能性」を提示しているという点でかなり興味深い現象だったと思います。

 また、よく分析してみると、ストリーミングを通じてリスナーがマニアックな方向に進んでいるという点も垣間見えた気がします。

 

 ストリーミングは誕生してから間もないサービスですが、現在とても大きな影響力を及ぼしているので、今後も様々な方面から分析していきたいです。

 

 関連記事

 

 

*1:全体の最多は、Michael Jacksonが亡くなったときの14曲 ※Jackson 5含む 参考

*2:このHot 100記事の”No Roots"の項目でアメリカ、ドイツ、日本のCDリリース状況を比較しています。アメリカでは人気シングルでもCDはリリースされず。ドイツではそこそこCD、日本ではかなりCD。 Hot 100 4/7 見どころ 【謎の日本ブーム?Famous DexとShawn Mendes / ドイツのオルタナ女子】 - チャート・マニア・ラボ (CML)

*3:昨年Ghos Town DJ’s のMy Booがピークを更新する形でHot 100の27位に舞い戻りましたが、シングル化はされず。ただ、ここまでの高い順位で復活したということ、かつ何週かHot 100に残り、音楽として「定着」しかけたことから、今回のI Fall Apartの先駆けと呼べる出来事だったかも。しかし、この曲を「知った」要因という点では違います(後述)

*4:Kendrick LamarのLOVE.はラジオでかからない状態でチャート滞在20週に到達。チャートから外れた後にシングル化されラジオでかかった

*5:オンライン再生だと通信による再生で不安定なため、オフラインでも再生できるようにすること。「保存」といってもSpotify以外の媒体では再生不能。それらは「マイライブラリ」に保存され、あたかもCDの棚を見ているような気分になる(?)

*6:山口哲一・松本拓也・殿木達郎・高野修平 2012 リットミュージック P96 より

*7:高増明 2013『ポピュラー音楽の社会経済学』ナカニシヤ出版 P12より

*8:S・グレイグ・ワトキンス著・菊池淳子訳 2008 『ヒップホップはアメリカを変えたか?』フィルムアート社 P116より

*9:スティーヴン・ウィット著・関美和訳 2016 『誰が音楽をタダにしたのか?』 早川書房 P151

*10:2012 エムオン・エンタテインメント P141より

Hot 100 見どころ 10/21 【Hot ○○(ジャンル名) Songs のマニアックな説明】

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今週の見どころはMi Genteのジャンプアップ!Beyoncéリミックスの効果によって3位まで上がりました。そんなMi Genteと絡めたマニアックな説明、そしてZeddについても書いています✒

 

 

98 Florida Georgia Line – Smooth (New)

Florida Georgia LineのSmoothが98位で登場。アルバムDig Your Rootsから4曲めのシングル。H.O.L.Y.14位 → May We All 30位 → God,Your Mama, and Me 46位 とシングルごとに少しずつピーク順位を落としてきていますが、今回はどこまでいけるでしょうか。

 

74 A Boogie Wit da Hoodie – No Promises (New)

この週にアルバムをリリースした”アーティスト”*1の中で最も多くの曲をHot 100に送り込んだのはA Boogie Wit da Hoodie。このNo Promisesを筆頭として、Say A’が75位、Undefeatedが84位、Beast Modeが86位で登場。Apple Musicを中心としたストリーミングでの好調によるものです。今年ヒットしたDrowningも収録されていますが、既に20週以上のチャート滞在をしているので、ルール上Hot 100に再登場するには50位以上に入る必要があり、ハードルが高いので再登場ならず。

ちなみにアルバムチャートでは4位。セールス14位ながらもストリーミングの数字でジャンプアップしました。

※今週のアルバムチャート1位はShania TwainのNow。15年ぶりのアルバムでしたが、健在ぶりが伺えました。2位はTom Pettyのベストアルバム。しかしシングルはHot 100に登場せず。以下3位Demi Lovato、5位Miley Cyrsuに。

 

68 Bhad Bhabie – Hi Bich (New)

14歳のYouTuber、Bhad Bhabieの2回めのHot 100エントリー。Hi Bichが68位で登場。前のThese HeauxはNicki MinajのNo Fraudsリスペクト?を感じましたが、今回は重厚なビートの作風。少しテイラーのReady For It? っぽい?この曲はKanye WestのYeezus風曲とも言われるので、今回はKanye Westリスペクトでしょうか……?

