チャート・マニア・ラボ

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Hot 100 3/9 見どころ 【Lady Gaga、オスカー効果で8年ぶりのHot 100首位!】

 

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 こんばんは!今週最大のトピックは”Shallow"の首位浮上!オスカー(Academy Awards)でBest Original Songsを受賞したこの曲はDLが急浮上し、Hot 100で首位となりました!

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・“Shallow”がオスカーの効果で首位浮上!DLの大きな増加に加え、ストリーミングやラジオも浮上。Lady Gagaは2011年の”Born This Way”以来4曲目のHot 100首位、Bradley Cooperは初。

・オスカーのBest Original Songを受賞した曲がHot 100で首位になるのは“Lose Yourself”以来

・Bluefaceの“Thotiana”が9位に浮上。Cardi BやYGのリミックスも

・Offsetがアルバムから5曲、Gunnaがアルバムから6曲が入る

 

・今週のトップ10

      3月9日   R D S
1 Lady Gaga & Bradley Cooper Shallow 27 1 9
2 Ariana Grande 7 rings 4 5 1
  3 Halsey Without Me 1 7 7
  4 Post Malone & Swae Lee Sunflower 8 4 5
5 J. Cole MIDDLE CHILD 48 19 2
-   6 Marshmello & Bastille Happier 5 18 15
  7 Ariana Grande thank u, next 6 47 12
8 Post Malone Wow. 9 12 10
9 Blueface Thotiana - 13 4
10 Travis Scott SICKO MODE 11 29 8

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆100 Ski Mask The Slump God – Faucet Failure

 Ski Mask The Slump Godの“Faucet Failure”が100位に登場。アルバムリリース時から長いことBubbling Under(101-125位のチャート)に入っていましたが、ビデオ公開によってついにHot 100デビューを果たしました。

 この曲はApple Musicのプレイリスト(The A-List:Hip-Hop)や、Spotifyのプレイリスト(RapCaviar)に入っておらず、またラジオでもかかっていないにも関わらずアルバムリリース以降シングルのような立場を確保しています。YouTubeSpotifyApple Musicの順番で人気。

 ちなみにこのビデオを上げたのはJuice WRLDなども担当するLyrical Lemonadeというチャンネルです。後述のBluefaceの”Thotiana"のビデオもこのチャンネルでビデオを上げています。

(Lyrical Lemonadeについての参考記事:アメリカにLyrical Lemonade帝国を築く、若き野心家 Cole Bennett | HIP HOP DNA

 

☆95 Kane Brown – Good As You

 Kane Brownの“Good As You”が95位に登場。アルバム1位を獲得した彼のセカンド、”Experiment”から2曲目のシングル。

 カントリー系ラジオでの再生数を伸ばしたことにより、Hot 100に入りました。

 

☆94 John Mayer – I Guess I Just Feel Like

 John Mayerの新曲が94位に登場。2016年末にランクインした“Love on the Weekend”以来のHot 100入りです。(通算20曲目)

 DLが今週8位で、主にそこからポイントを得ています。ほかSpotifyでも今週93位に入っています。

 

☆87 Summer Walker & Drake – Girls Need Love

 気鋭のR&Bシンガー、Summer Walkerの“Girls Need Love”が87位にランクイン。これまで何週かBubbling Underに入り、ヒットの兆しを見せていたこの曲ですが、Drakeリミックスのアシストを受けたことでHot 100に入りました。

 このリミックスのリリースは水曜日で、今週のチャートでは約1.5日分しか集計に入っていないです。7日分フルに集計される来週は順位がもっと伸びそうです。

 

☆72 Lil Pump feat. Lil Wayne – Be Like Me

 Lil Pumpがセカンドアルバム“Harverd Dropout”をリリース。そこからのシングル”Be Like Me”が72位に登場。主にビデオが人気です。(今週YouTubeで19位)

 この作品はアルバムチャートでは7位。総合セールス4.8万枚のうち、セールスで2.5万、残りを主にストリーミングで稼いでいます。セールスの数字の多くはグッズのおまけとして付いてくる音源から計上されているようです。

 

☆70 Gunna – Outstanding

 今週はストリーミングで人気の新作が多かったです。Gunnaの初の「スタジオアルバム」“Drip Or Drown 2”はアルバムチャート3位に食い込みました。総合セールス9.0万枚のうち、純セールスは0.7万枚のみで残りをほとんどストリーミングから得ています。

 そのストリーミングの人気によって6曲がHot 100に登場。70位の“Outstanding”が最高位と順位は低め。Apple Musicでは人気でしたが、Spotifyではそこまで人気でなかったことが理由でしょうか。

 昨年のGunnaのミックステープ“Drip Season 3”はストリーミングなどでロングヒットとなっており、アルバムチャートでのピークは55位と高くないものの、今週チャート滞在1周年を迎えています。

 

△67 Kehlani feat. Ty Dolla $ign – Nights Like This

 今週ストリーミングで人気の新作その3。Kehlaniのミックステープ“While We Wait”がアルバムチャート9位にランクインしました。総合セールス3.4万のうち、純セールスは0.6万枚で、残りの多くをストリーミングから得ていると思われます。曲数が少なめ(9曲)と考えるとなかなかの再生数を記録していると思います。

 Kehlaniの過去作は、2015年のミックステープ“You Should Be Here”が36位、2017年のスタジオアルバム”SweetSexySavage”は3位でした。

 そのストリーミングの効果で先行シングル“Nights Like This”が浮上。ピークを更新しています。他の曲はHot 100に登場しませんでした。

 

☆54 P!nk – Walk Me Home

 P!nkの“Walk Me Home”が54位に登場。この曲は4月リリース予定のアルバム”Hurts 2B Human”からの先行シングルと考えられています。

 この曲はDL(今週2位)から多くのポイントを得ていますが、ストリーミングの数値は低いです。ラジオではアダルトポップ系で高い人気を誇っています。(P!nkはここ最近この系統で人気)

 

☆49 Offset feat. Travis Scott & 21 Savage – Legacy

 ストリーミングで人気のアルバムその4。MigosのOffsetのソロ作品がアルバムチャートで4位に入りました。総合セールスは8.9万枚でわずかにGunnaにおよばず。8.9万枚のうち純セールスは0.7万枚のみで、内訳がGunnaと似ています。

 そのアルバムの収録曲のうち5曲がHot 100に登場。最高位は49位の“Legacy”。Travis Scott + 21 Savageが客演として参加しています。ほか先行曲の”Red Room”が50位に、Cardi Bとの「夫婦共演」“Clout”が64位にランクインしています。

 Gunnaよりも若干Spotifyでの順位が高めです(特に“Legacy”と”Red Room”)。OffsetはSpotifyのプレイリスト”RapCaviar”でこの週プレイリストのサムネになっていました。

 

 メンバー全員のソロアルバムが出たことを記念してか、ビルボードは今までのMigosのチャート成績を振り返る記事を出しています。うちメンバーのソロアルバムの成績を抜き出すと……

Quavo – Quavo Huncho 9.9万枚(相当) →アルバムチャート2位 

Offset – FATHER OF 4 8.9万枚(相当) →同4位

Takeoff – The Last Rocket 4.9万枚(相当) →同4位

 

 そしてこの記事には載っていませんが、それぞれのソロ名義でのHot 100エントリー数は……

Quavo 21曲

Offset 18曲

Takeoff 3曲

 

▽11 Panic! At the Disco – High Hopes

 躍進を果たしていたPanic! At the Discoの“High Hopes”。しかし今週11位とトップ10から陥落してしまいました。それと同時に先週まで1位だったラジオ再生数も今週2位になり、ヒットがある程度落ち着いた印象があります。(代わってラジオ1位になったのはHalseyの”Without Me”)

 この曲は先週まで14週と長いことラジオ再生数1位をキープしており、これは歴代で5番目タイに長い数字です。

 

18週:Goo Goo Dolls – Iris

16週:No Doubt – Don’t Speak

16週:Mariah Carey – We Belong Together

16週:Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

14週:Celine Dion – Because You Loved Me

14週:Alicia Keys – No One

14週:Panic! At the Disco – High Hopes

(~13週は Hot 100 Airplay (Radio Songs) - Wikipedia に記載されている)

 

 しかしルールで弾かれた曲(“Iris”と”Don’t Speak”、そしてNatalie Imbrugliaの“Torn”)を除くと、10週以上ラジオ1位になった曲の中で“High Hopes”のピーク4位は最低位です。(ほとんどがHot 100首位に立っている。ただし”Donna Lewisの”I Love You Always Forever"のみは2位止まり)

 ラジオヒットが必ずしもHot 100での高順位に繋がらない昨今の状況を表している印象です。(逆に時代が少し違えば”High Hopes”は複数週にわたりHot 100首位を獲得するような特大ヒットだったということです)

 

※ルールで弾かれた曲とは:1990年代後半、一部のアーティストはシングルではなくアルバムのヒットを狙い、シングルをラジオでかけるものの「シングル」という媒体で販売しないことが増加。ビルボードはこれに対して「シングル」という媒体で販売しない曲をHot 100から除外。そしてラジオヒットとHot 100の乖離が課題に。このルールは1998年末に解消。ラジオのみでかかる曲もHot 100に入るようになった。

 “Iris”や”Don’t Speak”はこのルールで犠牲になった曲の代表例として取り上げられています。“Iris”のピークは8位、”Don’t Speak”は圏外!

