チャート・マニア・ラボ

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Hot 100 12/28 見どころ 【Harry Stylesアルバム1位 / Lil Uzi Vert新曲5位】

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こんばんは!今の時間まさにクリスマスといった感じですが(というか終わった)、チャートでクリスマスがピークを迎えるのは次の週です!

 

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

Harry Stylesが総合売上47.8万という圧倒的な数字でアルバム1位。チケットやマーチ戦略を活用し、純セールスが39.3万。ストリーミングの数字も優秀(1億再生越え)で、7曲がHot 100入り。

・Lil Uzi Vertの新曲”Futsal Shuffle 2020”が5位に登場

・“All I Want for Christmas Is You”が首位キープ。2位も”Rockin’ Around the Christmas Tree”で、1位2位がクリスマス曲

 

・今週のトップ10

―1◎ Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You

△2◎ Brenda Lee – Rockin’ Around The Christmas Tree

▽3  Post Malone – Circles

△4◎ Arizona Zervas – Roxanne

☆5◎ Lil Uzi Vert – Futsal Shuffle 2020 🍎?✅

△6◎ Burl Ives – A Holly Jolly Christmas

―7◎ Maroon 5 – Memories

▽8  Lewis Capaldi – Someone You Loved

△9◎ Bobby Helms – Jingle Bell Rock

▽10  Lizzo – Good As Hell

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

Appleで1日滞在日数が長かったのは“The Box”の方ですが、数字から推測しておそらく”Futsal”の方が週間合算で上に行きそう

🚩=“BOP” (15位)

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

曲の個別解説

 

☆83 NLE Choppa – Famous Hoes

 NLE Choppaの新曲が83位に登場。3回目のHot 100。YouTubeで13位と高順位にランクイン。SpotifyAppleでは100位を少し下回る程度の順位。

 彼は新EPを今週リリースしましたが、この曲は収録されていません。このEPが反映されるのは来週のチャートです。

 

☆79 Blake Shelton & Gwen Stefani – Nobody But You

 Blake Shelton夫妻によるデュエット曲が79位。DLでかなりの人気を博し、今週セールス1位。ストリーミングの反応は薄めですが、YouTubeでは99位にランクインしています。ラジオでは未オンエア。

 この曲は同じ週にリリースされた彼のコンピレーションアルバム(≒ここ4年のベスト集)にも収録されています。この作品は、チケット戦略などを活用してアルバムチャート2位に入っています。総合売上9.6万、純セールスが8.3万なので、ストリーミングの数字も皆無という訳ではないです。

 

☆78 Juice WRLD – Let Me Know (I Wonder Why Freestyle)

 元々SoundCloudにアップロードされていたJuice WRLDの楽曲が正式にリリース。AppleSpotifyなどの媒体でも公開され、人気を得ました(両方でトップ50入り)

 この曲への注目が集まったきっかけの一つにTikTok挙げられています。彼が亡くなる前の、先月頃から注目を集めていたようです。(関連:TikTok で使われる曲を探る 【スマブラ、Tame Impalaなど】 - チャート・マニア・ラボ

 

☆67 YoungBoy Never Broke Again – Dirty Iyanna

 Michael Jacksonの“Dirty Diana”をサンプリング&もじった”Dirty Iyanna”が67位にランクイン。IyannaとはボクサーFloyd Mayweatherの娘、Iyanna Mayweatherを指していると思われます。

 この曲は彼の人気が高いYouTubeで4位にランクインしたほか、Apple Musicでもトップ50入り。Spotifyでは圏外。

 

☆62 Harry Styles – Falling

 Harry Stylesが圧倒的な数字でアルバム1位を獲得!総合47.8万という破格の数字を記録。これはTaylor Swift(86.9万)、Post Malone(48.9万)に次ぐ今年3番目の数字です。

 この数字を大きく支えたのはチケット・グッズのバンドル戦略。これらとアルバムを抱き合わせで販売することで、セールスの数字を大きく伸ばしました。セールスは39.3万。

 ストリーミングの数字も良好で、枚数換算で8.3万、再生数だと1.09億。ポップスのアルバムで過去に1億再生を越えたのはAriana Grande(2枚)、Ed Sheeran(2枚)、Billie Eilish、Taylor Swiftのみなので、かなり優秀な成績だと思います。

 Spotify人気の方が高かったですが、Apple Musicでもそれなりに上位にランクインしています。

 この人気で収録曲7つがHot 100にランクイン。シングルでラジオのオンエアもある“Adore You”が24位に浮上。ほか既存曲の”Watermelon Sugar”が54位に、新規曲の”Falling”が62位に登場。アルバムは全体的に再生されていたため、Hot 100に入らなかった残りの収録曲も全てBubbling Underには入っています。(アルバム単位で再生されていた証拠です)

 

 Harry Stylesは前作の時点から、アルバム志向が強くシングルでの運用が難しい曲が多く、シングルの順位は尻すぼみになる傾向がありました。ラジオでも再生数をそこまで稼いでおらず、「シングルではうまく行っていない」という印象が残りました。

 それは今作も同じで、”Lights Up”は登場後に大きく順位を落としていましたが、このアルバム重視の方向性が間違いではなかったことを今作の成績で示しました。

 昨今のストリーミングはアルバムを中心に再生数が動く傾向があるので、この路線はかなり今の時代に適していると思います。

 

 元同僚のLiam Payneはシングルで一定の成功を収めました。“Strip That Down”はHarry Stylesの”Sign of the Times”とは違いラジオでしっかりとヒットし、ロングヒットになりました。ほかRita Oraとの“For You”などシングル単位でのヒット*1は少なくないですが、アーティストとしての音楽性が見えにくかったせいなのか、今年リリースされたアルバムはなんとUSで111位デビューでした。母国UKでも17位など厳しい成績です。

 

 

◇50 Perry Como And The Fontane Sisters With Mitchell Ayres And His Orchestra - It's Beginning To Look A Lot Like Christmas

 50位以上では、今週クリスマス曲が2つ増加。昨年の同週では+6曲だったことを考えると増加ペースが遅めです。 (先週の記事で+5曲と書いていましたが、+6曲でした。訂正します)

 

昨年の同週 vs 今年 赤字はその週に登場した曲 (50位以上)

2018 2019
7 All I Want for Christmas Is You 1 All I Want for Christmas Is You
10 It's the Most Wonderful Time Of The Year 2 Rockin' Around The Christmas Tree
11 Rockin' Around the Christmas Tree 6 A Holly Jolly Christmas
12 A Holly Jolly Christmas 9 Jingle Bell Rock
13 Jingle Bell Rock 15 It's the Most Wonderful Time of the Year
17 The Christmas Song (Merry Christmas To You) 17 Last Christmas
27 Last Christmas 23 Feliz Navidad
28 Rudolph The Red-Nosed Reindeer 28 Let It Snow, Let It Snow, Let It Snow
32 Let It Snow, Let It Snow, Let It Snow 30 The Christmas Song (Merry Christmas To You)
33 Sleigh Ride 36 Rudolph The Red-Nosed Reindeer
34 Feliz Navidad 37 Sleigh Ride
35 Here Comes Santa Clause (Right Down Santa Clause Lane) 40 Happy Holiday / The Holiday Season
41 (There's No Place Like) Home For The Holidays 47 Here Comes Santa Claus (Right Down Santa Claus Lane)
42 It's Beginning To Look A Lot Like Christmas 50 It's Beginning To Look A Lot Like Christmas
45 Happy Xmas (War Is Over)  
47 Wonderful Christmastime  
48 White Christmas  
50 Christmas (Baby Please Come Home)  

 

 上位曲の順位は今年のほうが高めなものの、曲数は少ないです。クリスマスのピークに当たる来週で一気に増加するでしょうか?ちなみに昨年はピーク週に+4曲が登場&1曲減少でした。

 先週59位にランクインしていたTaylor Swiftの”Christmas Tree Farm”は圏外に。Jonas Brohtersの“Like It’s Christmas”は引き続きランクイン。(53位)

 

▽45 Jonas Brothers – Only Human

 クリスマス曲が多く登場する影響で、既存の曲はチャートから外れる危機に。Jonas Brohtersの“Only Human”も危険水域ですが、今週は45位で残留を果たしました。

 次の週からポップ系ラジオは今年ヒットした曲を再び振り返りオンエアし始めます。この影響で一部の過去ヒットは(集計が)12月の終盤の週に順位を伸ばします。ただし既にHot 100から外れている場合は、再生数が伸びてもHot 100に再登場することはないです。

 “Only Human”はこの恩恵を受けてHot 100残留を果たせるでしょうか? この影響でラジオが伸びそうなのは”Sucker”の方かもしれませんが。 

 

△18 Roddy Ricch – The Box

 先週アルバムと共にHot 100に登場したRoddy Ricchの“The Box”が18位まで上昇。大きかったのはSpotifyでの浮上。先週→今週で再生数がおよそ2倍に。総合ヒットリストToday’s Top Hitsに入った影響が大きいでしょうか。

 Apple Musicでも好調をキープ。週のはじめは“Futsal Shuffle 2020”に1位の座を譲りましたが、月曜日以降は1位に返り咲きました。YouTubeでもビデオ無しながら上昇。

 クリスマス後にトップ10入りの可能性も? (同様に彼が客演するMustardの“Ballin’”にも少しだけトップ10入りの可能性あり)

 

☆5 Lil Uzi Vert – Futsal Shuffle 2020

 ストリーミングで圧倒的な人気を得た“Futsal Shuffle 2020”が5位デビュー。”Bad and Boujee”=1位、“XO TOUR Llif3”=7位に次ぐ3回目のトップ10で、Lil Uzi Vert自身の曲では最高位。

 Spotifyで今週1位。Appleでも週の最初に1位を獲得(週の合算チャートが無いので不明だが、週のトータル再生数でおそらく“The Box”を上回っていると思われる)

 DLやラジオからはあまりポイントを得ず。この曲はダンスの方法を解説する動画などが既に多数リリースされており、ビデオが公開されればYouTubeで大きく再生数を稼ぐ可能性も。

 

