チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

イギリスシングルチャート 7/7 【新ルールの第一週目】

f:id:djk2:20170709235136j:plain

Travis Scott。今週、Goosebumpsがイギリスシングルチャートに登場したのですが、それにはある理由があります……!

 


イギリスの音楽チャートを運営するOfficial Chartsは、先月シングルチャートにルール変更を加えることを発表しました。そのルール変更とは……

・同一アーティストの曲は3曲まで (アルバム曲を抑制するため)

・古い曲のストリーミングのレートを調整する (詳細は不明)

……全ては新しい曲 / 才能を映し出すショーケースであり続けるため……

 

このルール変更はどのような効果を及ぼすのか。今週ルール実施後初のチャートだったため、チャート観察を行いたいと思います。

 

まず、どのような曲が落ちたのか。という点から見ていきます。今週チャートから外れた曲は……

先週の順位 / アーティスト名 / 曲名 / (ピーク順位 / チャート滞在週数)

100 Sigrid - Don't Kill My Vibe (62位 / 7週)
99 Ed Sheeran - New Man (5位 / 14週)
97 Drake - Blem (10位 / 15週)
96 Royal Blood - Lights Out (96位 / 2週)
95 The Chainsmokers - Paris (5位 / 24週)
94 JP Cooper - September Song (7位 / 31週)
93 Imagine Dragons - Whatever It Takes (93位 / 1週)
91 The Chainsmokers - Closer (1位 / 47週)
90 James Arthur - Can I Be Him (69位 / 7週)
89 Little Mix - Shout Out to My Ex (1位 / 35週)
88 Ed Sheeran - Happier (6位 / 16週)
87 James Arthur - Say You Won't Let Go (1位 / 42週) 
86 Starley - Call On Me (6位 / 33週)
83 Ed Sheeran - Thinking Out Loud (1位 /118週)
82 Drake feat. Wizkid & Kyla - One Dance (1位 / 65週)
81 Lady Gaga - The Cure (19位 / 11週)
78 Martin Garrix & Dua Lipa - Scared to Be Lonely (14位 / 22週)
75 DJ Khaled & Calvin Harris feat. Travis Scott & Jremih - Don't Quit (75位 / 1週)
57 Ed Sheeran - What Do I Know (9位 / 17週)
50 Ed Sheeran - Perfect (4位 / 17週)
28 Liv'n' G - Smile for Bradley (28位 / 1週)

 

以上21曲が今週チャートから外れました。先週の9曲と比べると、入れ替わりが激しい週ということが分かります。そして、太字の6曲が新ルールの影響でチャートから外れた曲だと思います。Ed SheeranはShape of You、Galway Girl、Castle on the Hillの3曲が上位にいるため、Little MixはPower、No More Sad Songs、Touchの3曲が上位にいるため「3曲ルール」に引っかかりました。またDrakeのOne Danceは1年以上チャートに入り続けていているので、古い曲のストリーミング調整に引っかかったのだと思います。ストリーミング単独では順位を上げていて、チャートから外れ無さそうな様子だったので、何かしらの調整が行われている可能性が高いでしょう。New Man、Blemはルール関係ない自然減だと思います。

この6曲に加え、この週リリースのCalvin HarrisのCash Out、Heatstrokeもおそらくこのルールに阻まれたので、この新ルールによってチャートを8枠拡大したと言えます。

そのことを頭の片隅に起きながら、今週のチャートを見ていきます。

 

100 KSI - Creature (New)

99 Bugzy Malone - Bruce Wayne (New)

98 Dua Lipa - Be the One (↓)

97 Taylor Swift - Shake It Off (Re)

96 Travis Scott (feat. Kendrick Lamar) - Goosebumps (New)

95 Katy Perry feat. Skip Marley - Chained to the Rhythm (↓)

94 Stormzy - Big For Your Boots (↓)

93 Tyler, the Creator - Who Dat Boy (New)

上記のルールが開けた8枠によって入ってきた8曲です。そのうち4曲が新登場、さらには、Bugzy MaloneとTyler, the Creatorは初のイギリストップ100、Travis Scottも客演以外では初なので、新曲 / 才能のためのルール改正という狙いは最初の週から成果が見えています。8枠は一見少ないと思いましたが、今後も効果がありそうですかね。

 

92 Future feat. Chris Brown - Pie (New)

Mask Offが22位まで一時期上昇し、イギリスでも知名度を上げてきたFutureの新曲がさっそくチャートに登場。One Dance以降Drakeはイギリスでも完全に定着しましたが、それに続く形で他のラッパーの躍進も続いています。

 

91 Not3S - Aladdin (New)

USで支持されるヒップホップの他にも、グライムなどイギリス産ヒップホップの支持も拡大。このNot3Sもその一人。このAladdinのほかAddison Leeも63位に。

 

84 Bruno Mars - Versace on the Floor (New)

David Guettaとのシングルバージョンのリリースによりチャートに新登場。

 

72 Bryson Tiller - Run Me Dry (New)

リリースから数週経っての登場。Bryson TillerのRun Me Dry。DJ Khaled、Rihannaと組んだWild Thoughtsで知名度を上げた、と思ったのですが、Wild Thoughts前後でそこまでヒット度は変わらないようです。

 

65 Raye - The Line (New)

iTunesダウンロード割引の恩恵を受けRayeのThe Lineが登場。65位。Stormzyのグライムアンセム、Big For Your Bootsのビデオに登場し、またXファクター出身の5 After MidnightのUp in Hereのソングライトに参加し、さらにイギリスの上半期6番目のヒットJax JonesのYou Don't Know Meでは客演を務めるなどイギリスで幅広い活動をしているRaye。ゆくゆくはイギリスを代表するシンガーになるかも。注目株です。

 

59 Axwell ∧ Ingrosso - More ThanYou Know (New)

Swedish House Mafiaの3人中2人が集まったAxwell ∧ Ingrosso。そのMore Than You Knowが59位で登場。この名義ではイギリス5曲目のチャート入り。この名義でHot 100(アメリカ)に入ったことはありません。ただI Love Youがポップ系ラジオで多くかかるなど、ある程度ヒットの兆しはありました。

 

56 Liam Gallagher - Chinatown (New)

新曲Chinatownが56位で登場。Wonderwallが69位、Don't Look Back in Angerが87位ほか、Liam Gallagher名義のWall of Glassが45位に入っていますが。ソロ / グループの両方で入っていても「同一アーティスト3曲以下」のルールには引っかからないようです。まあ、当たり前といえば当たり前ですが……

 

