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チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

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ようこそ!音楽チャートの世界へ!

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みなさん。こんにちは。知っている方も初めての方も、こんにちは!

はじめましてチャー トこと申します!

(ちなみにアンダーバー_は5個)

 

音楽チャート、またポップ音楽について考察していきたい、自称チャート研究者によるブログです。

 

音楽チャート、ポップ音楽のなるべくディープな世界について書いていきたいです。

 

未来のチャート少年がニヤっとできる記事と、新たな音楽の楽しみを提案するような記事、議論のタネになるような記事を作ることを目指しています!!

 

※できるだけミスの無いよう努めていますが、もしミスを発見したらご一報頂けると幸いです。 

 

・おすすめ記事20選

 

 ※画面右(パソコン)や画面下(スマホ)にある「人気記事」の項目もぜひ参考にしてください!

 

 

 

※連絡等がございましたら、Twitterでお問い合わせください。あとは質問箱も用意しています。

 

 

Hot 100 7/13 見どころ 【"Truth Hurts"がトップ10入り + アルバム1位はChris Brown】

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こんばんは!

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Lizzoの“Truth Hurts”が6位へ浮上!初のトップ10入り

・Ed SheeranとKhalidの“Beautiful People”が26位に登場

Chris Brownがアルバム1位

・J BalvinとBad Bunnyの“QUÉ PRETENDES”が65位に登場。アルバムは9位

・Saweetieが初のHot 100入り。”My Type”が81位に登場

 

・今週のトップ10

      7月13日   R D S
-   1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road 🚩 6 1 1
2 Billie Eilish bad guy  7 8 3
3 Khalid Talk 1 13 10
4 Ed Sheeran & Justin Bieber I Don't Care  3 6 12
  5 Shawn Mendes & Camila Cabello Señorita ✅ 30 5 2
6 Lizzo Truth Hurts 14 3 8
  7 Jonas Brothers Sucker  2 18 31
8 Post Malone & Swae Lee Sunflower 26 12 5
- 9 Chris Brown feat. Drake No Guidance 🍎 33 40 6
  10 DaBaby Suge 15 - 7

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

緑背景はその指標がトップ10内で最高、赤背景は最低

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

 

曲の個別解説

 

☆84 Y2K & bbno$ - Lalala

 ストリーミングで人気に火が付いた“Lalala”がHot 100に登場。プロデューサーのY2K、ラッパーのbbno$ともに初のHot 100入り。

 この曲はストリーミングで全般的に人気。SpotifyApple Music>YouTubeの順で人気が高いです。

 この曲はラップに分類されていることもありますが、かかるラジオ系統はラップ/R&Bを取り扱うアーバン系ではなく、リズミック系やポップ系な予感がします。

 

 

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↑84位・85位に似たようなタイトルの曲が並んでいます。両方ともSpotifyの有力プレイリストToday’s Top Hitsに入っているという共通点がありますが、ポイント源はそれぞれ違います。(“Lalala”はほぼストリーミングのみ、“La La Land”はポップ系ラジオでのポイントが多め)

 

☆81 Saweetie – My Type

 Saweetieが初のHot 100入り。“My Type”が81位にランクインしています。主にApple Musicやアーバン系ラジオで人気を集めています。

 週の途中にはビデオも公開されました。急上昇ランクで上位につけているので、来週はビデオ再生の増加で順位を伸ばすかも。

 Saweetieは以前からQuavoとの交際が噂されており、最近は結婚間近という説もあるようです。

Quavo and Saweetie Hint at Marriage - XXL

 

☆78 NF – When I Grow Up

 NFの新曲“When I Grow Up”が78位に登場。曲のリリースと同時にビデオを公開したこともあり、YouTubeで今週18位と高い人気を集めています。ほかSpotifyでは今週63位にランクインしていますが、Apple Musicでは圏外です。

 彼は今月末にアルバムをリリース予定です。

 

◇71 Logic feat. Eminem – Homicide

 LogicとEminemの“Homicide”がビデオ効果によって71位に再登場しています。現在シングルとしてラジオにかかっているのはこの曲ではなく、Gucci Maneを迎えた”Icy”のようです。

 

 ほかMiley Cyrusの“Mother’s Daughter”も同様にビデオ効果によって83位に再登場しています。

 

☆67 Chris Brown feat. Justin Bieber & Ink – Don’t Check On Me

 Chris Brownの最新作“Indigo”が、自身3回目のアルバム1位に輝きました。32曲が収録されたこの作品は主にストリーミングから人気を得たほか、ツアーチケット&グッズバンドルでセールスも稼いでいます。(アルバムのセールスを増やす現代戦法を「全部のせ」しています)

 総合セールスは10.8万。内訳は純売上2.8万、ストリーミング7.6万、シングルDL0.4万です。ちなみにストリーミングは4割程度を“No Guidance”・”Don’t Check On Me”・“Heat”・”Indigo”の4曲から得ており*1、仮にアルバムの曲数が少なかったとしてもこの4曲がいればアルバム1位になっていると思います。(=別に数で圧倒してアルバム1位になったわけではない、ということです)

 

※アルバム2位のLil Nas Xの総合セールスは6.2万。仮にChris Brownのアルバムが4曲だけで、ストリーミング指数が40%になったとしても依然として合計はChris Brown > Lil Nas Xです。

 

 このアルバムからはJustin BieberとInkが参加した“Don’t Check On Me”が67位に登場。アトランタのシンガーInkはHot 100初登場です。主にApple MusicとSpotifyで人気が高かったです。DLは38位とそこまで高くはありませんでした。

 先行シングルの“No Guidance”はポイントを伸ばしたものの、順位は変わらず9位です。

 

☆65 J Balvin & Bad Bunny – QUÉ PRETENDES

 J BalvinとBad Bunnyがサプライズでコラボアルバムをリリース。ストリーミングでは瞬く間に人気を集め、リリース日にはApple MusicとSpotifyの両方で収録曲全てがランキング圏内に入りました。

 そのストリーミングでの人気もあってアルバムチャート9位にランクイン。J Balvinは“Vibras”での15位、Bad Bunnyは”X 100Pre“での11位が最高位だったので両者にとって初のアルバムトップ10です。

 Hot 100では“QUÉ PRETENDES”65位に登場しています。この曲はラテン系局で3位と、既にラジオでも高い人気を得ています。

 USで人気だったのはこの曲でしたが、ラテン圏で規模の最も大きいメキシコでは“LA CANCIÓN”の人気のほうが高いようです。

 

☆63 Kygo & Whitney Houston – Higher Love

 KygoとWhitney Houston名義の“Higher Love”が63位に登場。Steve Winwoodが歌った”Higher Love”をWhitney Houstonがカバーし、それをさらにKygoがリミックスした、という曲です。

 Whitney Houstonバージョンの“Higher Love”は元々シングルではなく日本版のみに収録されていた曲だったようです。

 この曲は主にダウンロードとSpotifyで人気。DLでは今週4位、Spotifyでは28位と高い順位に入っていますが、逆にそれ以外ではあまり人気がありません。

 Kygoは以前からSpotifyで人気があるものの、それ以外(Apple MusicとYouTube)では人気がないという傾向が見られます。(アメリカでの場合)

 

 Whitney HoustonはHot 100エントリー数を40まで伸ばしています。死後の新規Hot 100エントリーは今回が初です。

  

