チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

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ようこそ!音楽チャートの世界へ!

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みなさん。こんにちは。知っている方も初めての方も、こんにちは!

はじめましてトコトコと申します!

(ちなみに_は5個)

 

音楽チャート、またポップ音楽について考察していきたい、自称チャート研究者によるブログです。

 

音楽チャート、ポップ音楽のなるべくディープな世界について書いていきたいです。

頭の中で、何かのアイデアの起点になるような記事を目指しています。

 

 

・記事のアーカイブ

 

 

今後の更新方針について

 

 今後は、チャートに関する定期的な投稿を休止します。2014年半ばから、ツイートまたはブログにて、ずっと毎週Hot 100に関する情報を発信してきましたが、これに一度ピリオドを打つことにしました。また、月末に定期的な投稿をすることもありましたが、これに関しても休止致します。

 一方、それ以外の不定期なブログ記事に関しては、細々と続けられたら良いなと考えています。

 

 このような決断に至った理由は多岐に渡りますが、主に挙げられるのは ①毎週更新が難しい ②情報不足 の2点です。

 

 まずは「①毎週更新が難しい」について。次第に更新内容を変え、工夫もしながら細々と活動を続けてきましたが、やはり毎週更新なりの難しさはありました。

 毎週同じタイミングで固定していると、どうしても自分の都合が悪い、またはコンディションに優れないような時とバッティングしてしまうことがあり、そういう時は更新が難しく感じました。基本的にデータが発表されてから文章を作るため、事前準備が難しく、スタート → アップロードまでの期間の短さが時にシビアでした。

 

 次に「②情報不足」です。近年Hot 100の予想を正確に行うアカウントが存在しますが、現状私はその数字を解明することが出来ません。例えば、「この曲のポイントの約60%はストリーミングから来ています」と書いてあっても、どのサービスで人気か等、数字の根拠が全然掴むことができないケースが多いのです。本当にストリーミングでこんなに数字を得ているのか?とボヤけた認識しか得られないです。

 これはチャートにまつわる、私の入手できるデータが少ないからです。これは本当にデータが閲覧できない可能性がありますし、または工夫次第で参考になる情報が実は入手可能で、私の情報収集力が不足している可能性もあります。

 予想アカウントはどこからそんな情報を正確に集めているか分かりませんが、後追いでもその数字を裏付けすることがいまいち出来ないのは、発信をする上でリソース不足を感じます。そしてこの情報不足により、詳細な記述や独自の見解を打ち出せなくなってしまいました。

 長期的な分析では別角度からものを見ることは可能かもしれませんが、データが重要な短期的な見解では情報不足を強く感じます。このことで、自分の投稿内容に納得出来ないことが増えました。自分で発信内容に納得しているか否かは、投稿を続ける上での熱量を大きく左右する要素だったと思います。

 

 この2点から、定期的に投稿する意義を失ったと考え、毎週の投稿を停止する考えに至りました。

 

 このブログの始まりは、自分の気になったテーマを調べることでした。そして調べてみると、案外気になっているテーマ(チャート)の情報が少ないことに気が付きました。そこで、気になったものを、自分の理解や納得のために調べてまとめる。それが自分にとって次のテーマを考える材料となり、また新たな気になるテーマが生まれる。このサイクルが生まれました。

 この作業を私は「世界の片っ端の日の当たらない場所で、穴を掘り続ける作業」と捉えており、この世界の端で少しずつ世界を開拓している(かもしれない)感覚は、ブログやツイートを作る上での大きな喜びでした。

 しかしながら、先に述べた情報不足等の問題により、自分の納得するような見解をまとめ上げられず、この感覚や喜びが近年は得られていませんでした。

 

 ブログを始めた初期は、かなりの熱量をもって活動していました。そんなエネルギーを注いだ活動を、たくさんの方に読んで頂けたことは、本当に活力になりました。

 私はプライベート(?)ではどの側面においても、全くもって鳴かず飛ばずなのですが、そんな私でも少しは活躍できる場所があると分かって、とても嬉しかったです。

 どの時代も記事やツイートを読んでいただけることはありがたいですが、初期に読んでいただき、ブログ活動を軌道に乗せてくださった方には特に感謝しています。

 

 その熱量が時に変な方向に向かい、暴走気味な時もありました。その代表例が「ブログを書くのが苦しい」みたいな記事を出したことです。

 自分の意思でやっているのに、苦しいことをなぜ続けるのか、そして何故それをわざわざ外に発信するのか、今思うと不思議です。しかし歪んだ形とはいえ、これは熱心さの表れだった気がして、個人的には悪い思い出ではないです。傍から見たら意味不明だったかもしれませんが。

 

 色々ありましたが、そんな私の不思議な姿も含めて、暖かく見守ってくださったことも感謝したいです。

 

 雰囲気的に最後みたいになってしまいましたが、まだ自分のチャートへの興味が無くなったわけではないですし、音楽を聞くことへの情熱も消えていません。これが最後の記事にならないように努めます。

 存在感が薄くなるかと思いますが、お目にかかった際には、是非ともよろしくお願いします。

 

 

The 40 Best Albums of 2023

 

 こんばんは!私セレクトのベストアルバム2023を発表いたします。ランキングの前に、軽く選考基準等を説明します。

 

・2022年の2週目以降(12/9以降)から、現在に至るまでのアルバムが対象です。EPは除きます。

 

サウンド重視で音楽を聴く習慣が自分に根付いているため、選考はサウンド面に重きを置いています。

・「純粋な質」以外な面でも順位が決まる場合があります。例えば、選ぶ理由が弱い、消極的な79点のアルバムよりは、何かしらで積極的に選びたい77点の作品の方を優先的に選んでいます。(ここくらいの微妙な点数の違いは、本当に難しいですが)

 

・普段見ているAOTYというサイトの、ユーザーのコメントや評価を参照することがあります。(Critic評価は、ほとんど参考にしていない)

・「どのような作品か」「なぜ私はこの作品を選んだか」の2点を記述しています。

 

 

40 George Clanton - Ooh Rap I Ya

 Chill Waveの作品。ダンサブルで、ムードにも浸れる作品。ドラムの音が特徴的に感じ、個人的にこの点が好みでした。

 

39 Raye - My 21st Century Blues

 昨年、シングル”Escapism.”で華麗なる復活を遂げたRaye。過去にアルバムを出すことを許されず、レーベルを脱退することもあった苦労人ですが、この曲のヒットで、ついに初のスタジオアルバムのリリースが実現。

 アルバムではシングル”Escapism.”で見せたような、R&Bオルタナティブ、ポップを混ぜ合わせたような曲の数々を味わうことができます。時にはラップを披露することも。

 

38 Lil Uzi Vert - Pink Tape

 先行曲に”Just Wanna Rock”とあるように、激しさを増して帰ってきた6年ぶりのアルバム。最初の2曲、14~18曲目等、Lil Uzi Vertのボーカルと激しいサウンドがぶつかった時の爆発力は作品のハイライトと言えます。

 やや流れにムラがあるようにも思いますが、トータルでの聞き心地は上々だと思います。勢いの中心が後半にある珍しい構成(?)

 ちなみに、個人的には”CS”も”Endless Fashion”もわりと好き。後者*1に関しては、私はユーロダンスヒット曲のサンプル Apologist(弁明者/擁護者)なので。

 

37 Kordhell - Sped Up, Vol. 1

 最近(Sped Up)というバージョンをリリースするアーティストが増えています。TikTokではこの「加速バージョン」が流通することが多いので、それの対策というわけです。しかし、基本工夫なく速度を上げているだけなので、ただチープっぽくなるせいか、音源としての評判はほとんどの場合芳しくないです。

 ただ、これには多少の裏事情があると思います。第三者がSped Up音源を勝手に上げることが少なくないのです。つまり、アーティストはこれの「対策」としてSped Up版を「強いられている」ような側面もあると思うのです。

 話をアルバムに戻します。この作品は、そのSped Upをプラスに変えているという点で珍しさを感じたので、選びました。

 KordhellはTikTokで人気を博しているDrift Phonkというジャンルのプロデューサー。元々疾走感が特徴のジャンルなので、それをSped Upで強化できるのが大きいのでしょう。また作品では単に疾走感なだけでなく、細かい変化や工夫も感じました。

 

36 Aly & AJ - With Love From

 元々は”Potential Breakup Song”などのティーンポップ、ポップロックの印象が強いアーティストですが、2017年のEP以降徐々に路線を変更し、2021年のアルバムではシンセポップ~インディーポップの、新たなスタイルで傑作を作り上げました。

