チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 2/16 見どころ 【ハーフタイムショーよりもゲーム内DJの効果?】

 

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 こんばんは。今週はスーパーボウルが集計期間内に開催され、ハーフタイムショーの効果がチャートに反映される週ですが、果たして……?? (あと更新が1日遅くてすいません)

 (画像はMarshmello ft. Bastille - Happier (Official Fortnite Music Video) - YouTube

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・ハーフタイムショーよりもゲーム内「仮想」DJ? Marshmelloの“Happier”が2位浮上、”Alone”が28位に再登場

・“Girls Like You”は10位にステイ。これでトップ10滞在が歴代最長タイの33週目に(”Shape of You”に並ぶ)

・21 Savageの”a lot”が12位へ浮上

・Billie Eilishの”bury a friend”が14位に

 

・今週のトップ10

      2月9日   R D S
- 1 Ariana Grande 7 rings 10 1 1
2 Marshmello & Bastille Happier 4 5 2
  3 Halsey Without Me 2 4 6
  4 Post Malone & Swae Lee Sunflower 7 3 3
- 5 Travis Scott SICKO MODE 8 8 5
  6 Panic! At the Disco High Hopes 1 10 27
  7 Ariana Grande thank u, next 3 16 13
  8 J. Cole MIDDLE CHILD - 17 4
- 9 Post Malone Wow. 18 9 9
- 10 Maroon 5 feat. Cardi B Girls Like You 6 6 20

R=Radio、D=Download、S=Streaming

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

◇96 Billie Eilish – ocean eyes

 Billie Eilishの“Ocean Eyes”が96位に再登場。新曲”bury a friend”に誘発される形で他の曲もストリーミングで再注目されています。

※この動向について補足記事を書きました!

 

☆95 Kelsea Ballerini – Miss Me More

 Kelsea Balleriniの“Miss Me More”が95位に登場。今週カントリー系ラジオで?位。カントリー曲ながらもややリズミカルでポップ成分の強い曲です。

 Kelsea Balleriniはこれで7曲目のHot 100入り。Kelsea Balleriniは2017年のグラミー新人候補にノミネートされており、今週52位の“This Feeling”でタッグを組んでいるThe Chainsmokersとはその新人候補の「同期」です。(実際に受賞したのはChance the Rapper)

 

◇64 Mustard & Migos – Pure Water

 (DJ)MustardとMigosの“Pure Water”が64位に再登場。最初に登場した時よりも高い順位を記録しています。このまま勢いに乗って順位を伸ばせるでしょうか?

 2週前にHot 100入りした時よりもYouTubeSpotifyの成績が伸びています。(Apple Musicは上位を“キープ”)

 

☆56 Gunna – One Call

 Gunnaの“One Call”が56位に登場。この曲は来週末にリリースのアルバム”Drip or Drown 2”からの先行曲。この作品は「デビュー・スタジオアルバム」という形でリリースされる模様です。(それまでの作品は“ミックステープ”)

 この曲は主にApple Musicで人気。リリース以降、再生数はトップ10付近を推移しています。ほかSpotifyでも38位ですが、YouTubeではまだ圏外です。

 

▽41 Khalid & Noramani – Love Lies

 今週51週目とロングヒットの“Love Lies”。今週ポップ系ラジオのチャートでは45週目を迎え、このラジオチャートでは歴代最長タイの滞在となりました。

45週 Khalid & Normani – Love Lies

45週 Dua Lipa – New Rules

42週 Lauv – I Like Me Better

41週 Edwin McCain – I’ll Be

 

 とこのように最近の曲が多いです。ポップ系ラジオチャートにもリカレントルールが存在します(21週目以降、15位以下に落ちると外れる) リカレントの対象になる順位が高めなので、このチャートで長く残るには純粋にロングヒットということも必要ですが、「遅咲き」ということも重要です。

 

 そんなロングヒットで滞在1年が間近な“Love Lies”ですが、来週チャートから姿を消す可能性もあります。来週のチャートではAriana Grandeのアルバム”thank u, next”のリリースが反映されるのですが、このアルバムの収録曲が軒並みストリーミングで大人気のため、これらの曲がHot 100上位に多くランクインする可能性が高いです。

 この作品の収録曲は12曲。既に上位にランクインしている”7 rings”と”thank u, next”を除くと10曲が上位に新たに登場するということになり、その分上位の「枠」が埋まり、下位の曲は10位程度順位が「押し下がる」可能性があるのです。

 10枠分埋まるというと、来週チャートを外れる可能性があるのは主にリカレントが適用される41位-50位の曲。

 これに当てはまるのはBazziの“Beautiful”(47位)、Dan + Shayの”Speechless”(44位)、そしてKhalid + Normaniの“Love Lies”(41位)です。ほか40位の”Baby Shark”、39位の“I Like It”、38位の”Trip”あたりも外れる可能性があります。

 果たしてロングヒットの“Love Lies”はArianaのアルバム曲ラッシュを乗り越え、チャート滞在1年を迎えることが出来るでしょうか?仮に来週チャートに残っても、再来週は確実にチャートからは外れてしまいますが……

 

◇おさらい リカレントルールについて◇

21週目以降:51位以下に落ちるとチャートから外れる

53週目以降:26位以下に落ちるとチャートから外れる

ただし、ピークを更新する見込みがある曲は例外でチャートに残る場合もある

 

 

△32 A Boogie Wit da Hoodie – Look Back At It

 目立ったリリースが無かった今週、アルバムチャート1位に返り咲いたA Boogie Wit da Hoodie。ストリーミングで人気のアルバムは2週目以降も一気に数字を落とさない(DLなどのセールスと比べて、2週目以降も繰り返し再生できるので)ため、このような注目リリースが無い週は少し前のアルバムが1位に返り咲くことがあるのです。

 このアルバムは今週、総合売上47,000のうち45,000をストリーミングから計上。アルバムの純売上は1,000未満で、自身が持つ1位アルバムの歴代最低「純売上」の数値を再び更新したようです。(※ストリーミングなどを含む「総合売上」は最低数値ではない)

 そのアルバムの収録曲では“Look Back At It”が好調。最近ではシングル化され、ラジオでもかかり始めているようです。ビデオも新しく公開されています。

 

◇28 Marshmello – Alone

 MarshmelloがスマホNintendo Switch対応ゲーム、“Fortnite”上での「仮想」DJイベントを行いました。世界で1000万人もの参加したといわれるこのイベントはチャートに大きな効果を与え、Marshmelloの各シングルがDLやストリーミングで再浮上を果たしました。

 中でも大きなインパクトがあったのは“Alone”。この曲は2016年末にはじめてチャート入りしピーク60位、チャート滞在10週という成績を残しましたが、約2年の歳月を経てその当時よりも大幅に高い順位でHot 100再登場を成し遂げたのです!

 数字の伸びが際立ったのはYouTube。先週までは週間再生数が101位以下でしたが、今週一気に6位までジャンプアップしています。

 このDJの様子をまとめたEP、“Fortnite Extended Set”アルバムチャートの45位に登場しています。

 

 詳しくは後述しますが、今週スーパーボウルがチャートに与えた影響は限定的でした。(披露された“Girls Like You”や”SICKO MODE”は順位が変動しなかった) それぞれの音楽の好みの細分化や、ストリーミングのレコメンド機能などで自ら音楽を発掘しやすくなったことなどから、このような「多くの人に向けた音楽イベント」の影響力が低下している印象が個人的にあったので、ここまで仮想DJイベントの影響力があるとは意外でした。このような多くの人に向けたプロモーションイベントも開発の余地があるのかもしれません。

 あとはマスクさえかぶればMarshmelloになれるというキャラ設定もこのイベントとの親和性があります。2次元化も楽に行えます。

 

 ちなみにこの“Fortnite”はゲーム内でシュートダンスの動きを”Hype”と称し、まるでオリジナルかのように扱ったため、シュートダンスの考案者であるBlocBoy JBはゲーム会社を訴えるとの報道もあります。良くも悪くも音楽との関わりが深いゲームなようです

 

△18 Khalid – Better

 Khalidの“Better”が23位→18位と上昇。今週リズミック系で1位など、ラジオでの好調が際立ちます。

 この曲は滞在21週目で、他の曲ならばピークを過ぎていることも多いのですが、まだまだ伸びしろがありそうです。ほかKhalidが参加するbenny blanco、Halseyとの“Eastside”も30週目ながらも現在ラジオがよく伸びており、ロングヒット中。

 先に述べた51週目の“Love Lies”など、Khalidが参加する曲はロングヒットになりやすい傾向があります。(幅広い系統のラジオと相性が良いからでしょうか!)

 

△14 Billie Eilish – bury a friend

 Billie Eilishの”bury a friend”が14位へジャンプアップ。先週はリリースからの集計期間が短かったですが、今週は7日分フルで集計されたため順位を伸ばしました。

 この曲はストリーミングで全般的に人気。Apple Musicではこの週12位前後、YouTubeでは今週9位、そしてSpotifyでは今週3位でした。ほかDLでも今週7位と優秀な成績を収めています。

 ストリーミングでは人気が高く、過去曲にも注目が集まるBillie Eilishですが、ラジオの対応は非常に遅れています。現在ラジオ系のチャートに登場した曲は”you should see me in a crown”のみで、この曲も中規模のオルタナティブロック系ラジオでしかかかっていません。(最も大規模なのはポップ系ラジオ。Billie Eilishの曲はかけるならこの系統だと思いますが、まだかかっていません)3月のアルバムリリース頃にはラジオでも人気が出るでしょうか?

 

△12 21 Savage (feat. J. Cole) – a lot

 出身がイギリスであったことが発覚し、不法入国と判定され逮捕されるという騒動があった21 Savage。彼は今までアトランタ出身であったとされてきましたが、実際はアトランタに「移住してきた」ということだったようです。

 これに関して「なんで嘘をついたんだ!偽物!」と評する人はあまり見受けられず、それよりもこれまでの功績が評価され多くの場所で#free21が見られました。

 例えば、SpotifyのプレイリストRapCaviarはサムネイルを#free21とし、彼の楽曲”a lot”をリストの先頭に持ってきました。Apple MusicのプレイリストThe A-List: Hip-Hopも”a lot”を先頭にしています。

 

 

 このような流れから、今週”a lot”はストリーミングやDLを伸ばしました。Hot 100では26位→12位と順位を伸ばし、”Bank Account”で記録したキャリア最高位と並びました。(客演は除く)

 

 このような活動の甲斐もあってか、先日21 Savageは釈放されたようです!