△35 Lil Tecca – Ran$om

 Lil Teccaの“Ran$om”が35位へ浮上。トップ40まで到達しています。以前からのストリーミングでの好調に加え、少しずつラジオでのオンエアが始まっています。(リズミック系など)

 SpotifyApple Music、YouTubeの3種目全てで上位に入っています。

 

△29 Mustard & Migos – Pure Water

 Mustard(旧DJ Mustard)が新作“Perfect Ten”をリリース。主にストリーミングで人気を集めてアルバムチャート8位にランクインしています。

 Hot 100に今週エントリーしたのは先行シングルの“Pure Water”のみ。今週38位→29位と順位を上げています。

 Apple Musicではアルバム全般的に高い人気がありましたが、Spotifyでは“Pure Water”と”Baguettes in the Face”くらいしか人気が出なかったのでHot 100エントリーは1曲のみになりました。“Baguettes~”は2週目も高い人気を保っているので来週以降Hot 100エントリーする可能性があります。

 

☆26 Ed Sheeran feat. Khalid – Beautiful People

 Ed SheeranがKhalidを迎えた“Beautiful People”が26位に登場。ストリーミングでの人気が高く、Spotifyでは今週4位にランクインしています。Apple MusicとYouTubeでもトップ50圏内には入っています。DLも7位と高水準です。

 またこの曲は既にシングル化されていて、ポップ系ラジオで36位にランクイン。Ed Sheeranのアルバムからの先行曲は3曲ともシングル化されていて、リリース後すぐにラジオにかけられています。このラジオの素早いサポートは先行曲のHot 100順位が高めな理由の一つです。

 Ed Sheeranのアルバムは今週末にリリース。収録曲がどこまでHot 100にエントリーするのか見ものです。“÷”の時は13/16曲がHot 100に入りました。(ボートラ含む)

※このアルバムがチャートに反映されるのは再来週です。

 

 

△18 Panic! At the Disco – Hey Look Ma, I Made It

 Panic! At the Discoのシングルが好調を維持。今週最も大きいラジオの伸び幅を記録し、Hot 100順位を24位→18位と伸ばしています。“High Hopes”に続くトップ10も見えてきました。現在”Hey Look~”はポップ、アダルトポップ、オルタナティブの3系統でトップ10入りしています。

 

 ほかトップ10に入りそうなのは、Blanco Brownの“The Git Up”です。この曲はDL*2とストリーミングを順調に伸ばして29位→16位と浮上。ペースから見て”Hey Look~“よりも先にトップ10まで届きそうです。

 ネクストOld Town Roadとも称されるこの曲は今週Hot Country Songsの1位にも輝いています。(ただしカントリー系ラジオでのオンエアはまだ確認されていないので、“Old Town Road”と同様にHot Country Songs外される可能性も否定できないです)

 

 この2つ以外にもBlake Sheltonの“God’s Country”が好調をキープしていますが、トップ10までは届かなさそうです。カントリーとしては珍しくストリーミング人気を集めHot 100上位に入りましたが、カントリー系ラジオでのオンエアのピークがまさに今なので、今週か来週がピークでそれ以降は順位を落としていきそうです。

 

△6 Lizzo – Truth Hurts

 Lizzoの“Truth Hurts”が6位まで浮上!自身初のトップ10を記録しています。従来からのストリーミングでの好調に加えて、ラジオの数字がかなり伸びてきたことがトップ10入りの要因です。ラジオはリズミック≧ポップ>>アーバンの順に人気です。

 LizzoはBET Awardsでのパフォーマンスが好評で、それ以降はDLでも調子を上げています(今週DL3位)

 Lizzoは現在2016年のシングル、“Good As Hell”もストリーミングで少しずつ伸びを見せています。

 

×× Ariana Grande – break up with your girlfriend, i’m bored

 “break up with your girlfriend, i’m bored”がチャートから外れました。ピーク2位と出だしは勢いがありましたが、滞在は20週に終わりました。

 アルバムリリースの週にビデオが公開され、ストリーミングで絶大な人気を集めたアルバムの目玉シングルに。結果最初の週に2位で登場することに成功しました。

 ストリーミングで人気を得たアルバムの収録曲は、再生数のピークがアルバムリリース時に来るため、次第にストリーミング数を落とします。”break up~”はそのストリーミング減少をラジオの浮上で補い、10位~20位付近に留まっていましたが、ラジオのポイントが落ちるようになってからは急落してしまいました。

 Ariana Grandeはロングヒット因子になりやすいアダルトポップ系ラジオであまり人気が無いことにより、以前からラジオでのヒットが短く終わりやすかったです。その傾向が今回のアルバムのシングルでも続きましたが、それをむしろ逆手にとって矢継ぎ早に曲をリリースし、ストリーミングで大きな成功を収めました。

 現在彼女のシングルでHot 100に残っているのは24週目、今週23位の”7 rings”1曲です。

 今週ほかにチャートから外れたのは”Here With Me"や”Big Ole Freak"など。あと外れてはいませんが、Nicki Minajの”MEGATRON"が20位→92位と急落。来週には外れてしまいそう。

 

 

今週チャートから外れた曲 (9曲)

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

100 Martin Garrix feat. Macklemore & Patrick Stump – Summer Days (🗻100位 /⏰1週)

99 Drake – Omertà (🗻35位 /⏰2週)

97 Ozuna, Daddy Yankee, J Balvin, Farruko & Anuel AA – Baila Baila Baila (🗻69位 /⏰9週)

96 DJ Khaled feat. Meek Mill, J Balvin, Lil Baby & Jeremih – You Stay (🗻44位 /⏰4週)

94 Megan Thee Stallion – Big Ole Freak (🗻65位 /⏰12週)

92 Jonas Brothers – Only Human (🗻91位 /⏰3週)

88 Brett Eldredge – Love Someone (🗻52位 /⏰10週)

87 Marshmello feat. CHVRCHES – Here With Me (🗻31位 /⏰16週)

49 Ariana Grande – break up with your girlfriend, i’m bored (🗻2位 /20週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Chris Brown – Indigo 🎫👕

4 The Black Keys – Let’s Rock

5 Chance the Rapper – Acid Rap 👕

8 Mustard – Perfect Ten

9 J Balvin & Bad Bunny – Oasis

17 Daniel Caesar – CASE STUDY 01

21 Freddie Gibbs & Madlib – Bandana

72 サウンドトラック – BTS WORLD ※

73 Chance the Rapper – 10 Day

128 Ingrid Michaelson – Stranger Songs

153 Marshmello – Joytime III ※

187 Thom Yorke – ANIMA

193 Himesh Patel – Yesterday

 

※フルでカウントされるのは来週のチャート

 

◇アルバムチャート長期滞在

200週目:The Weeknd – Beauty Behind The Madness (今週160位)

ストリーミングがアルバムチャートに導入された初期(2015年)に活躍していたアルバムです。

 

 

・今週ラジオで伸びた曲

Panic! At the Disco – Hey Look Ma, I Made It

・Lizzo – Truth Hurts

・Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita

・Billie Eilish – bad guy

・Taylor Swift – You Need To Calm Down

 

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

🍎 Mustard feat. NAV, Playboi Carti & A Boogie Wit da Hoodie – Baguettes in the Face (今週14位程度)

✅ Ashley O – On A Roll (今週33位)

🚩 Jhay Cortez feat. Bad Bunny & J Balvin – No Me Conoce (今週17位) 

 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

ちなみに新しくできたRolling Stone Chartsでは”Baguettes in the Face"が、Hot 100圏外の中では最上位でした。(39位) RS Chartsは計算方法の都合上、Apple Musicで人気の曲が上に来やすいです

 

関連 / 参考記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

ビルボードスタッフが議論するシリーズ

 今週のテーマは……Lizzoの“Truth Hurts”についてです。

 

① 様々な経緯でヒットしたこの曲を、ヒットしたと実感したのはどの段階だったか?

