チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

来週のHot 100首位争い "ME!" vs. "Old Town Road"の試算

 

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 今週のHot 100見どころ記事で、来週の首位争い”ME!” vs “Old Town Road”について詳しく書いたら長くなったので単独記事にします。

(それぞれで出てくる数字のソースは最後にまとめて貼っています)

 

 まずHot 100のポイント測定法ですが……厳密な計算方法をビルボードが公表していないので、ポイントの計算は推定でする必要があります。

 今回はMusic Pulseという掲示板のYear-End Prediction板にある計算法を用います。その計算から出されたポイントに基づく年間チャート予想はかなり正確なので、このポイント計算の誤差は小さいと思われます。その式は以下の通りです。

 

DL/6、ラジオ/7000、ストリーミング(有料/1500、無料/2250、ラジオ型/3000)

※それぞれの実数値を/の数字で割って出たポイントの合算がHot 100順位決定の材料と考えられている

 

① ダウンロード

 KworbのUS Salesによると”ME!”は週末までに13.3万、”Old Town Road”は7.2万まで稼ぐ見込み。ちなみに"ME!"のDL数は週の最初の見込みよりも減っています。

(あと”Old Town Road"はDiploリミックスが週の途中に出ましたが、ほとんどチャートへの影響は無さそうです)

 これらの差は6.1万で、÷6するとおよそ1万ポイント。①の時点では”ME!”が1万ポイント程度リード

 

② ラジオ

 先にリリースされている”Old Town Road”が現在は高いラジオ再生数を記録していますが、”ME!”もかなりのペースで追い上げラジオ再生が爆増中。最終的にはどうなるかは読めないですが、ラジオのポイントはあまり大きくなく、差も小さくなりそうなので「同点」と仮定します。("ME!"がリードを稼ぐとしたらここかも)

 

③ ストリーミング

 ストリーミングのうち、規模が大きいのはYouTubeSpotifyApple Musicなので基本的にこの3つを考慮すれば良いと思います。無料/有料が絡んで式が複雑なSpotify、再生数が見えないApple Musicは一旦置いておいて、YouTubeの数字を先に考えたいと思います。 

 YouTubeでは現在”ME!”の再生数は1.17億まで到達。ペース的に週末までに1億3500万まで到達すると仮定します。(最初の24時間で6520万再生まで達したことを考えるとかなりペースが落ちている)

 そしてYouTubeのTaylor Swiftのページを参考すると、彼女の再生数のうちの1/5がアメリカなので”ME!”も1/5と仮定し2700万再生。さらにビデオ以外の音源も再生数のカウント対象になるので、これを+15%程度(今週の”Earth”はこれぐらいの比率)と考え、合計約3105万再生。

 

 一方“Old Town Road”は先週-18%で3950万再生なので、このペースが今週も続くと考えると3239万再生に。再生数の推定差は134万で、あまり差がつかなさそうです。

 

 ①②③まで見て、”ME!”と”Old Town Road”で差が大きそうなのはDLのみ。そのDLでの差が約1万ポイントなので、Apple Music + Spotifyでそのポイントをひっくり返せれば”Old Town Road”の勝利。このポイントは有料ユーザーのストリーミング1500万再生に相当します。

 

 先週”Old Town Road”はこの「選択型ストリーミング」で5288万再生を記録(Hits Daily Doubleによる試算、ただし有料も無料も合算) 2位の”bad guy”は1966万再生だったので、”Old Town Road"がいかにずば抜けた再生数を記録しているかが分かります。

 現在”ME!”はSpotifyでは僅差での1位、Apple Musicでは7位。Spotifyで1位と言うと強そうですが、”Old Town Road”は2つバージョンがあるので、合算すると容易に”Old Town Road” > “ME!になります。初日の再生数は良かったですが、その後は平凡な(テイラー水準で)再生数に落ち着いています。

 これらの状況を考慮すると、”Old Town Road”が”ME!”のDL分をひっくり返すために必要なストリーミング再生の1500万の「差」をつけるのは難しくなさそうです。

 

まとめ:

これらの試算では、”ME!”とのDLの差をストリーミングでひっくり返し、“Old Town Road”が首位をキープする可能性が高いと導き出されました。

識者も同様に、"Old Town Road"の勝利="ME!"は2位と考える人が多いようです。

 

 

 

 「新曲効果」によってDLやビデオの数字を稼いで、快調なスタートを切った”ME!”ですが徐々に失速。2バージョンでストリーミングを爆発的に稼ぐ新星”Old Town Road”に及ばないかもしれません。

 “ME!”が首位を獲得するためには、「YouTubeの再生数が想定よりも遥かに多かった」だとか、「ラジオがありえないほど伸びる」などのサプライズが必要そうです。

 

参考材料

Hot 100 Year-End Predictions (2019) - Year 6 | Pulse Music Board

https://kworb.net/cc/

https://kworb.net/radio/

https://charts.youtube.com/artist/%2Fm%2F0dl567?hl=ja

https://charts.youtube.com/charts/TopSongs/us/20190419-20190425?hl=ja

https://megalodon.jp/2019-0429-1740-28/hitsdailydouble.com/streaming_songs

Top 100: USA by Apple Music on Apple Music

Spotify Charts

Hot 100 5/4 見どころ 【”Con Calma"のKaty Perryリミックス、ラジオでは有効】

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こんばんは。今週のHot 100は語りどころが多かった気がします。

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・豪華メンバーが揃うLil Dickyの”Earth”が17位に登場

・Khalidの”Talk”がトップ10に浮上

・”ME!”が約2日分のラジオ再生「のみ」で100位に登場(DL/ストリーミングの集計はまだ)

・Daddy Yankeeの”Con Calma”が34位へ浮上。Katy Perryリミックス効果でラジオ/DL人気が拡大

・Billie Eilishがアルバム1位に再浮上

 

・今週のトップ10

      5月4日   R D S
- 1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road ✅🍎🚩 12 1 1
-   2 Post Malone Wow. 3 6 5
-   3 Post Malone & Swae Lee Sunflower  16 5 2
-   4 Ariana Grande 7 rings 5 19 4
5 Jonas Brothers Sucker  1 9 28
  6 Halsey Without Me 4 24 9
-   7 Sam Smith & Normani Dancing With A Stranger 2 14 43
8 Khalid Talk 20 20 8
-   9 Billie Eilish bad guy - 10 3
  10 J. Cole MIDDLE CHILD 21 42 7

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

“Old Town Road”のストリーミングは1.14億再生を記録。先週&先々週の”Old Town Road”、”In My Feelings”のピーク週に次いで歴代4番目の多さ

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

緑背景はその指標がトップ10内で最高、赤背景は最低

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆100 Taylor Swift feat. Brendon Urie – ME!

 一足早く登場!Taylor SwiftとBrendon Urieの”ME!” が100位に登場。今週はまだDLとストリーミングの集計が行われていませんが、2~3日分*1のラジオ集計「のみ」でHot 100に登場しました。リリース直後からラジオ再生数が大きく伸びる「大物」らしい現象です。

 その2~3日分の再生で今週ラジオ27位まで到達。かかっている系統は現在ポップ、アダルトポップ、アダルトコンテンポラリー系です。

 Taylor Swiftはこの「ラジオのポイントだけでHot 100デビュー」を過去にも何回か経験しています。

2012年:We Are Never Ever Getting Back Together:72位

2017年:Look What You Made Me Do:77位

 

 この曲の勝負どころは今週ではなく来週です。”Old Town Road”との激しい首位争いを制することができるか……?