ちなみにThese HeauxのウィキペディアのページにBhad BhabieはStevie WonderJojoに次ぐ史上3番目に若いHot 100エントリーを記録したと記述されていますが、2015年にSophia Graceが当時12歳*2でHot 100にエントリーしたのが抜けているので、少なくとも3番目ではないですね……

 

39 Post Malone – I Fall Apart (↑)

先週ライブ画像のバズ+rockstarに触発されたアルバムStoneyの好調、という二つの要因によってHot 100に復活したI Fall Apartが勢い良く順位を伸ばして39位とトップ40まで突入。絶好調です。シングル化もされるようです。今週もStoneyは好調で、リリース時のピークと同じアルバムチャート6位をキープしています。

 

34 Ed Sheeran – Perfect (↑)

各ラジオでの急上昇、さらにそれに伴うダウンロードの上昇によって、復活から3週めにしてトップ40まで再浮上。またリリース時に記録したピーク37位も更新しています。Justin BieberのCompany、AdeleのWater Under the Bridgeなど特大ヒットしたポップアルバムの、リリースから少し経過した時点でのシングルは燃え切らないことが多いですが、このPerfectはそのジンクスを吹き飛ばすかの勢いを見せています。

 

29 Camila Cabello feat. Young Thug – Havana (↑)

先週テレビ出演で注目を集めてダウンロードが伸びて上昇したHavanaでしたが、今週はさらに上昇。ダウンロードはさらに伸びたほか、ラジオでの好調もあり、一気に29位まで来ました。ソロ以降ではBad Thingsに次ぐ2曲めのトップ40。Crying in the Clubで取り逃したヒットの基準トップ40を獲得しました。もともとは単の「アルバムに入る曲」に過ぎない扱いでしたが、ストリーミングで人気を博してシングル化が決定。見事ラジオでもヒットしています。この曲はPharrell Williamsが少しボーカルを担当し、ソングライトには昨年あたりから活躍が際立つAndrew Watt(Let Me Love Youなど、Hailee SteinfeldのLet Me Goでは客演としてクレジット)やStarrah (Needed Meなど)が参加。さらにピアノの音色はSelena GomezのSame Old Loveを参考?*3 にするなど、シングルに相応しいかなり気合の入った曲だと思います。

 

22 Kendrick Lamar – HUMBLE. (↑)

Skrillexリミックス版のリリースでダウンロードが伸びました。Hot 100でも28位 → 22位と上昇。どこまで上位で粘れるかどうかが、年間チャートでより高い順位に入れるかのカギ。ライバルはCloser、Bad and Boujee、そして後半に調子を上げたBeliever、Body Like A Back Road辺りで、年間チャートで現実的に取れそうな最高順位は4位でしょうか。2017の年間チャート集計終了まであと5週。(Shape of You、Despacito、That’s What I Likeの3強はほぼ固定)

 

18 Niall Horan – Slow Hands (↓)

一時期ポップ系ラジオで1位になるなど、ラジオでの強さによってトップ10に迫っていたNiall HoranのSlow Handsでしたが、今週は18位に順位を落とし、頼みの綱のラジオもピークを過ぎてしまったのでトップ10入りの可能性がほぼ無くなってしまいました。とはいえ、ロングヒットの11位ピークなので総合的なヒット度は十分です。

元One Direction勢としては今週はじめて「アダルトポップ系」ラジオで1位を獲得。他のメンバーには無い新境地を開きつつあります。

 

7 Imagine Dragons – Thunder (↑)

CM放映によってダウンロード絶好調、それに合わせてラジオやストリーミングも急上昇。Hot 100でも大きく順位を上げて一気に7位まで浮上。ラジオは依然勢い良く上昇中。かなり伸びシロを残しているので、Believerのピーク4位を超えるかもしれません。

バンド通算4曲めのトップ10、かつアルバムEvolveでは2曲めのトップ10に。2010年代において、Maroon 5の次に多くのトップ10を送り込んでいます。ビルボードはかかるラジオの系統を根拠に、Maroon 5を「ロック」に分類していないので、(ビルボード基準の)「ロックバンド」としては2010年代唯一無二のバンドといえそうです。ちなみに次点はtwenty one pilotsのトップ10入り3曲。

ちなみにBelieverはThunderと入れ替わるような形で今週トップ10圏外の11位へ。

 

3 J Balvin & Willy William feat. Beyoncé – Mi Gente (↑)

Beyoncéリミックスのリリースにより急上昇。ダウンロード、ストリーミングが今週最大の伸び幅を記録して、一気に3位まで上昇しました。YouTubeの再生回数も10億を突破。Beyoncé以外にとっては初のトップ10です。

Despacitoはリミックス以降さらに規模が拡大しましたが、Mi Genteの場合はリリース以降の数字は落ち着いてきていて、この週がピークになるかなと思います。

 

✫Hot (ジャンル名) Songs について

このMi GenteがHot Latin Songs にてDespacito(今週Hot 100で9位)を抜いて1位になりました。それ以外にも今週はHot (ジャンル名) Songsチャートでは首位の交代が相次いでいて、Hot Rock SongsではBelieverからFeel It Stillへ、Hot Country SongsではBody Like A Back RoadからWhat Ifsへ切り替わりました。

