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音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 6/1 見どころ 【Tyler, the CreatorアルバムからHot 100に8曲登場】

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 今週は5/27の戦没将兵追悼記念日(祝日)によってチャートの発表が一日遅かったです。そしてどういうわけか、アルバムチャートはまだ発表されていません(1位2位だけ、他の媒体によって“仮”発表されています) 

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Tyler, the Creatorがアルバム1位(見込み)。Hot 100には8曲が登場、”EARFQUAKE”が最高位=13位

・DJ Khaledがアルバム2位(見込み)、7曲がHot 100入り

・Sweet but Psychoがトップ10に浮上

・Halseyの“Nightmare”が15位に登場

・“Baby Shark”、”thank u, next”、”Drip Too Hard”などが外れる

 

・今週のトップ10

      6月1日   R D S
- 1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road 🚩 3 1 1
- 2 Ed Sheeran & Justin Bieber I Don't Care  10 3 5
3 Billie Eilish bad guy 35 9 2
  4 Jonas Brothers Sucker  1 10 24
5 Khalid Talk 5 17 8
  6 Post Malone Wow. 6 20 7
  7 Post Malone & Swae Lee Sunflower  15 21 4
  8 Sam Smith & Normani Dancing With A Stranger 2 28 32
  9 Taylor Swift feat. Brendon Urie ME!  7 7 18
10 Ava Max Sweet but Psycho 4 22 39

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

 

🍎も✅も今週13位の“EARFQUAKE”です。Spotifyでは原曲とリミックスを合わせると“Old Town Road”のほうの再生数が多いですが、Apple Musicでは違うと思います。*1(こちらでは原曲の方の勢いがかなり落ちている、リミックスも5位くらい)

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆86 Lady Antebellum – What If I Never Get Over You

 Lady Antebellumの新曲が86位に登場。今週ダウンロードが5位だったほか、カントリー系ラジオでのオンエア(この系統で今週35位)が有効に働きリリース週からHot 100に入りました。ストリーミングのポイントは低いです。

 カントリー曲はラジオが伸びてきたタイミングでHot 100に入るケースが多いので、リリース時にHot 100入りするのは少し珍しいです。

 

☆43 DJ Khaled feat. SZA – Just Us

 ストリーミングで人気を集め、アルバムチャート2位に入る見込み*2DJ Khaled。強力な客演を擁するこのアルバムでは複数の曲がシングル候補として名乗りあげています。

 そのうち現状ラジオで最もオンエアされているのはSZAが客演した“Just Us”のようです。この曲は2001年にHot 100首位まで到達したOutkastの”Ms. Jackson”をサンプリングしています。

 

・ラジオのオンエア / ビデオのリリースがあったシングル候補たち

ラジオシングル =Just Us、Higher、You Stay、Wish Wish *3

ビデオ =Higher、Just Us、Celebrate、Jealous、Holy Mountain、You Stay、Wish Wish、Weather the Storm

 

△38 Lizzo – Truth Hurts

 Lizzoの“Truth Hurts”がストリーミングで好調をキープし38位へ浮上。トップ40圏内に突入しました。

 このストリーミングでの好調から、ポップ系ラジオのシングルとして少しずつオンエアが始まっています。代わりに元々シングルだった“Juice”の再生数は落ち始めています。(今週Hot 100からも外れてしまった)

 

☆19 DJ Khaled feat. Cardi B & 21 Savage – Wish Wish

 DJ Khaledのアルバムからは7曲がHot 100入り。その中で最も順位が高かったのはCardi B、21 Savageが参加した“Wish Wish”でした。この曲のプロデューサーは昨年大活躍だったTay Keith。

 

19位:Wish Wish (Cardi B、21 Savage)

21位:Higher (Nipsey Hussle、John Legend

43位:Just Us (SZA)

44位:You Stay (Meek Mill、J Balvin、Lil Baby、Jeremih)

52位:Celebrate (Travis Scott、Post Malone)

57位:Jealous (Chris Brown、Lil Wayne、Big Sean) ←これもTay Keith

91位:Weather the Storm (Meek Mill、Lil Baby)

 

 これらの曲は主にストリーミングから人気を得ていますが、“Wish Wish”と”Higher”の2曲はダウンロードでも上位に入っています。また一部ラジオでのオンエアが始まっている曲もあります。

 このアルバムでは多くのシングルがそれぞれ人気を得ており、媒体によっての人気曲がそれぞれ違います。アルバムが最も人気なのはApple Musicです。

Apple Musicでは4曲程度がトップ10に入っていたが、Spotifyでは最高位の“Just Us”でも35位)

 

Apple Musicで最も人気:Wish Wish

YouTube:Higher

Spotify:Just Us

 

 2016年の“Major Key”、2017年の”Grateful“と2作連続でアルバム1位を獲得していたDJ Khaledでしたが今作ではアルバムチャート2位スタートに。ただしアルバムからのHot 100エントリー数は増えています(2016年:3曲、2017年:6曲、2019年:7曲)

 また目立った新リリースの無い来週のアルバムチャートで1位に立つ可能性も残っています。(Tyler, the CreatorやBillie Eilishが他の1位候補)

 

☆15 Halsey – Nightmare

 Halseyの“Nightmare”が15位に登場。最初の週からラジオ、DL、ストリーミングの3つを満遍なく稼いで上位に登場しました。”Without Me”(=18位デビュー)以上に快調な出だしです。

 前シングルよりも激しいロックな曲調ですが問題なくヒット。Spotifyで10位、YouTubeで11位とストリーミングで高順位を記録したほか、ポップ系ラジオでも好調です。

 

※Halseyはキャリア黎明期、ポップ系ラジオよりもオルタナティブロック系ラジオでよくオンエアされていた。

 

☆13 Tyler, the Creator – EARFQUAKE

 Tyler, the Creatorがキャリア初のアルバム1位を獲得!ストリーミングで好調だっただけではなく、セールスも今週1位の数字を記録している模様です。*4

 

 彼はこれまで自身の曲でのHot 100エントリーが”Who Dat Boy”=87位、”OKRA”=89位の2曲のみで、それぞれピークも低く滞在は1週のみでしたが、今回のアルバムで大きく注目を集め“EARFQUAKE”は今までよりも格段に高い13位に登場しています。

 シングルとしてリリースされた曲よりもアルバム内の曲の順位が高く、ストリーミングにおける「アルバム」というプラットフォームの強さを感じます。

  アルバムからは合計で8曲がHot 100に登場。Feat.の表記は無いものの、それぞれのシングルに複数ボーカリストが参加しています。

 

13位:EARFQUAKE (+ Playboi Carti)

51位:I THINK (+ Solange

65位:RUNNING OUT OF TIME

67位:IGOR’S THEME (+ Lil Uzi Vert)

70位:NEW MAGIC WIND

74位:A BOY IS GUN

85位:WHAT’S GOOD (+ Slowthai)

88位:PUPPET (+ Kanye West

 

 ビルボードは通常の表記をしていますが、アルバム内では上記のように全て大文字の表記になっています。ビルボードは大文字/小文字の細かい表記を再現しませんが、”&”の代わりに”+”や”X”の表記をしている物は再現することがあります。

 “WHAT’S GOOD”に参加しているSlowthaiはイギリスのラッパーです。彼は “IGOR”と同じタイミングでアルバムをリリースし、イギリスで今週アルバム9位に入りました。

 また山下達郎の“Fragile”が挿入された”GONE, GONE / THANK YOU”は惜しくもHot 100に登場しませんでした。

 

☆Tyler, the Creatorとアルバムチャート

 今週のアルバムチャートはまだ実はビルボードから正式に発表されていません。他の媒体による数字からして、Tyler, the Creatorの1位は確実だと思われますが、一応正式発表まで様子を見ておきたいです。

 Tyler, the Creatorは前回の“Flower Boy”の時もアルバムチャートで一悶着ありました。その時に問題となったのはJay-Zが立ち上げたストリーミングサービス、TidalでのMeek Millのアルバム「フリー解放」です。

 その週、Lana Del Rey、Tyler, the Creator、Meek Millの3名でアルバム1位の座を僅差で争っていました。

 そこでJay-Zは自らが管理するプラットフォームでフリーのリリースをすることによってストリーミング数を稼いで、自らのレーベルに所属するMeek Millのアルバム1位をサポートしようと考えました。

 Tyler, the Creatorはこれに対しての不満ともとれるツイートを、この時連発していました。最終的にはMeek Millのアルバム結局3位で、Tidalフリー政策は功を奏しませんでした。この週は最終的にLana Del Reyがアルバム1位を獲得しています。

 

1位:Lana Del Rey 10.7万 (セールス8.0万)

2位:Tyler, the Creator 10.6万 (セールス7.0万)

3位:Meek Mill 10.2万 (セールス3.7万)

 

 これらのトラブルにより、この時も今週と同じくアルバムチャートの発表がかなり遅かったです……

(参照①:The free streaming fiasco: a recap of the most controversial chart week of 2017 – Chart Analytics Brief

(参照②:Tyler, The Creator Accuses TIDAL & Meek Mill of Using "Free Streams" to Manipulate Numbers | HipHop-N-More

 

 Tyler, the Creatorは後にTwitter上でLana Del Reyのアルバム1位を祝福し、後に自らが開催するフェスCamp Flog Gnawに彼女を呼んでいます

 

※ちなみにこの週のストリーミングは上記のLana Del Rey、Tyler, the Creator、Meek Mill以外にもChester Benningtonを偲んでLinkin Parkのアルバム(特に“Hybrid Theory”、“One More Light”)の再生数も伸びてしました。ここまで多くのアルバムが同時にストリーミング上で人気を集めるのは珍しいです。

 

 

△10 Ava Max – Sweet but Psycho

 Ava Maxの“Sweet but Psycho”が10位に浮上!ヨーロッパ圏でのピークは約半年前でしたが、じわじわラジオ再生数を伸ばしてついにトップ10入りを果たしました。(彼女はUS出身ですが、ヨーロッパ圏で先に人気になった)

 ストリーミングは39位、DLは22位ですが、ラジオでの4位が生きてのトップ10入りです。ポップ系~アダルトポップ系ラジオで人気です。

 

 ビルボードは今週のトップ10の記事で彼女の生い立ちをやや詳しめに説明。アルバニア人の両親の元に生まれたこと、Maria Careyの“Vision of Love”を小さい時によく歌っていたことなどが紹介されています。

 ビルボードは他にAva Max、Bebe Rexha、Dua Lipa、Rita Oraなどのアルバニア系シンガーの躍進についての記事を出したことがあります。

  

 この曲は1966年のCount Fiveによる“Psychotic Reaction”、昨年のPost Maloneの”Psycho”に次いで歴代3曲目の“Psycho”というワードが入ったトップ10ヒットです。近年「サイコ」という概念が流通している印象があるのですが、”Psycho”が曲名に入ったヒットは今後も増加するでしょうか。

 

―1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road

 圧倒的なストリーミング数を以てHot 100を独走する“Old Town Road”。今週から新たに公式ビデオの再生数が集計に反映されるようになり、再生数が再び増加。歴代で2番目の1.31億再生を今週記録しました。YouTubeに限ると観測史上最高の6220万再生を1週間で記録しています。(アメリカの成績、純粋なビデオ以外にこの曲が紐付けられたその他のビデオも含む)

 

1位:Old Town Road 1.43億 (2019/4/20)

2位:Old Town Road 1.31億 (2019/6/1)

3位:Old Town Road 1.25億 (2019/4/27)

4位:In My Feelings 1.16億 (2018/7/28)

5位:Old Town Road 1.14億 (2019/5/14)

 

 ほか今週はDL、ラジオの数字も今週伸ばして無双状態を築き上げています。超がつく大物がシングルをリリースでもしない限り、しばらく1位を守り続けるでしょう。超大物がシングルをリリースしたとしても、打ち勝ってしまうかも……?

