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Hot 100 11/17 見どころ 【Ariana Grande悲願のシングル1位+映画効果でQueenがHot 100再登場】

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 こんばんは!今週の大きなテーマは2つ!まずはAriana Grande悲願のシングル1位獲得!ここ数年シングルチャートで好成績を安定して叩き出してきたAriana Grandeでしたが、意外とHot 100首位は今まで無かったのです。

 そしてQueenのHot 100再登場。映画の効果によってQueenがストリーミング等で「再発見」され、映画のタイトルにもなった“Bohemian Rhapsody”が33位に再登場しました!

 

☆今週のHot 100 ショートハイライト

・Ariana Grandeの"thank u, next"が1位に登場!悲願のキャリア初シングル1位を達成

・映画効果で”Bohemian Rhapsody"が26年ぶりにHot 100再登場(33位)

・Metro Boominが史上最も低いセールス(5000)でのアルバム1位を達成(ストリーミングで多くのポイントを稼ぐ)

 

・今週のトップ10

☆1 Ariana Grande – thank u, next

▽2 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

▽3 Travis Scott – SICKO MODE

▽4 Marshmello & Bastille – Happier 

▽5 Juice WRLD – Lucid Dreams

△6 Halsey – Without Me 

▽7 Post Malone – Better Now

▽8 Kodak Black feat. Travis Scott & Offset – ZEZE

△9 Sheck Wes – Mo Bamba 

▽10 Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard 

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

曲の個別解説

 

☆99 Takeoff – Casper

 Migosの“末っ子”*1、Takeoffがソロアルバムをリリース。ストリーミングで高い人気を誇り、アルバムチャート4位にランクイン。(9割程度のポイントをストリーミングで稼いでいる)

 うち、“Casper”が99位に、先週からチャートに入った”Last Memory”が68位*2にランクインしています。ゲストが少なく目立つシングルがあまり無い一方、アルバム全体が平均的に再生されていた印象があります。

 

 

☆97 Camila Cabello – Consequences

 Camila Cabelloのアルバム3曲目*3のシングル“Consequences”が97位に登場。ラジオで少しずつポイントを伸ばしています。

 この曲のシングル化にあたり「オーケストラ・バージョン」もリリース。曲全体の構成はあまり変わりませんが、終盤のメロディーがオーケストラ調にアレンジされています。

 

☆86 Anuel AA & Romeo Santos – Ella Quiere Beber

 Anuel AAとRomeo Santosによる“Ella Quiere Beber”が86位に登場。"She Want to Drink"という意味。Anuel AAは6ix9ineとの”BEBE”に次いで2回目のHot 100入り、Romeo Santosは10回目のHot 100。

 元々ラテン系ラジオで人気だったこの曲ですが、Romeo Santosがリミックスで新たに加わったことで人気が加速し、Hot 100入りを成し遂げました。

 

▽60 Kanye West & Lil Pump – I Love It

 毎週チャートでは「○○が△位に登場した」「◇◇が絶好調!☆☆位に到達!」など「上昇系」が注目されますが、その裏で順位を予想外のスピードで落とす「下降中」の曲もいくつか存在します。今週はそのような曲にいくつか目をつけてみようと思います。

 まずはKanye West・Lil Pumpの”I Love It”。今週9週目で47位→60位と下降。リリース時はYouTube・各ストリーミングでかなり調子が良かったのでHot 100の6位に登場しましたが、その後失速。特にラジオでポイントをあまり稼げておらず、ここ数週すごい勢いで順位を落としてしまっています。

 そしてDJ Khaledの“No Brainer”。今週15週目で78位→93位と下降。この曲のチャートアクションは昨年の”I’m the One”そっくりです。この曲は1位で登場したものの、滞在22週と短命に終わっていました。今回の“No Brainer”はそのチャートアクションをそのまま小規模にしたような印象があります。

 

 さらにEminemの“Lucky You”(10週目で93位)、Lil Wayneの”Mona Lisa”(6週目で82位)なども急落中。ただしこの2曲はラジオではかからない「非シングル」という扱いの曲なので、順位が落ちるのは仕方がないという見方もできます。

 

☆38 Metro Boomin feat. 21 Savage – Don’t Come Out The House

 今年の4月頃には引退も仄めかしていたラップ系プロデューサー、Metro Boominが自身名義のアルバムでカムバック。多くの客演を迎えたアルバムはストリーミングを中心に高い人気を集め、見事アルバムチャート1位を獲得!

 純セールスは0.5万枚ながらも、ストリーミングで9.2万枚相当のポイントを稼ぎ、シングルDLの0.2万枚と合わせて計9.9万枚を売り上げています。

 アルバムからは7曲がHot 100にランクイン。2017年の主役プロデューサーであるMetro Boomin、2018年の主役Tay Keithが手を組んだ21 Savageとの“Don’t Come Out the House”が最高の38位にランクインしています。Bubbling Under(101位 – 125位相当のチャート)にも4曲 が入っており、ボートラの”No Complaints”と“Only You”以外の全ての曲が125位(相当)以上に入っているということになります。

 ボートラはともかく、Swae Lee、J Balvin、Wizkidを迎えた“Only You”の人気があまり無かったのは意外でした。この曲アルバムを代表してはSpotifyの有力プレイリスト、New Music Fridayに入っていた、つまり再生数のデータが届くまでは「シングル有力候補」だった曲ですが、実際蓋を開けてみるとあまり人気が無かったということです。

 ストリーミング時代では、どの曲の人気が出るのかが読みづらい、ということを象徴しているように思いました。

 

 

 

 ちなみにアルバムチャートの1位としては歴代で「純セールス」が最も少ないと思われます。(現在のアルバムチャートは純セールス+シングルDL+ストリーミングで計算される)

 Forbesは「純セールス」が1.7万枚だったその週のアルバム1位、Rihannaの“Anti”を「歴代で最も売り上げが少ない」としています。(※ストリーミングなどを合わせると計5.4万枚の売り上げ、この指標では歴代最低ではない) 

 その後の動向を追うと、2016年の10/8にDrakeの“Views”が記録した0.8万枚セールスが今までのアルバム1位の中のセールス最低記録(ストリーミングも合わせると5.3万枚)でしたが、今週Metro Boominがこの記録を更新しました。

 Metro Boominは「純セールス」がアルバム1位として史上最も少ないだけで、ストリーミング等を合わせた指数は史上最少ではないです。 (ただし今年の中では最少。今年はグッズ戦略・チケット戦略などによってアルバム1位争いのレースが激しくなっています)

 

 

△37 Lauv – I Like Me Better

 来週のチャートで2018年間チャートの集計が終了。そろそろ年の瀬、ということで年間チャートに関する情報を今週のチャートから取り上げてみようと思います。

 まずは年間トップ10争い。ここを争う候補として考えられているのが“Girls Like You”(今週2位)、”Lucid Dreams”(今週5位)、そして既にチャートから外れた“Nice For What”辺り。焦点は既にポイントを稼いでいるものの、予想以上に短命に終わってしまった”Nice For What”をほか2曲が追い越せるか?です。

 そして年間チャートに「入れるか」の争い。終盤ラストスパートをかけて年間チャートに滑り込みそうなのは“Happier”(今週4位)、”Eastside”(今週18位)あたり。年間チャートに届くか微妙なのは“Broken”(今週29位)、”I Love It”(今週60位)あたりでしょうか。

 最後に、ユニークな記録を残すかもしれないのは“I Like Me Better”。ピークは27位とそこまで高くないものの、チャート滞在は39週とかなりのロングヒット。この毎週じわじわ稼いだポイントを生かして、年間チャートの順位が週間のピーク順位を上回る可能性も少しありそうです!年間チャートの密かな見どころです。

※「年間チャートの順位>週間チャートのピーク順位」が実現すれば、Carrie Underwoodの”Before He Cheats”(年間6位、週間8位)以来11年ぶりの快挙です。

 

◇33 QueenBohemian Rhapsody

 先月公開された、QueenのボーカルFreddie Mercuryの半生を描いた映画“Bohemian Rhapsody”が各地で好評。その人気を受けてQueenの音源に熱い視線が注がれています!

 iTunesApple Music、SpotifyYouTubeなど各指標で注目を集めた映画タイトルと同名のシングル”Bohemian Rhapsody”がなんと今週33位に再登場しました!

 この曲はリリース当初(1976年)にHot 100で9位まで上昇したほか、「2回目のピーク」がありました。1992年“Wayne’s World”というコメディ映画に使われた影響で再注目され、Hot 100に再登場。最終的には2位まで順位を伸ばし、ピークを更新することに成功しました!