 

―10 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

 スーパーボウルのハーフタイムショーを務めたMaroon 5。彼らの“Girls Like You”は10位をキープし、トップ10滞在が33週目に。これは2017年の”Shape of You”と並んで歴代最長タイの記録です。

 無難なパフォーマンスに終始したことからか、やたらと評判の悪い彼らのパフォーマンスですが、(参考:「ハーフタイムショー」はなぜ物議を醸した? Maroon 5出演背景からパフォーマンスまで解説 - Real Sound|リアルサウンド

 DLやストリーミングでは一定の伸びが見られました。(特にDLはよく伸びています)その結果、トップ10に残ることができました。しかし来週はAriana Grandeの曲に押し出される形でトップ10から外れそうです。(おそらく今週がトップ10ラストの週)

 “She Will Be Loved”や”Sugar”も一定のDLをこの週記録しましたが、Hot 100再登場とはなりませんでした。これらの曲はルール上50位以上に登場する必要があるが、そうでなくてもDLが不足している印象です。(=100位圏内にも登場していたか微妙)ストリーミングではあまりポイントを稼げていません。

 ほか彼らのデビュー作“Songs About Jane”がアルバムチャートで98位に再登場しています。

 

参考:2017年のLady Gagaと2019年のMaroon 5

(Download はその週DLが何番目に多かったか?ということ)

Maroon 5 (2019) Download Hot 100
Girls Like You 6 10
She Will Be Loved 18 -
Sugar 29 -
Moves Like Jagger 44 -
This Love 48 -

 

Lady Gaga (2017) Download Hot 100
Million Reasons 1 4
Bad Romance 9 50
Born This Way 7 -
Poker Face 14 -
Just Dance 26 -
Telephone 39 -
The Edge Of Glory 44 -
Perfect Illusion 50 -

 →過去曲である”Bad Romance"の再登場が印象的です

 

※同じくパフォーマンスされたTravis Scottの“SICKO MODE”も少し数字を伸ばして、Hot 100で5位をキープ。これで27週目のトップ10滞在に。これに関して、先週「ラップ曲としては最長」としましたが、29週トップ10に滞在していた”Party Rock Anthem”もラップ曲としてカウントされる可能性もあり、その場合はまだラップ曲としては最長の滞在ではないので、その点を訂正いたします。(この曲はラップ系のラジオではほぼかかっていなかったようですが、歌い方はラップなので、そう捉えられる可能性もある)

 

 

△2 Marshmello & Bastille – Happier

 仮想DJ効果は絶大で、“Happier”を8位から2位に押し上げました。ラジオやストリーミングでのピークは過ぎており、ここ数週はゆるやかにポイントを落としていたこの曲でしたが、予想外の形で再注目されました。これまでのピーク(3位)を更新することにも成功しています。

 もともとのラジオの高ポイントに加え、DLやストリーミングが大きく伸びたので2位にたどり着きました。

 

※勢いよく順位を伸ばしたので、今後1位を取りそうと考えることも出来ますが、この仮想DJ効果は今週限りなので、来週以降はまたゆっくりと順位を落としていくと思われます。

 

×× Jimmie Allen – Best Shot

 カントリーシンガー、Jimmie Allenの“Best Shot”がチャートから外れました。ピークは37位、滞在は20週とHot 100初登場としては大健闘でした。

 彼は車内生活を送っていた時期もある苦労人のようです。 

Who Is Jimmie Allen? 5 Things You Need to Know

 

 

今週チャートから外れた曲 (7曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

99 Russell Dickerson – Blue Tacoma (🗻52位 /⏰19週)

97 XXXTENTACION – BAD!  (🗻16位 /⏰11週)

90 Daddy Yankee feat. Snow – Con Calma (🗻90位 /⏰1週)

89 XXXTENTACION – Sauce!  (🗻89位 /⏰1週)

86 Lauv & Troye Sivan – i’m so tired...  (🗻86位 /⏰1週)

77 Anuel AA & Karol G – Secreto (🗻68位 /⏰2週)

55 Jimmie Allen – Best Shot (🗻37位 /20週)

 

※ Karol Gの“Secreto”はチャート登場時にHot 100「初登場」という扱いでしたが、後に”Dame Tu Cosita”にもクレジットされたため、「後付け」で2曲目のHot 100入りということになりました。

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

18 Luis Fonsi – VIDA

26 Grateful Dead – Dave’s Picks, Volume 29

32 Various Artists – NOW 69

41 G Herbo – Still Swervin

45 Marshmello – Fortnite Extended Set

86 Set It Off – Midnight

97 Linda Ronstadt – Live in Hollywood

129 Within Temptation – Resist

164 Mandolin Orange – Tides Of A Teardrop

 

 

その他のアルバムチャート情報

・今週106位の、Black Panther: The Albumがアルバムチャート滞在1周年(52週)を迎える 

Maroon 5の“Songs About Jane”が96位に再登場

 

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Ariana Grande – 7 rings

・Sam Smith & Normani – Dancing With a Stranger

・Post Malone & Swae Lee – Sunflower

・Luke Combs – Beautiful Crazy

・Post Malone – Wow.

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Ariana Grande – break up with your girlfriend, i’m bored

 Ariana Grandeのアルバム収録曲全てがHot 100に登場する見込み。全てがトップ40に入る可能性もあります。(“in my head”と”make up”の2曲はトップ40に入るかどうか怪しい)

 Break up~は1位か2位に登場しそうです。これが実現すれば”7 rings”と合わせてAriana Grandeは女性アーティスト史上2人目のHot 100トップ2同時支配を成し遂げます。(客演を含むと4人目)

 

2002 Ashanti 1:Foolish 2:What’s Luv?(客演)

2005 Mariah Carey 1:We Belong Together 2:Shake It Off

2014 Iggy Azalea 1:Fancy 2:Problem(客演)

2019 Ariana Grande(???) 

 

(ちなみに“Shake It Off”といえば、Taylor Swiftは2014年の11/29に1:Blank Space 3:Shake It Offで、この記録をニアミスで逃しています)

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

Hot 100 2/9 見どころ 【J. Coleがシングルで最高位 / カントリーの新風】

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 今週のポイントはJ. Coleのシングルでの躍進、Dan + ShayやLuke Combsの活躍でしょうか!ほか”SICKO MODE"や”Girls Like You"のロングヒットなど。

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・J. Coleのシングル“MIDDLE CHILD”が4位に。自己最高位を更新

・Ella Maiの新シングル“Shot Clock”が88位に登場

・グラミー新人候補のカントリーシンガー、Luke Combsの“Beautiful Crazy”がトップ40入り。彼はデビュー以来シングルが全てトップ40入り

・Billie Eilishの”bury a friend”が集計2日ながらも74位に登場

 

・今週のトップ10

      2月9日   R D S
- 1 Ariana Grande 7 rings 19 1 1
  2 Halsey Without Me 2 4 4
  3 Post Malone & Swae Lee Sunflower 7 3 3
4 J. Cole MIDDLE CHILD - 5 2
-   5 Travis Scott SICKO MODE 8 13 5
  6 Ariana Grande thank u, next 3 10 9
  7 Panic! At the Disco High Hopes 1 6 22
  8 Marshmello & Bastille Happier 4 11 11
9 Post Malone Wow. 24 7 6
  10 Maroon 5 feat. Cardi B Girls Like You 6 22 24

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

曲の個別解説

 

☆98 Jon Pardi – Night Shift

 カントリーシンガー、Jon Pardiの“Night Shift”が98位に登場。今週カントリー系ラジオ17位の曲です。

 先週エントリーしていたFutureのアルバム曲の多くが今週Hot 100から外れたため、その空いた枠にいくつかのカントリー曲が再登場しています。(“Burn Out”、Here Tonight”、“Blue Tacoma”の3曲)

 

☆90 Daddy Yankee feat. Snow – Con Calma

 Daddy YankeeがSnow(カナダのラッパー)のヒット曲“Informer”をアレンジした”Con Calma”が90位に登場しています。“Informer”は1992年のヒット曲で、Hot 100でも首位に立っています。

 この曲は多くのDLを集めたほかラテン系ラジオでも人気があります。また、ジャケにもなっているキャラ(?)が登場するビデオもYouTubeで人気です。ビデオの再生回数が10億を超えた曲が4曲あるDaddy Yankee。この曲もいずれこのリストに載るでしょうか?

 

ビデオ再生回数10億超え曲数ランキング

 
1 7 Ozuna Criminal, Te Bote, El Farsante, Ahora Dice, Escápate Conmigo, Se Preparó, Taki Taki
2 6 Justin Bieber Sorry, Baby, What Do You Mean, Love Yourself, I'm the One, Where Are Ü Now
3 5 J Balvin Mi Gente, Ay Vamos, X, Ahora Dice, 6AM
3 5 Bruno Mars Uptown Funk, The Lazy Song, That's What I Like, Just the Way You Are, 24K Magic
3 5 Nicky Jam Te Bote, X, Hasta el Amanecer, El Perdón, El Amante
3 5 Maluma Chantaje, Vente Pa' Ca, Felices los 4, Corazón, El Perdedor
7 4 Nicki Minaj Side To Side, Bang Bang, Swalla, Hey Mama
7 4 Daddy Yankee Despacito, Andas En Mi Cabeza, Shaky Shaky, Dura
7 4 Katy Perry Roar, Dark Horse, Firework, T.G.I.F.
7 4 Taylor Swift Shake It Off, Blank Space, Bad Blood, Look What You Made Me Do
7 4 Sia Chandelier, Cheap Thrills, Dusk Till Dawn, Titanium
7 4 Shakira Chantaje, Waka Waka, La Bicicleta, La La La
7 4 Rihanna This Is What You Came For, Love the Way You Lie, Diamonds, Work

 ちなみに再生回数10億超えの曲数は現在のべ142曲です。

※”Despacito”、”Mi Gente”はいずれもオリジナルバージョンが10億超え

 

☆89 XXXTENTACION – Sauce!

 XXXTENTACIONの“Sauce!”が89位に登場。彼によるミックステープシリーズ、Members Onlyシリーズの4弾からの楽曲です。

 主にストリーミングで人気を集めてのランクイン。このミックステープは本来XXXTENTACIONが21歳の誕生日を迎えるはずだった日にリリースされました。

 

☆88 Ella Mai – Shot Clock

 Ella Maiの新シングル“Shot Clock”が88位に登場。主にHip-Hop / R&B系ラジオで人気を集めてのランクインです。ストリーミングでの人気はまだ発展途上です。YouTubeでは44位と上昇を見せるものの、Apple Musicでは120位前後、Spotifyでは圏外とまだまだ上昇の余地があります

SpotifyではElla Maiはあまり人気ではない

 

☆86 Lauv & Troye Sivan – i’m so tired...