55 The Killers - Mr. Brightside (↑)

古い曲を制限するルールもどこと吹く風?イギリスシングルチャートの見どころ、The KillersのMr. Brightsideが今週も元気に55位でチャートイン。この曲は古い曲で、新しい曲のためのチャートにするならこの曲は真っ先に消されそうですが意外とチャートに残りました。この曲をどう扱うか、が今後の「新曲をサポートしたい」イギリスシングルチャートを観る上で重要な項目な気がします。

 

43 Calvin Harris feat. Future & Khalid - Rollin' (Re)

アルバムリリースで再注目を浴びて再登場。Feelsは6位まで上昇しました。アルバムチャート1位の座はEd Sheeranに譲りましたが、5曲が100位相当のストリーミングやダウンロードを記録しています。ただし、上記のような3曲ルールで実際にチャートに載るのは3曲です。アメリカではアルバム1位を取ると思っていましたが、現状DJ Khaledの2週目のアルバム1位が見込まれているようです。

 

30 ALMA - Chasing Highs (↑)

ダウンロード割引の効果で上昇。フィンランド人シンガーALMAのChasing Highsが30位まで上昇。黄色い髪がトレードマークの彼女は、Martin Solveigの新曲All Starの客演も務めています。

最近 Charli XCXとDua LipaがこのALMAを訪れてフィンランドに行ったようです。

www.instagram.com

 

24 Rudimental feat. James Arthur - Sun Comes Up (New)

今週1番高い順位で登場した曲。RudimentalとJames ArthurのSun Comes Upが24位で登場。イギリスで人気の二組による夏アンセムです。初期のJohn NewmanとのFeel the Loveというよりは、セカンドアルバムのRumour Mill風の軽やかな作風です。

 

21 Imagine Dragons - Thunder (↑)

アメリカでは今週Believerがトップ10入りし、今年初のロック曲のトップ10入りとなりましたが、イギリスではThunderのほうが人気です。

 

9 Maggie Lindemann - Pretty Girl (↑)

Maggie LundemannのPretty Girlが9位に上昇。自身初のイギリストップ10。ポイントのほとんどをCheat Codes X Cade Remixで稼いでいます(=Remixがメインバージョンのようになっています)。Cheat CodesはSexに次いで2曲目のイギリストップ10です。Maggie LindemannもCheat Codesも両方共アメリカ出身ですが、まだアメリカのチャートでは100位にも入っていません。

ちなみに個人的にはリミックスじゃない原曲バージョンが2017後期にアメリカで流行るのではないか?と密かに期待しています。

 

7 Rita Ora - Your Song (↑)

7位浮上と好調のRita OraのYour Song。2012年のデビュー以降9曲目のイギリストップ10と、イギリスで支持されています。How We Do、I Will Never Let You Down(と客演のBlack Widow)に続くアメリカのHot 100入りも期待できそうです。

ちなみにRita OraはR.I.P.ではDrake、I Will Never Let You DownではCalvin Harris、Black Widow(客演)ではKaty Perry*1、そしてこのYour SongではEd Sheeranがソングライトに参加するなど、多様なアーティストと組んで楽曲をリリースしています。

*1:厳密にいうと、ソングライトというよりも、Katy Perryが採用しなかった曲をIggy Azaleaが拾ったもの

7/7リリースの新曲/新作 の初動を観察 【Keshaの新曲のプロデューサーは?】

f:id:djk2:20170708174327j:plain

今週の見どころはJay-ZのアルバムはTidal限定ではなくなった点ですかね。ただし大手ストリーミングサービスの中ではSpotifyだけ省くという処遇を行っています。(例えばLine Musicとかでも、このアルバムが来ていました)、Spotifyは無料で聞ける範囲が広いからですかね??

また、もう一つの見どころはKeshaの新曲でしょう。それらがどのような順位でスタートしたのか、観察していきます。

 

1 現在のSpotify 1位~10位

1 Luis Fonsi & Daddy Yankee feat. Justin Bieber Despacito
2 Lil Uzi Vert XO TOUR Llif3
3 DJ Khaled feat. Rihanna & Bryson Tiller Wild Thoughts
4 DJ Khaled feat. Justin Bieber, Quavo, Chance the Rapper & Lil Wayne I'm the One
5 Kendrick Lamar HUMBLE.
6 French Montana feat. Swae Lee Unforgettable
7 Post Malone feat. Quavo Congratulations
8 Calvin Harris feat. Frank Ocean & Migos Slide
9 Childish Gambino Redbone
10 Khalid Location

 

先週のアルバムリリースを機に浮上したSlideがそのまま上位に定着。Feelsも11位と高い順位をキープしています。依然としてDespacitoが1位ですが、その座を脅かす存在がそろそろ現れるか!

 

2 Spotify 200位圏内に入った新曲

17 21 Savage Bank Account
22 Kesha Praying
36 Zedd & Liam Payne Get Low
43 21 Savage Famous
54 21 Savage Numb
58 21 Savage Close My Eyes
59 21 Savage Bad Business
66 French Montana feat. Pharrell Bring Dem Things
76 21 Savage Baby Girl
80 21 Savage Thug Life
81 21 Savage FaceTime
96 21 Savage Nothin New
107 21 Savage Dead People
115 21 Savage Money Convo
116 21 Savage 7Min Freestyle
118 HAIM Kept Me Crying
121 21 Savage Whole Lot
140 Cash Cash feat. Cono Maynard All My Love
144 Marc E. Bassy feat. Kyle Plot Twist
146 21 Savage Special
155 The All-American Rejects Sweat
178 Coldplay ALIENS

 

まず表を見て目立つのは21 Savage。初の「アルバム」Issa Albumの全曲が200位圏内に。一曲にYoung Thugのアディショナル・ボーカルが入っていること以外は客演がいないアルバムですが、それでの全曲200位圏内入は見事だと思います。勢いを感じます。Jay-ZのアルバムがSpotifyに来なかったことも多少追い風になったのでしょうか。(Jay-ZファンのSpotifyユーザーが、聴けない4:44の代わりにこっちを聞く、のような)

そしてKesha。以前の陽気なエレクトロポップからはスタイルチェンジして壮大なバラードタイプの曲をリリース。iTunesでも2位で出だしはかなり好調。この曲のプロデューサーはRyan Lewisです。2013年にMacklemoreと組んで一世を風靡した彼ですが、今年のMacklemoreの新曲GloriousではクレジットにRyan Lewisの名は無く、音楽的な破局を発表。そんなRyan Lewisの新活動の第一弾がKeshaの新曲のプロデュースということのようです。