 そして2018年、映画の効果によって「3回目のピーク」が到来しました。さすがにピークを更新することは難しい気がしますが、どこまでチャートに残るか、見ものです。現在も各媒体での数字をキープしているので、とりあえず来週はまだHot 100に残ると思います。

 

 この曲は元のリリース時期(1970年代)、第一回リバイバル(1990年代)、そして今回のリバイバル(2010年代)と3つのDecade(10年ごとの区切り)でHot 100に登場したことに。このような曲はレアで、似たようなケースにPrinceの”1999”などがある、とChartDataは指摘しています。

 

  Queenはシングルだけではなくアルバムチャートでも存在感を発揮。映画サントラの“Bohemian Rhapsody”が3位、”Greatest Hits ⅠⅡ&Ⅲ”が9位にランクイン。“Greatest Hits”も48位に入っています。

 あと余談ですが、Nicki Minajのアルバム“Queen”は今週32位、Queen NaijaのセルフタイトルEP ”Queen Naija”は176位です。

 

△21 Ariana Grande – breathin

 Ariana Grandeの現行シングル“breathin”も好調。”thank u, next”人気による効果なのか、ラジオやストリーミングでの再生数が今週伸びたことによりHot 100で大きく順位を上げています(32位→21位)

 ラジオでの好調は来週以降も続きそうで、しばらく快調に順位を伸ばしていきそうです。

 

△14 Gucci Mane, Bruno Mars & Kodak Black – Wake Up In the Sky

 Gucci Mane、Bruno Mars、Kodak Blackの3人によるシングル“Wake Up In the Sky”が好調。ビデオ公開(10/31)あたりから調子を上げていて、ラジオやストリーミングで伸びを見せています。今週28位→14位と大きく順位を上げました。近いうちにトップ10に手が届きそうです。

 ラジオはリズミック、R&B / Hip-Hop系などGucci Maneが得意とする系統で多くかかっており、Bruno Marsが元々得意としていたポップ系ラジオではほぼかかっていません。Bruno Marsは”24K Magic”以降、「R&B界隈の人」の印象を強めています。

 

 ほか近いうちにトップ10に手が届きそうなのはPanic! At the Discoの“High Hopes”です。今週11位→12位と順位を落としましたが、ラジオの再生数がかなり伸びています。

 

▽3 Travis Scott – SICKO MODE

 Travis Scottの“SICKO MODE”が今週3位。先週までは1位取りの可能性もありそうでしたが、”thank u, next”の出現によって厳しくなったと言えます。

 今週iTunes値引きを行ったため、来週のチャートに効果が表れることを期待されますが、あまり明確な伸びを見せていないので、Hot 100首位獲りは難しいと思われます。“Girls Like You”だけなら抜かせるかもしれませんが。

 次のHot 100首位争いは“thank u, next” 対 ”Happier”だと思っています。

 

☆1 Ariana Grande – thank u, next

 Ariana Grandeの”thank u, next”が1位デビュー!Ariana Grandeは今までキャリア通算で10曲のトップ10を記録しながらも1位シングルが無かったのですが、今週、念願のHot 100首位を獲得しました。 日曜日頃リリースで、集計期間がやや短かったのですがDLとストリーミングで今週1番高い成績を記録しています。

 1位デビューの鍵になったのはストリーミング。現在USのストリーミングではアーバン系(ヒップホップやR&B)の天下ですが、そのストリーミングで大きなポイントを得たことが大きかったです。

 Spotifyアメリカ)ではデイリー、週間の両方でポップス史上最高の再生数を叩き出しています(と同時に、女性としての史上最高の再生数でもある)

 現在もDL、ストリーミングの両方で圧倒的な人気をキープしていて、来週以降も1位に留まりそうです。

  

▽× Lil Uzi Vert – New Patek

 Lil Uzi Vertの“New Patek”が今週チャートから外れました。ピークは24位、チャート滞在は7週という成績。ストリーミングでの高い人気によってHot 100でも好成績を収めましたが、それ以外からあまりポイントを得られなかったことによって徐々に失速。7週と24位ピークの曲としてはかなり早期にチャートを外れました。

 5:43とかなりの長尺で、ラジオにあまり向いていなかったのかもしれません。実際リズミック系、R&B / Hip-Hop系などのラジオチャートには登場していません。あとは、現在のストリーミングリスナーが「アルバム単位」で曲を聞く傾向があるので、この曲がアルバム内の曲ではなく、シングルリリースだった、ということもある程度要因なのかもしれません。

 

▽× Zedd, Maren Morris & Grey – The Middle

 ロングヒット、Zeddの“The Middle”が今週チャートから外れました。ピークは5位、チャート滞在は40週でした。以前からポップ系ラジオを得意としているZeddは、この曲でもポップ系ラジオ1位を獲得。その後自身初のアダルトポップ系ラジオ1位など、各ラジオで高ポイントを記録し、曲を長持ちさせました。(Zeddの曲の中でチャート滞在が最も長い)

 2013年以降、「ポップ系ラジオマスター」として活躍してきたZeddが、ついに年間チャートでもトップ10入りなるか?約1ヶ月後に発表されるであろう年間チャートでの上位入りに期待がかかります。

 

 

今週チャートから外れた曲 (12曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Jason Aldean feat. Miranda Lambert – Drowns The Whiskey (🗻32位 /⏰19週)

99 Diplo, Mark Ronson & Dua Lipa – Electricity (🗻96位 /⏰4週)

97 Lil Mosey – Kamikaze (🗻97位 /⏰1週)

96 Eric Church – Desperate Man (🗻68位 /⏰13週)

95 Cole Swindell – Break Up in the End (🗻49位 /⏰17週)

93 Lil Uzi Vert – New Patek (🗻24位 /⏰7週)

92 Eminem – Venom (🗻43位 /⏰5週)

90 P!nk – A Million Dreams (🗻90位 /⏰1週)

89 Steve Aoki feat. BTS – Waste It On Me (🗻89位 /⏰1週)

79 Chris Janson – Drunk Girl (🗻79位 /⏰10週)

46 Zedd, Maren Morris & Grey – The Middle (🗻5位 /40週)

31 Michael Jackson - Thriller (🗻4位 /⏰18週)

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Metro Boomin – Not All Heroes Wear Capes

4 Takeoff – The Last Rocket

12 Barbra Streisand – Walls

13 Moneybagg Yo – RESET

15 Pistol Annies – Interstate Gospel

23 EXO – EXO 5: Don’t Mess Up My Tempo

25 Bob Dylan – More Blood, More Tracks: The Bootleg Series, Vol. 14

37 Vince Staples – FM!

68 Roddy Ricch – Feed The Streets Ⅱ

73 Swizz Beatz – Poison

86 Jay Critch – Hood Favorite

87 H.E.R. – I Used To Know Her: Part 2 (EP)

93 Tenacious D – Post-Apocalypto (Soundtrack)

97 Silent Planet – When The End Began

100 Kris Wu – Antares

172 Rosanne Cash – She Remembers Everything

191 David Archuleta – Winter In The Air

 

・EXO:SM事務所のK-PopグループがUSでのキャリア最高位を記録。3回目のBillboard 200入りです。

 

・Kris Wu:一時期iTunesアルバム・シングル上位を独占していた元EXOの中国人メンバーKris Wu。しかしこれがIPアドレス偽装による中国からの購入?などの説が浮上し、調査され、結局アルバムチャート100位という結果に。週の途中までiTunes1位だったにも関わらず100位ということは、iTunes1位のうち何割かはやはり「イカサマ」だったということが伺えます。 このように言うとなんだかネガティブな結果のようにも思えますが、中国人がUSのアルバムチャートで100位に入るのは十分偉業だと思います。

 

・Roddy Rich:Apple Musicなどで人気を得た新人ラッパー。Marshmelloは次のシングルで彼を起用するらしいです

 

来週以降の動向など

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Trippie Redd feat. Juice WRLD – 1400 / 999 Freestyle

 ストリーミングで最も注目を集めたTrippie Reddのアルバムから、何曲かHot 100に登場するかも。

 

・JENNIE (from BLACKPINK) – SOLO

 BLACKPINKのメンバーJENNIEが“SOLO”というタイトルの曲でソロデビュー。この曲はUSのiTunes上位につけています。Hot 100に入るためにはYouTubeでの高いポイントが必要と思われます。

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

*1:Migosは全員親戚関係で同じ家で育った。Takeoffは3人の中で一番若い

*2:先週の記事で「順位が上がりそう」とか言っていましたが、下がりました。すいません 

*3:Swae Leeとのリミックスもあった“Real Friends”は、ラジオでかからなかったのでシングルではない模様

Hot 100 11/10 見どころ 【Nicki Minaj100回目のHot 100・クイーンとキングの活躍!?】

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 今週の注目ポイントは「クイーンとキングの活躍」。クイーンとはNicki Minajのことで、今週100回目のHot 100入りを達成。女性としては史上初の偉業!*1

 ちなみに往年の名バンドのほうのQueenも最近大活躍中。映画”Bohemian Rhapsody"の効果でQueen楽曲が大いに注目されていて、ストリーミングやiTunesで絶賛再浮上中です。

 キングはMichael Jacksonのことで、“Thriller”がハロウィンの効果で31位に再登場しています!