△4 Arizona Zervas – Roxanne

 クリスマス期間中にじわじわ順位を伸ばしている“Roxanne”が4位まで浮上。1位2位がクリスマス曲、3位の”Circles”のポイントが横ばいなので、クリスマス終了後に1位に浮上するかもしれません。

 3位の“Circles”は今週ラジオ1位になりましたが、“Good As Hell”の再生数減少の影響が大きく自身のラジオ再生数はそこまで伸びていません。(つまりHot 100の総合ポイントも横ばい) Post Maloneは初のラジオ1位。リズミック~ポップ、アダルトポップと幅広い系統でオンエアされたことに加え、オルタナティブ系と未知の系統でも浮上中です。

 

 

△2 Brenda Lee – Rockin’ Around The Christmas Tree

 1位の“All I Want for Christmas Is You”と合わせてクリスマス曲が1位2位を独占。昨年までのクリスマス曲の最高位は3位だったので、今年の躍進ぶりが際立ちます。

 クリスマス曲はストリーミングで数字を稼いだ上で、ラジオ&DLも同時に数字を稼げる点が強いです。ストリーミングで強い曲は多くの場合、ラジオとのピークがズレる or ラジオでの数字がそもそも微妙というパターンが多いのですが、クリスマス曲は全てのピークのタイミングが揃うというのが珍しいですね。

 クリスマス曲が1位&2位を占めたのはストリーミングの数字が優秀なだけではなくこの総合力の強さ、また他に強い曲が少なかったことが大きいでしょう。(昨年は”thank u, next”が強かった)

 

 “All I Want for Christmas Is You”は今週5440万再生を記録。昨年のピーク週=5190万よりも既に多い再生数です。

 昨年は直前の週→ピーク週で再生数が約1.5倍になりました。今年もこの増加率が続くとすれば、日程がやや有利(12/20~12/26集計で、クリスマス「後」が少ない)な点まで考慮して、来週の再生数は9000万前後でしょうか。

 

×× Ed Sheeran feat. Khalid – Beautiful People

 Ed Sheeranのアルバムのシングルとして期待された“Beautiful People”がチャートから外れました。ピークは13位、滞在24週。ここ数週ラジオの下落幅が大きく、クリスマス曲に押し出されたというよりは、自身のマイナスによってチャートから外れた印象です。

 “I Don’t Care”と同様に、普通にヒットの部類には入る成績を収めたものの、前作の”÷”のシングルと比べると成績にやや物足りなさを感じます。

 

×× Juice WRLD – Legends

 Juice WRLDの”Legends”が今週チャートから外れました。滞在はまだ20週に満たないものの、リカレントルールが適用されたようです。

 リカレント曲を対象にしたチャートに入っているので、本来ならば100位~51位相当の成績を記録したものの、古い曲と見なされて外されたということになります。同様に滞在が20週に到達していない”Robbery”(今年リリース)もこのルールによって外されました。

 “Legends”は昨年リリースの曲ですが、ピークは先週に来ていたので今週即外されたのは意外ですね。ストリーミングでは過去曲が再浮上する現象は多発しているので、リリース年を理由にまだピークが来ていない曲をリカレントに回すのは、色んな曲のチャンスを阻害しているようにも思えるのですが、どうなんでしょうね。

 Billie Eilishの”Ocean Eyes"はかなり昔のリリースながらも90位帯に登場したので、全ての曲にこのルールを適用するわけではないという点も謎です。

 

 

今週チャートから外れた曲 (12曲)

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

99 Rod Wave & Kevin Gates – Cuban Links (🗻92位 /⏰3週)

98 Roddy Ricch – Big Stepper (🗻98位 /⏰1週)

97 Fat Joe & Dre feat. Eminem & Mary J. Blige – Lord Above (🗻97位 /⏰1週)

94 Keith Urban – We Were (🗻65位 /⏰15週)

93 Idina Menzel & Evan Rachel Wood (🗻70位 /⏰3週)

88 Jason Aldean – We Back (🗻78位 /⏰4週)

87 Juice WRLD – Empty (🗻41位 /⏰4週)

85 XXXTENTACION feat. PnB Rock & Trippie Redd – Bad Vibes Forever (🗻85位 /⏰1週)

59 Taylor Swift – Christmas Tree Farm (🗻59位 /⏰1週)

50 Ed Sheeran feat. Khalid – Beautiful People (🗻13位 /24週)

49 Juice WRLD – Robbery (🗻27位 /⏰19週)

29 Juice WRLD - Legends (🗻29位 /⏰3週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Harry Styles – Fine Line 🎫👕

2 Blake Shelton – Fully Loaded: God’s Country 🎫

16 City Morgue – City Morgue, Volume II

56 KAYTRANADA – BUBBA

93 Lil Durk – Family Over Everything

99 The Jackson 5 – The Jackson 5 Christmas Album

137 Smokepurpp – Deadstar 2

152 YFN Lucci – HIStory

 

 

 

◇アルバムチャート長期滞在

1周年:A Boogie Wit da Hoodie – Hoodie SZN (今週79位)

1周年:Bad Bunny – X 100PRE (今週124位)

1周年:Pentatonix – That’s Christmas To Me (今週139位)

1周年:21 Savage – i am > i was (今週171位)

450週目:Creedence Clearwater Revival feat. John Fogerty – Chronicle The 20 Greatest Hits

 

1周年ストレートインのHoodie SZN、X 100PRE、i am > i wasはセールスが軒並み低く、ほぼストリーミングのみでここまでロングヒットになっています。

 

 

・今週ラジオで伸びた曲

Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You

Harry Styles – Adore You

・The Weeknd – Heartless

・Dan + Shay & Justin Bieber – 10,000 Hours

・Arizona Zervas - Roxanne

 

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

🍎 Roddy Ricch feat. Mustard – High Fashion (今週12位程度)

✅ Harry Styles – To Be So Lonely (今週32位)

🚩 Rod Wave feat. Kevin Gates – Cuban Links (今週12位) 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

 

 

関連 / 参考記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

・各指標の順位

Spotifyhttps://spotifycharts.com/regional/us/weekly/2019-12-13--2019-12-20

Apple Music:【魚拓】Top 100: USA on Apple Music

YouTubehttps://charts.youtube.com/charts/TopSongs/us/20191213-20191219

・ラジオなど:https://kworb.net/radio/

 

 

*1:USでの順位は低いが、ヨーロッパ圏ではかなりヒットしていた

ヒット曲の最終的なHot 100成績 【リカレント2019】

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 USシングルチャート、Hot 100では古い曲が過剰にチャートに居座るのを防ぐため、それらを外す「リカレントルール」なるものが存在します。Hot 100はラジオを基調としたシステムのため、このようなルールを制定しないと過去のラジオヒットが必要以上に残ってしまうのです。

 このルールで1回外れると、ほとんどの場合再登場しません。例外は訃報があった際、過去のピークを大幅に更新しそうな時くらいです。つまりこのルールで外れたタイミングの成績が、基本的にはその曲のHot 100最終成績になるのです。

 今回はこのルールを参考に、今年のヒット曲の「最終成績」を見ていこうと思います。

 

※ルール

・21週目以降、51位以下に落ちると外れる

・53週目以降、26位以下に落ちると外れる

 

🗻=ピーク順位 /⏰チャート滞在週

 

1/5

なし

 

1/12

なし

(この週はクリスマス曲が大量に外れていますが、毎年再登場していて「最終的な成績」ではないので載せていません。計23のクリスマス曲が外れているので入れ替わり量は屈指の週です)

 

1/19

46 Meek Mill feat. Jeremih & PnB Rock - Dangerous (🗻31位 /⏰20週)

39 Mitchell Tenpenny – Drunk Me (🗻39位 /⏰21週)

 

1/26

なし

 

2/2

38 Luke Combs – She Got The Best Of Me (🗻31位 /⏰23週)

 

2/9

50 Imagine Dragons – Natural (🗻13位 /⏰27週)

 

2/16

55 Jimmie Allen – Best Shot (🗻37位 /⏰20週)

 

2/23 ※Ariana Grandeのアルバムの週

92 French Montana feat. Drake – No Stylist (🗻47位 /⏰20週)

47 Bazzi feat. Camila Cabello – Beautiful (🗻26位 /⏰27週)

44 Dan + Shay – Speechless (🗻24位 /⏰22週)

41 Khalid & Normani – Love Lies (🗻9位 /⏰51週)

38 Ella Mai – Trip (🗻11位 /⏰27週)

35 Ariana Grande – breathin (🗻12位 /⏰25週)

 

3/2

73 Lil Wayne (feat. Swizz Beatz) - Uproar  (🗻7位 /⏰20週)

 

3/9

なし

 

3/16

77 The Chainsmokers & Kelsea Ballerini – This Feeling (🗻50位 /⏰20週)

48 Pardison Fontaine feat. Cardi B – Backin’ It Up (🗻40位 /⏰20週)

 

3/23

47 Sheck Wes – Mo Bamba (🗻6位 /⏰28週)

45 Flipp Dinero – Leave Me Alone (🗻20位 /⏰25週)

 

3/30

94 Billie Eilish – when the party’s over (🗻52位 /⏰20週) ※のちに再登場

48 Gucci Mane, Bruno Mars & Kodak Black – Wake Up in the Sky (🗻11位 /⏰26週)

 

4/6

83 Anuel AA & Romeo Santos – Ella Quiere Beber (🗻61位 /⏰20週)

 

4/13 ※Billie Eilishのアルバムの週

48 DJ Snake feat. Selena Gomez, Ozuna & Cardi B – Taki Taki (🗻11位 /⏰26週)

47 Juice WRLD – Lucid Dreams (🗻2位 /⏰46週) ※のちに再登場

45 Cardi B, Bad Bunny & J Balvin – I Like It (🗻1位 /⏰51週)

 

4/20

85 Billie Eilish & Khalid – lovely (🗻64位 /⏰22週)

49 Kodak Black feat. Travis Scott & Offset – ZEZE  (🗻2位 /⏰25週)

 

4/27

なし

 