 今回はさらにしっとりとした、アメリカーナのスタイルに。正直申すと個人的には、前作の方がジャンル的には好みに近いのですが、それでも前作と通ずるセンスは見られて、十分に楽しむことができました。

 

35 Frost Children - SPEED RUN

 Hyperpopというと、アップテンポでギラギラしたイメージがあるかもしれませんが、この作品ではそのような曲は”SERPENT”くらいで、他はHyperpopというよりは個人的にはハウスに近い曲が並んでいる印象です。

 その彩り豊かな、エレクトロのサウンドを楽しむ作品。そして“SERPENT”も良いアクセントになっています。締めが壮大。

 

34 Jonatan Leandoer96 - Sugar World

 正体はYung Lean。ここではラップではなく、オルトポップを披露。ユーモアあふれ、キュートでいて独特なポップ空間が広がっています。

 

33 Madison Beer - Silence Between Songs

 ポップなコーラスが特徴のシンガー。その特徴を引き出すべく、前作よりポップソウルなスタイルにかじを切った印象。コーラスを響かせる曲、ムードを維持する曲とを使い分け、引き込み方が上手いと思います。

 AOTYのユーザートップレビューだと、Lana Del Reyに似ている……と書かれていますが、強いて誰かに似ている人を挙げるとすれば、Ariana Grandeかと私は思っています。

 

32 Caro♡ - wild at <3

 PC Musicからのリリース。前作で見せたようなアンビエントなスタイルに、ポップな成分を追加することで、スケールが増した印象です。ポップさのある”4ever1”、音に引き込まれる”in2u”などが印象的。

 

31 TisaKorean - Let Me Update My Status

 このアルバムを知らない人は、まずアートワークを見てみてください。そして、曲名も見てください。そうすると、何をオマージュしているかが自然に分かると思います。

 この作品は2000年代後半のラップ、特にSouljaBoy Tell’emがオマージュもと。新鮮で、ユニークなサウンドの数々を楽しむことができます。

 

30 Zach Bryan - Zach Bryan

 他のカントリーとは一線を画する作品。一線を画するどころか、もはや別ジャンルといっても良いかもしれません(オルタナティブの成分が多いと思います) ピアノを筆頭に、全体的に生音が効果的に響き渡っています。

 近年カントリーがストリーミングで躍進しているものの、個人的に心に響く作品がほとんど無かったので(すいません)、こうやって本格的な作品と出会えたことは嬉しかったです。

 

29 Amaarae - Fountain Baby

 近年メインストリームで大きな存在感を発揮するジャンル、Afrobeatsのスターの一人Amaarae。彼女の特徴は、その非常に甲高いボーカル。

 この作品では、その特徴のあるボーカルを親しみやすく仕上げて、かつバラエティも豊かという、難易度の高いミッションを達成しています。

 

28 Jane Remover - Census Designated

 前のアルバムをリリースした時の名前はdltzk。前作ではノイズポップでしたが、今作では重厚なロック音をベースとしたシューゲイズ風路線に転換。前作のようなキャッチーなシングルはありませんが、終始重厚な音に浸ることが出来る、ムードを楽しめる作品です。

 

27 Jeleel! - REAL RAW!

 Rageスタイルのアルバム。このスタイルを志すラッパーは他にもいますが、彼が特徴的なのは、その非常に甲高いボーカル。Rageの激しいサウンド、そして甲高いボーカルが合わさると、他に無い爆発力を味わうことができます。”Dive In”、”Shots”、”Ride The Wave”など、シングル系の曲ではことさらその点が際立ちます。

 

26 TURQUOISEDEATH - Se Bueno

 昨年のベストアルバムで紹介した”fool’s sanctuary”はVmrroboticとのコラボ作で、今回のアルバムがソロでは初のアルバムとなります。

 ブレイクビーツを基本スタイルとするTURQUOISEDEATHですが、今回は生音を導入することで、幅を広げて没入感を強化。シングルのような曲はありませんが、アルバム全体で世界観に浸っていくことの出来る作品です。

 

25 Ana Frango Eléctrico - Me Chama de Gato Que Eu Sou Sua

 ブラジル出身のシンガーによる、ディスコの作品。独自のキュートなボーカル、が親しみやすく仕上がっていて、最後まで良い気分で聞くことができます。英語曲とポルトガル語曲が混在しているため、それもアクセントになっています。

 このアルバムはとにかく最初の曲を聞いて欲しいかもしれないです。多分心を掴まれると思います。

 

24 Slayyyter – STARFUCKER

 濃い。この作品を一言で表すと、こうだと思います。カロリー高めのダンスポップと、ギラギラとしたボーカルの組み合わせ。これのかけ合わせによる濃さを楽しむ作品。特に7~9曲目あたりの部分が盛り上がりのピークです。

 

23 Parannoul - After The Magic

 この作品はメロディーセンスが好きです。前半は、骨太なサウンドをメロディーで包み込む展開で、一気にアルバムに入っていけます。後半は、徐々に遊び心を解放していって、アクセントを加えながら最後までアルバムのムードを楽しむことができます。

 

22 Thy Slaughter - Soft Rock

 PC Musicラストイヤーの最後にリリースされた、A. G. CookとEasyFunによるタッグ作。この作品を読み解くヒントになりそうなのは、EasyFunが今年リリースしていたEPの”Acoustic”。ここで披露した尖った音感が、このタッグ作でも踏襲されているような印象です。

 おそらくですが、曲によってA. G. Cookメインの曲(柔らかい)、そしてEasyFunメインの曲(トゲトゲ)と分けられている気がします。そのスタイルの曲が互いに来ることで、それぞれの曲の効果を高めているような印象がありました。

 

21 PinkPantheress - Heaven knows

 現代のヒットメーカー。今年はメインストリームでも絶大な結果を残し、またステップを一つ登りました。アルバムではその実力を証明するような、確かなポップスの数々が並んでいます。

 またヒット”Boy’s a Liar, Pt.2”では客演Ice Spiceがブレイクしたように、自ら歌い創るだけでなく、客演との協調も得意技。アルバムではRema、Central Cee、Kelelaと毛色の違ったゲストを取り込み、さらなるポップ開拓をする意欲が感じ取られます。

 

20 Carly Rae Jepsen - The Loveliest Time

 曲の層が厚いことで知られるシンガー。今年もB面、ではなく「2枚目のA面」のアルバムをリリースしました。

 曲のバラエティの豊かさで言えば、「1枚目のA面」である”Loneliest”以上に豊富で、多くの印象的な曲が揃っています。評価の高い”Psychedelic Switch”や、ダンスポップの先行シングル”Shy Boy”、ほか終盤に登場する”Put It To The Rest”が個人的には良かったです。

 

19 Skrillex - Quest For Fire

 Skrillexにとって9年ぶりのアルバム。そのSkrillexが持つ素質、多様な音がDJスタイルで楽しめる作品。

 客演に多くの名前が連なっていることから分かるように、曲のバラエティ自体は広いのですが、それでも全体でまとまり感じられる点が良いと思いました。曲と曲の繋がりを感じられるアルバムは好きですね。

 

18 Kali Uchis - Red Moon In Venus

 前作ではレゲトン気質でしたが、今作ではR&B気質に回帰。才能あるボーカルを存分に味わうことができます。またドラム等で速度を変える、Jazz成分等のアクセントも印象に残ります。

 チャートマニア目線では、ストリーミングで結果を残し続けている点にも拍手を送りたいです。

 

17 Poppy – Zig

 先行シングルで披露された、ハードロックスタイルの”Spit”の評判が高かったため、アルバムがそのような作風でなかったことで、世間的には「肩透かし」のような評価となったようですが、個人的には聴き応えを感じています。

 この作品では、新機軸のインダストリアルを導入。全体的に「ノイズ感」がかなり強く、音は強烈なザラザラ感があり、時にはリズムも若干狂っているように聞こえる部分も。しかしながらPoppyのボーカルがかなりポップで親しみやすいため、これらが合わさると絶妙にバランスが取れており、他にないような調和が見られた面白いと思います。

 

16 Ava Max - Diamonds & Dancefloors

 Ava Maxらしいアルバム。得意のフレッシュなダンスポップを磨き上げ、アンセムを多数揃えています。すべてシングルカットできるような風格がありますが、最大のハイライトは新鮮さのあった”Sleepwalker”でしょうか。

 ちょっと余談気味ですが、このアルバムのレビューで、有名レビュワー*2がDua Lipaと比較していて、個人的に引っかかりました。たしかに同じ「ダンスポップ」の枠組みに入るのですが、特徴は違うと思います。