 

☆今週のHot 100 ショートハイライト

・TygaとNicki Minajの“Dip”が83位に登場。Nicki Minajはこれで100曲目のHot 100エントリーを達成!女性としては史上最多のHot 100エントリー

・2つの曲がトップ10に浮上!Halseyの“Without Me”が9位に、Sheck Wesの”Mo Bamba”が10位に上昇

テノール歌手Andrea Bocelliがアルバム1位。クラシックの作品がアルバム1位になるのは10年ぶり

・“Thriller”がハロウィン効果で31位に再登場

 

 

・今週のトップ10

-1 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You 

―2 Travis Scott – SICKO MODE

△3 Marshmello & Bastille – Happier 

▽4 Juice WRLD – Lucid Dreams

―5 Post Malone – Better Now

―6 Kodak Black feat. Travis Scott & Offset – ZEZE

―7 5 Seconds of Summer – Youngblood 

-8 Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard 

△9 Halsey – Without Me 

△10 Sheck Wes – Mo Bamba 

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

1~100位までの順位表は↓

  

曲の個別解説

 

☆97 Lil Mosey – Kamikaze

 Lil Moseyの“Kamikaze”が97位に登場。今週82位の”Noticed“に次ぐ2回目のHot 100エントリーです。

 Lil Moseyはシアトル出身16歳のラッパー。前シングル“Noticed”で注目を集めたのち、アルバム”Northbest”をリリース。このアルバムはApple Musicなどストリーミングで一定の人気を集めアルバムチャートで29位にランクイン。

 その中で人気だった”Kamikaze”がアルバムリリース後も注目され、Hot 100にまで到達しました。

 

☆94 Dean Lewis – Be Alright

 オーストラリア出身SSW、Dean Lewisの“Be Alright”が94位に登場。Spotifyで2ヶ月前くらいから注目を集め、その人気がラジオにも飛び火。ラジオの好調を受けてHot 100に登場しました。一番人気を集めているのはアダルトポップ系統。

 Spotifyでヒットした曲はラジオにリーチするまで時間がかかることもありますが、この曲は比較的早いタイミングでラジオで人気を得ることに成功していると思います。

 この曲は母国オーストラリアで1位、イギリス11位、ドイツ12位など各国のシングルチャート上位に入っています。主にSpotifyによって人気が拡大しました。

 

 

☆89 Steve Aoki feat. BTS – Waste It On Me

 Steve AokiがBTSを迎えた“Waste It On Me”が89位に登場。BTSにとって初の英語シングルに。DLで高い数値を記録し、Hot 100にエントリー。ビデオはまだ公開されていないので、YouTubeのポイントはあまり高くないです。

 BTSにとっては5曲目のHot 100エントリーに。これでPSYを超えてK-Popミュージシャンの中でHot 100エントリー数が最多となりました。

 Steve Aokiは4曲目のHot 100エントリー。Steve AokiとBTSがコラボするのは“MIC Drop”のリミックス、”The Truth Untold”に次いで3回目。

 

☆83 Tyga feat. Nicki Minaj – Dip

 TygaとNicki Minajの”Dip”が83位に登場。この曲は数週前にリリースされた曲ですが、Nicki Minajがリミックスで加わって以降注目度が急上昇しました。

 これでNicki Minajは100回目のHot 100エントリーに!(うち約半数=56曲が客演の曲 *2

 女性としては史上最多で、つまり女性とは史上はじめて100回目のHot 100エントリーを成し遂げた、ということになります。

 

 

 全体では5番目のHot 100エントリーの多さ。女性で2番目にHot 100エントリーが多いのはTaylor Swiftで77曲です。それに次ぐのはAretha Franklinの73曲。

 

☆80 Trippie Redd – Topanga

 Trippie Reddの“Topanga”が80位に登場。この曲は2週間前の月曜日にリリースされ、以降ストリーミングを伸ばし今週のHot 100にエントリーしました。

 哀愁のあるトラックにTrippie Reddが持つ個性的な声が乗った1曲。Maurette Brown Clarkの”It Ain’t Over”という曲をサンプリングしています。

 

☆76 Tory Lanez & Rich the Kid – TAlk tO Me

 Tory Lanezの新作“LoVE me NOw?” がアルバムチャート4位に登場。この”LoVE me NOw?"はApple Musicで首位(アルバム)に立つなどストリーミングで人気でした。

 アルバムからは1曲がHot 100に登場。“TAlk tO Me”が76位に。その他4曲が101-125位に相当するBubbling Underに登場しました。

 アルバム全曲が大文字・小文字が不規則に並ぶ表記になっています。

 

☆54 Takeoff – Last Memory

 Migosの最年少メンバー、Takeoffによるソロ曲“Last Memory”が54位に登場。ソロとしてのHot 100登場は、Quavo, Travis ScottのジョイントJack Hunchoの客演を務めた”Eye 2 Eye”以来2回目です。

 来週のチャートでは11/2にリリースしたアルバムのポイントも反映される予定で、何曲かがまた新たにHot 100に登場するかも。(“Casper”や”She Gon Wink”あたりが候補。また、“Last Memory”も順位を上げると思います)

 

◇31 Michael Jackson – Thriller

 ハロウィン特需によってKing of Popがチャートに帰還!Michael Jacksonの“Thriller”が31位に再登場しました。3年ぶりのHot 100登場に。毎年ハロウィンに再浮上するこの曲の毎年のチャート成績は以下の通りです。

 

2013:42位 (はじめての“再”登場)

2014:35位

2015:45位

2016:登場せず

2017:登場せず

2018:31位

 

 ここ2年Hot 100に再登場していなかったのに、今年再登場したのはダウンロードが理由かもしれません。上記の2013年以降のハロウィンでは、iTunesの首位に立ったことがなかったのですが、今年のハロウィンではiTunesの首位に立っていました。

 

※ちなみに“Thriller”が最もダウンロードで高い順位を記録したのはMichael Jacksonが亡くなった時でした。(DLチャートで2位まで到達) *3

 

 

☆28 XXXTENTACION & Lil Pump feat. Maluma & Swae Lee – Arms Around You

 XXXTENTACION、Lil Pumpに加えMalumaとSwae Leeが参加した“Arms Around You”が28位に登場。プロデュースはSkrillexという豪華な布陣。この曲はストリーミングで人気のほか、DLでも高い数字を記録しています。

 XXXTENTACIONは自身の死後リリースされたシングルが2連続でトップ40入り。 Malumaはこの曲でキャリアピークを更新、かつキャリア初のトップ40です。また彼のシングル”Mala Mia"は今週ラテン系ラジオで1位になっています。(Hot 100には登場せず)

 

※同じくSwae Leeが客演していたEllie Goulding(とDiplo)の“Close To Me”は今週121位相当で惜しくもHot 100入りならず。

 

△13 Cardi B – Money

 Cardi Bの“Money”は13位に浮上。先週はリリースから2日分しか集計されていませんでしたが、今週は7日分フルで集計されたため、そのギャップにより順位を上げました。

 ストリーミングとDLの両方でかなりポイントを稼いでいます。(DLのチャート=Digital Songs、ストリーミングのチャート両方でトップ10に入っている)

 Cardi Bは“Invasion of Privacy”からのシングル、Kehlaniとの“Ring”も好調。今週40位に浮上し、アルバムリリース週以来のトップ40入りとなりました。(アルバム内の曲としても、シングルとしても両方で成功したということになります)

 

△10 Sheck Wes – Mo Bamba

 Sheck Wesの“Mo Bamba”がついにトップ10まで到達!Spotifyで1位に立つなど、元から高かったストリーミングがさらに伸びたことや、ラジオやDLも伸びてきたことがトップ10入りの要因です。

 ラップ曲はトップ10入りする時は多くの場合、最初の週からいきなりトップ10に入っているので、この“Mo Bamba”のように次第にヒットして気づけばトップ10……のようなヒットの仕方はやや珍しいです。

 

※今年Hot 100のトップ10入りした48曲のうち、34曲*4が最初の週からトップ10圏内に登場しています。(つまりラップ曲はリリース時が注目度のピークになることも多い)

 

△9 Halsey – Without Me

 Halseyの“Without Me”が9位へ浮上!キャリア3曲目のトップ10に!(”Closer”、“Bad at Love”に次ぐ)

 ラジオ、DL、ストリーミングの全てで高水準の成績を記録していることに加え、ビデオリリースによるポイント増がトップ10入りの要因です。特にポップスがあまり得意としない傾向にあるストリーミング(Apple MusicやSpotify)での健闘が際立ちます。

 この曲はブリッジ(日本語で言うCメロ)の部分にJustin Timberlakeの“Cry Me A River”の引用があり、このことから”Without Me”には“Cry Me A River”のソングライター3人全てがクレジットに載っているとビルボードは説明しています。

 

