チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

2022 週間USチャート トピック振り返り

  

 ご無沙汰しております。そろそろチャートの総決算、ビルボード年間チャートが発表される時期が近づいてきました(12月の最初の週あたりに来ると思います)

 今回の記事では、その年間チャートの発表に先立ち、期間中の週間USチャートで起こった印象的な出来事をピックアップし、今年を振り返っていきたいと思います。いわば、毎週投稿している「今週のHot 100動向メモ」のまとめ版のような記事です。

 

※集計期間は昨年11/13~今年11/12の週と推測されています

※特に断りが無ければ、この記事での数字は、基本的にその週のUSでの数字を指しています

※😎がつく項目はマニアックな内容です。必ずしも重要ではないですが、私の琴線に触れた、という動向が多いです。

※この記事でのアルバム「売上」とは、基本的にストリーミング、純セールス、シングルDLの合算値のことを指しています。

 

 

◇◇(2021年)◇◇

 

 

11/13 ハロウィン

 クリスマスほどの規模にはなりませんが、毎年ハロウィンでも関連曲がストリーミングで浮上します。例年では”Thriller”のみが再登場するのですが、この年は規模が大きく、他に3曲が再登場しました。その“Thriller”もストリーミング以降では最高の19位に入っています。

 

 

11/20 Summer Walker 😎

 16.6万の売上でSummer Walkerが初のアルバム1位を獲得。Interludeのような曲を除き、全ての曲がHot 100入り。(”All Full-Length Tracks on Hot 100”のような言い方をします。Full-Length TracksとはInterludeやIntro/Outro、Skit等以外の曲の総称です。)

 この要因となったのはApple Musicでの人気。Apple MusicはSpotifyと比較すると、Mainstream R&B/Hip-Hop系アーティスト(=アーバン/クロスオーバー成分の低いR&Bラップ系アーティスト)の人気が高く、さらにアルバムの人気が非常に高い傾向にあります。

 クロスオーバーのヒットが少なく、メインストリーム目線からすると意外なラッパーやR&BシンガーがHot 100に大量に曲を送り込んでいる場合、それはApple Musicでの人気に基づいていることがほとんどです。

 他の多くの国では、SpotifyAppleも人気の傾向に大きな差はありませんが、USでは初期のラッパーのアルバム独占先行配信(DrakeやTravis Scott)の影響なのか、2つで違いがハッキリ見られます。

 

 

11/27 Taylor Swift + Silk Sonic + クリスマス開幕

 

1:Taylor Swift

 60.5万と、超高水準の成績でTaylor SwiftのRed (Taylor’s Version)がアルバム1位獲得。セールス36.9万、ストリーミング22.7で万枚相当と、どちらも優秀な数字です。26曲がHot 100入り

 そしてシングルでも”All Too Well”の再録版が首位獲得。アルバムには2種類の音源があり、合算でカウント。このうち長い方の10 Minutes Versionが高い人気を得ており、Hot 100史上最も長い首位曲となりました。

 その後もストリーミングで安定した人気を得ていましたが、ラジオシングルには別の曲が選ばれていました。尺が長過ぎることが問題だったのか、それとも再録ではなく新しい曲をシングルにすべきと考えたのか、これをシングルにしなかった判断理由は気になりますね。

 

2:Silk Sonic

 Silk Sonic=Bruno MarsとAnderson .Paak新作が売上10.4万を記録するも、アルバム2位。Bruno Marsは不思議と超強力なアルバムと競合することが多く、実は今まで初週にアルバム1位を獲得したことがありません。(セカンドのみ違う週に1位になった)

 

3:クリスマス開幕

 ”All I Want for Christmas Is You”がHot 100に再登場(36位)。クリスマス開始。前の年と同時期(11月の最終週)での復帰です。

 ここから少しずつ勢力を伸ばしていき、既存の曲を追い落としていきます。

 

 

12/4 Adele

 Adeleがキャリア3枚目のアルバム1位獲得。売上は今年最大の83.9万。セールス(69.2万)が占める割合が大きいですが、ストリーミングでも人気を集め、全曲がHot 100入りしています。