5/4

50 Cardi B – Money (🗻13位 /⏰26週)

49 Dan + Shay – Tequila (🗻21位 /⏰50週)

45 Bad Bunny feat. Drake – MIA (🗻5位 /⏰27週)

 

5/11

94 Scotty McCreery – This Is It (🗻42位 /⏰20週)

42 Post Malone – Better Now (🗻3位 /⏰52週)

 

5/18

50 5 Seconds Of Summer - Youngblood (🗻7位 /⏰48週)

 

5/25

63 A Boogie Wit da Hoodie feat. 6ix9ine – Swervin (🗻38位 /⏰20週)

45 Lauren Daigle – You Say (🗻29位 /⏰43週)

43 Ellie Goulding & Diplo feat. Swae Lee – Close To Me (🗻24位 /⏰25週)

 

6/1 ※Tyler, the Creator 対 DJ Khaledの週

80 Old Dominion – Make It Sweet (🗻56位 /⏰20週)

57 Pinkfong – Baby Shark (🗻32位 /⏰20週)

49 Ariana Grande – thank u, next (🗻1位 /⏰28週)

46 Lil Baby & Gunna – Drip Too Hard (🗻4位 /⏰35週)

44 Dean Lewis – Be Alright (🗻23位 /⏰29週)

 

6/8

98 Brett Young – Here Tonight (🗻42位 /⏰20週)

35 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You (🗻1位 /⏰52週)

 

6/15

50 Blueface – Thotiana (🗻8位 /⏰20週)

49 21 Savage – a lot (🗻12位 /⏰23週)

 

6/22

69 YNW Melly – Murder On My Mind (🗻14位 /⏰20週)

 

6/29

79 Yo Gotti feat. Lil Baby – Put A Date On It (🗻46位 /⏰20週)

58 Billie Eilish – bury a friend (🗻14位 /⏰20週)

48 Lil Baby – Close Friends (🗻28位 /⏰33週)

45 Luke Combs – Beautiful Crazy (🗻21位 /⏰31週)

 

7/6

70 Kelsea Ballerini – Miss Me More (🗻47位 /⏰20週)

47 Calboy – Envy Me (🗻31位 /⏰27週)

45 Billie Eilish – when the party’s over (🗻29位 /⏰32週)

 

7/13

49 Ariana Grande – break up with your girlfriend, i’m bored (🗻2位 /⏰20週)

 

7/20

88 Chase Rice – Eyes On You (🗻38位 /⏰20週)

72 Cardi B & Bruno Mars – Please Me (🗻3位 /⏰20週)

 

7/27

99 Billie Eilish – Ocean Eyes (🗻84位 /⏰20週)

90 Summer Walker & Drake – Girls Need Love (🗻37位 /⏰20週)

71 Kane Brown – Good As You (🗻36位 /⏰20週)

46 A Boogie Wit da Hoodie – Look Back At It (🗻27位 /⏰31週)

37 benny blanco, Halsey & Khalid - Eastside (🗻9位 /⏰52週)

 

8/3

71 Thomas Rhett – Look What God Gave Her (🗻32位 /⏰20週)

69 P!nk – Walk Me Home (🗻49位 /⏰20週)

45 Mustard & Migos – Pure Water (🗻23位 /⏰25週)

 

8/10

49 J. Cole – MIDDLE CHILD (🗻4位 /⏰27週)

48 Daddy Yankee & Katy Perry feat. Snow – Con Calma (🗻22位 /⏰25週)

44 Maren Morris – GIRL (🗻44位 /⏰21週)

40 City Girls – Act Up (🗻26位 /⏰21週)

39 Lee Brice – Rumor (🗻25位 /⏰20週)

 

8/17

96 Pedro Capó & Farruko – Calma (🗻71位 /⏰20週)

50 Travis Scott – SICKO MODE (🗻1位 /⏰52週)

32 Panic! At the Disco – High Hopes (🗻4位 /⏰52週)

 

8/24

49 Lady Gaga & Bradley Cooper – Shallow (🗻1位 /⏰45週)

48 YK Osiris – Worth It (🗻48位 /⏰25週)

 

8/31 ※Young Thugのアルバムの週

58 Florida Georgia Line – Talk You Out Of It (🗻57位 /⏰26週)

48 Meek Mill feat. Drake – Going Bad (🗻6位 /⏰37週)

45 Khalid – Better (🗻8位 /⏰48週)

42 Ava Max – Sweet But Psycho (🗻10位 /⏰35週)

30 Marshmello & Bastille – Happier (🗻2位 /⏰52週)

 

9/7 ※Taylor Swiftのアルバムの週

52 Offset feat. Cardi B – Clout (🗻39位 /⏰20週)

 

9/14

なし

 

9/21 ※Post Maloneのアルバムの週

54 Taylor Swift feat. Brendon Urie – ME!  (🗻2位 /⏰20週)

46 NLE Choppa – Shotta Flow (🗻36位 /⏰20週)

44 Blake Shelton – God’s Country (🗻17位 /⏰23週)

43 Morgan Wallen – Whiskey Glasses (🗻17位 /⏰27週)

40 Ariana Grande – 7 rings (🗻1位 /⏰33週)

 

9/28

50 Panic! At the Disco – Hey Look Ma, I Made It (🗻16位 /⏰22週)

 

10/5

77 Dan + Shay – All To Myself (🗻31位 /⏰20週)

 

10/12 ※DaBabyのアルバムの週

50 Luke Bryan – Knockin’ Boots (🗻31位 /⏰22週)

46 Dan + Shay – Speechless (🗻24位 /⏰40週)

45 Luke Combs – Beer Never Broke My Heart  (🗻21位 /⏰21週)

42 Polo G feat. Lil Tjay – Pop Out  (🗻11位 /⏰27週)

 

10/19

33 Halsey – Without Me (🗻1位 /⏰52週)

 

10/26

57 Young Thug, J. Cole & Travis Scott – The London (🗻12位 /⏰20週)

48 Shawn Mendes – If I Can’t Have You (🗻2位 /⏰23週)

 

11/2

なし

 

11/9 ※Kanye Westのアルバムの週

89 Bad Bunny & Tainy – Callaita (🗻52位 /⏰20週)

82 Sech, Darell, Nicky Jam, Ozuna & Anuel AA – Otro Trago (🗻34位 /⏰20週)

53 Blanco Brown – The Git Up (🗻14位 /⏰20週)

46 Post Malone – Wow.  (🗻2位 /⏰44週)

21 Post Malone & Swae Lee – Sunflower (🗻1位 /⏰53週)

 

11/16

なし

 

11/23

80 Megan Thee Stallion feat. DaBaby – Cash Shit (🗻36位 /⏰20週)

46 Taylor Swift – You Need To Calm Down (🗻2位 /⏰21週)

 

11/30

50 Saweetie – My Type (🗻21位 /⏰20週)

 

12/7

80 Chris Lane – I Don’t Know About You (🗻39位 /⏰20週)

48 Sam Smith & Normani – Dancing With A Stranger (🗻7位 /⏰45週)

46 Drake feat. Rick Ross – Money in the Grave (🗻7位 /⏰23週)

38 Jonas Brothers - Sucker (🗻1位 /⏰38週)

 

12/14

86 Kenny Chesney – Tip of My Tongue (🗻73位 /⏰20週)

83 Y2K & bbno$ - Lalala (🗻55位 /⏰21週)

52 Marshmello & Kane Brown – One Thing Right (🗻36位 /⏰23週)

44 DaBaby – Suge (🗻7位 /⏰35週)

41 Post Malone feat. Young Thug – Goodbyes (🗻3位 /⏰21週)

 

12/21

58 NF – Time (🗻41位 /⏰20週)

54 Sam Smith – How Do You Sleep?  (🗻24位 /⏰20週)

51 Lil Baby & DaBaby – Baby (🗻21位 /⏰20週)

50 Ed Sheeran & Justin Bieber – I Don’t Care (🗻2位 /⏰30週)

49 Khalid – Talk (🗻3位 /⏰43週)

 

12/28

50 Ed Sheeran feat. Khalid – Beautiful People (🗻13位 /⏰24週)

 

 

 

・おまけトップ10入りながらも滞在が短い曲

 トップ10に入るようなヒット曲はそのままヒットし続けることが多いので、たいてい滞在が20週まで到達した後に、リカレントルールによってチャートから外れることがほとんどです。

 ただし一部トップ10に入りながらも滞在が20週未満に終わる曲もあります。ラジオであまりかからない曲など落ちるスピードが早かった曲です。

 昨年はこのリストに載る曲が20もあったのですが、今年は4曲のみです。昨年はアルバム公開週に爆発的な人気を得てトップ10入り → しかしシングルカットはされないので尻すぼみというパターンが多く見られましたが、今年はそのパターンが少なかったです。

 

※左の数字は落ちた日付です

 

1/26 Eminem feat. Joyner Lucas – Lucky You (🗻6位 /⏰14週)

6/22 BTS feat. Halsey – Boy With Luv (🗻8位 /⏰8週)

11/9 Ariana Grande & Social House (🗻8位 /⏰12週)

12/21 Kanye West – Follow God (🗻7位 /⏰6週)

 

 

昨年版 ↓

 

私のベストトラック100+・2019年

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 今年のベストトラックを発表します!ランキングの前にまず、どのような基準で曲を選んだかを説明します。

 

・対象期間は「およそ」2019年。昨年まではカチカチに期間を定めていたのですが、そこを固く縛る必要もないかな、と考えて辞めました。(2018年の曲も一部入っています)

 

・自分の好み7:3世間的な流れ くらいのバランスです。 音楽のベストはこの2つの軸があると思っています。私は自分の好みをベースに選曲をしつつ、チャート研究者として一年間見てきたものも一部ランキングに落とし込みました。

 

サウンド重視で選んでいます。一方、普段あまり歌詞を丁寧に聴く習慣があまり無いので、歌詞に基づくセレクトはあまり無いです💦

 

・メッセージは主にシンプルに「聞いてもらえたら嬉しいです」なので、コメントは短めにしました。(シングルだけでは語れることが少ないという面もある。あと知識があんまり無いけど曲としてリストに入れたいみたいなケースもある)