 LauvとTroye Sivanの“i’m so tired...”が86位に登場。この曲は高いDLを記録したほか、Spotifyでも人気です。

 Lauvにとっては2曲目、Troye Sivanにとっては5曲目のHot 100登場。この二人はいずれもポップ系ラジオで人気を集めており、LauvはJulia Michaelsとの“There’s No Way”が、Troye SivanはCharli XCXとの”1999”が現在この系統でオンエア中です。(しかし両方ともまだHot 100には登場していない)

 

☆74 Billie Eilish – bury a friend

 Billie Eilishの“bury a friend”が74位に登場。リリースからわずかで2日でのチャート登場です。DLとストリーミングの両方で高い数値を記録しています。

 Billie Eilishはストリーミングで高い期待を受けており、Spotifyの直近のランキングでは11曲が200位圏内にランクインしています。昨年のヒットを受けて過去曲の再生数が伸びたことも特徴的です。Apple Musicでも現在7曲が200位圏内に入っています。

 

 

☆65 Yo Gotti feat. Lil Baby – Put A Date On It

 Yo GottiがLil Babyを迎えた“Put A Date On It”が65位に登場。リリース初日あたりは注目が薄かったものの、徐々にストリーミング再生数を伸ばしてHot 100入りを成し遂げました。

 Yo Gottiの曲は以前から人気がApple Music>>Spotifyになる傾向があり、この曲もそうなっています。Apple MusicとSpotifyは両方とも「ラップが人気」という大まかな傾向は似ていますが、それぞれで好むラッパーは微妙に違うこともあります。

 この曲に関しては、先にプレイリストに入れたのはSpotifyの方でしたが、(のちにApple Musicのプレイリストもこの曲を追加)結局Spotifyではあまり人気が出ませんでした。

 

△38 Luke Combs – Beautiful Crazy

 今年のグラミー新人候補、巨漢のカントリーシンガーLuke Combsの“Beautiful Crazy”が38位に浮上!これで彼はデビューからシングルが全てトップ40入り(計5曲)ということになりました。

 この曲はカントリー系ラジオで今週4位。1位ではない、ということまだ伸びしろがあるということでもあると思います。

 主要なポイント源は他のカントリーシンガーと同じくカントリー系のラジオですが、この曲はApple Musicでもトップ100に食い込むなどストリーミングでも健闘を見せています。

 

◇29 Dan + Shay – Tequila

 カントリーデュオDan + Shayの“Tequila”が29位に再登場!これは驚きのチャート動向です。先週私は 

昨年にHot 100から外れてしまった曲ですが、現在ポップ系のラジオに人気が飛び火しており人気をキープ。Hot Country Songsでは自身の”Speechless"を上回っており、これは”Speechless"(Hot 100で32位)よりも高いポイントを記録していることを表します。来週以降、まさかの再登場の可能性もあるかも……? 

述べたのですが、まさか次の週に再登場するとは思っていませんでした。

 21週目以降51位以下に落ちたらチャートに落ちるというルールに則り昨年末にチャートから外れた“Tequila”。この時はクリスマス曲がチャートに多くランクインしており、それらに押し出される形でチャートを外れていました。

 このルールは「今後ピークを更新しそうな見込みのある曲」には特例で適用されないのですが、この曲は当時「もう伸びない」と判定されていました。この時点から既に従来のカントリー系ラジオの他にも、アダルトポップ系やポップ系など他系統のラジオでも少しずつかかり始めており、一応ヒットの兆しはありましたが、「元のヒットを上回ることはない」と判定され特例は適用されませんでした。

 しかしここ最近はラジオでの再生数増が際立ち、もはや無視できない存在になったことから今週ついにHot 100に再登場を果たしました。今週ラジオ?位とかなり優秀な数字を残しています。そのラジオでの好調をキープし、もともとのピーク(21位)を更新できるでしょうか!

 一回チャートを外れたものの、ヒットを見込まれてHot 100再登場を果たした曲は過去にいくつかあります。Imagine Dragonsの“Demons”は再登場したのちロングヒットになり、6位まで到達しました。

 ほかKeith Urbanの”The Fighter”は浮上を見込まれて47位に再登場したものの、次の週にラジオが大きく落ちたため、特例適用からわずか1週間でチャートから外れてしまいました。この「伸びそうな曲を外すかどうか」の判断はチャートで難しい作業の一つだと思います。

 

△28 Blueface – Thotiana

 キャッシュマネー所属の新人ラッパー、Bluefaceの“Thotiana”が絶好調。66位→28位と大きく順位を伸ばし、ヒットの目安とされるトップ40まで到達しました。この曲は彼にとって初のHot 100だったので、トップ40も自身初。

 この曲はApple Music、Spotify両方での絶好調に加えて、YouTubeで公開されたYGを迎えたリミックスがヒットしたことが順位上昇の要因だと思います。

 

―5 Travis Scott – SICKO MODE

 ロングヒット中になっているTravis Scottの“SICKO MODE”。登場週から4位に登場し、今週トップ10滞在が26週に到達しました。ラップ曲としてはDrakeの”God’s Plan”と並んでトップ10滞在が最長です。ラップ曲はポップスと比べると、関連系統も含めてラジオの規模が小さいため従来はロングヒットしづらいジャンルでしたが、ストリーミングの台頭によってロングヒットしやすくなりました。

 ほか今週10位の“Girls Like You”は今週トップ10滞在が歴代で2番目に長い32週目を迎えています。この2曲はいずれも先日のスーパーボウルのハーフタイムショーで披露されており、その効果が来週のチャートに反映される見込みです。

 

※トップ10滞在週が長い曲ランキング

週数      
33 Ed Sheeran Shape of You 2017
32 LeAnn Rimes How Do I Live 1997–98
The Chainsmokers feat. Halsey Closer 2016–17
Maroon 5 feat. Cardi B Girls Like You 2018–19
31 Mark Ronson feat. Bruno Mars Uptown Funk 2014–15
30 Santana feat. Rob Thomas Smooth 1999–2000
29 LMFAO feat. Lauren Bennett and GoonRock Party Rock Anthem 2011–12
28 Jewel Foolish Games / You Were Meant for Me 1997–98
Bruno Mars That's What I Like 2017
27 Ed Sheeran Perfect 2017–18
26 Savage Garden Truly Madly Deeply 1997–98
Drake God's Plan 2018
Travis Scott Sicko Mode 2018-19

 

  YouTubeで異常な「低評価」がついている今年のハーフタイムショーですが、一定の宣伝効果はあったようで、関連楽曲がストリーミングで一定の伸びを見せいています。(例:Apple Musicでは200位付近だった“Girls Like You”がトップ100に入るなど) 

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↑低評価の多い今年のパフォーマンスのビデオ。昨年のJustin Timberlakeは4/3以上は高評価だった。(それ以前の動画にはほとんど低評価がついていないことが多い)

 

△4 J. Cole – MIDDLE CHILD

 J. Coleの“MIDDLE CHILD”がキャリア最高位の4位へ浮上!(これまでは”ATM”の6位が最高位) 先週は集計が1.5日程度でしたが、今週は7日分フルに集計されたため、大きく順位を伸ばしました。

 今週DL5位、ストリーミング2位と大きな注目を集めています。この曲はSpotifyApple Musicの両方で今週1位でしたが、YouTube再生数(この曲にビデオは無い)で”7 rings”を下回っています。

 2016年の”4 Your Eyez Only”、そして2018年の“KOD”と2つのアルバムがストリーミングで莫大な再生数を記録し、シングルチャートをも席巻。彼がシングルチャートで高い順位を記録した曲はアルバムリリース時にピークを迎えており、「アルバムの一部」として再生された曲がそのままシングル上位に入ったということが分かります。

 このようにアルバムアーティストであったJ. Coleでしたが、そのアルバムでの注目度向上もあってか、今回はシングルリリースでも成功を収めました。

 ストリーミングではシングルと非シングルの区別があまりつかないため、今後はシングルメインで活躍するアーティストよりも、多くの曲(時間)でリスナーを魅了できるアルバムアーティストの時代が来るのでは?と個人的には考えています。

 

▽× Imagine Dragons – Natural

 Imagine Dragonsの“Natural”が今週チャートから外れました。ピークは13位、チャート滞在は27週でした。悪くはないですが、以前のシングルと比較するとやや見劣りします。

 2017年のアルバム“Evolve”から、“Believer”、”Thunder”と2つのシングルがHot 100に1年間も滞在した超ロングヒットが記憶に新しいImagine Dragonsですが、今回のアルバム“Origins”からの最初のシングルはその半分程度の滞在に終わってしまいました。

 次シングル“Bad Liar”は現在オルタナティブ系やポップ系のラジオでかかり始めており、そろそろHot 100に入ってくると思います。この曲はSpotifyでも人気です。

 

今週チャートから外れた曲 (14曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Future – Call The Corner (🗻100位 /⏰1週)

99 Ariana Grande – imagine (🗻24位 /⏰5週)

98 宇多田ヒカル & Skrillex – Face My Fears (🗻98位 /⏰1週)

96 Maren Morris – GIRL (🗻96位 /⏰1週)

91 Cody Johnson – On My Way To You (🗻91位 /⏰1週)

90 Silk City & Dua Lipa – Electricity (🗻62位 /⏰10週)

83 Future – F&N (🗻83位 /⏰1週)

81 Mustard & Migos – Pure Water (🗻81位 /⏰1週)

79 Future – Rocket Ship (🗻79位 /⏰1週)

75 Future – Tempatation (🗻75位 /⏰1週)

72 Camila Cabello – Consequences (🗻51位 /⏰12週)

65 Future – Never Stop (🗻65位 /⏰1週)

57 Future – Jumpin On A Jet (🗻57位 /⏰2週)

50 Imagine Dragons – Natural (🗻13位 /27週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Backstreet Boys – DNA 🎫

5 WeezerWeezer (Teal Album) ※

14 Bring Me The Horizon – amo

18 Various Artists – XXXTENTACION Present: Members Only, IV ※

28 Boogie - Everything Is For Sale

56 Bethel Music – Vicotry: Recorded Live

62 Michael Franti & Spearhead – Stay Human, Vol. Ⅱ

78 Various Artists – Grammy Nominees 2019

99 Julia Michaels – Inner Monologue, Part 1 (EP)

139 Rival Sons – Feral Roots

 

※先週は短い集計だったアルバム (=はじめて1週間フルに集計されるのが今週のアルバム)

🎫 Backstreet Boysはセールスのかなりの割合をチケット戦略からゲット。

 

その他

・今週ラジオで伸びた曲

☆Ariana Grande - 7 rings

・benny blanco, Halsey & Khalid - Eastside

・Sam Smith & Normani - Dancing With A Stranger

・Luke Combs - Beautiful Crazy

・Post Malone - Wow.