 そして、このアルバムに合わせて“Easy On Me”がHot 100で首位に復帰。この週、ストリーミングとラジオで同時に首位に経っており、この「両取り」は2017年の”Despacito”以来の記録となりました。

 近年はストリーミングとラジオのピークがズレることが多いことで、この記録がなかなか達成されなかったのだと推測されます。ただし、最近はズレが緩和されてきたのか、2022の6/4には”As It Was”もこれを達成しています

 

 

◇◇(2022年)◇◇

 

 

1/1 クリスマス最盛期

(紛らわしいですが、クリスマスが実際にあったのは2021年、チャート日付は2022年)

 

 毎年ストリーミング中心に盛り上がりを見せるクリスマス曲。これらのチャートでのピーク順位を左右するのが、チャートの集計期間です。クリスマス曲はハロウィン後に徐々に勢力を伸ばし、12月にもなるとかなりの規模になります。そして最も盛り上がる24日と25日ですが、26日以降は急速に勢力を落とします。このことから、最もクリスマス曲が有利になる集計期間は「24日と25日を含み、なるべく26日以降を含まない」で、最強は12/19~12/25です。

 この年の集計期間は12/17~12/23と12/24~12/30。強力な24日と25日が同じ週にいるものの、それ以外の日の弱体化が激しいため、クリスマス曲最盛期は12/17~12/23の方でした。(それがこの1/1付のチャート)

 1つ前の年のデータと比較してみます。(年はクリスマス時点でのもの)

 

2020年:集計12/18~12/24
トップ10:9曲 トップ50:33曲 トップ100:39曲

 

2021年:集計12/17~12/23
トップ10:8曲 トップ50:32曲 トップ100:37曲

 

 昨年と比べて超強力な12/24を失ったものの、規模をかなり維持しています。ちなみに過去のクリスマス曲は50位以上にしか復帰できませんが、新しいクリスマス曲はそれ以下にも登場できます。(クリスマス特需を狙うリリースが近年多いです)

 

 

1/15 Encanto + Elton John + クリスマス後 + 2014年の曲

 

1:Encanto

 ディズニー映画“Encanto”のサントラがアルバム1位を獲得。ストリーミング人気により、今後合計で9週にわたり1位を獲得します。また、多くの曲が継続的にHot 100入りをしています。

 

2:Elton John

 Elton Johnが久々のトップ10入りを達成。Dua Lipaとの“Cold Heart (PNAU Remix)”が7位浮上。1998年以来、計28曲目のトップ10。歴代7位タイ、かつUK出身者???では最多のトップ10曲数。

 Elton Johnの過去ヒットをアレンジして、それを自分と他人でデュエットした曲。彼はこのフォーマットを再活用し、後に他の後輩アーティストも手助けをします。

 

3:クリスマス後 😎

 近年クリスマス曲の勢力があまりにも大きくて、莫大な数の曲をリカレント(古い曲を取り除くルール)に追い込んでしまうので、2年前から救済ルールが開始。クリスマス期間に外れた曲は、クリスマス後に50位以上相当のポイントがあれば復帰できるようになりました。

 これまでは「直後」の週のみだったのですが、今年は2週に分かれて復活が行われました。全盛期直後の週で復帰した曲が3曲のみと少なかったため、もう少し復活させても良いと判断されたのでしょうか。この週は”Levitating”など8曲が再登場し、合計で11曲がクリスマス後の復帰を果たしました。

 毎年ラジオ(主にポップ、アダルトポップ系)では、年末にその年のヒットが再浮上するため、印象よりも高い順位で復活することもあります。

 

4:2014年の曲 😎

 2014年にリリースされたThe Waltersの“I Love You So”がHot 100入り。ストリーミングでは近年過去曲人気が高く、このようにHot 100相当までポイントを伸ばすようなことも少なくないです。

 従来ビルボードは、過去曲を一度リカレントした曲と同じ扱いにしており、51位以下では登場(再登場)できなかったですが、この基準を今年は徐々にゆるやかにしており、下位での過去曲登場が盛んでした。

 この”I Love You So”やThe Weekndの“Die For You”など、ラジオでのシングルカット等の明確な再登場の根拠がある場合もありますが、そうではない場合(Lil Babyの”Freestyle”など)もあります。また、「過去曲」の過去がいつまでを指すかも不明で、基準は不透明な部分が多いです。