 

 ほか今週ラジオの効果でHot 100に登場/再登場したのは、Brett Eldredgeの”Love Someone”(=カントリー系)、Anuel AAの”Secreto”(=今週ラテン系ラジオ1位)、Pédro Capoの”Calma”(=ラテン系)などです。

 

☆96 NLE Choppa – Shotta Flow

 NLE Choppaの”Shotta Flow”が96位に登場。初のHot 100入りです。YouTubeApple Music、Spotifyなどストリーミングで全般的に人気です。各種プレイリストでは数週前から注目されていました。

 

☆90 French Montana feat. Blueface & Lil Tjay – Slide

 French Montanaが新進気鋭のBlueface、Lil Tjayを迎えた”Slide”が90位に登場。Blueface、Lil TjayはいずれもHot 100に2回目のエントリー。

 この曲はYouTubeApple Music>Spotifyの順で人気。リリース直後からビデオがあったことからYouTubeで比較的良い成績を収めました。

 Lil Tjayが客演を務めるPolo Gの”Pop Out”が現在好調。現時点でApple Musicのトップ10圏内まで上り詰めています。

 

▽86 BLACKPINK – Kill This Love

 BLACKPINKの”Kill This Love”が3週目で86位。今まではHot 100登場後に即チャートから外れてしまったので、以前と比べると定着度が上がっていると見られます。

・DDU-DU DDU-DU 55位→圏外

・Kiss and Make UP 93位→圏外

・Kill This Love 44位→73位→86位

 

 この曲はYouTubeで主に好調。USのYouTubeでは今週35位の再生数を記録。そしてグローバルYouTubeランキングではBTSの”Boy With Luv”から1位の座を取り戻しています。

 「スタン」のパワーではBTSに強さがあり、チャートで際立った数字を残しやすいのはBTSですが、その他の層への波及力があるのはBLACKPINKのほうで最終的にはこちらの方が高い数字を残すことも多いです。

 今回のシングルで「リリース後24時間の再生数」が高かったのはBTSでしたが、最初の1週間トータルの再生数が高かったのはBLACKPINKの方でした。(これらの数字はグローバル再生数)

  最初の24時間 1週間
BTS / Boy With Luv 7460万 1.68億
BLACKPINK / Kill This Love 5670万 2.3億

 

 昨年リリースされたBLACKPINKの”DDU-DU DDU-DU”は現在YouTubeで7.83億再生まで到達。一方2017年にリリースされたBTSの“DNA”は現在7.15億再生です。(この2曲がそれぞれの最高再生数)

 またSpotifyでもDua LipaとBLACKPINKの“Kiss And Make Up”が10月リリースで2.19億再生。“FAKE LOVE”は5月リリースで2.27億再生なので、ペース的にはかなり”Kiss And Make Up”が有利です(これはコラボの効果もあると思いますが)

 

 この状況に対してBTS側も「定着度」を意識し始めたようです。今回のシングル”Boy With Luv”はラジオ受けが良さそうな仕上がりに。(実際ラジオ再生数を稼いでいる)

 今週この曲はHot 100で40位。先週の8位と比べると一気に落ちているように思えますが、BTSにとっては初めての「2週目のトップ40」だそうで、BTSとしては落下幅を抑えた方だということが分かります。

 

☆75 Beyoncé – Before I Let Go (Homecoming Live)

 Beyoncéがコーチェラのライブを記録したアルバム“Homecoming: The Live Album”をリリース。その中でもライブで公開されていた未公開曲≒新曲だった”Before I Let Go”(Mazeのカバー)が人気を集め、Hot 100に登場しました。この曲は昨年大活躍だったTay Keithがプロデュース。

 この作品は今週アルバムチャートで4位にランクインしました。(先週の集計の途中にリリースされ、先週の7位から順位を上げた)

 

 今週のアルバム1位は4週目のBillie Eilish。リリース週以来のアルバム1位返り咲きになりました。またApple Music・Spotifyへの「解放」が話題を読んだBeyoncéの過去作”Lemonade”が9位に再登場しています。

 

△39 Offset feat. Cardi B – Clout

 Offset + Cardi B夫妻の”Clout”が39位へ浮上。リリース時のピークを更新し、トップ40入りを果たしています。Cardi Bは全26回のHot 100エントリーのうち20曲がトップ40まで到達しています。(ストリーミング世代のラッパーながらもラジオ世代並みのヒット率)

 先週はビデオ公開からの集計期間が2日分でしたが、今週はフルで集計されるようになって、YouTubeの再生数が伸びました。(今週YouTubeで3位)

 

△37 Marshmello feat. CHVRCHES – Here With Me

 ラジオ&Spotifyで好調をキープする”Here With Me”がトップ40入り!37位へ浮上しています。Marshmelloにとっては7曲目のトップ40(しかしうちトップ10まで到達したのは1曲のみ) CHVRCHESはこの曲が初のHot 100エントリーだったので、トップ40も初めてです。

 出す曲が軒並みヒットする絶好調のMarshmelloですが、この曲のコラボ相手CHVRCHESがMarshmelloの次のシングル、Chris BrownとTygaとの“Light It Up”に疑問を呈しています。

 

 過去に性的に問題のある歌詞・行動が見られたChris BrownならびにTygaとのコラボに対して「困惑した」とCHVRCHES側がコメントしています。(しかし同時にMarshmelloを人として尊敬しているとも述べている)

 

 これはあくまで個人的な考えなのですが、Marshmelloはヒットを飛ばすようになってから、「部門」に分かれて仕事をする「会社」のようになった印象があります。ポップ、ラップ、ダンスと作風がそれぞれでかなり違うシングルをいくつかリリースしています。その戦略の「的確さ」から少し「会社」のようなものを感じます。仮面をかぶれば誰でもMarshmelloになれるため「変幻自在」というイメージは彼(?)と合うと思います。

 様々なジャンルの曲をリリースすることで幅広い層へのリーチが期待され、Marshmelloの人気向上が狙えます。さらに主要部門でMarshmelloにハマった人が他の部門のMashmelloの曲を聴き、他のジャンルへのクロスオーバーを促し、豊かな音楽体験を提供するという、Marshmelloブランド内での相乗効果もあるかもしれません。

 

 現在ある部門は3つだと考えています。

① ポップ部門:主要部門。“Happier”や”Here With Me”など

② ラップ部門:彼がラップの「ビートメーカー」のように活躍する部門。曲の最初に”Mello Made It Right”とタグを付けているのが特徴的。“Project Dreams”や”Light It Up”など

③ ダンス部門:彼が元来行っていたダンス系の部門。①②に紛れながら現在も密かにリリースが続いている。“Fly”など

 

 ①の姿のMarshmelloとコラボしたCHVRCHESが疑問を呈しているのは②の姿のMarshmello(もしかしたら実際に「中の人」も違うのかもしれないし……)で、思想が多少違うのは致し方ないのかもしれません。

 ただし同じMarshmelloの名のもと活動するならば、これはきちんと弁明して信頼を保つ必要がありそうです。

 

 