 2人の「らしさ」考える良いきっかけになりそうだったので私なりに考えてみると、アップテンポで「ポップ成分」が強いのがAva Max、ややスロー気味でサウンド面がディスコに近い「ダンス成分」が強いのがDua Lipaと思いました。

 

15 felicita – Spalarkle

 PC Musicのプロデューサー。鋭く、疾走感があるインストがベース。そこに時折ボーカル曲がアクセントとして加わってきます。特にCaroline Polachekが音と重ねて歌うようにする”Spalarkle (Alys)”は、インストとの相性が良く、特に絶品です。若干7曲目は唐突でビックリしますが。

 あと、最初と最後の音が同じになっているのも好きですね。

 

14 Danny Brown & JPEGMAFIA - SCARING THE HOES

 今年AOTYでもRYMでも最も人気だった作品。サンプルが特徴的なハードコアラップで、日本からの引用も多数。「寒い夜も~」が響き渡る、坂本真綾の『約束はいらない』を引用した”Kingdom Hearts Key”が特にお気に入りです。

 サンプルという技術には夢があると個人的にずっと思っていて、このように複数の文脈が繋がっていく様は見ていて楽しいですね。

 

13 SZA – SOS

 2022年12月9日リリース。年の暮れの登場で、その年のベストアルバム選考では判断が間に合わなさそう!と感じて2023の選考に急遽回した作品。正直、去年の時点だとランク外と考えていたのですが、見事今年の選考では上位に入りました!今年に回した甲斐がありました。

 非常にプレイリストっぽい仕上がりなのですが、それ以上に曲が強力。シングルだけではなく、次第に第2のお気に入り、第3、第4と好きな曲が見つかっていきます。また、アルバム・シングルともに大ヒットを遂げ、説得力が増していった点も大きいと思います。

 

12 Panchiko - Failed at Math(s)

 2000年、2001年に出したEPが密かな名盤として語り継がれていたバンドが、長年のブランクを経て、今年ついに初のアルバムをリリース。

 この作品は、言うなれば「26分間の魔法」。再生時間が30分を割るような作品はたいてい激しい曲が多めの、嵐のような勢いのある作品が多いと思うのですが、この作品はインスト曲などもあり、しっかりと引き込むタイプ。

 一方でエネルギーを爆発させるようなアンセムもあって、変化も豊富。その物憂げで、豊かで、ローファイなサウンドの数々によって、この短さとは思えないほど、深く作品のムードに浸ることの出来る作品です。

 

11 Mitski - The Land Is Inhospitable and So Are We

 正直に話すと、最初に聞いた時、フォーク調のアルバムなのであまり自分に適性が無いのでは?と思ってしまいました。しかしそれは大いなる間違いで、すぐに魅力に気がつくことができました。

 フォーク的な温かさに加え、Mitskiの特徴的なうねるような歌唱によってダイナミズムも両立している点が革新的に感じました。温かさの代表格は、本人初のHot 100入りにもなった”My Love Mine All Mine”。そしてうねるシングルの代表格は”Star”。

 ほか、短くて少しInterludeっぽい扱い(?)ながらも、うねりで抜群の存在感を発揮する、”When Memories Snow“のアルバム内で果たす効果も大きく感じました。

 

10 Paramore - This Is Why

 ボーカルHayley Williamsのソロ作2つを挟んでリリースされた、グループ6年ぶりのアルバム。内容にもその経歴が反映されています。

 序盤では初期を彷彿とさせる歌い方をする”The News”など、激しめに入っていく一方で、後半ではソロ作を思わせるような落ち着いた作風へと徐々に変化。さらにサウンドの雰囲気は2017年の傑作”After Laughter”と通ずるものがあり、Paramoreの豊かな歴史をまるごと感じられる作品だと感じました。

 

9 100 gecs - 10,000 gecs

 この作品は、とにかくシングルパワー。100 gecsらしい激しいサウンドが続き、止まることなく猪突猛進が続いていく作品。9曲目でようやく緩やかな流れが来たと思ったら、やっぱり曲中ですぐに激しいサウンドに変化。止まることを知らない、26分。どの曲もパワーがあるので、短いながらもそのエネルギーは絶大です。

 

8 Olivia Rodrigo – GUTS

 2作目は作風を大胆に変化させる、「ディーヴァ的変遷」を勝手に予想していたのですが、今作でも前作のポップロックオマージュ路線を継続。同じ路線となると、どうしても前作との比較になり、ハードルが高くなるのでは?とも思ったのですが、そのハードルを超えてスターの貫禄を見せつけました。

 今作では全体的にブラッシュアップされており、またバランスが良くなっています。(前作はバラードの比率が少し高く感じた) そして何より、シングルの破壊力が一級品です!

 

7 Troye Sivan - Something to Give Each Other

 名シングル”Rush”を筆頭に、高品質のダンスポップが並ぶ作品。他にも”Rush”に続くヒットになった”One Of Your Girls”、ミーム曲をオシャレに仕立て上げるセンスの光る”Got Me Started”、そして最後を締めるA. G. Cookプロデュースの”How To Stay With You”など粒ぞろい。濃厚な曲が揃い、それぞれに個性も見られるため、32分という短さながらも充足感を得られます。

 

6 yeule – softscars

 様々なジャンル名が付けられる作品かと思いますが、個人的にはシューゲイズ、ローファイポップだと考えています。全体に通ずる空気感を共有しつつ、それぞれの曲に個性や幅があるため、作品としての完成度や没入感がとても高いです。ボーカルのハマり方も見事です。

 ほか最初と最後の曲が素晴らしい点も、アルバムの「聴後感」を高める要因になっています。

 

5 Hannah Diamond - Perfect Picture

 このアルバムの魅力は、なんといってもHannah Diamondのボーカル。PC Musicがこれまでに見せてきたような独特のサウンドではなく、このアルバムでは彼女のボーカルを活かす、シンプルなダンスポップで構成。このスタイルが、彼女のボーカルをより引き立てるのです。特に序盤の3曲は、強く彼女のボーカルを感じられます。

 また、全体の構成的な話をすると、先行シングルとして昨年リリースされていた”Staring At The Ceiling”が良いアクセントとなっています。

 

4 Rebecca Black - Let Her Burn

 2011年の“Friday”である意味名を馳せ、その後2021年のEPで再出発。以降徐々に評価を高め、そして今年待望の初のアルバムをリリース。

 その前EPの特徴からか、彼女はHyperpopの歌手と見なされていることもありますが、この作品は「ハイパー」の成分は少なく、エレクトロポップの表記がより正確だと思います。

 ポップ的な親しみやすさがある上に、それぞれの曲に個性や「ひねり」が効いており、聴き応えは抜群。さらに、高音ボーカルの使い方が巧みな点も特徴の一つ。

 

3 Lil Yachty - Let's Start Here.

 大胆なサイケR&Bへの変化。もちろん最初に聴いた時はビックリ。しかし、最初インパクトがあったのは、作風の変化にビックリしたからで、「猫騙し」だったのでは?と疑いながら聴き直すと、その品質の高さに再び圧倒されました。

 全体的な音の品質の高さはもちろん、アルバム内での幅の広さも聞き心地を高める重要な要素だと感じました。アルバムでは客演の名前は書いていないものの、多く参加しているサブ・ボーカリストの面々が重要な仕事を果たしていると思います。

 

2 underscores – Wallsocket

 Indie Rock~Glitchpopの作品。とにかくアンセムのパワーがすごい。種類も豊富で、アンセム祭り。アルバム開始で心をつかむ”Cops and robbers”、それに続く”Girls like us”、サビのフレーズが耳に残る”Johnny johnny johnny”、ノリノリの”Old money bitch”、様々な側面を見せる”Geez louise”と、どれもベストソング部門に選びたかったくらい。

 そしてそれらに加え、この作品は引き込むような曲も多いのが特徴的。ここでの音も多彩。このような曲がよりアンセムのパワーを高め、また作品の奥行きやダイナミックさをグッと高めています。

 

1 Caroline Polachek - Desire, I Want To Turn Into You

 私はアルバムを聴く度に感想をメモしているのですが、そこでは何となく「チェック項目」のようなものがあります。この作品がすごいのは、これらをすべて満たしていることです。

 まず、親しみやすさ。このアルバムは多くのアンセムを擁しており、◎。

 そして個性。幅広いサウンドに加え、彼女のボーカルの魅力が十二分に引き出されており、◎。

 さらに緩急。アルバムの聞き心地や、没入感を出すために個人的に必要な要素と考えているのですが、シングルの配置が完璧で、◎。

 最後に「聴後感」の高さ、最初の曲と最後の曲が関係してくるのですが、最初がボーカルでグッと心を掴まれる”Welcome To My Island”で、最後はアウトロが素晴らしい”Billions”。ここでの配置も完璧、◎。