 

 2位の“I Don’t Care”もビデオリリースしましたが、US内での再生数は”Old Town Road”には遠く及ばず。全体的なストリーミング数は先週よりも落ちています。ラジオの再生数はかなり伸びていますが、”Old Town Road”の座を脅かすにはまるで数字が足りていません。

 

 小学校に行って、“Old Town Road”を披露するLil Nas X。これぞ1位シングル!という圧倒的な盛り上がり方をしています。

 

 

 

×× Billie Eilish – wish you were gay

 Billie Eilishの”wish you were gay”が今週チャートから外れました。ピーク31位、チャート滞在11週と「非シングル」にしてはかなり健闘しました。ほか“you should see me in a crown”と”Ocean Eyes”(”dont smile at me"に収録)もHot 100から外れて、残ったのはラジオシングル3曲のみになりました。(”bad guy”、”when the party’s over”、”bury a friend”)

 非シングルが長くチャートに残っていることから分かる通り、Billie Eilishは2週目以降もストリーミングの数字がかなり安定しています。来週アルバム1位に返り咲く可能性もあります。

 

×× Pinkfong – Baby Shark

 今週は上位に登場する曲が多く、その分チャートから外れる曲も多めでした。リカレントによって外れる曲は5つありました。(リフレッシュのために古い曲を整理するルール。これで外れた曲が多いということは今週のチャートはリフレッシュが進んだということです)

 Baby Sharkは20週の「満期」を迎えたためチャートから外れました。長い間40位前後を漂っていましたが、チャート滞在の最後のほうは51位以下に落ちていました。

 DLやラジオなどの数字には全く恵まれていませんでしたが、ほぼYouTubeの数字のみでチャートに残り続けて、年間チャートにも入りそうというかなり特殊なヒットでした。

 

 現在YouTubeでは歴代9位の28.38億再生まで数字を伸ばしています。(全体で最も再生数が多いのは“Despacito”の62.21億再生です。子供向けビデオで最も再生されているのは”Masha and The Bear”の36.52億再生です)

 

×× Ariana Grande – thank u, next

 Ariana Grandeが初めてのHot 100首位曲となった、アイコニックな”thank u, next”が今週チャートから外れました。チャート滞在は28週でした。

 ピーク時の勢いは凄まじかったのですが、アルバム以降は他シングルに押し出される形でラジオの再生数が落ちていき、トップ10陥落以降は急速に順位を落としていきました。

 ストリーミングが以前のAriana Grandeの比べて強力だったためHot 100で首位に到達しましたが、ラジオは以前と同じくらいだったのであまり長持ちはしませんでした。

 最近のHot 100では、「ピーク順位を伸ばす」上で重要な要素はストリーミング、「長くチャートに滞在する」上で重要な要素はラジオだという印象があります。

 

Ariana Grandeのラジオ成績

・7 rings ラジオ:1位 / Hot 100:1位

・Problem ラジオ:2位 / Hot 100:2位

・no tears left to cry ラジオ:3位 / Hot 100:3位

・Side to Side ラジオ:3位 / Hot 100:4位

・thank u, next ラジオ:3位 / Hot 100:1位

・Love Me Harder ラジオ:3位 / Hot 100:7位

・breathin ラジオ:3位 / Hot 100:12位

 

 "breathin"でラジオの割にHot 100が低いのは、ストリーミングのピークが過ぎてしまったからです。(アルバムの週:Streaming Songs=14位、しかしラジオのピークの週はStreaming Songs=50位圏外)

 現在のストリーミングではアルバムのリリース時に再生数がピークを迎えるため、アルバム「後」のシングルが伸び悩む傾向にあります。

 

 

×× Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard

 Lil BabyとGunnaのジョイント、“Drip Too Hard”が外れました。ピークは4位、チャート滞在は35週でした。

 ストリーミングで人気を集めた後、ラジオでも人気に。リズミック系、Hip-Hop / R&B系と2つのラジオ系統で1位に輝いています。(ラジオ全体では18位まで到達)

  この2人は昨年から急速に存在感が増していて、既にかなりの曲数をHot 100に送り込んでいます。Futureが「トラップの王」とも称している2人の存在価値を示した1曲だったかなと思います。

 

Lil Baby:23曲

Gunna:17曲 

(両者とも”can’t leave without you”、”YOSEMITE”のfeat.で表記されない曲も含む)

 

 ”Drip Too Hard"と同じアルバムに収録されていた”Close Friends”(参加はLil Babyのみ)は現在チャートで驚異的な粘りを発揮しており、59位ながらもチャート滞在を30週まで伸ばしています。(ラジオの再生が伸びているため、51位以下ながらも特例でチャートに残っている)

 

×× Dean Lewis – Be Alright

 Dean Lewisの“Be Alright”が今週チャートから外れました。ピークは23位、チャート滞在は29週でした。順位の割には長めの滞在です。

 穏やかな曲調と早口な歌唱法を合わせたこの曲はまずSpotifyで人気に。(Spotifyのプレイリストでは彼のようなDIY精神のあるSSWが重宝される印象があります)

 そこからラジオのオンエアを増やしていき、Hot 100での躍進の要因になりました。アダルトポップ系ラジオでは首位まで到達しています。

 この曲はSpotifyでのピーク(2018年の8~9月)からUSでのピーク(3月頃)までおよそ半年のタイムラグがあります。ラジオはヒットを認識しても、再生数が伸びるまで時間がかかるため、どうしてもストリーミングのヒットと時期がずれてしまいます。(これはラジオ系統によって若干の違いがある)

 

 

今週チャートから外れた曲 (17曲)

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

100 Lizzo – Juice (🗻100位 /⏰1週)

99 Roddy Ricch – Die Young (🗻99位 /⏰2週)

98 2 Chainz feat. Ariana Grande – Rule the World (🗻94位 /⏰2週)

97 Lil Uzi Vert – That’s A Rack (🗻76位 /⏰5週)

96 Billie Eilish – wish you were gay (🗻31位 /⏰11週)

94 Avicii feat. Aloe Blac – SOS (🗻68位 /⏰4週)

92 Billie Eilish – you should see me in a crown (🗻41位 /⏰8週)

91 Bazzi – Paradise (🗻91位 /⏰2週)

90 Billie Eilish – Ocean Eyes (🗻84位 /⏰13週)

89 Lauv & Troye Sivan – i’m so tired...  (🗻81位 /⏰6週)

88 Ella Mai – Shot Clock (🗻62位 /⏰16週)

82 YNW Melly feat. Kanye West – Mixed Personalities (🗻42位 /⏰17週)

80 Old Dominion – Make It Sweet (🗻56位 /20週)

57 Pinkfong – Baby Shark (🗻32位 /20週)

49 Ariana Grande – thank u, next (🗻1位 /28週)

46 Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard (🗻4位 /35週)

44 Dean Lewis – Be Alright (🗻23位 /29週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Tyler, the Creator - IGOR

2 DJ Khaled - Father Of Asahd

5 The National - I AM Easy To Find

9 Rammstein - RAMMSTEIN

10 Megan Thee Stallion

16 The Head And The Heart - Living Mirage

18 Carly Rae Jepsen - Dedicated

30 Maluma - 11:11

49 Lewis Capaldi - Divinely Uninspired To A Hellish Extent

70 JayDaYoungan - Endless Pain

95 サウンドトラック - Game Of Thrones: Music From The HBO Series Season 8

173 Maelyn Jarmon - The Voice: The Complete Season 16 Collection (EP)

 

 

◇アルバムチャート長期滞在

1周年:Shawn Mendes – Shawn Mendes (今週100位)

100週目:Imagine Dragons – Evolve (今週60位)

 

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Ed Sheeran & Justin Bieber – I Don’t Care

・Halsey – Nightmare

・Khalid – Talk

・Billie Eilish – bad guy

・Luke Combs – Beer Never Broke My Heart

 

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

🍎 DJ Khaled feat. Lil Wayne & Gunna – Freak N You (今週21位程度)

✅ Tyler, the Creator – GONE, GONE / THANK YOU (今週27位)

🚩 Yella Beezy feat. Quavo & Gucci Mane – Bacc At It Again (今週29位) 

 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

 

関連 / 参考記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています) 

 

 

 

ビルボードスタッフが議論するシリーズ

 

 今週のテーマはTyler, the Creatorです。

・質問項目は

① DJ Khaledを上回ったことは驚きですか?

② アルバムがキャリアハイのヒットになったことの要因は?

③ "EARFQUAKE"が他人に歌われたら、さらなるヒットになるか?

④ "EARFQUAKE"以外にヒットする可能性のある曲は?

⑤ 彼のキャリアにおいて、もっとも印象的だったことは?

 

 ③の質問は"EARFQUAKE"がJustin Bieber、Rihannaによって歌われる可能性があったことに基づく質問です。

 ②の質問での、「2011年が今のようなストリーミング環境ならば、"Yonkers"がヒットしてこれはキャリアピークになっていない」という考え方は興味深いです。

 ストリーミングでピークが来やすいタイミングはアルバムのリリース時なので、「今後」さらなるシングルヒットがこの作品から出る可能性は考えづらいので④の質問は微妙な気がします。

 

 

 

*1:Apple Musicは再生数を出さない

*2:大方の決着は付いているが、なぜかアルバムチャートが正式発表されないため

*3:http://hitsdailydouble.com/mediabase_chart_details&fmt=Y0参照

*4:ビルボードが詳細の記事をまだ発表していないので……

年間チャート トップ10 半年前予想! 2019 (USシングル)

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 こんばんは!各種音楽チャートでは年末に「年間チャート」が発表され、今年の総決算のような位置づけになっています。その年間チャートが最終的にどうなるか?を集計が半分の現時点で予想しよう!というのがこの記事の趣旨です。

 予想の対象となるのはUSシングルチャート、Billboard Hot 100の年間チャートです。このチャートは大まかに12月~11月(チャートの日付)のスパンで集計されているため、5月末が「半年経過時点」になります。

 私はこれを2017年、2018年にも行っており結果はいずれもトップ10正解率は8/10、ピタリは2でした。(記事のリンクは最後にあります) 

 

・2017年

  予想 結果
1 Shape of You Shape of You
2 That's What I Like Despacito
3 Despacito That's What I Like
4 Bad and Boujee HUMBLE.
5 HUMBLE. Something Just Like This
6 Closer Bad and Boujee
7 I'm the One Closer
8 Taylor Swift Upcoming Single Body Like A Back Road
9 Something Just Like This Believer
10 Congratulations Congratulations

 

・2018年

  予想 結果
1 God's Plan God's Plan
2 Perfect Perfect
3 Nice For What                 Meant to Be
4 Meant to Be Havana
5 Psycho rockstar
6 Havana Psycho
7 rockstar I Like It
8 Look Alive The Middle
9 The Middle In My Feelings
10 I Like It Girls Like You

 

  なかなか良い線行ったとも思いますが(自画自賛ですいません)、まだ上を目指せるような気もします。今年は初のトップ10全正解を目指して張り切っていきたいと思います (でもあくまで「未来予測」なので大外しの可能性もありますので、お手柔らかにお願いします💦)

 

ということで、今年のHot 100年間トップ10予想は以下の通りです

 

1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus - Old Town Road

2 Halsey - Without Me

3 Post Malone & Swae Lee - Sunflower

4 Marshmello & Bastille - Happier 

5 Post Malone - Wow. 

6 Panic! At the Disco - High Hopes 

7 Ariana Grande - 7 rings 

8 Billie Eilish - bad guy 

9 Ariana Grande – thank u, next

10 Jonas Brothers – Sucker 

 

・ポイント

年間チャートを読み解くポイントは……

① 週間チャート圏外の期間は年間チャート集計外で、「いかにロングヒットしているか」が肝になります。この結果ラジオでロングヒットの曲がピークの割に上位に入るケースがあります

② 最近顕著に見られる傾向で、同じHot 100首位でも「弱い首位」「強い首位」の差が激しいのでこれを考慮する必要があります。

 

 また今年の年間チャートでは集計期間にも注意が必要です。2018年の週間チャートで時期の調整のために特殊な日程(1/3→1/6→1/10)が組まれたことがありました。そのため、

 従来の年間チャート集計期間(12月初週~11月末)に当てはめると53週分の集計があることになります。これを調整するために昨年分の集計が1週ずれ込んだ可能性も考えられています。