△34 Daddy Yankee & Katy Perry feat. Snow – Con Calma

 Daddy Yankee、Snowによる“Con Calma”が34位へ浮上。Katy Perryリミックスの力を借りてトップ40まで到達しました。

 Katy Perryリミックスによって主に伸びたのはラジオとDL。今まで主にラテン系の局で再生されていたこの曲ですが、Katy Perryリミックス後はポップ系やリズミック系の局で再生数が浮上。ラジオではリミックスの効果が如実に表れました。

 一方ストリーミングでの効果は微妙です。YouTubeでは多少の伸びが見られましたが、SpotifyApple MusicではいずれもKaty Perryリミックスは200位圏外です。

 

 ラテンのヒット + 英語圏シンガーという組み合わせで過去に成功した”Despacito”、“Mi Gente”ほどは派手なチャートアクションにはならないと思いますが、ラジオの伸びへの貢献がかなり見られたので、Katy Perryリミックスは一定の効果は発揮したと言えると思います。

 

☆2019年にリリースされたYouTubeビデオの再生数

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*2

“Con Calma”は2019年にリリースされたビデオの中では再生数が最も多いです。また多様な地域の音楽ビデオが再生数を伸ばしていることが特徴的です。(特にアジア圏の躍進)

 

☆17 Lil Dicky – Earth

 Lil Dickyのチャリティーシングル、”Earth”が17位に登場。DLで高い数字を残したほか、アニメ調のビデオに人気が集まったYouTubeで人気を集めています。このシングルで得た収益は環境保全のチャリティーに寄付されるようです。

 客演の表記は無いですが、この曲では豪華なゲストが参加。参加したアーティストは以下の通りです。(うちJustin Bieber、Ariana Grandeの出番が若干多め) 

 

Justin Bieber、Ariana Grande、Halsey、Zac Brown、Brendon Urie、Hailee Steinfeld、Wiz Khalifa、Snoop Dogg、Kevin Hart、Adam Levine、Shawn Mendes、Charlie Puth、Sia、Miley Cyrus、Lil Jon、Rita Ora、Miguel、Katy Perry、Lil Yachty、Ed Sheeran、Meghan Trainor、Joel Embiid、Tory Lanez、PSY、Bad Bunny、Kris Wu

 

 YouTubeでは今週2位にランクインしましたが、Spotifyでは25位、Apple Musicでは100位に入るか入らないか程度です。チャリティーシングルなので、そもそもヒットを狙っているかは分かりませんが、今後YouTubeを高く保ちつつラジオが伸びればさらなるヒットになりそうです。

 

△8 Khalid – Talk

 Khalidの”Talk”が8位へ浮上!“Better”に引き続きアルバム内から2曲目のトップ10入りを果たしました。また彼にとってキャリア通算5曲目のトップ10です。

 アルバムリリース以降、ストリーミングで好調だったこの曲ですが、ラジオの伸びが反映され、トップ10まで到達しました。今週リズミック系では2位まで到達しています。ほかポップ系やアーバン系で人気。またこの曲はYouTube再生(特にリミックスの再生)が今週伸びています。

 アルバムリリースくらいのタイミングからKhalidのメインシングルは”Better”から“Talk”に切り替え。アルバム熱があるうちにラジオが伸ばせたことがトップ10入りの秘訣です。Khalid陣営のラジオシングル運営が巧みだったと言えます。

 

×× Cardi B – Money

 Cardi Bの“Money”が今週チャートから外れました。ピークは13位、チャート滞在は26週でした。トップ10には届かなかったですが、滞在が少し長めなので「可もなく不可もなく」なチャート成績だったと思います。

 この”Money”はApple Music・YouTubeでは絶大な人気だった一方、Spotifyでは週間のトップ10に入れていません。(週間17位が最高) またポップ系などラジオでのクロスオーバーもありませんでした。意外と支持されている層が狭いというCardi Bが抱える弱みが出たという見方もできます。(ラップリスナー間での熱狂度は高いが……)

 

×× Dan + Shay – Tequila

 Dan + Shayのロングヒット”Tequila”が大往生を遂げました。ピークは21位、チャート滞在は50週でした。この曲は一回「ヒットが終わった」とされてチャートから外れていましたが、その後ポップ系ラジオへの飛び火があったことから「まだ伸びしろがある」と認められてチャートに再登場を果たしました。再登場後も幅広い人気で長くチャートに残りましたが、ついに今週チャートから外れました。

 

 カントリー曲はラジオを中心に、固定のカントリーリスナーのみに届く傾向があり、どの曲も似たようなチャートアクションで同程度の順位を記録することが多いです*3。しかし他系統のラジオ、またはストリーミングなどで人気を得ると大ヒットになります。(そして珍しいチャートの動き方をする)

 Dan + Shayはこのシングル以降幅広い人気を獲得し、次シングルの“Speechless”はストリーミングでも人気を得て、カントリー以外のラジオ=アダルトポップ系でもオンエアされていました。

 現在チャート入りしているカントリー曲の中でこの動きが期待できるのは、アダルトポップ系でもオンエアが始まったThomas Rhettの”Look What God Gave Her”やストリーミングでも人気の高いLuke Combsの“Beautiful Crazy”(既にヒット済み)などです。もちろんDan + Shayの次シングル”All To Myself”にも期待がかかります。

 

×× Bad Bunny feat. Drake – MIA

 Bad BunnyとDrakeの“MIA”が今週チャートから外れました。ピークは5位、チャート滞在は27週でした。Drakeもスペイン語で歌唱。ほとんどスペイン語のみで歌われた曲としては大健闘だったと思います。

 この曲はラテン系ラジオで人気だったほか、英語曲をかけるリズミック系ラジオでも首位まで到達しました。

 この曲も収録されたBad Bunnyのアルバム”X 100PRE”はストリーミングで現在も人気。アルバムチャートのピークは11位とそこまで高くないですが、18週目の今週も30位と、かなり成績が安定しておりロングヒットの兆候が見られます。今後「ラテン・トラップ」のUSリスナーへの定着を促した記念碑的な立場になるかもしれません。

 

今週チャートから外れた曲 (9曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

98 Riley Green – There Was This Girl (🗻70位 /⏰8週)

95 BTS – Make It Right (🗻95位 /⏰1週)

92 Nipsey Hussle feat. YG – Last Time That I Checc’d (🗻76位 /⏰3週)

83 FLETCHER – Undrunk (🗻61位 /⏰6週)

82 Nipsey Hussle feat. Belly & DOM KENNEDY – Double Up (🗻65位 /⏰3週)

66 Five Finger Death Punch feat. Kenny Wayne Shepherd, Brantley Gilbert & Brian May – Blue On Black (🗻66位 /⏰1週)

50 Cardi B – Money (🗻13位 /26週)

49 Dan + Shay – Tequila (🗻21位 /50週)

45 Bad Bunny feat. Drake – MIA (🗻5位 /27週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

6 Lizzo – Cause I Love You

21 Cage the Elephant – Social Cues

22 Starbomb – The Tryforce

23 The Rolling Stones – Honk

34 Tech N9ne – N9na

66 Upchurch – Creeker 2

70 Wiz Khalifa – Fly Times, Volume 1: The good Fly Young

156 Shy Glizzy – Covered N Blood

177 Johnnyswim – Moonlight

183 After The Burial – Evergreen

 

アルバムチャート長期滞在

1周年:Post Malone – beerbongs & Bentleys (今週10位)