② ヒットするシングルは“Truth Hurts”で良いと思うか?

③ Lizzoは今後もヒットを飛ばすか?コラボもしたCharli XCXのようになるか?

④ Lizzoは多くの人々からヒットを期待されています。このヒットの何が重要か?

⑤ 2017年のポップソングで他にもっとヒットしてほしかった曲は?

 

 ③の「Charli XCXのようになるか?」というのは熱心なファンを持ってオルタナティブな世界では存在感を見せるが、自身のシングルはヒットしない……のようなニュアンスのようです。Lizzoはシングル・アルバム両方のチャートで好調なことから今後に期待するると考える人もいれば、よほどの大物でなければヒットが保証されるわけではないという声もありました。

 

*1:Rolling Stone ChartsのStreamingの項目を参考

*2:今週DLの伸び幅最大

Rolling Stone Charts への所感

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 Rolling Stone Chartsはじまりました。1967年創刊の有名雑誌の作るチャートとだけあって、かなり注目を集めている印象です。 (例:英語版Wikipediaのシングルのページでは既にRolling Stone Chartsの順位が記載されている場合が多い)

 

 上記の「ようこそRS Charts」では、「ストリーミングは音楽のあり方を大きく変えた。しかし伝統的な週間チャートは動きが比較的鈍い」と書かれており、ビルボードのチャートを意識しているような印象があります。

 そんな新たにローンチされたRS Chartsについて私が現状で感じたことをまとめました。記事を作成するにあたって、下記の「チャートの集計方法」と「よくある質問」を参考にしています。

 

 

・ラジオ抜きが目玉?

 RS ChartsはDL + ストリーミングで計算しており、ビルボードのHot 100と比べてラジオが無いという点が最大の違いということが分かります。RS Chartsはラジオを「意図的」に除いているようです。「よくある質問」の項目で、ラジオは「受動的な媒体」であるとしてファンの本当の動向を知るためには不要としています。

 このようにラジオを除くことで、Rolling Stoneが指摘していた「週間チャートの動きの鈍さ」も同時に解消されます。

 

 たしかに最近はラジオの人気曲とストリーミングの人気曲が違うなど、ラジオの影響力が以前よりも低下していることは確かですが、現在もラジオは無視できない規模の媒体であると考えています。ニールセンによると現在でも92%の成人が毎週1回はラジオにアクセスしているようで、これは他のメディアよりも最も高い数字です。

 仮にファンへの影響力という観点では低下していても、多くの人口に馴染んだ存在としてラジオはまだまだ調査対象としては有益と思われます。

  つまるところ、RS ChartsはUS全体の音楽環境を測るというよりは、ファンにフォーカスしたチャートを作っているという印象があります。

 

YouTubeも抜いている

 やや驚きだったのはYouTubeが計算から外されていることです。「集計方法」の欄では

(Digital Song Sales) + (On-Demand Audio Subscription Streams/120) + (On-Demand Audio Ad-Supported Streams/360)

 とあり、DLと「オーディオ」ストリーミングから成ると記載されています。「オーディオ」ストリーミングとは、オンデマンド・ストリーミング(=選択型)の一部門です。この部門に属するもう一つの項目が「ビデオ」ストリーミングで、「オーディオ」ストリーミングと記載されている場合は、「ビデオ」と対比させた音源の再生を指しています。

 

 YouTubeの再生規模は現在かなり大きいです。The Trichordistの試算によると、2018年再生規模で最も大きかったのはYouTubeでした。会員登録無しでも再生できて、一番敷居が低いからでしょうか。“Old Town Road”旋風を主に牽引していたのもYouTubeの再生数でした。

 しかしリンク内の表にあるように、YouTubeは「金額シェア」の項目では3位に甘んじています。これは1再生あたりのロイヤルティが極端に低いためです。つまり再生数が多かろうが、売上的観点からはストリーミング3番手なのです。

 

 またYouTubeは「受動的」な再生と見なすことも出来ます。YouTubeで「自動再生」をオンにしておけば最初のビデオを起点に永遠に曲がかかり続けます。その選曲はYouTubeアルゴリズムによって決定されるので、ネットラジオと同じ状態、つまり「受動的な」環境が出来上がります。

 他にも「ミックスリスト」を提供していること、各所に「おすすめ」が散らばっていることも「受動的」と見なすこともできそうです。

 このような理由からかビルボードのHot 100でも、昨年の7月からYouTubeの再生数はオーディオ再生と比較して2/3でカウントするようになりました。

 

 「金額」そして「受動的な再生」と、YouTubeを低く見積もる根拠はいくつか存在します。しかし現状で再生数が最も多い媒体を「完全」に無視してしまうのはずいぶん思い切った判断をしたな、という印象があります。 

 もしかしたら「受動的」と評価したラジオとは違い、YouTubeに関しては除外した理由が書いないので、もしかしたら今後のアップデートで追加される可能性もあるのかもしれません。*1

 

・実は既存?意義はRolling Stoneが採用したこと?

 実を言うと、RS Chartsは新しいチャートという印象は無かったです。ラジオを抜いたセールス + ストリーミングのチャートならば情報提供元のBuzzangleで以前から閲覧することができました。

 Buzzangleでは数字が表記されていないので、そこはRS Chartsの違いとは言えますが、数字付きのチャートならばHits Daily Doubleという別のサイトでも閲覧することができます。

 つまりRS Chartsは新たに「開発」されたチャートというよりは、有力メディアのRolling Stoneが新興メディアから「採用」したチャートで、その「採用」に意義があると言えそうです。

 

・毎日更新……??

 RS Chartsは「毎日更新」ということを謳っていますが、どこまで「毎日」更新されるのかは不明です。現状では週の後半まで待たないとデータが揃っていない印象です。

 これは今後次第に改善されていくかもしれませんが、ストリーミングの個別チャートより更新がかなり遅い状況が続けば、即効性を主に求める場合には「ストリーミングの個別チャートを見れば良いや」と思われる可能性もあります。

 ただし現状でもビルボードよりは更新が早いです。

 

 

・面白そうなのはArtist 500?