 こうやって、考えれば考えるほど完璧なアルバムです。大傑作を生み出したCaroline Polachek、そして総合プロデューサーのDanny L Harleに大感謝です。

 

 

 書いていると、数々のアルバムの記憶が蘇ってきて楽しかったです。以上、ご高覧ありがとうございました。

 

 

~一覧表~

アーティスト アルバム名
40 George Clanton Ooh Rap I Ya
39 Raye My 21st Century Blues
38 Lil Uzi Vert Pink Tape
37 Kordhell Sped Up, Vol. 1
36 Aly & AJ With Love From
35 Frost Children SPEED RUN
34 Jonatan Leandoer96 Sugar World
33 Madison Beer Silence Between Songs
32 Caro♡ wild at <3
31 TisaKorean Let Me Update My Status
30 Zach Bryan Zach Bryan
29 Amaarae Fountain Baby
28 Jane Remover Census Designated
27 Jeleel! REAL RAW!
26 TURQUOISEDEATH Se Bueno
25 Ana Frango Eléctrico Me Chama de Gato Que Eu Sou Sua
24 Slayyyter STARFUCKER
23 Parannoul After The Magic
22 Thy Slaughter Soft Rock
21 PinkPantheress Heaven knows
20 Carly Rae Jepsen The Loveliest Time
19 Skrillex Quest For Fire
18 Kali Uchis Red Moon In Venus
17 Poppy Zig
16 Ava Max Diamonds & Dancefloors
15 felicita Spalarkle
14 Danny Brown & JPEGMAFIA SCARING THE HOES
13 SZA SOS
12 Panchiko Failed at Math(s)
11 Mitski The Land Is Inhospitable and So Are We
10 Paramore This Is Why
9 100 gecs 10,000 gecs
8 Olivia Rodrigo GUTS
7 Troye Sivan Something to Give Each Other
6 yeule softscars
5 Hannah Diamond Perfect Picture
4 Rebecca Black Let Her Burn
3 Lil Yachty Let's Start Here.
2 underscores Wallsocket
1 Caroline Polachek Desire, I Want To Turn Into You

 

 

ソング編⇩

 



 

*1:Eiffel 65の“Blue”をサンプリング

*2:このBrad Tasteという人物は、Anthony Fantano(The Needledropという有名YouTuber)と並んで、現在音楽マニアの間で影響力がある人物と見なされているようです

The 100 Best Songs of 2023

 

 こんばんは!私セレクトのベストソング2023を発表いたします。ランキングの前に、軽く選考基準等を説明します。

 

 

・基本的に2023年の曲を選んでいますが、理由があれば今年の曲として選ぶ場合もあります。(アルバムが今年で、先行シングルが昨年だった場合など)

・昨年の選考では、「12/9以降は来年の選考に回しています」と明記していましたが、今年は◯◯以降は来年の選考に回す、ということはしません。現在に至るまでリリースされたすべての曲が対象です。

 

サウンド重視で音楽を聴く習慣が自分に根付いているため、選考はサウンド面に重きを置いています。

・記事の末尾に、一覧表やプレイリストを付けています。

 

 

100 Imparial April – Sunlight

 昨年”9:30”が私の中でヒットした、パワーポップ・バンドの新しい曲

 

99 Thundercat & Tame Impala - No More Lies

 やはり魅力的な音

 

98 underscores - Johnny Johnny Johnny
 ウップスジョニ! ウップスジョニ!

 

97 Lil Yachty - IVE OFFICIALLY LOST ViSiON!!!!

 ダダダダダダダダ フゥッ!

 

96 Denzel Curry feat. Juicy J - BLOOD ON MY NIKEZ

 Juicy Jを迎えたトラップ成分の強い曲

 

95 Turnstile, BADBADNOTGOOD & Blood Orange - Alien Love Call

 2021年のTurnstileの楽曲をBADBADNOTGOODがジャズ仕立てにアレンジ

 

94 Odetari & Don Toliver - PURPLE HEART

 TikTokで今年名を馳せたOdetari。HexDと呼ばれるジャンル名で、ビットを活用した、ディープなインターネットを彷彿とさせるサウンドが特徴的。

 

93 FIA - My House

 もう1つの?My House

 

92 PinkPantheress – Mosquito

 曲の層が厚い名ヒットメーカー

 

91 Hannah Diamond – Affirmations

 瑞々しい曲

 

90 Peso Pluma & Jasiel Nuñez – LAGUNAS

 個人の活躍に加え、ジャンル(Regional Mexican)の大ブレイクにも大きく寄与したPeso Pluma。その彼のアルバムの中で評判の高い、メロウな1曲。

 

89 Namasenda - Deathrow Bby

 今回はYEAR0001からEPをリリース。ユーロビートっぽいサウンドが好み

 

88 wowaka feat. 初音ミク & 巡音ルカ - ワールズエンド・ダンスホール

 近年ストリーミングで人気を博しており、今年はラジオでもシングルカットされる曲が増えるなど、本格的にメインストリームの一角を占めてきた過去曲(カタログ曲)。

 音楽マニアのコミュニティでも過去作品を発掘するような動きがあり、実は今年ボカロPのwowakaのアルバム「アンハッピーリフレイン」(2011年)がにわかに注目されていました。AOTYでは、レーティング数の8割程度は今年のものです。点数もとても高いです。もしかしたら、そのうち各々のベストアルバム選考も、メインストリームのヒットシングルのように、リリース年の枠組みを飛び越えてくるかも?

 

87 Bad Bunny - WHERE SHE GOES

 Jersey Clubというトレンドを取り込む

 

86 Dave & Central Cee - Sprinter

 US以外の多くの地域でヒットした、UKラップの大物タッグ。もしかしたら来年USでも、ヒットするかも?

 

85 boygenius - Not Strong Enough

 私はフォーク方面に明るくないですが、この曲はポップ系ラジオでも人気を得られそうな普遍的な魅力があると思います。

 

84 Kylie Minogue - Padam Padam

 もしかすると、実は思われているほどヒットしていない(Hot 100圏外、Global 200で最高190位、どちらも週間)かもしれませんが、一時期皆の注目を集め、話題を独占していたのは確かです。そんな影響力を持ち続けるKylie Minogueが流石です。

 

83 Lil Shine - Jeans Soaked

 Pluggと呼ばれるジャンルの名曲です

 

82 Kordhell - Fate is Against Me (Sped Up)

 加速、減速の使い分け

 

81 Lyrical Lemonade, Juice WRLD & Cordae – Doomsday

 盟友Lyrical Lemonadeが導く、Juice WRLDの新たな境地

 

80 Tinashe - Talk To Me Nice

 魔術的な雰囲気は健在

 

79 EasyFun - Damaged III

 EPの”Acoustic”で、尖ったサウンドを披露したEasyFun

 

78 Björk & ROSALÍA – Oral

 チャンバーも響き渡る、壮大なサウンド。ちなみに、環境によってはBjörkの”ö”は「トレマ」と打つと、ROSALÍAの”Í”は「アキュート」と打つと変換できる場合もあります。辞書登録が手っ取り早いですけどね。

 

77 aespa - I'm Unhappy

 インパクトのあるメロディーライン

 

76 James Blake - Tell Me

 イギリスの魔術師

 

75 Rina Sawayama - Flavour Of The Month

 アルバムのデラックス版で追加された新曲。初期のEPっぽいヴァイブスを感じます

 

74 Tainy, Rauw Alejandro & Skrillex feat. Four Tet – VOLVER

 今年はダンス方面のゲストとの共演を見せたレゲトンのプロデューサー、Tainy。

 

73 かめりあ feat. ななひら - Denpa Never Die

 ハマっていたのが過去の曲中心だったので、毎年のBest Songs紹介する機会は無かったですが、私の中では名コンビとして馳せていた2人の新曲。ジャンル名は、曲名にある通りDenpa。またはHappycore。初めて聞く方は音量に気をつけてください。

 

72 SZA feat. Travis Scott - Open Arms

 アルバム終盤に印象を残す曲

 

71 Jack Harlow - They Don't Love It

 ミックステープ”Jackman.”で見せた新鮮な作風

 

70 d4vd - Sleep Well

 d4vdの”The Lost Petals”、アルバムかと思ったらEPでした。過去2シングルで見られたような魅力が引き続き、感じられます。

 

69 Beyoncé - MY HOUSE

 新曲でもハウス路線を継続!