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

Mashmello – Alone

 ゲームのフォートナイト内で「仮想」DJイベントを行ったMarshmelloの楽曲がDLやストリーミングで再注目。一番人気は現在ヒット中の“Happier”ですが、それに次ぐ人気だったのは”Alone”。来週Hot 100再登場の可能性も考えられます。

 

21 Savage – can’t leave without it

 実はイギリス出身ということが判明し、不法入国疑惑で逮捕騒動が巻き起こった21 Savage。それに伴い関連曲のストリーミングが少し伸びたので、再登場もあり得るかも。

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

2018 ドイツの年間チャートを5つのポイントで見る

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↑ドイツの年間チャートで人気だった人たち

 

 実は音楽市場規模がかなり大きい国……ドイツ。その音楽市場はイギリスを少し上回り、世界3位の規模を誇ります!

https://www.riaj.or.jp/riaj/open/open-record!file?fid=1638

 しかし言語的な問題なのか、あまり注目されていないようにも感じます。そんな「知られざる音楽市場3位の国」ドイツの2018年間シングルチャートを見ながら、傾向や特徴を探っていきたいと思います。

 おそらく、ドイツのチャートと言っても馴染みのない方が多いと思うので、まずは年間のトップ10を紹介したいと思います。 

 

1 Dynoro & Gigi D'Agostino In My Mind
2 Ed Sheeran Perfect
3 Bausa Was du Liebe nennst
4 Calvin Harris & Dua Lipa One Kiss
5 Dennis Lloyd Nevermind
6 El Profesor Bella ciao (Hugel Remix)
7 Namika feat. Black M Je ne parle pas français (Beatgees Remix)
8 Clean Bandit feat. Demi Lovato Solo
9 Marshmello & Anne-Marie FRIENDS
10 Luis Fonsi & Demi Lovato Échame la culpa

 

 ヨーロッパを中心にヒットしたダンスリミックス“In My Mind”が年間1位。それに続くのはEd Sheeran、Bausa、Calvin Harrisです。ほかDemi Lovatoが2曲でランクインしている点も目を引きます。

 この中で主に認知度が低い曲は3位、6位、7位だと思います。たしかにこれらの曲は全てドイツ語圏(ドイツ、オーストリア、スイスあたり)でしかヒットしておらず、ドイツ圏ウォッチャーでないと認知されないと思います。

 3位の“Was du Liebe nennst”はラッパーBausaの大ヒット。昨年後半からストリーミングで凄まじい人気を誇り、2017年の年間チャートでも8位に入っていた超ロングヒットです。ラップに適度なポップさも加えたいわば「ドイツ版”God’s Plan”」という感じの曲です。

 6位の“Bella Ciao”は特殊な出で立ち。もともと1943年に反ファシズムのアンセムとして歌われていたイタリアのフォークソングを、スペイン人俳優が映画でカバー。それをさらにイギリス人プロデューサーがリミックスしたものがドイツで大ヒット……という経緯でヒットしました。

 7位の“Je ne parle pas français”という曲名はフランス語で「私はフランス語を話しません」という意味。メインのドイツ出身女性シンガーNamikaのパートはドイツ語ですが、客演のフランス出身のラッパーBlack Mのパートはフランス語です。

 

 ……などがヒットしているドイツの年間チャート見て、そこから分かる5つのポイントについて書いていこうと思います。

 

ドイツの年間シングルトップ100は↓から閲覧できます。

https://www.offiziellecharts.de/charts/single-jahr/for-date-2018

 

 

※この記事を書いているのは2019年ですが、記事上では便宜上今年=2018年とします。

 

・ラッパーが人気? 多くチャートインしたのは……

 まずは年間トップ100に誰が多くの曲を送り込んだのか?を見ていこうと思います。

 

6曲 Capital Bra

5曲 Raf Camora

4曲 Marshmello

3曲 Bonez MC、J Balvin、Post Malone、Ed Sheeran、David Guetta、Dua Lipa

 

 うちCapital Bra、Raf Camora、Bonez MCはドイツ語圏で活躍するラッパーです。ドイツでもラッパーたちがヒットを連発し、USのようにラップがチャートを席巻しているのです。

 特に人気が際立つのはCapital Braです。”5 Songs in einer Nacht”で初のシングル1位を獲得した後、破竹の勢いでチャートを支配。2018年だけでなんと8曲もの首位を獲得しました!(週間1位を獲得したシングルは以下の通り)

 

・Capital Bra feat. Ufo 361 – Neymar (年間15位)

・Capital Bra feat. Juju*1 – Melodien (年間24位)

・Capital Bra – One Night Stand (年間26位)

・Capital Bra – 5 songs in einer Nacht (年間55位)

Bushido feat. Samra & Capital Bra – Für euch alle (年間79位)

・Capital Bra – Berlin lebt (年間88位)

・Capital Bra feat. Luciano & Eno – Roli Glitzer Glitzer 

・Capital Bra – Benzema 

※下2つは年末のリリースだったため、今年の年間チャートには入らず

 

 1年で8曲もシングル1位を記録するということはとても珍しくて、歴代で最多の記録だそうです。今までの最多は1年間で4曲の1位(1969年のThe Beatles、1976年のABBA)だったので、今回の記録の凄さ、または時代の変化が伺えます。

 またCapital Braはこの1年間で、累計1位シングル数でも歴代3位(タイ)に躍り出ています。彼よりも1位曲数が多いのは、これもまたThe Beatles(12曲)とABBA(9曲)です。

 このように2018年、輝かしい記録を多く打ち立てたCapital Bra。しかしそれと同時に注目したいのは年間チャートでの順位です。Capital Braは週間シングル1位を連発する大人気アクトながらも、年間チャートではトップ10に入りませんでした。

 これらの1位シングルは全てSpotifyでは首位になった一方、iTunesでは逆に一つも首位になっていません。ストリーミングでの人気と比べるとDLが少し足りないのです。このポイントの偏りによってストリーミングの流行変化の早さの影響をもろに受けて、ピークの勢いをあまり保てないのかもしれません。(つまりストリーミングリスナー以外の間ではあまりヒットしていない可能性がある、ということ)来年以降はこの傾向が改善されるのか?にも注目です。

 同じく今年活躍したラッパー、Raf CamoraとBonez MCも今年複数の1位シングルを獲得(“Kokain”、”500 PS”)この2組はよくタッグを組むことが多く、この2曲はいずれも2組のタッグ曲です。

 ほか上記の「年間チャートに多く送り込んだ~」には入っていませんが、Capital Braのレーベルメイトで、日本愛を感じる名前のラッパーBushidoや、“Magisch”が年間11いのヒットとなったOlexsh、Instagramでのスターからラップに転身するというCardi B風キャリアを持ちながらも、Nicki Minajを連想させるフレーズを多く曲に挟む女性ラッパーLoredanaなど、多種多様なスターが台頭しています。

 

 ラップに関して、もう一つの注目ポイントがあります。それは出自がそれぞれ多種多様ということです。今年大活躍のCapital Braの生まれはドイツではなく、ロシアです。後にドイツに移住しています(あとなぜか“Neymar”、”Benzema”とドイツ代表ではない選手を曲名にする)

 Raf Camoraもドイツではなく、オーストリアのラッパーです。ほか今回紹介したLoredanaもスイス出身です。ドイツは他の近隣各国も巻き込んだ「一大ラップ拠点」なのかもしれません。

 

 

・ラップは地元、ポップスは輸入

 

 今年の年間シングルトップ100曲のジャンル別内訳を見ると、ラップが34曲、ダンスが28曲、ポップが27曲、ロックが6曲、ラテン5曲でした。様々なジャンルが人気です。※ジャンル分けはビルボード準拠です。*2

(比較:アメリカだと ラップ/R&B:50、ポップ:28、カントリー:9、ロック:5、ダンス:4、ラテン:4 でした)

 

 それらをジャンル別にドイツ語圏発のヒット or グローバルヒットかで区別すると……*3

 

ラップ:ドイツ圏23、グローバル11

ポップ:ドイツ圏9、グローバル17

ダンス:ドイツ圏5、グローバル23

ロック:ドイツ圏0、グローバル6

ラテン:ドイツ圏0、グローバル5

 

 ジャンルごとに違いが出ました。ラップのみではドイツが有利ですが、他のジャンルではグローバルヒットのほうが多いです。全体の比率はドイツ圏:37、グローバル:63です。

 このことから、ドイツの傾向をざっくり言うと「ラップは地元、ポップスは輸入」となると思います。ちなみに、歴史を紐解くと歴代の1位シングルの言語別割合は以下のようになるようです。(ウィキペディア情報)

英語       :482曲

ドイツ語 :207曲

歌なし    :17曲

スペイン語:9曲

フランス語:7曲

イタリア語:5曲

ポルトガル語:2曲

韓国語、ヘブライ語ルーマニア語:1曲

(参考: List of number-one hits (Germany) - Wikipedia) 

 

 どうやら、以前からグローバルヒットが優勢な流れは続いていたようです。フランス語、イタリア語など少し珍しい言語の曲も多く1位を取っているのは特徴的ですね。今後もこのグローバルヒット・英語曲有利の傾向が続くのか、それともラップ台頭でドイツ語曲が勢力を伸ばすのかに注目です。

 

・EDM人気健在!

 上の項目のジャンル別割合で気づいた方も多いかと思いますが、ドイツでは非常にダンス系の人気が高いようです。

 今年の年間1位はリトアニア人DJのDynoroによるGigi D’Agostinoのダンス名曲アレンジ“In My Mind”。ほか個人に目を向けるとMarshmelloが4曲、David Guettaが3曲と多くの曲を年間チャートに送り込んでいます。

 アメリカでは今年4曲しかEDMが年間チャートにランクインしなかったことを考えるとドイツにおけるダンス系の人気は際立つと思います。

 ダンスヒットはグローバル圏からの流入が多いですが、一部ドイツ出身のDJも活躍しています。その中でも活躍度が高いのはRobin SchulzとFelix Jaehnの2名です。

 二人ともブレイクしたきっかけはリミックスです。Robin SchulzはMr. Probzの“Waves”、Felix JaehnはOMIの”Cheerleader”をリミックスし、世界的な大ヒットに導いたことから地元ドイツでの存在感が急浮上。ヒットを連発するようになりました。

 特にRobin Schulzのここ数年の活躍は目を見張る者があり、ブレイク以降(2014年~)で9曲のトップ10シングルを輩出しています。

 Felix Jaehnもトップ10シングル数は4つとRobin Schulzほどではないですがヒットをいくつか生み出しています。ちなみに今年年間チャートに入った“Genie”は週間のピークは40位でした。(ロングヒットだったため、年間チャートに入ったとみられる)

 

・意外なラテン

 トップ10の中で個人的に一番サプライズだったのは10位のLuis Fonsi、Demi Lovatoによる“Échame La Culpa”でした。世界的のほぼ全てでヒットだった”Despacito”とは違い、主に「ラテン圏の」大ヒットだったこの曲が、(とはいってもYouTubeの再生数は17.5億程度)ラテンとは縁の薄そうなドイツでここまでヒットしたということが意外だったのです。

 J Balvinも大活躍でした。Nicky Jamとの”X"、Cardi B+Bad Bunnyとの”I Like It"*4、そして昨年のヒット”Mi Gente"の3曲が年間チャートに入っています!