1周年:YoungBoy Never Broke Again – Until Death Call My Name (今週108位)

 

 “beer~”は1年が経過してまだトップ10圏内!このアルバムよりも後にリリースされた”Scorpion”や”ASTROWORLD”辺りよりも高い順位です。ストリーミング世代のロングヒットの王とも言える大活躍。前作”Stoney”も124週目で29位にランクイン。

 

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road

・Khalid – Talk

・Daddy Yankee & Katy Perry feat. Snow – Con Calma

・Chase Rice – Eyes On You

・Sam Smith & Normani – Dancing With A Stranger

 

※”Old Town Road”は再びカントリー系ラジオチャートの圏外へ。

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Lizzo – Truth Hurts

・Lizzo – Juice

 両方ともHot 100入りの可能性あり。”Truth Hurts”はNetflixドラマに採用された効果での浮上、”Juice”はラジオ人気が高いです。2曲のヒットが相乗効果を発揮し、「Lizzoって誰!?」という興味がこの2曲の人気を高めているという読み方もできます。

 

・Beyoncé – Hold Up

 Apple Music、Spotifyに解放でストリーミングが向上。解放直後は注目を集めましたが、その後はそこまで数字が持続しなかったのでHot 100再登場は厳しそうです。

 

 

・参考 / 関連記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

  

 

 

ビルボードのスタッフが議論するシリーズ

 

今週のテーマはLil Dickyの“Earth”です。

① トップ20でデビューしたことには驚きましたか?

② Pitchforkがこの曲を「地球温暖化レベルの悪」と評していましたが、どう思いますか?

③ ゲストの中で良かったのは誰か?悪かったのは?

④ 「チャリティー要素」以外にこの曲で良かったことは?

⑤ 21世紀の他のチャリティー曲以上に記憶されるか? (”Just Stand Up”など)

 

 この議論シリーズでビルボードがけっこうPitchforkなどに言及し始めたのは個人的に興味深いです。ほかビルボードTwitterで最近Spinの記事をリツイートするようにもなるなど、意外と批評方面との連携も考えているのでしょうか?

 ビルボードの記事は「簡潔」なものが多く、個人的には「重厚な」記事も読んでみたいので、批評メディアとの連携には期待しています。

 

 

・ChartData氏 & Alexanderao氏によるHot 100解説

今週はなし

 

 

*1:ラジオのみ集計サイクルが月曜日~日曜日のため、金曜日リリース曲が金、土、日の3日分ラジオ再生が前週のチャートに入る。この曜日サイクルが具体的に何時~の調査は不明ですが、早い曲でもかかり始めるのは土曜日の集計頃からなので、「2日分」のラジオ再生と捉えることができる。ありえない速度でラジオ再生を伸ばす“ME!”も再生が確認されたのは土曜日の集計からだった

*2:表を画像で貼り付けているのは、PC版のブログで国旗の絵文字を表示させる方法が分からなかったからです

*3:これは私が毎週のHot 100見どころであんまりカントリー曲を取り上げない理由でもあります

現在のヒットがそれとなく分かるプレイリストを作っています

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 今や音楽業界の中心ともいえるストリーミング。その中で影響力を持つコンテンツの一つにプレイリストがあります。

 私は有名プレイリストの曲の入れ替わりや特徴など、定期的に観察を行っているのですが、その作業中に「自分だったらこの曲を入れるな~~」などと感じることが多かったので、自分の考えを反映させるヒット系プレイリストを作ってみることにしました。

 

 

 最も意識しているプレイリストはSpotifyToday’s Top Hitsです。このプレイリストは世界で最もフォローされているリストなようです(現在約2300万フォロワー)

 Apple Musicでこのリストに相当するのはUS版のToday’s Hitsです。日本からアクセスできるプレイリストでは「トゥデイズヒッツ:洋楽」や「グローバルポップ」などがこれに当てはまるでしょうか……?

 ちなみに意識しているのはSpotifyのリストなのに作っているのがAppleなのは個人的な利便性の都合です💦💦

 

 このToday’s Top Hitsリストはその名の通り、現在のヒットを紹介しています。曲数は他の一般的なSpotifyプレイリストと同様に50曲です。

 現在のヒット?ということならば、そのまま現在世界でヒットしている上位50曲を紹介している?……というワケでもないです。(これの他に純粋なグローバル50位以内を紹介しているプレイリストもある)

 グローバル上位50曲の中では、いくつか「現在のヒットリスト」から外しても良さそうな曲がいくつかあるのです。

(参照:直近の週のSpotifyグローバルランキング

 

 まず最大の理由となるのが、①すでにヒットから時間が経過しており、もう紹介の必要が無い曲 です。

 ストリーミングでも一般的なシングルチャートと同じように大ヒット曲がいつまでもランキング上位に居座ることがあります。それらの曲は既にプレイリスト内で何週にもわたって「紹介済み」であるので、プレイリストを有用に機能させるために古い曲は仮に上位にランクインしていても次第にリストから消えていきます

 

この①だけでもかなりの曲が外されますが、それ以外にも……

② アルバム内の優先度が低いシングル

③ 一部地域のみで局地的にヒットしているシングル 

④ その他倫理的に問題があるシングル (レアケース、最近ではYNW Melly)

 

  ……のような理由でもトップ50圏内の曲は外れて、Today’s Top Hits内で実際にグローバルトップ50に入っている曲は半数程度になります。

 その余った枠に代わりに入れるのは、「今後ヒットする曲」「周知させる意義のある曲」などです。この実際の上位ヒット以外の「プラスアルファ枠」にそれぞれのヒット系リストの色が出ると思います。

 

 SpotifyのToday’s Top Hitsは「プラスアルファ枠」に主に英語圏のポップスを採用しています。独自の観点から新たなヒットを発掘していることもありますが、意外とUSラジオのシングルを基準にした選曲も多く見られます(現在のリストではAlessia Cara、twenty one pilotsなど)

 これらの「プラスアルファ枠」曲はリストに入って実際にヒットすることもありますが、そうではない場合も多いです。

 逆にあまり採用されないのは英語圏以外の曲です。ラテンは常時3曲程度の枠が割かれていますが、実際にトップ50圏内に入っているラテン曲はもっと多いです。ほかドイツ、フランス辺りの曲もSpotifyグローバルトップ50まで達する場合もありますが、それらが紹介されている所を私は今の所見たことがありません。

 一方K-Popは普通にリスト採用するようで、現在はBTSとBLACKPINKが両方リスト入りしています。(BTSは先週このリストの表紙だった)

 また批評方面で評判の良い曲をたまに採用することがありますが、ストリーミング数をそこまで多く稼げる訳ではないので、すぐに「ヒットしていない」と判定されて外れてしまいます。(Solangeの“Almeda”は2週間でリストから外れた)

 総じて、「新しいヒットを生み出すこと」に何よりも力を入れているという姿勢が感じられます。

 

 このように、プレイリストの選曲には様々な判断基準があります。このToday's Top Hitsを参考にしつつ、私のプレイリスト「改・トゥデイズヒッツ」では以下のような選曲基準を設けました。

 

① 英語以外のヒットも少し多めに紹介する 

② ジャンルレスなプレイリストにする 

③ 基本的には「ヒット」を紹介することが目的ですが、「ヒット」の形には様々な物があると考え、再生数以外の項目を判断基準にする場合もある(インディー方面の反応など)