 

△9 Blueface – Thotiana

 Bluefaceの“Thotiana”が9位に到達。キャリア初のHot 100入りでトップ10まで到達しました。この曲はCardi Bバージョン、YGバージョン、両方バージョンなど様々なバージョンがありますが、最も人気なのはオリジナルと判定されHot 100では客演などの表記はありません。チャートではこれらのバージョンの成績が合算で計上されています。

 ビデオが公開されたのはCardi Bバージョンで、YouTube上ではこのバージョンが一番人気なようです。またこの曲(複数バージョンの合算)はYouTubeで今週再生数1位になっています。

 この曲はNicki Minajのアレンジ“Bust Down Barbiana”やYoung M.A.のアレンジもありますが、これは別の曲として扱われているようです。

 この曲は主にストリーミングからポイントを得ていますが、ラジオでも一定の人気があります。Hip-Hop / R&B系ラジオ・リズミック系の両方で今週20位以内に入っています。

 Bluefaceは雑誌FADERの春号で表紙を飾っています(彼はわりとビジュアル方面でも人気な印象) ※もう一つの表紙はBillie Eilish

 

 

☆その他のトップ10情報

・J. Cole – MIDDLE CHILD ビデオ公開により11位→5位と浮上

Travis Scott – SICKO MODE 今週10位。トップ10滞在30週目(歴代6番目タイ)

 

△1 Lady Gaga & Bradley Cooper – Shallow

 オスカー効果でLady GagaとBradley Cooperの“Shallow”が首位浮上!DLがかなりの伸びを見せたほか(今年最高の11.5万DL)、ストリーミングとラジオもピークを更新しています。この首位浮上はどのような数字なのか?を見ていきます。

 

Lady Gagaにとって“Born This Way”以来8年ぶり、4曲目のHot 100首位

 Lady Gaga久々のHot 100首位。歴代のHot 100首位は以下の通りです。

 

Just Dance (feat. Colby O’Donis):4週 (2009年)

・Poker Face:1週 (2009年)

・Born This Way:6週 (2011年)

・Shallow(+Bradley Cooper):1週 (2019年)

 

 1位滞在が最も長いのは“Born This Way”ですが、この曲は順位を落とすのが急速だったため、トータルのヒット度では”Just Dance”が1番高いようです。(↓ビルボードが「トータルでのヒット度」順に並べたLady Gagaのヒット曲リストです)

 

 思ったよりも首位曲が少ない印象があります。特に“Bad Romance”が首位を獲っていないのは意外です。この曲はロングヒットだったので、トータルで見ると”Born This Way”よりもヒット度は上だったようです。

 

・オスカーのBest Original SongsがHot 100で首位になるのは“Lose Yourself”以来

 この賞の受賞をした曲でも、音楽的ヒットはあまり狙っていない場合も多く、Hot 100にエントリーすらしない曲もあります。つまりこの曲の受賞=必ずヒットになるという訳ではないです。

 21世紀にこの賞を受賞した曲でHot 100のトップ10入りしたのはEminemの“Lose Yourself”と”Shallow”のほか、Adeleの“Skyfall”(8位)、Idina Menzelの”Let It Go”(5位)です。

 “Lose Yourself”は2002年のリリースながらも最近でもストリーミング人気の高い曲で、2018年にも何回かSpotifyのグローバルランキング入りを果たしています。そんな映画+音楽と多角的に評価されてレジェンドと化した”Lose Yourself”と同様に、この“Shallow”も長く愛される曲になっていくでしょうか。

  

 “Shallow”以外にも“Always Remember Us This Way”は47位、”I’ll Never Love Again”は62位に再登場しています。

 またアルバムチャートではこれらが収録されている”A Star Is Born”のサウンドトラックが首位に返り咲き。またLady Gagaのファーストアルバム“The Fame”が142位に再登場しています。

 

 この曲でBradley Cooperは初のHot 100首位を獲得。Hot 100を初めて獲得したアーティストが出るたびにNicki Minajが話題になりがちです。(まだ首位を獲得していないため)

 

×× Gesaffelstein & The Weeknd – Lost in the Fire

 GesaffelsteinとThe Weekndの“Lost in the Fire“が今週チャートから外れました。ピークは27位、滞在はわずか6週でした。

 リリース時はストリーミングで好成績を記録。その後ストリーミングの数字を落としたものの、ラジオが大きく伸びたため一時期Hot 100中位をキープしていました。しかしここ数週でそのラジオも急落したため、早々にHot 100を後にしました。

 この曲が注目を集めたのはThe Weekndがいたからと推測されますが、(GesaffelsteinのHot 100エントリー3つは全てThe Weekndとのコラボ)この曲の不発はThe Weekndのプレゼンス低下による可能性もあると考えられます。果たして今後巻き返せるか……?

 ちなみにGesaffelsteinは今週アルバムをリリースする模様。ゲストにはPharrellやHAIMが参加しています。

 

 今週はほかにもTravis Scottのアルバムからのシングルの”YOSEMITE"や、大所帯シングルの”Arms Around You"、そしてBillie Eilishの”when the party's over"や”lovely"がチャートから外れています。

 Ariana Grandeのアルバム曲は今週4曲が外れ、今週Hot 100には残ったのは(収録)12曲中8曲です。

 ほかZeddとKaty Perryの"365"は1週間でチャートを外れました。これに関してビルボードは「Katy Perry、沈黙のチャート帰還」と評しています。

 

今週チャートから外れた曲 (19曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Michael Ray – One That Got Away (🗻100位 /⏰1週)

99 A Boogie Wit da Hoodie feat. Offset & Tyga – Startender (🗻59位 /⏰9週)

98 XXXTENTACION & Lil Pump feat. Maluma & Swae Lee – Arms Around You (🗻28位 /⏰17週)

97 Dustin Lynch – Good Girl (🗻44位 /⏰15週)

95 Ariana Grande – make up (🗻48位 /⏰2週)

94 Alec Benjamin feat. Alessia Cara – Let Me Down Slowly (🗻79位 /⏰5週)

93 Cody Johnson – On My Way To You (🗻91位 /⏰4週)

91 Riley Green – There Was This Girl (🗻91位 /⏰1週)

89 Travis Scott (feat. Gunna & NAV)– YOSEMITE (🗻89位 /⏰18週)

88 Billie Eilish – when the party’s over (🗻52位 /⏰18週)

86 Zedd & Katy Perry – 365 (🗻86位 /⏰1週)

82 Loud Luxury feat. Brando – Body (🗻80位 /⏰8週)

79 Billie Eilish & Khalid – lovely (🗻64位 /⏰17週)

76 Lil Baby – Pure Cocaine (🗻46位 /⏰11週)

74 Ariana Grande – in my head (🗻38位 /⏰2週)

69 Thomas Rhett – Sixteen (🗻42位 /⏰15週)

62 Ariana Grande – ghostin (🗻25位 /⏰2週)

61 Gesaffelstein & The Weeknd – Lost in the Fire (🗻27位 /⏰6週)

57 Ariana Grande – fake smile (🗻26位 /⏰2週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

3 Gunna – Drip Or Drown 2

4 Offset – FATHER OF 4

6 Gary Clark Jr. – This Land 🎫

7 Lil Pump – Harverd Dropout 👕

9 Kehlani – While We Wait

24 Dream Theater – Distance Over Time

88 Claypool Lennon Delirium – South Of Reality

133 Eric Bellinger – The Rebirth Ⅱ

140 Badflower – OK, I’M SICK

158 Overkill – The Wings Of War

 

アルバムチャート長期滞在

1周年 :Gunna – Drip Season 3 (今週156位)

100週目:George Strait – 50 Number Ones (今週123位)

200週目:Zac Brown Band – Greatest Hits So Far... (今週164位)

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Ariana Grande – 7 rings

(ここのソースになっているKworbというサイトのラジオ項目がダウン中です💦 頑張れー!Kworb!)

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Jonas Brothers – Sucker

 バンドの復帰シングルが絶好調。リリース時にはiTunesSpotifyApple Musicの全てで1位に立っていたので、来週のHot 100で首位に立つ可能性もあります。

 

・2 Chainz feat. Travis Scott – Whip

・Lil Skies – i

 来週収録曲が複数Hot 100に入るかもしれないアルバム候補です。

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

 

thank u, next(アルバム)関連記録のまとめ + 「ポップス」としての意義など

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 2/23付けのUSアルバムチャートで、Ariana Grandeの”thank u, next”が見事アルバム1位を獲得。このアルバムで注目されたのは高いストリーミングの数字です。USでは1週間だけで3億700万ストリーミングを記録。これは女性アルバム、またはポップスのアルバムとしては歴代最高の数字です!

 また、このストリーミングの数字の効果もあって、この週のHot 100(USシングルチャート)の1位2位3位を独占することに成功!この記録はThe Beatles以来史上2人(組)目ということもあって、特に注目を集めていた印象です!

 

 

 

・アルバム関連

 

 USのアルバムチャートは現在、アルバムの純セールス+シングルのDL+ストリーミングという3部門の合算で集計されています。“thank u, next”はセールス11.6万枚、シングルのDLは1.6万枚相当の数字、ストリーミングは22.8万枚相当の数字を記録し、合計36万枚を売り上げたと計上されました。

 この中で注目されたのはストリーミングで22.8万枚相当の売上を記録した、という点です。これを再生数に換算すると3億700万再生です。この数字がどのような数字かを手短に説明すると、

1 歴代で8番目の数字 (かぶりを除く場合)

2 女性のアルバムでは最多の数字

3 ポップスのアルバムでは最多の数字

 

……となります。まずはこのストリーミング数がどのようなものかを読み解いていきます。

 

    再生(M) 曲数
1 Drake / Scorpion 746 25
2 Lil Wayne / The Carter V 433 23
3 Post Malone / beerbongs & bentleys 431 18
4 Drake / Scorpion (2) 391 25
5 Drake / More Life 385 22
6 Travis Scott / Astroworld 349 17
7 Kendrick Lamar / DAMN. 341 14
8 J. Cole / KOD 323 12
9 Ariana Grande / thank u, next 307 12
10 Drake / Scorpion (3) 290 25
11 Drake / More Life (2) 254 22
12 Drake / Views 245 20
13 Post Malone / beerbongs & bentleys (2) 240 18
14 Meek Mill / Championships 235 19
15 Migos / Culture Ⅱ 226 24
16 Eminem / Kamikaze 226 13
17 Drake / Scorpion (4) 212 25
18 Kendrick Lamar / DAMN. (2) 204 14
19 Cardi B / Invasion of Privacy 202 13
20 Drake / Views (3) 186 20

 再生数はM=100万単位 (四捨五入)

アルバム名の横にある()内数字はリリース後何週目の数字か?ということです。特に表記が無いものは1週目の数字です。

 