ただ、小難しいことを語りたくて、コメントが長くなりそうな場合は曲名の背景を黄色にしています。表の後に補足という形でその解説を行います。

 

・プレイリストは最後にあります

 

まずは101位~51位 

アーティスト ひとことコメント
101 米津玄師 パプリカ 原曲とは違う雰囲気。主に日本での人気だが、YouTubeグローバルで53位まで到達
100 Kim Petras Death By Sex ハロウィンミックステープの代表
99 Ariana Grande fake smile アリアナその3
98 Tyloné Laurent Lonely TikTok発。外部でのヒットにはならなかったが、そうなるポテンシャルはありそうな曲
97 Ashley Tisdale Looking Glass 一部で密かに好評だった、彼女10年ぶりの新作
96 ミツメ ディレイ 日本のバンド。染み渡るアルバムのオープニングトラック
95 Ashley O On a Roll Miley Cyrusのオルターエゴによるダンストラック。”Old Town Road"と同様にNine Inch Nailsを参照
94 Doja Cat Bottom Bitch I took her out♪ It was a Friday night♪
93 Julia Michaels feat. Niall Horan What a Time 彼女のソングライトセンスは健在
92 Melanie Martinez The Principal 4年ぶりの新作はストリーミングでも一定の人気
91 MGMT In the Afternoon ダークな雰囲気が増した新曲
90 Loredana feat. MERO Kein Plan Juju(後述)と共にドイツを牽引した女性ラッパー。ドイツで1位獲得
89 Joji Sanctuary 昨年のアルバム、そしてこの新曲の人気でUSでの地位を着実に高めるJoji
88 Sky Ferreira Downhill Lullaby 5年ぶりの新曲。長尺で重い曲。Charli XCXとの”Cross You Out"も良かったです
87 Anuel AA, Daddy Yankee & KAROL G feat. J Balvin & Ozuna China ラテン界の特大ヒット。豪華な布陣を組んで再生数を伸ばし、ジャンル自体の規模をどんどん伸ばす動きが好きです
86 PNL Au DD フランスを熱狂のラップデュオ。かなりの再生数を記録(ほぼフランスのみの人気ながらSpotifyのグローバルトップ50入り)
85 Blueface Thotiana そのスカしたラップスタイルでブレイクを遂げたBlueface
84 THE 1975 People これまで1975は自分から遠い存在という「偏見」があったのですが、この曲で考え直そうと思いました
83 HAIM Hallelujah Vampire WeekendやCharli XCXのアルバムで客演仕事もこなしたHAIM。優しいメロディー。
82 Zara Larsson All the Time 隠れ名ポップ。Hot 100には入らなかったが、そこそこラジオで人気だった
81 Maggie Lindemann feat. Travis Barker Friends Go (Remix) 10年くらい前のポップパンク・バイブスを体現した1曲
80 Sech, J Quiles & Maluma feat. Nicky Jam, Farruko & Dalex Qué Más Pues "Otro Trago"が大ヒットのパナマ人シンガーSech。ただこっちの方がよりお気に入り。レトロゲーム調のビデオも好きです
79 Post Malone Myself アルバムラスト2曲はボートラで、この曲が真のラストトラックと勝手に思っている。Father John Mistyがソングライトに参加
78 Phoebe Ryan A Thousand Ways サウンドが以前よりインディーポップ化
77 LOONA Butterfly K-Popの中でもややオルタナティブな音楽を志向するグループ
76 Mustard feat. Roddy Ricch Ballin' Dojo Like A Sensei。この曲のヒットがRoddy Ricchのアルバム1位にもつながる
75 Angel Olsen Lark 力強さも感じるアートポップ
74 CHAI THIS IS CHAI 海外からの評価を高めるCHAIが贈るバキバキダンストラック
73 Shindy Nautilus Aaliyah50 Centをサンプリングし、十数年前の名曲を現代に蘇らせる。それがドイツでヒットするのが興味深い
72 Shura flyin' サビ部分のサウンドが気持ちいい
71 Ashnikko feat Yung Baby Tate Stupid TikTok発。個性ある二人の女性ラッパーにスポットライトを当てる
70 Allie X Fresh Laundry アルバムの先行曲は粒ぞろいです
69 Madonna feat. Anitta Faz Gostoso スペイン語圏とのコラボは少しずつ増加しているが、Madonnaポルトガル語でも歌う *1
68 Stephanie Poetri I Love You 3000 インドネシアで大ヒットしたバラード。プレイリスト等のサポートがあれば世界的ヒットになったかも!? *2
67 Kali Uchis Solita 年の末にリリースされたシングル。歌詞の半分くらいがスペイン語
66 KAROL G Punto G ラテンアーバンのシンガー。プロダクションと彼女のラップがナイスです
65 The Chemical Brothers (feat. NENE) Eve of Destruction 日本のラッパーNENE(ゆるふわギャング)が強烈なラップを披露
64 Lil Uzi Vert Futsal Shuffle 2020 ダンスを取り入れた少し奇抜なサウンドながらもヒット。いつ出るか分かりませんがアルバム楽しみです
63 Kim Petras All I Do Is Cry Kim Petrasのアルバムからの3枠目。曲の充実でセレクトが迷いました
62 Lauv & Troye Sivan i'm so tired.. ストリーミングのプレイリスト中心に人気を得る、新世代ポップの中での傑作だと思います
61 Caroline Polachek So Hot You're Hurting My Feeling サビのメロディーラインが良いです
60 Little Simz feat. Chronixx Wounds UKの女性ラッパー。個人的には「ラップ」よりも「R&B」に近いと感じました
59 Khalid Talk 複数ジャンルに渡るラジオでの大ヒット。プロデューサーはDisclosure
58 Grimes 4ÆM カナダの鬼才によるドラムンベース調の新曲
57 Uffie Drugs かつてEd Bangerレコードにも所属したシンガー。日系で、日本で注目されていたこともあるらしい
56 Rico Nasty & Kenny Beats feat. Baauer Cheat Code アルバムの収録曲は軒並み短いが、その間に明確なインパクトを残す
55 Nasty Cherry Live Forever ジャケが裸がちで破天荒なのかな?と思いきや音楽性はオシャレ度高めなガールズバンド
54 JPEGMAFIA Rap Grow Old & Die x No Child Left Behind アルバムでは個性的な曲が揃っています。所々歌うのが好きです
53 Saweetie feat. City Girls & Jhené Aiko My Type 女性ラッパーの躍進を象徴。リミックスリリースでピークに到達 Becky GとMeliiが参加したラテンリミックスも
52 Kanye West Everything We Need KanyeとTy Dolla $ignのコラボアルバムを密かに期待しています
51 Taylor Swift Lover Taylor Swiftが偉大なソングライターであることを思い出す、地力や意地を感じたシングル

 

 

 

はい、続いて50位~1位です。上位では少し補足のある曲もあります。

アーティスト ひとことコメント
50 Juice WRLD Fast 彼のスタイルをポップに進化させた1曲。亡くなったのが悔やまれます。(補足) 
49 Aly & AJ Star Maps インディーの立場からシンセポップを試みる 元ディズニーアイドル
48 Denzel Curry feat. Rick Ross BIRDZ 前作よりもアグレッシブなビートを展開
47 Kero Kero Bonito Battle Lines 昨年からのローファイ系ポップバンド路線を継続。後半の展開が魅力的
46 King Princess Trust Nobody サビのところの声質とメロディーの融合が好き
45 Kim Petras Got My Number Petras②。電話番号直読みもインパクトを残した、リズミカルなボップ
44 Megan Thee Stallion feat. DaBaby Cash S**t 今年大きな飛躍を遂げた2人のラッパーのスタイルをシンプルなビートで味わう
43 Rina Sawayama STFU! Rinaさんの澄んだ声とメタルサウンドの融合は新境地。人種差別などへの怒りを表現
42 Tove Lo feat. ALMA Bad as the Boys ややリズミカルになったTove Loの今作。友人ALMAとともに
41 J Balvin & Bad Bunny YO LE LLEGO コラボ作は曲数少なめながらも、多様な顔を見せています
40 Charli XCX White Mercedes 珍しいAndrew Wattとのコラボ。純ポップスを書いても一流 ちょっと”Issues"っぽさもある
39 MACHETE, Dani Fav & tha Supreme feat. Fabri Fibra YOSHI イタリアで1位のラップ曲。US方面とは違う雰囲気を持つ。曲名は任天堂の緑のヨッシー
38 Flume & HWLS feat. Slowthai High Beams ミックステープで復活を遂げたFlumeの魔術的なビート
37 Carly Rae Jepsen Julien しっとり系BOP
36 Dorian Electra Flamboyant アルバム表題曲なだけあって、構成上の核といえる曲
35 Poppy The Holy Mountain メタル路線のメインシングルも良いけど、ラストの感傷的なこれも好きです
34 Lizzo Crybaby ヒットシングルとは違い、アルバムでは重厚なR&Bサウンドを披露
33 Sigrid Don't Feel Like Crying きらびやかなポップが並ぶアルバムの中でも存在感を発揮する名シングル
32 Ariana Grande bad idea アリアナその2。「偽アルバム曲」のような立場 (補足)
31 Rich Brian feat. Bekon Yellow "DAMN."で一部ボーカルを担当するBekonを迎えた 荘厳な1曲
30 FKA twigs cellophane プロダクションはシンプルだが、アルバムラストに強い印象を残す
29 Hannah Diamond Concrete angel 後半に歪な展開を見せる
28 Kehlani feat. Ty Dolla $ign Nights Like This 大正義R&Bソングですかね!US以外でもそれなりにヒットしたのもナイス
27 Ava Max So am I 今は珍しいゴリゴリのダンスポップで再びヒット(US以外で) ビデオも印象的
26 Dave feat. J Hus Disaster アルバム単位でUKを席巻したDaveが、同様にUKラップのエース格J Husを迎える
25 Billie Eilish bad guy 最大限まで高まった期待度に応え、批評とセールスを両立させたBillie Eilish。特にセールス面で巨大な役割を果たしたこの1曲
24 TWICE FANCY TWICE初のSpotifyグローバルランク入り。飛躍を証明する好ポップ曲です
23 Hatchie Obsessed アルバムの隅々までが「染みる」ドリームポップ・ガール
22 Dua Lipa Don't Start Now 現在珍しいダンスポップを試み、それを大ヒットさせる彼女のカリスマ性
21 Harry Styles Sunflower, Vol. 6 One Direction時代の印象が抜けない人に現在の彼を紹介するのに使いたい曲
20 おとぼけビ~バ~ 脱・日陰の女 一部の批評界隈でかなり高く評価された、京都のガールズバンド
19 Slayyyter Alone ポップシンガー。ギラギラ具合はアルバムでも屈指
18 Vampire Weekend Harmony Hall 美しいハーモニー ロック系ラジオではバンド屈指の再生数を獲得
17 JUJU Intro ドイツのラッパーが自身のスキルを証明する1曲 (補足)
16 Solange Almeda とろけるようなサウンド。この曲、そして下記の曲の2つでPlayboi Cartiが活躍
15 Tyler, the Creator EARFQUAKE 再生数的な面でも大活躍。シングルではなくアルバムで評価されて人気になる、というストリーミング的な現象
14 DaBaby Suge 今年Hot 100エントリー最多はDaBaby。彼が主役に上り詰めた名刺代わりの1曲
13 LIZ Intuition