 RS Chartsで新たに創設されたのはシングルチャートだけではありません。他にTop 200 Albums、Artists 500、Trending 25、Breakthrough 25がローンチされています。

 個人的に面白そうと思っているのはシングル&アルバムの成績からアーティストごとの人気度を測るArtists 500です。なぜかというと、ビルボードの「違い」がうまく働きそうだからです。

 

 ビルボードにも似たような内容を取り扱うArtist 100というチャートがあるのですが、このチャートはシングル&アルバムに加えて、SNSのポイントも集計に入れています。

 SNSはファンダムを形成するツールとして、現在のポップ音楽の重要な要素の一つではありますが、「音楽」ではありません。その音楽では無いものまで音楽チャートでカバーしようとするのは個人的に疑問に感じていたのです。

 その疑問点が解消されているのが、RS ChartsのArtists 500です。このチャートではビルボードと違ってSNSがポイントに入らないので、音楽にのみフォーカスされています。

 ほか500までランキングがあるのも面白いです。このアーティスト系のチャートは性質上どうしても直近にアルバムをリリースしたアーティストが上位に来てしまいます。

 しかし直近にアルバムをリリースしていないアーティストのほうが数は多いと思うので、そういうアーティストの立ち位置も理解するために、このランキングの枠が大きいことは意義があると思います。

 

 ただし一つ謎のポイントが。デュオではない連名(○○&○○)の曲は独立した別のアーティストとして今後も扱われるのか、今後改善されるのか、果たして……?

(↓ Lil Nas XとCardi Bはこの曲でタッグを組んだだけで、別に2人で活動をしているデュオではない)

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・その他の細かいポイント

 Load Moreが多すぎて見づらいです💦 どのランキングでも15位ごとにLoad Moreを強いられます。(スマホでもパソコンでも)

 特にArtists 500では苦労しそうです。(Load Moreで隠されている状態だとページ内検索の対象にならないため、律儀に最後までLoad Moreしないと○○が入っているか否かも分からない💦)

 

・まとめ

 現状ではこのRS Chartsはビルボードの「代わり」にはならないと思います。ビルボードは「社会調査的」、RS Chartsは「分かりやすさ重視」と狙いが違っており、「並立」することはあっても、「取って代わる」展開は考えづらいと思っています。それぞれが個別の目的意識を持って、集計が今後は続けられていくと思います。

 

 現状ではやや否定的な見解を示しましたが、今後の展開を引き続き観察していくことが重要だと思っています。RS Chartsローンチに関する文章では、「今後アップデートされる可能性があります」という文面がいくつか見られ、アップデート次第では大化けする可能性も秘めています。

 仮に世間がRS Charts支持に大きく傾き、これがアメリカのメインのチャートとして扱われるようになったら、私の記事で毎週「今週のRS Charts」についての記事が扱われるかもしれません……??

 

*1:YouTubeは日ごとのチャートが無く、提供されるデータも週ごとかもしれないので、RS Chartsがコンセプトに掲げる「毎日更新」と相性が悪いから外されたという可能性も考えられる

Hot 100 7/6 見どころ 【Señorita2位スタート / Lil Nas XのEPから複数上位入り】

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 こんばんは。iPhoneでキーボードをqwerty配列(PCのキーボードみたいなの)にして、nを長押しすると"ñ”を打つことができます。

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Shawn MendesとCamila Cabelloの“Señorita”が2位に登場

・Lil Nas XのEPから復数曲が上位入り。”Panini”が16位、Cardi Bとの“Rodeo”が22位。EPはアルバムチャートで2位

・Nicki Minajの“MEGATRON”が20位に登場

・アルバム1位はThe Raconteurs。バンドル&ヴァイナルで数字を稼ぐ

・”You Need To Calm Down”が2位→13位と下降

 

・今週のトップ10

      7月5日   R D S
-   1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road 🚩 4 1 1
2 Shawn Mendes & Camila Cabello Señorita ✅ - 2 2
- 3 Billie Eilish bad guy  8 8 3
- 4 Khalid Talk 1 15 9
- 5 Ed Sheeran & Justin Bieber I Don't Care  3 6 11
-   6 Jonas Brothers Sucker  2 12 30
7 DaBaby Suge 15 46 7
  8 Drake feat. Rick Ross Money in the Grave 🍎 - 25 4
9 Chris Brown feat. Drake No Guidance  43 29 6
  10 Post Malone Wow. 7 23 16

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

  

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

緑背景はその指標がトップ10内で最高、赤背景は最低

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆100 Martin Garrix feat. Macklemore & Patrick Stump – Summer Days

 Martin Garrixのシングル“Summer Days”が100位に登場。客演はMacklemoreとFall Out BoyのPatrick Stump。Justiceを彷彿とさせるエレクトロファンク調の1曲です。

 Spotifyでのここ数週の好調に加え、ポップ系ラジオでのオンエアが増加したことがHot 100入りの要因です。

 

☆98 Megan Thee Stallion feat. DaBaby – Cash Shit

 Megan Thee StallionがDaBabyを迎えた“Cash Shit”が98位に登場。両者にとって2回目のHot 100エントリー。

 リリース以降Apple Musicでの好調(20位前後を推移)に加えて、若干YouTubeでの再生が伸びた(今週81位)ことでHot 100入りを果たしました。一方Spotifyでは200位圏外です。

 Megan Thee Stallion、DaBabyは両方とも今年のXXL Freshman(新人ラッパー)リストに含まれています。選出されたのはGunna、Megan Thee Stallion、DaBaby、Roddy Ricch、Lil Mosey、Blueface、YK Osiris、Tierra Whack、YBN Cordae、Rico Nasty、Comethazineです。

 Hot 100エントリー数という観点から見ると、Gunnaが一人飛び抜けています(16曲) 次点はRoddy Ricchの3曲です。

 

 Megan Thee Stallionのブレイク曲、“Big Ole Freak”はラジオの再生数減少に伴いここ最近はHot 100で順位を落としています。

 

☆72 Lil Baby feat. Future – Out The Mud

 Lil BabyがFutureを迎えた新曲“Out The Mud”が72位に登場。ほぼストリーミングの人気のみでのHot 100エントリー。Apple > Spotify > YouTubeの順で人気。Apple Musicではトップ10まで一時期到達していました。

 客演等でよく見かける二人ですが、直接コラボするのはこのシングルが初です。

 

☆57 Marshmello & Kane Brown – One Thing Right

 MarshmelloとKane Brownがタッグを組んだ“One Thing Right”が57位に登場。ストリーミングとDLの2つで好成績を叩き出しています。

 従来のシングルと同様にSpotifyで上位につけた(今週19位)ほか、今回のシングルではApple Musicでも比較的上位に入っています(トップ50圏内)

 Marshmelloのシングルは世界での人気≧USでの人気になることが多いですが、この曲はカントリー歌手Kane Brownが参加し作風もそれに寄せていることもあって、USでの人気>世界での人気になっています。

 

△48 NLE Choppa – Shotta Flow

 NLE Choppaの“Shotta Flow”が67位→48位と浮上。Bluefaceが参加したリミックスの効果です。YouTube再生数では今週3位にランクインしています。

 Apple MusicやSpotifyでは再生数が原曲>リミックスで、そのことからビルボードはBluefaceを客演として表記していないのだと思います。

 このリミックスのビデオは人気ヒップホップチャンネルLyrical Lemonadeからリリースされています。

 

 

△29 Blanco Brown – The Git Up

 好調を維持するネクストOld Town Roadこと“The Git Up”が51位→29位と浮上しトップ40圏内入り。

 “Old Town Road”と同様に、いわばバイラルヒットに分類される曲ですが、このタイプとしては珍しくダウンロードの人気がかなり高いです。ストリーミングではまだAppleYouTubeで30位程度、Spotifyで68位くらいですが、ダウンロードでは既に4位まで到達しています。

