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音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 9/14 見どころ 【Post Maloneの”Circles”が7位に登場 / Toolがアルバム1位】

 PCがダウンしたため、今週の更新は家族のPCを借りて行っています!そのためいつもと若干内容が違う部分があります!

 

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Post Maloneの“Circles”が7位に登場

・Lana Del Reyの”Doin’ Time”が59位に登場。アルバムチャートでは3位

・アルバム1位はTool。チケット戦略などで高いセールスを記録

・Lil Teccaのアルバムがストリーミングで人気。5曲がHot 100入り。アルバムチャートでは4位

・先週アルバム全18曲がHot 100に入ったTaylor Swift。今週は6曲まで減少

 

― 1 Lizzo – Truth Hurts (R:4 D:1 S:3)

―◎2 Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita (R:1 D:3 S:4)

― 3 Billie Eilish – bad guy (R:6 D:9 S:6)

△◎4 Lil Tecca – Ransom (R:50 D:37 S:1)

― 5 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road (R:48 D:4 S:2) 🚩

△◎6 Chris Brown feat. Drake – No Guidance (R:9 D:24 S:7)

☆◎7 Post Malone – Circles (R:外 D:2 S:5) ✅

△ 8 Ed Sheeran & Justin Bieber – I Don’t Care (R:2 D:16 S:28)

▽ 9 Khalid – Talk (R:3 D:33 S:21)

△◎10 Post Malone feat. Young Thug – Goodbyes (R:11 D:11 S:8)

 

R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

※今週の🍎=Young Thugの“Hot” (=今週38位)

 

◎ は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

緑背景はその指標がトップ10内で最高、赤背景は最低

 

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

・曲の個別解説

 

☆98 J Balvin & Bad Bunny – LA CANCIÓN

 J BalvinとBad Bunnyのジョイント作”OASIS”からの1曲、” LA CANCIÓN”が98位に登場。今週明確なプラス材料があったわけではないですが、YouTube再生数を伸ばしてHot 100にランクイン。(ビデオはまだ無し)

 ラジオのシングルに選ばれているのは“QUÉ PRETENDES”(今週圏外)ですが、こちらの曲もリリース時から同等以上の人気があり、数週が経過したこのタイミングでHot 100にたどり着きました。YouTube40位 Apple Musicで70位程度、Spotifyで101位。

 

☆96 Maren Morris – The Bones

 Maren Morrisの“The Bones”が96位に登場。SpotifyAppleのいずれのプレイリストで以前からシングルのような扱いを受けていたシングルです。

 カントリー曲はカントリー系ラジオのみでかかるケースがほとんどですが、この曲が主にかかっているのはアダルトポップ系統です。現在アダルトポップ系で17位、それに対しカントリー系では45位。

 Spotifyでは200位圏内に残っていますが、AppleYouTubeでは圏外です。

 

☆94 for KING & COUNTRY – God Only Knows

 for KING & COUNTRYの“God Only Knows”が94位に登場しました。彼らは初のHot 100入りです。

 彼らは「クリスチャン系」と分類される音楽デュオ。元はクリスチャンラジオで人気のアクトがアダルトポップやアダルトコンテンポラリーなどの系統に飛び火し、幅広いリスナーに波及する、というLauren Daigleのような流れでヒットしました。

 このようなラジオヒットに加え、Dolly Patronの参加したバージョンの効果でDLやYouTubeが伸びたことが今週のHot 100入りの要因です。SpotifyAppleでは圏外です。

 

☆89 Big Sean feat. A$AP Ferg & Hit-Boy – Bezerk

 Big Seanの新曲が89位に登場。Spotifyで50位、Apple Musicで80位程度にランクイン。ストリーミングでこの成績だとHot 100に入るには若干物足りないですが、DLでも26位だったため、Hot 100入り。

 

☆80 Lil Tecca – Out Of Luck

 Lil Teccaのデビュー作がアルバムチャートで4位にランクイン。6.8万枚相当の売り上げのうち、ほとんど(6.4万)をストリーミングから得ています。再生数に換算すると1億を超えています。AppleSpotifyの両方で一定以上の人気がありました。

 大ヒットの”Ran$om”は6位→4位へ、そして先々週にHot 100デビューをした“Did It Again”は へとそれぞれ浮上。さらに”Out Of Luck”が80位に、”Shots”が84位に、”Love Me”が97位に登場し、アルバムから合計5曲がHot 100入りを果たしています。

 

☆77 Chris Brown feat. Gunna – Heat

 Chris BrownがGunnaを迎えた“Heat”が77位に登場。ビデオ公開の効果です。ほかリズミックやアーバン系統のラジオでの再生数が伸びており、今後も少しずつヒットしてきそうです。

 