 ↑の表は歴代のUSアルバムチャートにおいて最もストリーミングを集めたアルバムのランキングです。一部アルバムは2週目以降も高い再生数を記録しており、かぶりも見られます。“Scorpion”は2週目でも歴代4番目の再生数を記録しています。先に述べた歴代8番目の再生数(かぶりを除く)とは、この2週目の”Scorpion”を除いているという意味です

(ちなみに“Views”の再生数が3週目>2週目なのは、Spotifyなどでリリースされたのが3週目だからです。最初の2週はApple Music限定リリースでした)

 

 この表から分かることは、ここ近年ストリーミングで強いアルバム=ラップということです。それは多くの場合は男性ラッパーです。(Cardi Bは例外)

 その中でポップスに分類され、さらには女性アーティストのAriana Grandeが高いストリーミング数を記録したから注目されたのです。ビルボードはこの数字について、「歴代で最もストリーミング数の多いアルバムトップ20のうち、唯一のラップ“ではない”アルバムだ」と説明しています。

 

 さらに注目したいのはアルバムの収録曲数についてです。現行のUSアルバムチャートでは曲数が多ければ多いほど再生数が伸びて、その分チャートで有利になるというシステムがあります。そのことから、昨今のアルバムでは曲数の多い作品が目立ちます。(これに対して効率よく再生稼ぐ=曲数15以下の作品は「曲数」に色をつけました)

 しかしAriana Grandeのアルバムは曲数が12とそこまで多くありません。そこで、曲数あたりの再生数を計算すると以下のようになります。

    平均 再生 曲数
1 Drake / Scorpion 29.8 746 25
2 J. Cole / KOD 26.9 323 12
3 Kanye West / ye 25.7 180 7
4 Ariana Grande / thank u, next 25.6 307 12
5 Kendrick Lamar / DAMN. 24.4 341 14

(再生数の単位は 100万)

 

 破格の再生数の“Scorpion”、同じく12曲の”KOD”、そして7曲構成の”ye”に次ぐ4位にランクインしています。「収録曲数」という要素を考慮すると、”thank u, next”のストリーミング数はかなり優秀ということが分かります。

 

・女性、ポップスのアルバムとして最多のストリーミング 

 女性アーティスト、またポップアーティストとして歴代最多のストリーミング数を記録した”thank u, next”。これまではどのアルバムが優秀な数字を残してきたのかを振り返ります。

 

    再生(M)
1 Ariana Grande / thank u, next 307
2 Cardi B / Invasion of Privacy 202
3 Ariana Grande / thank u, next (2) 169
4 Nicki Minaj / Queen 128
5 Ariana Grande / Sweetener 126

 Honorable Mention

・Beyoncé / Lemonade ・The Carters(Beyoncé + Jay-Z) / EVERYTHING IS LOVE ・Ella Mai / Ella Mai ・Camila Cabello / Camila

 

 女性ラッパーの2大巨頭、そしてAriana Grandeの作品がランクインしています。”thank u, next”は2週目でも依然として高い数字をキープしており、3位にランクインしています。3週目以降も優秀な数字を残し続けそうです。6位以下にはR&Bシンガーが複数登場しています。

 

 次にポップアーティストのアルバムの歴代のストリーミング数を見ていきます。

 

    再生(M)
1 Ariana Grande / thank u, next 307
2 Ariana Grande / thank u, next (2) 169
3 Ed Sheeran / Divide 127
4 Ariana Grande / Sweetener 126
5 Justin Bieber / Purpose 77

 Honorable Mention (50M~60M再生程度)

・Camila Cabello / Camila ・Justin Timberlake / Man of the Woods ・Shawn Mendes / Shawn Mendes ・Lady Gaga & Bradley Cooper / A Star Is Born

 

 “thank u, next”は2週目でも他のポップアルバムよりも高い数値を記録しています!ポップアルバムとして、いかに高い数字を1週目に記録していたかが分かります。3週目以降もこの表を独占しそうな気配があります。

 5位はJustin Bieberの“Purpose”。2015年のリリース当時の感覚では破格のストリーミング数ですが、現在の感覚では「やや多い」程度の数字に収まっています。ストリーミングは年を経るごとに利用者が増加しているため、最近の記録であればあるほど数字が伸びる傾向にあります。

 ちなみにポップアーティストはアルバムをリリースすると、純セールスも高くなる傾向にあります。(アルバムを“丁寧”にリリース、ファンベースが強固などの理由が考えられる)そのことから、今までポップス作品がアルバムチャートで首位を獲得する場合は純セールスの割合が高いことが多かったのですが、”thank u, next”はポップスアルバムとしては初めて、「総売上」の半分以上をストリーミングから計上したアルバムとなりました。*1

 

 

・Ariana Grandeにとって初めて「2週目」のアルバム1位に。

 Ariana Grandeは過去に4回アルバム1位を獲得しています。(“Dangerous Woman”のみ1位を逃す。2週目以降もストリーミングを「爆稼ぎ」したDrakeの”Views”に1位を阻まれた*2) これは2010年代女性アーティストとしては最多タイの数字です。(Taylor Swiftと同数)

 そのアルバム1位を獲得した次の週はセールスなどを落とし他のアルバムに1位を取って代わられてきました。

 今回のアルバムでははじめて2週連続で1位を取ることに成功しました。基本的に一回しかしないアルバムの「購入」と比べて、ストリーミングは2回目以降も行われるので、ストリーミングの数字が高いアルバムは2週目以降も数字が安定する傾向にあります。

(2週目以降が安定する?については…… BROCKHAMPTON、アルバム1位から3週後に圏外へ? アルバム1位の「その後」 - チャート・マニア・ラボ

 

・短いスパンで複数アルバムが1位に

 前作の“Sweeterner”のアルバム1位から5ヶ月と22日で再びアルバム1位を獲得したAriana Grande。これはOlivia Newton-Johnが1974年~1975年に異なるアルバムで1位を獲得した時以来、女性アーティストとしては最短のスパンで異なるアルバムを首位に送り込んだ、ということになります。

 ちなみに男性アーティストではBTSが昨年、Love Yourselfシリーズ(“Tear”→”Answer”)が両方とも3ヶ月のスパンでアルバム1位になりました。また、2017年にはFutureが“Future”と”Hndrxx”を2週連続で1位にしています。

 

・シングル関連

 

・史上2回目のHot 100トップ3支配

 

1位 7 rings

2位 break up with your girlfriend, i’m bored

3位 thank u, next

14位 needy

17位 NASA

21位 imagine

22位 bloodline

25位 ghostin

26位 fake smile

27位 bad idea

38位 in my head

48位 make up

 

 アルバム全曲がチャート入りし、この週(2/23付け)のHot 100を制圧したAriana Grande。この中で大きく注目されたのは1位2位3位を同時に支配したことです。

 Hot 100の歴史を紐解くと、1位と2位までの同時支配は過去に20回以上ありましたが、1位2位「3位」までの支配となるとかなりレアで、1964年のThe Beatles以来、史上2回目の偉業ということになります!(The Beatlesはこの時1位-5位までを独占していた)

 

(ここからマニアックで少し難しい内容)

 この記録を達成したのはもちろん各曲が高いストリーミングを記録したということが大きいのですが、それ以外にも「ラジオ」が影なる要因として効いていると私は考えました。

 「アルバム」の項目で説明しましたが、アルバム”thank u, next”のストリーミング数は高いとはいえど、歴代で1番というわけではありません。曲数ごとの平均で割っても1番にはなりません。

そのことから、他のアルバムでもっと高いストリーミングを記録していた曲が存在するということが分かり、今回以上のストリーミング数の高さによってHot 100上位を独占できるアルバムがあったのではないか?ということが考えられます。

 しかしHot 100の集計対象はストリーミングだけではありません。ラジオやDLも集計対象です。この週Hot 100で3位に入り込んだシングルの”thank u, next”はラジオで5位でした。これに対し、同じようにアルバムリリース週に複数曲がトップ10に入ったラッパーの曲はここまでラジオが高いことがあまり無いのです。(先行シングルをリリースして……と丁寧にプロモーションしたDrakeの“God’s Plan”はその週にラジオ13位だった。他のラッパーは先行シングルをあまり用意しないのでラジオ順位がより低いことが多い)

これをさらに詳しく解説すると、アルバムリリース時、順位が高くなる曲は主に3種類 ①大ヒットだった先行シングル ②今勢いのある先行シングル ③アルバムと同時にリリースされた曲の一番人気 です。そのうち①はリリースから時間が経過し、ラジオが落ちているが、アルバムのリリースによってストリーミング数が蘇り再浮上します。しかし新規でDLを稼げないことやラジオが②と比べて足りないことにより②や③ほどのヒットにならない場合があります。今回の”thank u, next”は①にあたりますが、このポジションの曲の割にはラジオが多かった、ということです。 *3

 

 ではなぜラップと比べてAriana Grandeのほうがラジオの数値が高いのか?それはポップ系ラジオのほうがラップ系統のラジオよりも規模が大きいことが主な理由だと思います。そして、ラジオが落ちきる前にアルバムリリースを敢行したということも大きいと思います。

(マニアック終わり)

 

 上記の内容をまとめると、ポップアーティストであるAriana Grandeが好タイミングでアルバムをリリースしたことによって、チャート上でラジオの恩恵を受けることができた、というものです。

 つまり今回の1位―3位同時支配は、「ポップアーティストがラッパーのようにアルバムをリリースする」という珍しいミッションに挑戦したからこそ達成できた記録と私は考えています。もちろん、それを成し遂げるだけのAriana Grandeへの注目度、そして的確なタイミングにアルバムをリリースしたことも重要な要素です。

 

 また1位&2位同時支配だけでも女性アーティストでは珍しく、両方とも自身の曲で達成するのは2005年のMariah Careyに次いで2回目です。(客演を含む記録をカウントすると4人目です。2014年のIggy Azaleaの記録にはAriana Grande自身も貢献しています)

 

2002 Ashanti 1:Foolish 2:What’s Luv?(客演)

2005 Mariah Carey 1:We Belong Together 2:Shake It Off

2014 Iggy Azalea 1:Fancy 2:Problem(客演)

2019 Ariana Grande 1:7 rings 2:break up with your girlfriend, i’m bored

 

・トップ10に同時に3曲がランクイン! (自身2回目)