そしてZeddとLiam Payneの新曲。私が聴いてみた感じ、個人的にはかなり「薄味」と感じたので(第一印象では)、今後じわじわ上昇していくのでしょうか。両者とも今年出した曲は好調ですが、それに続けるでしょうか。あとZeddがStayに続いて、feat.ではなく&(Zedd with ◯◯のような表記)なのかも個人的に少し気になります。

その他、The All-American Rejectsの久々のシングル、現在iTunesアルバム2位のHAIMの曲、Coldplayの新曲などが登場しています。HAIMはセールスでは成績が良いものの、ストリーミングでは数字があまり稼げなさそうでしょうか。

 

3 iTunes100位圏内の新曲

2 Kesha Praying
11 Zedd & Liam Payne Get Low
28 Jay-Z 4:44
30 Jay-Z The Story of O.J.
34 Old Dominion Written in the Sand
47 Jay-Z feat. Damian Marley Bam
48 Sabrina Carpenter Why
50 21 Savage Back Account
69 Jay-Z feat. Beyoncé Family Feud
71 Jennifer Lopez feat. Gente de Zona Ni Tú Ni Yo
78 Darius Rucker For the First Time
88 Jay-Z Kill Jay Z

 

上記のSpotifyでは対応していないJay-Zの曲がiTunesシングルでは登場。一番人気は表題シングル4:44なようですが、ラジオでかかりはじめるのはBamのようです。Jennifer Lopezの新曲は71位と、Hot 100入りが怪しい数字です。

2017年前半 Hot 100 見どころ記事 まとめ

f:id:djk2:20170707232311p:plain

 

2017年前半のHot 100見どころ記事を一つにまとめた記事です。

復習するなり、懐かしむなり何かの役に立てば幸いです。

ちなみに【表紙】とはリンクの窓にある画像のことを指していて、個人的に雑誌の表紙っぽいので自分で勝手にそう命名しています。

 

以下が過去のアーカイブです。

 

 

 

1/7 : Starboyがついに1位獲得 【表紙:The Weeknd】


 

1/14: George Michaelへの追悼 【表紙:Migos】


 

1/21: Bad and Boujeeがストリーミング・パワーで1位 【表紙:Bebe Rexha】


 

1/28: Ed Sheeranが初の「トップ10デビュー曲を同時に2曲以上送り込む」という記録を達成。数週後にDrakeも達成しましたが 【表紙:Khalid】


 

2/4: プエルトリコの経済を発展させた?曲のHot 100デビュー 【表紙:Migos】


 

2/11: PandoraがHot 100の集計に入った週 【表紙:Alessia Cara】


 

2/18: Migosのアルバムから7曲がHot 100に 【表紙:G-Eazy】

 

 

2/25: Million Reasonsの復活、Big Seanの1位アルバム 【表紙:Big Sean】

 

 

3/4: グラミー+Fifty Shade Darkerサントラの週 【表紙:Katy Perry


 

3/11: Futureアルバム第一弾(5曲登場)【表紙:Zayion McCall & Zay Hilfigerrr


 

 3/18:Futureアルバム②(2曲がHot 100へ) 【表紙:Future】


 

3/25:Ed Sheeran÷の週 【表紙:Ed Sheeran】


 

4/1: Nicki MinajのHot 100エントリー数が女性で最多に 【表紙:水原希子


 

4/8: DrakeのMore Life週、ポイントはイギリス人 【表紙:Skepta】


 

4/15: 今年最も評価された曲の一つXO TOUR Llif3がHot 100に 【表紙:Katy Perry


 

4/22: HUMBLE.リリース、カントリーのアウォードなど 【表紙:Kendrick Lamar】


 

4/29:Futureが客演以外で初のトップ10、Harry Styles新曲 【表紙:Future、Drake】


 

5/6: DAMN.の週 【表紙:Kendrick Lamar、Drake】


 

5/13: That's What I Likeが首位浮上 【表紙:Hayley Williams from Paramore


 

5/20: I'm the One1位デビュー、Bon Appétit登場 【表紙:Lorde】

 

 

5/27: Despacito1位浮上 【表紙:Justin TimberlakeChris Brown


 

6/3:Malibuトップ10入り、Bad Liar登場 【表紙:Demi Lovato】


 

6/10:それぞれソロでは初、Strip That DownとCrying in the Clubが登場 【表紙:チャート表】

 

 

6/17:Post MaloneのCongratulationsがトップ10入り 【表紙:Lauren Jauregui・Halsey】

 

 

6/24 Fifth HarmonyのDownが登場 【表紙:Fifth Harmony】


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


 


 

Billboard Hot 100 7/15 見どころ 【Believer がトップ10入りで今年初の……?】

f:id:djk2:20170706000738j:plain

こんばんは。Imagine DragonsのBelieverがアルバムリリースの効果もあって、6位まで上昇したのが今週の最大のポイントではないでしょうか。ちなみに今年初のロックのトップ10入りです。ちなみに昨年の現時点では4曲*1、2年前の現時点では3曲のロック曲がトップ10に入っていました。

 

 

 

94 Goldlink feat. Brent Faiyaz & Shy Glizzy – Crew (New)

ヒップホップ系ラジオで注目を集めていたGoldlinkのCrewが94位で登場。アルバムではKaytranadaがプロデューサーの1人に。MeditationというシングルではKaytranadaのシングルTrack Unoを大幅にサンプリングしています。

 

89 Kendrick Lamar – ELEMENT. (Re)

週の途中にビデオがリリースされた効果で4週間ぶりにチャートに再登場。Kendrick LamarのELEMENT. アルバムのなかではHUMBLE. DNA. LOVE. LOYALTY. に次ぐ5番人気の曲でしたが、ビデオは3番目にリリースされました。ちなみにELEMENT.とLOVE.はシングル化されていない=ラジオでかかっていないため、主にストリーミングでHot 100に残っています。

 

79 Drake feat. Quavo & Travis Scott – Portland (↓)

DrakeのPortlandが15週目で79位。最初の週に9位で登場して移行は少しずつ順位を落としていって現在の位置へ。この曲はHip-Hop / R&B系 ラジオチャートで2週、48位、49位とチャートインしたのみでほとんどラジオでかからず。ストリーミングでは人気があるものの、ポイントの取り方が偏っているためHot 100では順位が下がってしまっています。これからラジオでかかり始めての再浮上を期待したいところですが、Drakeは新曲Signsをリリース。これからラジオでかかるのはSignsのほうでしょう。リリースタイミングの妙で、ストリーミングでの人気のわりにHot 100での順位が奮わないままチャートから外れてしまうかも、ということです。この調子だと、トップ10デビューしたにも関わらず年間100位以内に入れるか怪しいです。