待望のアルバムで格別のポップセンスを披露。お気に入りはブリトニー・バイブスのこれ *3

12 Bad Bunny Caro 昨年の曲だけど入れた アルバムの一つ一つがカラフル (補足)
11 Young Thug feat. Gunna (& Travis Scott) Hot Young Thug帝国の完成形。GunnaがメインでThugが客演の"3 Headed Snake"やリミックスで参加したTravis Scottとの”Hop Off a Jet"も好き
10 Charli XCX & Christine and the Queens Gone アルバムの「シングル系」の曲の中では一番。アルバムの中で飛び抜けた評価(Pitchforkはソングで4位、アルバムは圏外)
9 Clairo Sofia Clairoは他の曲が推されることが多いけど私は断然これです。あとは”Closer To You"
8 100 gecs, Dylan Brady & Laura Les 745 sticky PC Music「界隈」の超ベスト新人。(所属はしていないが、関わりは強い)1曲の中で複雑で多様な顔を見せる
7 Tame Impala Posthumous Forgiveness チャート調査の都合で今年はTame Impalaを意識。そんな中で繰り出されたこの曲に心掴まれました
6 Ariana Grande ghostin 彼女のボーカルを活かした1曲。アルバムの流れでのピークだと思います
5 ROSALÌA & J Balvin feat. El Guincho Con Altura ROSALÌAさん昨年はごめんなさい! (補足)
4 Kim Petras Do Me 昨年からの方向転換によって一部のファンは離れたっぽいですが、その人たちはこの曲を聴いて考え直してほしい
3 Lana Del Rey the greatest 美しすぎる
2 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road 感動のチャートアクション (補足)
1 Charli XCX feat. Kim Petras & Tommy Cash or Slayyyter Click 好きな音楽は何ですか?の質問に対して、これ一つで説明できる気がする 自分の理想が詰まったみたいな曲です

 

 

 

~補足~

・50 Juice WRLD – Fast

 彼はよく「エモラップ」の代表格として扱われていますが、彼はポップスにも影響を与えていると思います。この曲のプロデューサーのLouis BellやFrank Dukesは、ポップスでもこのような作風の曲を作ることがあります。

 彼はポップ方面(benny blancoやEllie Goulding)へのコラボもあり、ポップ&ラップ両方に影響を与えられる屈指のタレントだっただけに、亡くなったことが悔やまれます。

 

 

・32 Ariana Grande – bad idea

 ここで説明する「偽アルバム曲」とは、伝統的にアルバム曲の立ち位置ながらシングルのような存在感を発揮する曲のことです。

 伝統的なシングルとはラジオでオンエアされる、またビデオが制作されて、重点的にプロモーションされます。一般的にこのような曲が人気になりますが、昨今はストリーミングでのアルバム志向が強いため、超人気アーティストはアルバム曲でも他人のシングル以上の存在感を放つケースも多いです。Ariana Grandeの場合、アルバムは全ての曲がシングルチャートで50位以上に入り、全てのアルバム曲がシングル並の存在感を発揮しました。 

 この”bad idea”の「偽アルバム曲」ぶりは、機能面でもより強く見られます。Max Martinプロデュースのこの曲は前半部分がリズミカルなポップソングの顔を見せ、後半部分はボーカル無しでアルバム次曲への橋渡しをこなす……シングル曲の役割もアルバム曲の役割もこなせる、マルチな1曲です。

 ちなみに伝統的なシングルにはならなかったものの、SpotifyのToday’s Top Hitsには入っていました。

 

・17 Juju – Intro

 ドイツの女性ラッパー。昨年はCapital Braとの“Melodien”で、今年は自身の”Vermissen”でドイツ1位を獲得。いずれもストリーミングで抜群の人気を誇り、後者は今年年間4位にランクインしています。

 暗い雰囲気をまとったヒットの“Vermissen”も良い曲だとは思うのですが、彼女のラップテクニックを大きく見せるアルバム曲の”Intro”がベストトラックにふさわしいと考えました。 

 ドイツは再生数の規模が大きく、ドイツ圏の人気のみでSpotifyのグローバルトップ100まで到達することも多いです。これはここまで取り上げてきたラテン圏の曲、フランス、イタリアなどにも当てはまることです。

 ドイツ、フランス、イタリアの曲はまだ他へのクロスオーバーは見られませんが、再生数上では、(主にSpotifyで)世界的に上位に入る成績を収めていたので、ベストトラックの選考に含みました。

 

 

・12 Bad Bunny – Caro

 昨年の選考期間がほとんど終わったタイミング(12/24)、でアルバムリリース。良かったので、トラックの方には昨年の選考にねじ込みました(“Tenemos Que Hablar”)

 昨年のアルバムには選考時期的に入れられなかったのですが、やはりベストアルバムに取り上げたい、と考えて今年のベストアルバムに取り上げました。それに際し、シングルも再び選び直そうと考えてこの曲をチョイスしました。 アルバムどの曲をとっても彩り豊かですが、際立つのはやはりこの曲でしょうか。

 

 

・5 ROSALÍA & J Balvin feat. El Guincho – Con Altura

 なぜROSALÍAに謝るのか。それは昨年のベストトラック・アルバムで入れなかったからです。昨年の時点でも彼女はアルバム・シングルともに大きく評価されており、昨年のメディアのベストでも上位に入っていました。

 しかし私がこれを入れなかったのは主に2つ理由があります。1つは純粋に作風がハマらなかったです。2つ目は、コメントで時折付けられる「ポップスはもはや英語だけのものだけではない」ような文言がピンと来なかったからです。

 昨年の時点では、ROSALÍAはチャートアクション的には「スペイン国内で人気のアクト」程度でした。他の場所へのクロスオーバーが皆無ではありませんが、ラテン圏のアーティストとして規模は小さいほうでした。規模的にはチャート研究者目線で「無視可能」な規模だったのです。

 それなのになぜ急にこんなに評価されているの?という考え、ベストアルバム表に載る彼女を見る度に、「何でだよ!」と思っていました。

 

 そこまで思っていた私を、ひっくり返したのはこの曲です。J Balvinと組み、ラテンアーバンに接近したこの曲は、リズミカルで作風が私にハマりました。そして何より、スペイン語圏以外にも広がる特大ヒットになりました。YouTubeの再生数は10億越え。今年リリースされたビデオで10億越えしたのは“Con Calma”とこの曲の2つのみです。またSpotifyでも長くグローバルトップ50に残り、文句なしのヒットになりました。

 その後も印象的なシングルを残し続け、“Yo x Tu, Ti x Mi”はかなりヒットもしました。そんなこの1年の彼女の実績を見ていると、昨年感じていたような「何だこいつ!?」は現在完全に消え去りました。

 昨年の私が彼女に抱いた疑念は間違っていたことを認め、ここで考えを改めたことを示します。(大げさ)

 

 

・2 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road

 今年19週にわたるHot 100首位滞在を記録したこの1曲。Hot Country Songs除外を機に話題が更に大きくなり、Billy Ray Cyrusを客演で迎え、熱狂はピークに達しました。

 このチャートでチャートの話題を呼び、記録を更新したということは1チャート研究者としてはとても感動的なことです。ここで個人的に嬉しいのは、チャートへの人々の興味が意外とあったということです。多くの人がチャートを一応気にしているから、カントリー曲への除外が話題になり、Billy Ray Cyrusリミックスも特大の人気を得たのです。

 多様化の流れで、チャートを気にする人は少なくなるのでは?みたいな意見も多少は見られる昨今ですが、まだチャートも捨てたもんじゃないな、そう感じさせてくれたこの曲に大きく感謝です。 (まあ、ビルボードのそれへの対応?は少し残念でしたが……)

 

 音楽面の話をすると、Billy Ray Cyrusの意外なフィット具合がナイス。Young ThugとMason Ramseyのリミックスがわりと好きです。あとはLil Nas Xの他の曲、“Panini”や”F9mily”なんかも好きですね。

 

 

☆プレイリスト

 

Spotify

 

 

関連:昨年のベストトラック

 

 

 

*1:ポルトガルに住んでいる

*2:Spotifyでグローバル200位圏内までは到達した

*3:元々ブリトニーデビュー前の1994年にリリースされたKylie Minogueのボツ曲。そのデモがLizの元までたどり着いたらしい ちなみに本人がソングライトリストに載っていないので、デモをそのまま使ったっぽいのです。本人がソングライトに関与していないので、それをアルバムのベスト曲にするのはどうなのかな?と一瞬思ったのですが、この曲を世に出したのはLizの功績なので、別に構わないかなと判断しました

2019年 マイ・ベスト読書

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 今年読んで気に入った10冊を紹介する記事です。「今年」は私が今年読んだかを基準にしています。かなりマイペースに読書しているので、今年出た読みたい本をまだ読んでいないケースが多々あります。来年以降にご期待ください。並びは順位ではないです。主にジャンルで並べています。