 1位-3位に同時にランクインした、ということはトップ10に同時に3曲がランクインしているということにもなります。この記録は歴代で22回あったのですが、その中でAriana Grandeがレアなのはこの記録を「2回達成した」という点です。

 Ariana Grandeが以前トップ10に3曲を送り込んだのは2014/8/30付けのチャートです。

4位 Ariana Grande feat. Zedd – Break Free

7位 Ariana Grande feat. Iggy Azalea – Problem

10位 Jessie J, Ariana Grande & Nicki Minaj – Bang Bang

(その週のHot 100 → https://www.billboard.com/charts/hot-100/2014-08-30 この週にはIggy Azaleaもトップ10に3曲入っている)

 

 このように「トップ10に3曲が同時ランクイン」を違う年に「複数」達成したアーティストは珍しいです。これらの記録は多くラッパーによって達成されています。*4

 

50 Cent (2003年・2005年)

・Lil Wayne (2008年・2018年)

・Drake (2018年の4月・7月)

・Ariana Grande (2014年・2019年)

 

 この記録から分かることは、「非常に注目を集めた時期」が複数回ある、ということだと思います。

 

・全曲がHot 100にエントリー

 アルバム全曲がHot 100にエントリー!”make up”以外は(ヒットの目安とされる)トップ40圏内に入っており、順位も高めです。

 「アルバム全曲がHot 100にエントリー」という事象はストリーミング時代にはよく見られる現象ですが、女性ポップアルバムでこのような記録を成し遂げるのは初めてです。(この記録に最も近づいていたのは自身の前作”Sweetener”です。このアルバムは収録曲15のうち9曲がHot 100に入りました。)

 

参考 ストリーミング時代に全曲がHot 100に入ったアルバム

 

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 ※上記の表には載せませんでしたが、Justin Bieberの“Purpose”、Ed Sheeranの”÷“はボーナストラックを除けば全曲がHot 100にエントリーしています。

※同じく載せませんでしたが、Eminemの“Kamikaze”もSkit曲を除けば全曲がエントリーしています。(再生数は十分だったので、ビルボードがルール上Skitを除外した可能性も?)

 

・このアルバムのシングルがきっかけでポップス復権

 昨年の1-9月にかけてラップ曲が34週連続でHot 100首位を独占しつづけるということがありました。この記録は“Girls Like You”が首位に立ったことによって途切れました。その後23週のHot 100で首位を獲得したのは以下の曲です

 

Maroon 5 feat. Cardi B - Girls Like You (計7週)

・Ariana Grande - thank u, next (計7週)

Travis Scott - SICKO MODE (計1週)

・Halsey - Without Me (計2週)

・Post Malone & Swae Lee – Sunfower (計1週)

・Ariana Grande - 7 rings (計5週)

 

 それぞれ1週ずつ1位を獲得した“SICKO MODE”、”Sunflower“を除けばそれ以外は全てポップ曲です。それまではラップ最強状態が続いていたHot 100の流れが変わり、ポップ曲の活躍が際立っているのです。

 そのうちの約半数の週で1位を獲得しているのはAriana Grandeの今作のシングル2曲です。ほか“Girls Like You”で客演のCardi B、”Without Me”のHalseyなど女性アーティストによる首位獲得も目立っています。

 この半年程度ポップス&女性アーティストの活躍が際立っており、そのムーブメントを主導しているのはAriana Grande、またはこのアルバムなのでは?ということです。

 

 

・各ストリーミングサービスでの記録 

 

・”7 rings”がSpotify上で最もグローバル週間再生数が多い曲に

 収録曲の”7 rings”はリリースされたその週、全世界のSpotifyで71,467,874再生を記録し歴代の記録を更新しました。

  1日あたりの再生数だと歴代3位なのですが、"7 rings"は1週間通して高い再生数をキープしたため、週間の再生数で歴代のトップに立ちました。(1日の再生数がこれよりも多い"All I Want for Christmas Is You"、"SAD!"はそれぞれクリスマス、訃報というイレギュラーの出来事によって発生した一時増加のため)

 また、この曲はSpotifyの最大手国アメリカで週間再生数歴代1位にはなっていない(3位)のですが、この記録で1位2位のDrakeと比較すると、Ariana Grandeはより世界的に満遍なく人気なので、全世界の週間再生数1位を獲得できたのかもしれません。

 (参考:https://kworb.net/spotify/

 

Apple Musicでも活躍

 このアルバムリリース当日、収録曲(12曲)がアメリカのApple Musicランキングで1位~13位にかけてランクインしました。12位にJ. Coleの“MIDDLE CHILD”があったため「完全なる制圧」ではないですが十分ランキングを支配していると言える成績です。

 一般的にUSのストリーミングではラップ+R&Bがかなり強いとされていて、Apple Musicではそのような傾向がさらに際立ちます。週によってはトップ100のうち9割以上がラップまたはR&Bによって独占されている週もあります。

 このApple Musicでの活躍は今回のアルバムでAriana Grandeがポップスアーティストとしては異例の活躍を見せた、ということの証左の一つでもあると思います。

 

YouTubeグローバル週間再生数で3曲が1位に

 アルバムからのシングル3曲、”thank u, next”、”7 rings”、”break up with your girlfriend, i’m bored”は全てYouTubeのグローバル週間再生数ランキングで首位に立ちました!このランキングは2016年~閲覧できるようになっていますが、3曲にわたって1位を獲得したアーティストは今のところいないようです。(2曲で1位は多い) これはYouTubeが多くの国でオープンになっており、世界的な人気アーティストがバラけやすいことが理由と思われます。

 それぞれのグローバル首位期間は1週で終わっており、長きに渡って圧倒的な再生数を記録したというわけではありませんが、それでも新曲のビデオがリリースされるたびに世界的に注目を集めた、ということが分かります。

 

YouTube週間グローバルランキングで2曲が首位に立ったアーティスト

Rihanna、Drake、Camila Cabello(グループ時代含む)、Ed Sheeran、Daddy Yankee、Nicky Jam、Ozuna 、BTS、Cardi B、Neha Kakkar、Anuel AA

※客演を含む Neha Kakkarはインドのシンガー、ジャンルは「ボリウッド

 

 

・意義など

 この記事で何回も触れましたが、USでストリーミングの隆盛という環境の変化を経て、覇権を握ったのはラッパーたちでした。彼らはリリースのたびに注目を集め、アルバム単位で爆発的な再生数を記録。そのたびにHot 100を「ジャック」し大きな存在感を示しました。

 さらには昨年のHot 100での34週連続ラップ首位に代表されるように、ラップ曲はストリーミングの勢いからチャート上位を支配するようになり、USのチャートは「ラップ1強」とも言える状態が訪れつつありました。

 その環境の中で、ポップスのアルバムがここまで結果を残したということは意義があることだと思います。

 ここで重要だったのはアルバム単位で成功を収めたということだと思います。ストリーミングではシングルでも非シングルでも別け隔てなく再生できるので、超人気アーティストはアルバムが「丸ごと」再生され、非シングルも含めて収録曲がストリーミングのランキングを席巻します。

 特にUSのストリーミングでは「アルバムを丸ごと聞く」という習慣が強く、アルバム単位で注目を受けるラッパーたちがシングル、アルバムの両方をここ2年くらい支配しました。一方、ポップスアーティストはこれまでラジオをうまく利用したシングルヒット戦略を採用していた影響か、ストリーミングでアルバムが丸ごと聞かれるケースは比較的少なかったです。

 

 ストリーミングでアルバムが丸ごと人気を確保すれば、シングル&アルバムチャートを両取りできるだけでなく、2週目以降も数字を高くキープできる傾向にあります(購入は基本1回だが、ストリーミングは何度もできるため) また非シングル曲もシングルと遜色ない再生数を得ることもあります。(Cardi Bの“Invasion of Privacy”はアルバム収録曲全てがRIAAでゴールド以上の認定を受けた

 このことから、現在ストリーミングにおける最大級の成功とはアルバムが「丸ごと」注目を受けるケースであると考えています。今回の”thank u, next”は今まででは珍しい「女性・ポップス」のアルバムで大注目を集めたことに意味がありそうです。そしてそれに至るまでのイメージ戦略(アルバムを丸ごと聞いてもらうためには「人」への興味も重要かと思われる)、そしてリリース戦略が見事でした。

 

 この流れを受けて期待したいのはBillie Eilishです。”bury a friend”はHot 100で14位まで到達していますが、その他のシングルではトップ40入りの経験が無く、チャート成績ではまだ不足感もあるように思われる彼女ですが、ストリーミングでは現在熱狂的な支持を受けており、ラジオでかかっていないシングルが複数Hot 100に登場しています。

 Billie Eilishは2017年にEPをリリースした当初はアルバムチャートで圏外になるなど注目度が低かったですが、新曲リリースなどで徐々に注目度を高めてストリーミング数が浮上。リリースから約1年半が経過した現在、アルバムチャートで15位前後まで到達しています。

 そんなストリーミングで熱を高めたBillie Eilishが、注目度MAXの状態で3/29にリリースするアルバム"WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?"でどこまで結果を残すかが楽しみです。

 

 

・参考&関連記事

 

ビルボードがこの週のシングルチャート、アルバムチャートについてまとめた記事です(ここに記録等が一部載っています)

 

 

 

・「成功の要因は何か?」「次に大成功するポップアクトは誰か?」など、このアルバムに関する問いにビルボードのスタッフが答える記事です

 

 

・thank u, next(シングル)の動向をまとめた記事です

 

 

・Hot 100に収録曲が大量登場したアルバムについてです

 

ビルボードがアルバムチャートにシングルDL、ストリーミングを導入した時の記事(この時はシングルヒット(主にDL)の数字がチャートを左右すると考えられていて、シングルが強いAriana Grandeがこの記事のサムネになっている) 

 

ウィキペディアビルボード関連記録一覧ページ

 

 

 

*1:ちなみに2週目の“÷”も純セールスの割合が50%を下回っているが、シングルDLの数字も考慮すると「ストリーミングがポイントの過半数」にはならない Ed Sheeran's 'Divide' Spends Second Week at No. 1 on Billboard 200, 'Beauty and the Beast' Debuts at No. 3 | Billboard