 

 

1/22 Gunna vs The Weeknd

 GunnaがThe Weekndを抑え、アルバム1位獲得。Gunnaは15.03万、The Weekndは14.8万の売上を記録。Summer Walkerの項で述べた、Apple Musicでの強さが明暗を分けた印象です。(GunnaはAppleで強かった)

 Gunnaのアルバム1位は全くサプライズではありませんが、やはりインパクトがあるのはThe Weekndがアルバム1位にならなかったこと。前作はシングルもアルバムも無双状態だっただけに、これは驚きでした。

 しかもストリーミングでは複数過去曲が人気を得ており、中にはHot 100に返り咲く(2016年リリースの”Die For You”)曲もあるなど、彼に対する注目度は依然高いので、余計このアルバムの数字が意外に思えます。このことを本人も最近ネタにし始めた模様。(The Weeknd on Twitter: "https://t.co/U42rGaHTQs" / Twitter など。他にもこの話題を最近は連投しているようです。もしかすると、これきっかけで話題になって再浮上のチャンスも???)

 

 

2/5 We Don’t Talk About Bruno

 今年前半の主役トピック。映画“Encanto”より、“We Don’t Talk About Bruno”がHot 100で首位に立つ。高いストリーミング人気を誇り、その後5週にわたり首位に立つものの、ラジオでほとんどオンエアされなかったため、ピーク後は急速に順位を落としていきました。このため、年間チャートでもトップ10に入らないと思われます。

 ラジオでオンエアされないのも多少違和感はありましたが、Spotifyの最大手プレイリストToday’s Top Hitsにも入らなかったのはさらに意外でした。ストリーミング人気は抜群だったのに、なぜここまで不遇だったのか気になりますね。映画要素の強い曲は、一般曲よりもプロモーションの優先度が低いということでしょうか?

 

 

2/19 進撃の巨人 + Justin Bieber

 

1:進撃の巨人

 『進撃の巨人』の主題歌、SiMの“The Rumbling”がBubbling Underの5位(=Hot 100の105位相当)に登場。日本拠点のバンドとしては異例の躍進を遂げました。(歌詞は英語)ここまでヒットするということは、USでもこのアニメに対する注目度がとても高いのでしょう。

 また、Bubbling Underにこそ入りませんでしたが、『チェンソーマン』の主題歌だった米津玄師の“KICK BACK”も今年USで一定の存在感を見せていました(Spotify USでのランク入りなど)。日本のアーティストが音楽で海外を目指す上で、既に世界的に存在感を示すアニメの文脈が大きな手助けになるのは間違いないでしょう。

 

2:Ghost 😎

 Justin Bieberのシングルカット”Ghost”がトップ10に到達した、という一見変哲も無いチャートアクションですが、近年はストリーミングによる初週からロケットスタート/不規則な伸び、が多かったため、この「大物がシングルカットで後から浮上する」というアクションが逆に新鮮で意外に感じました。

 

 

3/12 Glass Animals

 “Heat Waves”が滞在59週目でHot 100首位を獲得。これまでで最も遅い首位獲得。従来の記録を大幅に更新しています。

 これまでの同記録は”All I Want for Christmas Is You”の35週。これを特殊な「例外」とみなすならば”Macarena”の33週でした。

 

 

4/16~4/23 連続特大ヒット

 4/16に”As It Was”が、4/23には”First Class”がいずれも高水準の成績でHot 100首位デビュー。チャートを盛り上げました。”As It Was”のストリーミングが4380万、”First Class”は5460万再生。

 その後2曲とも1位争いを演じたのですが、継続性には違いが出ました。“As It Was”は現在も(超強力なアルバムがいなければ)トップ10圏内の一方、”First Class”はチャートから外れてしまっています。

 純粋な持続性の違いもありますが、またジャンルの違いも理由の一つとして挙げられます。Hot 100でロングヒットするか否かはラジオに依る部分が大きいですが、そのラジオでロングヒットする曲はたいていアダルトポップ系統での人気が高いため、この系統と相性が悪いラップはロングヒットになりづらい、というわけです。

 

 