☆69 A$AP Rocky – Babushka Boi

 A$AP Rockyの新曲“Babushka Boi”が69位に登場。AppleSpotifyでは30位以内と好成績を収めたものの、ビデオがあまり伸びませんでした(YouTube61位)

 

☆59 Lana Del Rey – Doin’ Time

 Lana Del Reyがアルバム3位に登場。彼女のアルバムの中では順位が最も低いですが、売上自体は前作とほぼ同程度です。(今回の競合が強かっただけ) 今作は前作と比べると純セールスがやや減少して、ストリーミングが少し増加しています。

 

(初週の売上、アルバムチャート順位)

・Born to Die 7.7万 / 2位

・Ultraviolence 18.2万 / 1位

・Honeymoon 11.6万 / 2位

・Lust For Life 10.7万 / 1位

・Norman F*****g Rockwell! 10.4万 / 3位

 

↑ デビュー作は初週の売上こそ低いですが、最もロングヒットしています。今週のアルバムチャートで過去作の中で唯一ランクイン。324週目で140位。

 

 そのアルバムから、ビデオがリリースされた“Doin’ Time”のカバーがHot 100入り。59位に登場し、オリジナル曲(Sublimeによる)の順位=87位を上回っています。SpotifyYouTube > Apple Musicの順で人気です。

 この曲はロック系ラジオ*1で首位をキープしています。(オルタナティブ系4位、Triple Aで2位)

 それ以外の収録曲もまんべんなく再生されており、2曲がBubbling Underにランクインしています。

 

 一方、今週アルバム1位だったのはTool。ブックレット付きなどが付いたCDの売れ行きが好調で、圧倒的なセールスを記録。Toolのようなキャリアの長いバンドはツアーチケット戦略でセールスを伸ばすのが定番なので、TaylorやBTSのような手法を取ってきたことは意外でした。(音源におまけをつけてセールスを稼ぐ、という大枠は同じですが)

 ストリーミングもベテランバンドとしてはかなり優秀な成績を収めています。(2760万再生=2.1万枚相当) 多くの場合、ベテランバンドはストリーミングが1万枚相当に達しないことが多いです。 (例:セールス規模が近いDave Matthews Bandのストリーミングは0.7万枚相当以下)

 

△37 SHAED – Trampoline

 ポップバンドSHAEDの“Trampoline”が37位へ浮上。初のHot 100でトップ40まで到達しました。元々はオルタナティブ系ラジオでヒットしていた曲が、じわじわポップ系ラジオでも人気に。主にこの2系統のオンエアで、今週ラジオ18位です。

 各ストリーミングでは圏外。Spotifyでのピークは約半年前でした。(この当時、有力プレイリストに入っていた)

 

△35 Jonas Brothers – Only Human

 Jonas Brothersのシングルが好調。“Only Human”が35位へ浮上。ポップ、アダルトポップ系などのラジオで好調。これで新作からのシングル3つ全てがトップ40入りを果たしています。

 かつては派手に高順位で登場した後に、急降下という流れを繰り返していましたが、今年リリースのシングルはいずれもラジオヒットになり、2週目以降の数字も安定しています。

(今年のシングル以外では、ラジオで50位以上になったことがない)

 

 

☆7 Post Malone – Circles

 Post Maloneの新曲“Circles”が7位に登場。Spotify首位、Apple2位などストリーミングで好成績を収め、DLも今週2位。既にシングルとしても運用されていて、ポップやリズミックなどの系統のラジオでかかっています。

 来週のチャートでは彼のアルバムのリリースが反映されます。この“Circles”はアルバムの主力シングルとしての地位を確保(例:Spotifyで引き続き首位)しており、来週もトップ10に残りそうです。DLは下がりますが、ストリーミングとラジオは伸びているので、順位を上げるのではないでしょうか。(1位予想をしている人もいるようですが、そこまで行くかは微妙……)

 ほか今週トップ10に戻った”Goodbyes”が来週もトップ10に残ることが有力。さらに驚異の粘りを見せる“Sunflower”、アルバム内新曲で1番人気の”Take What You Want”もトップ10入りの可能性があり、多くて4曲程度がトップ10入りする可能性があります。

 

※“Sunflower”は「53週目ルール」をすりぬける可能性もありそうです。 =53週目以降も25位以内に残り、チャート滞在が1年を超えるということ。多くの曲は53週目以降は26位以下なので、そのタイミングでチャートを後にする。

 

―2 Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita

 “Señorita”がラジオで1位に。Shawn Mendesは初めてのラジオ1位です。Hot 100では引き続き2位ですが、先週比でポイント増加。これに対して“Truth Hurts”はポイント減少なので、来週は差が縮まる or 順位逆転の可能性もあります。