 また、ストリーミングのランキングで上位に入る前からAppleSpotifyでの有力リストに入っており「各方面からヒットを期待されている!」感があります。

 

 この好調で焦点になるかもしれないのはHot Country Songs問題。現在この曲はカントリー曲と見なされHot Country Songsに入っていますが、ラジオでのオンエア次第ではジャンル変更もあるかもしれません。(“Old Town Road”の時はそうだった)

 この曲はまずポップ系ラジオでかかり始めたそう*1ですが、今後カントリー系ラジオでもかかるでしょうか?(Hot Country Songsに残るにはカントリー系ラジオでの再生数がほしい)

 

 

☆20 Nicki Minaj – MEGATRON

 Nicki Minajの“MEGATRON”が20位にランクイン。ビデオが注目を集めてYouTubeでは今週4位にランクイン。Apple Musicでもトップ10入りしましたが、Spotifyでは今週38位でした。ダウンロードは今週3位の成績を記録しています。

 AppleSpotifyの両方で大きく数字を落としており、来週以降順位をかなり落とす可能性があります。

 

 

☆16 Lil Nas X – Panini

 Lil Nas XがEPをリリース。ストリーミングで多くのポイントを集めてアルバムチャートで2位に入りました。総合売上7.7万のうち、純売上は0.4万、シングルDLは0.8万、ストリーミングは6.6万でした*2 販売はDLのみで、CDとしてはまだ発売されていないようです。

 “Old Town Road”はYouTubeでの圧倒的なストリーミングが光りますが、アルバムチャートではYouTubeのストリーミング分はカウントされません。(仮にされればアルバム1位になる見込み *3

 

 そのストリーミングでの好調から複数曲が上位に登場。Cardi Bとの“Rodeo”が22位、”Panini”が16位に登場しています。AppleSpotifyでは“Panini”の方が、DLとYouTubeでは”Rodeo”の方が人気でした。

 この2曲が現在シングルとしての人気を確立していますが、今後は“C7osure (You Like)”も浮上するかもしれません。Lil Nas X「プライド・マンス」と呼ばれる6月の最後にゲイであることを表明。そのことを示唆する歌詞があることから、この曲は現在一定の注目を集めています。

 

 今週アルバム1位だったのはJack Whiteなどを擁するバンドThe Raconteurs。総合売上8.8万のうち、純売上8.4万、シングルDLが0.1万未満、ストリーミング0.3万とLil Nas Xとは真逆の売れ方をしています。純売上の多くをツアーチケットのバンドル(抱き合わせ商法)で稼いだほか、ヴァイナルも2.5万を売り上げました。

 

▽13 Taylor Swift – You Need To Calm Down

 Taylor Swiftの直近シングル“You Need To Calm Down”が2位→13位と下降。「どれだけトップ10に残れるかどうか」が今後のカギになると先週の記事で書いたのですが、さっそくトップ10から外れていました。

 先週は大きく注目を集めたビデオ再生数が今週大きく落ちたことが要因でしょうか。YouTubeほどではないですが、AppleSpotifyでも数字を落としています。

 しかしラジオでは大きく伸びています。この曲は今週のBiggest Gain In Airplay、つまりラジオの上昇が最も大きい曲でした。このラジオの上昇が続き、かつストリーミングの下落を止めることができれば今後トップ10に返り咲きそうです。

 ちなみにBiggest Gain In Airplayは既存の曲にしかつかないため、今週新登場した“Señorita”のほうが大きくラジオを伸ばしているかもしれません。(Kworbの数字を参照すると“Señorita”のほうが伸びている)

 

 前シングル”ME!"も同様に大きく順位を落としています。(15位→31位)

 

☆2 Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita

 Shawn MendesとCamila Cabelloのタッグ曲“Señorita”が2位に登場!快調なスタートを切っています。Shawn MendesもCamila Cabelloも5曲目のトップ10入りです。(Camilaはグループ時代も含む)

 Spotifyで今週1位、YouTubeでは2位にランクイン。Apple Musicでもトップ10圏内に入っています。

 その他DL・ラジオも好調で、かなり「高水準な2位」と思われます。リリース週に注目が一気に集まる反動で、来週は一旦順位を落とすかもしれませんが、その後の大ヒットに期待が高まります。

 

 この曲はソングライター陣も豪華。“Havana”も担当していたAndrew Watt、Ali Tamposiに加えてCashmere Cat、Benny Blancoなどの名プロデューサーが参加。さらに以前Camila Cabelloの“OMG”を担当したCharli XCXも参加しています。

 これ以外では当人たち(MendesとCamila)と、Clean BanditのJack Pattersonがソングライトのクレジットに載っています。

  Charli XCXが他人にソングライトした曲数はそこまで多いわけではないですが、うちSelena Gomezの“Same Old Love”とこの”Señorita“がUSのトップ10まで到達しています。ほかIggy AzaleaとMØの”Beg For It”(27位ピーク)も過去に担当しています。

 

 この“Señorita”はUS国外でも大ヒット。YouTubeSpotifyApple Musicの3つで現在世界1位に立っています。

 Spotifyではピーク時には歴代で6番目に高い、約967万再生/日まで到達。このような記録は曲のリリース時 or アルバムリリース時 or クリスマスなど何かしらの「イベント」がある日に達成されることが多いですが、“Señorita”は次第に再生数を伸ばしていき、リリース8日目にピークを迎えたという点がやや珍しいです。

 

 

―1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road

 “Old Town Road”が今週も1位をキープ。13週目の1位となりヒップホップとしては最長の1位となりました。*4それまでは“See You Again”、”Boom Boom Pow”、“Lose Yourself”の12週が最長でした。

 ヒップホップに限らずとも13週はかなり長い1位支配で、13週以上1位に滞在した曲は歴代で12曲しかありません。

 

16週:One Sweet Day, Despacito

15週:なし

14週:I Will Always Love You,  I’ll Make Love to You, Macarena, Candle in the Wind 1997, We Belong Together, I Gotta Feeling, Uptown Funk

13週:End of the Road, The Boy Is Mine, Old Town Road

 

 この調子で新記録更新!と行きたいところですが、現在は少しずつ勢いが落ちてきています。少し前まで1億再生越えを連発していましたが、2週前に1億から陥落。今週EPを出すことで再生数にテコ入れを試みましたが、注目を集めたのはEP内の新曲で、“Old Town Road”自体のストリーミングは伸びませんでした。(今週 -3%)

 ほか今まで定番だった、Spotifyランキングで1位ではないが、両バージョン足すと実はSpotify再生数1位……というパターンも先週で終わっています。少し前まで伸びていたラジオもここ数週でマイナスに転じています。

 ビデオ、アルバムなど切れるカードは全て使ってしまったので、あとは「いかに今の数字をキープするか」の勝負になりそうです。

 一応iTunes割引という手段も残されていますが、DLの影響力が下がっている2019年にどこまでチャート対策効果を発揮できるかは不明です。

 

 ライバル候補の”bad guy”がちょうど3~4週間後(=“Old Town Road”が記録を更新するかどうかの時期)くらいにラジオのピークを迎えそうなのもネックですかね。

 

×× Calboy – Envy Me

 SoundcloudからブレイクしたCalboyの“Envy Me”が今週チャートから外れました。ピークは31位、チャート滞在は27週と比較的ロングヒットでした。