4/23 アルバム1位低い 😎

 上記の2曲がシングルチャートを盛り上げる一方、4/23付のアルバムチャート首位(Lil Durkの”7220”)の売上が4.7万と低い数字に。アルバム首位が5万を下回るのは、2019年2月以来のことでした。

 この後もこの傾向が続き、次の2週もアルバム首位売上は5万枚台に留まりますが、5/14以降は多くの大型アルバムがリリースされ、アルバム1位の数字は高水準に戻っていきます。

 

 

5/14~ 大型アルバムラッシュ

 5/14から4週連続で大型アルバムがチャートに登場。いずれも基本的には全曲がHot 100入り。

 

5/14:Future

 売上22.0万。2015年のDrakeとのタッグ作を除くと、自己最高成績。うち4曲がトップ10入り。そして”WAIT FOR U”がHot 100首位獲得。自身メインの曲では初の首位。

 

5/21:Bad Bunny

 売上27.4万。自己最多かつ、(当時)今年最多の数字。リカレント済みの“Callaita”*1を除き、全曲がHot 100入り。4曲がトップ10に。継続性が極めて高く、アルバム1位週数が後に今年最長の11週まで到達します。

 

5/28:Kendrick Lamar

 売上29.55万。先週更新された今年最多記録を塗り替える。4曲がトップ10入り。

 

6/4Harry Styles

 売上52.15万で、またまた今年最多の数字を更新。セールスが33.0万で、この数字が上記3枚との違いとなっています。特にヴァイナルの売上が18.2万、1991年以降*2では最多と目を引きます。このアルバムもまた、4曲がトップ10入り

 

 

5/14  Levitating / Save Your Tears外れる

 アルバム曲がHot 100に大量登場すると、一方で多くの既存曲がチャートから押し出されます。5/14には、77週滞在の”Levitating”、69週滞在の”Save Your Tears”がチャートを後にしました。

 前者は(当時)歴代4位の滞在の長さで、女性アーティストの曲では最長(現在も)です。この週はこの2曲以外にも、滞在40週超えの曲がさらに3曲外れたため、ずいぶん新陳代謝が進んだ週でした。

 

 

6/11 Kate Bush

 ドラマ“Stranger Things”の新作に採用された効果もあり、Kate Bushの”Running Up That Hill”がHot 100に再登場。リリース当時(1985年)の順位を大幅に更新する、8位で再登場した後、しばらくトップ10に残りました。

 何かのきっかけで注目を集める → 過去曲がストリーミング人気を得るという流れは時折見かけますが、この曲が珍しかったのはラジオでもオンエアされたことだと思います。このことは、再登場後しばらくトップ10に残るうえで大きな手助けとなりました。

 ほか、今年はMetallicaの“Master of Puppets”(同じく”Stranger Things”)や、Nirvanaの”Something in the Way”(”Batman”)といった過去曲が、映像作品の効果でHot 100に登場しています。この2曲は「再登場」ではなく「登場」なのが興味深いです。つまり、リリース当初はHot 100入りしなかったものの、今年の再注目で初めてHot 100入りを果たしたということです。

 

 

6/18 アルバム新ルール? 😎

 Post Malone新作が、リリース5週目のBad Bunnyの“Un Verano Sin Tu”に敗れてアルバム2位に。売上は前者が12.1万、後者が13.7万。

 これも驚きでしたが、私が注目したのはPost Maloneの“One Right Now”が再登場したことです。有力アーティストの場合、アルバムのリリースで曲への注目度が一気に増します。そのため、その週では既存曲も多くの場合、50位以上相当のポイントを稼いでいると思われます。しかし従来は、アルバム週に50位以上のポイントを稼いだとしても、1回リカレントで外れた曲はHot 100に再登場しない決まりでした。例外はピークを更新した場合のみです。

 しかしこの曲はリカレント済/ピークを更新しないながらも、再登場を果たしました。最初はミスなのか、偶然なのか、判別がつかなかったですが、似たようなケース(8/27のMegan Thee Stallionの“Sweetest Pie”)がもう1度確認されたため、新ルールなのだろう、と判断しました。

 

 