 

68 FIFTY FIFTY - Cupid (Twin Ver.)

 ストリーミングで徐々に人気を得る→ラジオヒット、という新たなK-Popヒットのパターンを開拓したキュートな1曲。

 

67 Dev Lemons - Think About It

 ノイズポップ曲。アートワークも印象的なEPより。

 

66 Kash Krabs, Oddwin & Sauceward - KRUSTY KREW ANTHEM

 ラッパーOddwinによる、スポンジボブのキャラクターのパロディ曲ですが、思わぬヴァイブスを発揮!

 

65 Troye Sivan - Got Me Started

 ミーム(”Shooting Star”)をこう仕立て上げるセンスに興奮します。

 

64 daine – writhe

 ボーカルの乗せ方が好きです

 

63 Sematary feat. Hackle - Haunted Mound Reapers

 ハードコアヒップホップ集団、Haunted Moundの今年のアンセム

 

62 Doja Cat – Demons

 アルバムでは違う毛色の曲が多く、人気があるのも評価が高いのも違う系統の曲ですが、私の好みは、この異色のハードコア曲でした。

 

61 Poppy – Spit

 アルバム前にリリースされていた、得意のハードロック路線の曲

 

60 Skrillex & Bladee - Real Spring

 斬新なBladeeの使い方

 

59 Cryalot - See Her

 Kero Kero BonitoのSarah Bonitoのソロプロジェクト、続編。ソロだとダークっぽい曲が多いですね。

 

58 Travis Scott feat. Playboi Carti - FE!N

 フィーン フィーン フィーン

 

57 RAYE - Flip A Switch.

 RAYEの次なるシングル

 

56 M83 - Oceans Niagara

 M83の美しさは健在

 

55 Maruja – Thunder

 今年EPが高く評価された新人バンド。パンキッシュなアートロック。

 

54 Yaeji - Done (Let's Get It)

 ボーカルの出力が個人的に、かなりツボです

 

53 Aly & AJ – Sunchoke

 新アルバムはしっとりとしたアメリカーナ路線に

 

52 Amaarae - Co-Star

 個性あるボーカルをキャッチーに仕上げるのが巧みです

 

51 Kesha - Only Love Can Save Now

 サウンドは新境地ですが、Keshaが従来から持つボーカルの魅力も感じる曲

 

50 8485 feat. Drainpuppet – Scribbles

 8485の新EPより。ドラムンベースっぽい仕上がりの曲

 

49 Poppy – Knockoff

 アルバムではノイズポップの新境地。

 

48 LE SSERAFIM - Eve, Psyche & The Bluebeard's wife

 近年トレンドのメロウな感じ、そして従来のアップテンポな感じ。K-Popが持つ複数の魅力が味わえる、と個人的には考えました。

 

47 caro♡ - in2u

 アンビエントにポップ要素が追加され、スケールアップ

 

46 Tisakorean - SiLIY BaNdAnA (iNtRo) .MP3

 2007年くらいのラップをオマージュした曲です。タイトルにもそれが表れています。

 

45 NewJeans – ETA

 M.I.A.リスペクト、と意外な引き出し

 

44 Madison Beer - Envy the Leaves

 特徴的な強いコーラスがより感じられる1曲

 

43 Lil Yachty - drive ME crazy!

 MGMTのメンバーが製作に参加

 

42 underscores & henhouse! - Geez louise

 1曲の中で様々な顔を見せる

 

41 Lil Uzi Vert feat. Bring Me The Horizon – Werewolf

 2人のマイクリレーは圧巻

 

40 Caroline Polachek - I Believe

 アルバムの中盤の軸

 

39 George Clanton - I Been Young

 Chill Waveのアンセム

 

38 Slayyyter – Purrr

 パンチ力のあるダンスポップ

 

37 Frost Children – SERPENT

 スマブラを引用し、中毒性とパワーのあるアンセムを仕上げる

 

36 jonatan leandoer96 feat. Frederik Valentin - Sugar World

 正体はYung Lean。このプロジェクトでは、ラップではなくアートポップです。

 

35 Hannah Diamond - Perfect Picture

 アルバム最初の曲で、Hannah Diamondをボーカルから強く感じる曲です

 

34 Dua Lipa – Houdini

 Tame Impala(Kevin Parker)がプロデュースしているのはそこそこ知られているかもしれませんが、Danny L Harleがもう1人のプロデューサーとして参加していることを、ここで宣伝しておきます。

 

33 Skrillex & Nai Barghouti – XENA

 Nai Barghoutiのアラビア語シングルを引用。鋭いサウンド

 

32 100 gecs - Frog On The Floor

 かわいいコンセプトの曲

 

31 JELEEL! - RIDE THE WAVE!

 彼の持つ高音ボイスとRageサウンド。パワー溢れる組み合わせ。

 

30 Charli XCX - Speed Drive

 PC Musicラストイヤー、EasyFunサウンドがメインストリームで飛躍を遂げる

 

29 TURQUOISEDEATH feat. Asian Glow & Parannoul – Dive

 今回のアルバムで見せた新しい側面を象徴する曲

 

28 Jane Remover - Census Designated

 旧dltzk。今回のアルバムで見せた重厚なパンクサウンドを強く感じる1曲。

 

27 Olivia Rodrigo – vampire

 前アルバムで見せたパワーポップとバラード的要素を、高い次元で組み合わせることに成功

 

26 Ava Max – Sleepwalker

 ダンスポップの名手

 

25 Zach Bryan feat. Kacey Musgraves - I Remember Everything

 今年のカントリー躍進の一つとしてカウントされることもありますが、他の一般的なカントリー曲とは、一線を画する、全く異なる雰囲気を持つ曲です。

 

24 Carly Rae Jepsen - Psychedelic Switch

 A面を2つ製作することで知られるCarly Rae Jepsen。今回もバラエティあふれる曲の数々を見せましたが、その中でも特徴が際立つ曲。

 

23 Thy Slaughter – Immortal

 PC Musicの大物、A. G. CookとEasyFunによるコラボプロジェクト。ボーカルはCaroline Polachek

 

22 Panchiko - Gwen Everest

 ここで一気にエネルギーが切り開く、アルバムの流れが好きです

 

21 Kali Uchis – Moonlight

 Kali Uchisらしい艶やかな曲。近年はメインストリームでも存在感を示し始めた点も特筆に値しますね。

 

20 Ana Frango Eléctrico - Electric Fish

 このアルバム最初の曲で、心を掴まれると思います

 

19 felicita feat. Caroline Polachek - Spalarkle (Alys)

 鋭く疾走感のあるインストに、Caroline Polachekのコーラスが重なる

 

18 Ice Spice & Nicki Minaj - Princess Diana

 後輩のスタイルを巧みに乗りこなし、その上で曲のクオリティーをワンランク引き上げる、Nicki Minajの仕事術。

 

17 Parannoul – Insomnia

 骨太なボーカルとサウンドをメロディーで包み込む

 

16 yeule - x w x

 アルバム開幕を告げる、スクリームな曲

 

15 JPEGMAFIA & Danny Brown feat. redveil - Kingdom Hearts Key

 サンプルの「寒い夜も~」は、1996年にリリースされた坂本真綾の『約束はいらない』です。終始この曲の使い方が印象的です。

 

14 Paramore - The News

 初期っぽさ、最近のParamoreっぽさのミックス。

 

13 Mitski - My Love Mine All Mine

 初のHot 100入りを筆頭に、メインストリームでの大躍進を遂げる。世界的に人気を得ていて、来年Hot 100、Global 200両方でトップ10入りするかも?