 

2012年の10月にルールが変更になり、Hot (ジャンル名) Songs チャートは従来のラジオのみの集計から、Hot 100準拠のダウンロード・ストリーミング・ラジオの複合チャートへと変貌しました。つまりこの時期より先か後かで全く別物のチャートなのです。さらにはHot 100に準拠しているので、Hot (ジャンル名) Songsを見ても新しい発見というのは少なく、Hot 100から該当ジャンルの曲を抜き出してそのまま並べているようなものです……Hot 100圏外の曲の順位を参考する場合には役に立ちますが……!おそらくこのチャートは「このジャンルにしか興味が無い!」という人を引き寄せるためのチャートでしょうか。

 

今回の首位入れ替わりのうち、特にBody Like A Back RoadはHot Country Songsで歴代最長の一位 (34週)の記録を更新していただけに、このHot ○○ Songsでの首位交代は注目されるかもしれません。

チャート初心者にとっては分かりやすい指標ですし、Hot 100準拠のチャートなので、世間の感覚と一致しやすいジャンルの1位がこのHot ○○ Songsでは分かると思います。

しかし、「個人的には」このHot ○○ Songsは事実上2012年からのかなり新しいチャートである点、またこのHot ○○ Songsで上位に入るカギが、同ジャンルの曲とポイントで差をつけるために「異ジャンルのリスナーからポイントを稼ぐ」*4 という点に少し違和感を覚えることから、あまりHot ○○ Songs一位の長さなどは重要視はしていません。

こうやって長々と細かい説明をしましたが、別にチャートの楽しみ方や見方なんて人の自由ですし、Hot ○○ Songsにも手っ取り早くジャンルの人気曲が分かるという良い点もあると思います。ただ、Hot ○○ Songsがどういうチャートなのか?という知識があると、よりチャートをディープに見られるということは確かだと思います。

Hot ○○ Songs についてはこの記事の解説も参考になります!


 

× Selena Gomez feat. Gucci Mane – Fetish (↓)

Bad Liarに引き続き、思うようにいかなかったSelena GomezのFetish。ピーク27位、チャート滞在12週という短さでチャートを後に。ダウンロードもストリーミングも全体的に数字が少なかった気がするのですが、特にラジオで伸びなかったのは痛手だったように思います。

「ささやきボイス系ボーカル」は2015年のGood For Youでも実践して、その時は自身最高の5位まで到達していたので、今回の作風だけがヒットしなかった理由とは思えず、なぜヒットしなかったのか……?この作風はもうお腹いっぱいなのか、世間のSelena Gomez像とかけ離れているからなのか……謎です。

ちなみに客演のGucci ManeはFifth HarmonyのDownに続いて、自身が客演したポップソングが2連続不完全燃焼に。Rae SremmurdのBlack Beatlesをはじめ、ラップの客演としてはヒットの多いGucci Maneですが、ポップリスナーの間での存在感はまだ無いのでしょうか。

 

× Zedd & Alessia Cara – Stay (↓)

ピーク7位 / チャート滞在31週、かつ全ての週を上半分で過ごすという上々の成績でチャートを後に。ZeddはStarvingに引き続きポップ系アクトをヒットに導き、プロデューサーとしての実績を上げました。またAlessia Caraもこの曲を含めて、女性としては今年最多タイ*53曲がトップ10に入るなど、実績を積み上げています!

両者ともポップ系のラジオを得意としていて、Zeddは初のHot 100入りを果たしたClarityでポップ系ラジオ「年間」5位を獲得。Alessia CaraはHereが最も遅いタイミング(26週め)でポップ系ラジオの1位を獲得、Scars To Your Beautifulも4番めに遅いタイミング(24週め)でポップ系ラジオ1位を獲得しており、ポップ系ラジオで「粘りの実績」が。その二人の曲とだけあって、見事ポップ系ラジオで一位を獲得。今後も二人の「ラジオマスター」の活躍に期待が持てそうです。

 

※この曲のソングライトに携わったNoonie Baoにとっては(関わった曲が)初のHot 100に。後にCamila CabelloのOMGもHot 100にエントリーしています。今年に入ってからはKaty PerryやDemi Lovatoのアルバム曲も担当していて、密かに期待しています。

 

✫ちなみにこの時期にZeddのデビューアルバム、Clarityが5周年を迎え、本人もアルバムを振り返り、懐かしんでいる様子。またビルボードも「Clarity5周年!」という記事を上げて特集しています。


Clarityの一部の曲を取り上げレビュー、現在ポップス界において重要な位置につくZeddの原点となったアルバムのように評し、最後に「おめでとうZeddとClarity!」と言っています。それに対してZeddはTwitterで……(雑な和訳(意訳気味)かつ要約)