 これを今年も継続するとすれば、1週分ずれこむ=11/24から集計開始の可能性もあるので、それも一応考慮しながら予想していきます。(これが本当ならば「半年経過」から1週過ぎてしまうことになりますが💦)

 

 

個別解説

 

1 Old Town Road

 これは年間1位獲得がほぼ確実です。チャート入りの時期は少し遅め(3月)でしたが、1位に立ってからは2位にダブルスコアをつける圧倒的なポイントをゲット。それが複数週にわたって続いているため、最終的に莫大なポイントを手に入れそうです。公式ビデオの再生数が加味されるのは来週のチャートからなので、まだ伸びしろがあるというのがこの曲の末恐ろしいところです。

 

2 Without Me

3 Sunflower

 2位を争うのはこの2曲です。1位とは差がありますが、4位以下とも差がありそうです。ここ数週調子が良いのは”Sunflower”ですが、序盤はやや出遅れていた(トップ10圏外)ので、“Without Me”に軍配が上がると考えました。どちらも52週までHot 100に残りそうです。

 

4 Happier

 各系統のラジオで大人気となり、合計27週でトップ10入り(一部は昨年の集計分)、とロングヒットになった“Happier”。元から3位ピークとかなり優秀なヒットでしたが、Marshmelloが大手ゲームFortniteで行ったイベントが大きなプラスαとなって2位までジャンプアップ。このプラスの分の効果は大きく、その後もYouTube再生数などに好影響を及ぼして高順位をキープしました。

 ロングヒットでかつプラスα分が大きいと考えて高めの年間順位を予想します。この曲も52週目までチャートに残りそうです。

 

5 Wow.

 クリスマス時期にリリースされた曲。ほぼ1年分のチャート滞在が年間チャートに乗るため、時期的な優位性があります。現在トップ10滞在が18週と上位に長く留まっていること、そしてまだ順位が大きく落ちる気配も無いということから年間5位にしました。

 

6 High Hopes

 ピークは4位であまり高くないですが、ラジオが安定していて優秀なロングヒットになっています。14週にわたるラジオ1位は歴代で5番目に長い記録でもあります。このタイプの曲は年間チャートで体感よりも良い順位に入る傾向があるため、高めの6位と考えました。(2017年の”Believer"に近い)

 「52週ルール」によってチャートに残るのは多くてもあと11週ですが、ラストまで35位くらいの順位をキープしそうな予感もします。ただし、ここ2日でだけなぜかラジオ再生数が急激に減っているのは気がかりです。

 

7 7 rings

 ピーク時のポイントの高さはかなり優秀ですが、既に落下の気配を見せているのでこの順位にしました。(”7”つながりという謎の願掛けも兼ねて……)トップ10滞在も16週とあまり長くないです。

 Ariana Grandeはロングヒット因子になりやすいアダルトポップ系統での人気が高くなくて、以前からシングルがそこまで長続きしない傾向にあります。(“Problem”でさえチャート滞在は25週の滞在)

 それをむしろ有効利用し、矢継ぎ早にシングルをリリースしたことが功を奏したのが”thank u, next”期のシングルたちで、今までに無い大ヒットを記録することに成功しました。ただピーク時の勢いがあったとしても、長続きしない傾向は変わらず、”7 rings”のラジオは既に大きくマイナスに転じています。(ほか次シングルの”break up~”も既にラジオはマイナス)

 

8 bad guy

 昨年の”I Like It”に相当する枠です。注目度が高いアーティストの、デビュー作の代表曲が大ヒットになるということです。遅めのスタート、また4位ピークと現状では若干数字が足りませんが、これからの伸びしろに期待してこの順位にしました。

 「伸びしろ」としてまず挙げられるのはラジオです。Billie Eilishはアルバムリリースまでラジオ再生数に恵まれていませんでしたが、アルバム以降はラジオ局側も人気に気がついて再生数が伸びています。現在のラジオ再生数はまだ発展途上ですが、この時点でも既にHot 100順位がかなり高いので、ラジオが伸び切ればかなりHot 100でも上位に行くのでは?と考えています。

 もう一つのあり得るかもしれないシナリオはリミックスです。Billie Eilishのビートが際立つ音楽性はヒップホップとの相性も良さそうで、特にラッパーを迎えたリミックスのリリースを個人的に期待しています。現在Billie Eilishの注目度はかなり高いので超大物によるリミックスも期待できそうですが果たして……??

 

参考:“bad guy”とラップの相性の良さを体感したマッシュアップ

 

9 thank u, next

 ピーク=ビデオが出た週の勢いは”7 rings”のそれを上回るものでしたが、チャート滞在が半年程度と短いので控えめな順位です。ラジオの数字の急落に伴い、トップ10から落ちた後は一気に順位を落としてしまったのが痛かったです。

 一気に順位を落としてしまった所を見て、正直年間トップ10入りは少し厳しいのでは?とも考えていましたが、他にあまり有力な候補もいないので年間9位予想としました。

 年間チャートの集計が11/24~、12/1のどちらでもリリース最初の週(11/17付けのチャート)は今年の年間チャートに反映されません。

 

10 Sucker

 私はこの曲をZaynの“Pillowtalk”と似たようなチャートアクションになるのでは?と予想していました。初週は注目を集めて1位デビュー、そこから一旦順位を落とすも依然として注目度は高くトップ10内をキープ。しかし注目を一気に上げすぎた反動からか、ポイントが落ち始めるも早く、結局は短命ヒットになってしまう……ということです。

 “Sucker”は1位デビューした後、一旦順位を落として、そこからトップ10圏内をキープし続けています。ここまでのシナリオは”Pillowtalk”と同じですが、“Sucker”はここから長持ちする予感がします。

 一気に注目を伸ばして早い段階でラジオのピークを迎えた“Sucker”でしたが、ラジオ1位になった後も数字をキープ。さらにはロングヒット因子になりやすいアダルトポップ系統でも1位に輝いたので、しばらくは数字が安定しそうです。(あとは直後にリリースされた”Cool"がそれほどビッグにならず、パイを奪い合わなくて済んだことも地味に効いています)

 仮に最初の勢いの反動で、いつかラジオの数字が急落し始めたとしても、それまでの期間で充分なポイントを稼ぎそうと判断したので、“Pillowtalk”とは違い年間10位に食い込むと予想しました。

  

 

その他の候補

 

SICKO MODE ☆

 合計で歴代2位タイの32週にわたるトップ10滞在を記録(半分くらいは去年の集計)と、見事なロングヒットを見せていた“SICKO MODE”。1位だったのは1週のみ

 かなり有力な候補で、5/18のHot 100を見た時点ではこれを最終の10位にしておいたのですが、最後の週(5/25)の26位→31位という落下を見て、この先あまりチャート滞在が長くないと考えて外しました。

 

I Don’t Care ☆

 悪くはないヒットにはなっていると思いますが、リリース時期が遅いことをひっくり返せるほどのヒット度ではない予感がします。また“I’m the One”のような抜群のキャッチーさは諸刃の剣であると思います。というのは夏場に大ヒットするかもしれませんが、あまり長続きしない可能性もあります。

 ほかチャンスがあるとすれば、7月にリリースされるEd Sheeranのアルバムでストリーミングを上げてポイントをうまく稼げればトップ10滑り込みも考えられます。

 この曲でもう一つ気になるのは「ギターサウンドの消失」です。“Shape of You”も同様にリズミカルな曲でしたが、ギターサウンドも随所に感じられました。なぜこのギターサウンドが重要かというと、「アダルトポップ系」というラジオ系統と相性が良いからです。

 このギターサウンド&穏やかなバラードを得意とするEd Sheeranはいわば「アダルトポップ系」の申し子的存在で、この系統での人気がロングヒットにつながっていました(アダルトポップ系でのヒットはロングヒットしやすい)

 しかしこの“I Don’t Care”では”Shape of You”のリズミカルさはそのまま、ギターのサウンドが感じられなくなってしまったため、「アダルトポップ系」の人気低下(または長持ちしない)可能性があり、このことによって従来のEd Sheeranの曲のようなロングヒットをあまり期待できないかもしれません。

 

Eastside

 良い感じにロングヒットになっていますが、ちょっとピークが低めです。そろそろ52週目が迫っていて先が長くないのも痛手です。仮にチャートに登場したのが12月頃だったら年間トップ10にも届いたかもしれません。

 

Sweet but Psycho

 現状まだ週間のトップ10にも到達していませんが、意外と可能性もある曲です。チャート入りから時間が経過した現在でもラジオがまだ少し伸びているので、この調子が続いて7位くらいまで到達し、さらにその後順位を落とすスピードがゆっくりならばトップ10に相当する成績になるのではないでしょうか……?

 ただしストリーミングの低さなどがネックで、まだトップ10入りするかも怪しいと判断し、年間トップ10の予想からは外しました。

 

Shallow

 最近は20位付近で安定した動きを見せていますが、トップ10滞在期間が5週と上位にいた期間がかなり短いので厳しそうです。ほかここ2週でラジオの大きな低下が始まっています。

 

Talk

 現状ラジオとストリーミングで高い数値をキープし、順位を上げているKhalidの”Talk”。2月初旬とリリース時期も悪くはないです。今後伸びてトップ10に長く残れば年間トップ10にも届きそうですが、既にリズミック、アーバンの2系統ではラジオ再生数がマイナスに転じていることがネックだと判断し、年間トップ10には入らないと考えました。(ポップ系、アダルトポップ系では伸びている)

 

Dancing With A Strangers

 ラジオを中心に良い感じに順位が推移。しかしポイントがラジオに寄りすぎているので、あまり今後の伸びしろが感じられないので年間トップ10は難しそうです。

 

ME!

 客演のBrendon Urie=Panic! At the Discoがラジオで大きな結果を残したので、その流れに乗ってラジオで特大&ロングヒットになれば意外と可能性あるかな?と思ったのですが、既にラジオの伸びが止まりつつあるらしいので、かなり厳しいでしょう。

 

Girls Like You

 ナイスランですが、52週ルールにそろそろ引っかかるのでさすがに厳しいです。万が一53週目以降も25位以上をキープし続けるミラクルがあれば……

 

Drip Too Hard

 地味に意外と良い感じでロングヒットしています。年間上位も狙えるでしょうが、ただトップ10ほどではないです。

 

誰かしらのUpcoming Single

 年の後半に曲をリリースしても年間トップ10に食い込めるような爆発的な結果を残せるのはRihanna、Adele、Drakeあたりが候補かなと思います。

 Drakeはスパン的に今年のリリースは正式なアルバムではなくミックステープ系(プレイリストとか)が来ると思うので、シングルもそこまでビッグにしないと思います。

 Rihannaはストリーミング、Adeleはダウンロードで莫大な数字を稼いで驚異的な巻き返しをしそうです。仮にリリースすれば、の話ですが。

 

 ただし、“Old Town Road”が数々の1位候補撃破を見ると、この3人クラスの人物が曲をリリースしても1位を取れないのではとも考えられます。シングル1位を獲得したいであろうこの3人の陣営は、この曲のヒットが落ち着くまでリリースを待つのでは?という推測の元、この3人のリリースが仮に今年あったとしても遅めの時期で、その時期ゆえトップ10には入らないとして候補から外しました。

(ちなみに最初に記事を書いていたときは9位がRihanna – Upcoming Singleにしていましたが、この推測のもと予想を変えました)

 

参考:トップ10予想した曲 + SICKO MODEの順位推移

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おまけ1:年間チャートのトップ100には入りそうな面白い曲

・Pinkfong – Baby Shark

・A Boogie Wit da Hoodie feat. 6ix9ine – Swervin

・YNW Melly – Murder On My Mind

 それぞれ理由は違いますが、ラジオに「無視」されながらも年間トップ100に食い込みそうな曲です。“Baby Shark”はほぼYouTube「専門」のためラジオシングルにはならず。”Swervin”はシングルに「選ばれなかった」ためにラジオでかからず。“Murder On My Mind”はアーティストの倫理的問題(殺人容疑)によってラジオにかからなかった理由として考えられます。

 