 この曲はストリーミングで人気を集めました一方、ラジオではHip-Hop / R&B系で最高10位、リズミック系で最高31位とそこまで数字に恵まれませんでした。

 彼のHot 100エントリー歴は今の所この曲だけです。彼は4週前にアルバムをリリースし、30位に入っています。

 

×× Billie Eilish – when the party’s over

 Billie Eilishの”when the party’s over”が今週外れました。ピークは29位、チャート滞在は32週です。特殊なチャートアクションを見せたため、滞在が長めです。

 もともとストリーミングで人気を長く保ち、Hot 100下位に留まっていたましたが、滞在20週目を迎えたためルール上一旦チャートを外れました。(21週目以降は51位以上にランクインする必要があるため、20週目がヒット曲の最期になるケースが多いです)

 その後アルバムリリースでストリーミング数が上向き、50位以上にランクインする成績を収めたためHot 100に再登場。そこからラジオでもオンエアされてシングルとしても運用されました。

 しかしアルバムリリースから時間が経過しストリーミングが落ちたこと、またここ数週でラジオの数字が落ちてきたたことから今週、Hot 100から外れました。現在Billie Eilishの曲でHot 100に残っているのは“bad guy”と”Ocean Eyes”の2曲です。後者は2017年のEP、”dont smile at me”の収録曲です。

 

 ほか今週はKelsea Balleriniの”Miss Me More"やJuice WRLDの“Robbery”などがチャートから外れています。

 ”Robbery"はピークは27位、チャート滞在は18週でした。アルバムは2週連続1位と結果を残しましたが、シングルでは昨年のような大ヒットになりませんでした。

 またJojiの“Sanctuary”は1週でチャートを後にしています。

 

今週チャートから外れた曲 (9曲)

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

99 Nipsey Hussle feat. Roddy Ricch & Hit-Boy – Racks in the Middle (🗻26位 /⏰11週)

98 Juice WRLD – Robbery (🗻27位 /⏰18週)

94 Nicky Jam & Ozuna – Té Robare (🗻91位 /⏰6週)

92 Marshmello feat. A Day To Remember – Rescues Me (🗻92位 /⏰1週)

80 Joji – Sanctuary (🗻80位 /⏰1週)

75 Dreamville feat. JID, Bas, J. Cole, EARTHGANG & Young Nudy – Down Bad (🗻75位 /⏰1週)

70 Kelsea Ballerini – Miss Me More (🗻47位 /20週)

47 Calboy – Envy Me (🗻31位 /27週)

45 Billie Eilish – when the party’s over (🗻29位 /32週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 The Raconteurs – Help Us Stranger 🎫

2 Lil Nas X – 7 (EP)

7 Gucci Mane – Delusions Of Grandeur

15 Prince – Originals

18 Willie Nelson – Ride Me Back Home

34 YFN Lucci – 650Luc: Gangsta Grillz

53 Aaron Watson – Red Bandana

61 Mark Ronson – Late Night Feelings

65 Koe Wetzel – Harold Saul High

107 Pi’erre Bourne – The Life Of Pi’erre 4

126 Trina – The One

184 Hollywood Vampires – Rise

 

◇アルバムチャート長期滞在

1周年:Drake – Scorpion (今週12位)

1周年:Soundtrack – 13 Reasons Why, Season 2 (今週193位)

 

 ストリーミングで強いアルバムは2週目以降も数字が安定する……という傾向の筆頭ともいえるDrakeのアルバムが1周年を達成。Drakeは現在アルバムチャートで5つの作品がランクインしています。

 

12位:Scorpion (52週目)

63位:Views (165週目)

82位:Take Care (330週目)

100位:More Life (119週目)

164位:Nothing Was the Same (291週目)

 

◇その他◇

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita

・Taylor Swift – You Need To Calm Down

・Billie Eilish – bad guy

・Shawn Mendes – If I Can’t Have You

・Lizzo – Truth Hurts

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Ashly O – On A Roll

 Miley CyrusのオルターエゴAshly O。Spotifyで上昇を見せています。ビデオが公開された“Mother’s Daughter”もHot 100復帰の可能性あり。

 

・J Balvin & Bad Bunny – QUÉ PRETENDES

・Mustard feat. NAV, Playboi Carti & A Boogie Wit da Hoodie – Baguettes in the Face

 この週の人気アルバム。収録曲が一部Hot 100入りしそう

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

🍎 Gucci Mane feat. Gunna & Lil Baby - ICE (今週24位程度)

✅ Y2K & bbno$ - Lalala (今週26位)

🚩 Jhay Cortez feat. J Balvin & Bad Bunny – No Me Conoce (今週20位) 

 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

 

先週までこのリストに載っていた“Cash S**t”と”Summer Days”がHot 100入りし、このリストから「卒業」

 

 

関連 / 参考記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

ビルボードスタッフが議論するシリーズ

 

 

 今週のテーマは……”Señorita"です。

① 2連続の2位デビューはMendesをテイラー級のAクラスであることを証明するか?

② Camila Cabelloの次アルバムはどうなるか?

③ 以前のコラボから成長が伺えます。今回のコラボのタイミングは良かった?

④ Charli XCXが書いた曲(かつfeat.表記されない)曲で好きなのは?

⑤ 交際がファンに期待されるMendesとCamilaは実際には?(曲への影響は?)

 

 

 ④の質問がマニアック過ぎて驚きです!一番有名なのはSelena Gomezの“Same Old Love”で回答もそれが多いです。個人的に推すのはRayeの”I, U, Us”です。この曲はビデオもCharli XCX監修です???

 

 ④でさらに個人的な理由で気になったのはAndrew Unterberger氏の回答です。氏はRyn Weaverの2014年の“Octahate”と回答。そしてこの2人は今年のBTSの”Dream Glow”で再びタッグを組んだと説明しています。

 しかしRyn WeaverとBTSの名前が並ぶとヒヤッとしてしまいます。Ryn Weaverはこの曲でソングライトを務めましたが、そのリリース時に「CharliとRynがソングライトをしているという理由だけでBTSの曲楽しむふりした~~」というツイートをファボったためにBTSのファンから袋叩きにあいました。(例:お前のパートは要らない など)

 

 その時の叩きようが壮絶だったため、この2人の組み合わせを見てそのことを思い出して少しヒヤヒヤしました。

 

 

*1:Hits Daily Double情報

*2:数字が合わないのは四捨五入の都合でしょうか。ビルボードの言う数字をそのまま引っ張ってきています

*3:YouTubeは無料会員ストリーミングなので、再生数/3750がアルバム売上に。”Old Town Road”、”Rodeo”、”Panini”の3曲の再生数をカウントすると1.1万程度の増加。これでアルバム1位と同点程度だが、他の収録曲も考慮するとおそらく上回る

*4:「ヒップホップ」という言い回しが地味に重要な気がします。「ラップ」という表記だと、14週1位だった”I Got Feeling”を含むかどうか微妙なところですが、「ヒップホップ」という表現ならば、ラジオなどの理由から含まれないような気がします。微妙な違いですが…… さすがに深く考えすぎかもしれませんが……!!