  昨年版はこちら:2018年 マイ・ベスト読書 - チャート・マニア・ラボ

 

 

烏賀陽弘道 『J Popとは何か』 (2005)

 

余談だが、「Jポップを産業として分析する本を書いています」というと、マスメディア界だけでなく、当のJポップ業界にさえ「Jポップにそんな価値があるのですか」と露骨に冷笑する人が多いのには辟易した。正当な理由もなくポピュラー音楽を蔑視する偏見はまだまだ根強いようだ。この本をきっかけとして、日本のポピュラー音楽を知的に分析しようという試みが盛んになることを祈っている。 (P234)

 

 引用部分にあるように、研究があまりされてこなかった未開のジャンルの研究を切り開いた一冊としてとても意義のある一冊と感じました。

 J-Pop研究の先駆けとして、多く引用されている名著です。この著作ではJ-Popという言葉の誕生について説明されており、特にこの記述がよく引用されている印象です。(洋楽を中心にかけるJ-Waveでかけられる日本語ポップがJ-Popの先駆け的存在)

 

 アメリカに住んでいた著者は、外からJ-Popを眺めるところから分析をスタート。そして最終的に「日本人が外国人の視点を借りて考えた自称という、非常にねじれた意味構造」(P17)を発見します。

 そして「外国でも注目されている」という雰囲気が国内人気を高めるという構図を見出します。ここでは実際に売れているかは関係なく、海外へ進出することのみでも十分に熱狂すると記述されています。筆者は日本人歌手が海外に挑戦する際の熱狂ぶりをオリンピックに例えています。

 

 この本にはもう一つ注目の記述がありました。筆者は著作権料に目をつけ、J-Popの輸出割合を調べました。すると輸出はアニメ/ゲームコンテンツが中心で、割合では0.5%に過ぎませんでした。これがインターネット・ストリーミング時代でどのように変化しているか、は気になるテーマです。(ちなみにSpotifyでは、多くのJ-Popが再生数の1割程度が海外からのものです)

 2017年にはこの本の続編が出ていたようなので(最近知った)、そのうち読んでみたいと考えています。

 

 

・ゾーイ フラード=ブラナー / アーロン M グレイザー 『ファンダム・レボリューション』 (2017)

 

超ハードコアなファンでさえ、大好きなバンドが解散しても世界が終わらないことはわかっている。でもそんなふりをするのは楽しい。2015年のはじめ、もしゼイン・マリクがワン・ダイレクションから抜ければ、世界が終わって生きる意味がなくなるとファンは口々に言っていた。もちろん、世界は終わらなかったし、生きる意味もなくならなかった。 (P229)

 

 あえて順位をつけるとしたら、後述の『これからのエリック・ホッファーのために』と並ぶ1位有力候補かもしれません。初音ミク、バフェット、安い地ビールなどを例に挙げながら、現代あらゆる場面で効果を発揮するファンダムについて迫った一冊です。

 この本を読んで多くのことを学びましたが、特に「スマートファン」という概念は非常に参考になりました。

 

内幕に詳しいプロレスファンは「スマートファン」とも、「インターネットファン」とも呼ばれる。インターネットの普及によって、内幕に詳しいファンが増えた。スマートファンは見世物としてのプロレスを楽しむだけでなく、その大げさな舞台作品をお膳立てし演じるための技術や筋書きやドラマ的な難しさを評価する。 (P228)

 

 この「スマートファン」で検索しても小型扇風機の情報しか出てこないので、あまり流通している表現ではないのかもしれませんが、私はこの概念に興味を持ちました。筆者は、すべてのファンはこの「スマートファン」であると述べています。

 

すべてのファンは、ある意味でスマートファンだ。自分の愛するオブジェクトをが、ターゲットに訴求するように注意深く作られたものだということを、みんな理解している。ファンダムとは、少なくとも部分的には作りものの文脈にあえて乗るということだ。 (P228)

 

 最初に出したゼインの引用は、この「あえて乗る」一例として紹介されています。私はこの記述を見て、昨年@Chartdata氏は「人々のチャートへの興味が増加しているように思う」と述べていたことを思い出しました。これはファンたちがチャートを「内幕」の一種、つまり「アーティストの物語」の一部として捉えているからではないか、と考えたのです。

 

 

・ティエン・ツォ 『サブスクリプション』 (2018)

 

同じ年(筆者注:スティーブ・ジョブズが「音楽のサブスクリプション・モデルは破綻している」と語った2002年)にデヴィッド・ボウイは、「音楽は水道や電気のようになるだろう」と語って先見性のあるところを示した。 (P77)

 

 いわば現代サブスクリプションの教科書のような一冊。現代のサブスクリプション・ビジネスのモデルについて解説されています。音楽に関する話題も多く紹介されています。昔は友達経由でしか到達できなかった音楽に、今はSpotifyアルゴリズムやプレイリストで到達できることや、カニエの「生きるアルバム」など……

 「よく目立つ”デジタル・ネイティブ”世代のメディア」(P104)など、広告モデルの行き詰まりを指摘しながら、サブスクリプション・モデルの利点を挙げています。

 筆者はこのモデルの長所は安定した収益を長く手に入れられること、としています。一回登録してしまえば、多くの場合それが継続されるからです。このモデルがいつまで安泰なのかは分かりませんが、「現在」を理解するうえで優秀な教科書だと感じました。

 

 

クリス・アンダーソン 『フリー』 (2009)

 

フリーはまちがいなく破壊的だが、その嵐が通ったあとに、より効率的な市場を残すことが多い。大切なのは、勝者の側に賭けることだ。 (P175)

 

 10年前に発行された名著。「なんでタダでも良いの?」という根本的な疑問に応える1冊で、今読んでもしっかり読み応えがありました。

 フリーの特長を様々な角度から分析していますが、特に興味深かった記述が2つありました。まず0と1の差。1セントでも値段が付くと、それをするか/しないという選択をする「心理的コスト」が発生するので、それを手に入れるのが面倒になるという話です。

 もう一つは、ものを無料で手に入れられると、さらに良いものが欲しくなるケースがあるという指摘です。文中ではオフィスにある無料コーヒーが良質なコーヒーの需要を起こす、という例で説明されています。

 

 ただ一点だけ現在とは違う点を挙げるとすれば、インターネット上の広告に関するエピソードです。筆者のサイトの読者が、そこに掲載される広告を「それが広告とは思いもしなかった」として、筆者は「広告はネガティブな印象をほとんど与えない」としています。

 しかし上記の『サブスクリプション』で、インターネット上の広告モデルはサブスクリプションと対になるネガティブな例として挙げられています。時代が変化し、広告の量や質が変化したからなのか、それとも読者側が広告に目くじらを立てるようになったからでしょうか。

 

 

・土橋臣吾 『デジタルメディアの社会学』 (2011)

 

現在のモバイルデバイスの持ち主には4タイプ存在することが確認できた。

・ランダムに流れてくるコンテンツに感覚的に接触するDPタイプ

・大量にデバイスに保存するが同じコンテンツばかり再生するCDタイプ

・PCのコンテンツを厳選してデバイスに転送しているMDタイプ

・膨大なコンテンツを自覚的に使いこなしているDJタイプ (P105)

 

 デジタルメディアに関する複数名の論考が並ぶ一冊です。目を引いたのは南田勝也さんの「iPodはコンテンツ消費に何をもたらしたか」の章でした。この章では人々にiPodの使い方を調査しているのですが、それに基づいた4タイプの分類が非常に興味深かったです。(上記の引用部分)

 

 DPタイプは手当り次第P2Cサイトで曲をダウンロードしまくり、適当にシャッフルして気に入るものを見つけるという方法。この手法は違法で、褒められたものではないですが、たしかに存在する現象を記録に残すことは意義深いと思います。これを文字に起こした著者に感謝です。

 CDタイプはお気に入りのアルバムを重点的に聞く方法。多くのCDが揃う棚から似たようなアルバムばかり取り出す行為と似ているため、この名称がついています。

 MDタイプは上記のCDタイプの亜種で、そもそもiPodに入れている曲数も少ないというタイプです。

 最後のDJタイプは、多くの音楽を携帯した上で、それらをどのような物か認識しながら聴いているというタイプです。このタイプは希少種ということが指摘されており、文章内に登場する21歳のDJタイプに筆者は驚いていました。ちなみに彼はDPタイプで登場する人物とは違い、違法ダウンロードの類は一切行っていないようです。(家族がたくさんCDを持っていたことも大きいらしい)

 

 これの何が面白いかというと、ストリーミングにも十分適用できるということです。むしろ、聞き方がよりダイレクトにチャートに反映されるようになった現代では重要なテーマだと考えています。ストリーミング時代に当てはめると以下のような感じでしょうか。

 

DPタイプ:無料媒体での再生が中心の人。Music FM使っている人もいそう

CDタイプ:ストリーミングを始めたものの、既知のアーティストを中心に聴く人

MDタイプ:そもそもストリーミング使わない人

DJタイプ:ストリーミングを機に、聴くジャンルが広がった人

 

 ストリーミングのサービス側が推奨するタイプはおそらくDJタイプなのだと思います。各サービスの「見つける」などの欄を見ると、プレイリストなどを活用し多様な音楽を聴くことを推奨してきます。これで実際に幅を広げる人も多いとは思いますが、CDタイプもかなりの数が残っていくのでは、と個人的には推測しています。

 もっとこの分類分析を本格的に行うのも面白そうです。(もう既にあるならば、読んでみたいです!)