*2:でも実はセールスもBlake Sheltonに負けて1位じゃない

*3:例えばDrakeの“Scorpion”では①が“God’s Plan”、②が”Nice For What”、③が“Nonstop”または”In My Feelings” Post Maloneの“beerbongs & bentleys”では①が”rockstar”、②が”Psycho“、③が”Better Now”

*4: ウィキペディアリストを見るとわかりやすいと思います

Hot 100 3/2 見どころ 【Cardi B + Bruno Marsが5位に登場 / “容疑”のバズ?】

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こんばんは。今週の見どころは主にCardi B + Bruno Marsのコラボが5位に登場したこと、YNW Mellyの”Murder On My Mind"の浮上、Juice WRLDの新曲などです。

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Cardi BとBruno Marsの“Please Me”が5位に登場

・殺人の容疑がかけられたYNW Mellyの“Murder On My Mind”が14位に浮上

・Juice WRLDの新曲“Robbery”が27位に登場

・2週目の”thank u, next”がアルバム1位。今週も収録曲全てがHot 100に残る

 

・今週のトップ10

      3月2日   R D S
- 1 Ariana Grande 7 rings 6 3 1
  2 Halsey Without Me 2 4 7
  3 Post Malone & Swae Lee Sunflower 8 5 2
  4 Ariana Grande thank u, next 5 41 8
5 Cardi B & Bruno Mars Please Me 22 1 10
-   6 Marshmello & Bastille Happier 4 11 13
-   7 Travis Scott SICKO MODE 9 17 5
  8 Ariana Grande break up with your girlfriend, i'm bored - 7 4
  9 Panic! At the Disco High Hopes 1 13 43
10 Post Malone Wow. 11 8 14

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

▽95 Ariana Grande – make up

 今週もアルバム首位をキープしたAriana Grandeの”thank u, next”。今までも何回かアルバム首位を獲得した経験はありましたが、2週目も継続して1位をキープするのは今回が初です。(今までは2週目は他のアルバムに首位を取って代わられてきた)

 今週のアルバム「総売上」は15.1万。セールスは2万、ストリーミングから12.4万枚、シングルDLからは0.7万と、ストリーミングでの数字が2週目でも大きなカギとなりました。そのストリーミングでの12.4万枚を再生数に換算すると約1億6860万で、2週目でもなお歴代のポップアルバムを上回る数字を叩き出しています。(このアルバム以前にポップアルバムで最もストリーミングが多かったEd Sheeranの“÷”の再生数は約1.27億)

 

 このように2週目もストリーミングの数字をかなりキープしたことによって、今週も収録曲全てがHot 100に残りました。他の再生数が高かったアルバム、例えば1曲あたりの再生数が高く1週目はアルバム全曲がHot 100入りした“Scorpion”、”KOD”、“DAMN.”、”ye”あたりのアルバムでも2週目には何らかの曲が外れてしまっていたので、2週目も全曲Hot 100に残っているのはかなり珍しいです。

 Cardi Bの“Invasion of Privacy”もルールによって既に外れていた”Bodak Yellow”以外の曲が全部2週目もHot 100に残っていました。曲数が少なめで、かつInterludeのような単体での再生が想定しづらい曲が無いと2週目も多くの曲が残る傾向があるのかも。

(”thank u, next”=12曲、”Invasion of Privacy”=13曲 一方“Scorpion”は25曲。”KOD”は12曲だが“Interlude”や”Outro”など流れで聞くための曲が多い)

 

※ちなみに“Invasion of Privacy”はアルバム全曲がRIAAのゴールド以上のディスク認定を受けているようです。”thank u, next”もいずれそうなりそうです。

You searched for cardi b - RIAA

 

☆91 Riley Green – There Was This Girl

 カントリー系ラジオで数字を伸ばす曲がいくつかHot 100に登場。Mitchael Rayの“One That Got Away”が100位、Riley Greenの”There Was This Girl”が91位、Chase Riceの“Eyes On You”が84位に登場。Riley GreenはHot 100初登場です。

 

☆87 YK Osiris – Worth It

 YK Osirisの“Worth It”が87位に登場。彼はフロリダ出身20歳のラッパー。昨年Def Jamとサインしたようです。エモラップ成分もある1曲。

 この曲は主にYouTubeApple Musicで人気。一方、Spotifyではまだランキング圏外です。

 ビルボードは単独記事で彼を紹介しています。

 

☆86 Zedd & Katy Perry – 365

 ZeddとKaty Perryのコラボシングル”365”が86位に登場。ややダークな雰囲気を持つポップ曲です。

 二人とも近年ヒットを連発したビッグネームなので、もう少し高めの順位に登場するかと思いましたが、DLもストリーミングもそこまで高い数字を記録しなかったのでこの順位に。今後ヒットしていくかどうかはラジオが鍵を握りそうです。

 

☆80 Florida Georgia Line – Talk You Out Of It

 新アルバムをリリースしたFlorida Georgia Line。アルバムチャートでは4位にランクイン。(1作目から4位→1位→2位→4位と推移)

 そしてこのタイミングでシングルの“Talk You Out Of It”がHot 100に登場。新作公開によるストリーミング増やラジオのポイントが要因です。

 

☆49 Offset – Red Room

 アルバムに先駆けてリリースされたOffsetのシングル“Red Room”が49位に登場。リリースとほぼ同時にビデオもリリースされています。

 Offsetのアルバムは来週チャートに反映される予定。ストリーミングを中心にポイントを稼いでいて、アルバムチャートでは3位か4位に登場しそうです。それと同時に何曲が新たにHot 100に登場する見込みです。

 

※来週のアルバムチャート(見込み)

1位か2位 → Ariana Grande(3週目)かA Star Is Born

3位か4位 → GunnaかOffset

'A Star Is Born' Bound for Big Gain on Billboard 200, As Ariana Grande's 'Thank U' Eyes Third Week at No. 1 | Billboard

 

△38 Pinkfong – Baby Shark

 今週49位→38位に順位を上げた“Baby Shark”。先週はAriana Grandeのアルバム曲登場によって一旦順位を落としましたが、今週はそれが元に戻ったような感覚です。

 ビルボードはこの曲を「“過去”にリリースされた曲」と判定しており、そのことで51位以下に落ちるとチャートから外れてしまうという厳しいルールが“Baby Shark”に課されています。しかしこの曲はそれを乗り越えて50位以上をキープし続けており、現在8週目を迎えています。

 この安定感から、にわかに2019の年間チャートに入るのでは?という可能性も浮上。この調子でチャート滞在を15週程度まで伸ばせれば、年間チャートにも届くかもしれません。異例の大躍進はどこまで続くか!

 

※訂正 先週チャートから外れた曲の多く(“Love Lies”、“Speechless”、”Beautiful”あたり) は時期の都合上、年間チャート入り厳しい?としましたが、どの曲も期間内のピークが高めなので、年間に入る可能性がある程度はありそうです。

 

 

☆27 Juice WRLD – Robbery

 Juice WRLDの“Robbery”が27位に登場。ストリーミングで大きくポイントを稼ぎ、高順位で登場しました。

 Apple MusicとSpotifyの両方でトップ10入り。YouTubeでも14位にランクインしています。一方、ダウンロードは50位の圏外です。ラジオでもほとんどかかっていません。

 Juice WRLDは複数シングルが既にHot 100入りを果たしていますが、その中でラジオでかかっていたのは“Lucid Dreams”とFutureとコラボした”Fine China”の2曲程度です。

 ほかの曲はあまりラジオのポイントの恩恵を受けられず、ストリーミング中心にチャート入りを成し遂げています。しかしそれでもチャートで粘りを見せる傾向があります。今週71位の“Armed And Dangerous”はチャート滞在15週目を迎えています。

 

 

△14 YNW Melly – Murder On My Mind

 YNW Mellyの“Murder On My Mind”が59位→14位と急浮上。ストリーミングを大きく伸ばしました。Apple MusicとYouTubeでは首位に立ち、Spotifyでもトップ10入りを果たしています。

 ここまでストリーミングが伸びたのは彼にかかった「容疑」が理由です。彼にかかった容疑は殺人です。彼の友人であるYNW Juvy、YNW Sakchaserが銃で撃たれ、後に死亡。この件に関して彼が犯人ではないのか?という疑いがかけられたのです。本人はInstagramで友人が亡くなったことに対しての悲しみを述べ、容疑を否認しています。

 

 

 真偽はまだ明らかになっていませんが、曲名とこのニュースの内容とクロスオーバーする“Murder On My Mind”への注目が急上昇。ストリーミングが一気に伸びました。

 YNW Mellyの他楽曲にも注目が集まり、Kanye Westのコラボ曲“Mixed Personalities”も今週93位→60位と順位を伸ばしています。

 犯罪容疑がかかっている状態でこの曲を取り扱うのはリスキーと判断したのか、Apple MusicのプレイリストThe A List:Hip-Hop、そしてSpotifyのプレイリストRapCaviarは両方とも“Murder On My Mind”を現在はプレイリストに入れていません。その曲の代わりに両方のプレイリストが”Mixed Personalities”を入れています。

 

 ほか好調なのはBluefaceの“Thotiana”。各所で話題沸騰のこの曲はストリーミングで調子を上げており、最近はラジオのポイントも増えてきています。Cardi BとYGのリミックスがチャートに大きく反映される来週のHot 100ではトップ10にも手が届きそうです。

 また、来週のチャートではオスカー効果で“Shallow”もトップ10に復帰しそうです。

 

▽12 benny blanco, Halsey & Khalid – Eastside

 ストリーミングでのピークは過ぎていますが、現在ラジオでは伸び盛り。“Eastside”は今週Hot 100で10位→12位と順位を落としましたが、ポイントを伸ばしています。(順位の下に書いてある”◎“はポイントが伸びていることを指しています)

 今週31週目にしてポップ系ラジオで再生数が1位に。31週目でポップ系ラジオの首位に立つのは歴代で「最遅」です。今までの最遅記録が26週だったので、この曲がいかにじわじわヒットしているかが分かります。