・Lil Baby – Close Friends

 ピークの28位を記録したのは昨年の集計分で、今年の集計期間は50位以下に留まっています。しかしシングルカットのタイミングの妙によって29週チャートに生き残った(=51位以下でもラジオが伸びているのでまだヒットすると判断された)ため、年間チャートまで手が届きそうです。2019年版“El Perdon”

 

 

おまけ2:イギリス編

 ついでにイギリスの年間チャート予想も行います。イギリスは1月~12月の集計なので、現時点ではまだ半分が経過していませんが。

 アメリカとイギリスのチャートでは集計方法が違うので、そこを考慮しつつ年間チャートを予想する必要があります。ポイントとなるのは……

 

・チャート圏外でもポイントが入る、順位とあまり比例しない (昨年“Mr. Brightside”がピーク72位、滞在10週という成績ながらも年間チャート入り)

・序盤の曲が強い

 

以下がUK年間トップ10予想です

1 Lewis Capaldi - Someone You Loved

2 Ed Sheeran & Justin Bieber - I Don’t Care

3 Ariana Grande - 7 rings

4 Ava Max - Sweet but Psycho

5 Calvin Harris feat. Rag’n’Bone Man - Giant

6 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus - Old Town Road

7 Mabel - Don’t Call Me Up

8 Billie Eilish - bad guy

9 Ed Sheeran のアルバム曲

10 Lewis Capaldi – Hold Me While You Wait

 

 昨年の年間チャートトップ10は全て年の前半にリリースされていた曲だったので、それを考慮して、大半をリリース済の曲から選びました。

 時期、ピーク、ロングヒットとばっちり条件が揃った“Someone You Loved”の年間1位が有力。またLewis Capaldiの次シングルもかなりヒットすると考えて”Hold Me While You Wait”も年間トップ10に食い込むと予想しました。

 他はグローバルヒットの"I Don't Care"、”7 rings”、”Sweet but Psycho”、”Old Town Road”、地元の利を活かしそうな“Giant”、”Don’t Call Me Up”を上位にしました。

 そして残り一つは7月にアルバムをリリースするEd Sheeranが地元UKで圧倒的な強さを見せてアルバムシングルその2も大ヒットになると予想しました。

 

 ちなみにUKのシングルチャートでは、「1つのアーティストにつき3曲まで」という制限があり、これによってEd Sheeranがアルバムで爆発的な人気を見せた場合4位程度に相当する曲でもシングルチャートに登場しない、ということもあるかもしれません。(実際、“÷”の時は1位~6位までを独占していた)

 週間のチャートでは制限があるものの、年間チャートではこの制限が無くおそらく素直に毎週のポイントを合計しているので、このことから、「週間チャートに1回も登場しなかった曲が年間チャートに入る」という可能性も考えられます。特にこれが当てはまりそうなのは、Ed Sheeranのアルバム4番目、5番目人気あたりの曲です。

 

 

関連記事

 

2018年の予想

 

 

2017年の予想

 

Hot 100 5/25 見どころ 【Ed Sheeran + Justin Bieber、“Old Town Road”に敗れる】

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 こんばんは!今週も際立つ”Old Town Road"の強さ。7週目の1位です

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Ed SheeranとJustin Bieberの“I Don’t Care”は2位スタート。

・首位は引き続き“Old Town Road”。今週も1億再生越え

・Logicが自身3度目のアルバム1位

・イギリスで大人気、Lewis Capaldiの“Someone You Loved”が85位に登場

・Jhené Aikoの“Triggered”が51位に登場

 

・今週のトップ10

      5月25日   R D S
-   1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road 🍎🚩 3 2 1
2 Ed Sheeran & Justin Bieber I Don't Care ✅ 13 1 3
3 Jonas Brothers Sucker  2 6 15
4 Billie Eilish bad guy 43 8 2
  5 Post Malone Wow. 5 11 6
  6 Post Malone & Swae Lee Sunflower  14 13 4
7 Sam Smith & Normani Dancing With A Stranger 1 16 29
  8 Taylor Swift feat. Brendon Urie ME!  7 5 12
9 Khalid Talk 6 14 9
  10 Halsey Without Me 9 26 11

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

Spotifyでは今週もリミックスとオリジナルを合わせると”Old Town Road” > “I Don’t Care”です。

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

緑背景はその指標がトップ10内で最高、赤背景は最低

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆100 Lizzo – Juice

 Lizzoの“Juice”が100位に登場。先週初登場した”Truth Hurts”についで2曲目のHot 100エントリーです。

 この曲は主にポップ系ラジオ、Spotifyで人気。ポップ系ラジオではアルバムリリース前から少しずつかかっていてましたが、”Truth Hurts”のヒット以降さらに再生数を伸ばしましています。

 “Juice”はアメリカよりも先にイギリスでプチヒットしており3月末の時点で38位まで到達しています。

 “Truth Hurts”も少しずつポップ系ラジオでのオンエアが開始しています。 

 

◇98 2 Chainz feat. Ariana Grande – Rule The World

 2 ChainzとAriana Grandeの”Rule the World”が98位で再登場。アルバムリリース時以来のHot 100復帰です。

 シングル化に伴うラジオ再生数増加が再登場の要因です。リズミック系で7位、Hip-Hop / R&B Airplayで14位にランクインし、全ジャンルのラジオ再生数で45位に入りました。ただしリリース時のようなストリーミング数は無いです。(Apple MusicもSpotifyも200位圏外)

 

☆95 Nicky Jam & Ozuna – Te Robaré

 Nicky JamとOzunaの“Te Robaré”が95位に登場。この2人は昨年の”Te Boté”でも共演していました。

 この曲はYouTubeで主に人気(今週33位)です。Spotifyでも200位圏内には入っています。ラテン系ラジオでは今週10位にランクインしています。

 

☆85 Lewis Capaldi – Someone You Loved

 イギリスで注目を集めるフォーク系シンガー、Lewis CapaldiがHot 100に初登場。“Someone You Loved”が85位に登場しました。

 この曲はアダルトポップ系ラジオ、そしてSpotifyで人気。今週はDLの数字も伸びています。 

 Spotifyの再生数が伸びた(圏外→88位)のは、有力プレイリストToday’s Top Hitsがこの曲をリストの上位に「再投入」したからだと思われます。

 この曲は既にヒット「済み」と見なされて1回はリストから外された曲でしたが、彼のアルバムの新リリースが発表されたため再び注目を集めてリストに復帰しました。(そのアルバムが反映されるのは来週のチャートです)

 

 スコットランド出身の彼はイギリスで熱心な支持を受けており、この“Someone You Loved”はイギリスでの年間シングル1位有力候補です。またアルバムも大きく注目されていて、先週リリースされたアルバムは収録曲すべてイギリスのSpotifyで30位以内に入りました。(今週のUKアルバムチャートで1位見込み)

 イギリスではこのような「普通の見た目の男性SSW」の躍進が際立っており、The Guardianはこの現象についての記事を作成しています。この「普通の見た目の男性SSW」はアメリカ風のジャンル名に当てはめると、「アダルトポップ系のシンガー」です。

 記事内ではこのブームの火付け役はEd Sheeranで、記事内では彼をこのジャンルの“Godfather”と表記しています。そして女性シンガー、またはブラック系のシンガーが彼らの影に隠れてしまっていることなどを指摘しています。

 

 

☆73 Lunay, Daddy Yankee & Bad Bunny – Soltera

 Lunayの“Soltera”が73位に登場。Lunayはプエルトリコ出身のシンガーで、これが初のHot 100エントリー。もともとChris JadeyとGaby Musicが客演でしたが(この2人はプロデュース担当)、リミックスで新たにDaddy YankeeとBad Bunnyを迎えたところ人気が出ました。

 この曲はストリーミングで人気。人気が最も高いのはYouTubeです(今週27位) ほかApple MusicとSpotifyでも100位圏内には入っています。

 

 この曲はラテン圏内でも抜群の人気を誇り、今週一時期Spotifyのグローバルトップ10まで到達しました。(5/18のランキングでは“Soltera”、”Con Calma”、“Otro Trago”と3つのラテン曲がSpotifyのグローバルトップ10に入っていた)

 

☆51 Jhené Aiko – Triggered (freestyle)

 Jhené Aikoの“Triggered”が51位に登場。ビルボードでは単に"Triggered"と表記されていますが、その他の媒体では曲名に(freestyle)がついている場合が多いです。

 この曲はApple Musicでの人気が飛び抜けて高いです。残り2つのストリーミングではYouTubeSpotifyの順に人気です。

 

▽47 Billie Eilish – bury a friend

 Billie Eilishが初めてラジオ系のチャートで1位を獲得。今週“bury a friend”がオルタナティブ系で1位に。この系統はこれまで一番多くBillie Eilishの曲をかけてきた系統です。

 女性のソロシンガーがオルタナティブ系ラジオで1位を獲得するのは少しレアで、チャートの創設(1988年)以来13曲目のことです。

1989 Kate Bush – Love and Anger

1990 Sinead O’Connor – Nothing Compares 2 U

1990 Sinead O’Connor – The Emperor’s New Clothes

1992 Suzanne Vega – Blood Makes Noise

1994 Tori Amos – God

1995 Alanis Morissette – You Oughta Know

1995 Alanis Morissette – Hard in My Pocket

1996 Alanis Morissette – Ironic

1996 Tracey Bonham – Mother Mother

2013 Lorde – Royals

2015 Elle King – Ex’s & Oh’s

2018 Alice Merton – No Roots

2019 Billie Eilish – bury a friend

 

 2000年台では女性オルタナ系シンガーはラジオ再生に恵まれませんでしたが、Lorde以降はやや復活の流れが来ています。上記のリストには載っていませんが、Janelle MonáeやKimbraも客演としてこの系統で1位を獲得した経験があります。

 他の系統のラジオもようやくBillie Eilishの人気に気が付き始めたのか、ここ数週はラジオ再生数が上昇しています。現在ポップ系ラジオでは”when the party’s over”と”bad guy”が同時にオンエア中。特に後者は最近大きく再生数を伸ばしています。 

 

△39 Kane Brown – Good As You

 Kane Brownの“Good As You”が39位に浮上。キャリア4曲目のトップ40です。

 この曲はカントリー系ラジオ2位まで上昇しています。一方「Kane Brownの曲としては」ストリーミングがそこまで高くはないです。(カントリー曲としては一般的な水準)

 

△29 Luke Combs – Beer Never Broke My Heart

 1週間分フルに集計されたことでジャンプアップ。Luke Combsの“Beer Never Broke My Heart”が29位にランクインしました。この曲は今週DLが3位、ストリーミングも50位にランクインしました。ストリーミング50位はカントリーとしてはかなり優秀です。

 Luke Combsは6/7にリリースのEP、”The Prequel”をアナウンスしています。この曲も収録されます。ほかデビュー作の“This One’s For You”はアルバムチャートで7位に再浮上しています(滞在102週目のロングヒット作)

 

 今週はカントリー曲の躍進が目立ちます。Blake Sheltonの“God’s Country”は24位、Morgan Wallenの”Whiskey Glasses”は25位と”Beer Never~”よりも上位にランクイン。

 この2曲はカントリー系のラジオ以外でもDLでポイントを稼いでいます。2曲ともストリーミングの数字も悪くは無いです。“Whiskey Glasses”はApple Music・Spotifyの両方で100位前後に入っています。

 

▽21 Logic feat. Eminem – Homicide

 Logicが自身3度目のアルバム1位を獲得。総合売上は8.0万で、うちセールスが2.4万、ストリーミングで5.4万枚相当を稼ぎました。残りはシングルDLです。

 主にストリーミングのパワーによってアルバム1位の座を獲得しましたが、Hot 100に登場したのは“Homicide”のみでした。

 この曲はデビュー週だった先週よりもDL・ストリーミングを落としたため、Hot 100でも5位→21位と順位が下がりました。

 

 ほか今週のアルバムチャートではMac DeMarcoが10位にランクイン。自己最高位を更新しています。総合セールスは2.7万で、その多くをチケット戦略によるセールス2.0万から得ています。ただセールス以外も0.7万はあるので、ストリーミングでも一定の人気はあったと言えます。(リリース日はApple Musicアルバムで25位にランクインした)

 

☆2 Ed Sheeran & Justin Bieber – I Don’t Care

 Ed SheeranとJustin Bieberの“I Don’t Care”が2位にランクイン。”Old Town Road”は3週連続でポップスターの1位デビューを阻止したということになります。(Taylor Swift→Shawn Mendes→Ed Sheeran)

 "I Don't Care"はDLでは“Old Town Road”を上回り1位だったものの、ストリーミングの差は大きくHot 100首位デビューならず。ストリーミングでは”bad guy”にも負けて3位でした。

 そのストリーミングの差を埋めるべく、今週“I Don’t Care”はビデオを出したものの、“Old Town Road”もビデオを出したのでその差が埋まることは無さそうです。

 現時点でビデオの再生数は“Old Town Road” > “I Don’t Care”。人気がグローバルに分散しているEd Sheeranに比べ、Lil Nas Xの人気はアメリカに集中しているので、アメリカに限るとこの再生数の差はかなり広がると思います。(”Old Town Road”はもしかしたら来週自身が持つストリーミング数の記録を再び塗り替えるかも……?)