 今年ドイツの年間チャートには5つのラテン曲がランクイン。これはラテン系移民の多いアメリカの年間チャートでの4曲を上回っています。

 これは、アメリカと同様にドイツでもラテン系の移民が多いということでしょうか?Wikipedia情報で恐縮ですが、ドイツの移民で最も多いのはロシア系でした。次いでポーランド、トルコ、ルーマニア……と続いていきます。スペイン語系の最大手国スペインの移民数は全体で26番目でした。つまり、このラテンヒットは「ラテン系の住民が持ち込んだ……」ということではないと考えられるのです。

Immigration to Germany - Wikipedia

 ドイツにおけるラテン系ヒットは、ドイツとラテンの結びつきの強さを示すものというよりは、世界的に流行する外部の音楽を積極的に取り入れるドイツのリスナーの性質のようなものを示していると思いました。

(2010年代の年間トップ10一覧を末尾に載せましたが、そこでも流入の多さが分かると思います)

 

 

・イギリスからの流入が多い?

 ドイツは地理的にヨーロッパ中部に位置しているからか、他の地域の影響を受けることもあるようです。今年の年間チャートで一部感じられたのはイギリスからの影響です。

 それを特に感じるのはRamzの“Barking”です。先の項目でラップは地元~とは言ったものの、いくつかアメリカ(圏)からの流入はありました。アメリカ方面のラップが他国でヒットする現象は別に珍しいものではなく、他の国でも見られます。最も影響力のある音楽市場のアメリカだからこそ成し得たことなのかもしれません。

 しかし、イギリスのラップが海外でヒットするのは珍しいです。アメリカ圏以外のラップは基本的に地産地消で、その人気が海外に飛火するのはレアです。同じ英語圏のイギリス→アメリカという人気の飛び火パターンはほとんど見られません。

 この“Barking”はドイツで年間チャート30位にランクイン。これはイギリスの年間チャートと同じ順位で、この曲はイギリスと同等のヒットをドイツで記録したということが分かります。さらにSpotifyのランキングでは、地元イギリスで成し遂げられなかった週間再生数1位をドイツで成し遂げています!

 地産地消が多いラップですが、ドイツにおけるUKラップの受容は今後も見られるのでしょうか?また逆にドイツ語のラップが海外でヒットする可能性があるのか?ということにも注目したいです。

 

 ほか……イギリスの年間チャート振り返りでも説明したGeroge Ezraにもこの現象が見られます。George Ezraのファーストシングル“Paradise”はイギリスで大ヒットの割に他の国でほとんど人気が出なかったのですが、ドイツではしっかりと年間83位に入っています。(次シングル”Shotgun”は比較的広い地域でヒットした。ドイツでも年間66位)

 

 

・過去のトップ10

 さらにドイツのチャートの傾向をつかむために、2018 – 2010年の年間トップ10を表にしました。(客演等は簡易化して表示しています)

 

  2018 2017 2016
1 Dynoro / In My Mind Ed Sheeran / Shape of You Alan Walker / Faded
2 Ed Sheeran / Perfect Luis Fonsi / Despacito Stereoact / Die immer lacht
3 Bausa / Was du Liebe nennst Chainsmokers / Something Just Like This Sia / Cheap Thrills
4 Calvin Harris / One Kiss Imagine Dragons / Thunder Imany / Don't Be So Shy
5 Dennis Lloyd / Nevermind Burak Yeter / Tuesday Drake / One Dance
6 El Profesor / Bella ciao Axwell ∧ Ingrosso / More Than You Know Kungs / This Girl
7 Namika / Je ne parle pas français Robin Schulz / OK Chainsmokers / Don't Let Me Down
8 Clean Bandit / Solo Bausa / Was du Liebe nennst twenty one pilots / Stressed Out
9 Marshmello / FRIENDS French Montana / Unforgettable Rag'n' Bone Man / Human
10 Luis Fonsi / Échame la culpa Ed Sheeran / Galway Girl Justin Timberlake / Can't Stop the Feeling!

 

  2015 2014 2013
1 Omi / Cheerleader Helene Fischer / Atemlos durch die Nacht Avicii / Wake Me Up
2 Lost Frequencies / Are You With Me Pharrell / Happy Robin Thicke / Blurred Lines
3 Felix Jaehn / Ain't Nobody Mr. Probz / Waves will.i.am / Scream & Shout
4 Ellie Goulding / Love Me Like You Dou Andreas Bourani / Auf uns Daft Punk / Get Lucky
5 Major Lazer / Lean On Mark Foster / Au revoir Passenger / Let Her Go
6 Sido / Astronaut Lilly Wood & The Prick / Prayer In C Macklemore / Can't Hold Us
7 Adele / Hello Clean Bandit / Rather Be Macklemore / Thrift Shop
8 Robin Schulz / Sugar Ed Sheeran / I See Fire Capital Cities / Safe And Sound
9 Wiz Khalifa / See You Again Cro / Traum Imagine Dragons / Radioactive
10 Kygo / Firestone One Republic / Love Runs Out Naughty Boy / La La La

 

  2012 2011 2010
1 Michel Teló / Ai se eu te pego! Jennifer Lopez / On The Floor Israel IZ Kamakawiwo'ole / Over The Rainbow
2 Die Toten Hosen / Tage wie diese Alexandra Stan / Mr. Saxobeat Shakira / Waka Waka
3 Lykke Li / I Follow Rivers Bruno Mars / Grenade Lena Meyer-Landrut / Satellite
4 Gotye / Somebody That I Used To Know Adele / Rolling in the Deep Unheilig / Geboren um zu leben
5 Asaf Avidan / One Day Pietro Lombardi / Call My Name Yolanda Be Cool / We No Speak Americano
6 Carly Rae Jepsen / Call Me Maybe Marlon Roudette / New Age K'naan / Wavin' Flag
7 Rihanna / Diamonds Snoop Dogg / Sweat Stromae / Alors on danse
8 Psy / Gangnam Style LMFAO / Party Rock Anthem Hurts / Wonderful Life
9 Loreen / Euphoria Pitbull / Give Me Everything Keri Hilson / I Like
10 Olly Murs / Heart Skips A Beat Tim Bendzko / Nur noch kurz die Welt retten Kesha / Tik Tok

 

 こう見ると、他国からの輸入が多い印象があります。特に異質なのは2012年。トップ10の曲のアーティストの出身地を分類すると、スウェーデンが2、ブラジル、ドイツ、オーストラリア、カナダ、バルバドス、韓国、イギリスとかなり割れています。アメリカ人がトップ10に不在というのもなかなか珍しいです。

 この中で1位を獲得したのはブラジル出身のシンガーMichel Telóによる、”Ai se eu te pego!”。この曲は当時ラテン圏を中心に大ヒットでしたが、ラテン圏ではないドイツでも1位になっていたとは意外です。

 ちなみにUSではラテン系ラジオでヒットし、Hot 100にエントリーはしましたが、上位進出はなりませんでした。

 

 こうしてドイツのチャートを見ると、ドイツのポピュラー音楽環境は世界有数の「人種のるつぼ」なのかもしれません。

 

 

 

・関連記事

 

 

 

*1:ドイツの女性ラッパー

*2:判定基準で珍しいのはAnne-MarieとMarshmelloの“FRIENDS”がダンスではないことでしょうか。Anne-Marieがメインと判定されたからなのか、この曲はビルボードのEDM Songsに入っていません。

*3:一部判別が難しいものもあります。例えばロシア生まれドイツ育ち、現在は拠点がアメリカのZeddなど。しかしよくドイツ出身と紹介されているのでドイツ圏発という扱いにしました。もうひとりはドイツ系スペイン人のラテンシンガーÀlvaro Soler。Zeddとは逆に現在はドイツでの活動がメインのようですが、スペインの色を強く出したスペイン語シングルが主体なので、これはグローバル扱いにしました

*4:この曲はCardi Bメインなので、ラテン曲ではなくラップでカウントしています

Hot 100 2/2 見どころ 【宇多田ヒカル初のHot 100入り + “7 rings”の首位デビュー】

 

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こんばんは!今週の見どころは宇多田ヒカルSkrillexの”Face My Fears"がHot 100に登場したこと!そしてAriana Grandeの"7 rings"首位デビューなどです!

 

☆今週のHot 100 ショートハイライト

・Ariana Grandeの”7 rings”が首位で登場!今週8530万ストリームを記録

・J. Coleの“MIDDLE CHILD”が集計約1日ながらも26位に登場。来週はトップ10入り濃厚

・Logicの新曲“Keanu Reeves”が38位に登場

・Futureがアルバム1位、8曲がHot 100入り

宇多田ヒカルSkrillexの“Face My Fears”が98位に登場。史上11曲目の日本人Hot 100入り

 

・今週のトップ10

      1月26日   R D S
1 Ariana Grande 7 rings 39 1 1
  2 Halsey Without Me 2 3 3
  3 Post Malone & Swae Lee Sunflower 7 2 2
  4 Ariana Grande thank u, next 3 7 5
  5 Travis Scott SICKO MODE 9 14 4
  6 Panic! At the Disco High Hopes 1 5 20
  7 Marshmello & Bastille Happier 4 9 10
8 Post Malone Wow. 30 8 6
  9 Maroon 5 feat. Cardi B Girls Like You 5 23 23
  10 Lil Baby & Gunna Drip Too Hard 22 - 7

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆98 宇多田ヒカル & Skrillex – Face My Fears

 今年発売のゲーム、キングダムハーツの新作のオープニングテーマでもある宇多田ヒカルSkrillexの“Face My Fears”が98位にランクイン。主にダウンロードで数字を稼いでいます。宇多田ヒカルはキャリア初のHot 100入りで、日本人史上11曲目のHot 100入りです。

 

歴代の日本人Hot 100入り

(🗻ピーク順位・⏰チャート滞在週数)

1963年 坂本九Sukiyaki (🗻1位・⏰14週)

1963年 坂本九 – China Nights (🗻58位・⏰3週)

1979年 ピンクレディー – Kiss in the Dark (🗻37位・⏰11週)

1980年 YMO – Computer Game Theme from The Circus (🗻60位・⏰9週)

1981年 横倉裕 feat. Patti Austin – Love Light (🗻81位・⏰3週)

1981年 オノ・ヨーコ – Walking On Thin Ice  (🗻58位・⏰10週)

1990年 松田聖子 feat. Donnie Wahlberg – The Right Combination (🗻54位・⏰13週)

2016年 ピコ太郎 – PPAP (🗻77位・⏰4週)