▽× Ariana Grande – no tears left to cry

 Ariana Grandeの”no tears left to cry”が今週チャートから外れました。ピークは3位、チャート滞在27週でした。

 リリース時には初のHot 100首位獲得を試みて、すぐiTunes割引を敢行するなど様々な策を試みましたが、結局3位デビューに。その後も1位は獲得できずに終わりましたが、一定の人気を誇り、27週滞在と悪くはない成績を残しました。デビュー作から続く「アルバムの先行シングルが全てトップ10圏内にデビュー」という記録も継続に成功しました。

 

 この“no tears left to cry”はチャートから外れてしまいましたが、後続のシングルは好調をキープ。”God is a woman”は今週ポップ系ラジオで首位を獲得!これはAriana Grandeキャリア4回目*5の記録です。Hot 100でも今週20位に浮上。

 そして“breathin”も好調で、今週32位とトップ40に帰還しています。ラジオで好調をキープしています。(つまり現在2つのシングルが両立しています)

 

 さらに期待が持てそうなのは、今週日曜日頃にリリースされた”thank u, next”。この曲はリリース以降高いDLをキープし、さらにストリーミングでは以前の曲とは桁違いの再生数を記録。週の途中リリースながらも、この調子で行けばキャリア初のHot 100首位もありえるのでは!?果たして……

 

※この曲のチャート動向で驚いたのは、Apple Musicのランキングでも1位を獲得したこと。アメリカのストリーミングは現在「アーバン天国」な傾向があり、特にApple MusicではラップやR&Bの人気が顕著。現にApple Musicの今日のトップ100のうち、ラップやR&B「ではない」曲はわずか12曲しか無いのですが、そのような環境下での1位獲得は「快挙」と言える気がします。

 この曲は同様にSpotifyでも首位を獲得し、今年初のラップ・R&B「以外」でアメリSpotifyランキング首位に立った曲となりました。そして女性として史上最多の再生数(デイリー)を記録しました。(4,190,968回) 今までこの記録を持っていたのは“Look What You Made Me Do”の3,828,478回。*6

 女性としては史上最多のSpotify再生数ですが、全体では12番目の再生数です。

 

Spotifyアメリカ)で、1日で多くの再生数を記録した曲

ピーク再生数 達成日
1 Drake - Nonstop 5,749,019 2018/6/29
2 Drake - Survival 5,219,711 2018/6/29
3 Drake - Emotionless 4,842,941 2018/6/29
4 Drake - In My Feelings 4,805,299 2018/6/29
5 Drake - God's Plan 4,739,798 2018/1/25
6 Drake - Elevate 4,686,139 2018/6/29
7 Lil Wayne feat. Kendrcik Lamar - Mona Lisa 4,444,027 2018/9/28
8 XXXTENTACION - SAD! 4,437,612 2018/6/19
9 Travis Scott - STARGAZING 4,244,308 2018/8/3
10 J. Cole - KOD 4,233,070 2018/4/20
11 Lil Wayne feat. XXXTENTACION - Don't Cry 4,213,664 2018/9/28
12 Ariana Grande - thank u, next 4,190,968 2018/11/5
13 Drake - 8 Out Of 10 4,170,547 2018/6/29
14 Travis Scott - SICKO MODE 4,129,691 2018/8/3
15 Kendrick Lamar - HUMBLE. 4,060,034 2017/4/14
16 Drake - I'm Upset 3,945,109 2018/6/29
17 Drake - Mob Ties 3,859,100 2018/6/29
18 Taylor Swift - Look What You Made Me Do 3,828,478 2017/8/25
19 Drake feat. Jay-Z - Talk Up 3,823,354 2018/6/29
20 Post Malone - Paranoid 3,694,438 2018/4/27

☆黄色い背景の曲は「非ラップ」

☆ピーク日が青い曲はアルバムリリースのタイミング「以外」でのピーク。現在アメリカのストリーミングでは多くの場合アルバムリリース時がピークになる。

 

今週チャートから外れた曲 (11曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

98 Lil Yachty feat. Playboi Carti – Get Dripped (🗻98位 /⏰1週)

96 Weezer – Africa (🗻51位 /⏰15週)

93 Dua Lipa & BLACKPINK – Kiss and Make Up (🗻93位 /⏰1週)

92 Juice WRLD – Make It Back (🗻92位 /⏰1週)

91 Lil Yachty feat. Juice WRLD – Yacht Club (🗻91位 /⏰1週)

89 Khalid – Vertigo (🗻89位 /⏰1週)

88 Khalid feat. Empress Of – Suncity (🗻88位 /⏰1週)

83 Khalid – Saturday Nights (🗻83位 /⏰1週)

82 Future & Juice WRLD – Astronauts (🗻78位 /⏰1週)

72 Future & Juice WRLD feat. Young Scooter – Jet Lag (🗻72位 /⏰1週)

50 Ariana Grande – no tears ledt to cry (🗻3位 /27週)

 

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Andrea Bocelli – Si

3 Joji – BALLADS 1

4 Tory Lanez – LoVE me NOw?

26 John Legend – A Legendary Christmas

33 Pentatonix – Christmas Is Here!

35 Greateful Dead – Dave’s Picks Volume28

40 Robyn – Honey

41 Josh Turner – I Serve A Savior

52 Various Artists – NOW 68

60 Jeremih & Ty Dolla $ign – MIH-TY

79 Thom Yorke – Suspiria: Music For The Luca Guadagnino Film

89 Lukas Graham – 3 (The Purple Album)

94 Ingrid Michaelson – Ingrid Michaelson’s Songs For The Season

98 MadeinTYO – Sincerely, Tokyo

102 The Struts – Young & Dangerous

103 Chris Tomlin – Holy Roar

127 Francesca Battistelli – Own It

139 Chevelle – 12 Body Spies: B-Sides And Rarities

 

・Joji – BALLADS1 → 88rising所属の日系シンガーが大躍進!88risingのメンバーの中では最高位のアルバムチャート3位を記録!Spotifyなどストリーミングで人気だったほか、グッズ+音源戦略でもセールスを伸ばしました。これを「日本人の記録」と捉えたとすれば、歴代最高の成績になります (日本人のアルバムチャート最高位は1963年、坂本九の14位)

 シングルでは“SLOW DANCING IN THE DARK”が101位相当で、惜しくもHot 100入りならず。本当に惜しい……

 

・Lukas Graham - Purple Album → 英語圏ではあまり話題に上がりませんが、北欧や東南アジアなどでは現在も人気。先行シングル“Love Someone”は計7カ国*7Spotifyでトップ10入りしています。

 

 あとBlack Eyed Peasの新作はリリース日からして、チャートに入るなら今週ですが200位以内に登場せず。

 

来週以降の動向など

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Ariana Grande – thank u, next

 “no tears~”の項目で述べたように、来週Hot 100首位獲得の可能性あり。今週DL1位だった”Shallow”の2~3倍のDLを記録しているうえ、さらにストリーミングでも絶好調。5日分しか集計され無いことは少々痛いですが、果たして……?

 

・K/DA feat. Madison Beer, (G)I-DLE & Jaira Burns – POP/STARS

 先週はDua LipaとBLACKPINKの“Kiss and Make Up”、今週はSteve AokiとBTSの”Waste It on Me”と連続でK-PopグループがHot 100に登場しましたが、来週のHot 100にも新たにK-Popグループが登場?

 League of Legendsというゲーム発祥のアニメグループK/DAの“POP/STARS”が各媒体で注目を集めています。ポップシンガーMadison Beer、Jaira Burns、K-Popガールズグループ(G)I-DLEのメンバーがボーカリストとして参加しています。(というよりも、このアニメキャラのボーカルを代わりに担当しているという感覚です)

 全員がHot 100未登場のアーティストです。コンセプトも参加しているアーティストも全く目新しいですが、チャートを掻き回すことが出来るでしょうか?

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:"No Frauds"のビデオにおけるNicki Minaj

*2:“Bang Bang”のような全員が&で括られている曲は自身の曲としてカウントしました。Britney Spearsの“Till the World Ends”のリミックスでの客演もカウントされているのが意外でした

*3:この曲が最初にリリースされた時はダウンロードという概念が無い

*4:リリースのタイミングの都合上、チャート1週目が7日分集計されていない曲 “Chun-Li”と”Yes Indeed”の2つ は「事実上」トップ10圏内デビューと見なしています

*5:“Problem”, “Side to Side”, “no tears left to cry”に次ぐ

*6:え?Cardi Bじゃないの?と思う人がいるかもしれないですが、意外とCardi BはSpotifyだと人気控えめ?で、実は”Bodak Yellow”もSpotifyだと1位になっていません

*7:デンマークスウェーデンノルウェー、フィリピン、マレーシア、シンガポールベトナム

ハロウィンと音楽チャートに関する手短なレポート

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 *1

 10/31のハロウィン!日本でも認知されている有名なイベントです。そのハロウィンに関する楽曲が世の中にいくつも存在し、ハロウィン期間にはそれらの曲が一気に注目を集めるケースがあります。

 その曲が10/31にどこまで注目を集めたか?を見ることで、音楽チャート上でのその国の「ハロウィン人気度」を垣間見ることができるのでは?と思い軽く調査をしました。

 

 ここで調べたことは3つあります。

1:ハロウィン曲が人気な国はどこか

2:SpotifyApple Music、どちらで人気か?