 購入が1回だったDL時代と比べると、再生が複数回できてその分収益も増えるストリーミング時代では、「いかにロングヒットさせるか」重要度が上がっていると言えます。そのため、ポップ曲もだんだんハマっていく「スルメ」さが重要で、今回の「最遅の1位」はそのような傾向が表れたものかもしれません。

 

 

※ポップ系ラジオで1位になったタイミングが遅い曲

31週 benny blanco, Halsey & Khalid – Eastside (2019)

26週 Alessia Cara – Here (2016)

25週 CeeLo Green – Forget You (2011)

25週 Demi Lovato – Give Your Heart a Break (2012)

24週 Alessia Cara – Scars to Your Beautiful (2017)

24週 Khalid & Normani – Love Lies (2018)

 

 またHalseyは“Without Me”→”Eastside”と自身の曲が2連続でポップ系ラジオの1位に。自身の曲同士でポップ系ラジオの首位が入れ替わるのは史上4例目です。

1995 Mariah Carey Fantasy → One Sweet Day

2004 Outkast Hey Ya! → The Way You Move

2014 Iggy Azalea Fancy → Problem

2019 Halsey Without Me → Eastside

参考記録 2011 My Stereo Hearts(Gym Class Heroes feat. Adam Levine)→ Moves Like Jagger

 

 

 ほか今週は他のラジオ系統でもロングヒットに関する記録が。今週lovelythebandの“Broken”がオルタナティブロック系ラジオチャートで66週目を迎え、最長滞在記録を更新しました。このチャートでは21週目以降16位以下に落ちると外れます。(つまり遅咲き曲だと長期滞在になりやすい)

 

オルタナティブロック系ラジオチャートでの滞在が長い曲

66週 lovelythaband – Broken

65週 Rise Against – Savior

64週 Cold War Kids – First

58週 Arctic Monkeys – Do I Wanna Know (彼ら唯一のHot 100エントリー)

57週 Phoenix – 1901

56週 The Revivalists – Wish I Knew You

55週 Foster The People – Sit Next to Me

53週 Portugal. The Man – Feel It Still

53週 Muse – Uprising

 

☆5 Cardi B & Bruno Mars – Please Me

 Cardi BとBruno Marsがタッグを組んだ“Please Me”が5位に登場!昨年のコラボ”Finesse”はBruno Marsがメインの曲でしたが、こちらはCardi Bがメインという扱いのようです。(Cardi Bが先に表記されている)

 ただプロデュースがBruno Mars当人と、"24K Magic"で何曲かを担当したThe Stereotypesなので、「Bruno Mars成分」が強めです。

 DL(今週1位)とストリーミングの両方で快調なスタートを切っているほか、この曲はラジオの伸びが凄まじいです。ラジオは一般的に伸びきるまでに時間がかかるのですが、この曲は既にラジオ22位まで到達。これはCardi B・Bruno Mars両者の曲が近年ポップ、HAC、リズミック、R&B/Hip-Hopなど幅広い系統で受け入れられているからこその現象だと思います。

 このラジオを筆頭とした好調によって今後しばらく上位に入り続けそうです。

 

×× Zara Larsson – Ruin My Life

 Zara Larssonの“Ruin My Life”が今週チャートから外れました。ピークは76位、チャート滞在は7週でした。

 “Never Forget You”は唯一ピーク13位滞在23週とヒットしましたが、それ以外のシングルは以前もこの程度の成績でした。

 主にヨーロッパ圏での人気が高く、Spoitfyで注目を集めるタイプのポップス曲はHot 100入りすら叶わないケースも多い(Jonas Blue、Rita Oraが代表格)ので、Hot 100に入れた以上、悪くはない成績だったと思います。

 

×× Lil Wayne (feat. Swizz Beatz) – Uproar

 Lil Wayneの“Uproar”が今週チャートから外れました。ピークは7位、チャート滞在は20週でした。

 この曲は大きな注目を集めたアルバム“The Carter V”からのシングルカット。このアルバムでは”Mona Lisa”、“Don’t Cry”など他にも人気曲はありましたが、この曲がシングルに選ばれていました。

 シングルカットされラジオでかかったことによって、他のアルバム曲よりも長持ちに。登場時は2位だった“Mona Lisa”はわずか8週でチャートから姿を消してしまいましたが、この曲は20週滞在しました。(いわゆる「完走」です)

 しかしラジオ再生数が伸びてきたタイミングでもHot 100での順位は30位~40位程度で、登場時のピークには及ばず。ストリーミングで人気のタイプの曲は、ラジオによるプロモーションが行き届いたタイミングよりも、曲のリリース時、またはアルバムのリリース時のほうがHot 100での順位が高い傾向にあります。

 

 

今週チャートから外れた曲 (9曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

98 Kacey Musgraves – Rainbow (🗻98位 /⏰1週)

97 Rich The Kid – Splashin (🗻90位 /⏰4週)

96 Tory Lanez & Rich The Kid – TAlk tO Me (🗻43位 /⏰16週)

87 Carrie Underwood – Love Wins (🗻83位 /⏰7週)

86 Zara Larsson – Ruin My Life (🗻76位 /⏰7週)

80 Anuel AA & Karol G – Secreto (🗻68位 /⏰3週)

77 Jacquees – You (🗻58位 /⏰12週)

76 Dierks Bentley feat. Brothers Osborne – Burning Man (🗻45位 /⏰17週)

73 Lil Wayne (feat. Swizz Beatz) - Uproar  (🗻7位 /20週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

4 Florida Georgia Line – Can’t Say I Ain’t Country

5 Drake – So Far Gone

13 Avril Lavigne – Head Above Water

28 Tedeschi Trucks Band – Signs

44 Insane Clown Posse – Fearless Fred Fury

89 Elvis Presley – Elvis: The ’68 Comeback Special: The Best Of (Soundtrack)

90 Quinn XCII – From Michigan With Love

124 Ryan Bingham – American Love Song

149 Natti Natasha – ilumiNATTI

152 India.Arie – Worthy

 

ONE OK ROCKは惜しくも200位圏外に。セールスでは49位、ダウンロードでは25位だったものの、ストリーミングなどの指数が足りずに圏外になりました。

前作はセールス35位、ダウンロード19位でアルバムチャートの106位に入っていました。

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Cardi B & Bruno Mars – Please Me

・Ariana Grande – 7 rings

・Ariana Grande – break up with your girlfriend, i’m bored

・Sam Smith & Normani – Dancing With A Stranger

・Blueface – Thotiana

 

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Lauv & Troye Sivan – i’m so tired...

 Spotifyでかなり好調な順位をキープ。他の媒体ではあまり注目を集めていませんが、そのうちHot 100に再登場するかも

 

・Offset feat. Travis Scott & 21 Savage – Legacy

・Gunna – Wit It

・Lil Pump feat. Lil Wayne – Be Like Me

・Kehlani – Feels

 この4人のアルバムがストリーミングで高い成績を記録。それに伴い、これらのアルバムから何曲かがHot 100に登場するかも。

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

Hot 100 2/23 見どころ 【Ariana Grande、1位2位3位を支配、史上2回目の偉業】

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 こんばんは!今週はAriana Grandeがチャートを制圧!1位-3位を独占するという、1964年のThe Beatlesで歴代2回目の偉業を達成したのです!Ariana Grandeのアルバムはポップスとしては歴代最高のストリーミング(USで)を記録し、収録曲も全てHot 100に登場。メモリアルな週となりました!

※今週は「大統領の日」によってチャートの発表が1日遅れていました

 

◇今週のHot 100ハイライト◇

・Ariana GrandeがHot 100の1位―3位を支配!1964年のThe Beatles以来、史上2回目の偉業。

・アルバム”thank u, next”の収録曲が全てHot 100入り。一番順位の低い”make up”でも48位と高順位(それ以外の曲は全てトップ40圏内)

・この大量登場の影響で”breathin”がチャートから外れる。前アルバム”sweetener”の収録曲が全てHot 100外に

・Khalidの“Talk”が44位に登場

 

・今週のトップ10

      2月23日   R D S
- 1 Ariana Grande 7 rings 9 18 1
2 Ariana Grande break up with your girlfriend, i'm bored - 2 2
3 Ariana Grande thank u, next 5 - 3
  4 Halsey Without Me 2 3 6
  5 Post Malone & Swae Lee Sunflower 7 4 4
  6 Marshmello & Bastille Happier 3 8 10
  7 Travis Scott SICKO MODE 8 13 5
  8 Panic! At the Disco High Hopes 1 14 38
- 9 Post Malone Wow. 12 9 14
10 benny blanco, Halsey & Khalid Eastside 4 17 37

 

R=Radio、D=Download、S=Streaming

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆98 Kacey Musgraves – Rainbow

 Album of the Yearの受賞、そしてパフォーマンスなどのグラミー効果によるDL増でKacey Musgravesの“Rainbow”が98位に登場。彼女にとって2014年以来、3曲目のHot 100入りです。

 Kacey Musgravesは2013年のデビューアルバムからのシングル“Merry Go ‘Round”と”Follow Your Arrow”の2曲がHot 100にエントリー。そこからしばらくHot 100のエントリーはありませんでしたが、今週久々の登場を果たしました。

 現在“Rainbow”はカントリー系ラジオのほか、アダルトコンテンポラリーという系統のラジオでもかかっています。

 

◇95 Daddy Yankee feat. Snow – Con Calma

 Daddy Yankeeの“Con Calma”が95位に再登場。ラテン系ラジオでの再生などを伸ばしています。

 この曲は現在Spotifyのグローバルトップ10にもランクイン。ラテン界では特大のヒットになりそうです。アメリカではどこまでヒットするでしょうか?