2018年 Sofi Tukker feat. Nervo, The Knocks & 植野有砂 – Best Friend (🗻81位・⏰5週)

2018年 John & Yoko/The Plastic Ono Band With The Harlem Community Choir - Happy Xmas (War Is Over) (🗻42位・⏰2週) 

2019年 宇多田ヒカル & Skrillex - Face My Fears (🗻98位・⏰1週)

*1

 

 宇多田ヒカルは最近の作品(「Fantôme」や「初恋」)でもiTunes上位入りが報じられてきましたが、これまではHot 100エントリーやアルバムチャート入りはなりませんでした。

 今回Hot 100にエントリーできたのは、曲を金曜日にリリースしたことが大きかったと思います。現在各国では音楽のリリース日を概ね金曜日に設定しており、チャートもそれに合わせた金曜日~木曜日のサイクルにしています。

 一方、日本は水曜日リリースのサイクルなので、宇多田ヒカルもそれに合わせてこれまでは水曜日リリースでした。水曜日リリースだと一番注目が集まるリリース直後の週に水・木の2日分しか集計されないので海外のチャートでは不利になってしまいます。

 もちろんSkrillexキングダムハーツの宣伝効果もあると思います。宇多田ヒカルの昨年のシングル「誓い」はiTunesで瞬間最高40位程度まで到達しましたが、この“Face My Fears”は一時期iTunesでは12位まで到達。宇多田ヒカルiTunesのアルバムチャートではかなり高い順位(2位)まで到達したことがありますが、シングルの方でここまで上位に入るのは初です。

 

 そして地味に生きたのはストリーミングです。この曲は今週ダウンロードが18位だったのですが、「DLが18位」なだけではHot 100に入るか微妙な標準なのです。例えば2週間前のBackstreet Boysの“No Place”はDL11位ながらもHot 100入りを逃しています。(現在はストリーミングの隆盛によって、「DL11位」といえでもそこまで数字を稼げていないというケースもある)

 つまり、DLだけでは「当落線上」にいたこの曲ですが、Hot 100に入れたということはストリーミングの指数もある程度稼いだということが推測されます。(つまり、リリース後ストリーミングへの即開放がチャート入りに寄与した、ということです)*2

 

 今週ポイント源となったDLの数字が落ちており、またストリーミングも目立った数字を残していないため来週はHot 100から落ちてしまうでしょう。

 

※追記 ビルボードがこのチャート入りについて個別記事を作成しています。この1週間で1万ダウンロードを記録していたようです。

 

※この曲の英語バージョンは台湾とマレーシアのSpotifyランキングにも登場。宇多田ヒカルがマレーシアのSpotifyランキングに登場するのは今回が初です。

 

☆96 Maren Morris – GIRL

 Maren Morrisの“GIRL”が96位に登場。この曲はダウンロードで人気(10位)です。Zedd、Greyとの”The Middle”や、2017年のフェスでの銃乱射事件に際してリリースされたVince Gillとの“Dear Hate”などのコラボシングル以外では、デビューアルバム”Hero”以降初のシングルです。

 

☆91 Cody Johnson – On My Way To You

 カントリーシンガーCody Johnsonの“On My Way To You”が91位に登場。彼はこの週新作をリリースし、アルバムチャートの9位に登場しています。

 このシングルもそのアルバム効果によるダウンロード増が生きてのHot 100入りだと思われます。ほかカントリー系ラジオチャートにもランクインしています。

 

☆81 Mustard & Migos – Pure Water

 Mustard(DJ Mustardとも言う)とMigosによるシングル“Pure Water”が81位に登場。この曲はストリーミングで人気のほか、そしてDLでも一定の注目を集めました。

 かつてはTygaの“Rack City”やRihannaの”Needed Me”、そして最近ではLil Dickyの“Freaky Friday”やElla Maiの”Boo’d Up”など、長くラップやR&Bの裏方プロデューサーを務めているMustardですが、2013年頃から自身の名義でのシングルリリースを始めています。

 これまでTravis Scott、Nick Jonasなどを迎えたシングルをリリースして来ましたが、自身メインの曲がHot 100にエントリーするのはこれが初です。 (客演でのHot 100エントリー歴はあり :Ty Dolla $ignの“Or Nah”とwill.i.amの”Feelin’ Myself”)

 

☆71 YNW Melly feat. Kanye West – Mixed Personalities

 フロリダの新人ラッパー、YNW Mellyが2枚目のミックステープ、“We All Shine”をリリース。アルバムチャート27位に登場しています。

 その作品に収録されているKanye Westを迎えた“Mixed Personalities”が71位にランクインしました。リリース初日頃の注目度は低めでしたが、徐々に注目を集めました。

 彼は今週“Murder On My Mind”も95位でHot 100に登場していますが、このシングルはこのアルバムからではなく、昨年8月のミックステープ”I Am You”からの曲です。このミックステープも今週アルバムチャートの138位に入っています。

 

☆66 Anuel AA & Karol G – Secreto

 プエルトリコ出身のAnuel AA、そしてコロンビア出身のKarol Gの「ラテンカップル」によるシングル“Secreto”が66位に登場しています。Anuel AAは4曲目、Karol Gは初のHot 100入りです。この曲は主にストリーミング、特にYouTubeで人気です。

 Karol Gは今週がHot 100初登場ですが、これまで10曲がYouTubeで再生数1億を超えており、ラテン界では人気アーティストとしての地位を確立しています。(この曲のビデオもリリースから約2週間で1.4億再生を記録しています)

 

☆47 Future feat. Travis Scott – First Off

 Futureが自身7枚目のスタジオアルバムをリリース。純セールスだけならば4位ながらも、ストリーミングを大きく稼ぎアルバムチャート1位を獲得。これで彼はキャリア通算1位アルバム数を6まで伸ばしています。

 そのアルバムからは8曲がHot 100入り。一番順位が高かったのは先行シングルの“Crushed Up”で43位。それに次ぐのはTravis Scottを迎えた”First Off”の47位でした。

 

☆40 Pardison Fontaine feat. Cardi B – Backin’ It Up

 Pardison FontaineとCardi Bによる“Backin’ It Up”が40位に浮上。Pardison Fontaineにとってキャリア初のトップ40になりました。Cardi BにとってはHot 100初エントリーから約1.5年で18曲目のトップ40です。

 この曲は主にラップ系ラジオやストリーミングで人気。Apple MusicでYouTubeでは人気がありますが、Spotifyでは現在200位圏外です。(ピークは184位)

 Apple Musicやラップ系のラジオで人気ながらもSpotifyでは関心がかなり薄いシングルというと、2017年のYo GottiとNicki Minajの“Rake It Up”が連想されます。

 

☆38 Logic – Keanu Reeves

 Logicの“Keanu Reeves”が38位に登場!DL(今週6位)、ストリーミングの両方が高かったことから、デビュー週からトップ40圏内に登場しました。Logicにとって5曲目のトップ40です。

 

△29 City Girls feat. Cardi B – Twerk

 City GirlsとCardi Bの“Twerk”が29位へと浮上しました。先週はビデオが約1.5日分しか集計*3されていませんでしたが、そのビデオの効果が1週間フルに反映されるようになったため順位が伸びました。今週YouTubeの再生数が4位です。この曲は他にもラップ系ラジオでも調子を上げています。

 

 今週客演の曲が2つトップ40入りを果たしたCardi Bですが、既存の曲も好調。Maroon 5との“Girls Like You”は今週も9位でトップ10滞在数週を31まで伸ばしています。(現在歴代4番目タイの長さ。これより長いのはShape of You=33週、Closer=32週、How Do I Live=32週の3つ)

 ほか自身の“Money”は今週13位で、トップ10入りを虎視眈々と狙っています。”I Like It”も今週42週目でロングヒット中。

 

☆26 J. Cole – MIDDLE CHILD

 J. Coleの“MIDDLE CHILD”が集計約1日分ながらも26位にランクイン!そのリリース日にはiTunesSpotifyApple Musicの全てで1位に立つなど圧倒的な成績を記録していました。

 7日分フルで集計される来週はトップ10入りが確実です。今週に入ってからもストリーミングでは依然1位をキープしていますが、iTunesでの順位が落ちてきたこと、またラジオのポイントがほとんど無いことなどからHot 100首位になる可能性は低そうです。2位~4位あたりでしょうか。

 

☆1 Ariana Grande – 7 rings

 Ariana Grandeの”7 rings”が首位デビュー!ビデオを同時にリリースしたこともあって、今週8350万ストリームを記録しています。これは自身の“thank u, next”=9380万再生に次いで女性アーティストでは2番目に高い数字です。この曲は今週YouTubeSpotifyApple Musicの全てで1位になっています。

 ほかダウンロードは今週首位、ラジオも1週目ながらも既に39位(ラジオの数字は一気には伸びづらい)とストリーミング以外の指数でも絶好調です。

 

 “thank u, next”が3週間前に失った首位の座を”7 rings”で奪還したAriana Grande。女性アーティストがここまで素早く失った首位の座を自身の別の曲で奪還するのは2010年のRihannaの“What’s My Name”→”Only Girl”以来だそうです。*4

 

 ほか”Ring”がつく曲がHot 100首位を獲得するのはBeyoncéのSingle Ladies (Put a Ring on It)以来史上4曲目のことのようです。そして、”7”がつく首位曲はElton Johnの“Candle in the Wind 1997”以来2回目らしいです。

 

×× Luke Combs – She Got The Best Of Me

 今年のグラミー新人賞ノミネートにも含まれている巨漢カントリーシンガー、Luke Combsの“She Got The Best Of Me”が今週チャートから外れました。ピーク31位、チャート滞在23週とカントリー曲としては上々の成績です。

 彼はDan + ShayやSam Huntのようにポップ系リスナーにも届く大ヒットがあるわけではありませんが、カントリーのリスナーでは絶大な人気を確立。デビュー以降のシングルはこれまで全てHot 100でトップ40入りを果たしており、現行シングル“Beautiful Crazy”もトップ40入り間近です。

 そして彼の昨年のアルバム”This One’s For You Too”は昨年21番目にストリーミングが多いアルバムだったようです。(BuzzAngleのレポートに記載) これはカントリーシンガーでは1番多いストリーミングでした。

 

 

今週チャートから外れた曲 (17曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

99 Rich The Kid – Splashin (🗻99位 /⏰1週)

98 Midland – Burn Out (🗻92位 /⏰3週)

97 Billie Eilish – Ocean Eyes (🗻96位 /⏰5週)

96 Billie Eilish – idontwannabeyouanymore (🗻96位 /⏰3週)

95 Brett Young – Here Tonight (🗻60位 /⏰6週)

94 Nicki Minaj feat. Lil Wayne – Good Form (🗻60位 /⏰6週)

93 21 Savage (feat. Lil Baby & Gunna) – can’t leave without it (🗻58位 /⏰4週)