3:クリスマスと比べるとどうか?

 

 

1 ハロウィン曲が人気な国はどこか?

 

 ハロウィン曲が人気な国はどこか?これを私はSpotifyを用いて調査しようと思います。調査方法は、Spotifyのハロウィンプレイリストに入っているような曲が10/31のデイリーランキングで何位に達したか?を調べるというものです。ほとんどの国でMichael Jacksonの“Thriller”が(ハロウィン曲の中で)一番人気になっているので、この曲の順位を各国で調べていけば、各国のハロウィン音楽人気度が簡潔に分かります。

 

Global 20 (世界の合計再生数の順位)

 

カナダ 6 (12曲)

アメリカ 11 (10曲)

イギリス 13 (9曲)

アイルランド 20 (7曲)

ポーランド 49

イタリア 76

ノルウェー 76

デンマーク 80

スペイン 82

メキシコ 85

ポルトガル 85

AU 88

フランス 94

ベルギー 95

オーストリア 116

アイスランド 122

NZ 139

ドイツ 145

スウェーデン 165

スイス 189 (Highway to Hellが158位)

 

圏外

アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカチェコドミニカ共和国エクアドルエストニアギリシャグアテマラ、香港、ホンジュラスハンガリーインドネシアイスラエル、日本、リトアニアラトビア、マルタ、マレーシア、オランダ、パナマ、ペルー、フィリピン、パラグアイルーマニアシンガポールスロバキアエルサルバドル、タイ、トルコ、台湾、ウルグアイベトナム

 

 主に北米や西側のヨーロッパ、(あとはオセアニア英語圏、北欧あたり)でハロウィン曲が人気ということが分かりました。逆に、南米やアジアでは1つも入っていないようです。このことから、「音楽チャート上」ではハロウィンが人気なのは北米と西側のヨーロッパのようです。

 日本でもかなりハロウィンはニュースになっていましたが、かといってハロウィン曲の再生数が伸びるということはないようですね。これはハロウィンが一部の層にだけ浸透しているということを表すのか、それともハロウィンの文化が音楽と結びつかないということを表しているのか、どちらでしょうかね。

 

 

2 Apple Musicと比べてどうか

 この上位4カ国(カナダ、アメリカ、イギリス、アイルランドSpotifyApple Musicでハロウィン曲がどうなのか?を比べました。比較するのは、ハロウィン曲最高位(だいたい“Thriller”)の順位、そしてトップ100圏内にいくつハロウィン曲が入ったか?ということです。 

 

  Spotify Apple Music
  最高位 トップ100曲数 最高位 トップ100曲数
US 11位 10曲 28位 4曲
UK 13位 9曲 35位 3曲
カナダ 6位 12曲 19位 5曲
アイルランド 20位 7曲 17位 5曲

SpotifyApple Musicいずれでも、全ての国で“Thriller”がハロウィン曲一番人気。

 

 アイルランド以外では“Thriller”の順位がSpotify > Apple Musicに。ハロウィン発祥の地と言われているアイルランドでは唯一逆でしたが、トップ100圏内に入ったハロウィン曲の数ではSpotifyのほうが多いので、基本的にハロウィン曲の人気が出たのはSpotify、ということが言えると思います。

 

 昨年クリスマスの人気動向を調べた時の、イベント事にはSpotifyのほうが強い反応が出るという仮説がこれにも当てはまります。

ランキングの過半数をクリスマス曲が独占? クリスマス曲とストリーミングの関係を調査 【Spotifyで強め?】 - チャート・マニア・ラボ (CML)

 

3 クリスマスと比べてどうか

 

 クリスマスと比較すると、とても小規模です。ハロウィンはその前後1週間程度しか関連曲がランキング圏内に上がってきませんが、クリスマス曲は2ヶ月前くらいから各国のランキングにエントリーしています。実際、ハロウィンが終わった11/1のSpotifyランキングでは既に“All I Want for Christmas Is You”が入っている国もあります。 

 期間が長いだけではなく、順位もクリスマス曲のほうが高いです。例えば昨年のクリスマスではグローバルランキングのトップ10のうち、1位、2位、3位、4位、6位、7位、8位、10位がクリスマス曲でした。

 

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 クリスマスはこのように、ハロウィンとは桁違いの影響力を持っているのです。

 

 

今回の調査をまとめると

1:音楽チャート上でハロウィンが人気なのは、北米や西側のヨーロッパ諸国

2:イベント事の影響が強く出るのはSpotifyという傾向

3:クリスマスの影響は桁違い。ハロウィンの影響があるのはせいぜい1週間程度

 

 

おまけ クリスマスが再生規模を拡張?US以外で100万再生以上を記録した曲

 

 USで1日にSpotifyで100万以上再生された曲はかなりの数(372曲)あるのですが、それ以外の国ではかなりレアな現象です。そこで以前、アメリカ以外で1日のSpotify再生数が100万を超えた曲は無いかな?と調査したところ以下のような曲が該当しました。

 

  再生数
🎄 Wham! - Last Christmas 1,357,938 イギリス
  Ed Sheeran - Shape of You 1,322,199 イギリス
🎄 Mariah Carey - All I Want for Christmas Is You 1,299,377 イギリス
🎄 The Pogues - Fairytale of New York 1,142,041 イギリス
  Ed Sheeran - Galway Girl 1,104,550 イギリス
🎄 Band Aid - Do They Know It's Christmas? (1984) 1,053,410 イギリス
  Luis Fonsi & Daddy Yankee feat. Justin Bieber - Despacito (Remix) 1,034,792 イギリス
🎄 Brenda Lee - Rockin' Around The Christmas Tree 1,024,265 イギリス
🎄 Wham! - Last Christmas 1,280,932 ドイツ
🎄 Mariah Carey - All I Want for Christmas Is You 1,250,324 ドイツ
  Capital Bra feat. Juju - Melodien 1,092,669 ドイツ
🎄 Chris Rea - Driving Home For Christmas 1,051,303 ドイツ
  Anitta, MC Zaac & Maejor feat. Ropkillaz & DJ Yuri Martins - Vai malandra 2,001,683 ブラジル
       
🎄 =クリスマスソング    

 

 イギリスとドイツでWham!の“Last Christmas”が100万超えを達成し、それぞれの国での1日の再生数の記録を持っていることが分かります。*2他にもクリスマス曲が多く、クリスマス期にはムードを高めるために、(少なくともこれらの国では)普段よりも多くの人がSpotifyにアクセスしたということが伺えます。

 どこでクリスマス曲が人気か?ということ以外にも、普段と比べてどこまで再生規模が伸びるのか?というテーマについても、今年のクリスマスで調査してみたいと思います。

 

( あとクリスマスと関係ないですが、ブラジルにおけるAnittaの支持がすごいですね)

 今回の記事はサクッと終わります。ありがとうございました。皆様、寒くなってきたので風邪などに気をつけてください……

 

 

*1:肉がないのに小顔効果を狙ってあご下ピースで自撮りをするガイコツ|ぱくたそフリー素材

*2:この2つの記録は2017年のもので、George Michaelの追悼の効果が表れたものではない ※George Michaelが亡くなったのは2016年

Hot 100 11/3 見どころ 【3つのストリーミング人気作品+Post Maloneの新曲】

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 今週の注目はストリーミングでの人気作品3つ(Future & Juice WRLD、Khalid、Lil Yachty)、そして上位にデビューした今後のヒット候補、Post Malone新曲。

 Juice WRLDは特に存在感が抜群。Futureとのコラボミックステープがアルバムチャートの2位に登場したほか、Lil Yachtyのアルバムに客演として参加しています。(これは”Lean Wit Me"のビデオにおけるJuice WRLD)

 

☆今週のHot 100 ショートハイライト

・Post MaloneとSwae Leeの“Sunflower”が9位に登場

・Future & Juice WRLDの“Fine China”は26位に登場。アルバムは2位

・Billie Eilishの”when the party’s over”が65位に登場。キャリアハイの成績

・Dua LipaとBLACKPINKの“Kiss and Make Up”が93位に登場。BLACKPINKは2回目のHot 100登場

・“Meant to Be”が52週滞在のロングヒットの末、チャートから外れる

・Empress OfがKhalidの客演で初のHot 100入り

 

・今週のトップ10

-1 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

△2 Travis Scott – SICKO MODE 

―3 Juice WRLD – Lucid Dreams

△4 Marshmello & Bastille – Happier 

▽5 Post Malone – Better Now

▽6 Kodak Black feat. Travis Scott & Offset – ZEZE

△7 5 Seconds of Summer – Youngblood

―8 Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard

☆9 Post Malone & Swae Lee – Sunflower 

△10 Khalid & Normani – Love Lies

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

曲の個別解説

 