「この記事見た時は本当に鳥肌が立ったよ。まあー、でもビルボードがClarityのレビューで✫2つ付けたこと、覚えているよ!あれ結構傷ついたんだよね…………笑 人がこのアルバムの魅力に気づくのに5年かかるのかよ!ってマネージャーに冗談で言ったこともあるよ笑 でもこうやってリリースから5年という長い年月が経ったあとも、アルバムの詳細を解説してもらって、”ダンス音楽”を変えたって言われるのは、リリースしていた時からの野望だったから嬉しいよ!チャート無くしてここまで来られなかったと思うし、ビルボードさんには改めて感謝の意を述べます」

参考→ Zedd (@Zedd) | Twitter

 

こうやってフランクにメディアに意見するスタンスはなかなか興味深いと思います。時にアーティストに対して残酷な評価を下すこともある音楽メディアですが、音楽を盛り上げていくうえで大切な一部だと思います。Chance the Rapperが以前Complexの「ベストカニエアルバム」に対してTwitterで「俺ならこうする!」とアンサーしていたことが話題になりましたが、このようなネットが発達して相互的な発信が可能になったこともあって、「音楽メディアとアーティストの関係性」というテーマも一つ面白い研究テーマになるかもしれません。

 

× DJ Khaled feat. Justin Bieber, Quavo, Chance the Rapper & Lil Wayne – I’m the One (↓)

DJ KhaledがJustin Bieberを迎えたこと、またChance the Rapperが1位を獲得したこと、Quavoが再び1位になったこと、それぞれ肩の力が抜けた良い意味で余裕を感じるパフォーマンスなど……リリース時の衝撃は大きかった曲だと思いますが、意外と早くチャートを後に。

ポップ、ヒップホップ系など幅広い系統のラジオでかかりそうなことから、ラジオの力でロングヒットになるかな?という気もしたのですが、最初がロケットスタートすぎたせいか、また次シングルWild Thoughtsもすぐにヒットして早々「主役交代」となったことから22週という短めのチャート滞在でした。ここまでチャート滞在が短いと、ピークが1位ながらも年間トップ10に入れない可能性も。

 

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Imagine Dragons – Thunder

今週最もダウンロードが上昇した曲 J Balvin & Willy William feat. Beyoncé – Mi Gente

今週最もストリーミングが伸びた曲 J Balvin & Willy William feat. Beyoncé – Mi Gente

最も高い順位で新登場した曲          Bhad Bhabie – Hi Bich

 

 

今週チャートから外れた曲 (8曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

99 The Revivalists – Whis I Knew You (🗻84位 /⏰9週)

96 Selena Gomez feat. Gucci Mane – Fetish (🗻27位 /⏰12週)

92 Gucci Mane feat. The Weeknd – The Curve (🗻67位 /⏰2週)

88 Louis Tomlinson feat. Bebe Rexha & Digital Farm Animals – Back To You (🗻40位 /⏰10週)

80 Maluma - Felices Los 4 (🗻48 /20)

70 Macklemore feat. Kesha – Good Old Days (🗻70位 /⏰1週)

47 Zedd & Alessia Cara – Stay (🗻7位 /31週)

42 DJ Khaled feat. Justin Bieber, Quavo, Chance the Rapper & Lil Wayne – I’m the One (🗻1位 /22週)

 

 

Hot 100以外の場所で好調なものの、Hot 100にエントリーしていない曲をピックアップしました。

(調査対象:Spotifyデイリー、Shazam、Pandora、Apple Music、各種ラジオなど)

 

Lil Pump – Gucci Gang (Spotify Apple Music)

Lil Pump – Boss (Spotify Apple Music)

 

この週のアルバムでストリーミング一番人気はLil Pumpでしたが、Hot 100に入るのは多くてもこの2曲くらい?でしょうか。Gucci Gangは多分トップ40まで行くと思います。

 

*1:A Boogie Wit da Hoodie の本名は “Artist” Julius Dubose

*2:ちなみに生年月日でもBhad Bhabie よりもSophia Graceのほうが後

*3:サンプルとして明言されてはおらず、Same Old Loveの制作陣がHavanaのクレジットに入ってもいない。ただ明らかに似ているので、そういう記述がある。明言せず参考にすると利権とか大丈夫なの?という気もしますが、Same Old Loveのソングライター陣は軒並みカミラのソロ曲のソングライトに参加しているので、むしろ本人たちのアイデアでは?と思います。

*4:そのBody Like A Back Roadも、ポップ系ラジオなどに飛び火したことによってHot 100の順位が上がり、それでHot Country Songsの長い一位防衛につながっています。ただ、カントリーファンに限ると、従来のラジオのみではBody Like A Back Roadは3週の1位で、比較的長いほうではあるのですが、Small Town Boyの4週よりも短いです。

*5:テイラーと