チャート研究者(自称)の自称とは? ~在野研究について~ 【読書メモ】

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↑の本から感銘を受けて、この本のテーマである「在野研究」などについて私が語る記事です。(あんまり音楽の話は出てきません)

 

 私のTwitterなどのプロフィールには“音楽チャート研究者です(自称)”と書いています。なぜ自称を付けているかというと、「学術機関で研究しているわけではない」ということを表すためです。「お墨付き」や目立った実績がまだ無いため、「まだまだ修行中の身分です」ということを表すための「自称」といった感じです。

 

 私は「学術機関で研究していない」ことを「自称」と表現しましたが、ほかに「在野研究者」という表現もあるようです。これを知ったのは、この「在野研究者」をテーマにした書籍『これからのエリック・ホッファーのために』という書籍でした。この本では狭義の学術機関に所属しない研究者を「在野研究者」と称しています。

 

 私は「研究者」と名乗ったものの、「研究者」とは何か?ということについて少し考えたタイミングだったので、この「在野研究者」というテーマは今まさに欲しいものでした。

 この本では自身も「在野研究者」である荒木優太さんが過去の在野研究者を紹介しながら、研究者の書いた文とあって引用なども明確でしっかりしています。それだけではなく過去の研究者の動向に「ツッコミ」を入れるなどのレトリック的工夫もあって、読み物としても楽しめました。(“!”なども織り交ぜて文体のリズムも良かったです)

 

 この本はEn-Sophというサイトで行われていた連載に加筆修正を行った本で、内容の一部はウェブで閲覧することもできます。

 

(一部取り上げられている研究者が違う)

 

 自分へのフィット具合、そして読み物としての内容……などから個人的な読書史上でかなり上位に入る一冊でした。

 この記事では『これからのエリック・ホッファーのために』から感銘を受けた私が、この書籍からどのようなヒントを得て、どのように感じたかなどを書いていきます。書籍でピックアップされていた「在野の心得」や、印象深かった人物をテーマに据えてそれについて私が語る……のような内容です。

 

◇在野の心得◇

 在野研究者の人生を紹介し、そこから在野研究の参考になりそうな項目を取り上げて、「在野研究の心得」として紹介しています。項目は40にわたります。その中から私のお気に入りを5つピックアップし、それについてコメントをしています。

 

全ての「心得」リストは↓のリンクに掲載されています。

  

その10 成果はきちんと形に残せ

 お金なしで上京するものの、「労働は下らない」として全く働かない……仕方がなく妻が働いて生活費を得る……そして最終的には別の女性と情死してしまう……という人生を送った「グウタラ哲学者」の野村隈畔。

 そんな彼の思想が現在にも伝わっているのは、生活のために「仕方なく」作り出した著作があったからです。

 

隈畔はぶつくさ文句を重ねつつも、ベルクソン論の処女作以降、コンスタントに著作を出しつづけていた。著作は10を超える。実際の物書き期間が10年なかったことを考えれば、多作の部類に入るだろう。そして、その多くは現在、近代デジタルライブラリーで誰でも閲覧することができる (P75)

 

 このエピソードから、成果を形に残しておくことの重要性を伝えています。仮にその時は読まれなかったとしても、アーカイブに残しておけば後々何かになるかもしれない……ということです。

 現代では形に残しておくことの重要性は上がっていると感じます。インターネットはアーカイブ性がとても高く、一回物を上げてしまえばその後は「発掘」される可能性がずっとあるからです。

 仮にニッチすぎる内容でも、未来にそれを必要する人が表れれば「運命の出会い」を果たせるかもしれません。この「未来」という部分を私は面白いと考えていて、インターネットに成果を上げればもしかしたら「未来への種」を撒けるかもしれない、ここに魅力を感じています。

 ほかに私は人生で一回くらいは「物」として自分の創作物を作れたら良いな~という思いもあります。物にすれば人に渡せる、という所に何よりも魅力を感じています。

 

 

その11 周囲に頭がおかしいと思わせる

 考古学者の原田大六のエピソードより。余計な干渉を呼び込まないためのテクニックとして記載されています。

 

そのぶん、コミュニケーションに巻き込まれるコストを支払わずにすむ。下手な期待でお節介されるよりも、「へんちくりん」として関係性を切るように誘導するのもひとつの手だ  (P81)

 

 「おかしい」と思わせることが最適解かどうかは分かりませんが、確かに良い部分だけを見せようすると、どこか息苦しく感じるということは私も実感しています。

 

 少し前まで「自分をできるだけ完璧に見せよう」という癖がありました。自分のダメな部分をできるだけ隠すために、見せる部分は完璧にしておこう!という考えだったと思います。そう考えていたからか、少し前までは記事等でミスをすると、そのミスをどう謝るか、どうリカバーをすべきなのか……などでその後1日ぐらい頭がいっぱいになってしまいました。

 しかしそれって実は逆効果で、完璧にしようとすればするほどミスをした時の「ギャップ」が大きくなってしまい、自分へのハードルを上げてプレッシャーをかけていることになります。そのプレッシャーがミスにつながる可能性も大きいですし、自分をよく見せようとするのは全く得策ではなかったのです。いくら高望みをしようと、「自分は自分」に過ぎないので……

 

 私はよく考えればミスをよくするような人間で、かなり「抜けている」部分も多いです。ハードルを上げすぎないようにも、最近はインターネット人格とリアル自分の人格を近づけるように試みています。 

 そのために「自分がどういう人間なのか?」ということや、音楽と関係ない内容の描写を時々挟むようにしています。この記事もその一環なのです。

 他に「人間性」が最近情報の一部である考えもあります。アーティストの人気動向などを見ていると、「アーティストの人間性」も評価の材料になっていることが伺えます。

 私もそれを参考にして「人間としての私の」発信を織り交ぜていけば、自分の文章が元々持っていた以上の影響力、波及力を持つ可能性もあるかもしれないと考えました。もちろんこれが必ずしもプラスに働くというわけでもないですが。(アーティストもあまり人間性を表さない人もいますし)

 

 元のテーマとはかなり脱線してしまいましたが、以上が私なりの「へんちくりん」の解釈です。

 

その15 在野では独断が先行しやすい

 婚姻史の研究者、高群逸枝のエピソードから。多くの発見と実績を残した彼女ですが、現在は改ざんなどが疑われ厳しい批判にさらされています。そのことから、独断が先行しやすい在野では学的コミュニティをいかに築くかが大きな問題であるとしています。

 

高群の残した研究生活の記録は極めて感動的だ。ただし、同時に明記しておかなければならないことがある。つまり、高群の婚姻史研究は今日、厳しい批判にさらされており、それは単なる間違いに留まらない資料の改竄さえ行っていたのではないか、と論じられているということだ (P103)

 

 個人的に気をつけなければならない項目だと考えています。自分はチャートなどの「対象」をマイペースにじっくり観察して、そこでの気づき発見を文字に起こしていく……という工程で記事などを作っています。そこでカギになるのは「細部へのこだわり」です。対象を細部まで観察したからこそ、の発見が数多く、他の媒体であまり無いような知見を文字に起こせているような気もします。

 ただその「細部へのこだわり」とは細部に「引っかかる」ということで、これは周りが見えていない状態とも言えます。そういう「こだわり」は多くの独自の発見に繋がるかもしれませんが、同時に些末なことに囚われすぎて重要なことを見逃してしまう可能性もあるのです。

 以前Apple Musicの会員増加は人々のアルバム志向?などと小難しく考えていたのですが、実はApple製品にプリインストールされていることが主な理由であるということが後に判明しました。これが私の「木を見て森を見ず」の例の一つです💦

