チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

DesiignerのPandaが1位を取ったことはなぜ驚きなのか

1 パンダ?パンダ?パンダ…ギィィィヤァァッ

2 Pandaを1位に押し上げたもの

3 まとめ

 

1 パンダ?パンダ?パンダ…ギィィィヤァァッ

いやー、今週のHot 100で見事DesiignerのPandaが1位を取りましたね。これで先週まで続いていた41週連続非アメリカ人1位をついにストップしましたね!

彼はKanyeに見出されて、Kanyeは彼のこのPandaを自身の曲に大きくサンプリングしたのですが、この喜びよう。

 

しかし、彼の曲が1位を取るのは驚きではないでしょうか。Workの次の1位は7 YearsとMeghan TrainorのNOの対決になりそう、と多くの人が考えていました。私もそんな感じでした。しかし、新人ラッパーの、PVもまだ無い、しかもキャッチーなポップ曲という訳でもない彼の曲が1位を取ったのは驚きがあると思います。

 

しかし、私にはもう1つの驚きの点がありました。現在Hot 100はラジオ・ダウンロード・ストリーミングのポイントから成っていますが、1位を取った曲のわりにやたらとラジオでのポイントが少ないということです。

そもそも近年のHot 100で1位を取る曲には二つのパターンがあります。

A:世間にじわじわと浸透していき、それに伴いチャートでも順位を上げて、やがて1位を取る。

B:超人気アーティストのリリース、話題のPVやビデオなどで、曲が突発的に知れ渡り、いきなり1位を取る。(初登場1位も多い)

 

パターンBでは、ラジオのポイントが低い傾向にありますが、パターンAの曲にとっては、ラジオのポイントは必要性が高いものなのです。

では、それがどういうことなのかを、Hot 100の集計が現在の体制(ストリーミングが導入されてから)での1位を取った曲の最初の1位の週のデータを見比べてみましょう。

 

    Radio Digital Streaming Weeks パターン
2017/10/7 Bodak Yellow 13 3 2 13 A
2017/9/16 Look What You .. ..  14 1 1 1 B
2017/5/27 Despacito 11 1 1 17 A
2017/5/20 I'm the One 33 1 1 1 B
2017/5/13 That's What I Like 2 2 5 15 A
2017/5/6 HUMBLE. 47 10 1 3 A
2017/1/28 Shape Of You 18 1 4 1 B
2017/1/21 Bad and Boujee - 2 1 8 A
2017/1/7 Starboy 5 1 3 14 A
2016/11/26 Black Beatles 44 1 1 9 A
2016/9/3 Closer 19 1 1 3 A
2016/8/6 Cheap Thrills 3 2 6 23 A
2016/5/28 Can't Stop The Feeling! 9 1 6 1 B
2016/5/21 One Dance 8 1 1 5 A
2016/5/7 Panda 27 2 1 9 A
2016/3/5 Work 10 2 1 4 A
2016/2/20 Pillowtalk - 1 1 1 B
2016/2/13 Love Yourself 3 3 2 11 A
2016/1/23 Sorry 2 3 1 11 A
2015/11/14 Hello 9 1 1 1 B
2015/10/3 The Hills 3 2 1 17 A
2015/9/19 What Do You Mean 28 1 2 1 B
2015/8/22 Can't Feel My Face 1 2 4 9 A
2015/7/25 Cheerleader 6 1 3 12 A
2015/6/6 Bad Blood 15 1 3 4 B
2015/4/25 See You Again 49 1 1 5 B
2015/1/17 Uptown Funk 9 1 2 8 A
2014/11/29 Blank Space 9 1 1 3 B
2014/9/20 All About That Bass 6 1 2 9 A
2014/9/6 Shake It Off 9 1 2 1 B
2014/7/26 Rude 2 1 2 12 A
2014/6/7 Fancy 5 1 1 12 A
2014/5/17 All Of Me 1 4 2 30 A
2014/3/8 Happy 2 1 4 8 A
2014/2/8 Dark Horse 4 1 1 19 A
2014/1/18 Timber 5 1 2 13 A
2013/12/21 The Monster 1 2 3 6 A
2013/10/12 Royals 4 1 5 13 A
2013/9/28 Wrecking Ball 31 1 1 4 B
2013/9/14 Roar 6 1 3 4 B
2013/6/22 Blurred Lines 8 1 8 8 A
2013/5/18 Can't Hold Us 5 1 2 13 A
2013/4/27 Just Give Me A Reason 4 1 5 9 A
2013/4/20 When I Was Your Man 1 1 3 16 A
2013/3/2 Harlem Shake - 3 1 1 B
2013/2/2 Thrift Shop 14 1 1 16 A

・Weeksは登場してからの週数

※表は2017年9月時点のもの

 

上記の通り、PandaはパターンAで1位を取った曲の中でも(当時)ラジオの順位が一番低いです。その上、パターンAでは唯一の25位圏外*1です。さらにはパターンBの1週目の曲よりも低いことも少なくない、という状況になっています。

 

今までは、パターンAの曲にとってはラジオが曲の浸透に必要だったことが上記の表から推測されます(もしくは、ビルボードがラジオで伸びないと1位を取れないような配分にしている可能性ももしかしたら…?)しかし、Pandaはラジオのポイントが低いですよね?なぜでしょう?

 

2 Pandaを1位に押し上げたもの

Pandaは上記の通り、デジタル(=ダウンロード)とストリーミングの順位が高いですね。しかしダウンロードは2位、ストリーミングが1位で際立つのはストリーミングでの好調です。こちらは先週から1位です。しかも先週比でも数字を伸ばしている模様です。

ストリーミングのポイントはどこから入るのでしょうか。Youtubeなどの動画再生に加えて、近年隆盛を極めるストリーミングサービスです。

Pandaの場合はYoutubeに動画はあることにはありますが、上記の通りPVが無く音のみであり、再生回数も現在約8000万と、1位を取る曲にしては控えめに感じます。(※前の1位のRihannaのWorkの再生回数は約2億9200万、しかもPandaの動画リリースよりも後にリリースされている)

ということはつまり、ストリーミングサービスでのポイントを稼いだ比率がとても多いといえるのです。

実際ビルボードがこのような記述をしています。

「1位を取った、YoutubeVevoからのビデオのリリースが無かった曲の中でストリーミングのポイント比率が高い」

※ちなみにダウンロードは約11万3000件で、例えばAdeleの Helloの約10分の1の数字。比べる相手が厳しいですが、要は1位の曲のダウンロード数としては普通の数字ということです。

 

3 まとめ

最後にPanda1位の何が驚きだったのかをまとめてみましょう。

 

①新人ラッパーが、PV無しで、キャッチーでポップではない曲で1位を取ったこ

ラジオの代わりに、ストリーミングサービスでのポイントを中心に、ポイントを稼いだということ

 

私は、この②の事象は、これからの音楽の聞かれ方の変化を大きく示唆していると思います。少数が曲を選んだラジオから多数の選ぶストリーミングへの移行を感じ取りました。これに伴い、もしかしたら支持される曲も変わるのかもしれません。①の要因も聞かれ方の変化に基づくのかもしれません。

 

DesiignerのPandaの1位は驚きを提供しました。次にどの曲が、どのような形で1位を取るのかが楽しみです。

 

djk2.hatenablog.com

 

*1:当時はビルボードのラジオチャートは25位までの表示だった