 

というのが選曲時の方針です。また、それ以外にも

④ 幅広い曲を紹介するためにリストは60曲に

⑤ Today’s Top Hitsはヒット済みの曲を見切るのが早すぎるので、その曲の入れ替わりサイクルをもう少しゆっくりにする

 

 などが個人的なこだわりです。他のリストがまだ入れていない曲がヒットすると嬉しいです。

 

「ヒットしているかどうか」を判定は主に以下のチャートで行っています  

Spotify グローバルランキング (ランキングのグローバルさの塩梅が絶妙)

・Hot 100

Apple Musicランキング 

 

その他、以下の要素も判定の参考にしています

YouTube各種ランキング

・USラジオ (ポップ系がメイン、オルタナティブ系ラジオも参考)

・US以外の国:イギリス、ドイツ、フランス、東アジア圏など

・Album of the Yearなどインディー方面の反応

 

 ほかプレイリストの並びにも多少の意味があって、上から1~10番目の曲は「いま最も熱い曲」、そして11番目~30番目の曲は「注目度が高めの曲」、そして31番目以下は「ヒットのピークは少し過ぎた曲」 or 「これからヒットする、もしくは局地的なヒット曲」です。

 Today’s Top Hitsは新たなヒットを生み出すために、実際のヒット度が発展途上でも上り調子ならばリスト上位に配置するケースがありますが、私のプレイリストの配置は実際のヒット度に重きを置いています。

 

 今何がヒットしているのかな~~をなんとなく掴みたい時に、シャッフル等でかけてみると面白いかもしれません。気が向いたときにお役立てください。

 あとは自分でプレイリストを作ってみると他のプレイリストの特徴などもよりくっきり分かってきたのが面白かったです。

 

Hot 100 4/27 見どころ 【BTSが3枚目のアルバム1位、アルバム曲もHot 100に登場】

 

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 こんばんは。今週の主要なトピックは3回目のアルバム1位を獲得したBTSです。ほかBaby SharkやQueenのソロ名義など……

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

BTSがアルバム1位。シングルの”Boy With Luv”は8位に登場!ほかアルバム曲の“Make It Right”も95位にランクイン

・そのBTSの2曲のほか、“Kill This Love”・”Baby Shark”がチャートに残り、今週韓国産の曲が4つ同時にHot 100入り

・Lil Uzi Vertの“Sanguine Paradise”が28位に登場

 

・今週のトップ10

      4月27日   R D S
- 1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road ✅🍎🚩 18 1 1
2 Post Malone Wow. 5 7 4
  3 Post Malone & Swae Lee Sunflower  14 6 2
-   4 Ariana Grande 7 rings 4 14 6
-   5 Halsey Without Me 3 17 11
- 6 Jonas Brothers Sucker  1 9 26
7 Sam Smith & Normani Dancing With A Stranger 2 11 30
8 BTS feat. Halsey Boy With Luv - 3 5
9 Billie Eilish bad guy - 10 3
  10 Cardi B & Bruno Mars Please Me  12 22 15

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

※3ジャンルのストリーミングを制覇した”Old Town Road"は今週1.25億再生。先週よりは少し数字を落としましたが、それでも従来の歴代最高だった”In My Feelings"=1.16億再生は上回っています。

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

緑背景はその指標がトップ10内で最高、赤背景は最低 *1

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆96 Panic! At the Disco – Hey Look Ma, I Made It

 Panic! At the Discoのシングル“Hey Look Ma, I Made It”が96位に登場。前アルバム”Pray For the Wicked”から3曲目のシングル。

 この曲はシングルカットされた後、ラジオの再生数を次第に伸ばしてHot 100に登場……という最も一般的な手法でヒットしています。ポップ系、アダルトポップ系、オルタナティブ系で人気。

 

☆95 BTS – Make It Right

 今週アルバム1位を獲得したBTS。従来の作品と同じく、シングルの“Boy With Luv”がビデオの爆発的な人気によってHot 100の高い順位で登場したのですが、今回は「非シングル」=アルバム曲もHot 100入りを果たしました。

 Ed Sheeranがソングライトに参加した“Make It Right”が95位に登場。DLが今週13位だったほか、Spotifyで54位、Apple Musicで100位前後とストリーミングでも数字を稼いでいます。”Mikrokosmos”や“HOME”も同じくらいのストリーミングを稼いでいたのですが、”Make It Right”よりも若干DLが少なかったことからHot 100にはギリギリ手が届かず。(101位~125位相当を扱うBubbling Underには4曲がランクイン)

 

 BTSのこの2曲に加え、BLACKPINKの“Kill This Love”とPinkfongの”Baby Shark”が今週チャートに残ったことにより、今週は韓国産の曲が4つHot 100に同時エントリーしたことに。

 K-Popの同時複数Hot 100入りは今週と先週に加えて、BTSの“FAKE LOVE”とBLACKPINKの”DDU-DU DDU-DU”が同時にランクインした昨年の6月にもありました。

 

・年別K-PopのHot 100エントリー数 (コラボ等も含む)

2009年:1(Wonder Girls)

2012年:1(PSY)

2013年:1(PSY)

2014年:1(PSY)

2015年:1(PSY)

2016年:1(CL)

2017年:2(BTS×2)

2018年:5(BTS×3、BLACKPINK×2)

2019年:4(BTS×2、BLACKPINK、Pinkfong)

合計:17曲

 

◇94 Lauv & Troye Sivan – i’m so tired...

 LauvとTroye Sivanの“i’m so tired...”が94位に再登場。86位に登場した、リリースの週以来のHot 100再登場です。ポップ系ラジオの再生数が上向いてきたことが再登場の要因です。

 この曲はリリース週以降もSpotifyでは高い人気をキープしていましたが、他のストリーミングやラジオで人気が上がらなかったことから、なかなかHot 100入りできず。一時期7週連続で「Hot 100に入っていない曲の中でSpotify順位が最も高い曲」でしたが、ここ数週はラジオが上向きHot 100に再登場を果たしました。ただしSpotify再生数はリリース時と比べると若干落ちてきています。

 

※2019年、Hot 100に入っていない曲の中でSpotify順位が最も高い曲

1/5:XXXTENTACION – whoa (mind in awe)

1/12:Khalid – Saturday Nights

1/19~2/2:XXXTENTACION – whoa (mind in awe)

2/9:Dua Lipa – Swan Song

2/16~3/30:Lauv & Troye Sivan – i’m so tired...