 私にはそういう「些細な部分にこだわりすぎる」ことがあるということを自覚しつつ、外部の情報や視点もうまく取り入れられると良いです。重要なことを見逃してしまった場合は、それを切り替えて素直に訂正できるマインドも持っていきたいです。

 

 

 

その17 未開拓の研究テーマを率先してやるべし

 民俗学を研究していた吉野裕子のエピソードより。彼女は50歳頃に習い始めた日本舞踊の扇をきっかけに民俗学の研究をはじめ、そこから独学で研究を開始。「遅咲き」の研究者ながらも実績を残すことに成功しました。

 

どんな分野であれマイナーすぎて誰も手をつけていない未開拓の領域というものがある。それを第一に研究し発表することができれば、(多少の粗さがあったとしても)そこでパイオニアになることができる。そうなってしまえば大学人でさえその周辺に言及するさいは、第一の成果を無視することはできない (P113)

 

 ただの主婦だった彼女が、50歳から習い事で触れた扇をきっかけに学問を始め、大学人も無視できない大きな実績を残した、というシンデレラストーリーには夢を感じずにはいられません。

 私のTwitterやブログはもともと、音楽チャートに知っていることや調べて出てきたことを軽く綴るくらいのものでしたが、そうして書いているうちに興味関心が増幅していき記事がどんどん濃くなっていきました。

 その過程で感じたのは、「音楽チャート」を専門にした文章はあまり多くなく、私の疑問に答える文章がインターネット上ではあまり見つからないということです。その「未開拓」であることは自分をモチベートする一部分にもなっている気がします。

 こうして書き綴っていったものが学問に限らず、何らかのコミュニティの資産となればとても嬉しいです。

 

 しかしこの「独自の研究」は、前の項の「独断が先行する」と表裏一体でもあるので、バランスに気を払う必要もありそうです。

 

その40 この世界には、いくつもの〈あがき〉方があるじゃないか 

 これはこの本の著者の荒木優太さんが「最後に」の項目で残した言葉です。とても心に刺さりました。これから人生の標語の一つにしたいです。

 

 私は多くの場所で「アウトサイダー」だった気がします。小学校時代はよく授業を抜け出すような少年でした。次第にその傾向は改善し、問題行動は減っていったのですが、それでもクラスに馴染み切るようなことはあまりありませんでした。

 楽しいクラスや組織もいくつかはあったのですが、一人行動を好んだり、期待される行動が出来なかったりで「組織に寄与する」ということがうまくできなかった気がします。期待される行動が出来ない、ということは笑いに変換もできるので、”美味しい”時もあります。人を笑わせることは好きなのですが、笑いが必要ではない場面 / 笑いでは乗り切れない場面も人生には多く存在します……

 

 そういう「組織にうまく寄与できない」という自覚が出来てからは、いかに自分が出来ることを、出来る範囲でいかにするかを重視するようになりました。その結果生み出された私の足掻き方が、「物珍しいことをやって、世間の外側から何かを生み出そう」ということです。このような立場だからこそ、物珍しいことができるのでは?と考えたのです。

 この「足掻き」と自分が以前からやっていた「音楽チャート研究」というものがうまいこと合致し、今はこれをやっていてすごく楽しいです。

 そうやって足掻き続けて出来あがったものが、巡り巡って何かしらのコミュニティのヒントになる……ということが究極の目標です。

 

 この私の「足掻き」を一緒に楽しんでくださる方がいれば これ以上の喜びはないです。

 

 

印象に残った在野研究者

 

平岩米吉:「理解と愛」の融合 → 科学と芸術の融合

 『動物文学』という動物に関する雑誌を創刊した人物。この雑誌はもともと『科学と芸術』という名称であったこともあり、この雑誌は科学的/文学的の両面から動物について書かれていました。

 

科学だけでもいけないし、芸術だけでもいけない。この態度は「動物を手がけてゐる人」だけでも「文学畑の人」だけでもダメだとされた「動物文学」の考え方に引き継がれる。「動物文学」とは動物に対する「理解と愛」が不可欠であり、「科学と芸術」を含め、平岩の力点がその「と」にあっただろうことは想像にかたくない。 (P158)

 

 理詰めと、非科学的な側面「愛」の融合を目指した研究者です。このような考え方から文章も読みやすく作られており、それが逆に「大学人からの低い評価」(P159)にもつながったのですが、

 

考えてみれば、平岩にとって「理解と愛」の対象たる動物たちは彼の目の前におり、自宅こそが研究の最前線であった。しかも、発表のためのメディアは既に手中にある。なにを恐れることがあるだろうか? 独立系研究者のもっとも成功した姿を私は平岩米吉にみたいと思う。 (P160)

 と著者は氏を称賛しています。

 

 自分もこの路線を参考にしたいと思っています。心得11の項目で述べたように、音楽以外の面も出すことにも意義も最近感じているので、この雑誌のように「理解と愛」を私も取り入れてみたいです。

 遠い昔(ブログなどをやる前)にはエッセイ系路線の文章を書いてみたい!と考えていた時期もありましたし、様々な創作をしてみるのも面白いのかもしれません。私の人生の最大目標は、「自分が死ぬ時に何を残せているか……」なので、それが音楽関連以外の形であってもそれはそれで面白いとも思います。

 

南方熊楠 → 森の中で研究

 本書では「在野界のスター」と紹介されている知名度のある南方熊楠。一時期はアメリカやイギリスへ渡り、ネイチャー誌に寄稿をするなど大きな結果を残しました。しかし親が亡くなったことで仕送りが途切れ、帰国。その後は故郷の和歌山に戻り、熊野の森で粘菌採取につとめました。あまり自分の研究を広める意思がなかったことから、正式な初の著書が出版されたのは60歳の時でした。あまり研究を広める意思が無かったのは、そういう方向(名誉・地位)に研究を進めるのは邪道と可能性があるからだそうです。

 しかし引きこもって一人で研究していたわけではなく、彼は人々との交流からも学んでいました。娘曰く、南方熊楠はよく銭湯に出向いてそこにいる人々の話を聞いていたそうです。

 

 私もとにかく最近は「いかに自分が満足に研究するか」を重視していて、南方熊楠の「森の中でひたすら研究」という姿は憧れの一つであります。なんというか、「森の中」で熱心に己を極めているっている「イメージ図」みたいなものがすごいぐっとくるというか……

 しかし私は「周りから話を聞いてそれを学習に役立てる」ようなことはまだできていないので、その点は今後取り入れていきたいとも思います。自分の知識を他人の知識をかけ合わせてみたら、どのような化学変化が起こるのか……などは気になる部分ではあります。

 

 もう一つ気になったのは、「研究を広めようとしなかった」という部分です。現代も変わらず、研究の内容とそれを広めることには別のベクトルへの労力が必要で、それを邪道に感じるという感覚を理解することはできます。

  現在私の中では「自分のしたいこと」>>>「バズ」であるので、「バズ」をどう捉えるべきものなのか、ということが少し悩ましいです。

 個人的には目立たない場所でとマイペース研究をじっくり続けているほうが自分のイメージには合っているのですが、あまり「目立たない」にベクトルを向けすぎると、自分の最終的な目標である、「巡り巡って何かのヒントになる」が達成できなくなってしまうので、このバランスは難しいところですね。