☆100 Dierks Bentley feat. Brothers Osborne – Burning Man

 カントリーシンガー、Dierks Bentleyの“Bruning Man”が100位に登場。客演は兄弟カントリーデュオのBrothers Osborne。

 この曲は今週カントリー系ラジオチャートの16位に付けています

 

☆93 Dua Lipa & BLACKPINK – Kiss and Make Up

 Dua LipaとBLACKPINKのコラボ、“Kiss and Make Up”が93位に登場。この曲はDua Lipaのデビューアルバムの”Complete Edition”で新たに追加された1曲。新エディションのリリース効果でセルフタイトルのデビュー作“Dua Lipa”は今週アルバムチャートで127位→42位と順位を大きく上げました。

 この曲はDLで数字を稼いだほか、Spotifyでも人気。Spotifyでは上位に定着しつつあり、今後ラジオが伸びてくればHot 100でも順位が伸ばせるかもしれません。ダンスホールを得意とするBanx & Ranxがプロデュースしたキャッチーなポップス。

 BLACKPINKは“DDU-DU DDU-DU”に次いで2回目のHot 100。K-Popのミュージシャンで複数回Hot 100に登場したのはPsy、CL、BTSとBLACKPINKの4人(組) この曲はK-Pop史上12曲目のHot 100エントリー。

参考:List of K-pop songs on the Billboard charts - Wikipedia

ウィキペディアに分かりやすくK-Popのシングル成績がまとめられています)

 

※ちなみにこの曲にGrimesがソングライターとして参加している!と書いてあることがありますが、カナダのSSWのGrimesとは別人。この曲のソングライターとして参加しているのはイギリスのChelcee Grimesという人物。彼女はこの曲以外にもDua Lipa、そしてK-Popの両方のソングライターを務めたことがあり、この曲にうってつけの人物と言えそうです。

 このChelcee Grimesさんはフルハム・レディースで活躍する現役の女子サッカー選手でもあるようです。

 

☆91 Lil Yachty feat. Juice WRLD – Yacht Club

 この週は複数のアルバムがストリーミングで人気を獲得。その効果でアルバム内の曲が非シングルも含めて多くHot 100に登場しました。

 Lil Yachtyのアルバム“Nuthin’ 2 Prove”からは2曲がHot 100に登場。91位にJuice WRLDとの”Yacht Club”、100位にPlayboi Cartiとの“Get Dripped”が登場。

 SpotifyのRapCaviarや、Apple MusicのHip-Hop A Listで最初取り上げられていたのは“Get Dripped”の方でしたが、最終的には”Yacht Club”の方が人気となったようです。同じ週にリリースされたFuture + Juice WRLDのミックステープとの相乗効果もあってJuice WRLD曲に注目が集まったのでしょうか。(後にHip-Hop A Listの方には“Yacht Club”が追加された)

 この“Nuthin’ 2 Prove”はアルバムチャートで12位でした。このアルバムはSpotifyよりもApple Musicの方で人気が高かったです。

 

☆88 Khalid feat. Empress Of – Suncity

 ストリーミングで人気だったアルバムその2。KhalidのEP、“Suncity”。アルバムチャートでは8位でした。このアルバムは逆にSpotifyでの人気が高かったです。

 アルバムからは先行シングルの“Better”を含めて4曲がHot 100に登場。”Saturday Nights”が83位、Empress Ofとの”Suncity”が88位、”Vertigo”が89位に登場。USのオルタナティブポップ系シンガー、Empress Ofは初のHot 100登場。意外な所を客演に持ってきたという印象です。

 現在Hot 100上位にエントリーしている“Love Lies”や”Eastside”、そして今年序盤にリリースされた“OTW”はこのEPに収録されていません。

 

☆65 Billie Eilish – when the party’s over

 Billie Eilishの“when the party’s over”が65位に登場。3回目のHot 100エントリーで、彼女にとってキャリアハイの成績に。(”Lovely”=78位 “you should see me in a crown”=93位)

 彼女の躍進を支えるのはストリーミングでの人気。この“when~”はApple Music・Spotifyの両方で人気を博しており上位につけています。

その他、Spotifyではこの曲以外にも、5曲が200位以内にランクイン。そのうち”Bellyace”は2017年2月のリリースながらも、Spotifyのランキングに入ったのは今週です。つまり、この曲のヒットを媒介に過去曲が発掘された、という過程が伺えます。

 「ストリーミングで人気」というとノリやすくリズミックな曲が多く浮かびますが、Billie Eilishの曲の多くはその真逆を行く、とにかくダークな曲です。

 ストリーミングで注目を集める彼女ですが、今の所ラジオではあまりかかっていないようです。ラジオでも人気が出ればHot 100でも好成績を残せそうですが、果たして……

 

☆54 Cardi B – Money

 Cardi Bが火曜日にリリースした“Money”が54位に登場。集計は3日分で短いながらも注目を集めてHot 100デビューを果たしました。来週はある程度順位を伸ばす見込み。

 他のラップ曲と同様に、ストリーミングで主に人気。Apple Musicでは一時期首位に立っていたようです。DLでも一定の数字(今週10位)を記録しています。

 

△37 Luke Combs – She Got The Best Of Me

 カントリーシンガー、Luke Combsの“She Got The Best Of Me”が37位へ浮上。これでファーストアルバムからのシングル4つ全てでトップ40入りを達成しています。カントリー界期待のホープと言えるかも。

 

△34 Khalid – Better

 Khalidの“Better”がアルバム効果で順位上昇。ピークを更新し、34位まで浮上。トップ40入り。

 USのストリーミングでは、曲のピークはアルバムのリリース時に来やすいので、この“Better”はそのチャンスをしっかり掴んで順位を上げた、ということが言えると思います。

 ヒット連発のKhalidはここ2年で7曲のトップ40を記録。そのうちトップ10に届いたのは“1-800-273-8255”と”Love Lies”の2曲。

 

☆26 Future & Juice WRLD – Fine China

 今週のストリーミング人気作品その③。FutureとJuice WRLDのコラボミックステープ“WRLD ON DRUGS”。セールスはわずか8000枚ながらもストリーミングでの大人気により、アルバムチャート2位に食い込みました。(ストリーミングのみで8.8万枚相当の数字を記録)

 収録曲のうち4つがHot 100入り。先行で公開されていた“Fine China”が一番人気で26位に登場。ほか72位に”Jet Lag”、82位に“Astronauts”、92位に”Make It Back”が登場。”Make It Back”はJuice WRLDのソロ曲です。 これらの他、8曲がBubbling Under(101位~125位相当のチャート)に入りました。

 

△10 Khalid & Normani – Love Lies

 トップ10ラストの枠に滑り込んだのは“Love Lies”。ラジオでの人気もあってロングヒットとなっているこの曲ですが、6週ぶりのトップ10に。現在チャート滞在36週目。

 他の曲の追い上げが激しいので来週もトップ10に留まるかは微妙です。11位の“Taki Taki”、12位の”Without Me”がラジオ、DL、ストリーミングの全てで人気になっているので、来週は両方ともトップ10入りしそうな予感。

 先週、ステータスが13-13-13で並んだImagine Dragonsの“Natural”はラジオの伸びが鈍重なのでトップ10に届くか微妙、ほか先週11位だったElla Maiの”Trip”は18位にランクダウン。ストリーミングのピークはアルバムリリース時に来やすいという傾向通り、この曲のピークは先週の11位になるかも。

 

☆9 Post Malone & Swae Lee – Sunflower

 スパイダーマンの新作映画サントラからの1曲、Post MaloneとSwae Leeの“Sunflower”が9位に登場。Post Maloneにとっては5曲目、Swae Leeにとっては3曲目のトップ10(Rae Sremmurdの曲も含む)。

 この曲はストリーミングで人気のほか、DLでも好成績を記録(6位)、そしてラジオでも既に人気が出ており、将来的に1位を取る可能性もあるかも?ポイントはポップ系やリズミック系など規模の大きいラジオで人気を得ているという点。この2つを抑えられればラジオのポイントは大きく伸びそうです。逆にラップ~R&B系のラジオではあまりかからないかも。

 ほかでは、ここ数週ラジオで絶好調の“Happier”(4位)、ビデオ公開で再注目された”SICKO MODE”(2位)が次の1位候補です。

 

× Queen Naija – Medicine

 R&Bシンガー、Queen Naijaの“Medicine”がチャートから外れました。ピークは45位、チャート滞在は20週でした。

 最初はYouTubeで主に人気な曲でしたが、次第にラジオでも人気に。EPのリリースなどを挟んで人気をキープし、滞在20週と「満期」でチャートを後にしました。

 

※この曲はElla Maiの“Boo’d Up”、そしてH.E.R.の”Focus”と同じ週にHot 100に登場し、一気に3人も新人女性R&Bシンガーがチャートに出てきたことが印象的でした。

 