 

☆56 The Chainsmokers & 5 Seconds of Summer – Who Do You Love

 The Chainsmokersと5 Seconds of Summerによる“Who Do You Love”が56位に登場。近年ダンス+ロックサウンドを融合させた曲の多いThe Chainsmokersらしい仕上がりになっています。

 この曲はDLで高い数値(今週7位)を記録したほか、ポップ系ラジオで人気を集めています。ストリーミングでもそこそこ人気(Spotifyで今週33位)

 The Chainsmokersは昨年から(おおよそ)1ヶ月に1曲ペースでシングルリリースを続けていますが、目立ったヒットはあまりありません。(“This Feeling”での50位が最高位) 

 ポップスのアーティストによる早いペースでのシングルリリースはストリーミングとの相性が良いですが、ラジオとの相性は悪いです。ラジオは曲がピークに達するまで時間がかかるので、シングルリリースのペースが早いと「次のシングルへ切り替え!」となり、その曲がピークに達する前に再生数が落ちてしまうという可能性があるのです。

 事実、早いリリースペースで現在Hot 100を支配するAriana Grandeも”thank u, next”が2月初旬にラジオで3位まで到達したものの、現在ラジオ再生数は落ちてきています。(”7 rings”がメインシングルになったため、”thank u, next”が代わりに落ちてきたということです)

 しかしそれを上回る勢いでストリーミングが絶好調のため、Hot 100では高順位を叩き出せるのです。

 The Chainsmokersは以前ほどストリーミングで好成績を叩き出せなくなっているので、ラジオでポイントを稼ぐことに軸足を移したほうが良さそうに思えるのですが、果たして今後はどのような形式でシングルをリリースしていくでしょうか?

 Ariana Grandeが大成功を収めた「ポップスアーティストによるペースの早いシングルリリース」ですが、アーティストによって向き不向きはあるようです。

※もう少し詳しく説明すると、ストリーミングでのヒットにもパターンがあって、それは「リリース後すぐにヒットするパターン」と「時間をかけてヒットするパターン」の2つです。The Chainsmokersは後者のパターンでストリーミングヒットの流れを掴みかけるケースが見られますが(最近の”Hope"など)、その掴みかけの段階で次シングルが来ることが多いので、それぞれのシングルがいまいちヒットしきらないのです。

 

☆44 Khalid – Talk

 Khalidの新曲“Talk”が44位に登場。DLとストリーミングで好成績を収め、高めの順位でHot 100エントリーしています。プロデューサーはDisclosureが務めています。

 Khalidはポップスからアダルトポップ、リズミックなど多くの系統のラジオと相性が良いこと、そしてストリーミングでも人気が長持ちなことなどから曲がかなりロングヒットになる傾向がありますが、この曲もそうなるでしょうか?

 

△10 benny blanco, Halsey & Khalid – Eastside

 benny blancoの“Eastside”がトップ10に再浮上。ここ数週でラジオ(特にポップ系)の数字を大きく上げています。ストリーミングなどでのピークはもう過ぎていますが、ラジオの伸びのおかげでもう少しHot 100順位を伸ばせるかもしれません。

 今週この“Eastside”はポップ系ラジオで再生数が2位に。Halseyは”Without Me”と合わせてポップ系ラジオの1位2位を同時に独占したことになります。これは歴代(ポップ系ラジオチャートができたのは1992~)5回目の記録です。

 

1995 Mariah Carey - One Sweet Day (& Boyz Ⅱ Men)、Fantasy

2004 Outakast – Hey Ya!、The Way You Move

2013 Pharrell Williams – Blurred Lines(客演)、Get Lucky(客演)

2014 Iggy Azalea – Fancy、Problem(客演)

2019 Halsey – Without Me、Eastside

 

 

 ほか“Eastside”は30週目にしてポップ系ラジオの2位に到達した「遅咲き」の曲で、”Cake By the Ocean”を上回って歴代で最も遅い2位到達だそうです。

 

△3 Ariana Grande – thank u, next

 Ariana GrandeがHot 100トップ3独占を達成!これは1964年のThe Beatles以来、歴代2回目の偉業です!(ちなみにThe Beatlesは1位-5位を全て独占していた)

 Ariana Grandeはアルバムがストリーミングを中心に人気を博し、見事アルバム1位を獲得。アルバム総売上360,000のうち、ストリーミングで22.8枚分相当の数字を稼いでいます。

 このアルバムは今週だけで3億700万ストリームを記録。これは歴代8番目の記録で、かつポップアルバム・女性アーティストのアルバムとしては史上最多のストリーミング数です!

※”Scorpion"は2週目も歴代4番目に相当するストリーミング数を記録しています。

 それまで記録を持っていたのは、 ポップアルバムはEd Sheeranの”÷”、女性のアルバムはCardi Bの”Invasion of Privacy"でした。ちなみに”÷”にはストリーミング数でダブルスコアをつけています。

 そのストリーミングでの好調を受け、Hot 100には収録曲が全て登場。"make up"が48位だった以外は、全ての曲がヒットの目安とされるトップ40に入っています。つまりアルバムの収録曲がリリース時の注目のみによって「ヒット」になるというストリーミング時代らしい現象です。

 その中で既存の"thank u, next"が3位へ浮上しトップ3独占を成し遂げたのです。この曲はラジオでの高い数値に加え、アルバムリリース効果によってストリーミング数も上向きました。この2つの融合がトップ3独占の理由のように思います。

(今までストリーミングでアルバム収録曲が多く上位に登場したラッパーたちはラジオ再生数がポップアーティストよりは低い傾向にある)

 ポップシンガーらしいラジオでの人気、そしてポップシンガーらしからぬリリース戦略。この2つの融合がトップ3独占の理由と考えています。

※※このアルバムについては後日詳しい個別解説記事を作ろうと考えています※※

 

(関連記事)

 

☆2 Ariana Grande – break up with your girlfriend, i’m bored

 アルバムと同時にビデオも公開された“break up with your girlfriend, i’m bored”が2位に登場。ストリーミング、DLで高い数値を記録したほかラジオの数字も短い期間で伸ばしています。

 “7 rings”も現在ラジオでガンガン数字を伸ばしており、「まだまだこれから」なシングルですが、その状態でさらに新シングルをリリースしました。今後はしばらく主にこのシングル2つがラジオでかかっていくと思われます。

 ちなみに"break up with your~"を1位デビューさせるためにAriana Grandeのファンが"7 rings"の再生をボイコットしている!?という動きが一部でありましたが、ラジオの数値で大きな差が開いているので、かなり再生数で差をつけても1位になるのは厳しかったかもしれません。

(レアな記録を狙うために「デビュー」での1位に拘りたかったらしい。ちなみにAriana Grandeはデビューから5作連続で先行シングルが全てトップ10圏内で「デビューする」という変わった記録を持っている)

 

×× French Montana feat. Drake – No Stylist

 今週はAriana Grandeのアルバム収録曲が多く登場した影響で、そのぶんチャートから外れた曲も多いです。

 French MontanaとDrakeがタッグを組んだ“No Stylist”が今週チャートから外れました。ピーク47位、チャート滞在20週という成績でした。”Unforgettable”のような大ヒットにはならず。

 ストリーミングを中心にリリース時は注目を集めましたが、その後は大きな伸びを見せず。登場時の順位(47位)を超えることのないままチャートから外れてしまいました。しかし滞在20週を「完走」し、ある程度はロングヒットになりました。

(21週以降で51位以下の曲が消えるチャートのルールがあり、そのルールでチャートから外れることはある意味ヒット曲の「勲章」のような意味合いがある。そこから20週まで到達することを「完走」と称する)

 

×× Bazzi feat. Camila Cabello – Beautiful

 BazziがCamila Cabelloを迎えたシングル“Beautiful”がチャートから外れました。ピークは26位、チャート滞在27週でした。

 “Mine”でブレイクを果たしたBazziは新シングル”Beautiful”でCamila Cabelloを迎えました。この曲はポップ系ラジオやSpotifyを中心に支持を集め、再びトップ40入りを果たすことに成功しています。

 ここ数週はポップ系ラジオの再生数がかなり落ちてきてしまったので、その影響によりチャートからも外れてしまいました。

 

×× Dan + Shay – Speechless

 Dan + Shayの“Speechless”が今週チャートから外れました。ピーク24位、滞在22週とカントリー曲としてはかなりの好成績を収めたといえます。

 Dan + Shayはカントリーの枠に収まらないヒットを見せており、この“Speechless”はカントリー系ラジオの他にもアダルトポップ系ラジオでもヒット。さらにはApple Musicでもトップ100に入るなどストリーミングでも人気を集めました。

 そんな彼らの前シングル“Tequila”も同様に幅広い層から人気を集めており、現在ポップ系など広いラジオ系統で人気に。今週も31位でHot 100に残っており、現在41週目ながらもさらなる伸びしろがありそうです。

 

×× Khalid & Normani – Love Lies

 KhalidとNormaniの“Love Lies”が今週チャートから外れました。ピークは9位、チャート滞在はなんと51週と相当なロングヒットでした。元Fifth HarmonyのNormaniはこの曲がソロデビューでしたが、今後の成功を予感させる大ヒットとなりました。

 

×× Ella Mai – Trip 

 Ella Maiの“Trip”がチャートから外れました。ピークはアルバムリリース時に記録した11位、チャート滞在は27位でした。

 “Boo’d Up”の大ヒットで成功を収めたElla Maiの次シングルだった”Trip”。引き続き11位とヒットし自身の地位を固めることに成功しました。ヒットの大きな要因はR&B / Hip-Hop系ラジオでの人気。この系統では“Boo’d Up”に引き続き首位を獲得。さらにはその”Boo’d Up”では3位止まりだったリズミック系統でもこの曲は1位を獲得しています。

 これ以外にもApple MusicやYouTubeでも人気でしたが、Spotifyではそこまで奮わず。この曲は現在もアダルトR&Bというラジオ系統で1位になっています。

 

×× Ariana Grande – breathin 

 自身のシングルに押し出される形で、Ariana Grandeの”breathin”がチャートから外れました。これで前アルバム”Sweetener”の収録曲は全てHot 100から外れました。先週の順位は35位とまだ「安全圏」のようにも思えましたが、ここ数週ラジオ再生数が大きく落ちていたこともあって、チャートから外れてしまいました。

 ピークは12位、チャート滞在は25週でした。2019年の年間チャートにもギリギリ入れるかもしれません。(今週チャートから外れた他の曲は2019の年間チャートに入る見込みは薄そうです。“Trip”は少し可能性があるかも)

 