 Ed Sheeran + Justin Bieberという最強格のタッグに加え、制作陣もShellback、Max Martinなどが参加し超豪華ですが、そんな曲にも楽々勝利してしまう、アメリカにおける“Old Town Road”の圧倒的強さをひしひしと感じます。

 この曲は個人的にはデビュー時は注目され、そのキャッチーさから人気を集めるも、次第に尻すぼみになった”I’m the One”のようなチャートアクションになりそうと考えています。

 

 Spotifyグローバルでは再生数の記録(日)を更新しましたが、週間は5位でした。世界的には大ヒットしているということですが、初日の期待度の「割には」週間の再生数をあまり稼げなかったという見方もできます。

 

Spotify(世界) 1日のピーク再生数ランキング

  ピーク再生
1 Ed Sheeran & Justin Bieber - I Don't Care 10,977,389 2019
2 Mariah Carey - All I Want for Christmas Is You 10,819,009 2018
3 Ariana Grande - 7 rings 10,445,538 2019
4 XXXTENTACION - SAD! 10,415,088 2018
5 Ed Sheeran - Shape of You 9,878,194 2017
6 Drake - In My Feelings 9,847,333 2018
7 Ariana Grande - thank u, next 9,606,415 2018
8 Drake - Nonstop 9,298,297 2018
9 Wham! - Last Christmas 9,098,668 2018
10 Drake - Survival 8,611,591 2018

 

Spotify(世界) 週間のピーク再生数ランキング

  ピーク再生
1 Ariana Grande - 7 rings 71,467,874 2019
2 Drake - In My Feelings 67,499,798 2018
3 Ed Sheeran - Shape of You 64,217,796 2017
4 Ariana Grande - thank u, next 59,975,503 2018
5 Ed Sheeran & Justin Bieber - I Don't Care 58,370,367 2019
6 Drake - God's Plan 54,891,573 2018
7 Luis Fonsi & Daddy Yankee feat. Justin Bieber - Despacito - Remix 54,729,818 2017
8 Ariana Grande - break up with your girlfriend, i'm bored 54,707,620 2019
9 Billie Eilish - bad guy 50,342,324 2019
10 Drake - One Dance 47,782,311 2016

 

 

×× A Boogie Wit da Hoodie feat. 6ix9ine – Swervin

 A Boogie Wit da Hoodieが6ix9ineを迎えた”Swervin”がチャート「完走」を果たしてチャートから外れました。ピークは38位、チャート滞在は20週でした。

 21週目以降51位以下に落ちるとチャートから外れるというルールがありますが、そこから逆算して「ヒット曲だったら少なくとも20週はチャートに滞在するだろう」という考えから20週チャートに残ることを「完走」と言うケースがあります。*1

 この曲はストリーミングで人気があったものの、“Look Back At It”の方がシングルに選ばれたため、”Swervin”の方はラジオにかからず。それでもストリーミングを中心にポイントをキープし続け、20週もチャートに残りました。中位に滞在した期間が長いため、年間チャートにも余裕で入りそうです。

 ストリーミングのプレイリストはラジオよりも柔軟にシングルを変更できるので、Apple Music / Spotifyのプレイリストではこの曲は”Look Back At It"と並行してシングルのように扱われていました。Spotifyではポップ系の曲が多いToday’s Top Hitsに入っていた時期もありました。

 ラジオ無しの非シングルながらも、ストリーミングの人気によって年間チャートに入るほどのヒットになったという点でXXXTENTACIONの“Moonlight”と似ています。

 “Swervin”と違いラジオシングルに選ばれた”Look Back At It”は現在ラジオで躍進中。ポップ系にも人気が飛火し、今週ポップ系ラジオの39位にランクインしています。

 

×× Lauren Daigle – You Say

 Lauren Daigleの異色のヒット、“You Say”が今週チャートから外れました。ダウンロード・ラジオでの大人気により、ピーク29位、チャート滞在43週とかなりのロングヒットでした。

 Lauren Daigleはもともとクリスチャン系ラジオで人気のアーティストでした。クリスチャン系ラジオとは、キリスト今日の教義に基づく曲を中心にコンパイルした系統で、規模はそこまで小さくないものの、この系統でヒットしている曲はこの系統でしかヒットせず、他の系統に飛び火せずHot 100にもあまり登場しないため、あまり存在感は無いです。

 しかしこの“You Say”は多くのDLを集めたことから、クリスチャン系の曲としては珍しくHot 100デビューを果たしました。Hot 100デビューを果たすほどにヒットしたことから他の系統のリスナーにも注目され、じわじわラジオにも浸透。最終的にはアダルトポップ系、アダルトコンテンポラリー系、ポップ系にまで飛び火してかなりのラジオヒットになりました。 

 20週の時点では51位以下に位置しており、本来ならばチャートから外れる順位にいたのですが、他系統のラジオへの飛び火が「伸びしろ」と判定されて51位以下ながらも特例でチャートに残る期間が少しありました。(実際に50位以上にランクインしたので、ビルボードのその見込みは正しかった) ピークがあまり高くない割にチャート滞在が長い理由はこれです。

 

 一方、ストリーミングの数字はかなり低いです。Spotifyの週間ピーク順位は138位で、ランクインしていたのも6週間程度で、Hot 100のヒット度と比べるとかなり低い成績です。

 DL、そして大人系のラジオ……とストリーミングからは離れたフィールドで大ヒットだったこの曲は、ラジオとストリーミングの流行が離れてきた現代に開発された、「ラジオ専用シングル」のような印象を受けました。

 この曲は「真新しさ」よりも「親しみやすさ」が重視された典型的なバラードで、リズミカルな曲が強い(地域差はあるが、アメリカではそう)ストリーミングとは相性が悪そうですが、逆に大人系のラジオとは相性が良さそうです。あまり音楽を聴かない層には響きやすい曲でもあるかもしれません(DLが多いことからの推測)

 ストリーミングを意識した曲が増える昨今では、反動としてこのような曲を求める動きも一部では出てくるのかもしれません。

 

 今週は他にもEllie Gouldingの“Close To Me”が今週チャートから外れました。この曲も”You Say”ほどではないですが、ラジオのポイントを中心にヒットしていました。ラジオ再生数は5位まで到達しましたが、Hot 100では25位止まりでした。

 

 来週はリカレントで外れる曲が多そうで、チャートのリフレッシュが進みそうです。 (”Make It Sweet”、”Baby Shark”、”Close Friends”、”thank u, next”、”Drip Too Hard”、”Be Alright” などが候補)

 

今週チャートから外れた曲 (8曲)

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

100 Ski Mask the Slump God – Faucet Failure (🗻87位 /⏰11週)

97 Anuel AA & Karol G – Secreto (🗻68位 /⏰11週)

95 Lil Peep & iLoveMakonnen feat. Fall Out BoyI’ve Been Waiting (🗻62位 /⏰9週)

91 PnB Rock & XXXTENTACION – MIDDLE CHILD (🗻91位 /⏰1週)

90 SZA, The Weeknd & Travis Scott – Power Is Power (🗻90位 /⏰2週)

63 A Boogie Wit da Hoodie feat. 6ix9ine – Swervin (🗻38位 /20週)

45 Lauren Daigle – You Say (🗻29位 /43週)

43 Ellie Goulding & Diplo feat. Swae Lee – Close To Me (🗻24位 /25週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Logic – Confessions of A Dangerous Mind

4 Sommy Hagar & The Circle – Space Between 🎫

10 Mac DeMarco – Here Comes The Cowboy 🎫

20 newsboys – United

29 Quando Rondo – From The Neighborhood To The Stage

50 Stunna 4 Vegas – BIG 4x

87 Ciara – Beauty Marks

90 Marc Anthony – Opus

131 Whitesnake – Flesh & Blood

 

◇アルバムチャート長期滞在

1周年:Juice WRLD – Goodbye & Good Riddance (今週28位)

1周年:Lil Baby – Harder Than Ever (今週82位)

 

 Juice WRLDのアルバムからのラジオシングルは“Lucid Dreams”だけでしたが、その他の曲もストリーミングでは高い人気があり、SEA(ストリーミングのアルバム消費)の一部としてアルバムチャートに貢献しています。

 Lil BabyのアルバムはApple Musicでの人気が際立ちます。“Yes Indeed”は今年に入ってからもApple Musicのランキングで50位前後を推移しています。

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Ed Sheeran & Justin Bieber – I Don’t Care

・Khalid – Talk

・Shawn Mendes – If I Can’t Have You

・Billie Eilish – bad guy

・Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Tyler, the Creator – EARFQUAKE

・DJ Khaled feat. Nipsey Hussle & John Legend – Higher

 来週のアルバムチャートで首位を争う2作品。ストリーミングでの人気が高く、2つのアルバムの収録曲がかなりHot 100に登場しそう。(両方とも8曲程度が登場?)

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

✅:Martin Garrix feat. Macklemore & Patrick Stump – Summer Days (今週39位)

🍎:ScHoolboy Q feat. 21 Savage – Floating (今週28位程度)

🚩:Luh Kel - Wrong (今週28位)

 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

 

関連 / 参考記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

ビルボードスタッフが議論するシリーズ

 

 今週のテーマは”I Don’t Care”についてです。

① この曲は今年の最も“アツい”夏アンセムになり得るか?

② Lil Nas Xが多くのポップスターのHot 100首位奪取を阻止したことに関して

③ “I Don’t Care”はSheeran、Bieberどちらのアルバムで“中心”に据えられるか?

④ ビデオでお気に入りのシーンは?

⑤ "I Don't Care"以外でアンチパーティー曲のお気に入りは?

 

③の質問が個人的には好みです。要は、Ed SheeranっぽさとJustin Bieberっぽさ、どちらが強いか?ということです。(ビーバー派が多かった)

 

 

 

*1:この「完走」という表記自体は日本オリジナルだと思いますが、英語圏でもチャート滞在を”Run”と称することがあります。 例:ロングヒット = Good Run

Hot 100 5/18 見どころ 【Shawn Mendesが最高位 / Hot 100入り歴の無いアルバム1位】

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 こんばんは!