ある意味曲のポテンシャルの割には「飼い殺し」状態であるのかもしれません。ラジオと比べて、元々の知名度がそこまでパワーを持たず、ストリーミングでなかなか奮わない大物アーティストもいるなか、これはかなりの「贅沢」な悩みでしょう。Drakeほどのリリース量だとこのような曲が出てくるのも仕方がないのでしょうか。

※似たようなケースにThe ChainsmokersのAll We Knowがあります。(スタートHot 100で18位 / リリース週にSpotifyで7位 などストリーミングで人気も、巨大シングルに挟まれてラジオでそこまでかからず、だんだん順位を落として不完全燃焼に)

※ちなみに世界的にヒットしたといえるPassionfruitと比べると、Portlandはややアメリカのローカルヒット気味です。

 

78 Bruno Mars – Versace On The Floor (Re)

Bruno MarsのVersace On The Floorが78位で再登場。アルバムリリース期に2週入って以来の再登場。元はバラード調の一曲でしたが。David Guettaと組んでディスコ風にリメイク。既に各種ラジオチャートで上昇中、3シングル連続のトップ10は現実的な目標といえそうです。

 

71 Metro Boomin feat. Offst & Drake – No Complaints (New)

Metro BoominがOffsetとDrakeを迎えたNo Complaintsが71位で登場。Migosのメンバー、OffsetはMet Galaに続いて2曲めのソロ名義でのHot 100。Metro Boominは21 Savageと連名の2曲(X,No Heart)に続いて3曲めの自身の名義の曲でのHot 100です。

プロデューサーとしても著名なMetro Boominですが、現時点で今年最も多くのトップ10を輩出したプロデューサーになっています。(次点はMike Will Made-ItとThe Chainsmokersの3曲)個人的に来年のグラミーの「最優秀プロデューサー(クラシック以外)」の最有力候補だと思っているのですが、如何でしょうか。

 

68 DJ Khaled & Calvin Harris feat. Travis Scott & Jeremih – Don’t Quit (New)

アルバムのセールスでは2位で、1位のImagine Dragonsにダブルスコアの差をつけられているものの、ストリーミング等で逆転してアルバムチャート1位の座を獲得したDJ Khaled。アルバムからは2位3位のI’m the One、Wild Thoughtsという2枚看板以外にも、BeyoncéとJay-Z夫妻コンビのShining (再登場 98位)、アルバムリリースと同時にビデオがリリースされたOn Everything (新登場 88位)、DrakeとのTo the Max (73位に上昇)とCalvin Harrisのアルバムの「予告編」のようなシングル、Don’t Quitの7曲がHot 100に。

 

39 A Boogie Wit da Hoodie feat. Kodak Black – Drowning (↑)

トップ40手前で足踏み状態だったAboogie Wit Da HoodieのDrowningがついにトップ40入り。彼にとっては初の、客演のKodak Blackにとっては2曲めのトップ40に。両者とも今後の飛躍が期待される若手です。

 

36 Drake – Signs (New)

DrakeのSignsが36位で登場。ちなみにMore Lifeに当てはめると、2 ChainzとYoung Thugを迎えたSacrificesと同じ順位。(More Lifeのなかで7番人気)シングルのジャケットのデザインがルイヴィトンとのコラボシングルとだけあってか、おしゃれ。

 

25 Miley Cyrus – Malibu (↓)

リリース時にはトップ10に入ったMiley CyrusのMalibuでしたが、ここ最近は20位前後に留まっています。先週はiTunes値下げを行うもそこまで順位を伸ばせず。ラジオでの伸びしろはまだまだありますが、どこまで順位を上げられるか。今週24位のSelena GomezのBad Liarも似たようなシチュエーションにあります。(値下げ済み、ラジオでは伸びしろあり、もう少し順位を伸ばしたい)

 

11 Zedd & Alessia Cara – Stay (↓)

18週目のZeddとAlessia CaraのStayが11位とトップ10圏外へ。トップ10滞在は8週間でした。この曲、Zeddのかつてのトップ10ヒットClarityと比較すると曲のピークが訪れるのが早めで、Stayが18週目でトップ10から落ちる一方、Clarityは18週目の時点でトップ10に入っていませんでした。当時より知名度が上がって、曲のリリース時から注目を集めていることが理由だと思います。(作風変化も理由の一つだと思いますが)、Clarityはロングヒットでピーク8位ながらも年間24位に食い込みましたが、Stayも同じくここから粘りを見せてロングヒットになるでしょうか。

ちなみに先週まで粘っていたAlessia CaraのScars to Your Beautifulは今週チャートから外れました。

 

6 Imagine Dragons – Believer (↑)

今週アルバムセールス1位のImagine Dragons。値引き、元からのラジオの好調、さらにアルバムリリースに伴うストリーミングでの浮上の効果で一気にBelieverが6位まで浮上。彼らにとってRadioactiveに次ぐ2番目に高いピーク順位です。(Demonsも同じくピーク6位)。Thunderも54位まで浮上しています。アルバムでは彼ららしい重厚なサウンドのBelieverに加え、新スタイルを見せたThunderが世界的に受けて、ロックの受けが悪いとされるストリーミングで上位につけるなど(例Spotify グローバルで最高7位)、まさにアルバムタイトル”Evolve”に相応しい活躍を見せていたと思うのですが、惜しくもアルバム1位は取れず。前述したようにストリーミングでもロック系アクトとしては大健闘だったのですが、キャレドのアルバムの曲数が多いこともあって、ストリーミングで逆転されアルバムチャート1位の座は取れませんでした。曲数の多さがアルバムチャート勝負の分かれ目になるのは少し考えものですかね……

 

5 Ed Sheeran – Shape of You (→)

今週チャート滞在25週目ながらもまだトップ5圏内をキープ。昨年の年間1位はEd Sheeranが関わったLove Youreselfでしたが、Hot 100での成績は1位に2週、トップ10に24週でした。一方Shape of Youは1位に12週、トップ「5」に25週と、昨年の年間1位すらも圧倒する驚異的な強さを見せています。

 

× XXXTENTACION – Look At Me! (↓)

2016年1月頃のリリースながらも、最近発見され一時期34位まで登りつめたXXXTENTACIONのLook At Me!がチャートから外れました。ブレイクのきっかけになったこの曲はチャートから外れましたが、独自のスタイルは大きく注目を集めていて今後の活躍に期待ができそうです。

 