× Bebe Rexha & Florida Georgia Line – Meant To Be

 カントリーとポップが融合した大ヒットが大往生。“Meant To Be”が1年のチャート滞在の末にHot 100を後にしました。滞在が53週以上になった曲は26位以下に落ちるとチャートから外れる、というルールに基づきチャートを後にしています。(先週の順位は31位)

 現在USのラジオで1番規模が大きいのはポップス、次いでカントリーなのですが、この曲はその2大系統を両方抑えることによって人気に。

 ほかYouTubeやDLでも高い人気を誇り、複数のラジオ系統・複数の媒体と複合的な人気を得たことにより超ロングヒットとなりました。

 昨年は“Body Like A Back Road”、今年は”Meant to Be”というポップ~カントリーのクロスオーバーの大ヒットが2年連続で誕生。ラジオのポイントを効率良く稼ぐ手法として今後模倣される可能性もありそうです。

 

 

今週チャートから外れた曲 (15曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Quavo feat. Lil Baby – Lose It (🗻100位 /⏰1週)

99 Kodak Black – If I’m lyin, I’m Flyin (🗻56位 /⏰3週)

96 Luke Bryan – Sunrise, Sunburn, Sunset (🗻35位 /⏰16週)

95 Labrinth, Sia & Diplo (LSD) – Thunderclouds (🗻67位 /⏰5週)

94 Young Thug feat. Gunna & Lil Baby – Chanel (Go Get It) (🗻78位 /⏰4週)

93 Quavo – Huncho Dreams (🗻93位 /⏰1週)

91 Lil Wayne feat. XXXTENTACION – Don’t Cry (🗻5位 /⏰3週)

90 The Chainsmokers feat. Kelsea Ballerini – This Feeling (🗻74位 /⏰2週)

88 Quavo feat. Travis Scott – Rerun (🗻88位 /⏰1週)

86 Quavo – Biggest Alley Oop (🗻86位 /⏰1週)

83 Queen Naija – Medicine (🗻45位 /20週)

61 Quavo feat. 21 Savage – Pass Out (🗻61位 /⏰1週)

60 Florida Georgia Line - Simple (🗻32位 /20週)

48 Quavo feat. Drake – Flip the Switch (🗻48位 /⏰1週)

31 Bebe Rexha & Florida Georgia Line – Meant To Be (🗻2位 /52週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

🎫=チケットとアルバムを絡めた戦略を展開(CD購入でチケット割引・先行購入など)

👕=アーティストのグッズと音源を絡めた戦略 (シャツに音源がおまけで付くなど)

2 Future & Juice WRLD – WRLD On Drugs

3 Greta Van Fleet – Anthem Of The Peaceful Army 🎫

4 Disturbed – Evolution

8 Khalid – Suncity (EP)

12 Lil Yachty – Nuthin’ 2 Prove

21 LAY – NAMANANA: 03

22 QueenBohemian Rhapsody (Soundtrack)

26 RM – mono.

29 Lil Mosey – Northsbest

38 Jason Isbell And The 400 Unit

44 Summer Walker – Last Day Of Summer

49 Ace Frehley – Spaceman

60 Soundtrack – Halloween (2018)

68 Elle King – Shake The Spirit

188 Major Lazer – Major Lazer Essentials

 

 今週はバラエティー豊か。ストリーミングで人気のFuture & Juice WRLD、Khalid、Lil Yachtyが上位にデビュー。ほか新旧ハードロックバンド、Greta Van FleetやDisturbedも上位に。

 その他の注目はK-Popグループのソロ活動。EXOの中国出身メンバーLayの“NAMANANA: 03”が21位、BTSのRMのミックステープ”mono.”が26位に登場。

 LAYのアルバムはグループのアルバムチャートでのピーク(87位)を上回りました。RMのミックステープは無料で配布されているものの、iTunes1位など高いセールスを記録した点が興味深いです。 

 

来週以降の動向など

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Steve Aoki feat. BTS – Waste It On Me

 2週連続でK-PopアーティストがHot 100に登場することになるか?BTS初の英語シングルです。主にセールスで好調な成績を記録。

 

Michael Jackson – Thriller

 ハロウィン期になると毎年再浮上する定番曲。2013年~2015年にかけては毎年Hot 100に再登場していたのですが、2016年と2017年は登場せず。果たして今年は?ちなみに再登場するには50位以上にランクインする必要があります。

 

・Summer Walker - Girs Need Love

 Apple Musicでじわじわ人気が出ている女性R&Bシンガーの1曲。

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

BROCKHAMPTON、アルバム1位から3週後に圏外へ? アルバム1位の「その後」

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 10/6付けのUSチャートでBROCKHAMPTONがアルバム1位を獲得!初のアルバムトップ10、並びにHot 100登場歴の無かったインディー寄りのアクトのアルバム1位ということもあり、驚きとともに多くのメディアや人に取り上げられていたように思います。(例:普段はそこまでチャートを取り上げないPitchforkが取り上げていた)

 

 では、それから3週間が経過した現在はアルバム何位になったでしょうか?3週前がアルバム1位なので、現在は20位程度??? 実はこのアルバム、現在は「200位圏外」なのです。このアルバムは1位を獲得後、→88位→195位→圏外と推移しており、今週アルバムチャートから外れてしまったのです。

 

 なぜ、ここまで急激にアルバムチャートを下降していったのでしょうか。そのヒントがビルボードのBROCKHAMPTONアルバム1位を報じる記事に書いてあります。

Of Iridescence’s 101,000 units, most were in album sales: 79,000, as noted above. The remainder was comprised of SEA units (22,000) and TEA units (a negligible figure).

 

 Iridescenceの売り上げ10.1万のうち、7.9万がセールスで、2.2万がストリーミング、シングルDLはほぼ0に近いです。(※現在のアルバムチャートは 実セールス+ストリーミング+シングルDLで計算される ストリーミングは約1350*1=1枚、シングルDLは10=1枚で計算) 

 

 さらに、このセールス7.9万に関して詳しい説明があります。

 

Iridescence’s first-week sales were supported heavily by an array of merchandise/album bundles sold via Brockhampton’s official website.

 

 Iridescenceの初週売り上げのほとんどは、Brockhamptonの公式サイトを通したグッズ/アルバムのセット販売によって計上されています。

 「グッズ/アルバム」のセット販売とは???これは、公式サイトからTシャツなどのグッズを買うと、おまけで音源も付いてきて、ファンはグッズも買いつつ、チャートにも貢献できるからお得だね~~というシステムです。

 

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 これは、そのセット販売のうちTシャツの販売画面です。「BROCKHAMPTONのTシャツ(ネイビー色)+デジタル音源」と書かれており、このシャツを買うとデジタル音源も入手できるものと思われます。

 個人的にここで気になったのは値段です。Tシャツの値段15$は「普通」という点です。来日公演で売っているアーティストのTシャツはもっと高い気がするので、むしろ「安い」とも考えられそうです。(USのAmazonでTシャツを検索しても15.00$前後の価格で販売されている)

 その「普通」または「安い」価格のTシャツのおまけとしてデジタル音源が付いてくるので、捉えようによってはデジタル音源を「タダ同然」と考えることも可能です。ストリーミングが浸透した今日、デジタル音源に価値を見出す人は少ないだろう、という考えに基づいているのでしょうか。

 これに似た戦略として「チケット付きアルバム」というものがあります。これはツアーのチケットを買ったらアルバム(音源またはCD)がおまけに付いてくる、というものです。この場合はその分安くなる場合もあれば、その分チケットの値段に上乗せされているケースもあるようです。(そもそもツアーのチケットの値段に関する説明が細かくされるわけではないので、どのような内訳かは不明)*2

 

 なぜこのような形式で音源が販売されているかというと、ストリーミングが強いアーティストに対抗し、アルバムチャート争いを有利に進めるためです。

 2014年末からビルボードはアルバムチャートに、シングルDLとストリーミングを集計に導入しはじめました。最初のうちは大きな影響はありませんでしたが、次第にアルバムをストリーミングで聴く習慣が浸透。2016年のDrakeの“Views”あたりからその傾向が顕著になり、リリースから時間が経ったストリーミングで人気のアルバムがずっとアルバム1位を支配することが増えていきました。

 そこに対抗するために2017年半ばから確認されたのが「チケット付きアルバム」という戦略です。これによってストリーミングで数字を稼げないアーティストでもツアーに来るファンさえいれば安定してアルバムを売ることが可能になり、アルバム1位を取りやすくなったのです。その発展形として2018年頃から登場したのがグッズ戦略です。

(これらの流れについては↓の記事に詳しく書きました)

 

 ただし、「チケット付きアルバム」または「グッズ戦略」のような形式でアルバムを売った場合、その恩恵を受けられない2週目以降にセールスがガクッと落としてしまうというデメリットもあります。

 以下はアルバム1位の翌週、最も順位を落としたアルバムランキングなのですが

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 この1位~9位のうち、「クリスマス向け」という時期的な制限がある”Pentatonix Christmas”以外は全て「チケット付き」または「グッズ戦略」のアルバムで、この戦略を用いるとアルバム1位を獲得しても、翌週に落ちるという傾向が読み取れます。