4/6:Khalid – My Bad

4/13:Billie Eilish – goodbye

4/20:Billie Eilish – i love you

4/27:Khalid & John Mayer – Outta My Head

※日付はHot 100準拠

 

 Spotify順位が高くてもHot 100に入れない曲は、「シングルではない場合」と「他のストリーミングで人気が出ない場合」が多いです。前者はストリーミングで人気が高いアーティストのアルバム曲、後者はポップスに見られる場合が多いです。(特にシングルリリースの場合、Apple Musicではあまり人気が出ない場合がある)

 前者はDLとラジオの不足、後者はストリーミングの不足がHot 100入りしない主な理由です。両方の理由が混在している場合もあります。

 

☆81 Eli Young Band – Love Ain’t

 カントリー系ラジオで人気を集めた“Love Ain’t”が81位に登場。カントリー系バンドのEli Young Bandは6曲目のHot 100エントリーです。

 

◇72 Offset feat. Cardi B – Clout

 OffsetとCardi Bの“Clout”が72位に再登場しています。新しくリリースされたビデオ、そしてシングル化に伴うラジオ再生数増加がHot 100入りの要因です。

 YouTube再生数が今週8位に。また、ビデオのリリースに伴いApple Musicでも再注目されて40位程度まで浮上しています。

 

☆68 Avicii feat. Aloe Blacc – SOS

 およそ1年前に亡くなったAviciiの”SOS”が68位に登場。“Wake Me Up”でもボーカルを担当していたAloe Blaccが客演で参加しています。

 この曲はSpotifyで今週11位にランクインしています。ほかApple Music、iTunesのダウンロードなどでも一定の人気を集めました。

 

☆66 Five Finger Death Punch feat. Kenny Wayne Shepherd, Brantley Gilbert & Brian May – Blue On Black

 Five Finger Death Punchによる“Blue On Black”が66位に登場。客演にもクレジットされているKenny Wayne Shepherdの楽曲をカバーしたものです。Five Finger Death Punchは2回目のHot 100エントリーで、最高位を更新。

 この曲はシングル化に伴い、新たにカントリーシンガーのBrantley Gilbert、そしてQueenのギタリストBrian Mayが新たに参加。その豪華ゲストの効果なのか、今週2番目に多いダウンロードを集めました。

 Queen名義では計23曲がHot 100入りしていますが、Brian Mayはソロ名義では初のHot 100入りです。ほかQueenのボーカル、Freddie Mercuryソロ名義で2曲のHot 100にエントリーしています。

 

▽43 Pinkfong – Baby Shark

 Hot 100の中位をキープし続け、気づいたらチャート滞在が16週にまで達していた”Baby Shark”。ほぼYouTubeの人気のみでここまで順位を保ち続けているという点が画期的です。中位に長く滞在し続けたことから、トータルでのヒット度は優秀で年間チャートにも入る可能性が高そうです。

 ちなみにビルボードはこの曲を「古い曲」と認識しており、51位以下に落ちるとチャートから外れてしまう模様です。(と読める文面がありますが、この51位以下~というのはエントリーする時限定のルールだったということが後に判明しました)

 

 ほか現在Hot 100で48位、A Boogie Wit da Hoodieと6ix9ineの“Swervin”も、非ラジオシングルながらもストリーミングの人気でHot 100の中位をキープし続けています。

 ラジオでシングルになっているのは”Look Back At It”の方ですが、ストリーミングでは“Swervin”も同等以上の人気があります。

 Spotifyはこの曲を最近ラップのプレイリスト=RapCaviarだけでなく、総合プレイリスト=Today’s Top Hitsにも追加しています。

(もともとは“Look Back At It”を入れていたが、この3週前に”Swervin”に切り替えました。現在は「容疑者」の身分の6ix9ineが参加しているシングルをプレイリストに新たに追加したのは意外でした)

 

☆28 Lil Uzi Vert – Sanguine Paradise

 Lil Uzi Vertの“Sanguine Paradise”が28位に登場。ストリーミングで絶大な人気を集めてHot 100上位に登場しました。

 Apple Musicで2位、Spotifyで7位と特に「オンデマンド型」のストリーミングでは高い人気。一方、YouTubeではビデオがリリースされていないからか、今週51位に留まりました。

 この曲と同時にリリースされた“That’s A Rack”も76位に登場しています。

 

△18 Ariana Grande – break up with your girlfriend, i’m bored

 “break up with your girlfriend, i’m bored”が19位→18位とやや浮上。この曲は今週ラジオ10位に突入しています。

 アルバムと共にリリースされたこの曲は、初週2位に登場して以降は順位を少し落として15位前後を推移。ストリーミングが落ちていく分、ラジオの伸びがそれを補い横ばいの状態が続きました。

 ストリーミングではアルバムのリリース時に最も盛り上がりを見せるため、アルバムから時間が経過するとどうしてもストリーミング数が萎んでいってしまいます。そのためラジオがこれからピークを迎えてもストリーミングの減少が足を引っ張ってトップ10まで届かないかもしれません。

 

△9 Billie Eilish – bad guy

 Billie Eilishの”bad guy”が11位→9位でトップ10に復活。DLが少し伸びたことや、ラジオでかかり始めたことが上昇の要因です。

 Billie Eilishは現在”when the party’s over”がメインシングルに据えられており、順調に再生数を伸ばしていますが、それと同時に”bad guy”もシングルカットされて、ラジオでかかり始めています。現在”when the~”はポップ系ラジオ25位、”bad guy”は同38位につけています。

 アルバムリリース前くらいまでの時期は、Billie Eilishの曲はあまりラジオでかかっていませんでしたが、アルバムを期にラジオも彼女の人気を認知したのか、ラジオの数字も伸びてきています。

 Billie Eilishのアルバムは今週で3週目ですが、ストリーミングで好調をキープ。”wish you were gay”や”my strange addiction”などのアルバム曲も今週Hot 100に残っています。合計8つの彼女の曲が今週Hot 100に入っています。

 目立った新リリースが無かった来週のアルバムチャートでは、1位に返り咲く可能性もあります。

 

☆8 BTS feat. Halsey – Boy With Luv

 BTSが3度目のアルバム1位を獲得!総合セールスは今までの作品で最も高い23.0万を記録。うちセールスが19.6万、ストリーミングが2.6万、シングルDLが0.8万でした。セールスが以前にも増して増加。さらに曲数が少ないことを考慮すると、今までの作品よりもストリーミングの数字も伸びている印象です。

(昨年の1位アルバム)

Tear:総合13.5万、セールス10万、ストリーミング2.6万、シングルDL0.9万

Answer:総合18.5万、セールス14.1万、ストリーミング2.5万、シングルDL1.9万

 

 初めてアルバム1位を獲得したのは昨年の5月。そこから昨年の8月、今年の4月と1年弱で3つのアルバムを獲得することに成功しました。1年以内に3つのアルバム1位を獲得するのは2015~2016年のFuture以来です。

 

 そしてシングルの“Boy With Luv”は彼らにとって過去最高の8位に登場。YouTubeの再生数が以前よりも少し伸びたこと、Spotifyでの人気(今週4位)、そしてポップ系ラジオでの人気が、過去最高位の理由です。

 

※USでの初週YouTube再生数

FAKE LOVE=10.3M → Hot 100で10位

IDOL=12.7M → Hot 100で11位

Boy With Luv=13.6M → Hot 100で8位

 

 この曲はYouTubeでリリース後24時間で7460万再生を記録。先週BLACKPINKが”Kill This Love"で記録した5670万再生を上回り、「リリース後24時間で最も再生された”音楽ビデオ”」の座を奪還しました。

 ちなみに音楽ビデオ以外では、映画"Rings"のイタズラ動画での2億再生が最高。(”Rings"は鈴木光司が原作の作品で、いわば「貞子」のアメリカ版)

 

 従来のBTSのシングルは、初週にDLとYouTubeによってドカーンと高い順位を記録した後、すぐにチャートを下降していくことが多かったですが、今回の“Boy With Luv”はポップ系ラジオやSpotifyでも人気を獲得したことから、持続的なヒットになるかも。

 BTSの曲で今までHot 100に最も長く滞在したのは“MIC Drop”の10週。この曲は同時にラジオで最もヒットした曲でもあります(ポップ系ラジオで25位)。