今週チャートから外れた曲

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位/チャート滞在週数)】

100 Plies feat. Kodak Black – Real Hitta (100位/1週)

98 Enrique Iglesias feat. Descemer Burno, Zion & Lennox – Subeme La Radio (81位/6週)

97 Trey Songz – Nobody Else But You (92位/3週)

88 Zac Brown Band – My Old Man (68位/4週)

83 Young Thug feat. Future – Relationship (83位/1週)

61 Kodak Black – First Day Out (61位/1週)

60 XXXTENTACION – Look At Me! (34位/20週)

45 Alessia Cara – Scars To Your Beautiful (8位/43週)

 

 

近いうちのヒットが期待されるシングルたち

Hot 100以外の場所で好調なものの、Hot 100にエントリーしていない曲を集めました。

(調査対象:Spotifyデイリー、Shazam、Pandora)

Yo Gotti & Mike Will Made-It feat. Nicki Minaj – Rake It Up (Shazam 24位)

※Miley Cyrus – Party In The U.S.A. (Spotify 40位)

The Revivalists – Wish I Knew You (Shazam 42位)

Lauv – I Like Me Better (Spotify 44位)

JAY-Z feat. Damian Marley – Bam (Shazam 46位)

Jon Pardi – Heartache On The Dance Floor (Pandora 48位)

Chris Lane – For Her (Pandora 49位)

LoCash – Ring On Every Finger (Pandora 54位)

Jonas Blue feat. William Singe – Mama (Spotify 54位)

Carly Pearce – Every Little Thing (Pandora 58位)

Axwell ∧ Ingrosso – More Than You Know (Spotify 58位)

Khalid – Young Dumb & Broke (Spotify 60位)

Maren Morris – I Could Use A Love Song (Pandora 60位)

 

 

注目点は主に3つ。まずは「アメリカ建国記念日特需」アメリカを称えるような曲が一部、建国日限定で再浮上。具体的には

Miley Cyrus – Party In The U.S.A. (Spotify 40位)

Lynyrd Skynyrd – Sweet Home Alabama (Spotify 75位)

Bruce Springsteen – Born In The U.S.A. (Spotify 78位)

Snoop Dogg & Wiz Khalifa feat. Bruno Mars – Young, Wild & Free (Spotify 90位)

Marvin Gaye – Ain’t No Mountain High Enough (Spotify 92位)

Zac Brown Band – Chicken Fried (Spotify 98位)

 

iTunesでも上昇している曲もありますが、効果は限定的でHot 100エントリーとまではいかないと思います。

 

2つめはJay-Zのアルバムのシングル。Tidal限定配信のアルバムの曲が一部Shazamのチャートに登場。なぜShazamの数が増えるのかは個人的に疑問。Shazamは主にラジオに向けて使われるものだと思っていたのですが、それ以外にも主要な使い方はあるのでしょうか……?そこまで一気にいくつものシングルがラジオにかかり始めるとは思えませんし……

 

最後にJonas Blue。MamaがSpotifyで上昇中。世界的にストリーミングでヒットしているものの、アメリカではHot 100の100位にすら入らないというケースは多々あり、Jonas Blueの曲も過去にそのケースに当てはまったことがあって、例えば昨年のSpotify グローバルランキング(年間)100位以上のうち

89 Cheat Codes & Dante Klein - Let Me Hold You (Turn Me On)

76 Snakehips feat. Chance the Rapper & Tinashe - All My Love

71 Timeflies - Once in a While

69 Joel Adams - Please Don't Go

67 MØ - Final Song

57 David Guetta feat. Zara Larsson - This One's For You

55 Jonas Blue feat, JP Cooper - Perfect Stragers

45 Mike Perry feat. Shy Martin - The Ocean

39 Kygo feat. Maty Noyes - Stay

35 Cheat Codes & Kriss Kross Amsterdam – Sex

 

↑の10曲がHot 100の100位にすら入りませんでした。Jonas Blueのような「ダンスポップ」が当てはまる場合が多いです。世界的にヒットしていてもこのようなダンスポップ系の曲でも、アメリカでも壁にぶち当たることは多いです。一回Hot 100に入ったことのあるJonas Blueですが(Fast Carで)、再び壁を打ち破ってHot 100に入れるでしょうか!

 

 

*1:そのうち2曲がPrinceですが……

YouTubeにアルバムが全曲公開される? 【YouTubeにおけるアルバム公開の分析】

f:id:djk2:20170703223618j:plain

 

Calvin HarrisはアルバムリリースまではFeelsのビデオ以外ではYouTubeに音源すらアップロードしていませんでしたが、(Previewと称して途中までの音源のみ)一転してアルバムリリースとともに全曲がYouTubeで公開されました。

え!?YouTubeで全曲公開してしまって大丈夫なんんですか?と思う方もいるかと思いますが、この手法は現在ではもの珍しいものではなく実はそれなりの頻度で行われているものなのです。そんなYouTubeとアルバム公開の関係性について過去を振り返り、どのような傾向があるか等を分析してみようと思います。

 

どのような分析をするか?

過去にBillboard 200(アルバムチャート)で1位を獲得した曲がYouTubeにどれくらいアップロードされているかを確認して(全シングル公開=YouTubeのみでアルバムのように聞ける / 一部公開 / 全く公開されていない)のうちどれか、ということを確認していきました。

そして、どれくらいの割合で全シングル公開されているかを%で計算しました。事例が特殊なコンピレーション/サウンドトラックは計算から除外しました。(打ち消し線を引いてあります)

期間は2010年代~にしました。ちなみにVevoYouTube音楽配信サポート会社)が始まったのも2009年末からでした。それでは古い方から順に年ごとに分析してみます。

 

この記事の切り口になったCalvin Harrisのアルバムですが、アルバム1位を取れずこの調査の対象外に……残念……


2010

2-Jan Susan Boyle I Dreamed a Dream 一部
23-Jan Kesha Animal 一部
30-Jan Vampire Weekend Contra 一部
6-Feb Various Artists Hope for Haiti Now  
13-Feb Lady Antebellum Need You Now 一部
27-Feb Sade Soldier of Love のちに全公開
27-Mar Ludacris Battle of the Sexes 一部
10-Apr Justin Bieber My World 2.0 一部
17-Apr Usher Raymond v. Raymond 一部
8-May Glee Cast Glee: The Music, The Power of Madonna  
15-May B.o.B The Adventures of Bobby Ray 一部
22-May Godsmack The Oracle 一部
5-Jun Glee Cast Glee: The Music, Volume 3 Showstoppers 一部
19-Jun Jack Johnson To the Sea 一部
26-Jun Glee Cast Glee: The Music, Journey to Regionals 一部
3-Jul Drake Thank Me Later 一部
10-Jul Eminem Recovery 一部
14-Aug Avenged Sevenfold Nightmare 一部
21-Aug Arcade Fire The Suburbs 一部
11-Sep Katy Perry Teenage Dream 一部
18-Sep Disturbed Asylum 一部
25-Sep Sara Bareilles Kaleidoscope Heart 一部
2-Oct Linkin Park A Thousand Suns のちに全公開
9-Oct Zac Brown Band You Get What You Give 一部
16-Oct Kenny Chesney Hemingway's Whiskey 一部
23-Oct Toby Keith Bullets in the Gun 一部
30-Oct Lil Wayne I Am Not a Human Being 一部
6-Nov Sugarland The Incredible Machine 一部
13-Nov Taylor Swift Speak Now 一部
27-Nov Susan Boyle The Gift 一部
11-Dec Kanye West My Beautiful Dark Twisted Fantasy