92 Lil Baby – Close Friends (🗻28位 /⏰14週)

91 Russell Dickerson – Blue Tacoma (🗻52位 /⏰18週)

90 YoungBoy Never Broke Again – Valuable Pain (🗻87位 /⏰2週)

89 Lil Pump – Butterfly Doors (🗻81位 /⏰2週)

88 Metro Boomin feat. Gunna – Space Cadet (🗻51位 /⏰6週)

85 XXXTENTACION – BAD!  (🗻16位 /⏰10週)

84 Ski Mask The Slimp God feat. Juice WRLD – Nuketown (🗻63位 /⏰6週)

83 Future & Juice WRLD – Fine China (🗻26位 /⏰13週)

79 Alec Benjamin feat. Alessia Cara – Let Me Down Slowly (🗻79位 /⏰1週)

38 Luke Combs – She Got The Best Of Me (🗻31位 /23週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Future – The WIZRD

2 Maggie Rogers – Heard It In A Past Life 🎫

9 Cody Johnson – Ain’t Nothin’ To It

21 James Blake – Assume Form

23 Various Artists – XXXTENTACION Presents: The Members Only, IV ※2日だけ

27 YNW Melly – We All Shine

41 Switchfoot – Native Tongue

47 WeezerWeezer (Teal Album) ※1日だけ

49 Guster – Look Alive

53 Kidz Bop Kids – Kidz Bop 39

73 Papa Roach – Who Do You Trust?

82 dodie – Human

94 Sharon Van Etten – Remind Me Tomorrow

114 Toro y Moi – Outer Peace

176 Malibu Ken – Malibu Ken

192 Deerhunter – Why Hasn’t Everything Already Disappeared?

 

 先週までとは違いリリースが増えました。注目は2位のMaggie Rogers。総売上4.9万のうち、多く(3.7万)は「チケット付きアルバム」を含むセールスから来ていますが、残りの1.2万程度はストリーミングから、なので意外とストリーミングでも健闘していることが分かります。

 アルバム21位のJames Blakeは収録曲の“Mile High”がシングル122位相当(=Bubbling Under22位)を記録しています。

 

 

その他

 

・今週ラジオが伸びた曲

Gesaffelstein & The Weeknd – Lost in the Fire

Ariana Grande – 7 rings

Sam Smith & Normani – Dancing With A Stranger

Post Malone – Wow.

Benny blanco, Halsey & Khalid - Eastside

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

Blueface – Bleed It

 現在“Thotiana”がHot 100で順位を伸ばしているラッパーの次なるヒット候補。現在Hot 100に接近中。

 

Dan + Shay - Tequila

 昨年にHot 100から外れてしまった曲ですが、現在ポップ系のラジオに人気が飛び火しており人気をキープ。Hot Country Songsでは自身の”Speechless"を上回っており、これは”Speechless"(Hot 100で32位)よりも高いポイントを記録していることを表します。来週以降、まさかの再登場の可能性もあるかも……?

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

*1:ピコ太郎以前のチャート入りは、全米デビューした主な日本人の現状! を参照しています

*2:ただし、アメリカと日本では微妙にストリーミング開放量が違うらしい:アメリカの方がJ-Popストリーミング解禁が多いので、アメリカでも今までのシングルもストリーミング開放されていなかったか?は分かりません。 ストリーミングへの即開放がこの曲のHot 100入りに寄与したのは間違いありませんが、即開放がアメリカで「新要素」だったかは不明です

*3:先週はビデオ集計が短いことに気づいていませんでした💦

*4:自身がメインの曲のみカウント

BuzzAngleがまとめた、US音楽消費動向に関するレポートから分かる10のポイント

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BuzzAngle Music 2018 Report on Music Consumption | BuzzAngle Music

(↑のページ下部にPDFのリンクがあります)

 

 

 BuzzAngleというサイトがUSの音楽消費動向に関するレポートの2018年版をリリースしました。このレポートは、○○が何回再生された、▽▽が?%である……などビルボードのチャートよりも「実数」が重視されています。

 ビルボードのチャートが「どの曲・アルバムが人気か?」ということを理解するのに役立つのに対して、こちらは「どのように音楽が消費されているか?」ということを理解するのに役立つと思います。

 この役割の違いから、ビルボードの年間チャートでは見られなかったような一面を見ることができると考え、このレポートから見えるポイントを10個まとめてみました。

※便宜上、今年=2018年と表記しています

 

このレポートは以下の方法で調査されています。(P6に記載)

・調査期間は2017/12/29~2018/12/27

・1アルバム=10シングルセールス=1500ストリーミングで計算

(つまりソングは、1ソング=150ストリームで計算)

・Tidalは2017年の7月頃から再生数を公表しなくなった

 

 このレポートから読み取れるポイントを10個抜き出し、まとめました。参照するページをそれぞれの項目で示したので、教科書を読みながら授業を聞くような感覚で?レポートを見ながら記事を読むとわかりやすいと思います。

 

1 セールス減少、ストリーミング増加、全体的な数字は伸びる という傾向が続く

→ P8

 ページ8の「消費」の項目では、全体の音楽消費のうち何がどれくらい消費されているのかということをまとめています。全体のアルバム消費は16.2%増、全体のシングル消費は27.4%増と、ともに伸びを見せており昨年よりも音楽消費市場が伸びているということが分かります。

 その伸びを牽引したのはストリーミング。今年35.4%増と大幅な伸びを見せています。その中でも音源のストリーミングは41.8%増と特に高い上昇率を記録しています。ほか、ビデオのストリーミングも24.3%増でした。

 一方、セールスは数字を落としています。特に数字を落としているのはシングルのセールスで、28.8%も減少しています。アルバムのセールスも18.2%減ですが、シングルの減少ペースよりは緩やかです。

 ちなみにアルバムのセールスのうち、ダウンロードとCDは昨年比で減少していますが、カセットとヴァイナルは昨年よりも増加しています。(それでも実物売上*1=Physical Sale 全体のセールスは落ちています。CDが占める割合が大きいからです)

 

 セールス減少、ストリーミング増加、全体的な数字は伸びるという傾向は2015年から見られています。この傾向は今後も続くでしょうか?

 

2 アルバム消費のうち77%はストリーミングによるもの

→ P9

 ページ9の「消費の分析」では、どの指標が全体で何%消費されているかをまとめています。ここで注目したのは「アルバム消費の割合」という項目です。

 現在アルバムの消費は、「アルバムの売上」・「収録曲のシングルセールス」・「ストリーミング」の3指標で計算されています。この指標はビルボードなどのアルバムチャートにも導入されています。(比率については記事最初に書いています)

 そしてこの3つのうち、今年は「アルバム売上」が17.3%、「収録曲のシングルセールス」は5.7%、「ストリーミング」は77.0%の割合で消費されているようです。年々セールスが下がり、ストリーミングが上昇するという流れが続いています。

 このことから現在のアルバム消費動向のうち、かなりの割合をストリーミングが占めているということが分かります。アルバムが売れたか売れないか、の判断基準の77.0%がストリーミングにある、ということも言えると思います。

 

 今週と先週、A Boogie Wit da Hoodieがセールス1000未満ながらもストリーミングで大きくポイントを稼いで2週連続でUSアルバム1位の座を獲得しています。このようにほぼストリーミングの動きのみでアルバムチャート上位にエントリーする動きは今後も加速していくでしょうか?

(参考:A Boogie Wit Da Hoodie Sold 823 Albums Last Week, Still Goes to No. 1 | Pitchfork

 

3 Drakeが今年の王。何種目で1位?

→ P36など

 今年の「トップアルバム」「トップソング」の両方を獲得して「トップアーティスト」になったDrake。その圧倒的な成績から他にも以下のランキングで首位に立っています

・Top Album By Streams

・Top Song By Audio Streams / By Video Streams *2

・Top Artist By Total Digital Consumption / By Streams

・(Hip-Hop / Rap Songs Top Song / Top Album)

・リズミック系ラジオ再生数1位

※シングルの場合は“God’s Plan”、アルバムの場合は”Scorpion”が表彰されています。

 

 と……圧倒的なストリーミングを中心に多くの部門で1位に輝いています。時代の波を巧みに乗りこなしたDrakeが今年の主役だったことは疑いがないでしょう。

 

※ちなみに、Awardsの項目でDrakeが獲得できなかった部門

・Top Alubm By Sales → The Greatest Showman

・Top Album By Vinyl Sales → Guardians of Galaxy

・Top Artist By Physical Album Sales → The Beatles

・Top Indie Album / Song / Artist → XXXTENTACION

 

4 分散が進む?「圧倒的再生」を誇る曲がやや減少

→ P11、P31-P34

 ページ11の「ハイライト」の項目には5億ストリーミングを超えた曲がそれぞれの年で何曲あるか?ということが記載されています。

 

2015:2 2016:6 2017:16 2018:9

 今年は全体でストリーミングが大きく増えたはずなのに、5億超えの特大ヒットの曲は減った、ということです。これに関する分析はページ31-34に載っています。

 

 このページではトップ50、トップ500、トップ5000……の曲が全体の消費の何%を占めているかを消費方法別に示しています。

 ここでは2017年比の変化も載っているのですが、うちアルバムセールス、シングルセールス、音源ストリーミングの3つは昨年よりも「トップの占める割合」が下がっているということが分かります。(唯一ビデオストリーミングは割合がそこまで下がっていない) つまり、各媒体で「流行の分散」が進んだということです。

 

 さらに、媒体ごとにトップ○○を占める割合を比較したのは以下の表です。トップ50、500、5000、50000の全てで音源ストリーミングの上位独占率が低いことが分かります。つまり、音源ストリーミングは他と比べて多様性があるということが言えます。

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 もう2つは、トップ50の段階で上位独占率はセールス>ビデオですが、トップ5000で独占率がビデオ>セールスになります。これはビデオのリリースされている数が限られるからでしょうか。

 

 昨年Pitchforkが、「上位10%の曲に再生数の99%が集まっている」ということを理由に、「ストリーミングのリスナーは幅広い音楽を聞くことに努めよう」という旨の記事を出しましたが、音源ストリーミングは多様性の面でほかよりも優れているようです。

 

※ちなみに「上位10%の曲に再生数の99%が集まっている」というと、「響き」はありますが、例えばSpotifyの対応曲数の上位10%はおよそ400万曲なので、これだけ莫大な曲数で99%になるのは「妥当」な気もします

 

5 全体で見ると「過去曲」が占める割合が高い

→ P26-P28

 ページ26-28にわたる項目では、どの時期の曲が多く消費されているかを分析しています。リリース8週目までの曲を「New」、8週目以降~78週目(=1.5年)までを「Recent」、78週~156(=3年)を「Catalog」、156~を「Deep Catalog」と分類し、それぞれがどのような割合で消費されているかを調査しています。

 

 シングル、アルバムともにDeep Catalogが最多でした。これは純粋にDeep Catalogに分類されるアルバムの数が圧倒的に多い、ということが理由でしょう。両方とも次いでRecentで、残りのNew・Catalogは均衡しています。

 昨年と比べると若干Deep Catalogが減少しているようです。(Songではやや新しいものを消費する傾向が強くなった)

 

 そしてページ28では消費の「方法」別にどの時期の曲がどのような割合で消費されているかを分析しています。各部門の(割合が)最小・最多は以下の通りです

 

・New 最多:アルバムのダウンロード 最小:カセット

・Recent 最多:音源ストリーミング 最小:ヴァイナル

・Catalog 最多:カセット 最小:CD

・Deep Catalog 最多:ヴァイナル 最小:音源ストリーミング

 

 物流に限りのあるカセットやヴァイナルは時期に偏りがあります。音源ストリーミングはRecent、つまり今年の話題作(8-76週)をじっくり聞く傾向にありますが、3年以上前のアルバムにはあまり着目していないようです。

 これは果たしてストリーミングユーザーの「性」なのか、それとも3年以上前のアルバムがストリーミングにあまり適応していないからなのか? そのような可能性も考えられると思います。

 

6 最も人気なジャンルはラップ。 それぞれの「得意分野」とは?