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Shawn Mendesの“If I Can’t Have You”が2位に登場!DL、ラジオ、ストリーミングの全てが高次元の成績

・LogicとEminemの“Homicide”が5位に登場

・Vampire Weekendがアルバム1位。Hot 100未登場ながらも3枚目のアルバム1位

・Lizzoの“Truth Hurts”が50位に登場

 

・今週のトップ10

      5月18日   R D S
- 1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road 🍎🚩 4 1 1
2 Shawn Mendes If I Can't Have You 27 2 8
  3 Taylor Swift feat. Brendon Urie ME!  10 4 5
- 4 Jonas Brothers Sucker  2 5 13
5 Logic feat. Eminem Homicide ✅ - 3 2
  6 Post Malone Wow. 5 10 7
  7 Post Malone & Swae Lee Sunflower  15 13 4
  8 Halsey Without Me 6 19 9
- 9 Billie Eilish bad guy - 11 3
  10 Ariana Grande 7 rings 11 22 6

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

 

※”Old Town Road”はリミックスとオリジナルの再生数を合算すると“Homicide”の数字を上回ります。この曲は今週も1億再生超え。この桁違いの再生数が強さの最大の要因です。

※ラジオ1位の“Dancing With A Stranger”は今週11位

 

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

 

曲の個別解説

 

☆99 Roddy Ricch – Die Young

 「エモ系」な声を持つラッパー、Roddy Ricchの“Die Young”が99位に登場。これまでMeek Mill、Nipsey Hussleの客演で2回のHot 100入り歴がありますが、自身の曲でのエントリーは今回が初です。

 この曲は主にApple Music、アーバン系ラジオで人気があります。

 

☆98 Bazzi – Paradise

 Bazziの“Paradise”が98位に登場。トップ40に入り、成功を収めたシングル”Mine”、“Beautiful”に次ぐ3曲目のHot 100エントリーです。

 この曲は主にSpotifyとポップ系ラジオで人気。Spotifyではこの集計の週(5/3~5/9)に人気プレイリストToday’s Top Hitsの表紙を飾り、リストの先頭に配置されていたことから再生数が大きく伸びています(41位→21位)

 

☆96 Dan + Shay – All To Myself

 Dan + Shayの“All To Myself”が96位に登場。この曲はカントリー系ラジオで浮上しているほか、Apple Musicでも150位くらいにランクインしています。

 Dan + Shayは昨年“Tequila”と”Speechless”の2曲が大ヒット。カントリー系以外のリスナーにも波及し、ポップやアダルトポップ系などの系統でも人気が出ました。

 Dan + ShayはLuke Combs、Kane Brownと並びカントリー系アーティストの中ではストリーミング人気が比較的高めです。

 "All To Myself"も昨年のシングルと同様に、クロスオーバーを果たすでしょうか。

 

☆91 PnB Rock & XXXTENTACION – MIDDLE CHILD

 今週アルバムチャート4位にランクインしたPnB Rockの“TrapStar Turnt PopStar”。彼にとって初のアルバムトップ10です。4.2万の総合売上のうち、3.9万枚相当をストリーミングから得ています。

 収録曲のうち、XXXTENTACIONとタッグを組んだ“MIDDLE CHILD”がHot 100に入っています。

 

 今週アルバム1位のVampire WeekendはHot 100エントリーが無いので、これについてもこの項目で説明します。

 Vampire Weekendの新作“Father Of The Bride”は13.4万を売り上げてアルバム1位に。3作連続でのアルバム1位に。Hot 100エントリー歴が無いアーティストの中では、1位アルバムの数が最多です。

 

・Hot 100エントリー歴無しでアルバム1位を記録したアーティスト

3作:Vampire Weekend

2作:Slipknot、Bob Newhart

1作:Van Cliburn、Judy Garland、Vaughn Meader、Frank Fontaine、Blind Faith、Pantera、Bob Carlisle、Il DivoThe DecemberistsAmos Lee、Lecrae、Brand New、LCD Soundsystem、BROCKHAMPTON

(詳しい表は:Billboard 200 - Wikipedia

 

 ちなみにArcade Fireもこれに近い記録を持っています。Hot 100入りは“Reflector”が99位に1週ランクインしたのみですが、アルバム1位を3回獲得しています。

 

 このアルバムは売上13.4万のうち、多くをチケット戦略によるセールスから得ています。ただしこのタイプのアルバム1位としてはストリーミングでも好成績を記録しています。

 昨年Jack Whiteはチケット戦略でセールスを稼いで総合売上12.4万と、規模も形式も今回のVampire Weekendと似たような形でアルバム1位になりました。うち純セールスは12.1万だったので、ストリーミングは多くても0.3万枚相当=およそ300~400万再生のみでした。

 一方このアルバムは2029万再生=アルバムの売上に換算すると1.8万相当のストリーミングを記録しています。

 Vampire Weekendはこのアルバムのシングルで初めてアメリカのSpotifyランキング圏内入りしました。アルバムリリース日は収録18曲のうち、8曲がランキング200位圏内に入りました。

 またラジオでも"Harmony Hall"が”Unbelievers”と並ぶ最大級のヒットになりました。(両方ともRock Airplayで7位まで到達)

 

 

☆71 YG, Tyga & Jon Z – Go Loko

 YGとTyga、Jon Zによる“Go Loko”が71位に登場。ストリーミング全般で人気を集めています。(YouTube > Apple Music > Spotifyの順で人気)

 Jon Zはプエルトリコ出身のラッパー / シンガーで、彼のパートはスペイン語で歌われています。曲名の”Loko”もスペイン語の単語です(意味は”Go Crazy”)

 

☆68 Luke Combs – Beer Never Broke My Heart

 Luke Combsの“Beer Never Broke My Heart”が68位に登場。この曲は週の途中のリリースで集計期間が短いですが、今週7位のDLを集めてHot 100にエントリーしました。カントリー系ラジオでも既に15位にランクインしています。

 1週間分フルで集計される来週は順位を伸ばしそうです。この曲はDLやカントリー系ラジオ以外に、ストリーミングでも好調。Apple MusicとSpotifyの両方でトップ50入りしています。

 

☆50 Lizzo – Truth Hurts

 Lizzoの“Truth Hurts”がついにHot 100入り!Lizzoにとってキャリア初のHot 100入りです。この曲は2017年リリースながらも、今年のNetflixのドラマ”Someone Great”に採用されたことで注目を集めました。主にSpotifyApple Musicで人気。YouTubeでも注目を集め始めています。

 

 この曲は先週の時点でもHot 100に登場するだけの成績があり、それでもHot 100に登場しないのには「古い曲ルール」が関係しているのでは?ということを先週の記事で考えました。

Hot 100 5/11 見どころ 【Old Town Roadが首位を守る!"ME!"は2位スタートに】 - チャート・マニア・ラボ

 50位以上に登場した現在は、もう既にこの「古い曲ルール」からは解放されています。(”Baby Shark"の事例を鑑みるに、一度登場すれば他の曲と同じ扱いになる)

 

 ビルボードはこの曲のHot 100デビューに関して単独記事を作成しましたが、この「古い曲ルール」に関する言及はありませんでした。

 

 

△39 Polo G feat. Lil Tjay – Pop Out

 Polo GとLil Tjayの“Pop Out”が39位へ浮上。両者とも初のトップ40入りです。この曲はストリーミング全般で人気(Apple Music > Spotify > YouTubeの順で人気)のほか、ラジオでも少しずつオンエアが開始しています。

 

▽11 Sam Smith & Normani – Dancing With A Stranger

 Sam SmithとNormaniの“Dancing With A Stranger”がラジオ再生数1位に!しかしHot 100では8位→11位と順位を落としてトップ10圏外に。

 ストリーミングが強い昨今では、ラジオが1位ながらもHot 100でトップ10圏外になるケースが時折あります。

 例えば昨年7/14の週には、Zeddの”The Middle”がラジオ1位ながらもHot 100では19位でした。(この週はDrakeのアルバム曲が大量に登場していた) これ以外にも2017年にCharlie Puthの“Attention”がラジオ1位ながらも15位だったという事例もあります。

 

 ラジオで上位ながらもHot 100で成績が高くないのは主に2つ理由が考えられます。一つ目はストリーミング再生の伸び&ラジオ再生数若干の低下による、Hot 100ポイント全体におけるラジオの「割合」の低下、2つ目はラジオとストリーミング、それぞれに違う「生態系」が生まれてそれぞれで違う曲が流行したことです。

 仮にラジオ、ストリーミングで同じ曲が流行していても流行る「タイミング」が違う場合もあります。“Dancing With A Stranger”のラジオでのピークはここ最近ですが、Spotifyでのこの曲のピークはリリース直後の3~4ヶ月前でした。

 ストリーミングでは曲 or アルバムのリリース直後に注目度がピークを迎える場合が多い一方、ラジオでは再生数が伸びるまで時間がかかってしまうので、どうしてもヒットするタイミングはズレてしまいがちです。

 

 

☆5 Logic feat. Eminem – Homicide

 LogicがEminemを迎えた高速ラップ曲“Homicide”が5位に登場。Logicにとっては”1-800-273-8255”以来2曲目、Eminemにとっては21曲目のトップ10です。

 Eminemはラッパーの中ではDrake(34曲)、Lil Wayne(24曲)に次いでJay-Zと並んで3番目にトップ10曲数が多いです。

 この曲はDL、ストリーミングで高い数値を記録。Spotifyでは今週1位になり*1Apple MusicとYouTubeでもトップ5に入っています。一方ラジオではまだオンエアされていません。

 

 “Homicide”はアルバム”Confessions of a Dangerous Mind”に収録されています。このLogicの新作は来週のアルバムチャートで1位を獲得する見込みです。

 

 

☆2 Shawn Mendes – If I Can’t Have You

 Shawn Mendesの“If I Can’t Have You”が2位に登場!”Stitches”での4位を上回り、Shawn Mendesキャリア最高位を更新しました!

 高い順位で登場したのは3項目の全てで好成績を記録したからです!DLでは2位、ラジオでは27位、ストリーミングでは8位にランクイン。ラジオは山なりに少しずつしか伸びないので、27位でも1週目としてはかなり高い部類に入ります。

 ストリーミングで好調なスタートを切っていますが、特にYouTubeで人気(今週2位)残り2つではSpotify > Apple Musicの順で人気です。

 

 Shawn Mendesは人気が長持ちしやすい系統、アダルトポップ系での人気が高いためHot 100での滞在週数が長くなりやすいです。

 アダルトポップ系統はギター系サウンドの曲を好むため、Shawn Mendesの曲とは相性が良いです。 

 

 

―1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road

 今週も盤石の1位の“Old Town Road”。ストリーミングでは今週も1億超えを果たし、これで5週連続の1億再生越えになりました。”Old Town Road"以前は1億再生を越えたのが累計でのべ4回なので、5週も1億再生を越えているこの曲の「異例ぶり」が分かると思います。

 

◇1週間で1億ストリーミングを越えた曲(アメリカで)

・Old Town Road 1.43億 (2019/4/20)

・Old Town Road 1.25億 (2019/4/27)

・In My Feelings 1.16億 (2018/7/28)

・Old Town Road 1.14億 (2019/5/14)

・In My Feelings 1.06億 (2018/8/4)

・Old Town Road 1.04億 (2019/5/18)

・Old Town Road 1.04億 (2019/5/18)

・Harlem Shake 1.03億 (2013/3/2)

・God’s Plan 1.02億 (2018/3/3)

 

 “Old Town Road”はストリーミング以外の指標でも好調。今週ダウンロードが1位に返り咲いたほか、ラジオの再生数も4位まで伸ばしています。全方面で人気を確保し、無双状態を整えるLil Nas X。来週のEd Sheeran & Justin Bieberの1位チャレンジも返り討ちにしそうです。

 この週にはDiploリミックスがリリースされ、DLなどで若干の恩恵を受けています。(iTunesでは20位程度にランクイン) しかしSpotifyApple Musicなどでは圏外でした。(=ストリーミングでの効果は薄め?)