 BROCKHAMPTONもこのパターンに当てはまり、早急にアルバムチャート圏外に落ちてしまったのです。*3

 

 この記事では、今年のアルバムを売れ行きの内訳の種類別に分類し、その後アルバムチャートの順位推移をとるのかの比較を行いたいと思います。(※セールスの数字や戦略についてはビルボードの記事を参考にしています。 ウィキペディアのページのソース(ref.のところ)から辿ると分かりやすいと思います List of Billboard 200 number-one albums of 2018 - Wikipedia

 アルバムチャートの推移を比べる際は、「セールスが同規模」のものを採用してできるだけ比較しやすいようにしています。

 

1 BROCKHAMPTONと同規模のアルバムたち

 

 じつはBROCKHAMPTONのアルバムは、今年1位を獲得したアルバムの中で最も指数が低いです。

(アーティスト名 – アルバム名 初週セールス 特徴)

・Logic – Bobby Tarantino Ⅱ 11.9万 =ストリーミングが強い

・Jack White - Boarding House Reach 12.0万 =チケット付きCD

・BROCKHAMPTON – Iridescence 10.1万 =グッズ戦略

 

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※縦軸がアルバムチャートの順位、横軸がチャート登場週数

 

 売り上げをチケット、グッズ戦略で稼いだ2つのアルバムは短命に終わってしまいましたが、ストリーミングで数字を稼いでいたLogicは10週目でもアルバムチャート50位以内に踏みとどまっています。基本的に音源は1度購入すればそれで終わりなので、2週目以降も繰り返し再生できるストリーミングが強いのは自然な流れなのでしょうか。

 

 

その2 大規模アルバムの比較

・Cardi B – Invasion of Privacy 25.5万 =ストリーミングが強い

Justin Timberlake – Man of the Woods 29.3万 =一般的なセールス

Dave Matthews Band – Come Tomorrow 29.2万 =チケット付きCD

 

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 続いて規模の大きいアルバムのその後を比較しようと思います。落ちるまでの速度がゆっくりのため、20週まで動向を追いました。

 チケット付きCDでかなりのセールスを上げたDave Matthews Bandですが8週目でチャート圏外という憂き目に。セールスの規模が大きくても、チケットに頼る部分が大きいとこうすぐに圏外に落ちてしまうのですね。

 そしてJustin Timberlake。これは特別な戦略を用いず、ストリーミングの比率もそこまで高くない、いわば今まで想定されてきた「一般的なセールス」です。初週の高い注目もあり、最初のほうは高い数字をキープするものの、徐々に失速。20週目にはついにチャート圏外に落ちてしまいます。

 最後にCardi B。ストリーミングで人気だったこのアルバムは常に高い順位をキープ。なんと20週目まで全ての週でアルバムチャートのトップ10に留まり続けました!

 このJustin TimberlakeとCardi Bの違いは、ストリーミングの人気具合の違いだけではなく、「ヒットシングルが出たかどうか」も影響していると考え、次の項目ではそれらにも触れて比較してみようと思います。

 

 

その3 多種多様なアルバムの比較

Fall Out Boy – MANIA 13.0万 =一般的なセールス

BTS – Love Yourself:Tear 13.5万 =ファンベースが独自

・XXXTENTACION - ? 13.1万 =ストリーミングが強い

5 Seconds of Summer – Youngblood 14.2万 =チケット付きアルバム ヒット曲あり

Paul McCartney – Egypt Station 15.3万 =チケット付きアルバム ヒット曲なし *4

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 早々に脱落したのはPaul McCartneyFall Out BoyPaul McCartneyは言わずとしれた超大物ですが、近年のアルバムではUSのアルバム1位を獲得しておらず、今回のアルバム1位はチケット付きアルバムによる恩恵が大きいという見方ができます。そのことから、チケット付きアルバムの効果が消えた3週目以降はどんどん数字を落としてしまいました。

 Fall Out Boyは一般的なセールスですが、早めに脱落。特別な戦略を行いませんでしたが、固定ファンのみがアルバムを購入し、ストリーミングでその後人気が出ないという意味で、「チケット付き」などの戦略と似たような消費のされ方をしたのかもしれません。

 

 一方、ここで新しい発見があるのは5 Seconds of Summer。チケット付きアルバムの恩恵を受け、The Cartersを打ち破ってアルバム1位を獲得した彼ら。2週目は1位から10位まで順位を落としたものの、その後は安定。これはヒットシングル”Youngblood”の効果が大きそうです。

 アルバムからヒットシングルが出れば、そのシングルが媒介となりアルバムの宣伝になるだけではなく、曲をシングル単位で消費していたとしても、そのDLやストリーミングはアルバムチャートにも集計されるので、ダブルでお得なのです。

 

 そしてBTS。セールスの比率においてはJustin TimberlakeFall Out Boyなどと同じ「一般的なセールス」なのですが、強固なファン層の効果もあってか以降も高い数字をキープ。他と比べると少し特殊な事例なように思います。(このアルバムは初週、ストリーミングでも一定の人気がありました。固定ファン以外にもかなり届いたのかもしれません)

 

 最後にXXXTENTACION。他のストリーミングで人気のアルバム同様、2週目以降も高い数字をキープしています。ちなみにXXXTENTACION逝去前の数字なので、この10週目までは逝去による再注目の効果は含まれていません。

 

 

・まとめ

 これらのケースをまとめると、ストリーミングで人気のアルバムは長持ちするが、チケットやグッズ販売で売り上げを伸ばしたアルバムは(相対的に)短命に終わってしまうという傾向を読み取ることができました。ただし、ヒットシングルがあるとチケットやグッズ販売に頼っていたとしても、長持ちするケースもあるようです。

 これらのことから、今日ではアルバムがストリーミングで高い支持を受けた上でヒットシングルを飛ばすのがアルバムの売り上げを伸ばす最適解であると考えられます。昨年アルバム年間1位に輝いたKendrick Lamarの“DAMN.”はこの2つの条件を満たしています。

 

 アルバム1位を獲得したとしても、その後の順位の推移はアルバムによってバラバラなので、「アルバム1位を獲得した!以上!」で終わらず、その後の動向も追うと面白いかもしれないです。(年間チャートではそれらの総合的なヒットを分かりやすくつかめるので、オススメです)

 

年間チャートが発表されたので、今回取り上げたアルバムが何位だったか記載しておきます。

 

比較1

Logic(ストリーミング) →年間64位
Jack White(チケット) →年間200位圏外
BROCKHAMPTON(グッズ) →年間200位圏外

 

比較2

Cardi B(ストリーミング) →年間6位
Justin Timberlake(通常) →年間46位
Dave Matthews Band(チケット) →年間95位

 

比較3

Fall Out Boy(通常) →年間198位
BTS(ファンベースが独自) →年間101位 
XXXTENTACION(ストリーミング) →年間9位
5 Seconds of Summer(チケット+ヒット曲あり) →年間72位
Paul McCartney(チケット+ヒット曲なし) →年間175位

 

・さらなる議論 ~チケット付き / グッズ戦略がアルバムチャートから外れる可能性~

 ここ1~2年で加速するチケット付きCD or 音源、アルバムグッズ戦略ですが、この戦略で売ったアルバムがチャートに集計されなくなる可能性もゼロではないと考えています。

 BROCKHAMPTONのTシャツのケースでは、値段から考えて音源はゼロに近い感覚で手に入れられると考えられます。この「ゼロに近い」ということが実はチャートにおいて「値段制限」という観点からグレーなのです。

2011年 Lady Gagaはわずか0.99$という値段でアルバム“Born This Way”を販売。(Amazon限定) その安さに多くの人が食いつき、アルバムは爆発的な売り上げ(約111万)を記録。

 しかしその動きをビルボードは宜しくないと捉え、以降アルバムチャートに反映される「セールス」は3.49$以上の作品に限る(初週のみ適用)、というルールを制定しました。

 

 このチケット付き / グッズ戦略は捉え方次第では、この3.49$を破っているという見方もできるので、今後チャートで制限がかかる可能性も否定できません。

 

 どちらにせよ、近年のアルバムチャートは純粋に売り上げだけではなく複数の要素が絡んだ、「アーティストの総合力が問われるチャート」になっている印象があります。

 

 

                                                                                                    

*1:ストリーミングの無料会員・有料会員で指数が違うなど複雑な計算がされている

*2:CDを買ってチケット先行購入権が手に入る、のような場合もあるようです

*3:ただしこのパターンのアルバムとしてはストリーミングが若干高めです。しかし、そのストリーミングも長続きせず。初週にストリーミングの数字が伸びていたのはSpotifyのNew Music Fridayの表紙を飾るなどの宣伝効果を受けてのものだったのでしょうか?

*4:一応ですが、Paul McCartneyの「ヒット曲なし」はこのアルバムからは、という意味です。念の為……