一部

全シングル公開率=0/27 0%

 

調査初年度はYouTubeに全公開されたアルバムは無し。今はYouTubeで音楽を聴くということが普通のように思いますが、この時代だと音のみ(Audio)のようなものは少なく、ほぼビデオのみだったと思います。つまり、聴くためのミュージックビデオではなく、見るためのミュージックビデオが想定されていたのだと思います。ちなみに2010年の全世界でのスマホの普及率は現在よりも低く、そう考えるとたしかにYouTubeで音楽を聞くという発想も出にくかったのかもしれません。

 

2011

29-Jan Cake Showroom of Compassion 一部
5-Feb The Decemberists The King Is Dead 一部
12-Feb Amos Lee Mission Bell 一部
19-Feb Nicki Minaj Pink Friday 一部
26-Feb Various Artists Now 37  
5-Mar Justin Bieber Never Say Never – The Remixes 一部
12-Mar Adele 21 一部
26-Mar Lupe Fiasco Lasers 一部
9-Apr Chris Brown F.A.M.E. 一部
16-Apr Britney Spears Femme Fatale 一部
30-Apr Foo Fighters Wasting Light 一部
11-Jun Lady Gaga Born This Way 全シングル
2-Jul Bad Meets Evil Hell: The Sequel 一部
9-Jul Jill Scott The Light of the Sun 一部
16-Jul Beyoncé 4 一部
30-Jul Blake Shelton Red River Blue 一部
13-Aug Eric Church Chief 一部
27-Aug Jay-Z and Kanye West Watch the Throne 一部
10-Sep Game The R.E.D. Album 一部
17-Sep Lil Wayne Tha Carter IV 一部
1-Oct Lady Antebellum Own the Night 一部
8-Oct Tony Bennett Duets II のちに全公開
15-Oct J. Cole Cole World: The Sideline Story 一部
22-Oct Scotty McCreery Clear as Day 一部
29-Oct Evanescence Evanescence 一部
12-Nov Coldplay Mylo Xyloto 一部
19-Nov Justin Bieber Under the Mistletoe 全シングル
26-Nov Mac Miller Blue Slide Park 一部
3-Dec Drake Take Care 一部
10-Dec Michael Bublé Christmas

一部

全シングル公開率=2/29 7%

 

翌2011年になると、ついに全公開されるアルバムが登場します。それはLady GagaのBorn This Wayでした。このアルバムはBillboard 200の歴史から見ても革命的なアルバムでした。このアルバムはリリース初週で約111万枚を売り上げて、これは2010年代で4番目に大きい数字*1なのですが、ここまでの数字を叩き出した理由はアマゾンのセールにあります。なんと0.99$(シングルよりも安い)という破格の値段をつけた結果、その1日だけでアマゾンから44万ものダウンロードを記録し、リリース初週でミリオンを達成したというわけです。

その結果を受けて2011年末、ビルボードは3.49$以下の場合、新*2アルバムの「セールス」をカウントしないというルールを新設しました。

このように、驚異的な値段設定で結果を出す → ルール改正ということで、Born This WayはBillboard 200(アルバムチャート)の歴史で革新的な1枚だと私は思っているのですが、YouTubeでも全曲公開という珍しい行動に出ていたのですね。「音楽の価格破壊」というテーマを議論する時には最重要なアルバムといえそうです。

また、それ以外にもYouTube出身のスター、Justin BieberもLady Gagaに続いて全曲公開をしています。

 

2012

24-Mar Bruce Springsteen Wrecking Ball 一部
31-Mar One Direction Up All Night 一部
7-Apr Soundtrack The Hunger Games: Songs from District 12 and Beyond  
14-Apr Madonna MDNA 一部
21-Apr Nicki Minaj Pink Friday: Roman Reloaded 一部
28-Apr Lionel Richie Tuskegee 一部
12-May Jack White Blunderbuss 一部
19-May Carrie Underwood Blown Away 一部
2-Jun Adam Lambert Trespassing 一部
9-Jun John Mayer Born and Raised 一部
30-Jun Usher Looking 4 Myself 一部
7-Jul Justin Bieber Believe 全シングル
14-Jul Linkin Park Living Things のちに全公開
21-Jul Chris Brown Fortune 一部
28-Jul Zac Brown Band Uncaged 一部
4-Aug Nas Life Is Good 一部
18-Aug Rick Ross God Forgives, I Don't 一部
25-Aug Various Artists Now 43  
1-Sep 2 Chainz Based on a T.R.U. Story 一部
8-Sep Trey Songz Chapter V 一部
15-Sep TobyMac Eye on It 一部
22-Sep Matchbox Twenty North 一部
29-Sep Dave Matthews Band Away from the World 一部
6-Oct Pink The Truth About Love 全シングル
13-Oct Mumford & Sons Babel 一部
3-Nov Jason Aldean Night Train 一部
10-Nov Taylor Swift Red 一部
1-Dec One Direction Take Me Home 一部
8-Dec Rihanna Unapologetic 一部
15-Dec Alicia Keys Girl on Fire

一部

全シングル公開率=2/28 7%

 

Justin Bieberが前年に引き続き全公開、そしてP!nkも全公開をしていましたが、その2例だけで、7%とまだまだ少数派です。

 