 ”Boy With Luv”は既に今週ポップ系ラジオで26位まで到達しているので、来週には“MIC Drop”を上回る最大級のラジオヒットになりそうです。

 

 

△7 Sam Smith & Normani – Dancing With A Stranger

 Sam SmithとNormaniの“Dancing With A Stranger”が7位へ浮上!トップ10入りを果たしました。Sam Smithにとっては6曲目のトップ10、Normaniにとってはソロで2曲目のトップ10です。

 ヒットの要因は今週2位まで浮上したラジオです。ポップ系、アダルトポップ系と規模が大きい系統で人気。ここ数週のラジオの伸びが大きく、今後“Sucker”とラジオ1位の座を争いそうです。 ※“Sucker”は今週新たにラジオ1位に立った

 この曲はストリーミングもある程度の数字をリリース以降キープしています。(SpotifyでもApple Musicでも現在60位程度、YouTubeでは15位と好調)

 

今週チャートから外れた曲 (11曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Nipsey Hussle feat. Stacy Barthe – Vicotry Lap (🗻100位 /⏰1週)

97 Nipsey Hussle feat. Kendrick Lamar – Dedication (🗻93位 /⏰2週)

95 Aventura – Inmortal (🗻95位 /⏰1週)

93 Khalid – Right Back (🗻93位 /⏰1週)

92 Billie Eilish – all the good girls go to hell (🗻46位 /⏰2週)

87 Khalid – Bad Luck (🗻87位 /⏰1週)

85 Pedro Capó & Farruko – Calma (🗻85位 /⏰5週)

84 Khalid & SAFE – Don’t Pretend (🗻84位 /⏰1週)

69 Ariana Grande & Victoria Monét – MONOPOLY (🗻69位 /⏰2週)

58 Khalid & John Mayer – Outta My Head (🗻58位 /⏰1週)

55 Khalid – My Bad (🗻55位 /⏰3週)

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 BTS – Map Of The Soul: PERSONA

4 Anderson .Paak – Ventura

7 Beyoncé – HOMECOMING: THE LIVE ALBUM

18 Aaron Lewis - State I’m In

70 LSD – Labrinth, Sia & Diplo Present... LSD

76 Danny Gokey – Haven’t Seen It Yet

84 Grateful Dead – Warfield: San Francisco, California, October 9th, 1980 / October 10th, 1980

95 Melissa Etheridge – The Medicine Show

130 Bob Dylan – Blood On The Tracks Test Pressing

156 Green Day Live!: Woodstock 1994

158 Pink Floyd – A Saucerful Of Secrets

164 Norah Jones – Begin Again

167 Shovels & Rope – By Blood

176 The Rolling Stones – Big Hits [High Tide And Green Grass]

181 Fleetwood Mac – The Alternate Fleetwood Mac

184 Prince – Hi Majesty’s Pop Life / The Purple Mix Club

190 Pearl Jam – Live At Easy Street (EP)

200 Andy Black – The Ghost Of Ohio

 

・アルバムチャート滞在記録

☆1周年:J. Cole – KOD (今週98位)

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road

・Jonas Brothers – Sucker

・Sam Smith & Normani – Dancing With A Stranger

・Khalid – Talk

・Daddy Yankee feat. Snow – Con Calma (途中からKaty Perryバージョンも追加)

 

 ↑“Old Town Road”は今週カントリー系ラジオチャートで50位に再登場しています。

(すいません私の「カントリー系ラジオ再登場は難しい」という予想が外れました)  Mediabaseというラジオのチャート(かかった回数ベースのチャート)ではまだ50位以内に入っていません。このMediabaseでも50位以内に入れば満を持してHot Country Songs復帰か……??

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Beyoncé – Hold Up

・Beyoncé - Formation

 Beyoncéの2016年のアルバム”Lemonade”がついにApple Music・Spotifyで解禁に。その効果でのストリーミング増によって収録曲のHot 100再登場もあるかも……?この効果が表れるのは来週もしくは再来週のHot 100です。

 ストリーミングではTidal限定で公開だったこのアルバムは、主にそのTidal人気によって収録曲が全てHot 100に登場していました。

 ちなみにApple Music・Spotifyの両方で1番人気は“Sorry”ですが、この曲は既に20週チャートに入っていたため再登場には50位以上にランクインする必要があります。(これ以外の曲もビルボードが「過去の曲」と判定して50位以上の順位が必要になる可能性も……??)

 

・TWICE - Fancy

 BLACKPINK、BTSの次はTWICE!?しかし、TWICEはまだこの2組と比べるとグローバルな人気を得ていない(=人気がアジア圏に集中している)ので、Hot 100にはまだ手が届かなさそうです。

 しかし初めてSpotifyのグローバルランキング圏内に登場するなど着実に人気は拡大中です。

 EPに収録された“GIRLS LIKE US”という曲ではCharli XCXとMNEKがソングライトに参加しています。

 

 

・参考 / 関連記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

ビルボードのスタッフが議論するシリーズ

今週のテーマはBTSのアルバムについてです。

① アルバム関連の記録で、何が印象的でしたか

② 今までのシングルは短命に終わっていますが、“Boy With Luv”はどうなる?

③ ファンではない人にオススメしたいPersonaの収録曲 (“Boy With Luv”以外で)

④ 英語圏のアーティストでBTSとコラボしてほしいのは?

⑤ グラミーの舞台でパフォーマンス、フェスのトリ、Hot 100首位、次に達成するのは?

 

↑④でGrimesやBROCKHAMPTONなどが挙げられいる点が印象に残りました。

 

※ChartData氏とAlexanderao氏の記事は毎週木曜日に更新だと思います

↑ちなみにこの記事で言及されているApple Musicの順位が~~という所は「執筆時」の順位を書いており、執筆時はその週のチャートの集計対象外な点に一応留意すると良いかもしれません。

(私が記事内で述べているApple Music「位程度」というのは、集計時の順位を指しています。Apple Musicには週間チャートが無いため、程度という表現になります)

 

 

*1:同じくラジオ50位圏外の"Boy With Luv"、"bad guy"は両方がかけられているポップ系ラジオの順位で判定

Billy Ray Cyrusともコラボ!5年前にカントリーラップを志したBuck 22というラッパーについて

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 現在カントリーとラップを融合させたLil Nas Xの“Old Town Road”がアメリカを中心に大ヒットしています。この曲がヒットした一因はビルボードの「ジャンル変更」。途中までHot Country Songsというチャートに入っていたのですが、ヒットしかけたタイミングでチャートから除外されました。

 このことが話題を呼び、この曲のストリーミングなどが浮上。さらにはカントリー界のレジェンドBilly Ray Cyrusがリミックスに参加し、爆発的な人気に。今週のチャートではUSの週間最高ストリーミング数を塗り替える1.43億再生を記録したのです。(そしてビルボードのHot 100シングルチャートでは首位に立っています)

 

(この「ジャンル変更」騒動については以下の記事にまとめています)

 

 今回私が記事で取り上げるのは、Billy Ray Cyrusのその1個前のHot 100エントリーです。彼は“Old Town Road”が5年ぶりのHot 100エントリーだったのですが、実はその5年前のHot 100エントリーも「カントリーラップ」だったのです!