今週チャートから外れた曲 (15曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

98 Jon Pardi – Night Shift (🗻98位 /⏰2週)

97 Future – Crushed Up (🗻43位 /⏰5週)

96 Billie Eilish – Ocean Eyes (🗻96位 /⏰6週)

92 French Montana feat. Drake – No Stylist (🗻47位 /20週)

91 Logic – Keanu Reeves (🗻38位 /⏰3週)

88 benny blanco & Juice WRLD feat. Brendon Urie – Roses (🗻85位 /⏰6週)

80 Future feat. Travis Scott – First Off (🗻47位 /⏰3週)

75 Khalid & Kane Brown – Saturday Nights (🗻57位 /⏰5週)

56 Gunna – One Call (🗻56位 /⏰1週)

47 Bazzi feat. Camila Cabello – Beautiful (🗻26位 /27週)

44 Dan + Shay – Speechless (🗻24位 /22週)

41 Khalid & Normani – Love Lies (🗻9位 /51週)

38 Ella Mai – Trip (🗻11位 /27週)

35 Ariana Grande – breathin (🗻12位 /25週)

28 Marshmello – Alone (🗻28位 /⏰11週)

↑”Alone"は過去曲と見なされており、51位以下になった場合はチャートから消えてしまうようです。(Hot Dance Songsを参照すると、"Alone"は今週57位の”This Feeling"と今週82位の"Body"の間の順位につけており、つまりHot 100でいうと58位~81位相当のポイントを今週も稼いでいたということが分かる)

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Ariana Grande – thank u, next

35 Wiz Khalifa & Curren$Y – 2009

137 Emarosa – Peach Club

156 Michael Bolton – A Symphony Of Hits

169 Soundtrack – The Lego Movie 2: The Second Part

192 Bob Mould – Sunshine Rock

 

(グラミー効果で再登場 or 浮上したと思われるアルバム)

9 Kacey Musgraves – Golden Hour (Re)

22 Brandi Carlile – By The Way, I Forgive You (Re)

23 H.E.R. – H.E.R. (+50)

93 Dua Lipa – Dua Lipa (+52)

 

・滞在記録

Pinkの”Beautiful Trauma"が1周年

Drakeの”More Life"が100週目を迎える

Red Hot Chilli Peppersの"Greatest Hits"が200週目を迎える

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Ariana Grande – 7 rings

・Ariana Grande – break up with your girlfriend, i’m bored

・Post Malone – Wow.

・Sam Smith & Normani – Dancing With A Stranger

・Fletcher – Undrunk

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Fletcher – Undrunk

 Hot 100未登場ながらもポップ系ラジオでかなり伸びている曲。今の所ラジオ以外の媒体ではヒットの兆しが見られませんが、この調子でラジオが伸びればストリーミングなどでも人気が出てくるでしょうか??

 

・Cardi B & Bruno Mars – Please Me

 リリース後3日でラジオの数字をかなり伸ばしており(既にラジオ33位)、今週ラジオのポイントのみで113位相当にランクイン。その高いラジオのポイントに加え、DLやストリーミングも集計されるようになる来週はトップ10入りが濃厚です。

 

・Marshmello & Roddy Ricch - Project Dreams

 MarshmelloとラッパーRoddy Ricchのタッグ。ダンス色はかなり薄く、まるでMarshmelloがラップのトラックメイカーになったかのような曲です。RapCaviar、そしてThe A List:Hip-HopというSpotifyApple Musicそれぞれのラップ系プレイリストに入っています。

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

 

Billie Eilishヒットの推移 Spotifyランキングから

 

 現在Billie Eilishが注目を集めています。USのシングルチャートでは4曲が同時にランクインし、リリースから約1年半が経過したEP“dont smile at me”はアルバムチャートで現在15位につけています。このアルバムはリリース当初は注目を集めておらず、圏外からスタートしましたが、徐々に注目度を高めてリリースから長い時間をかけてピークを迎えています。

 そんな熱狂、特殊な経緯のヒットの要因はストリーミングにあります。先週(2/7)のアメリカのSpotifyランキングを見ると以下の11曲がランクインしています。

 

3 bury a friend

26 when the party’s over

37 lovely

48 idontwannabeyouanymore

85 bellyache

92 ocean eyes

147 my boy

150 you should see me in a crown

183 come out and play

188 bitches broken hearts

196 COPYCAT

 

今回はBillie Eilishの楽曲のSpotifyランキングでの順位推移をグラフにして、曲がヒットした経緯を探ってみようと思います。(ランキングはSpotify Chartsで見ることができます)

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◇表の見方◇

アメリSpotifyにおける週間順位の変遷をグラフにしています

・☆がついているのは2017年のEP”dont smile at me”に収録されている曲です。

・順位の推移なので相対評価=他の再生数が伸びると全体的に順位が下がることもあります。7月頭に下がっているのはDrakeのアルバムリリース、12月末に下がっているのはクリスマスの効果です。

・”when the party’s over”や”bury a friend”が2週目に大きく順位を上げているのは、リリース曜日が週の途中で、1週目の集計日数が短いためです。

 

 

 この表から読み取れるポイントは、新曲リリースが呼び水となって過去曲への注目度が高まっているということです。

 上記のグラフでは時期による多少の浮き沈みが見られます。そのうち10月末~11月末・2月初頭は特に伸びが大きく、ほぼ全ての曲の順位が伸びています。これらの時期に共通するのは、「新曲がリリースされた」ということです。

 10月末には”when the party’s over”、11月末には”come out and play”、2月初頭には”bury a friend”がリリースされています。

 これらの新曲リリースが人びとの「Billie Eilish聞いてみよう」という気持ちを促し、過去曲に注目が集まったという構図が読み取れます。☆が付いている曲はEPからの曲、つまり2017年の曲(ただし"bitches broken hearts"は2018年3月リリースの模様)がこの時期に伸びています。

 特に”when the party’s over”~”come out and play”を短いスパンでリリースした11月頃の伸びは大きく、ここで一気に地位を確立した印象があります。

 Billie Eilishは3/29に初のスタジオアルバムをリリース予定です。それに向けて先行シングルもいくつかリリースするかもしれませんが、それらのシングルリリースでもこのような「過去曲への再注目」のさらなる流れが来るでしょうか?今後の動向を観察していきたいです。また、アルバムでの盛り上がりにも注目したいです。

 また、この盛り上がりでもう一つ特徴的なのは「ラジオの影響がほぼ皆無」という点です。Billie Eilishは総合ラジオチャート(USの各ラジオの再生数を合算したチャート、50位まである)のランキングに今まで登場したことがありません。

 しかしラジオ系チャートはこれだけではなく、ビルボードには細かいジャンル別のラジオチャートがあります。そこでは中規模のオルタナティブロック系ラジオに”you should see me in a crown”が7位にエントリーしていますが、彼女のラジオシングルは今の所これだけです。*1

Billie Eilish Chart History | Billboard

 

 この系統でしかかかっていなかったので、露出度は大規模なポップ系ラジオの曲と比べるとかなり低いです。さらにはラジオでの再生数のピーク(12月頃)とストリーミングの再生数のピーク(7月~8月)がずれています。つまりラジオの影響によるストリーミング再生はあまり無いということが考えられます。

 このことからラジオのようなメディアの露出による影響がほとんど無く、ストリーミングのプレイリストやファンによる評判でじわじわ曲がヒットしていったということが分かります。

 2017年にはPost Malone、そして2013年にはLordeがストリーミングの影響でヒットになったと伝えられています。しかしこの2人はブレイクしたタイミングで既に一定のラジオを得ていました。

 Post Maloneは2017年の10月頃~ストリーミング再生規模が大きく拡大。彼はその前の8月に“Congratulations”はラジオ再生が34位まで到達していました。Lordeに関してはラジオの伸びとSpotifyの伸びのタイミングがUSではほぼ同じタイミングだったと見受けられる。(参考:Lorde - Royals - Spotify Chart History

 Billie Eilishはこの2人よりもさらにラジオの影響が少なく、「ネット発のスター」感が際立っています。

 

※ここ最近はストリーミングとラジオの人気曲の分離が進んでいます。2018年にUSのSpotifyで週間1位になった曲は全てラジオで週間1位になっていません。

ラジオ順位
rockstar 4
God's Plan 3
Call Out My Name -
Nice For What 3
Better Now 2
This Is America 33
All Mine -
Lucid Dreams 6
SAD! -
Nonstop 16
In My Feelings 3
SICKO MODE 8
Lucky You -
I Love It -
Falling Down -
Mona Lisa -
Drip Too Hard 22
Zeze 13
Mo Bamba -
thank u, next 3
Sunflower 7

(Post Maloneの“Better Now”のラジオ2位が最高位、XXXTENTACIONの”SAD!”やThe Weekndの“Call Out My Name”はSpotifyで週間1位になりながらも、ラジオ再生数が週間50位にも入っていません。)

 

 

・アルバム聴きの仮説

 まだ仮説の段階ですが、私はグラフからもう一つの特徴を読み取りました。それは「アルバム聴きが強い」ということです。

 ☆をつけたアルバム収録曲(ここでの場合はEPですが)の再生数は急激に落下しないことに対し、☆の無い新曲は再生数が乱高下するケースがあります。(例えば”you should see me in a crown”、”come out and play”などはピークの高さの割に急激に順位を落としている)

 このことから、ストリーミング上で人びとが曲を聴く形態として結局行き着くのが「アルバム」という単位で、だからEPの収録曲の再生はある程度安定しているのでは?ということです。

 ただし、同じ非アルバムのシングルでも”lovely”や”when the party’s over”ならば再生数が長く安定していること、そもそもまだBillie Eilishの曲自体が少ないので判定材料が少ないことなどから、「ストリーミングではアルバム聴きが人気」と言い切れるわけでもありません。

 

 個人的にはストリーミングではシングルと非シングルの壁が下がり、アルバムアーティストの時代が来たようにも感じています(J. Coleが最も顕著) これは果たして本当なのか、今後のアルバムの変遷……などストリーミングにおける「聴き方」というテーマは興味深いです。

 

 

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*1:Rock AirplayはAlternative系、アクティブロック系(Mainstream rock)、トリプルA系の合算チャートなので、オルタナティブ系ロックの再生数がカウントされているだけ