6/25 Joji

 日本出身で、現在はUS拠点に活動するシンガーJojiの新曲“Glimpse of Us”が10位に登場。彼にとって初のトップ10に。次週にはさらに勢力を伸ばし、8位まで到達します。

 彼はもともと“SLOW DANCING IN THE DARK”がSpotify USのランキングに1485日(歴代8位)*3も滞在するなど、根強い人気はありましたが、ボーカルの魅力を強く押し出した今回の新曲で、新たな層からも人気を得たような印象です。

 この週はBTSが高い売上(31.4万)でアルバム1位だったため、アジア勢の躍進を強く感じる週でした。

 

 

7/2 Drake

 Drakeの新作。売上20.4万。“Intro”を除く全曲がHot 100入り。同時に”Jimmy Cooks”がHot 100首位を獲得。大ヒットではありますが、Drake水準からすると、やや控えめな数字にも感じます。

 ちなみに、前の項で述べた“Glimpse of Us”はこの週がピークだったため、Drakeのアルバムがこの週でなければもう少し順位が高かったかも?

 

 

7/30 Lizzo

 Lizzoの“About Damn Time”がHot 100で首位獲得。彼女は”Truth Hurts”に次ぐ、2曲目の首位。この2曲は、最初ストリーミングで浮上のきっかけを掴んだ後、その後ラジオで安定感を発揮する、とヒットの過程が似ています。

 

 

8/13 Beyoncé

 Beyoncéがソロでは7枚目のアルバム1位を獲得!売上は今年2番目(当時)の33.2万。セールスの割合が高め(19.0万)ですが、ストリーミングも優秀で全曲がHot 100入り。

 また、シングルの“BREAK MY SOUL”も今週に首位獲得。ソロでは8曲目の首位。ストリーミングのピークが来ることも多いアルバム週に、ラジオの好調がタイミング的にうまく融合し、鬼に金棒状態でした。

 

 

8/27 Nicki Minaj

 Nicki Minajの“Super Freaky Girl”がHot 100首位を獲得。熱きファンダムの力もあり、DLが今年最多(当時)の8.9万を記録。首位獲得を大きくサポートしました。

 一般的には「初のソロ首位」と言われていますが、どちらかというと「初の自身の曲での首位」といった印象を個人的に抱いています。これまでの首位はDoja Catとの”Say So”と6ix9ineの”TROLLZ”。前者はNicki Minajが客演扱いで、後者は両方メイン扱いながら、6ix9ineのアルバム向け曲だったことなこともあり、こちらも客演「感」はありました。

 熱きファンダムによるDLが首位獲得の大きな手助けにはなりましたが、その後もラジオやストリーミングでの好調を維持し、現在合計11週でトップ10入りしています。

 

 

9/10 Elton John & Britney

 Elton JohnBritney Spearsによる“Hold Me Closer”が6位に登場。ピーク順位だけなら“Cold Heart”より高いです。Elton Johnは成功を収めたその前シングルと同じく、過去曲をアレンジする手法を採用。ボーカリストBritney Spearsを迎え、再びトップ10入りを果たしました。

 Elton Johnの連続復活も目を引きますが、やはりこの曲で注目を集めたのはBritney Spears。アルバムが2016年から途絶えている彼女にとっては久々のリリース。そして後見人の問題から、彼女をサポートしようとの動きがあったことが注目を集めた要因だったと考えられます。

 

 

9/24 Ed Sheeranロングヒット 😎

 Ed Sheeranの“Shivers”がピーク4位、滞在52週の末にチャートを後に。彼が52週以上のHot 100滞在の末にチャートから外れるのはこれで合計5曲目(今年2曲目)。

 純粋な知名度によるヒットの安定感に加え、ロングヒット因子となりやすいアダルトポップ系ラジオとの相性がすこぶる良いので、ロングヒットを連発できます。

 

 

10/1 BLACKPINK

 BLACKPINKがキャリア初のアルバム1位獲得。売上は10.2万。うち6.5万はCDセールスから。ガールズグループとしても久々のアルバム1位で、2008年のDanity Kane以来。

 今年はK-PopグループのUSアルバムチャートでの躍進が数多く見られました。昨年4枚だったアルバムトップ10が、今年は14枚まで増加しました(11月現在)