 ほかこの曲はこの週の途中にAnimojiビデオも新たにリリースされました。

 

↑個人的にはLil Nas X本人が“First”というYouTubeにありがちなコメントを自らしているのが興味深いです。こういう所を見るとLil Nas Xはリスナーのことをよく観察していて、バズのツボを抑えるのが上手そうだなと感じます。

 

 

×× 5 Seconds Of Summer – Youngblood

 5 Seconds Of Summerの大ヒット“Youngblood”が今週チャートから姿を消しました。ピーク7位、チャート滞在は48週でした。

 この曲は5 Seconds Of Summerの「アーティスト像」をも変えるエポックメイキングな大ヒットでした。

 それまでの彼らは、派手さが際立つタイプのボーイバンドという印象が強く、チャートにもこれは反映されていました。一気にセールス等を伸ばして瞬間的に高い注目を集めた後はあまり長持ちせず、早々にチャートから姿を消してしまう……これが従来の彼らにありがちなチャートアクションでした。(このシングル以前のチャート滞在は長くても20週)

 しかし今回の“Youngblood”ではこの傾向が変化。リリース直後はそこまで注目度が高くなかったですが、徐々にラジオでヒット。初めてRadio Songs(50位まで)の圏内に入ることに成功しました。

  そして従来のポップ系に加えて、今まであまり縁のなかったアダルトポップ系ラジオでもオンエアが開始。最終的にはこの2つの系統で1位を獲得しました。この複数系統でのヒットが、ロングヒットになった大きな要因です。

  今までは固定ファンのセールスを中心に人気を集めてきた「ボーイバンド」像から、音楽面で多くのリスナーの心をつかむ大人のアーティストへの脱皮に成功しました。

 

 ちなみに5 Seconds Of Summerはロックバンドのような形態をとっていますが、ロック系のラジオにかかることはほとんど無く、ビルボードも彼らをロック系のチャートに入れていません。

 そんな彼らがロック系のチャートに入るためにはスタイルを変えてロック系ラジオでもかかるようにする、もしくはロック系アーティストの客演を務める、の2択です。

 彼ら唯一のロック系チャートへのエントリーは後者によるもので、その時にメインアーティストだったのはONE OK ROCKでした。

5 Seconds of Summer Chart History | Billboard

 

今週チャートから外れた曲 (9曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 BLACKPINK – Kill This Love (🗻41位 /⏰4週)

99 Avicii feat. Aloe Blacc – SOS (🗻68位 /⏰3週)

98 YG – Stop Snitching (🗻98位 /⏰1週)

96 P!nk feat. Chris Stapleton – Love Me Anyway (🗻96位 /⏰1週)

95 ScHoolboy Q – Numb Numb Juice (🗻55位 /⏰2週)

90 Marshmello, Tyga & Chris Brown (🗻90位 /⏰1週)

85 ScHoolboy Q & Travis Scott – CHopstix (🗻85位 /⏰1週)

67 ScHoolboy Q feat. 21 Savage – Floating (🗻67位 /⏰1週)

50 5 Seconds Of Summer - Youngblood (🗻7位 /48週)

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Vampire Weekend – Father Of The Bride 🎫

4 PnB Rock – Trapstar Turnt Popstar

18 Judah & The Lion – Pep Talks

24 Thrive Worship – A Thousand More

34 Greateful Dead – Dave’s Picks Volume 30: Fillmore East, New York, NY – 1/2/70

47 Amon Amarth – Berserker

54 Karol G – Ocean

71 Various Artists – NOW 70 

73 Bad Religion – Age Of Unreason

104 Ari Lennox – Shea Butter Baby

133 New Found Glory – From The Screen To Your Stereo 3

142 Big Thief – U.F.O.F.

167 Young Nudy & Pi’erre Bourne – Sli’merre (週の途中リリース)

168 Megan Thee Stallion – Tina Snow

 

 Now 70はNowシリーズの中で歴代最低の順位を記録。(それまでは68での52位が最低位)2017年の6月からNowのようなコンピレーションシリーズはアルバムセールスのみでカウントされるようになっています。

(それ以前は、まだ何らかのアルバムに収録されていない人気曲のストリーミングの数字で上位に入るコンピレーションアルバムもあった)

 

◇アルバムチャート長期滞在

100週目:Sza – Ctrl (今週118位)

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Shawn Mendes - If I Can't Have You

・Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus - Old Town Road

・Taylor Swift feat. Brendon Urie - ME!

・Khalid - Talk

・Sam Smith & Normani - Dancing With A Stranger

 

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Sech feat. Darell – Otro Trago

・Dalex, Rafa Pabön & Khea feat. Sech, Cazzu, Feid & Lenny Tavarez – Pa

 ラテン界で名を馳せるパナマ出身のラッパーSech。上記の2曲がラテン界で大ヒットしていて、そのうちUSにも上陸するでしょうか。

 

・Lewis Capaldi – Someone You Loved

 Ed Sheeranを筆頭に、James Arthur、Rag’n’ Bone Manなどイギリスで人気のある男性SSWの新株。今年イギリスではシングル1位になった“Someone You Loved”

 この曲がイギリスで1位になったのは2ヶ月前ですが、最近アルバムのリリースを発表したことで、再びこの曲がプロモーションされ再浮上しています。

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

✅:Avicii feat. Aloe Blacc – SOS (今週27位)

🍎:ScHoolboy Q feat. 21 Savage – Floating (今週20位程度)

🚩:Iggy Azalea – Started (今週22位)

 

 ストリーミングと一口に言えど人気の傾向がそれぞれ違うので、20~30位程度にランクインしてもHot 100に入らない曲も存在します。ちなみにApple Musicのみ順位が「程度」なのは、週間のチャートが無いからです。週の最終日の順位を参考順位として「程度」で表示しています。

 

 

関連 / 参考記事

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

ビルボードスタッフが議論するシリーズ

 

 今週のテーマはアルバム1位のVampire Weekendについてです。

 ① 2010年から3連続でアルバム1位に輝いていますが、長持ちの理由は?

② 13.4万という前作を上回るセールスをどう感じますか?

③ 新作関連の「アート」で気に入ったものは何ですか?

④ 今作はVampire Weekendの4つのアルバムの中で何位ですか?

⑤ 彼らはまだHot 100入りの経験がありませんが、今後代表曲になりそうなのは?

 

 ④の項目ではスタッフ5人のうち4人が「最下位」、残る一人は3位と回答しています。これはこのアルバムがあまり高く評価されていない、というよりはこれまでの作品が「良すぎて」超えるのが容易という考え方がされているようです。

 

 

*1:“Old Town Road”を両バージョン合算すると抜かれる

Hot 100 5/11 見どころ 【Old Town Roadが首位を守る!"ME!"は2位スタートに】

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 こんばんは!今週も見どころが多かったのでボリューミーな仕上がりになりました。

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Taylor Swiftの”ME!”は2位に。”ME!”は2018年以降最も高いセールス(19.3万)を記録するも、ストリーミングで圧倒的な数字を記録する”Old Town Road”には及ばず。”Old Town Road”は4週連続で1億再生超え

・DaBabyの“Suge”が46位→27位と浮上

P!nkが僅差を制しアルバム1位に

 

・今週のトップ10

      5月11日   R D S
-   1 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road 🍎🚩 6 2 1
2 Taylor Swift feat. Brendon Urie ME! ✅ 13 1 2
  3 Post Malone Wow. 3 8 6
4 Jonas Brothers Sucker  1 5 21
  5 Post Malone & Swae Lee Sunflower  17 11 4
  6 Ariana Grande 7 rings 8 21 5
  7 Halsey Without Me 5 19 9
8 Sam Smith & Normani Dancing With A Stranger 2 14 41
- 9 Billie Eilish bad guy - 12 3
10 Khalid Talk 14 15 8

 

R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

 今週Spotifyランキングで首位だったのは“ME!”でしたが、2バージョン合わせると”Old Town Road” > “ME!”になります。”Old Town Road”は今週も1億再生超え。

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

緑背景はその指標がトップ10内で最高、赤背景は最低

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆98 YG – Stop Snitching

 YGの“Stop Snitching”が98位に登場。Apple Music・SpotifyYouTubeの全てで一定の人気を得ています。この曲は5/24にリリースされる”4Real 4Real’”に収録される予定。

 

◇97 Meek Mill feat. Ella Mai – 24/7

 シングルカットされたMeek MillとElla Maiの”24/7”が97位に再登場。アルバムリリース時以来のHot 100再登場です。

 ラジオではリズミック系、アーバン系などで人気を博しています。ストリーミングではApple Musicで150位程度、Spotifyで200位圏外、YouTubeで100位圏外と微妙。

 ストリーミングで人気だったアルバムの曲のストリーミング数は、アルバムリリース時>>>シングルカット以降になりがちです。

 

☆96 P!nk feat. Chris Stapleton – Love Me Anyway

 P!nkの新作”Hurts 2B Human”がアルバム1位に。自身3回目の1位。チケット戦略でセールスを稼いだHillsong Unitedを僅差でかわしてのアルバム1位です。(その差は8000枚です。Hillsong Unitedをアルバム1位と予想していたメディアもあった)

 

 P!nkは前作“Beautiful Trauma”ではツアーチケットと音源を絡めた戦略で総合40.8万(うち純売上は38.4万)というかなりの数字を記録。今回のアルバムではチケット戦略をしなかったので、爆発的なセールスにはなりませんでしたが、それでもファン基盤の強さを見せてアルバム1位の座を守りました。(今回のアルバムは総合11.5万売上、純売上は9.5万枚)

 このアルバムからは2曲がHot 100にエントリー。既存シングルの“Walk Me Home”は62位→49位と浮上。そしてChris Stapletonを迎えた”Love Me Anyway”が今週DL3位で96位に登場しています。(DL以外ではポイントが少ないのでDL3位でもHot 100は96位) 

 Spotify有力プレイリストToday’s Top HitsにはP!nkの曲が2つこのリストに入っています(“Walk Me Home”とKhalidとのコラボ”Hurts 2B Human”) ”Walk Me Home”は今週USのSpotifyで193位→110位と浮上しました。

 

☆94 Luke Bryan – Knockin’ Boots

 Luke Bryanの“Knockin’ Boots”が94位に登場。カントリー系ラジオで順調に数字を伸ばしているほか、DLでもそれなりに数字を集めています。(今週32位)

 

☆92 SZA, The Weeknd & Travis Scott – Power Is Power

 前の週にリリースされていた“Power Is Power”が「1週遅れ」でHot 100に登場。92位にランクインしています。この曲が収録されている、ドラマGame of Thronesサントラのリリースが今週だったので、その効果だと思われます。

 SpotifyApple Musicではリリース週である先週の方がより人気でしたが、YouTubeではサントラ効果で今週の方が高い数字を記録しました。

 Spotifyでは先週21位ながらもHot 100に登場できず。ここまで高いSpotify順位でHot 100に登場しないのは珍しいです。

 

 

☆90 Marshmello, Tyga & Chros Brown – Light It Up

 Marshmelloのヒップホップシリーズ。TygaとChris Brownを迎えた“Light It Up”が90位に登場。主にDLやSpotifyで人気。

 ダンス~ポップを得意とするMarshmelloの曲ですが、これは「ラップ」とジャンル分けされることが多く、Spotifyの有力プレイリストRapCaviarはこの曲をリストに入れています。ビルボードもHip-Hop / R&B Songsに分類しています。

 

☆69 Ozuna, Daddy Yankee, J Balvin, Farruko & Anuel AA – Baila Baila Baila

 Ozunaの“Baila Baila Baila”が69位に登場。もともとHot 100に近いヒットを記録していましたが、新たにリリースされたリミックスの効果でHot 100入りを果たしました。

 リミックスのリリースでラジオ人気も向上。ラテン系ラジオでは9位→1位と一気に再生数を伸ばしています。

 

☆67 ScHoolboy Q feat. 21 Savage – Floating

 今週ストリーミングで最も人気を集めたのはScHoolboy Qのアルバムです。収録曲のうち“Floating”、”CHopstix”、“Numb Numb Juice”の3曲がHot 100にエントリー。

 アルバムチャートでは3位に登場。総合売上は8.1万で、うち純売上は1.8万でした。(=ストリーミングのポイントが多くを占めている)

 

 

 アルバム1位を獲得したかった彼はアルバムリリース前に、”a lot”の歌詞とかけて「J. Coleよ、ストリーミング偽装マシンを教えてくれや」というジョーク(?)を飛ばしていました。それが言及された「ストーリー」では“BTS?”の文字があり、BTSが偽装マシンを使っているのでは?と彼が考えているように受け取れます。

 これは「都市伝説」の域を出ず、別に真に受けるものでもないのですが、万が一この「マシン」があって、それを採用していたとしてもScHoolboy Qはアルバム1位になれません。 

 BTSが直近の“Map of the Soul: Persona”で記録した「ストリーミングの売上」は2.6万。今週の”CrasH Talk”の総合売上は8.1万なので「マシン」と合わせると10.7万まで到達。しかし今週のアルバム1位のP!nkの総合売上11.5万には届きません。

 

 彼は2014年に“Oxymoron”でアルバム1位を獲得した後、2016年の”Blank Face LP”は2位、今作は3位と推移しています。

 

▽55 Pinkfong – Baby Shark

 個人的には少し予想外の事態です。“Baby Shark”が55位に順位を落としましたが、チャートに「残留」しています。

 ビルボードはこの曲が登場した時の記事で以下のように説明しており、「古い」とみなされるこの曲がチャートに入るには50位以上にランクインする必要があると述べていました。

 

(Given its original 2016 release date, the song needed to accumulate enough chart points to appear in the Hot 100's top 50 before it was eligible to chart, per chart rules regarding older songs.)