 

 

小川博司、小田原敏、粟谷佳司 『メディア時代の広告と音楽』 (2005)

 

中学校進学を控える六年生で帰国したこともあり、学習塾に通ったが、当時、とくに小学生たちに流行だった先の『ウリナリ』の番組中で歌われたヒット曲、ブラビの「タイミング」について、クラスメイトたちが学校で盛り上がっているのを横目で見ながら、自分はこの番組を塾通いの都合で視聴することができなかったため、話題にさっぱりついていけなかったという。しかし、それでは仲間に取り残されてしまう、困ったことになるぞ、と一念発起し、「日本文化」に早く追いつかなくては、とすぐさま学習塾を辞め(家族も本人の決意に快く賛同してくれたという)、毎週金曜日の夜8時から9時まで同番組にかじりつくという涙ぐましい努力で歌を覚えたという。 (P153)

 

 私は音楽に触れ始めた時期が遅いため、それ以前の知識があまりありません。そのため、この本のように歴史を振り返る本で得る知識は頼りになります。また、この本自体も14年前のものなので、ここで「当時の内容」として書かれている内容もありがたいです。 

 この本で特に興味深かったのは広告音楽を含む音楽とのかかわり合いを学生にインタビューする章です。ここの章は昨年のベスト読書記事で紹介した『音楽をまとう若者』の著者の小泉恭子さんが担当しています。

 引用部分は当時の同調圧力の強さを物語っています。「昔の同調圧力はえげつなかった=今の同調圧力はマシ」というエピソードをよく聞くのですが、今の小学生はどうなんですかね?

 この章ではほかに、家族カラオケの影響で米米CLUBを歌う小学生・ロッキングオンタワレコの試聴などで得た情報を仲間に伝える高校生などのエピソードが紹介されています。

 先に述べたように、ストリーミング時代では聞き方は重要な研究材料であるように思います。このような個人の聞き方エピソードの記録が文字で残っていることに感謝です。

 

 ちなみに私(おそらくここで登場する人物より若干年下)は小学生時代「オレンジレンジ知らないの?ダサっ!」ってクラスの人に言われた記憶があります。それを機になんだかJ-Popは自分から遠い存在と認識した記憶があります。

 ただ、上記の内容ほどの同調圧力は無かったような気がします。それは私が空気を読めないタイプの人間なので、「圧」に鈍感だっただけかもしれませんが!

 

 

・陳 怡禎 『台湾ジャニーズファン研究』 (2014)

 

Dさんが松本とカップリングする対象が実際にはジャニーズアイドルに限られる点だ。松本はマスメディアなど公的な場で、ジャニーズ事務所に所属していない俳優の小栗旬とも親しい友人関係だと明言している。しかしDさんにとって、そうしたジャニーズアイドル以外の男性を含む関係性には「萌える」要素が欠けていて、そのため関心が向かないのだ。 (P146)

 

 ディープなテーマを掘り下げた一冊。私はジャニーズ関連には明るくないのですが、ファンダム形成の一例として興味深かったです。グレーな事例も含む、ディープなファン受容が紹介されており、貴重な資料だと感じました。(上記で紹介したカップリングゲームは基本的に禁じられていることから、「J禁」と称されています) 

 ここ1年でジャニーズ事務所は大きく戦略を変えているようなので、それがこのようなコミュニティにどのような影響を及ぼすのかも気になりますね。

 

 

・荒木優太 『これからのエリック・ホッファーのために』 (2016)

 

在野研究の心得その40、この世界には、いくつもの〈あがき〉方があるじゃないか。約めていえば、本書のメッセージはこれに尽きる。 (P253)

  

 自分の状況にドンピシャだった一冊。「今後自分はどのような文章を書いていけばよいか」ということを考え直すきっかけになりました。(それを書いた記事:チャート研究者(自称)の自称とは? ~在野研究について~ 【読書メモ】 - チャート・マニア・ラボ) 引用部分にあるように、私も〈あがいて〉生きていたいです。

 

 この本は続編も出ており、早く読みたいです。今回紹介した版は過去の在野研究者を紹介しているのに対し、続編では現役の在野研究者を紹介しているようです。

 

 

・大原扁理 『年収90万円で東京ハッピーライフ』 (2016)

 

老後の不安とか、年金とか、病気になったときとか、考えると不安な方もいるかもしれません。不安は、育てようと思えばどこまでも大きくなるものです。 (P157)

 

 少ない年収で工夫するスタイルで生活する大原さん。その遍歴や、当時の生活方法を語った一冊です。(現在は台湾に住んでいるらしいです) 親しみやすい文体も特徴だと感じました。(文章にうまく話し言葉を混ぜている)

 このスタイルで生活していく上では、巧みな節約方法ももちろん必要なのですが、それ以上に重要なのは「気持ちの持ちよう」です。引用部分にあるような、メンタルの保ち方に関する記述が文章中には多く登場します。実際に90万円生活を志さない人でも、得るものは多い一冊だと思います。

 

 あと筆者はゲイなのですが、それに対する捉え方が新鮮で興味深かったです。パレードに行ってみたものの、あまりピンと来ずに帰宅したそうです。

 

たしかにゲイではあるんだけど、それはわたしの中では、何をどう頑張っても「愛知県出身」というのと同じぐらいの分量しか占めてない。普段から出身県を考えて生きているわけじゃないし、県民性に真剣に向き合ったこともない。ゲイって忘れてることもよくあります。 (P51)

 

 

・pha 『がんばらない練習』 (2009)

 

自分が好きかどうか。それもよくわからない。「自分が好きか」という問いは僕にとって「地球が好きか」とか「自分が好きか」という質問と同じで、それは「好きも嫌いもなく絶対の前提としてあるもの」でしかない。「自分が好き」というと言える人は、他人と自分を比べたり、他人から見た自分の像を意識しているということなので、僕よりも社会性があるんじゃないだろうか、と思ったりする。 (P111)

  

 私はphaさんの本を全部読んでいるのですが、なんというかこの本は一番「芸術」っぽい作品でした。今までの作品よりもライフハック的な記述が少なく、個人の心情にフォーカスしていることが理由でしょうか。本人も「情緒や感情の話しかしていない」と説明しています。

 コラム集であるこの本は、それぞれのエピソードで細かい感情を拾いあげているような印象です。今まで気に留めなかったような感情が抱きしめられるような感覚があり、タイトル通り「がんばらない」をするための下地づくり材料が揃っているきがします。自然に体に馴染む感じなので「練習」というよりは「薬」ですかね。(ちなみに薬のコラムもあります。お気に入りのエピソードです)

 

 一方で、最後のエピソード「猫をなでて一日が終わる」がなかなか強烈です。かわいげなタイトルと裏腹に、かなりグロテスクな描写もあります。このエピソードで〆るのはなかなか挑戦的だと感じました。音楽のアルバムも曲の配置が重要な要素の一つですが、本にもそのような「配置学」の美学があるのだと思いました。

 

 

Hot 100 12/21 見どころ 【”All I Want for Christmas Is You”、Hot 100首位! / Roddy Ricchアルバム1位】

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 こんばんは!Mariah Careyで盛り上がる今週の裏テーマは「イチローピカチュウ」です。

 

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・”All I Want for Christmas Is You”が1位に!Mariah Careyにとって11年ぶりのHot 100首位(累計19曲目)

・Juice WRLDへの追悼で関連曲が7つHot 100入り。“Lucid Dreams”は8位

・Roddy Ricchがアルバム1位。5曲がHot 100入り

・先週1位の“Heartless”は17位へ。1位からの下落幅は歴代で最大

・“Dance Monkey”がトップ10入り

Harry Stylesの“Adore You”が35位に登場

 

・今週のトップ10

△1◎ Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You

―2  Post Malone – Circles

△3◎ Brenda Lee – Rockin’ Around the Christmas Tree

―4  Lewis Capaldi – Someone You Loved

△5◎ Lizzo – Good As Hell

△6◎ Arizona Zervas – Roxanne ✅

▽7◎ Maroon 5 – Memories

◇8◎ Juice WRLD – Lucid Dreams

△9◎ Tones And I – Dance Monkey

△10◎ Burl Ives – A Holly Jolly Christmas

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

🍎=”The Box” (47位) 🚩=”BOP” (11位)

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

曲の個別解説

 

☆100 Russ & BIA – BEST ON EARTH

 “BEST ON EARTH”が100位に登場。Russは3回目、女性ラッパーのBIAは初のHot 100入り。彼女は以前J Balvinの”Safari”の客演でBubbling Underまで到達したこともありました。

 主にアーバンやリズミック系のラジオで人気。Apple Musicでもトップ100圏内に入っています。

 この曲は歌詞でイチローが登場します。 (” Or maybe to Japan so I can hit her like I'm Ichiro”)

 

☆97 Fat Joe & Dre feat. Eminem & Mary J. Blige – Lord Above

 Fat JoeがプロデューサーのDreとタッグを組みアルバムをリリース。その中の注目曲、“Lord Above”が97位に登場しました。DreはDr. Dreのことではなく、Cool & Dreというユニットでも活動している別のプロデューサーです。

 この曲はDLとストリーミングで一定の人気を得てHot 100入り。ビデオは無いですが、YouTubeでの人気が一番高かったです。(55位) AppleSpotifyでは圏外。

 

☆85 XXXTENTACION feat. PnB Rock & Trippie Redd – Bad Vibes Forever

 XXXTENTACION「最後のアルバム」と称された”Bad Vibes Forever”がアルバムチャート5位に登場。その表題曲がHot 100の85位に登場しました。AppleSpotifyYouTubeでまんべんなく人気(どれも50位前後)

 アルバムの総合売上6.5万のうち純セールスは1.6万で、ストリーミングから多くのポイントを得ています。

 

☆82 Camila Cabello feat. DaBaby – My Oh My

 Camila Cabelloの新アルバムは3位。総合売上は8.6万。チケットやグッズ戦略を用いて純セールスは5.4万、ストリーミングが3.0万、残りシングルDLです。

 これらはいずれもアルバム1位を獲得した前作の数字を下回っています。(前作:総合11.9万、純セールス6.5万、ストリーミング3.8万 仮に新作もこれと同じ数字だったら今週アルバム1位です) 

 新作は前作よりも曲数が多く、さらにストリーミングのルール変更が途中にあった*1 ため、前作よりも有利な条件が揃っていましたが、ストリーミングの枚数で下回りました。

 アルバム全体で見ると再生数は奮いませんでしたが、シングル単位ではそれほど悪くなかったです。SpotifyAppleで人気を集めた“My Oh My”はHot 100に登場。82位。その後も順調に数字を伸ばしているため、来週以降の飛躍に期待が持てます。客演のチョイスが正解でしたね。DaBabyは今年22曲目のHot 100エントリー。