→ P21-P24

 ページ21~24にかけてはどのジャンルが人気かということを分析しています。1位はアルバム・シングルともにラップ。2位はポップ、3位ロック、4位R&B、5位ラテンと続いています。これらの順位はアルバム・シングルともに同じです。

 ページ23にはアルバムセールス、アルバムダウンロード、ヴァイナル……など消費方法を9種類に分類し、その消費方法の何%がどのジャンルから来ているのかを示しています。

 

 それぞれの消費方法でのトップは以下の通りです。

・アルバムセールス、アルバムDL、ヴァイナル → ロック

・フィジカルアルバム、CD、シングルDL → ポップ

・ストリーミング、音源ストリーミング、ビデオストリーミング → ラップ

 

※アルバムDL、フィジカルアルバム、CD、ヴァイナルは、「アルバムセールス」の一部

※音源ストリーミング、ビデオストリーミングは「ストリーミング」の一部

 

 そしてページ24ではそれぞれのジャンルがどのような媒体で消費されているか、を分析しています。先のP23は「媒体目線」でしたが、P24は「ジャンル目線」で消費を分析しています。

 ここでは全ジャンルでストリーミングが過半数超え。その中でも特にストリーミングが多いのはラテン、ラップの2種類です。ラテンはストリーミング消費の占める割合が95.2%と全ジャンルで最も多いです。それに次ぐのはラップの92.3%です。

 逆にストリーミングが占める割合が少ないのはジャズとクラシックで、この2ジャンルはストリーミングの割合が60%以下です。

 

 

7 ラッパー以外で最もストリーミングされているのは、Ariana Grande!

→ P56

 ページ56にはストリーミングのアーティストランキングが掲載されています。ストリーミングで人気のラッパーが多く名を連ねていますが、非ラッパーも一部ランクインしています。

8:Ariana Grande、10:Imagine Dragons、12:The Weeknd、13:Taylor Swift、15:Ed Sheeran、19:Chris Brown、22:Maroon 5

 

 ここで注目したいのはAriana Grandeです。夏にリリースしたアルバム“Sweetener”がストリーミングで好調だっただけではなく、その後にリリースした”thank u, next”も絶好調。年の暮れのリリースながらも短期間で一気にストリーミングを稼いでいます。(集計2ヶ月弱ながらも、Top Pop Songsの項目で9位に)

 彼女は2019年にリリースしたシングル”7 rings”でも絶好調をキープ。2月にはアルバムもリリース予定です。この勢いが続けば、来年ラッパーたちを差し置いて「最もストリーミングされたアーティスト」に輝いてもおかしくないと思います。(他のリリースとの兼ね合いもあると思いますが)来年の集計を待ちましょう。

 

8 BTSの躍進、総合アーティストランキング15位、アルバムセールス2位

→ P54,P55

 今年2回のアルバムチャート首位で脚光を浴びたBTS。アルバム・シングルのセールス、ストリーミングの数字を合算したページ54の「総合消費アーティストランキング」では15位、そしてアルバムの純セールスのみを合わせた「アルバムセールス アーティストランキング」ではなんと2位に入っています!は今年2作一気にリリースしたことも大きいのかもしれません。

 総合消費ランキングでもそのセールスの高さが生きてランクインしたのだと思われます。かといってストリーミングがとりわけ低い、というわけでもありません。(このランキングに載っているThe Beatles、Jason Aldeanの2名(組)は、ストリーミング実数値、割合ともにBTSよりも低い)

 ファンの熱意を表すセールスに加えて、ストリーミングもそれなりに高いということは一般層にもある程度浸透した、ということでもあるのでしょうか。

 

 アルバムセールスランキングで1位だったのはEminemです。Eminemは昨年末に一つ、そして今年の半ばにもう一つアルバムをリリースしたので、元の支持の強さに加えて条件の面でも有利だったのかもしれません。

 ちなみにこの「アルバムセールス アーティストランキング」ではVarious Artistsの作品は計上されていません。“The Greatest Showman”はアルバム一つでEminemBTSのアルバムセールスを上回っています。

 

9 ビデオが無くても「Video Streams」を稼ぐ曲たち

→ P52

 ページ52の「ストリーミングが多い曲」では、それぞれの音源再生・ビデオ再生、そしてそのトータル再生数が掲載されています。ここで注目したいのは“I Fall Apart”と”Yes Indeed”のビデオ再生数です。これらの曲はミュージックビデオが無いながらも一定のビデオ再生数を記録しています(ビデオがある“Better Now”のビデオ再生数よりも多い)

 これはYouTubeにある「音源」が再生されているということを意味していると思います。ビデオは作りませんでしたが、音源だけYouTubeに上がっているということです。

 「音源」だけYouTubeに上がっているというとどことない違法?な雰囲気がありますが、実はそうではなく、本人以外が上げたビデオを含めて「合法」で再生数にカウントされているのだと思います。

 YouTubeのチャートでは「楽曲ランキング」と「ビデオランキング」の2区分があります。これらの再生数を見比べると「楽曲」と「ビデオ」の再生数にそれなりの隔たりがあり、純粋なビデオ以外の場所でも再生数を記録しているということが分かります。

 それはどこなのか?というと「外部の公式音源」です。YouTubeでは以下のように、ビデオの概要欄下に「この動画の音楽」という項目がある場合があります。これらはConnect IDと称されており、権利者の「お墨付き」を表します。

 

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Post Malone – I Fall Apart (Lyrics) 🎵 - YouTube から。この動画のアカウントはPost Maloneの関係者ではない)

 

 “Girls Like You”のように、ビデオがヒットにつながることは今年も多くありましたが、逆にビデオが無くても外部の力を借りつつ「ビデオ再生」を稼ぐケースもあるようです。

 

10 「チケット付き」「グッズ付き」は弾く?独自の集計方法が一部で見られる

→ P44

 

 最後にマニアックな項目です。このレポートとビルボードでは一部集計方法が違うものが見られました。

 P44のアルバムランキングでは、それぞれの作品の総合売上、純セールス、シングルのダウンロード、ストリーミングのそれぞれの数字を見ることがきます。

 ここで注目したいのは5位の“Astroworld“の純セールス94,064という数字です。この数字は「低すぎる」のです。ビルボードはこのアルバムを初週のみで270,000枚の純セールスがあったと計上しており、それぞれの枚数に矛盾が生じているのです。

 どちらかが間違っている?……そうではなくここには「トリック」があると思います。まずTravis Scottが初週で27万枚という高い純セールスを記録したのには理由があります。

 彼はアルバムのリリースと合わせてグッズ販売を自身のサイトで実施。その何らかのグッズを購入した人には、合わせて音源をおまけで付けていたのです!この「おまけ」の音源もビルボードの集計には計上されており、ここまで数字が伸びたのです。

 ビルボードはこのことを認識しており、“Astroworld”がアルバム1位を獲得した週の解説記事では 

” The set’s sales were supported by an array of Astroworld-inspired merchandise/album bundles sold via Scott’s official website. “

と表記しています。

 2017年以降、このようにグッズに音源を付ける、ツアーチケット割引権のあるCDなど多角的なアルバム販売が際立っており、この“Astroworld”のようなケースは決して珍しくはありません。

(関連:BROCKHAMPTON、アルバム1位から3週後に圏外へ? アルバム1位の「その後」 - チャート・マニア・ラボ

 

 話を元に戻すと、BuzzAngleのアルバム純セールスがビルボードと比べて低いのは「おまけ」音源を集計に入れてはいないからだと考えられます。今年はこのような手法でセールスを伸ばしたアルバムがいくつか(Dave Matthews Bandなど)ありましたが、それらは軒並みTop Album by Salesの項目には入っていません。他のアルバムでもこの「おまけ」や「チケット付き」の分はBuzzAngleのレポートでは弾かれているようです。

 

 他にもこのレポートでは、ビルボードと集計方法が違う部分があります。このレポートでは最初に述べたように、1500ストリーム=1アルバムで計算されていますが、ビルボードでは微妙に違います。

 ビルボードも2018年6月までは同じ1500=1でしたが、ストリーミングの多様化に伴い計算方法をマイナーチェンジ。7月からは「広告付きの無料ユーザー」は3750=1、「有料ユーザー」は1250=1という2段階評価に変わりました。有料ユーザーの再生数の割合が高かったことからこれらを合わせると、ビルボードのチャートでは現在はおおよそ1325=1程度で集計されています。

 

 このような特殊な計算方法を導入しているのはビルボードくらいで、他の媒体は1500=1が多いです。

 

 あと、ほか地味なポイントではビルボードと曲のジャンル分けが若干違います。ビルボードではラテンではなかったCardi Bの“I Like It”がラテンに、向こうではEDMではなかったLauvがこちらではEDMに……あたりですかね。

 

・他の年のBuzzAngleレポート

 

2015:2015 BuzzAngle Music U.S. Industry Snapshot | BuzzAngle Music

2016:http://www.buzzanglemusic.com/wp-content/uploads/BuzzAngle-Music-2016-U.S.-Report.pdf

2017:http://www.buzzanglemusic.com/wp-content/uploads/BuzzAngle-Music-2017-US-Report.pdf

 

*1:CD、ヴァイナル、カセットなど、ダウンロードとは違って手元に残るタイプの音源

*2:Sales首位は“Perfect”なのに、AwardsのSalesの項目では”God’s Plan”が表彰されています。“Perfect”が昨年の曲だから?