 

 私は「落ちる時もこのルールが適用されて、51位以下になるとチャートから外れる」と考えていたのですが、どうやら1回チャートに入りさえすれば51位以下に落ちてもチャートから外れないようです。*1あまり見ない事例だったのでルールを勘違いして捉えていました。訂正します。

 この曲は現在チャート滞在18週目なので、このままいけば3週間後に通常のリカレントルール(21週目以降に51位以下になると……のルール)が適用され、他の曲と同じようにチャートから外れる見込みです。

 

 そして今週、この「古い曲ルール」が適用されたかもしれない曲がもう一つあります。

 現在のチャートはストリーミングを中心に回っており、50位まであるOn-Demand Streaming Songsチャート(SpotifyApple Musicなどの選択型)ではランクインしている曲が「1曲以外」全てHot 100に入っています。(リカレントした曲は除く)

 しかし26位にランクインしているLizzoの“Truth Hurts”はリカレントでもないのに唯一Hot 100に登場していません。この曲は他にDLでも22位を記録しており、Hot 100に入るだけの成績を十二分に収めているはずです。しかし、「なぜか」Hot 100には入っていません。その理由として考えられるのがこの「古い曲ルール」です。

 この“Truth Hutrs”はもともと2017年にリリースされたシングルです。当時は商業的に大きな注目を集めなかったのですが、今年4月のNetflixのドラマ”Someone Great”に登場したことで注目され、DLとストリーミングで人気になりました。

 注目を集め始めたのが最近なので、「新しい曲」という印象はありますが、元のリリースが2017年だったことにより「古い曲」と見なされ、このルールが適用されて50位以上でないとHot 100に登場できない、という可能性があるのです。

 

 ただしこの状況が来週変わる可能性があります。来週のチャート集計の週から、この“Truth Hurts”がLizzoの最新アルバム”Cuz I Love You”の「デラックス版」に追加されました。(Spotifyランキングを5/2→5/3と切り替えるとジャケが変わっている様子を観察できます)

 これで“Truth Hurts”のストリーミングが、アルバム”Cuz I Love You”の一部としてアルバムチャートでも集計されるようになります。

 アルバムへの追加の主な狙いはおそらくこれですが、もしかしたら2019年にリリースされた最新作へ追加されたことを受け、ビルボードが「これは新曲だ!」と考え直すこともあるかもしれません。

 

 Hot 100は「Hot」な新曲中心で構成するために、リカレントルールなどで古い曲のエントリーを制限し、新しい曲がエントリーしやすい構成をとっています。

 リカレントルールはヒット済みの曲を制限するルールです。ヒット済みの曲はつまり、チャートでの「紹介」も済んだ曲でもあるので、これを外すのは理解できます。

 しかしリリース年で判断される「古い曲」はまだチャートで「紹介」されていない曲を制限してしまう可能性があるので、このルールはチャートの新規性=「Hot」性を削いでしまう可能性があります。

 

△33 Morgan Wallen – Whiskey Glasses

 今週は3つのカントリー曲が新たにトップ40入り。Morgan Wallenの“Whiskey Glasses”が33位、Blake Sheltonの”God’s Country”が34位、Chase Riceの“Eyes On You”が38位にそれぞれ浮上しています。Morgan Wallen、Chase Riceは初のトップ40入り。大御所Blake Sheltonは16曲目のトップ40です。

 これらは主にカントリー系のラジオでの好調が理由ですが、“Whiskey Glasses”と“God’s Country”はDLやストリーミングでもある程度人気が出ています。(Apple Musicではこの2曲は100位付近まで到達)

 

△27 DaBaby – Suge

 DaBabyの“Suge”が46位→27位と浮上。初のHot 100エントリーでトップ40まで到達しました。

 数週前からApple Musicで高い人気がありましたが、YouTubeSpotifyでも人気が急上昇。さらにはシングルカットされてラジオでもかかり始め、かなり追い風が吹いています。このペースを維持できればトップ10まで到達しそうです。

 

△2 Taylor Swift feat. Brendon Urie – ME!

 Taylor Swiftの新曲、まさかの2位スタート。セールスでは19.3万と2018年以降最高の数字を記録し、ストリーミングの数字も低いわけではありませんが、ストリーミングを爆発的に稼ぐ“Old Town Road”には及びませんでした。

 セールスで圧倒的なメガスターを、新人ラッパーがストリーミングの数字で打ち破ったということで、かなり革新的な出来事だと思います。

 

 最近は週のセールスが10万を超えることは珍しく、2018年以降の約1年半で、10万以上のダウンロードを記録したのはわずか10週だけです。

 

2018

1/3:Ed Sheeran & Beyoncé – Perfect 15.1万

1/6*2:同上 16.3万 

1/13:同上 10.9万

2/3:Drake – God’s Plan 12.7万

5/5:Ariana Grande – no tears left to cry 10.0万

7/28:Drake – In My Feelings 11.5万

8/4:同上 10.4万

 

2019

3/9:Lady Gaga & Bradley Cooper – Shallow 11.5万

4/20:Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road 12.4万

5/11:Taylor Swift feat. Brendon Urie – ME! 19.3万

 

 ファン基盤がしっかりしているTaylor Swiftは、セールスでは他を圧倒する数字を持っていますが、それでもHot 100首位を獲得できませんでした。

 ”ME!"と”Old Town Road"を比較した際、”ME!"の主な優位点はセールスにあるので、セールスで勝負できる1週目で首位を逃した以上、今後首位に浮上するのは厳しそうです。仮に首位を奪う展開があるとすれば、”Old Town Road"の勢いが落ちるまで”ME!"が上位で粘り続ける場合ですかね……。

 

 “We Are Never Ever Getting Back Together”、”Shake It Off”、“Look What You Made Me Do”と、ポップ化が進んで以降は全てのアルバムのリード曲でHot 100首位を獲得してきたTaylor Swiftでしたが、”ME!”はこれに続かず。(まだアルバムのリード曲と決まったわけではないですが……)

 今回”ME!”が1位を取れなかった主な理由は正直「相手が強かった」だと思います。“Old Town Road”はチャートのポイントがかなり高い1位なので、競争相手が悪かったというのが一番の理由だと思います。”ME!”は“Old Town Road”リミックス以前の週にリリースされていれば、多くの週で1位を取れたはずです。

 この相手が強かったというのは「運が悪かった」とも言えますが、「シングル戦略に失敗している」という見方もできます。

 2017年のシングル“Look~”は“Despacito”が落ちてくるタイミングでリリースされ、1位を奪うことに成功していたので、今回もその時のように”Old Town Road”が落ちてくるのを待てば1位を取れたのかもしれません。(ただ近い内にJustin Bieberも新曲をリリースするらしいので、結局のところ待つのも一概に正解とは言えませんが)

 

 ちなみにこの曲は今週100位→2位と一気に98個も順位を上げていて、「Hot 100史上最大のジャンプアップ」に該当しますが、これは本当に「ジャンプ」というよりはビルボードの集計周期の都合のようなもので、あまり重要な記録ではないと考えています。(と私は考えています、そしてHeadline Planetという音楽チャート情報を扱うサイトの創設者 Brian Cantorさんも述べています)

 

 またPanic! At the DiscoのBrendon Urieは自己最高位を更新しています。(それまでは“High Hopes”の4位が最高位)

 

×× Post Malone – Better Now

 Post Maloneの“Better Now”がロングヒットの末、チャートから外れました。ピークは3位、チャート滞在は52週でした。53週を越えた曲は26位以下に落ちるとチャートから外れる、というルールが適用されました。

 Post Maloneはストリーミングでの高い人気に加え、ラジオ人気が他のラッパーよりも若干高めです。ポップ系ラジオではあまり人気の無いほかのラッパーと比べると、ポップ系ラジオでの人気が格段に高いです。逆にHip-Hop / R&B 系ラジオではポップ系ほどは人気が出ないケースもあります。この傾向は“Psycho”以降で顕著です。

 このストリーミングでの人気、ラジオの幅広い系統での人気が組み合わさり52週にわたるロングヒットになりました。

 

 また、Post Maloneはアルバム“全体”のストリーミング数も際立っており、アルバム18曲中、17曲がSpotifyで1億再生に到達しているようです。(おそらく到達していないのは“Jonestown (Interlude)”)

 

 

今週チャートから外れた曲 (10曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

99 Michael Ray – One That Got Away (🗻67位 /⏰9週)

98 Billie Eilish – xanny (🗻35位 /⏰4週)

97 Alec Benjamin feat. Alessia Cara – Let Me Down Slowly (🗻79位 /⏰9週)

95 Billie Eilish – my strange addiction (🗻43位 /⏰4週)

94 Scotty McCreery – This Is It (🗻42位 /20週)

92 Lil Baby – Pure Cocaine (🗻46位 /⏰16週)

91 Khalid & Kane Brown – Saturday Nights (🗻57位 /⏰12週)

90 French Montana feat. Blueface & Lil Tjay – Slide (🗻90位 /⏰1週)

85 Imagine Dragons – Bad Liar (🗻56位 /⏰9週)

42 Post Malone – Better Now (🗻3位 /52週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 P!nkHurts 2B Human 

2 Hillsong UNITED – People 🎫

3 ScHoolboy Q – CrasH Talk

8 AJR – Neotheater

13 Rob Thomas – Chip Tooth Smile

28 MARINA – Love + Fear

36 blackbear – Anonymous

37 サウンドトラック – For The Throne

50 Dylan Scott – Nothing To Do Town (EP)

51 Twiztid – Generation Nightmare

53 Kevin Abstract – Arizona Baby

71 Rodrigo y Gabriela – Mettavolution

80 Farruko – Gangalee

88 サウンドトラック – Avangers: Endgame

89 Josh Ritter – Fever Breaks

110 The Mountain Goats – In League With Dragons

119 The Cranberries – In The End

159 Catfish And The Bottlemen – The Balance

182 サウンドトラック – Ugly dolls

 

◇アルバムチャート長期滞在

100週目:Luke Combs – This One’s For You (今週16位)

100週目:Halsey – hopeless fountain kingdom (今週177位)

 

Luke Combsはデラックス版のリリースも挟んでロングヒットに。彼はカントリーシンガーの中ではストリーミングでの強さが際立ちます。

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Taylor Swift feat. Brendon Urie – ME!

・Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road

・Khalid – Talk

・Beyoncé – Before I Let Go

・Sam Smith & Normani – Dancing With A Stranger

 

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Lizzo – Juice

 こちらは今ラジオでかかっている「現在のシングル」なので「古い曲ルール」の影響を受けません。

 

・Logic feat. Eminem – Homicide

・Shawn Mendes – If I Can’t Have You

 トップ10で登場する可能性がある2曲。Shawn Mendesは週の後半、ストリーミングの調子が良いです。

 

・参考 / 関連記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

ビルボードのスタッフが議論するシリーズ

 

 今週のテーマはまさかのDaBaby。“ME!”じゃないんかい!

 

① ”Suge”ヒットの主要な理由は何ですか?

② アルバム“Baby On Baby”の中にネクストSugeになりそうな曲は?

③ DaBabyの曲で客演してほしい人は?

④ Post Maloneと“Old Town Road”以外ヒップホップのヒットが少ないと感じますか?

⑤ 次にトップ40に到達するのはLil Tjay、Megan Thee Stallion、NLE Choppa?

 

 

 

*1:もしくはビルボードがこれを「新曲」と捉え直した可能性も一応考えられる

*2:チャートの日付変更で特殊なスケジュール