2013

19-Jan Soundtrack Les Misérables: Highlights from the Motion Picture Soundtrack  
26-Jan Chris Tomlin Burning Lights 一部
2-Feb ASAP Rocky Long. Live. ASAP 一部
9-Feb Gary Allan Set You Free 一部
16-Feb Justin Bieber Believe Acoustic 全シングル
23-Feb Josh Groban All That Echoes 一部
16-Mar Bruno Mars Unorthodox Jukebox 全シングル
23-Mar Luke Bryan Spring Break...Here to Party 一部
30-Mar Bon Jovi What About Now 一部
6-Apr Justin Timberlake The 20/20 Experience  一部
27-Apr Paramore Paramore 全シングル
4-May Fall Out Boy Save Rock and Roll 全シングル
11-May Michael Bublé To Be Loved 一部
18-May Kenny Chesney Life on a Rock 一部
25-May Lady Antebellum Golden 一部
1-Jun Vampire Weekend Modern Vampires of the City 一部
8-Jun Daft Punk Random Access Memories のちに全公開
22-Jun Queens of the Stone Age ...Like Clockwork 一部
29-Jun Black Sabbath 13 一部
6-Jul Kanye West Yeezus 一部
13-Jul Wale The Gifted 一部
20-Jul J. Cole Born Sinner 一部
27-Jul Jay-Z Magna Carta Holy Grail ゼロ
10-Aug Selena Gomez Stars Dance 全シングル
17-Aug Robin Thicke Blurred Lines 一部
24-Aug The Civil Wars The Civil Wars 全シングル
31-Aug Luke Bryan Crash My Party 一部
14-Sep Avenged Sevenfold Hail to the King 一部
21-Sep Ariana Grande Yours Truly 一部
28-Sep Keith Urban Fuse 一部
5-Oct Jack Johnson From Here to Now to You 一部
12-Oct Drake Nothing Was the Same 一部
19-Oct Justin Timberlake The 20/20 Experience – 2 of 2 一部
26-Oct Miley Cyrus Bangerz 一部
2-Nov Pearl Jam Lightning Bolt 一部
9-Nov Katy Perry Prism 一部
16-Nov Arcade Fire Reflektor 一部
23-Nov Eminem The Marshall Mathers LP 2 一部
30-Nov Lady Gaga Artpop 一部
14-Dec One Direction Midnight Memories 一部
21-Dec Garth Brooks Blame It All on My Roots: Five Decades of Influences  
28-Dec Beyoncé Beyoncé のちに全公開

全シングル公開率=6/39 15%

 

この年に入ると、全公開するアルバムが続々増えました。Justin Bieberが引き続き、またBruno MarsやSelena GomezなどのスターもYouTubeに全公開。この年はParamoreFall Out Boyも全公開していますが、ロックバンドは全公開するケースがやや多めです。YouTubeに上げても購買層がしっかりしている、ということでしょうか。

また気になったのはビヨンセJay-Z夫妻。ビヨンセがすべての曲にビデオを作ってそれをYouTubeにアップロードした一方、Jay-ZYouTubeに何もアップロードせず。ビデオのあるシングルもあるのですが、Facebookでの公開だったそうです。今思うとこの時から"Tidal Exclusive"の片鱗のようなものが伺えます。

ちなみに、Daft Punkのように時間をずらして公開範囲を変えることを「ウィンドウ戦略」というようです。*3

 

2014

18-Jan Soundtrack Frozen   
1-Feb Bruce Springsteen High Hopes 一部
22-Feb Various Artists Now 49  
1-Mar Eric Church The Outsiders 一部
15-Mar Schoolboy Q Oxymoron 一部
22-Mar Rick Ross Mastermind 一部
24-May Various Artists Now 50  
31-May The Black Keys Turn Blue 一部
7-Jun Coldplay Ghost Stories 全シングル
21-Jun Miranda Lambert Platinum 全シングル
28-Jun Jack White Lazaretto 一部
5-Jul Lana Del Rey Ultraviolence 一部
12-Jul Ed Sheeran x 一部
19-Jul Trey Songz Trigga 全シングル
26-Jul Sia 1000 Forms of Fear 一部
2-Aug "Weird Al" Yankovic Mandatory Fun 一部
9-Aug 5 Seconds of Summer 5 Seconds of Summer 一部
16-Aug Tom Petty and the Heartbreakers Hypnotic Eye ゼロ
23-Aug Soundtrack Guardians of the Galaxy:  
30-Aug   Awesome Mix Vol. 1  
6-Sep Wiz Khalifa Blacc Hollywood 全シングル
13-Sep Ariana Grande My Everything 一部
20-Sep Maroon 5 V 一部
27-Sep Lecrae Anomaly 全シングル
4-Oct Barbra Streisand Partners ゼロ
11-Oct Tony Bennett and Lady Gaga Cheek to Cheek 一部
18-Oct Blake Shelton Bringing Back the Sunshine 全シングル
25-Oct Jason Aldean Old Boots, New Dirt 一部
1-Nov Florida Georgia Line Anything Goes 一部
8-Nov Slipknot .5: The Gray Chapter 全シングル
15-Nov Taylor Swift 1989 一部
6-Dec One Direction Four 一部
27-Dec J. Cole 2014 Forest Hills Drive 一部

全シングル公開率=7/28 25%

 

全公開率15% → 25%と上昇。昨年まで無かったヒップホップ、カントリーのミュージシャンによる全公開もこの年は見られました。ちなみにこの年はFrozen Soundtrackが長くアルバムチャート1位を支配していて、1位アルバムの数が少なめです。

ちなみにこの年の12月からアルバム内シングルのセールス、ストリーミングがアルバムチャートに集計されることになりました。1500ストリーミング=10シングルセールス=1アルバムセールスの集計です。

 

2015

31-Jan Meghan Trainor Title 一部
7-Feb Fall Out Boy American Beauty/American Psycho 全シングル
28-Feb Drake If You're Reading This It's Too Late 一部
7-Mar Imagine Dragons Smoke + Mirrors 一部
14-Mar Big Sean Dark Sky Paradise 一部
21-Mar Kelly Clarkson Piece by Piece 一部
28-Mar Soundtrack Empire: Original Soundtrack from Season 1  
4-Apr Kendrick Lamar To Pimp a Butterfly 一部
18-Apr Wale The Album About Nothing 一部
25-Apr Soundtrack Furious 7 全シングル
2-May Shawn Mendes Handwritten 全シングル
9-May Alabama Shakes Sound & Color 一部
16-May Zac Brown Band Jekyll + Hyde 一部
23-May Mumford & Sons Wilder Mind 一部
30-May Soundtrack Pitch Perfect 2  
6-Jun Twenty One Pilots Blurryface 全シングル
13-Jun ASAP Rocky At. Long. Last. ASAP 一部
20-Jun Florence and the Machine How Big, How Blue, How Beautiful 一部
27-Jun Muse Drones 一部
4-Jul James Taylor Before This World 一部
11-Jul Breaking Benjamin Dark Before Dawn 全シングル
18-Jul Meek Mill Dreams Worth More Than Money 全シングル
1-Aug Tyrese Black Rose ゼロ
8-Aug Future DS2 一部
15-Aug Jill Scott Woman 全シングル
22-Aug Soundtrack Descendants 全シングル
29-Aug Luke Bryan Kill the Lights 一部
12-Sep Disturbed Immortalized 全シングル
19-Sep The Weeknd Beauty Behind the Madness 一部
10-Oct Drake and Future What a Time to Be Alive ゼロ
17-Oct Fetty Wap Fetty Wap 全シングル
24-Oct Janet Jackson Unbreakable 一部
31-Oct Selena Gomez Revival 一部
7-Nov Pentatonix Pentatonix 一部
14-Nov 5 Seconds of Summer Sounds Good Feels Good 一部
21-Nov Chris Stapleton Traveller 一部
5-Dec Justin Bieber Purpose 全シングル
12-Dec Adele 25 一部