 この2曲が来週以降のHot 100首位争いの中心……と言いたいところですが、週末にリリースされるAriana Grande, Miley Cyrus, Lana Del Reyの新曲が首位をかっさらう可能性も少し考えられます。(この曲がチャートに出現するのは再来週)

 

×× Tyler, the Creator – EARFQUAKE

 ここまで健闘していたTyler, the Creatorの“EARFQUAKE”がチャートから外れました。ピークは13位、滞在は15週です。同じ週にリリースされたDJ Khaledのアルバムのどの曲よりも長い滞在となりました。

 主なヒットの要因はストリーミングですが、ラジオでもキャリアハイの成績を収めました。(リズミックで28位)

 

 この週に多く外れたのはTaylor Swiftのアルバム曲。先週は収録18曲が全てHot 100に入っていましたが、うち12曲外れ今週Hot 100に残ったのは6曲です。

 またKaty Perryの“Never Really Over”がピーク15位、滞在13週という成績でチャートから外れています。出だしは良かっただけに尻すぼみが残念でした。

 

 来週はPost Maloneのアルバム曲が大量登場する見込みなので、下位の曲・50位に近い20週目以降の曲は押し出されるかもしれません。

 46位の“Shotta Flow”、44位の”God’s Country” 43位の”Whiskey Glasses”は外れそう。40位の”7 rings”、39位の”Hey Look Ma, I Made It”あたりも可能性はあるかもしれません。

 

 

今週チャートから外れた曲 (19曲)

 

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

96 Tyler, the Creator - EAFQUAKE (🗻13位 /⏰15週)

94 Katy Perry – Never Really Over (🗻15位 /⏰13週) 

92 Taylor Swift – It’s Nice To Have A Friend (🗻92位 /⏰1週)

90 Chris Young – Raised On Country (🗻54位 /⏰13週)

89 Taylor Swift – Daylight (🗻89位 /⏰1週)

87 Summer Walker – Playing Games (🗻87位 /⏰1週)

77 Taylor Swift – False God (🗻77位 /⏰1週)

75 Taylor Swift – Afterglow (🗻75位 /⏰1週)

67 Taylor Swift – Death By A Thousand Cuts (🗻67位 /⏰1週)

63 Taylor Swift feat. Dixie Chicks – Soon You’ll Get Better (🗻63位 /⏰1週)

62 Taylor Swift – London Boy (🗻62位 /⏰1週)

57 Taylor Swift – Cornelia Street (🗻57位 /⏰1週)

51 Taylor Swift – I Think He Knows (🗻51位 /⏰1週)

49 Taylor Swift – Miss Americana & The Heartbreak Prince (🗻49位 /⏰1週)

45 Taylor Swift – Paper Rings (🗻45位 /⏰1週)

38 Taylor Swift – The Archer (🗻38位 /⏰3週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Tool – Fear Inoculum

3 Lana Del Rey – Norman Fucking Rockwell!

4 Lil Tecca – We Love You Tecca

30 Sheryl Crow – Threads

34 Stick Figure – World On Fire

57 Trisha Yearwood – Every Girl

64 SiR – Chasing Summer

80 サウンドトラック – Steven Universe The Movie

84 Witt Lowry – Nevers Road

86 H.E.R. – I Used To Know Her

112 Wage War – Pressure

115 Original Broadway Cast Recording – Moulin Rouge! The Musical

118 Common – Let Love

149 Elevation Worship – At Midnight (EP)

 

 

◇アルバムチャート長期滞在

1周年:Lauren Daigle – Look Up Child

100週目:NF – Perception

 

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

🍎 Young Thug feat. Lil Uzi Vert – What’s The Move (今週23位程度)

✅ blackbear – hot girl bumer (今週31位)

🚩 YoungBoy Never Broke Again - SLIMEMENTALITY (今週7位) 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

 

↑ YoungBoy Never Broke Againは以前からかなりYouTubeで強いですが、その他の媒体では人気が出ないケースもあります。(ただここまで高順位でHot 100に入らないのは珍しい) 次の週に入ってからApple Musicで順位が上がり始めたので、来週のHot 100に入る可能性もあるかも。

 

関連 / 参考記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

www.billboard.com

 

 

・スタッフが議論するシリーズ

 

今週のテーマはToolのアルバム1位についてです。

 

 

 

① 久々の作品でここまでの数字を残したことに対する感想

② 曲が短くなる現代で、10分超えの曲が多いこの作品から学ぶことは?これは例外?

③ Toolと同様に直近の作品からスパンの長いバンドで、華麗な復活を遂げそうなのは?

④ 2019年に適応した作品になっているか、それとも不変のサウンドか?

⑤ アルバム1位を奪われたTaylor SwiftのファンにおすすめしたいToolのアルバムは?

 

 

 

 

*1:オルタナティブ、アクティブロック、Triple Aのロック3系統を合算したもの