 

4/2 Stray Kids:1位
5/28 TXT:4位
6/18 Seventeen:7位
6/25 BTS:1位
7/9 NAYEON:7位
7/23 aespa:3位
7/30 ITZY:8位
8/6 Seventeen:4位
8/13 ATEEZ:3位
8/13 ENHYPEN:6位
9/10 TWICE:3位
10/1 BLACKPINK:1位
10/1 NCT 127:3位
10/22 Stray Kids:1位

 

 

10/8 Steve Lacy + Bad Bunny

 

1:Steve Lacy

 “Bad Habit”が首位獲得。ストリーミングで勢力を伸ばし、それにラジオが追随しての首位獲得。Steve Lacyはこの曲が初のHot 100入りだっただけに、唐突なヒットにも思えますが、前年から既に予兆が見られていました。

 2021年後半、彼の2017年の“Dark Red”がストリーミングのランキングに登場。中位まで順位を伸ばし、長い期間にわたりランキングに居座りました。”Bad Habit“はその流れを経てリリースされたこともあり、リリース時点から注目度が高かったのです。その勢いのままストリーミングがぐんぐん伸び、最終的にはHot 100首位まで到達しました。

 その後、この曲だけでなく今年リリースの非シングル曲“Static”や、再び上昇気流に乗った前述の”Dark Red”もHot 100入りに成功。この複数曲の自発的なヒットは、単発ではない、アーティストとしての注目度向上を感じさせます。

 

2:Bad Bunny 😎

 Bad Bunnyの複数のアルバム曲が滞在21週目を迎え、リカレントルールによってチャートを後に。中にはラジオオンエア皆無で20週を「完走」した曲もあり(”Tarot”や”Ojitos Lindos”。”Party”もオンエアがかなり少ない)、多くの曲が安定的なストリーミング人気を得ていたことが分かります。

 このような複数曲の持続的なストリーミング人気が、そのままアルバムチャートでの複数週1位にも繋がっているのでしょう。

 

 

10/29 Sam Smith & Kim Petras + Glass Animals

 

1 Sam Smith & Kim Petras

 Sam SmithとKim Petrasの“Unholy”が首位獲得。初週の勢いを維持/加速させての首位獲得に。Sam Smithはノンバイナリー、Kim Petrasはトランスジェンダーを公表しているアーティストとしては(共に)初のHot 100首位獲得で、この点がやはり印象深いです。

 近年特大ヒットを飛ばしているわけでもない2人が、リリースからロケットスタートを切ったのはTikTok等で事前に知名度を高めていたからです。この流れは、昨年のPolo Gの“Rapstar”やLil Tjayの”Calling My Phone”等でもあった流れのようで、定番になっていくかもしれません。

 (😎な補足 その過去の“Rapstar”や”Calling My Phone”はリリース時点ではストリーミングの大手ヒット系プレイリストに入りませんでしたが、“Unholy”に関してはSpotifyApple、両方のヒット系プレイリストの上位に入っていました。情報収集力が高まったのか、それとも曲への事前期待度が莫大だったのか、事前にもうヒットの確信を持たれていたようです。)

 

2:Glass Animals

 Glass Animalsの”Heat Waves”がピーク1位、滞在91週の成績でチャートを後に。Hot 100最長滞在記録を塗り替えた翌週にチャートを去りました。外れた理由はLil Babyのアルバム曲が上位に多く登場し、順位が押し下げられたからです。前に最長記録を持っていた“Blinding Lights”も最後チャートを外れたのも、アルバム曲大量登場(Kanye West)が理由でした。

 最初のヒットの流れが一段落(この時点でそこそこ滞在週数がある)した後、TikTok等の手助けもあり、ストリーミングで浮上。その動きにラジオも呼応し、2回目のサイクルを迎えたことが超ロングヒットの理由です。この流れは“Levitating”と非常に似ています。(昨年も”Levitating”関連でよく説明しましたが、クロスオーバー以外でラジオが2回目の上昇をする動きが革命的です。)

 ちなみに、この急浮上で2回目のサイクルが始まった週は“Blinding Lights”が外れた週と同じだったりします。

 

 