 

12 Rebecca Black - Destroy Me

 スパイスの効いた、アルバム内有数のアンセム

 

11 Addison Rae - Nothing On (But The Radio)

 なぜか、どことなく懐かしさを感じるダンスポップ。次代のダンスポップ界のスター誕生か。

 

10 100 gecs - Hollywood Baby

 強力なラインナップが揃うアルバム内でも、最も強烈なアンセム

 

9 PinkPantheress & Ice Spice - Boy's a liar Pt. 2

 今年のメインストリームの主役ともいえる存在。この曲をきっかけに、両者の才能が広く認知されるようになりました。

 

8 Olivia Rodrigo - bad idea right?

 最初はゴチャゴチャしていて奇妙に感じるかもしれませんが、すぐに底知れないポップ性に気がつくはずです。

 

7 underscores - cops and robbers

 一気にアルバムに入っていける、最初の曲。

 

6 Caroline Polachek - Welcome To My Island

 アルバム名はこの曲の歌詞からなので、ほぼ表題曲ですね。その看板を背負うのに相応しい、本人の力が遺憾なく発揮されている曲。

 

5 Astra King - First Love

 PC Musicの超有望株。今年初のEPをリリース。表現の幅がとても広い、そのボーカルセンスが光る1曲。

 

4 SZA - Kill Bill

 2010年代での”Call My Maybe”のような(?)、Decadeを代表するポップ曲になるかもしれない、それくらいのスケールを感じる曲です。

 あと地味に、JoysoundでもDAMでも歌えるのが偉い。(日本でプロモーションにそこまで力を入れていないアーティストだと、大ヒットでもカラオケに無い時は少なくないです)

 

3 Lil Yachty - the BLACK seminole.

 アルバムは全体的にインパクトがありますが、その中でも図抜けたインパクトがあります。

 

2 Troye Sivan – Rush

 これがポップ曲なんです! とも言えるお手本のような1曲。

 

1 Hannah Diamond - Lip Sync

 PC Musicは今年限りで新曲のリリースを止めてしまうそうです。その最終年の数々のリリースは、さすがPC Music!と唸るものばかりでした。

 寂しいですが、ありがとうPC Music。PC Music Forever。

 

 

~プレイリスト~

Apple Music:The 100 Best Songs of 2023 by トコ - Apple Music

SpotifyThe 100 Best Songs of 2023 - playlist by azumarill_a | Spotify

 

 

~一覧表~

アーティスト
100 Imparial April Sunlight
99 Thundercat & Tame Impala No More Lies
98 underscores Johnny Johnny Johnny
97 Lil Yachty IVE OFFICIALLY LOST ViSiON!!!!
96 Denzel Curry feat. Juicy J BLOOD ON MY NIKEZ
95 Turnstile, BADBADNOTGOOD & Blood Orange Alien Love Call
94 Odetari & Don Toliver PURPLE HEART
93 FIA My House
92 PinkPantheress Mosquito
91 Hannah Diamond Affirmations
90 Peso Pluma & Jasiel Nuñez LAGUNAS
89 Namasenda Deathrow Bby
88 wowaka feat. 初音ミク & 巡音ルカ ワールズエンド・ダンスホール
87 Bad Bunny WHERE SHE GOES
86 Dave & Central Cee Sprinter
85 boygenius Not Strong Enough
84 Kylie Minogue Padam Padam
83 Lil Shine Jeans Soaked
82 Kordhell Fate is Against Me (Sped Up)
81 Lyrical Lemonade, Juice WRLD & Cordae Doomsday
80 Tinashe Talk To Me Nice
79 EasyFun Damaged III
78 Björk & ROSALÍA Oral
77 aespa I'm Unhappy
76 James Blake Tell Me
75 Rina Sawayama Flavour Of The Month
74 Tainy, Rauw Alejandro & Skrillex feat. Four Tet VOLVER
73 かめりあ feat. ななひら Denpa Never Die
72 SZA feat. Travis Scott Open Arms
71 Jack Harlow They Don't Love It
70 d4vd Sleep Well
69 Beyoncé MY HOUSE
68 FIFTY FIFTY Cupid (Twin Ver.)
67 Dev Lemons Think About It
66 Kash Krabs, Oddwin & Sauceward KRUSTY KREW ANTHEM
65 Troye Sivan Got Me Started
64 daine writhe
63 Sematary feat. Hackle Haunted Mound Reapers
62 Doja Cat Demons
61 Poppy Spit
60 Skrillex & Bladee Real Spring
59 Cryalot See Her
58 Travis Scott feat. Playboi Carti FE!N
57 RAYE Flip A Switch.
56 M83 Oceans Niagara
55 Maruja Thunder
54 Yaeji Done (Let's Get It)
53 Aly & AJ Sunchoke
52 Amaarae Co-Star
51 Kesha Only Love Can Save Now
50 8485 feat. Drainpuppet Scribbles
49 Poppy Knockoff
48 LE SSERAFIM Eve, Psyche & The Bluebeard's wife
47 caro♡ in2u
46 Tisakorean SiLIY BaNdAnA (iNtRo) .MP3
45 NewJeans ETA
44 Madison Beer Envy the Leaves
43 Lil Yachty drive ME crazy!
42 underscores & henhouse! Geez louise
41 Lil Uzi Vert feat. Bring Me The Horizon Werewolf
40 Caroline Polachek I Believe
39 George Clanton I Been Young
38 Slayyyter Purrr
37 Frost Children SERPENT
36 jonatan leandoer96 feat. Frederik Valentin Sugar World
35 Hannah Diamond Perfect Picture
34 Dua Lipa Houdini
33 Skrillex & Nai Barghouti XENA
32 100 gecs Frog On The Floor
31 JELEEL! RIDE THE WAVE!
30 Charli XCX Speed Drive
29 TURQUOISEDEATH feat. Asian Glow & Parannoul Dive
28 Jane Remover Census Designated
27 Olivia Rodrigo vampire
26 Ava Max Sleepwalker
25 Zach Bryan feat. Kacey Musgraves I Remember Everything
24 Carly Rae Jepsen Psychedelic Switch
23 Thy Slaughter Immortal
22 Panchiko Gwen Everest
21 Kali Uchis Moonlight
20 Ana Frango Eléctrico Electric Fish
19 felicita feat. Caroline Polachek Spalarkle (Alys)
18 Ice Spice & Nicki Minaj Princess Diana
17 Parannoul Insomnia
16 yeule x w x
15 JPEGMAFIA & Danny Brown feat. redveil Kingdom Hearts Key
14 Paramore The News
13 Mitski My Love Mine All Mine
12 Rebecca Black Destroy Me
11 Addison Rae Nothing On (But The Radio)
10 100 gecs Hollywood Baby
9 PinkPantheress & Ice Spice Boy's a liar Pt. 2
8 Olivia Rodrigo bad idea right?
7 underscores cops and robbers
6 Caroline Polachek Welcome To My Island
5 Astra King First Love
4 SZA Kill Bill
3 Lil Yachty the BLACK seminole.
2 Troye Sivan Rush
1 Hannah Diamond Lip Sync

 

 

アルバム編⇩

 

 

 

Billboard Year-End 2023記事 ③マニア編

 

 こんばんは。年間チャートまとめ記事をゆっくりと書き進めています。今年の記事は3回の記事の最後の更新になっています。③マニア編です。

 

 Year-End各種データは、以下のリンクから確認できます。今年の集計期間は2022年11/19付~2023年10/21付チャートまでです。(2022年11/4~2023年10/12の動向が対象)

https://www.billboard.com/charts/year-end/

 

これまでの年間チャートまとめ記事シリーズはこちら

 

 

 

 

1 ストリーミングの特徴

 

 Hot 100関連の動向調べていると、閲覧しやすいデータでは目立った数字を残していないのに、ストリーミングの数値が高い曲が見つかります。Amazon Music等の、一般人はデータが入手できない(しづらい?)媒体で好成績を記録しているのでしょう。(日本からだと閲覧できない、みたいなデータもあるかもしれません)

 ストリーミングサービスはいくつか種類がありますが、USほどサービスごとに人気曲にくっきりと違いが現れる地域は珍しいです

 一方Global 200では、Spotifyのランキングと近くなりやすいです。Spotifyの規模が大きいことに加え、多くの地域でサービスごとの差が出ないことも理由かもしれません。

 この章ではUSのStreaming Songs、Global 200をSpotifyの年間ランキングと比べます。Hot 100でないのは、条件を近くするためです。

 

Spotifyの年間チャートは集計期間が明示されていませんが、もしかしたらビルボードと期間が同じかもしれません。USで該当週では全てランキング入りしている”Rock And A Hard Place”(39位)と”Dark Red”(40位)の再生数を52週合計すると、10月11月いずれの週をスタートにしても、”Dark Red”の方が上回ってしまうのですが、ビルボードと同じ期間(49週)にすると、“Rock And”の方が上に行きます。(”Dark Red”は冬に強いらしい)

 

Spotify Globalで年間トップ50に入りながら、Global 200で76位以下だった曲

27 d4vd - Here With Me →100
31 Myke Towers - LALA →76
35 Doja Cat - Paint The Town Red →82
45 Peso Pluma & Natanael Cano - PRC →93
46 Tyler, The Creator feat. Kali Uchis - See You Again →133
49 Gabito Ballesteros, Peso Pluma & Natanael Cano - AMG →103
50 d4vd - Romantic Homicide →163

 

 7曲です。トップ50のうち43曲はGlobal 200で76位圏内ということです。上記の曲は3つのパターンに分けられます。1つ目はラテンで3曲。うち2曲はRegional Mexicanで、順位も低めです。

 2つ目はd4vdの曲。ヒット度の割にUSラジオで無視されるなど、知る人ぞ知るヒットみたいな感じなのかもしれません。それが、口コミが反映されやすいSpotifyだとちゃんと広まったのでしょうか?