全シングル公開率=10/34 29%

 

少し増えて29%。なかでもJustin BieberのPurposeは (PURPOSE : The Movement) と題してすべてのシングルにビデオがつくなど、YouTubeでのプロモーションが活発的でした。逆にDrake & Futureのミックステープからは一曲も公開されず。これ以降DrakeはHotline BlingのビデオしかYouTubeにあげていません。にも関わらずシングルヒットは連発なので、この時期あたりからYouTubeと音楽が密接なものになるのと同時に、YouTubeはプロモーション上必須でもないということも言えるのかもしれないです。

 

2016

30-Jan David Bowie Blackstar 全シングル
6-Feb Panic! at the Disco Death of a Bachelor 全シングル
20-Feb Rihanna Anti 一部
27-Feb Future Evol 一部
19-Mar The 1975 I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful yet So Unaware of It 一部
26-Mar Kendrick Lamar untitled unmastered. ゼロ
9-Apr Gwen Stefani This Is What the Truth Feels Like 一部
16-Apr Zayn Mind of Mine 一部
23-Apr Kanye West The Life of Pablo 一部
30-Apr The Lumineers Cleopatra 一部
7-May Prince The Very Best of Prince  
14-May Beyoncé Lemonade 一部
21-May Drake Views 一部
23-Jul Blink-182 California 全シングル
20-Aug DJ Khaled Major Key 一部
27-Aug Soundtrack Suicide Squad: The Album  
10-Sep Frank Ocean Blonde ゼロ
17-Sep Barbra Streisand Encore: Movie Partners Sing Broadway 一部
24-Sep Travis Scott Birds in the Trap Sing McKnight 一部
1-Oct Jason Aldean They Don't Know 全シングル
15-Oct Shawn Mendes Illuminate 一部
22-Oct Solange A Seat at the Table 一部
29-Oct Green Day Revolution Radio 一部
5-Nov Kings of Leon Walls 一部
12-Nov Lady Gaga Joanne 一部
19-Nov Jeezy Trap or Die 3 全シングル
26-Nov Bon Jovi This House Is Not for Sale 全シングル
3-Dec A Tribe Called Quest We Got It from Here... Thank You 4 Your Service 一部
10-Dec Metallica Hardwired... to Self-Destruct 一部
17-Dec The Weeknd Starboy 一部
24-Dec Various Artists The Hamilton Mixtape  
31-Dec J. Cole 4 Your Eyez Only 全シングル

全シングル公開率=7/29 24%

 

前年よりもやや減って24%。全公開のほうは変化が少ないものの、気になるのはゼロのほう。アルバムから漏れた曲を集めたuntitled unmasteredはミックステープ的性格が強いので、そこまでプロモーションは必要ではないのでYouTubeに曲が上がらないのも納得ですが、注目はBLONDE。このアルバムはApple Music限定(先行)配信、かつYouTubeに音源ゼロなので「音楽を聞く場の移ろい」のようなものを感じます。つまり、YouTubeは誰でも無料で「音楽と出会える一番敷居の低い場所」でしたが、このように限定公開が増えると、その敷居の低い場所がストリーミングサービスに移るのでは?という考えです。ストリーミングサービスは音楽の価格破壊をしていると槍玉に挙げることもありますが、YouTube → ストリーミングサービスと移行することを考えると、必ずしもそうではないのかもしれません。(1再生あたりのアーティストへの支払いが、YouTubeは圧倒的に低いとされる 参考

 

2017

7-Jan Pentatonix A Pentatonix Christmas 一部
18-Feb Migos Culture 全シングル
25-Feb Big Sean I Decided. 一部
4-Mar Soundtrack Fifty Shades Darker: Original Motion Picture Soundtrack  
11-Mar Future Future 一部
18-Mar Future Hndrxx ゼロ ※
25-Mar Ed Sheeran ÷ 全シングル
8-Apr Drake More Life ゼロ
29-Apr The Chainsmokers Memories… Do Not Open 全シングル
6-May Kendrick Lamar DAMN. 一部
27-May Logic Everybody 一部
3-Jun Harry Styles Harry Styles 全シングル
10-Jun Linkin Park One More Light 全シングル
17-Jun Bryson Tiller True to Self 一部
24-Jun Halsey Hapeless Fountain Kingdom 全シングル
1-Jul Katy Perry  Witness 全シングル
8-Jul Lorde Melodrama 一部

全シングル公開率=7/16 44%

※FutureのHNDRXXはボーナストラックのみ公開

 

ゼロも全公開も増えて、アーティストが繰り広げるYouTubeでのプロモーションはますます多様化しているといえます。これはストリーミングサービスに加入した音楽ファンが増えていることが関係しているのかもしれません。YouTubeに全曲あろうが、ゼロ曲だろうが、ストリーミングサービスで聞けるから関係ないという考えもできるからです。

 

 

YouTubeが現在ポピュラー音楽で大きな役割を果たしているのは間違いありませんが、その使われ方はアーティスト、年代によって多種多様ということが分かりました。

YouTubeのような場所での音楽開放は進んでいる」という印象を受けがちですが、YouTube公開0曲のアルバムもあり、一概にその一方向に進んでいるわけでもないということが分かりました。

今後「YouTubeでアルバムを聞く」ことが習慣化するほど全公開が増えることはありえるのか……!?その変化をこれからも追っていきたいです。

 

 

 

 

*1:1位Adeleの25、2位Taylor Swiftの1985、3位Taylor SwiftのRed

*2:リリース後から4週目まで

*3:ダフト・パンクは、新作『Random Access Memories』の全収録曲の音源をYouTubeで無料公開して、ウィンドウ戦略を開始した。ウィンドウ戦略とは、あるコンテンツに関して、その活用期間を複数期間ずらして設定することで収益を得る戦略のことだ。” 高野修平 (2014)『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティングリットーミュージック