チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 10/27 見どころ 【スペイン語曲に登場したDrake + Kodak BlackのZEZEが2位】

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 今週の注目はトップ10圏内に登場した2曲。Kodak Black + Offset + Travis Scottの”ZEZE"、そしてBad BunnyとDrakeの”MIA"が大きく注目を集めています。

 ↑の画像はBad BunnyのYouTubeチャンネルのヘッダーにあった画像。めちゃくちゃかわいくて好きなのですが、この画像はBad Bunnyのキャラと合っているのでしょうか……? (Bad Bunny - YouTube より)

 

☆今週のHot 100 ショートハイライト

Kodak Balack、Travis Scott、Offsetの“ZEZE”が2位デビュー

・Bad BunnyとDrakeの“MIA”が5位デビュー。Drakeは今年のトップ10曲数を12まで伸ばし、1964年のThe Beatlesのトップ10曲数=11曲を超える

・“A Star Is Born”サントラが引き続きアルバム1位

・アルバム2位はQuavo。7曲がHot 100入り

 

・今週のトップ10

-1 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You 

☆2 Kodak Black feat. Travis Scott & Offset – ZEZE 

▽3 Juice WRLD – Lucid Dreams

▽4 Post Malone – Better Now

☆5 Bad Bunny feat. Drake – MIA 

△6 Marshmello & Bastille – Happier 

▽7 Travis Scott – SICKO MODE 

▽8 Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard

▽9 5 Seconds of Summer – Youngblood 

▽10 Lady Gaga & Bradley Cooper - Shallow

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

曲の個別解説

 

◇94 Young Thug feat. Lil Baby & Gunna – Chanel (Go Get It)

 先週までチャートに入っていたLil Wayne、Lil Baby + Gunnaなどのアルバム内非シングルがHot 100から多く外れ、その「枠」に代わりに入る形で6曲が再登場。

 そのLil Baby + Gunnaが客演している、Young Thugの“Chanel (Go Get It)”、現在日本でかかるCMでも使われている”Thunderclouds”、The Chainsmokersの“This Feeling”などが再登場しています。

 

※その”Thunderclouds"は Top TV Commercials Chart という月間チャートで先月1位だったようです。このチャートは、DL、ストリーミングに加えてShazamされた回数に基づき順位が決まっているようです。Hot 100でトップ40に入っている、または各ジャンルのHot ○○(Hot Country Songsなど)でトップ10入りしている曲は除外されるようです。

 

☆93 Quavo – Huncho Dreams

 Migosのメンバー、Quavoが初のソロアルバムをリリース。9.9万枚「相当」を売り上げ、アルバムチャートの2位に食い込みました。うち純セールスは0.6万枚のみで、ポイントのほとんどをストリーミングから得ています。

 その注目度の高さから、計7曲がHot 100入り。その中で面白かったのはこの“Huncho Dreams”。この曲はNicki Minajの”Barbie Dreams”へのアンサーで、曲中ではNicki Minajに関する話題が多く挙げられています。(なぜか曲終盤にはIggy Azaleaも登場する)

 中でもDrakeの“In My Feelings”をもじった ”Nicki, Do You Love Me? Why You Crying?”という箇所は印象に残ります。

 

☆48 Quavo feat. Drake – Flip the Switch

 上記のQuavoアルバムからは計7曲がHot 100入り。その中で最も順位が高かったのはDrakeとのコラボした“Flip the Switch”で48位。それに次ぐのは先行シングルのWORKIN ME*1が53位に入りました。

 このQuavoのアルバムはApple Musicでの人気が高かったです。(Spotifyでも人気だったが、Apple Musicほどではない)

 

▽45 DJ Khaled feat. Justin Bieber, Quavo & Chance the Rapper – No Brainer

 DJ Khaledの“No Brainer”が今週32位→45位と下降。大きなポイント源だったラジオでの再生数が急激に落ちたことが要因です。(特にポップ系で大きく減っている)

 今後もこの調子でラジオのポイントが落ちていきそうで、それに伴いHot 100の順位もどんどん落ちてしまいそう。現在チャート滞在12週目なのですが、ヒット曲の一般的な滞在週数=20週まで持つか怪しいです。

 

△37 Bebe Rexha – I’m A Mess

 ここ数週トップ40を出たり入ったりしているBebe Rexhaの“I’m A Mess”。主にラジオやYouTubeで人気です。

 ピークは36位とそこまで高くないですが、地道にポイントを重ねており年間チャートにギリギリ滑り込むかもしれません。他にKanye West + Lil Pumpの“I Love It”やElla Maiの”Trip”が年間チャートに入るかどうかの当落線上にいると考えられているようです。(参考:Hot 100 Year-End Predictions (2018) - Year 5 | Pulse Music Board

 

△32 Bazzi feat. Camila Cabello – Beautiful

 BazziとCamila Cabelloの“Beautiful”が32位に浮上。Bazziにとってキャリア2曲目、Camila Cabelloにとって5曲目のトップ40です。

 ラジオのポイントを伸ばしたことや、iTunes割引によってDLが伸びたことがトップ40入りの要因です。

 

△13 Imagine Dragons – Natural

 ここではこれからトップ10に手が届きそうな曲を紹介。まずはImagine Dragonsの“Natural”。ここのところラジオでの好調をキープし、上位に留まっています。あと少しDLが伸びるか、ラジオがさらに伸びればトップ10まで到達するでしょうか。

ちなみに今週、先週の順位・今週の順位・ピーク順位・チャート滞在週数が全て13になりました。

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 次に、DJ Snake、Selena Gomez、Cardi B、Ozunaの“Taki Taki”。この曲はストリーミングなどで好調。今週はビデオリリースによって順位が31位→16位と大きく上向きました。今週アメリカのYouTube再生数で1位に。

 他の候補はSpotifyApple Musicの両方で入るなどストリーミングで好調な“Mo Bamba”や次の項目で説明する”Trip”あたりでしょうか。

 

△11 Ella Mai – Trip

 Ella Maiがデビューアルバムをリリース。ストリーミングを中心に好調で、アルバムチャートの4位にランクイン。純セールスが1.7万、ストリーミングは5万程度、総合セールスが6.9万でした。(シングルDLは明記されていなかったが0.2万程度と思われる*2

 そのアルバム効果で収録曲のストリーミングが上昇。“Trip”が16位→11位、”Boo’d Up”が30位→25位と順位を上げました。

 この2曲以外はHot 100に入りませんでしたが、Chris Brownとの”Whatchamacallit”と、H.E.R.との“Got Feeling”がBubbling Under(101位~125位相当のチャート)に入りました

 

☆5 Bad Bunny feat. Drake – MIA

 Bad BunnyとDrakeの“MIA”が5位で登場。ストリーミングで好調のほか、DLも今週4位と存在感を示しています。

 Bad Bunnyは通算2曲目、Drakeは通算32曲目のトップ10。Drakeは今年だけで12曲目のトップ10を記録していて、1964年のThe Beatlesを越えて1年で史上最多のトップ10を記録した、ということになりました。

 

・Drake、The Beatlesがその該当する年にトップ10入りした曲のリスト 

Drake ピーク トップ10週数 Hot 100滞在 備考
God's Plan 1 26 36 1*11
Diplomatic Immunity 7 1 3  
Look Alive (客演) 5 13 25  
Walk It Talk It (客演) 10 1 22  
Nice For What 1 17 25 1*8
Yes Indeed w/Lil Baby 6 2 23
Nonstop 2 1 16
I'm Upset 7 1 16  
Emotionless 8 1 4  
Don't Matter to Me /ft. Michael Jackson 9 1 5  
In My Feelings 1 14 16 1*10 ☆
MIA w/Bad Bunny 5 1 1  
平均   7.091 17.364  

☆はまだチャートに入っている曲=チャート滞在がまだ伸びる曲

※チャートに入りたての”MIA"は平均に集計していない

 

The Beatles ピーク トップ10週数 Hot 100滞在 備考
I Want to Hold Your Hand 1 12 15 1*7
Please Please Me 3 7 13  
She Loves You 1 11 15 1*2
Can't Buy Me Love 1 6 10 1*5
Twist and Shout 2 7 26  
Do You Want to Know a Secret 2 5 11  
Love Me Do 1 6 14 1*1
P.S. I Love You 10 1 8  
A Hard Day's Night 1 8 13 1*2
I Feel Fine 1 7 11 1*3
She's a Woman 4 2 9  
平均   6.545 13.182  

 

 上記の表を見比べると、Drakeはトップ10に入った週数を含め全体的に滞在が長く、一方The Beatlesはピークの順位が高い傾向があることが分かる。

 それぞれの時代の違いもあって優劣がつけ難いですが、全体的にピークが高い分、The Beatlesが凄そうには感じます。(ちなみに当時はチャート滞在が全体的にかなり短かった) 

 あとDrakeの場合は”Diplomatic Immunity"や”Emotionless"など一部シングルの体を成していない曲があるのも少し気になりますね。

 

 甲乙つけ難いですが、その答えは未来?に分かる気もします。チャート成績上では同等以上のDrakeが「歴史上の人物」になった時、The Beatlesと比べてどのような評価を下されるか?という話です。

 

 また、Drakeがスペイン語に挑戦していることがなんとも印象的な1曲。従来、スペイン語をメインとする歌手でも世界的な成功を狙う場合、英語で歌うことに挑戦するのが定番でしたが、Drakeはその逆をしているということになります。

 昨今はYouTubeを中心にスペイン語曲の隆盛が続いており、今後英語を母語とする歌手でもスペイン語に挑戦するケースが増えるのでしょうか?

 

YouTubeでの再生数が多い 今年リリースされたビデオ

1 Nicky Jam & J Balvin – X 13億2549万 :スペイン語

2 Casper, Nio Garcia…… - Te Bote 13億2250万 :スペイン語

3 Daddy Yankee – Dura 11億3436万 :スペイン語

4 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You 11億3147万 :英語

5 Ozuna & Romeo Santos – El Farsante 10億4762万 :スペイン語

6 Becky G & Natti Natasha – Sin Pijama 10億62万 :スペイン語

7 El Chombo feat. Cutty Ranks – Dame Tu Cosita 8億6084万 :スペイン語

8 Drake – God’s Plan 8億5813万 :英語

9 Reik feat. Ozuna & Wisin – Me Niego 6億8279万 :スペイン語

10 Cardi B, Bad Bunny & J Balvin – I Like It 6億4702万 :英語+スペイン語

 

 YouTubeではラテン曲最強の中、最近“Girls Like You”が今年の英語曲でははじめて10億再生を突破しました。今後”I Like It”のような英語+スペイン語を混ぜた曲がトレンドになる可能性も。(最近の“Taki Taki”もそう)

 

☆2 Kodak Black feat. Offset & Travis Scott – ZEZE

 Kodak Black、Offset、Travis Scottによる“ZEZE”が2位デビュー。Apple Music、Spotifyの両方で首位に立つなど、圧倒的なストリーミングによって上位デビューを果たしました。

 このシングルジャケにはヤシの木が生えた小さな島が描かれていますが、そのイメージに合うようなトロピカルなサウンドが特徴的な曲です。

 このサウンドは既に好評なのか、TygaとSwae Leeによるビートジャック(同じビートに乗せて歌う)も公開されています。(ストリーミングサービスではまだリリースされていない)

 

 この3人全員にとってキャリアハイを更新。ただしOffsetは”ソロ”としてのキャリアハイで、Migosの一員としては1位獲得歴あり(Bad and Boujee)、そしてTravis Scottも来週“SICKO MODE”が1位になる可能性があります。

 USでの大きなヒットを受け、この“ZEZE”は国外でもある程度ヒット。例えば今までUKでは”Wake Up in the Sky”での65位がKodak Blackのキャリアピークでしたが、この“ZEZE”は11位にまで到達しました。

 

 ちなみにZで始まる曲は非常に珍しく、Hot 100史上15曲しか無いそうです。その中で”ZEZE"はZ史上最も順位が高いようです。

 

 

―1 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

 今週も1位をキープした“Girls Like You”。これで5週目の1位。これまでのラジオの好調に加え、Volume 2という若干内容を変えたバージョンのビデオをリリースしたこともプラスに働きました。

 ここ数週でライバルが何曲か登場(”Mona Lisa”、“Lucid Dreams”、”ZEZE”など)したものの、結局は1位を守り続けています。来週はビデオを公開して再び注目を集める“SICKO MODE”と1位を争います。

 その1位を守り続ける原動力となっているのはラジオ。今週ラジオの1位が13週目を迎え、2000年代で最長のラジオ1位に。(今までは”Shape of You”の12週ラジオ1位が最長だった) 全体で最長のラジオ1位は“Iris”の18週ですが、この記録にどこまで迫れるでしょうか。”Girls Like You”のラジオ再生数自体はべらぼうに高い訳ではないですが、ラジオ2位以下と差がかなりあるので、まだまだ彼らのラジオ1位支配は続きそうです。

(おそらく次のラジオ1位は“Happier”。ただしこの曲がラジオ1位になるにはまだ少し時間がかかりそう)

 

※参考 最も長くラジオ1位を記録した曲のリスト

 

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ビルボードのトップ10解説記事より)

 

 

※ちなみにCardi Bは自身通算9週目の1位滞在。先週の時点で女性ラッパーの中で通算1位滞在が最長になっていました。

 

Cardi B=Bodak Yellow(3週1位)+I Like It(1週)+Girls Like You(5週)=9週

Iggy Azalea=Fancy(7週1位)=7週

Lauryn Hill=Doo Wop(2週1位) 

Shawnna=Stand Up(1週1位)

 

※客演も含む “Girls Like You”と”Stand Up”は客演での参加

 

▽× Charlie Puth – The Way I Am

 Charlie Puthのアルバム“Voicenotes”から4番目のシングル、”The Way I Am”が今週チャートから外れました。ピークは61位、チャート滞在は7週でした。

 彼はラジオを得意としており、この曲もラジオで主にポイントを稼いでいましたが、アルバムから4番目のシングルともなると、さすがに息が切れるのも早くなってしまいます。

 

▽× Lil Wayne feat. Travis Scott – Let It Fly

 Lil Wayneの“Let It Fly”が今週チャートから外れました。最初の週は10位と華々しくトップ10デビューしましたが、わずか2週でチャートから外れてしまいました。

 2週前に10位だった曲がチャートから外れてしまうというと、とんでもない転落劇のようにも思えますが、この曲はアルバム内で4番目に人気だった「非シングル」で、アルバムの全体の再生数が落ちてきたことを考えると、致し方無いと思います。

 Lil Wayneは最初の週に4曲をトップ10に送り込みましたが、あれはアルバムアーティストがストリーミングの絶好調によってシングル上位に多くランクインした、という感覚もあり、今後はシングル単位ではそこまで調子をキープできないと思われます。

 Lil Wayneのこのアルバムの収録曲は、アルバム志向が強いApple Musicではまだ上位をキープしていますが、シングル志向の強いSpotifyでは人気が落ちてきています。

 

 

今週チャートから外れた曲 (14曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

98 Lil Baby & Gunna – I Am  (🗻98位 /⏰1週)

97 Lil Baby – Deep End (🗻97位 /⏰1週)

95 twenty one pilots – Nico And The Niners (🗻79位 /⏰2週)

93 Bradley Cooper – Maybe It’s Time (🗻93位 /⏰1週)

91 Lil Wayne – Can’t Be Broken (🗻17位 /⏰2週)

84 Charlie Puth – The Way I Am (🗻61位 /⏰7週)

81 twenty one pilots – My Blood (🗻81位 /⏰1週)

80 Lil Baby & Gunna - Belly (🗻80位 /⏰1週)

79 twenty one pilots - Jumpsuit (🗻50位 /⏰4週)

78 Lil Wayne - Dedicate (🗻14位 /⏰2週)

67 Lil Wayne feat. Travis Scott – Let It Fly (🗻10位 /⏰2週)

63 Lady Gaga – Is That Alright? (🗻63位 /⏰1週)

61 Lil Baby & Gunna – Business Is Business (🗻61位 /⏰1週)

54 Lil Baby & Gunna feat. Lil Durk & NAV – Off White VLONE (🗻54位 /⏰1週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

🎫=チケットとCDを絡めた戦略を展開(CD購入でチケット割引・先行購入など)

👕=アーティストのグッズとCDを絡めた戦略 (シャツにCDがおまけで付くなど)

 

2 Quavo – Quavo Huncho ※

5 Ella Mai – Ella Mai

18 tobyMac – The Elements

31 Usher & Zaytoven – “A”

35 Shy Glizzy – Fully Loaded

46 Elvis Costello & The Imposters – Look Now

61 Polyphia – New Levels New Devils

69 Young The Giant – Mirror Master

72 Atreyu – In Our Wake

79 Kurt Vile – Bottle It In

86 NCT 127 – Regular – Irregular

106 Morgan Evans – Things That We Drink To

109 Jess Glynne – Always In Between

128 Jimmie Allen – Mrecury Lane

141 Tom Morello – The Atlas Underground

162 John Hiatt – The Eclipse Sessions

168 Eric Clapton – Happy Xmas

169 Belly – IMMIGRANT

180 Colter Wall – Songs Of The Plains

 

※Quavoはリリースが微妙に早く、先週のアルバムチャートに入りましたが、本来は今週のチャートで新登場するはずの日程のアルバムなので新登場と見なしました。

 

NCT 127は初のBillboard 200入り。K-Pop史上25枚目のBillboard 200入り、ボーイバンドとしてはBIGBANG、BTS、EXOに次ぐ4組目です。

 

来週以降の動向など

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Future & Juice WRLD – Fine China

 ストリーミングで人気のFuture + Juice WRLDのコラボアルバムから何曲かがHot 100に登場しそう(8曲程度?) 一番人気なのはアルバム数日前にリリースされていた“Fine China”

 

・Lil Yachty feat. Juice WRLD – Yacht Club

 ストリーミングで人気のアルバムその2。このアルバムの1番人気はJuice WRLDが客演のこの曲

 

・Dua Lipa & BLACKPINK – Kiss And Make Up

 Dua LipaとBLACKPINKのコラボがSpotifyなどで好調。BLACKPINKキャリア2曲目のHot 100入りなるか!

 BLACKPINKとLittle MixによるUS国外・人気ガールズグループの座を争いは要注目です。(Little Mixの新曲“Woman Like Me”は今週Hot 100入りを逃しましたが、BLACKPINKは果たして……)

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

*1:先週までW O R K I N MEという表記だったが、アルバムリリースで普通?のWORKIN MEという表記になった

*2:https://kworb.net/cc/ より

Spotifyランキングから「原義に近いJ-Pop」が分かる? 【チャートを様々な角度から】

 

 

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☆チャートを様々な角度から見る試みをする記事です。今回はSpotifyと原義のJ-Popについてです。

 

 現在は「日本産ポップス」のようなニュアンスで使われることの多い「J-Pop」という言葉ですが、元々はどういった意味で使われていたのでしょうか?

 J-Popの原義についてウィキペディア(英語版)で調べてみると、「この言葉は最初、J-Waveが開局直後にピチカート・ファイヴフリッパーズ・ギターなど、洋楽に近いスタイルを持つ日本のミュージシャンのみを指す言葉として作られた」と記されています。他にも、複数の本でも「J-Popは洋楽と肩を並べられる曲を指す言葉として作られた」と複数の書籍で指摘されており*1、J-PopはJ-Waveによって提唱された「洋楽と並べても馴染むような日本産の音楽」というのが、定説のようです。

 この定義、つまり「洋楽が多く並ぶ環境の中で支持される日本産の音楽」が見つかるような環境を、各種チャートを見回っていたら私は見つけました。それはSpotifyの日本ランキングです。

 日本のSpotifyランキングがローンチされてから2年間(2016/10/17~2018/10/16)にトップ10入りした曲、全147曲のうち、日本産の曲はわずか27曲のみで、この27曲こそ、「J-Pop」という原義の意味を果たした「真のJ-Pop」ではないか?という考えが浮かびました。

 今回はそれらの曲をピックアップし、それぞれがどのようにヒットしていったのか、などを考えていくことにします。※データ参照元https://kworb.net/spotify/country/jp_daily_totals.html *2 

 

 ちなみに、直近Spotify日本のランキングのトップ10で 日本の曲:7 洋楽曲:3にも関わらず、洋楽ヒットの方が歴代で圧倒的に多いかというと、「洋楽曲はヒットのサイクルが早く、多くの曲がトップ10まで届く」「Spotifyは初期に邦楽のラインナップが少なく、洋楽人気が圧倒的だった」などが挙げられます。

※ただこの記事を作成した辺りを境に、圧倒的に邦楽が人気に=国内ユーザーにストリーミングが浸透した ので、現在はこの当時と環境がかなり違います。

 

以下がその27曲です!!

 

アーティスト ピーク リリース
DAOKO×米津玄師 打上花火 1 2017 2017
ONE OK ROCK Change 1 2018 2018
菅田将暉 さよならエレジー 1 2018 2018
Mr.Children HANABI 1 2018 2008
DA PUMP U.S.A. 1 2018 2018
サカナクション 新宝島 2 2018 2015
清水翔太 My Boo 3 2018 2016
あいみょん マリーゴールド 3 2018 2018
ONE OK ROCK Wherever you are 4 2018 2010
Superfly 愛をこめて花束を 4 2018 2008
GReeeeN 愛唄 4 2018 2007
Suchmos STAY TUNE 4 2017 2016
椎名林檎 & 宮本浩次 獣ゆく細道 4 2018 2018
[Alexandros] ワタリドリ 5 2018 2015
SEKAI NO OWARI RAIN 5 2018 2017
あいみょん 君はロックを聴かない 5 2018 2017
Mrs. GREEN APPLE 青と夏 5 2018 2018
Mr.Children Tomorrow never knows 5 2018 1994
AAA 恋音と雨空 6 2018 2013
MONGOL800 小さな恋のうた 6 2018 2001
欅坂46 ガラスを割れ! 6 2018 2018
中田ヤスタカ & 米津玄師 NANIMONO 6 2016 2016
MISIA feat. HIDE (GReeeeN ) アイノカタチ 6 2018 2018
Mrs. GREEN APPLE WanteD! WanteD! 7 2017 2017
宇多田ヒカル 花束を君に 7 2018 2016
あっこゴリラ & 向井太一 ゲリラ 7 2018 2017
AI ハッピークリスマス 8 2016 2016

 ※緑背景の曲は、リリース日とピーク日が大きく離れている曲

 

 上記の曲のヒットのパターンは大きく3つに分けられると思います。

 

① 一般的なヒット:リリース日とピーク日が近い

 曲のリリースからあまり時間をかけずにピークに達し、人気を得るという、想定されやすい「一般的なヒット」です。「打上花火」「Change」「さよならエレジー」「U.S.A.」などはこのパターンに当てはまります。

 これらはストリーミングが世間に登場してからヒットした曲なので、今後「ストリーミング期のJ-Pop」として記憶されていくかもしれません。(特に「U.S.A.」はネットでのバズがヒットの要因と言われているので、ストリーミングの象徴のように今後扱われるかも)

 このパターンの曲はリリース直後にピークが来ている場合があります。そのアーティストは「曲のリリース」自体に注目が集まり、熱心なリスナーを持つアーティストに起こりやすい現象です。海外ではこの「リリース時にピーク」の曲が非常に多いです。

 例えば、昨年のアメリカのSpotifyでトップ10入りした曲のうち、半数以上がリリース直後からトップ10圏内で登場していました。(つまり、Spotify内でヒットした曲のうち、半数以上は「リリース時から注目が集まっていた」ということ。アメリカに限っては、次第に世間に浸透して~のようなヒット形式が弱まりつつあります)

 

 

② 外的要因による過去曲ヒット

 CM放送などを受けて曲がヒットするというパターンです。このうち「ゲリラ」と「新宝島」はSpotifyのテレビCMに使われて、放送期間はかなり再生数を伸ばしていました。この2曲は放送期間中、SpotifyだけでなくApple Musicでも再生数を伸ばしていて、かなり音楽を拡散するのに役割を果たしていたようです。

 他に外的要因として挙げられるのはテレビ番組とクリスマスです。テレビ番組でストリーミングへの影響が顕著に見られたのは、今月の最初に放送されたアメトーークの「Mr.Children芸人」です。この放送を期に各ストリーミングではMr.Childrenの楽曲がランキングを急上昇し、Spotifyでは「HANABI」「Tomorrow never knows」の2曲がトップ10に到達しました。

※「HANABI」はMr.Childrenの楽曲がストリーミングで解禁された時もSpotifyのトップ10に入っていたが、アメトーークでピークを更新した。*3

 

 他にも「クリスマス」という時期的な外的イベントによって曲が再浮上するパターンも見られます。ここの表にあるのはリリース時期とピークが近いAIの「ハッピークリスマス」のみですが、この時期限定で再浮上するクリスマス曲も非常に多いです。

 

 ちなみにクリスマス期はSpotifyの再生数規模が膨らむ傾向があり、“All I Want for Christmas Is You”は昨年のクリスマスイブに日本のSpotifyの1日の再生数の記録を当時塗り替えていました。(後に訃報を受けた時のAviciiに抜かされる) 

※ほかイギリスやドイツなどでもこの傾向が見られます。アメリカでは見られません。(アメリカでは有力ラッパーのアルバムリリース時にもっとも再生数の規模が拡大します)

 

③ 「自然発掘」による過去曲ヒット

 これぞストリーミング!もっと言えばSpotifyらしい現象と言いましょうか。「愛をこめて花束を」「愛唄」などがこれに当てはまります。Spotifyや第三者が提供する多種多様なJ-Pop関連のプレイリストによって、リスナーが再び曲の良さに気づき、現在のヒット曲並のストリーミング数を記録する、という現象です。

 これらの多くは今まで少し忘れていた曲がプレイリストという「気づき」によって蘇り、リスナーの間で再び輝きはじめたというパターンが多いと思われますが、もしかしたらこれらのJ-Popを知らないような世代?がプレイリスト経由で新たに過去のJ-Popに触れ、過去の曲を「最近新しく知った曲」と消費している層も一定数いるかもしれません。

 

まとめ

 上記のような方法でJ-Popを探索したところ、最近のヒットに加え過去の曲も現在愛されている、ということが分かりました。多種多様なヒット曲が見つかり、あらゆるフィールドからの「J-Pop中のJ-Pop」を見つけた、とも言えるかもしれません。

 正直、他にも真のJ-Popとは何か?を規定する要因はあると思いますし、真のJ-Pop○曲を選ぶ!等になれば、深い知識や深い議論が必要になるとは思いますが、その一つの方法としてこのような手法を提案してみました。

 このように音楽チャートは見る角度を変えることによって様々な発見が出来るかもしれないので、皆様もぜひチャートを眺めて「何か面白いことは無いかな!?」と楽しんでみてください。

 

おまけ1 惜しかった曲

 

乃木坂46  シンクロニシティ 11
Generations Big City Rodeo 11
上白石萌音  なんでもないや 11
Officila 髭男 イズム  ノーダウト 12
ONE OK ROCK We Are 12
Suchmos 808 12
Mr. Children シーソーゲーム 12
ONE OK ROCK Bombs Away 12
乃木坂46 インフルエンサー 13
The Hotpantz Jingle Mingle Lover 13
清水翔太 Dream 14
家入レオ 君がくれた夏 14
SEKAI NO OWARI イルミネーション 14
清水翔太 君が好き 15
クリス・ハート I Love You 15
あいみょん 愛を伝えたいだとか 15
欅坂46  アンビバレント 15
三代目 J Soul Brothers RAINBOW 15
Suchmos A.G.I.T. 15

 

 トップ10で見られたような傾向が引き継がれています。ここで注目したいのはThe Hotpantzの“Jingle Mingle Lover”です。クリスマスという普段以上にプレイリストに注目が集まる時期に曲が人気を得たことで、普段の曲よりも高い順位をランキングで記録しました。(他複数曲がSpotifyの日本のランキングに登場したことがある)

 The Hotpantzは主に日本語で歌う、ポップスを志す多国籍バンドです。個人的なお気に入りは”Nowhereland” この曲の英語版 [Type B]は台湾のSpotifyランキングに入ったこともあります。

 

 

おまけ2 K-Pop

 

BTS FAKE LOVE 1
BTS DNA 2
TWICE TT (Japanese ver.) 3
TWICE One More Time ※ 3
BTS IDOL 3
BLACKPINK DDU-DU DDU-DU 4
TWICE BDZ ※ 4
TWICE Likey 5
TWICE What is Love? 5
TWICE Candy Pop ※ 5
TWICE Dance The Night Away 8
BTS Best Of Me 9
BTS Anpanman 10

※は日本オリジナルシングル

 

 K-Popはリリース時からいきなり高い順位でランキングに登場する傾向があります。ファンの間での情報収集が盛んであるということを示していると思います。

 

おまけ3 「J-Pop」英語版ウィキペディアに登場する人の描写

 

 最初に言及した「J-Pop」の英語版ウィキペディアがかなり読み物として充実していたので、良かったらこちらもチェックしてみてください!

J-pop - Wikipedia

 

 また上記の表に登場するアーティストで、一部この文中に登場しているアーティストがいたので、その記述を抜き出しました。これらのアーティストはJ-Popの歴史の一部になったアーティスト、といえるかもしれません。

 

Hide of Greeeen openly described their music genre as J-pop. He said, "I also love rock, hip hop and breakbeats, but my field is consistently J-pop. For example, hip hop musicians learn 'the culture of hip hop' when they begin their career. We are not like those musicians and we love the music as sounds very much. Those professional people may say 'What are you doing?' but I think that our musical style is cool after all. The good thing is good."

 

Mitsuhiro Hidaka of AAA from Avex Trax said that J-pop was originally derived from the Eurobeat genre.

 ※Mitsuhiro Hidaka = SKY-HI

 

Although Japanese pop music changed from music based on Japanese pentatonic scale and distortional tetrachord to the more occidental music over time, music that drew from the traditional Japanese singing style remained popular (such as that of Ringo Shiina).

 

Many artists surpassed the two-million-copy mark in the 1990s. Kazumasa Oda's 1991 single "Oh! Yeah!/Love Story wa Totsuzen ni", Chage and Aska's 1991 single "Say Yes" and 1993 single "Yah Yah Yah", Kome Kome Club's 1992 single "Kimi ga Iru Dake de", Mr. Children's 1994 single "Tomorrow Never Knows" and 1996 single "Namonaki Uta", and Globe's 1996 single "Departures" are examples of songs that sold more than 2 million copies.

 

In March 1999, Hikaru Utada released her first Japanese album, First Love, which sold 7.65 million copies, making it the best-selling album in Oricon history.

宇多田ヒカルはほか複数箇所で言及されている

 

In the late 1990s and early 21st century, female singers such as Hikaru Utada, Ayumi Hamasaki, Misia, Mai Kuraki, and Ringo Shiina became chart-toppers who write their own songs or their own lyrics.

 

Electronic music bands such as Plus-Tech Squeeze Box and Capsule were called "Neo Shibuya-kei". Yasutaka Nakata, a member of Capsule, became the song producer for girl group Perfume.

 

*1:例:『ポピュラー音楽の社会経済学』P101・『K-POP 新感覚のメディア』P56 など

*2:このデータはSpotifycharts.comをもとに作られている

*3:日本はテレビ、イベントなどの影響がストリーミングの再生数にもろに出やすい傾向にある(ように思う)

例えば、今年のグラミーではBruno Marsが主要部門を複数受賞しましたが、この週のアメリカ、日本のSpotify(週間)を見比べると、USでは”That's What I Like"の再生が15%伸びたのに対し、日本は47%増加(あと"24K Magic"は57%増加) アメリカで行われているイベントなのに、日本のほうが影響を受けています。考えようによっては、Bruno Mars受賞が日本人にとっては望ましい結果で、アメリカ人にとっては普通?の結果だったということを表しているとも言えるかもしれませんが。 これは音楽の情報が不足していて、代わりに主要メディアが情報源として期待されているから or それ以外に情報源が無い ことが理由なのではないか? という「仮説」が自分の中にあります。 ともかく日本におけるイベントが曲のヒットに与える影響力の比較?は面白いテーマではありそうです

Hot 100 10/20 見どころ 【悲願の初!&4年ぶりのトップ10 + Lady Gagaアルバム・シングル両方で好調】

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 今週はシングル&アルバムともに動きが大きかったです!シングルでは3曲が新たにトップ10入り。アルバムリリースのLil Baby + Gunna、Lady Gaga + Bradley Cooperに加えてMarshmello + Bastilleの”Happier"もトップ10入り!Marshmelloは意外にも初のトップ10入り、Bastilleは4年ぶりのトップ10入りです。

 そしてアルバム1位はLady Gaga + Bradley Cooperによる”A Star Is Born"のサウンドトラック。twenty one pilotsなどとの高いアルバム1位争いを制しました。

 

 

☆今週のHot 100 ショートハイライト

Lady Gaga・Bradley Cooperによるサントラがアルバム1位!“Shallow”はシングル5位に浮上

・Lil Baby & Gunnaのジョイント作がストリーミングで大人気。アルバム4位、Hot 100には計8曲が登場。“Drip Too Hard”は4位に浮上

・Halseyの“Without Me”が18位と高い順位に登場

・twenty one pilotsがアルバム2位

・Marshmello & Bastilleの“Happier”がトップ10に浮上

 

・今週のトップ10

―1 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You 

△2 Juice WRLD – Lucid Dreams

△3 Post Malone – Better Now 

△4 Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard 

△5 Lady Gaga & Bradley Cooper – Shallow 

―6 Travis Scott – SICKO MODE 

△7 5 Seconds of Summer – Youngblood 

△8 Marshmello & Bastille – Happier 

△9 Cardi B, Bad Bunny & J Balvin – I Like It

△10 6ix9ine feat. Nicki Minaj & Murda Beatz - FEFE

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

1~100位までの順位表は↓

 

 

 

曲の個別解説

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

☆81 twenty one pilots – My Blood

 twenty one pilotsが5枚目のアルバム“Trench”をリリース。アルバムチャートではLady Gaga & Bradley Cooperに敗れ1位を獲得できませんでしたが、初週17.5万枚を売り上げ、アルバム1位を獲得した前アルバム”Blurryface”の初週セールスを上回りました。

 アルバムからは3曲がHot 100入り。先行シングルの”Jumpsuit”と“Nico and the Niners”が再登場したほか、現行シングルの”My Blood”が81位に登場しました。

 ストリーミングでも一定の人気があり、ほかのアルバム曲2つがBubbling Under(101位~125位相当のチャート)に入っています

 

◇68 Eric Church – Deperate Man

 Eric Churchが6枚目のアルバム“Desperate Man”をリリース。過去に2回アルバム1位を記録している彼ですが、今週はアルバムチャート争いが熾烈だったこともあり、今回はアルバム5位止まりに。

 アルバムからは表題シングル“Desperate Man”が68位に再登場しています。

 Eric Churchは批評家からの評価が高め。以前2014年にリリースしたアルバム“The Outsiders”は複数の批評サイト(SpinやRolling Stoneなど)の年間ベスト入り。今回のアルバムもPitchforkに7.6点と高く評価されています。(Pitchforkがカントリー歌手を採点すること自体珍しい)

 

◇43 Eminem – Venom

 Eminemの“Venom”がビデオ公開に伴い、43位に再登場。YouTubeで今週3番目の再生数を記録しています。YouTubeの再生数だけでなく、ビデオ公開の効果でダウンロードも上昇しました。(今週DL13位)

 ビデオはいくつか公開しているEminemですが、未だにラジオ用のシングルが選定されておらず、どのシングルもラジオのポイントを得ることが出来ていません。シングルを長持ちさせるためには、ラジオ用のシングルを早く選ぶべきですが、どうするでしょうか。

 

△39 lovelytheband – Broken

 アメリカのインディーポップ・バンドlovelythebandの“Broken”が39位に浮上。自身初のHot 100エントリーでトップ40まで到達しました!

 ヒットの要因はラジオ。元々オルタナティブロック系ラジオで人気の1曲でしたが、その人気がポップ系やアダルトポップ系に飛び火。その複合的な人気によって現在ラジオ総合11位まで浮上しています!アダルトポップ系では今週3位。

 冒頭など曲の各所でかかるサウンドMGMTの“Kids”を彷彿とさせます。

 

☆36 Lady Gaga – I’ll Never Love Again

 今週アルバムチャートを制したLady GagaとBradley Cooperによる“A Star Is Born”のサントラ。収録曲にも注目が集まっており、先行シングル”Shallow”が5位まで浮上したほか、4曲がHot 100に新登場。

 Lady Gagaソロの“I’ll Never Love Again”が36位、”Always Remember Us This Way”が41位、”Is That Alright?” が63位に登場。そしてBradley Cooperソロの ”Maybe It’s Time”も93位に登場。

 今週のダウンロード1位~4位は全てLady Gagaの楽曲です。(Bradley Cooperのソロは今週ダウンロード6位。DL5位はHalseyの“Without Me”)

 

 このアルバムは今週計23.1万枚(相当)を売り上げました。うち16.2万枚が純セールスで、3.7万がストリーミング、3.3万がシングルDLでした。(アルバムチャートは現在この3部門で集計されている) 来週のアルバムチャートでも1位見込みです。

 セールスやシングルDLも高いですが、ストリーミングもなかなか優秀な成績で、女性による非ラップアルバムとしてはかなり高い数字だと思います。

 

※参考 高いストリーミングを記録した女性によるアルバム

 

1 Cardi B – Invasion of Privacy :13.5万枚相当 (2.02億再生)

2 Nicki Minaj – Queen :9.7万枚相当 (1.28億再生)

3 Ariana Grande – Sweetener :9.7万枚相当程度 (1.26億再生)

4 Beyoncé – Lemonade :7.7万枚相当 (1.15億再生)

5 The Carters(Beyoncé + Jay-Z) - Everything Is Love :4.9万枚相当 (不明)

6 Camila Cabello – Camila :3.8万枚相当 (不明)

7 Lady Gaga & Bradley Cooper – A Star Is Born :3.7万枚相当 (不明)

 

ビルボードは再生数だけ出すことや、枚数換算の数字だけ出す場合があり、片方の数字が分からないケースがある。2018年7月以降はストリーミングの計算方法が少し変わったため、ストリーミング数と枚数換算が時期によって微妙に違う

 

※来週のチャートで集計されるElla Maiも4~5万枚相当分のストリーミング数を稼ぐ見込み。(再生数に直すと6000万前後 程度)

 

△35 Panic! At The Disco – High Hopes

 Panic! At The Discoの“High Hopes”が35位まで浮上!2006年の”I Write the Sins Not Tragedies”(7位)、2015年の”Hallelujah”に次ぐキャリア通算3曲目のトップ40です!

 ポップ系~オルタナティブ系などのラジオで好調。ほかDLやストリーミング(主にSpotify)でもなかなかの好成績を出しています。

 この曲はアメリカ以外の国でも好調。オーストラリアでは最高7位、イギリスでは12位、ドイツでは25位まで達しています。

 

☆25 6ix9ine feat. Bobby Shmurda – Stoopid

 6ix9ineの新曲“Stoopid”が25位に登場。客演のBobby Shmurdaは現在獄中のため、電話音声での参加。シングルのジャケにも電話が描かれています。プロデューサーは今最も勢いがあるTay Keith。

 この曲は主にストリーミングで好調。YouTubeでは今週最も高いストリーミング数(1340万)を記録。

 

※Bobby Shmurdaは2014年の“Hot N***a”(6位)、”Bobby Bitch”(92位)に次ぐ3回目のHot 100エントリー

 

☆18 Halsey – Without Me

 Halseyの“Without Me”が18位に登場。かなり好調なスタートを切っています。DLで高い数字を記録しているほか、ストリーミングでも好調。

 ポップ系ラジオで順調に数字を伸ばしており、将来的なトップ10入りに期待を持てそう。同じくbenny blanco・Khalidとの“Eastside”も将来有望。

 

☆15 Lil Baby & Gunna feat. Drake – Never Recover

 Lil BabyとGunnaがジョイントアルバム“Drip Harder”をリリース。純粋なセールスは6000枚のみながらも、ストリーミングでかなりの数字(12.1万枚相当)を記録しアルバムチャートで4位に食い込みました。

 Hot 100には8曲がエントリー。今週4位まで浮上した先行シングル“Drip Too Hard”のほか、Drakeとのコラボ”Never Recover”などが新登場。この曲も”Stoopid”と同じくTay Keithプロデュース。ほか”Close Friends”(今週28位)などが人気。

 

△8 Marshmello & Bastille – Happier

 MarshmelloとBastilleの“Happier”が8位に浮上!Marshmelloはついに初のトップ10到達。Bastilleは”Pompeii”以来4年ぶりのトップ10。

 Marshmelloは昨年終盤あたりから既にストリーミングでは高い人気がありましたが、なかなかHot 100でトップ10入りできず。それらはラジオでの再生数がいまいち伸び切らなかったことが理由として考えられます。今回のシングルではラジオ側がMarshmello人気の向上を認知し、リリース後すぐにラジオでも人気に。ストリーミング人気・ラジオ人気が同じタイミングで上昇することにより、ポイントを効率よく上げて遂にHot 100のトップ10に到達することができました。

 また、Bastilleの効果でMarshmelloが今まであまり縁のなかったオルタナティブロック系ラジオでかかっていることも大きいと思います。

 

△5 Lady Gaga & Bradley Cooper – Shallow

 Lady Gaga+Bradley Cooperの“Shallow”が5位まで到達!Lady Gagaにとっては15曲目、Bradley Cooperにとっては初のトップ10に。

 アルバム(“A Star Is Born”サントラ)のリリースによって注目度が上昇したことがトップ10入りの要因。元々高かったダウンロードやストリーミングの数字が伸びました。

 Spotifyでは特に好調で、現在トップ10まで突入。USのストリーミングではラップ1強状態が続いているので、非ラップによるトップ10入りは大健闘。この勢いが続くでしょうか!

 2016年リリースの“Joanne”からのシングルは苦戦続きでしたが、思わぬ形でLady Gagaが華麗な復活を遂げたといえます。サントラからの1曲なのでそこまでヒットは意識していなかったと思いますが、Lady Gagaの底力みたいなものが響いて人気が出たのでしょうか!この”Shallow”でのLady Gagaの力強いボーカルはたしかに魂のようなものを感じます。

 

△4 Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard

 Lil BabyとGunnaの“Drip Too Hard”が4位にまで浮上!Lil BabyはDrakeとの”Yes Indeed”(=6位)を超えてキャリアピークを更新、Gunnaにとっては初のトップ10入りに。

 人気の要因はほとんどストリーミング。今週Apple Music、Spotifyの両方で1番人気となりました!元からストリーミングで人気がありましたが、アルバムリリースでその人気にさらに高まりました。ストリーミングではアルバムリリースが曲の人気向上に寄与することが多く見られます。

 

 

▽× Lil Wayne feat. Sosamann – What About Me

 先週Hot 100に22曲がエントリーしたLil Wayneでしたが、今週6曲まで減少。先週24位だった“What About Me”のようにトップ40圏内に入っていた曲でも今週チャートから外れてしまいました。

 また、先週はトップ10に4曲が入っていましたが、今週はそれらが全てトップ10圏外に落ちてしまいました。

 2週目で大きく数字を落としてしまったのはアルバムの曲数が多く、人気が分散してしまうこと等が理由でしょうか。このアルバムは「待望のリリース」だったので、最初の週は「ご祝儀」的なストリーミングも一部あったのかもしれません。

 また今週Machine Gun Kellyの“Rap Devil”もチャート圏外に。ピーク13位、チャート滞在は4週。登場時の順位が高くても、シングルとして「人気をキープするためのサポート」を受けないとすぐにチャートを落ちていくケースが近年多発しているので、仮に高い順位で登場したとしても油断は大敵です。

 

 

今週チャートから外れた曲 (19曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Jason Aldean feat. Miranda Lambert – Drowns The Whisky (🗻32位 /⏰16週)

93 Avril Lavigne – Head Above Water (🗻64位 /⏰2週)

90 Lil Wayne feat. Nivea – Dope New Gospel (🗻90\位 /⏰1週)

86 Lil Wayne – Perfect Strangers (🗻86位 /⏰1週)

81 Lil Wanye – Demon (🗻81位 /⏰1週)

79 Machine Gun Kelly – Rap Devil (🗻13位 /⏰4週)

78 Lil Wayne – Used 2 (🗻78位 /⏰1週)

76 Lil Wayne feat. Ashanti & Mack Maine – Start This S**t Off Right (🗻76位 /⏰1週)

75 Lil Wayne – Let It All Work Out (🗻75位 /⏰1週)

74 Lil Wayne – Mess (🗻74位 /⏰1週)

65 Lil Wayne – Took His Time (🗻65位 /⏰1週)

62 Lil Wayne – Open Safe (🗻62位 /⏰1週)

59 Lil Wayne – Hittas (🗻59位 /⏰1週)

57 Lil Wayne – Problems (🗻57位 /⏰1週)

47 Lil Wanye – Open Letter (🗻47位 /⏰1週)

39 Lil Wayne feat. Snoop Dogg – Dope N****z (🗻39位 /⏰1週)

36 Lil Wayne feat. Reginae Carter – Famous (🗻36位 /⏰1週)

26 Lil Wayne feat. Nicki Minaj – Dark Side of the Moon (🗻26位 /⏰1週)

24 Lil Wayne feat. Sosamann – What About Me (🗻24位 /⏰1週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

🎫=チケットとCDを絡めた戦略を展開(CD購入でチケット割引・先行購入など)

👕=アーティストのグッズとCDを絡めた戦略 (シャツにCDがおまけで付くなど)

 

1 Lady Gaga & Bradley Cooper – A Star Is Born (Soundtrack)

2 twenty one pilots – Trench

4 Lil Baby & Gunna – Drip Harder

5 Eric Church – Desperate Man

6 Steve Perry – Traces

7 for KING & COUNTRY – Burn The Ships

13 T.I. – Dime Trap

14 Coheed And Cambria – The Unheavenly Creatures

17 Sheck Wes – Mudboy

29 Ice Nine Kills – The Silver Scream

36 Lany – Malibu Nights

48 Gregory Alan Isakov – Evening Machines

53 Lindsey Buckingham – Solo Anthology: The Best of Lindsey Buckingham

57 Mozzy – Gangland Landlord

59 Matt Nathanson – Sings His Sad Heart

66 Quavo – Quavo Huncho (!?)

70 Dave East & Styles P – Beloved

85 Behemoth – I Loved You At Your Darkest

87 Phora – Love Is Hell

96 Cat Power – Wanderer

127 High On Fire – Electric Messiah

129 Atmosphere – Mi Vida Local

184 GUNSHIP – Dark All Day

 

※Quavoのアルバムがチャートに反映されるのは来週のはずなのですが、ややフライング気味にリリースされ、その短い間にDLやストリーミングを一定数記録して今週にランクインしたということでしょうか。来週アルバムチャート3位前後の見込み

 

来週以降の動向など

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Bad Bunny feat. Drake - MIA

Kodak Black feat. Travis Scott & Offset - ZEZE

 ストリーミング等で高い成績をキープする2曲。いずれも来週のHot 100でトップ10圏内でデビューする可能性あり。

 

・Juice WRLD – Black & White

 ラジオにおけるJuice WRLDのシングルは現在“Lucid Dreams”ですが、今回公開されたビデオは”Black & White”。このビデオ公開にともない、Apple Music・Spotifyの各ストリーミングではこの“Black & White”の再生が上昇中。ビデオ公開によってシングルが決まっているかのような状況です。

 ラジオとストリーミングはヒットのサイクルの早さが違うため、それぞれに合った速度でシングルを切り替えていくのはなかなか賢い戦略だと思います。

 Juice WRLDはFutureとコラボした“Fine China”も近いうちのHot 100入りの可能性あり。

 

BTS – FAKE LOVE

 FAKE LOVEの日本語バージョンが今週リリース。一般的に日本語バージョンは日本向けのシングルなのですが、BTSには世界的に熱心なファンがいることから、「日本語バージョン」であろうが、新曲をダウンロードする使命感を持った人も多く、一時期アメリカのiTunesシングル6位まで浮上していました。

 Hot 100に再登場するほどの規模でもないですが、面白い現象です。

 

BTSの日本オリジナルシングル、“Don’t Leave Me”はおそらく日本語歌詞の曲で最もSpotifyグローバルのチャートで最も高い順位を記録した曲だと思われます。

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

 

ビルボードの報道の傾向:トップ○○「デビュー」の記録強調に関する疑問について

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 先日、Lil Wayneがリリースしたアルバム“The Carter V”がアルバム・シングル両方のチャートで圧倒的な成績を残しました。その時のビルボードの報道の仕方について感じることがあったので、記事にしました。

※ ちょっとマニア向けな記事かもしれません。

 

 

Maroon 5 & Cardi B's 'Girls Like You' Leads Hot 100 for Third Week, Lil Wayne Is First to Debut Two Songs in Top Five

 

Maroon 5とCardi Bによる“Girls Like You”が3週にわたりHo 100をリード、そしてLil Wayneは初めてトップ5に2曲をデビューさせたアーティストとなった」

 

 これは先週(2018/10/13)のHot 100のトップ10の内容を伝える記事のタイトルです。この週のHot 100のトップ10は以下の通りです。

 

―1 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

☆2 Lil Wayne feat. Kendrick Lamar – Mona Lisa

▽3 Juice WRLD – Lucid Dreams

▽4 Post Malone – Better Now

☆5 Lil Wayne feat. XXXTENTACION – Don’t Cry

―6 Travis Scott – SICKO MODE

☆7 Lil Wayne – Uproar

△8 5 Seconds of Summer – Youngblood

▽9 Drake – In My Feelings

☆10 Lil Wanye feat. Travis Scott – Let It Fly

 

※ ―=順位キープ △=上昇 ▽=下降 ☆=新登場

 

 このようなチャートのトップ10に対し、ビルボードは2位と5位に注目。そこに「デビュー」という情報を追加し、「初の記録だ!」としています。

 純粋に「トップ5圏内に複数曲」ならば、歴代にいくつでもある記録(例えば、1位・2位同時支配でも歴代で20回以上ある)なのですが、そこに「デビュー」というオプションを付けることで、「史上初」の記録にすることが可能になります。

 ビルボードはこのような○○デビュー(特にトップ10デビュー)に関する記録を重要視しているように思います。

 例えば、この記事の後半では

Lil Wayne becomes the fifth act to have debuted multiple songs in the Hot 100's top 10 simultaneously, joining Ed Sheeran, Drake, J. Cole and Scott.

 と記述し、「トップ10圏内で複数曲がデビューする」ことが特殊な記録と見立て、この記録への「仲間入り」を果たしたとしています。(ちなみにEminemもこの記録を達成しているので、正式には6人目の記録達成)

 他にもビルボード公式が管理するチャート情報発信アカウント、@Billboardchartsではこの「デビュー」に関する細かい記録を発信しています。

 

 

 

 今回、考えていくのはビルボードが「トップ○○デビュー」を強調すること に関する是非についてです。

 まず、「トップ○○デビュー」(特にトップ10デビュー)とはいかなるものか?ということから説明します。

 

・トップ10デビュー

 「トップ10デビュー」とは、Hot 100の登場初週からトップ10圏内にエントリーするということ。アメリカではラジオを通して曲が人々に浸透していき、次第にヒットする……という流れが習慣化しているので、多くの曲はいきなりトップ10圏内では登場せず、次第にチャートを上昇し、何週かをかけてトップ10までに到達するのですが、一部の「曲のリリースだけで注目を集められる」ような超ビッグなアーティストは、そのリリースへの反応(セールス、最近だとストリーミング)で大きく数字を稼いで、いきなりトップ10デビューをすることが可能なのです。

 この現象は1995年頃からいくつか発生しています。以下が1995年~2018年における、「トップ10デビュー」を果たした曲の数です。

 

 

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 (※2018年は記事執筆時点での数字)

 

 これらは大きく4つの時代に分けることが出来ると思います。

① 1995年~1998年:ラジオCD分離期

② 1999年~2006年:アメリカンアイドル期  

③ 2007年~2015年:ダウンロード期

④ 2016年~2018年:ストリーミング期 

 

① 1995年~1998年:ラジオCD分離期

 ビルボードはHot 100をかつて「シングル」チャートと捉えており、この時期まではCD、マキシシングルなどの形で「シングルカット」された曲のみをHot 100集計の対象としていました。しかし、このようなシングルカットが「アルバムのセールスと共食いになってしまう」と考え出してアーティスト・レーベルが現れ始めました。

 その対策として、「ラジオで多くかかっているのに、CDなどがない」という手段がとられました。このことにより、ラジオで聴いたあの曲を買うにはアルバムを買わなければいけなくなります。この代表例として挙げられるのは、No Doubtの”Don’t Speak”(ラジオ16週制覇)やGoo Goo Dollsの“Iris”(ラジオ18週制覇)などです。

 本来ラジオ+セールスでバランスよくポイントを獲得しないとHot 100上位にはエントリーしませんが、ラジオで人気な曲がCDカットせず、シングルとみなされずHot 100上位に入らないので、代わりにセールスが高い曲が上位にランクインできたのだと思われます。

※セールスはリリース後すぐ伸びる可能性があるが、ラジオは少しずつしか上昇しない(山なりの孤道を描くように上昇する)

 

 このラジオCD分離現象が目立った1995年~1998年において、多くの「トップ10デビュー」が発生しましたが、ビルボードは1998年末にルールを改定。ラジオのみでヒットしている曲もHot 100に入るようにしたのです。これによってしばらく「トップ10デビュー」は減りました。

 

② 1999年~2006年:アメリカンアイドル期  

 ①で述べたルール改定によって、しばらくは「トップ10デビュー」はあまり見られなくなりました。この時期における数少ない「トップ10デビュー」は主にアメリカンアイドルの曲によるものでした。主に2000年代半ばに人気が高かったこの番組は、多くのアメリカ国民の心を掴み、国民的イベントとなりました。その注目度がセールスに昇華され、関連曲は毎週高い順位でデビューしていました。Clay Aiken、Fantasia、Carrie Underwood、Taylor HicksらはHot 100で1位デビューを成し遂げています。

 ただし、この中には息が長く続かない曲も多くありFantasiaの“I Believe”はHot 100の週間1位に立ちながらも、年間チャートに入れなかった歴代唯一の曲という記録を持っています。

 

③ 2007年~2015年:ダウンロード期

 しばらくは見られなかった「トップ10デビュー」でしたが、iTunesなどダウンロード消費の上昇によって再び増加しはじめます。店頭に出向いてCDを購入することに比べると、ダウンロードは圧倒的にラクな上に安いく、購入のハードルが低いのでその時の「熱狂」がすぐに数字に反映されるということが特徴的です。

 2008年~2013年までは、このダウンロード増加にともない毎年10件以上の「トップ10デビュー」が見られました。しかし、2014年に入り、アメリカにおけるダウンロードが落ちてくると一旦はこの「トップ10デビュー」が減少していきました。

(※アメリカにおけるダウンロードのピークは2012年 ソース:U.S. Sales Database - RIAA

 

④ 2016年~2018年:ストリーミング期 

 このダウンロード減を補ったのはストリーミングでした。ダウンロードと同じように、「手軽さ」が持ち味のストリーミングは、リリース直後の「熱狂」をすぐに反映させることが可能で、2016年には多くの曲がストリーミングのポイントを活かして「トップ10デビュー」を成し遂げました。

 ストリーミングでは従来とやや違うテイストのアーティストが評価されることもあり、2016年に今まで1曲もトップ10に入ったことが無かったJ. Coleが“Deja Vu”がいきなり7位でデビューしたことがその象徴のように思います。

 

 現在もこのような傾向が続いていますが、2018年に入ってからはこの現象が加速していきました。それは、「ストリーミングでのアルバム人気」によるものです。現在(特にアメリカで)ストリーミングでは曲をアルバムで聴く傾向が強くなっていて、ストリーム数がアルバムリリース時にピークを迎えることが多いです。(アルバム聴きに関する調査記事の例です:アメリカのSpotifyのみで「1日100万円」を稼いだ?曲たち ~アルバムの時代?~ - チャート・マニア・ラボ (CML)

 そのことにより、アルバムのメインシングルではない、「一般のアルバム曲」ですらHot 100のトップ10デビューを成し遂げることが可能になったのです!2018年は「一般のアルバム曲」または「アルバムアーティストのシングル」が多くトップ10デビューしたことにより、10/13時点で35件と、今までになく多くの「トップ10デビュー」が生まれました。

 

 

ビルボードの「トップ○○デビュー」(多くはトップ10デビュー)報道について

 次いで、このトップ10デビューをビルボードがどのように報じてきたか、について軽く説明します。この○○デビューが目立ち始めた(と個人的に感じた)のは2017年頃からです。

 2017年の1月、Ed Sheeranが“Shape of You”・”Castle on the Hill”が同時にトップ10圏内にデビューします。これは画期的なことで、史上初の「同時複数曲トップ10デビュー」だったのです。一曲を集中的にプロモーションし、狙ったシングルのDLを高めるダウンロード時代の戦略と違い、曲をリリースすればリスナーが自由に選べるストリーミング時代においては、複数曲が注目を集める場合があります。

 この記録は「ストリーミングの申し子」のようなもので、大変興味深い記録だったと思います。

 しかしストリーミングで「アルバム聴き」が一般化し、この「同時複数曲トップ10デビュー」が頻発するようになり、次第に陳腐な記録となっていきます。2018年5月に起こったJ. Coleによる「史上最多の同時3曲トップ10デビュー」は少し面白かったですが、連日ビルボードによって報道される「珍しい複数トップ10デビュー!」のようなものに私は少しずつ疑問を持つようになりました。たしかに、歴代では珍しい記録ですが、最近ではかなり陳腐な記録だからです。

 そして、今週の「Lil Wanyeが史上初のトップ5複数デビュー」でその疑問がかなり大きくなったので今回その件についてまとめようと思ったのです。なぜそこまで「デビュー」の記録にこだわるのか?と感じるのです。

 

 

論点

1 複数の要素を組み合わせすぎたニッチな記録であること

 「Lil Wanyeが史上初のトップ5複数デビュー」 この記録は「史上初」ですが、「デビュー」という言葉を取ってしまうと一気にありふれた記録になります。デビューにこだわらなければ、1位2位同時支配の記録でさえ歴代で20件以上あったので、時期にこだわらない「トップ5に複数曲」はそれ以上に多く存在することが分かります。

 さらには、トップ“5”という概念を使っている点もやや気がかりです。今までデビュー関連はトップ10で情報をまとめて来たのに、いきなりトップ”5”デビューという概念を生み出したのです。「トップ10に4曲デビュー」だと今年Drakeも達成した記録で、史上初にならないので、トップ“5”にしたのだと思われます。

 つまるところ、この記録は「デビュー」と「トップ“5”」というややイレギュラー基準を二つ持ち出して生み出されたニッチな記録というのが私の感想です。トップ“5”の方だけならばまだしも、「デビュー」というここ数年のみに頻発する基準を使って「歴史的記録!」というのは、記録を必死に「作りに行っている」という印象を受けました。

(トップ5だけならばそこまで違和感は覚えません。ただ、デビューと組み合わさると変に感じます。)

 

 この記録が史上初で、今までに見られていないような音楽の聴き方がされているのは事実ですが、記録がニッチに絞られすぎていて「史上初で歴史を作り上げた!」と言われるとオーバーな表現なように感じてしまいます。

 

 

2 アルバム曲その3、4あたりはチャートに残る「体力」が無いことが多い

 2018年に「トップ10デビュー」が増えたのは、「アルバム聴き」が強いことが理由であると説明しました。それによって「非シングル」でもトップ10に入ることができるのですが、「非シングル」はアルバムリリース以降「放置」されてしまうので、アルバムリリースされてから時間が経つと順位をどんどん落としてしまうのです。 

 ストリーミング数はアルバムリリース直後にピークを迎えますが、時間が経つと少しずつ再生数が落ちていきます。それを対策するために人気曲は「シングル」にしてラジオ・ビデオなどを駆使して人気キープに務めます。しかし、何曲もシングル化できないので、アルバムリリース時に複数曲が人気だったとしても、結局長く生き残るのは1~2曲だけということも多いです。

 例えば、先週Lil Wayneの曲が2位、5位、7位、10位でデビューしましたが、今週のチャートでは全てトップ10圏外に落ちてしまいました。このれはかなり下降の具合が激しいケースですが、そうでなくともアルバムの2番人気以降はシングルに選ばれないことも多く、最終的にチャートに残る「体力」が無いケースが多いのです。

(追記:5位デビューの”Don't Cry"は3週の滞在、10位デビューの”Let It Fly"は2週の滞在でチャートを後にした)

 

 そしてビルボードは、チャートを「今後伸びる曲を発見するツール」とみなしているのか、これから落ちていく曲に注目することがあまりありません。

 個人的には曲がチャートを落ちた時、最終的にどのような成績だったのか?ということを振り返るのは大切なことだと思っているのですが、ビルボードがこれをやることはめったにありません。(年間チャートくらい)

 デビュー時は大きく報じられるような高い順位で登場するものの、最終的にはそこまでヒットにならないケースが増えてきているのです。そして、ビルボードはその「最終的にどうだったのか」ということにほとんど注目をしないので、報道上では「その曲はヒットのままで終わった」ということになってしまいます。

 

 このように記録を大いに盛り上げるのは良いですが、それならば「最終的にどうなったのか?」ということをセットで報じる必要性が高いと感じています。

 幸い、年間チャートでは「最終的にどうなったのか?」ということを分かりやすく理解できるので、チャートが乱高下する昨今において、年間チャートの重要性が高まっていると私は感じています。(年間チャートの発表は毎年12月半ばです。 ちなみに今年は週のトップ10に入りながらも、年間チャートに入らない曲が歴代最多になるのでは?と考えています)

 

 他にこの問題を解決する方法として、「チャートのルール改定」も手段として存在します。

 Hot 100の集計においてラジオの比重を上げて、新曲がいきなりトップ10に入りづらくする、という方法です。これならば後に落ちる曲が初週のみトップ10に入る、のようなことが減ると思います。

(この問題を鑑みずとも、近年急落しているDLがHot 100では最重要の項目になっているので、比率を直すことは重要だと思っています。 数字が低いのにも関わらず、最重要視されているので、相対的に少ない労力でチャートを動かすことができる)

 

 

さらなる考察

 

 ビルボードのHot 100集計比率など、チャートに関してはよく練られていると感じることが多いですが、そのせっかくのチャートをうまく報道できていないな、と個人的に感じることが多いです。

 今回記事にした○○デビュー以外にも、重要なチャートの3位よりもマイナーなチャートの1位を優先して報道する点、チャートを上昇する曲「のみ」に注目してチャートを落ちる曲には注目しない点など、ビルボードのチャートの報道の仕方には疑問符が付く部分もあります。

 今回の「トップ○○デビュー」以外にも、ビルボードは頭をフル回転させ、さまざまな制約をつけて意地でも”First”、つまり「史上初」を付けにいこうという姿勢が伺えます。そうやって大きく「盛った」ほうが注目を集めるからだと思います。

 

 私は音楽チャートを信頼し、ビルボードのことをまるで学術機関のように扱っていますが、ビルボードはその前に「金を稼がなくてはいけない企業」でもあるのです。そのことから、記事を通してアクセスを稼ぐ必要があり、記録をうまく盛り上げることは大切なことなのです。注目を集めないことにはチャートが存続しない、という未来もあるのかもしれません。

 

 でもそれはやはり、せっかくのチャートを活かせていないように個人的には感じることもあり、1マニアとしては不満を感じることもあるのです。(私が考えすぎな気もしますが。オタク特有の早口……)

 その熱量を記事執筆等に変換し、私はこれからも「チャートはこう見ると良いですよ!」のような活動を地道に続けていきたいと思います。

 音楽チャートはどれも複雑で難しいなと思うこともあるのですが、それが逆に面白さに繋がっている部分もあるとも思います。このブログ等での発信を通じて、何かのきっかけになれば幸いです。

 

 

・おまけ 今年ビルボードTwitterで「歴史的」と称した出来事一覧

 

 ビルボードTwitterで何を「歴史的」と称したかを調査しました。ビルボードのツイートで”History”の入ったツイートを抜き出し、そのうちチャート関連の物を取り上げました。

 Drakeのアルバム関連の記録が入っていないなど、全部の記録をHistoryと称している訳ではないようですが、この“History”として取り上げているものを見ることで、ビルボードは何を報道したがるのか?ということが垣間見えるように思います。

 

 

・Lil Wayne 史上初のトップ5に2曲デビュー (2回配信)

Carrie Underwood女性カントリー歌手として最多のアルバム1位

・Drake 同じ年における累計1位週数を更新 (29週)

Eaglesの“Their Greatest Hits 1971-1975”が史上最も売れたアルバムに

・Meant To BeがHot Country Songsでの1位滞在が歴代最長に (2回配信)

・Meant To BeがHot Country Songsでの1位滞在が歴代最長タイに

・Camila Cabelloが史上初めてデビューアルバム最初の2シングルでPop & Adult Pop系ラジオを制する

・BLACKPINKが韓国語で歌うガールズグループとしては初のHot 100

・Florida Georgia Lineが史上初めてHot Country Songsのトップ10に3曲エントリー 

Kanye Westが歴代最長タイの8連続アルバム1位 (後にEminemに抜かれる)

・Imagine Dragonsが史上初めてアルバムから3曲がAlt、HAC系統のラジオ両方を制す 

・Meant To BeがHot Country Songsでの1位滞在がデュオで歴代最長に(2回配信)

・Imagine Dragonsの曲が4曲1年以上Hot 100に滞在=史上最多

・J. Coleが史上初めてトップ10圏内に3曲が「デビュー」する

BTS・EXO・NCTがSocial 50トップ3支配。K-Popがトップ3を支配するのは史上初

BTS・EXO・Wanna One・Got 7 4組がSocial50のトップ10に入る (3回配信)

・Bruno MarsがUsherを抜いて男性としてラジオ最多1位を記録 (2回配信)

・MigosがHot 100に14曲同時エントリー グループとして史上最多タイ

・Cardi B、最初のHot 100エントリー3曲が全てトップ10入り (ラッパーとして初)

 

 

Hot 100 10/13 見どころ 【Lil Wayne、圧倒的なアルバム1位・シングルに選ばれた曲は?】

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  Lil Wayneが圧倒的な成績でアルバムチャートを制覇!歴代で2番目に多いストリーミング数=4億3300万再生 を記録。Hot 100にも22曲が登場しました。

  その中でシングルに選ばれるたのは"Uproar" ↑の画像はLil Wayneと、そのUproarでプロデューサーをつとめるSwizz Beatz。 (2人がコラボした"Pistol On My Side"のビデオより)

 

☆今週のHot 100 ショートハイライト

・Lil Wayneがアルバム1位。ストリーミングでは歴代2位の再生数=4億3300万を記録

・そのアルバムから“I Love You Dwayne”を以外の全22曲がHot 100入り。”Mona Lisa”は2位に登場

・大量エントリーの裏で、多くの曲がチャートから外れました。Drakeの“God’s Plan”や”Nice For What”、超ロングヒットの“Perfect”など。The Cartersの”Ape**t”やNicki Minajの“Barbie Dreams”は不完全燃焼(チャート滞在が20週未満)でチャートから去る

 

・今週のトップ10

―1 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

☆2 Lil Wayne feat. Kendrick Lamar – Mona Lisa 

▽3 Juice WRLD – Lucid Dreams

▽4 Post Malone – Better Now

☆5 Lil Wayne feat. XXXTENTACION – Don’t Cry 

―6 Travis Scott – SICKO MODE

☆7 Lil Wayne – Uproar 

△8 5 Seconds of Summer – Youngblood 

▽9 Drake – In My Feelings

☆10 Lil Wayne feat. Travis Scott – Let It Fly 

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

曲の個別解説

☆=新登場 ◇=再登場 △=上昇 ▽=下降 

 

◇99 Shawn Mendes & Zedd – Lost In Japan

 Shawn Mendesの新シングル“Lost In Japan”が99位で再登場。シングル化に伴い、Zeddと連名のシングルになりました。

 二人ともポップ系のラジオでの人気が高く、今後ラジオでの上昇に期待が持てます。

 

☆56 Kodak Black – If I’m Lyin, I’m Flyin

 Kodak Blackの久々のシングル“If I’m Lyin, I’m Flyin”が56位で登場。8月の出所後、初の自身のシングルです(客演としては2週間前にGucci Mane、Bruno Marsとの”Wake Up in the Sky”をリリース) 各種ストリーミングで人気を集めています。

 この曲は1974年にリリースされたPonter Sistersの“Easy Days”という曲をサンプリングしています。

 

☆36 Lil Wayne feat. Reginae Carter – Famous

 今週Lil Wayneがアルバム1位に輝きました!48万枚相当という圧倒的な数字でのアルバム1位です。(Drake、Travis Scottに次いで今年3番目に高い数字)48万枚のうち、純セールスは14.1万、ストリーミングは32.5万、シングルDLは1.4万でした。(現行アルバムチャートはこの3つの指標を合算して「実質売り上げ」として計上されている)

 このアルバムは初週だけで4億3300万再生を記録!Drakeの“Scorpion”の7億4590万再生に次いで、歴代で2番目に高いストリーミング数を記録しています。23曲と収録曲が多かったことも、ストリーミング数の高さに寄与していると思われます。

 5年越しのリリースということで、5年分の期待感がリリースで一気に爆発した、ということでしょうか。

 そのストリーミングの人気が反映される形で、 “I Love You Dwayne”を除く全22曲がHot 100に登場。

  

No. 2, "Mona Lisa," feat. Kendrick Lamar

No. 5, "Don't Cry," feat. XXXTentacion

No. 7, "Uproar"

No. 10, "Let It Fly," feat. Travis Scott

No. 14, "Dedicate"

No. 17, "Can't Be Broken"

No. 24, "What About Me," feat. Sosamann

No. 26, "Dark Side of the Moon," feat. Nicki Minaj

No. 36, "Famous," feat. Reginae Carter

No. 39, "Dope N****z," feat. Snoop Dogg

No. 47, "Open Letter"

No. 57, "Problems"

No. 59, "Hittas"

No. 62, "Open Safe"

No. 65, "Took His Time"

No. 74, "Mess"

No. 75, "Let It All Work Out"

No. 76, "Start This S**t Off Right," feat. Ashanti & Mack Maine

No. 78, "Used 2"

No. 81, "Demon"

No. 86, "Perfect Strangers"

No. 90, "Dope New Gospel," featuring Nivea

 

 一部懐かしいアクトが客演に。Ashantiは2009年以来の、Niveaは2005年以来のHot 100入りになりました。

 また“Famous”で登場するReginae CarterはLil Wayneの娘です。そのReginae Carter、そして”What About Me”で客演を務めるSosamannは初のHot 100入りです。

 

☆28 Lady Gaga & Bradley Cooper – Shallow

 Lady GagaとBradley Cooperが組んだ“Shallow”が28位で登場。高いDLを記録しています。来週のチャートではアルバムのリリースが反映され、ストリーミングの指数が伸びる見込み。DLも高い数値をキープしていることから、トップ10入りの可能性があります。

 この曲はミュージカル映画“A Star Is Born”のサウンドトラックからの1曲。このサウンドトラックは来週のアルバムチャート1位が有力視されています。(ライバルはTwenty One PilotsやLil Baby + Gunna)

 

☆27 DJ Snake feat. Selena Gomez, Ozuna & Cardi B – Taki Taki

 DJ SnakeがSelena Gomez、Ozuna、Cardi Bを迎えて制作したラテン風の1曲、“Taki Taki”が27位で登場。ストリーミングで人気を集めているようです。Ozunaだけでなく、Selena Gomez(父親がメキシコ系)、Cardi B(父親がドミニカ人)もラテンのルーツを持っています。

 Ozunaは“Te Boté”を超えて自己最高位を更新しています。

 

 Ozunaのヴァースで”Booty explota como Nagasaki”、つまり「長崎のように爆発するケツ」という歌詞があります。日本人目線ではかなりビックリする、なんとも悲しくなるフレーズですが、あまり海外のサイト・日本のサイトの両方でこの歌詞について取り上げられている様子がありません。

 次のヴァースでは” Prende los motores Kawasaki”=カワサキのようにエンジンをつける と再び日本語の名詞が登場。ラップでは定番の「バイクのカワサキ」を指しています。

 最近の曲では他にもLil Skiesの“Red Roses”、Tygaの”SWISH”などでこの「バイクのカワサキ」が歌詞に登場します。

 

△13 Marshmello & Bastille – Happier

 Lil Wayneのアルバム曲大量登場の影響で、既存の曲がほとんど順位を落とす中、ラジオで好調をキープする2曲、“Happier”(15位→13位)、”Youngblood”(10位→8位)だけは順位を上げました。(ほか”Girls Like You”、“SICKO MODE”、”Drip Too Hard”の3曲は先週の順位をキープ。それ以外の曲は全て順位を落としています)

 ラジオの伸び幅が大きく、さらにそれに伴いDLも上昇中の“Happier”は近いうちのトップ10入りが有望です。

 トップ40ヒットを5曲も量産しているMarshmelloですが、トップ10は意外とまだ経験なしです。 Bastilleは2014年に”Pompeii”が5位まで到達していました。

 

☆7 Lil Wayne – Uproar

 アルバム曲が22曲もHot 100に登場し、さらにうち4曲はトップ10入り。10位にTravis Scottとの“Let It Fly”、7位に”Uproar”、5位にXXXTENTACIONとの“Don’t Cry”、そして2位に”Mona Lisa”がランクイン。

 今週一番順位が高いのは“Mona Lisa”なのですが、今後注目を集めそうなのは7位の”Uproar”です。

 今後ラジオでかかる「シングル」はこの“Uproar”のようです。既に今週Hip-Hop / R&B系ラジオチャートの30位に登場しています。一部では”Uproar Challenge”なるものもあるようで、ヒットに寄与するかもしれません。

 現在Instagramにおける #Uproarchallengeの投稿数は15,200件、#Uproarの投稿数は31,900件です。チャレンジのルールは、Lil Wayneの出だしのフレーズに合わせて体をクネクネすること、みたいです。

 

 

 

☆2 Lil Wayne feat. Kendrick Lamar – Mona Lisa

 Lil Wayneのアルバム曲の中で最も高い順位で登場したのはKendrick Lamarとの“Mona Lisa”。圧倒的なストリーミングに加え、DLも一定の数字を記録し高い順位での登場となりました。ここ数週Hot 100のトップ10の指数がデフレ気味なことも密かな要因です。

 今回のアルバムの大ヒットで、Lil Wayneはキャリア通算トップ10曲数を24まで伸ばしました。Kendrick Lamarはキャリア通算8曲目のトップ10。

 

※Lil Wayneの連続年間チャート入りについて

 Lil Wayneは2005年に で年間チャートトップ100に入って以降そこから13年連続で何らかの曲を年間チャートに送り込み続けています。

 今年はまだ年間チャートに入りそうな曲が無いので、この“The Carter V”の曲が何かしら年間チャートに滑り込むことに期待がかかります!

しかし、今年の年間チャートの集計が残り7週(今週も含めて)と短いので、今後ポイントを高くキープしないと、年間チャートへの滑り込みは厳しいかもしれないです。

 

※年間チャートに入ったLil Wayneの曲 

1999 Back That Azz Up(Juvenile

2005 Soldier(Destiny’s Child

2006 Gimme That(Chris Brown

2007 You(Lloyd)・Make It Rain(Fat Joe

2008 Lollipop・Got Money・A Milli・Can’t Beleve It(T-Pain)・Sweetest Girl(Wyclef Jean)・Let It Rock(Kevin Rudolf)・My Life(The Game)・Mrs. Officer

2009 Down(Jay Sean)・Let It Rock(Kevin Rudolf)・Turnin Me On(Keri Hilson)・Forever(Drake)

2010 Down(Jay Sean)・Forever(Drake)・I Made It(Kevin Rudolf)・Right Above It

2011 Look at Me Now (Chris Brown)・How To Love・6 Foot 7 Foot・I’m on One(DJ Khaled)・Motivation(Kelly Rowland)・She Will

2012 The Motto(Drake)

2013 Love Me

2014 Loyal(Chris Brown)・Believe Me

2015 Only(Nicki Minaj)・Truffle Butter(Nicki Minaj)

2016 Sucker For Pain

2017 I’m the One(DJ Khaled)

 

()内はメインのアーティストを表す=Lil Wayneは客演だった曲。()が無い曲はLil Wayneがメインの曲

※ 複数の年で登場している曲は、年をまたがってヒットした曲です

 

▽× The Carters – Apes**t

 Lil Wayneのアルバム曲が大量に登場した煽りを受け、代わりに多くの曲が今週Hot 100を去りました。

 まずはThe Cartersの“Apes**t”リリース時はストリーミングで注目を集め13位までジャンプアップし注目を集めましたが、次第に失速。15週という短い滞在の末、チャート圏外へ落ちてしまいました。年間チャートに入るのはやや厳しそうです。

 アルバムチャートでも1位を取り逃し、シングルも不完全燃焼に終わってしまい、夫婦ジョイント作はセールスの面では微妙な成績に終わりました。

 

 

▽× Juice WRLD – All Girls Are the Same

 Juice WRLDの“All Girls Are the Same”が今週チャートから外れました。ピークは41位、チャート滞在は20週という成績でした。

 “Lucid Dreams”の影に隠れる形で、ラジオではほぼかかりませんでしたが、チャート入りから最後までほぼストリーミングのみでポイントを稼ぎ、チャートを「完走」しました。

 ラジオを使わずとも、ストリーミング内のプレイリストの選曲などによって「シングル」が次第に定まり、人気が集まっていくというストリーミング時代特有の形でのヒットでした。運が良ければ年間チャートのトップ100にも入れるかもしれないです!

 

※「完走」=Hot 100にはヒットした曲は21週目以降、51位以下に落ちるとチャートから外れるというルールがあります。20週以上チャートに滞在し、このルールでチャートから外れるとヒットした感覚が付くため、チャートに20週残ることを「完走」と言うことが多いです。(逆にチャート滞在が20週未満だと短命の曲だったことになる)

 

▽× Nicki Minaj – Barbie Dreams

 Nicki Minajの“Barbie Dreams”が今週チャート圏外に。ピークは18位、チャート滞在はわずか7週でした。

 アルバムリリースのタイミングで注目を集めた時は18位に付けていたのですが、早くに失速。その後ビデオ公開で少し持ち直すものの、再び下降線をたどりました。アルバムへの注目度が無くなってからはApple MusicやSpotify(いわゆるオンデマンド・ストリーミング)などでの再生数が一気に減ってしまったことが痛かったです。

 Nicki Minajは今年、2週目のTravis Scottに負けてアルバム1位を取れず、アルバムからのシングルも不発に終わってしまいました。一方、“FEFE”や”MotorSport”など、客演では存在感を発揮しています。

 

▽× Drake – Nice For What

 Drakeの曲が今週2曲チャートから外れています。先週45位だった“God’s Plan”、39位だった”Nice For What”が外れました。

 先週39位だった“Nice For What”はやや不運と言えるかもしれません。Lil Wayneに押し出される形で25週と少し短めの滞在でチャートから外れました。Lil Wayneの「押し出し」がなければあと数週はチャートに残りそうでした。

 “Nice For What”は1位に8週間も滞在していたので、大ヒットだったと言えますが、その1位が「デフレ」の期間での1位だったことや、チャート滞在が短かったこともあって、年間チャートのトップ10入りに入るかは微妙です。

 

※現時点での年間チャート予想

 “God’s Plan”・”Perfect”・“Meant to Be”・”Havana”・“rockstar”・”Psycho”・”I Like It”・“In My Feelings” までは年間チャートトップ10入りほぼ確定。

 残りの2枠を“The Middle”・Nice For What”・”Girls Like You”・“Lucid Dreams”辺りが争っている印象です。

 

▽× Ed Sheeran – Perfect

 驚異的なロングヒットだったEd Sheeranの“Perfect”が今週チャートから外れました。ピークは1位で、チャート滞在は57週でした。

 2015年の末から、Hot 100には「53週目以降、26位以下に落ちるとチャートから外れる」というロングヒットを制限するルールが制定されました。そのルールによって53週以上チャートに残ることが非常に困難になりましたが、この“Perfect”はその壁を乗り越えて滞在57週まで到達していました。

 

 このルールが出来てから、チャート滞在53週を超えた曲は”Uptown Funk”(56週)、”Shape of You”(59週)、“Perfect”(57週)の3曲だけです。 いずれも幅広い系統のラジオでかかり、長く愛されてきた曲たちです。

 

 

今週チャートから外れた曲 (26曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Ozuna & Manuel Turizo – Vaina Loca (🗻94位 /⏰2週)

99 Clean Bandit feat. Demi Lovato – Solo (🗻58位 /⏰13週)

98 Wiz Khalifa feat. Swae Lee – Hopeless Romantic (🗻72位 /⏰7週)

97 The Carters – Apes**t (🗻13位 /⏰15週)

96 Maren Morris – Rich (🗻96位 /⏰1週)

95 Eminem – The Ringer (🗻8位 /⏰4週)

94 Eric Church – Desperate Man (🗻71位 /⏰9週)

93 Kygo feat. Miguel – Remind Me To Forget (🗻63位 /⏰11週)

92 Pardison Fontaine feat. Cardi B – Backin’ It Up (🗻92位 /⏰1週)

91 Khalid, Ty Dolla $ign & 6LACK – OTW (🗻57位 /⏰18週)

90 Mac Miller – Self Care (🗻33位 /⏰3週)

89 Juice WRLD – Lean Wit Me (🗻68位 /⏰8週)

88 6ix9ine feat. Anuel AA – BEBE (🗻30位 /⏰4週)

87 Travis Scott – Stargazing (🗻8位 /⏰8週)

84 Travis Scott – Yosemite (🗻25位 /⏰8週)

83 Lil Mosey – Noticed (🗻83位 /⏰2週)

79 Dylan Scott – Hooked  (🗻48位 /⏰11週)

78 Thomas Rhett – Life Changes (🗻36位 /⏰14週)

74 The Chainsmokers feat. Kelsea Ballerini – This Feeling (🗻74位 /⏰1週)

73 Eminem – Fall (🗻12位 /⏰4週)

72 Juice WRLD – All Girls Are The Same (🗻41位 /20週)

71 Labrinth, Sia & Diplo (LSD) – Thunderclouds (🗻67位 /⏰4週)

70 Nicki Minaj – Barbie Dreams (🗻18位 /⏰7週)

45 Drake – God’s Plan (🗻1位 /36週)

39 Drake – Nice For What (🗻1位 /25週)

21 Ed Sheeran - Perfect (🗻1位 /57週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

🎫=チケットとCDを絡めた戦略を展開(CD購入でチケット割引・先行購入など)

👕=アーティストのグッズと音源を絡めた戦略 (シャツに音源がおまけで付くなど)

 

1 Lil Wayne – The Carter V

2 Logic – YSIV 👕

3 Cher – Dancing Queen 🎫

4 Kevin Gates – Luca Brasi 3

9 Tom Petty – An American Treasure

25 Elevation Worship – Hallelujah Here Below

38 alt-J – Reduxer

40 Bearthooth – Disease

62 Rod Stewart – Blood Red Roses

65 Aretha Franklin – The Atlantic Singles Collection 1967-1970

78 Loretta Lynn – Wouldn’t It Be Great

89 Palaye Royale – Boom Boom Room: Side B

107 Soundtrack – Rick And Morty

120 Cypress Hill – Elephants On Acid

191 SOB X RBE – Gangin Ⅱ

 

 Logicは以前"44 More"で「Katy PerryHarry Stylesのアルバム売上を超えた」(昨年のアルバム”Everybody”で超えた)と高らかに宣言していましたが、今回のアルバムはその2人の売上を下回りました。Lil Wayneというストリーミングでの強力なライバルがいたことも影響していますかね。

 

来週以降の動向など

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・XXXTENTACION – Moonlight

 XXXTENTACIONの現行シングル“Moonlight”。シングル化によってラジオでかかり始めたことや、ビデオ公開などによって再浮上中。来週以降にHot 100に復帰する可能性もありそうです。既にヒットした曲なので、チャートに戻るには50位以上にランクインする必要があります。

 

 

・Lil Baby, Gunna & Drake – Never Recover

 ストリーミングで人気を集めたLil Baby・Gunnaのジョイント作。アルバムから複数曲がHot 100に登場しそうです。先行シングルの“Drip Too Hard”も順位を上げそうです。(トップ10入りの可能性も)

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

あと最近「おすすめ記事リスト」を更新したので、そちらも宜しければ……