 残るは”Paint The Town Red”、”See You Again”の2つ。Spotify公式はこの2曲ともBlendsが生み出したヒットと説明しています。Blendsとは自分と他人の目線を両立させたおすすめリストのことなので、「アルゴリズム化された口コミヒット」みたいな感じかもしれません。

 また、Spotifyで11位だったものの、Global 200では51位と、順位に開きがあった“I Wanna Be Yours”もパターン的にはこれかもしれません(今年のBlendsリストに入っていませんが、昨年からヒットしている曲なので、今年のレポートには入らなかったのかも?)

 

Spotify Globalで年間トップ50に入りながら、Streaming Songsで圏外だった曲

※(Streaming Songs年間チャートは75位まで)

 

11 Tyler, The Creator feat. Kali Uchis - See You Again
14 J. Cole - No Role Modelz
21 d4vd - Romantic Homicide
27 Drake feat. 21 Savage - Jimmy Cooks
30 The Neighbourhood - Sweater Weather
34 Frank Ocean - Pink + White
35 Hotel Ugly - Shut Up My Moms Calling
36 Kendrick Lamar feat. Jay Rock - Money Trees
37 Tory Lanez - The Color Violet
40 Steve Lacy - Dark Red
45 d4vd - Here With Me
46 Metro Boomin, Travis Scott & Young Thug - Trance
47 NLE Choppa - Slut Me Out
48 Noah Kahan - Stick Season (14曲)

 

 こちらは14曲。Spotify ↔ Global 200よりも違いが多いです。Global 200はDLを含むのに対し、Streaming Songsはストリーミングのみです。一方で枠が50しか無い等、単純なストリーミングの合計ときっちり一致しないため、純粋な比較でない点を留意してください。(前者が有利な条件、後者が不利な条件。Global 200よりトータルで条件がSpotifyにより近いかは不明)

 とはいえ、この条件を踏まえても曲数がここまで違うと、Spotifyとの一致度がUSでは低いことが伺えます。週間のHot 100に届いていない曲もあります(リカレントルールの影響かもしれませんが)

 

 さらにHot 100年間チャートに入りながらもSpotifyの順位が低い曲を抜き出していきます。(Spotifyが一番細かくデータを閲覧できます)

 

凡例:Hot 100年間順位、アーティスト名、曲名、Spotify週間順位、※Apple参考順位 *1

 

100 Lainey Wilson – Watermelon Moonshine 195 (のちに177) ※180
93 Cory Kent - Wild As Her 186 ※56
91 Jordan Davis - What My World Spins Around 122 ※113?
89 Kane Brown - Bury Me In Georgia 圏外 ※圏外
87 Old Dominion - Memory Lane 145 ※圏外
85 Parker McCollum - Handle On You 187(デイリー) ※圏外
61 Tyler Hubbard - Dancin’ In The Country 136 ※181
59 Luke Combs - Going, Going, Gone 119 ※85
58 Lainey Wilson - Heart Like A Truck 148 ※93?
54 HARDY & Lainy Wilson - wait in the truck 90(1週のみ) ※トップ50
34 Jelly Roll - Need A Favor 100 ※66

 

 パターンその1、カントリー曲です。右に※付きでApple Musicの順位も掲載しましたが、多くの曲で同じく順位は低めです。

 「カントリーはストリーミングでの弱さを克服し、むしろ強みにしつつある」との記述を今年の年間チャート記事で多く書いてきましたが、SpotifyAppleではまだ弱いケースもあるようです。Luke Combsの曲が上記に含まれているのが少し意外かも?

 

98 Put It on da Floor Again 179(デイリーのみ) ※7
76 What It Is 168 ※圏外

 

 時折、ラップでもSpotifyで弱いパターンが見られます。特にラップリスナーとポップリスナーの熱量の差がありそうな曲です。このLattoとCardi Bの”Put It On Da Floor Again”はMainstream R&B/Hip-Hop系(アーバン)では1位、リズミック系で2位を獲得したものの、ポップ系では圏外。そしてSpotifyだと1日179位に入っただけに対して、Apple Musicだとトップ10です。

 LattoはSpotifyで弱い傾向にあり、実は自身メインの曲でSpotify Global(200位まで)にランキングしたことがありません。唯一のエントリーはJung Kookの客演を務めた“Seven”です。

 “What It Is”はAppleでも振るわず。代わりにラジオ人気が高いのでHot 100年間チャート入りしたのですが、かといってストリーミングも極端に低いわけではないようです。*2

 この曲、最初はR&B系ラジオで人気でしたが、ポップ系でも人気を得たことでラジオが拡大。また、このジャンルとしては珍しくUS外(主に東南アジア)で人気を得始めるなど、不思議なヒットでした。

 

 

2 風変わりなチャートアクション

 これまで風変わりなチャートアクションの代表格として「トップ40に入らないのに年間チャート入りする曲」を年間チャート記事でよく取り上げてきましたが、この手の曲の数はやや減少中です。今年も“Bloody Mary”のみです。瞬間的に上位に入るものの急落下するタイプの曲が減り、安定感のあるヒットの順位が週間チャートでも高くなったからでしょうか?

 代わりに風変わりなアクションとして最近急浮上しているのが、それこそ”Bloody Mary”のような過去曲の数々です。ストリーミングで過去曲の人気が伸びているだけでなく、ラジオでもシングル認定されることが珍しくなくなってきて、本格的にメインストリームの一角を占めてきた印象です。この章では、年間チャートに入った4つの過去曲についてレポートしていきます。

 

・99 Lady GagaBloody Mary (2011)

 昨年12月あたりに広い地域のストリーミングで浮上を見せ、ラジオでのシングルカットが決定。実はストリーミングでのピークが短く、滞在の後半はラジオでのポイント比率が高かったりします。

 ラジオでシングルカットされるかは過去曲が年間チャート入りする上で重要な項目で、ストリーミングのみだと短い滞在になるか、チャートの下半分から出てこられないことが多いです。

 ストリーミングのみでは、かなり高いポイントが要求されるため、年間チャートに入るための「もう一押し」のために基本的にラジオが必要な印象です。

 

・24 Miguel – Sure Thing (2010)

 昨年末にストリーミングで急浮上を見せ、2月にラジオでのシングルカットが決定。ここで紹介する他の曲とは違い、この曲は既に1回ヒットしている点が違います。(2011年Hot 100年間チャートで92位)

 ヒット済の曲だと、ラジオでのシングルカットは消極的になる印象です。ラジオの役目は新たなヒットを生み出すこと、と考えているからでしょうか。しかしヒット済のこの曲がラジオでもオンエアされたのは、系統にカラクリがあると思っています。

 2011年当時にこの曲がオンエアされていたのは主にR&B/Hip-Hop系ラジオ*3。この系統での人気は高く、この年のラジオ1位に輝いています。一方で、ポップ系ラジオでは週間チャートでもランク外でした。

 そして今年、ストリーミングでの再浮上を受けてシングルカットが決まるのですが、ここでのポイントは「ポップ系でのシングルカット」という点です。2011年当時、ポップ系ではオンエアされていなかったため、この系統では「新曲扱い」が可能となり、シングル化にこぎつけたのです。ラジオでの動きだけを見ると、「12年越しのポップ系へのクロスオーバー」とも取れます。

 ちなみにリズミック系では両方の年で年間チャートに入っていますが、順位はともに控えめです。

 

・18 Taylor Swift – Cruel Summer (2019)

 Taylor’s Versionで過去曲への注目度の高さを示すTaylor Swift。さらに、今年に入ると過去曲人気がさらに高まり、再録ではない曲もストリーミングのランキングで存在感を示すようになっています。

 その中でも人気が高かった“Cruel Summer”がHot 100に再登場後、シングルカットもされて本格ヒットに。見事Hot 100で首位も獲得しました。何気にアルバム”Lover”から初の首位です。

 彼女は人気の過去曲の層が厚く、ストリーミングのランキングを見ると複数曲がランクインしています。中には“Don’t Blame Me”や”Enchanted”やシングルになったことがない曲もあり、来年以降“Cruel Summer”のような存在になる可能性も?