11/5 Taylor Swift

 Taylor Swift新作が157.8万と、驚異的な売上でアルバム1位を獲得。2015年のAdeleの”25”後では最多の数字。

 うちセールスが114万と多くを占めていますが、ストリーミングも優秀で歴代3位の約5.5億再生を記録。枚数に換算すると41.9万枚相当。この数字は、Drake以外では最多の数字のため、女性アーティストとして、また非ラップ作品としては歴代最多のストリーミング数になっています。

 

 そのストリーミング数により、シングルチャートでもトップ10独占という史上初の快挙を成し遂げました。また、トップ10が女性アーティストによって独占されるのも史上初です。

 現在のストリーミングにおけるアルバムというイベントの強大さ、そしてアルバムを巨大なイベント化させるTaylor Swiftのアーティストパワーの強さ、この2つが合わさったことによる新記録であるように感じました。

 昨年のDrakeも、実はこのトップ10独占記録をニアミス(9/10曲)しています。実は、この時の方がストリーミングの数値は少しだけ高いです。それにも関わらず、Drakeがニアミスになって今回のTaylor Swiftがトップ10独占を達成したかというと、その他の曲の強さが関係しています。

 今回のTaylorの時のヒット“Unholy”は、昨年のDrakeの時のヒット”Stay”ほど強力ではなかった、というわけです。

 

 

11/12 Rihanna

 RihannaがBlack Panther映画向けのシングルをリリース。他人の客演(に近い形)ものを除くと、2016年以来のリリース。この長い期間の「空白」の分、それだけ期待度も限りなく高まっていましたが、Hot 100首位獲得ならず。若干肩透かしだったかもしれません。

 この週Hot 100首位だったのは、先週アルバムと共にリリースされたTaylor Swiftの“Anti-Hero”。アルバムの勢いを体現するように、ストリーミング数で優位に立ち、Hot 100首位の座を守りました。

 しかしラジオオンエア数では、後からリリースされたにも関わらず“Lift Me Up”が上回りました。広い系統で大きくサポートを受け、初週からラジオ6位に登場。それだけ期待されていたということでしょうか。

 

 

11/19 Drake & 21 Savage vs Taylor Swift

ビルボードは集計期間を事前には明かしておらず、この週が2022年の年間チャートに含まれる可能性もあるので、この週についても取り扱います)

 

 Drakeが21 Savageとのタッグ作“Her Loss”をリリース。しっかりアルバム1位を獲得。売上40.4万、かつストリーミング約5.14億(歴代4位)と、今年前半の“Honestly, Nevermind”よりも優れた数字を残すことに成功。そして全曲が30位以上、トップ10には8曲とHot 100でも十二分に存在感を発揮しました。

 このスケールのアルバムならば、大抵Hot 100でも同時に首位を獲得するのですが、これに関しては達成できず。アルバムの一番人気“Rich Flex”も、十分な成績を確保していたのですが、それ以上に”Anti-Hero”が破格の数字を叩き出し、同首位を守ったのです。

 この週に合わせ、Taylorは複数のリミックスをリリース。それが呼び水となり、32.7万と莫大な数のDLを記録。これは2017年の“Look What You Made Me Do”後では最多の数字。

 普段Hot 100ではDLはその規模の小ささからあまり影響を持ちませんが、ポイント換算効率は高いため、いざ大規模な数字が出ると多少のストリーミングの差を捻り潰すことが可能になるのです。

 

 

 

・おまけ:毎月のトップ10表

※赤囲み=新登場 水色囲み=浮上での新規トップ10入り

※白背景黒字の曲=期間内のトップ10入りが1週のみの曲

 



◇◇参考◇◇

Chart Beat:毎週のHot 100/Billboard 200トップ10解説記事

Chart Historyビルボード内の、各アーティストのChart Historyのページ(アーティスト名 + Billboardと打てば出てくる。リンク先は例の一つ)

Today's Top Hits | Spotify Playlist

Today’s Hits on Apple Music

https://kworb.net/spotify/country/us_daily_totals.html

https://charts.spotify.com/charts/view/regional-us-daily/latest

 

 

 

*1:配置もボーナストラックのように感じる

*2:調査が現行体制の時代がこの年から

*3:11/23日現在