 

Buck 22 feat. Billy Ray Cyrus – Achy Breaky 2

  

 Billy Ray Cyrus自身最大のヒットである”Achy Breaky Heart”をアレンジ。サウンドをダンサブルにして、ラップを挿入。そしてコーラスのパートはBilly本人が担います。

(ちなみにYouTubeのコメント欄にはいくつかLil Nas X関連の言及があります)

 

 「カントリーラップ」は既に以前から存在はしていました。彼以外にもカントリー + ラップの融合自体はNelly、Jason Aldeanなどがそれ以前から試みています。

 しかしこの曲のBuck 22というラッパーが少し違うのは、「カントリーとラップの融合」をキャリアの中心に据えていたということです。NellyやJason Aldeanが融合を試みたのは「シングル単位」でしたが、Buck 22はその融合こそが一番のアイデンティティだったのです。*1

 そんな5年前にカントリーラップを試みた男、Buck 22についての記事です。

 

 Buck 22という男については、以下の“Achy Breaky 2”についてBilly Ray Cyrusに対して行われたインタビューを見ると分かりやすいと思います。

 Billy Ray Cyrusは大御所シンガー・Dionne Warwickのシングルに客演として参加。そのレコーディング途中、Dionneの息子であるBuck 22と遭遇。そのことがきっかけで“Achy Breaky 2”は出来上がったと語っています。

 Buck 22は有名シンガーの息子だったのです!彼はさらにDamon Elliottの名義のもと、Destiny’s ChildP!nkのプロデュースを行った経験もあるようです。

 Damon ElliottのTwitterの奥底を覗くと”Achy Breaky 2”についてのツイートをいくつかリツイートしており、同一人物であることが分かります。

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(↑@Chartdata以前にチャートニュースを伝えていた@Chartnews)

 

 Buck 22名義では“Achy Breaky 2”がデビュー曲で情報も少ない新人ですが、彼自体は「謎の存在」ではなく既に実績も交友関係もある人物でした。

 そんな実績を残していたプロデューサーが心機一転、名前を変えてデビューしたのはこれまでのキャリアとは違った「野望」を成し遂げるためではないでしょうか。それは「カントリーとラップの融合」です。

 

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 彼のTwitterを見てみると、プロフィールには

「俺はBuck 22。カントリーとヒップホップを融合させる革命を進行中。君もこのビッグウェーブに乗らないか?」

とあります。Buck 22にとって、カントリーとラップの融合は“Achy Breaky 2”に限ったものではなく、キャリアを通しての最大の目標だったのです!

 

 彼はこれ以外のシングルとして挙げられるのは“Country Pride”です。この曲はより「カントリー志向」が強く、カントリーのサウンドにそのままラップを乗せたような仕上がりになっています。ビデオもあります。

 これらの“Achy Breaky 2”、”Country Pride”などを収録した“Buck 22”というEPが2014年にリリースされています。(SpotifyにはあるがApple Musicには無い模様)

 ほかこのEPに収録されていない”Dale Earnhardt Jr.”という曲もあります。“Achy Breaky 2”のようにビートはダンサブルですが、コーラスのパートにカントリーっぽさがあります。

 

 このように一貫してカントリーとラップの融合を試みるシングルやEPをリリースしてきましたが、彼は残念ながら結果を残したとは言い難いです。

 

 “Achy Breaky 2”はYouTubeで注目を集めた結果、Hot 100にもエントリー。80位と順位は高くないですが、ある程度は注目を集めていました。

 しかし芳しくなかったのはその評価です。上記のリンクにもあるYouTubeでは低評価の嵐。全評価の約2/3で👎がついています。YouTubeは基本的に👍>👎となるので、ここまで👎が多いのは異例です。

 また音楽歌詞サイトGeniusではこの曲を「音楽の終わり」と評しており、注目は集めたもののやたらと評判が悪かったことが伺えます。

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 その結果、この曲はただの「一発芸」の域を抜け出せませんでした。Hot 100も1週で圏外に落ちて、YouTubeもその後もあまり再生数を伸ばせていないようです。インパクトだけはありましたが、リスナーに「定着」することは無かったのです。

 リリースから現在に至るまで、約5年間でこのビデオは997万再生を記録していますが、これはあまり大きい数字とは言えません。

 これに対して“Old Town Road”のリミックス今週の2週間のみでこれの6倍に相当する再生を記録しています!もちろん時代の違いなどの要因もありますが、それでも同じカントリーラップでも影響力が桁違いだということが伺えます。

 

 Buck 22はその後もシングルが注目を集めることはなく、徐々に存在感を失っていきます。以下はBuck 22のシングルのSpotify再生数なのですが……(4/21時点)

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 “Achy Breaky 2”でも5年をかけて27万再生程度……一方、”Old Town Road”は昨日「だけ」で約488万再生を記録しています!(リミックス、4/20、グローバルのデータ)*2

 

 「カントリーとラップの融合」という野望を抱き、いくつか曲をリリースしたBuck 22でしたが、注目は長く続かず、最終的にBuck 22は活動を中止してしまったようです。2015年の以降はシングルもリリースされておらず、Twitterも更新が4年前から止まっています。(一方、Damon Elliottのアカウントは今も更新が続いています。ただしLil Nas Xへの言及は見られない)

 

~~~~~

 Buck 22という男が5年前に試みたカントリーラップという路線は、「一発芸」的には一時インパクトを与えたものの、結局は人々に「目に見える」影響力は持つことなく幕を閉じてしまいました。

 ただし、まだヒップホップが現在のように「支配的なジャンル」ではなかった5年前から「カントリー + ラップ」の融合に目をつけ、それを軸にムーブメントを起こそうとした先見の明は秀逸だと思います。この記事で主に伝えたかったことはこれです。

 また「目に見える」影響力が無いだけで、実は水面下で影響を与えている?という可能性もゼロではありません。もしかしたらLil Nas Xはこの曲を参考にして“Old Town Road”を作ったかもしれないし、Billy Ray Cyrusは「”Achy Breaky 2”のリベンジ」を果たすために”Old Town Road”のリミックスに参加したのかもしれません。

 まあこれは私の推測なので合っているかどうかは知らないですが、それでも様々な物にアクセスできるインターネット・スマホ時代では、何が何のヒントになるかは分からないので、このような「独自の挑戦」をしたことに一定の意義があるということは、確かだと思っています。(仮に目に見える影響力が無くても)

 

 それに、少なくともこの曲は私には影響を与えています(笑) ”Old Town Road"騒動があった後、一時期この曲を1日5回くらい聴いていた時もありました。

 この騒動よりも前も、私の中では「なんか面白い曲」として記憶には残っており、巷では「忘れられた曲」ながらも定期的に再生していた気がします。

 ともかく、カントリーラップという独自の挑戦(当時)を5年前に行い、一時的だがインパクトは残したBuck 22に私は拍手を送りたいと思います。

 

*1:他にも何人かカントリーラップをメインに据えているアーティストはいます。ただしそれらのアーティストはHot 100へエントリーした経歴は無いようです 参考:Country rap - Wikipedia

*2:※ちなみに”Achy Breaky 2"が80位でHot 100にデビューした週に、前後の順位(79位・81位)の現在のSpotifyでのトータル再生数は以下の通りです。

79位:Arctic Monkeys - Do I Wanna Know :6億3100万再生

81位:Daughtry - Waiting For Superman :5038万再生