 また彼女は他にも“Blank Space”が今年Hot 100に再登場しましたが、ヒット済み曲なので、追加のプロモーション等はなく、そこまで上昇しませんでした。

 

・17 Chris Brown – Under The Influence (2019)

 昨年の秋頃からストリーミングで人気に。リリース当時はHot 100に入っていませんでしたが、昨年初めてエントリー。シングルカットされ、リズミック系とMainstream R&B/Hip-Hop(アーバン)系では1位獲得。さらにポップ系でも上位を伺うなど確かな人気を得ました。Hot 100の週間のトップ10には入らなかったものの、滞在期間は41週と長かったです。Chris Brownは近年、ロングヒットが増えてきています。

 この手のR&B曲としては、US外でも人気を得ている点が珍しいと思います。

 

 

3 “Last Night”はヒットしていた?

 

 今年のHot 100年間首位は“Last Night”でした。またアルバムチャートの首位も同じくMorgan Wallenでした。では、この曲はヒットしていたと「思います」か?

 これはビルボードが計上した数字を疑っているわけではありません。様々なストリーミングサービスで立派な数字を出し、首位に相応しい成績を出しているのは疑う予知がないでしょう。

 ここで私が考えたいのは、「個人的な感覚として」この曲は1位だったか?という点です。

 

 私がこれを気にし始めたのは、チャート系アカウントのリプライ欄がきっかけです。「こんな曲知らない」「ファンを見たこともない」のような意見が散見され、スタン系アカウントの戯言とは思い切れず、妙に納得してしまったのです。

 たしかに、言われてみればヒット度に対してほとんど話題になっている気がしなかったからです。良いにせよ、悪いにせよ、Hot 100の首位曲ならばもっと話題になるはずではと思ったのです。

 また、この曲はラジオヒットと思われたのか、Hot 100の予想界隈でいま正確性が最も高いLip Prediction氏が、ストリーミングのポイントのみでもこの曲は首位を獲得できることを氏は指摘したこともあります。(あまり認識されていないから、自分の知らない所で流行っている=ラジオヒットと勘違いされたと推測))

 

 さらに、チャート識者(年間記事でよく登場する)Brian Cantor氏は、「Morgan Wallenなんか聞いたことない」という意見をよく目にすることを報告しています。しかし同時に、外では様々な場所でかかっていることも指摘しています。

 氏は、Spotifyのレポートでも彼がほとんど無視されていることも指摘しています。(そしてそれに異議を唱えています)

 はたまた、AOTYやRYMなどの音楽コミュニティサイトでは、シングルとアルバムの両方でUSチャートを席巻した作品と考えると、評価の「数」が低い水準に留まっています。*4

 

 流行っていないとの感覚を持つ者が一方で、しかし実際にデータ等ではこの曲・アーティストは流行している……以上のエピソードの数々をまとめると、このような感じだと思います。

 この感覚を自分なりに読み解いていきます。データが不十分で、どうしても推測が多くなるので、全ての語尾に「かもしれません」を付けておいてください。

 

 このような変化は、ストリーミングのユーザー層の変遷を反映しているのではないか、と考えています。

 単純に考えて、ストリーミングサービスの初期ユーザーはマニアックな層でしょう。この層の好みが反映され、初期のストリーミングランキングは従来のチャートに無い特徴が現れはじめました。その代表例がアルバム内の非シングルHot 100大量エントリーです。この層にとっては、アルバムをまるごと聞くことが普通で、下手な一般シングルよりも熱のある有力アーティストのアルバム曲の方が注目される、ということです。

 ただ、世の中に存在するのは音楽マニアだけではありません。ストリーミングの規模拡大と共に、徐々にライト層のユーザーも増え、従来のランキングへの揺り戻しも、最近また起こっているのではないかと考えます。

 

 この2つの層の違いを挙げるなら、曲をディグるか否かだと思います。マニアは、良い音楽を追い求め、次第に自分の好みが個別化していくと考えられます。ストリーミング内のレコメンドが、履歴蓄積と共に個人の好みを把握していったことも見逃せません。その結果、マニア内で何を聞くかがバラバラになっているのかもしれません。ラップ曲に最近ヒットが少ない、というのはそれぞれの好みが細分化した結果である可能性があります。

 以前の記事で指摘した、Spotifyでランキング上位の再生数が伸び悩む一方で、下の方の順位の再生数がグングン伸びている現象は、このことと大きく関係しているでしょう。

 

 一方で、新たに入ってきたライト層はどのように聞いているのでしょうか。マニアはディグるのが楽しいかもしれませんが、面倒に感じる人も多いと思うので、「確実」なものを狙っていくと思います。好みのジャンルやアーティストをプレイリストで聞けば安定感があるのではないでしょうか。(アルバムでも良いけど、より慣れ親しんだ曲が多いプレイリストにも分があるかも?)

 ストリーミングの規模が後から伸びてきたラテンやカントリーは、この傾向があるかもしれません。他ジャンルのような、リリース直後のロケットスタートは少なくとも、現行のシングルがチャートをじっくりと上がっていくような動向がよく見られるのです。これは、リリース直後に食いつくほどの興味が無いが、次第に「導線」に乗ってジャンル聞きする人が増えていくからでは?との推測です。また、仮にロケットスタートを切っても、後の持続力が高い印象です。

(似たような話を昨年の記事でもしているので、良かったらそれも参照してください。クリスマス曲の話もしています)

 

 まとめると、音楽を「話題」にする層からしたら、少し遠い層もストリーミングのある意味「票田」を得るようになった結果、チャートが音楽の「話題」をするような層の感覚からは少しズレはじめた、と考えました。

 

 別角度から分析すると、カントリー曲はGlobal Excl. USでの順位が低い。このチャートが出来て以降、Hot 100首位曲では低い曲でもExclで22位(”Bad Habit”)だったのですが、“Last Night”は82位。長くUS1位を取っていたことを考えると淋しい数字です。

 ほかJason Aldeanの”Try That In A Small Town”は圏外、Oliver Anthony Musicの”Rich Man North Of Richmond”は111位でした。またHot 100では2位でしたが、大ヒットのLuke Combsの”Fast Car”は165位でした。

 ここまで長くHot 100首位なら、広い地域で共有されるような影響度を持つはずですが、カントリーはそうはならず。このヒット伝搬の変化は、従来とは違うタイプのヒットであることを示唆しているかもしれません。

 ほか「話題」の形成ならばUS外の人物も参加できるため、US外でのヒット度の低さも話題度と関係しているかもしれません。

 

 そもそも本当に話題になっていないのか不明ですし、検証も難しそうです。別にチャートはマニアだけのものではないので、話題度を測るツールでもありません。ただ、仮に「話題になっていない」曲がチャートで評価されていると、人びとの納得を得られなくなってしまう可能性があり、その場合は改善の余地が出てきます。

 正直何が正しいとかは無いと思います。私の推測も的外れかもしれません。でも、より多くの人が納得できるようなチャートを「探求」することをビルボードには続けて欲しい、とは強く願います。

 その意味で期待できるのはTikTokかもしれません。尺が短い、調査が難しいなどの集計の問題点はあったかと思いますが、ビルボードは今年9月にTikTokチャートを新設し、さらにはサイトの目立つところにリンクを貼っています。

 TikTokは規模も大きく、瞬間的な熱量もよく反映される媒体なので、「話題度」を反映させるにはもってこいのツールだと思います。TikTokが反映される日が果たして来るのか、これが最近一番気になっているテーマかもしれません。

 

 参照を出来る部分はデータを持ち出して考えてみましたが、推測に頼る部分が大きいです。また、この問い自体もどこまで多くの人が持っている感覚なのかも不明です。

 このようなダイナミックな聞き方の変化に興味を持ってきましたが、個人で取れるデータ量には限りがあり、分析に限界を感じているのが正直な感想です。ビルボードにはデータ保持者の立場から、このようなディープな面の解説記事を期待していたのですが、長年追ってきて、そのような解説をあまり見たことがありません。

 ただ、ビルボードは集計上の細かい調整は勤勉に続けている印象で、その面には期待したいと思っています。

 

 

 

*1:Apple Musicには週間チャートがありません。アーカイブもありません。そのため、私が毎週メモしているものを参照しています

*2:Streaming Songs等、他の目に見える部分でも数字が分からないので、予想家の数値を参照

*3:当時はHot ○○(ジャンル名)系チャートがラジオチャートだった

*4:評価も低いです。わざわざ評価が低い作品を聞くのか、と思われるかもしれませんが、特にAOTYでは低評価の作品を議論する文化があるようで、点数が100点中10前後ながらもこの作品よりも票数が多いアルバム/シングルも多いです