 

☆59 Taylor Swift – Christmas Tree Farm

 Taylor Swiftのクリスマス曲が59位に登場。今週DL2位を記録。ストリーミングもある程度記録しています。Appleで200位圏内、Spotifyで100位、YouTubeで53位。

 リリース1年目はクリスマス曲でも普通の曲として扱われ、51位以下でもランクインすることができます。今週登場したクリスマス曲はこれのみ。先週48位に登場した“Here Comes~”が今週外れたため、クリスマス曲の総数は先週と変わらず。

 

☆47 Roddy Ricch – The Box

 Roddy Ricchが初のアルバム1位を獲得!総合売上10.1万、うちストリーミングから9.8万を記録しています。このストリーミングでの強さによって、チケット戦略などを活用し、セールス中心のThe Who(2位:8.9万売上)とCamila Cabelloを上回りました。

 収録曲は5つがHot 100に登場。”The Box”の47位が最高位。以下”Start Wit Me”が58位、“Peta”72位、”Tip Toe”73位、”Big Stepper”98位と続きます。

 あとアルバムには入っていませんが、Roddy Ricchが客演を務めるMustardの”Ballin’”も18位と上位に入っています。

 Meek Millとの“Peta”ではピカチュウという単語が登場します。(Meek Millのヴァース) これで3年連続、歌詞にピカチュウが入る曲がHot 100入りを成し遂げました。

 

2017年:Lil Yachty feat. Migos – Peek A Boo (Takeoffのヴァース)

2018年:Lil Baby & Drake – Yes Indeed (Lil Babyのヴァース)

    :Lil Skies – Lust

2019年:Roddy Ricch feat. Meek Mill – Peta (Meek Millのヴァース)

  “Yes Indeed”と”Peta”は用法も似ていて、どちらも黄色い車をピカチュウになぞらえています。

 

 このアルバムはApple MusicとSpotifyでかなり人気の差が。前者ではリリース直後に1位~7位を独占していましたが、後者の週間チャートでは200位圏内に4曲しかチャート入りしていません。

 ただし、“The Box”に限っては次の週の最初から総合ヒットプレイリストToday’s Top Hitsに入ったことで次週からSpotifyでも大きな上昇を見せています。

 

△36 Trevor Daniel – Falling

 TikTokでブレイクし、SpotifyApple Musicなどの媒体でも人気が出た“Falling”がトップ40まで到達。クリスマス曲などの影響で上位争いが激しいこのタイミングで順位を伸ばしているのは、調子の良さを感じます。

 基本的にはストリーミングで人気の曲ですが、次第にラジオでもオンエアが開始しています。来週にはポップ系ラジオのチャートに入るかも 

 

☆35 Harry Styles – Adore You

 アルバムに先駆けてリリースされたHarry Stylesの“Adore You”が35位と好調なスタート。Spotifyでは5位と高順位。Appleでは30位程度。DLも6位と一定の数字を記録しています。これらに加え、ラジオでかなりオンエアされていたため、1週目から高順位に登場しました。

 その彼の新作は来週のアルバムチャートでの1位獲得が決定的。チケット戦略なども活用し圧倒的な数字(総合40万超え)を記録する見込み。ストリーミングも優秀な成績を収めているため、Hot 100でも多くの曲が登場しそうです。(Spotifyでの人気がすごい)

 

▽17 The Weeknd – Heartless

 先週1位だった“Heartless”が17位まで下降。1位からの下落幅が歴代最大、という不名誉な記録を打ち立ててしまいました。それまでは1位→15位の下げ幅が最大でした。(1974年に2回あった)

 なぜこんなに順位が落ちたのか?の理由として有力なのは「バンドル的な戦略をシングルチャートに持ち込んだから」です。先週5.8万だったセールスは今週0.6万まで落ちています。ストリーミングも同様に数字を落としていますが、セールスほどの落ち幅ではないです。(一方、ラジオはかなり数字を伸ばした)

 

 先週のセールスにはオフィシャルサイトで販売されたCDやヴァイナルが含まれていると報告されていました。このCDやヴァイナルの割合が高く、その分の数字が落ちた今週は一気にセールスが落ちてポイントも大きく減少した、ということだと思われます。

 Kworbは先週のiTunes分のセールスは1.4万と試算しています。これから逆算すると、先週のセールスは多くCDやヴァイナルから来ているということが伺えます。現代CDやヴァイナルを購入する動機はグッズ購入と似ているものがあると思うので、アルバムチャートでのグッズバンドル消費のような動きを見せたのだと考えられます。

 

 歴代最大の下げ幅はこの先週の「戦略的な動き」の反動として現れたものなのでしょう。ちなみにCDやヴァイナルのセールス分(5.8万 – 1.4万 = 4.4万程度*2)が先週無かったとしたらHot 100順位は5位程度だと思われます。

 

 

△9 Tones And I – Dance Monkey

 今年各地で旋風を巻き起こしている“Dance Monkey”がUSでもトップ10入り!クリスマス曲などで競争は激しい中でのトップ10入りは見事です。

 この曲は3つの指標全てで好調。ラジオで20位、DLで3位にランクイン。ストリーミングでも悪くない成績で、SpotifyYouTubeではトップ20、Appleでも40位程度には入っています。

 この調子を今後も保つことができれば、クリスマス曲が去る年明け以降に1位も狙えるかもしれません。既にイギリスやドイツなど複数カ国で1位を獲得しているこの曲ですが、そのリストにアメリカを加えることはできるでしょうか。

 

 

◇8 Juice WRLD – Lucid Dreams

 先週の月曜日頃のJuice WRLDの訃報を受け、関連曲のストリーミングやDLが増加。7つの関連曲がHot 100に入りました。

 

8 Lucid Dremas (再)

12 Bandit (+28)

29 Legends (再)

49 Robbery (再)

60 Hate Me (+29)

78 6 Kiss (+2)

87 Empty (再)

 

 一番のヒット曲“Lucid Dreams”はAppleで2位、Spotifyで3位、YouTubeで2位と各媒体で多く再生されました。DLでも14位にランクインしています。

  “Legends”はこの中で唯一以前のピークを更新しました。もともとはXXXTENTACIONとLil Peepに捧げた曲で、2人の亡くなった年齢を受けて ”What's the 27 Club? We ain't making it past 21” という歌詞がありました。*3 その歌詞が自らにも当てはまるという悲劇が起き、彼の死を悼むリスナーによって多く再生されました。 

  またアルバムチャートでは、彼の作品2つがいずれもトップ10に復帰しています。Futureとのコラボ作は75位に再登場。

 

△1 Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You

 “All I Want for Christmas Is You”がクリスマス前に1位に到達!!Mariah Careyにとって11年ぶり、19曲目、そして累計80週目のHot 100首位です。(19曲はThe Beatlesに次ぐ歴代2位、80週は歴代1位)

 これで1990年代→2000年代→2010年代と3つのディケイドで連続しての1位獲得に成功。UsherBritney SpearsChristina Aguilera*4、に次ぐ快挙です。(あとグループ時代を考慮するとBeyoncéも) 

 クリスマスのピーク週の「チャートの日付」が2020年の1/4になっている都合上、順当にいけばこの週も1位を獲得するので、彼女は4ディケイド連続での1位獲得にも成功します。4ディケイドで1位を獲得した人は今までいないようです。

 

 この歴史的な1位浮上は他にも様々な記録を生み出しました。

・最初の首位獲得~直近の首位獲得までが最長(29年) それまでは27年のCher

・首位に到達するまでのHot 100滞在週数が最も長い(35週) それまでは“Macarena”の33週

 この曲はストリーミングでの好調が続くだけでなく、25周年記念のCDなどでセールスも伸ばしました。(今週セールス1位)

 

 ちなみにこの曲に関しての情報が多かったため、トップ10記事とは別に個別記事が作成されています。

 

・今週のクリスマス曲順位を昨年の同週と比較*5

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 ※赤文字はその週に登場 / 50位以上の曲のみ 

 上位の順位は今年のほうが高いですが、それ以外は昨年と同程度です。今週1曲減少したため、昨年の曲数と並びました。昨年は次の週に+6曲、その次の週に+4曲かつ1曲減少と推移しました。

 

 

×× Khalid – Talk

 Khalidの“Talk”がHot 100から外れました。ピーク3位、滞在43週でした。ラジオでの活躍もあり、ロングヒットになりました。ポップ系、リズミック系、アーバン系で1位を獲得するなど幅広いジャンルのラジオでかかっていました。ポップ系とアーバン系はリスナー層が少し離れているので、この2系統を両方とも抑えたのは特筆に値しますね。(年に1回あるか無いかぐらいの頻度)

 これに加え、ラジオで人気の曲が苦手なこともある(ポップスなど)ストリーミングでも好成績だったため、年間8位に入る大ヒットになりました。

 

 クリスマス曲やJuice WRLDの影響で今週多くの曲がチャートから外れました。目立つものを紹介します。

 

Kanye West – Follow God

 特に10年代のカニエの作品は、アルバムという単位を重んじるようなものが多い印象で、そのことからシングルチャートでは目立った実績は少なめという印象です。しかし「彼」に対する人気は強いため、高い順位でデビューした後に短い期間でチャートを外れるというアクションが多いです。この曲はピーク7位、滞在6週です。

 

・Billie Eilish – all the good girls go to hell

 ラジオのポイントでHot 100再登場を果たしたものの、次シングルがリリースされたためシングル運用が終了。ストリーミング時代では、アルバムから間を置いてのシングルカットは何か新要素(リミックスなど)が無いとアルバムリリース時の順位を下回ることが多いです。(ラジオでかかっても、アルバム時の再生数に遠く及ばない傾向が強いため)

 

 

・NF – Time

 ポップ系とリズミック系ラジオで人気を得ていた曲。ピーク41位、滞在20週。他の先行シングルなどは彼の高速ラップを生かす、まくし立てるような曲が目立ちましたが、このシングルは穏やかな曲で、最初からラジオヒットを狙ったものなのでしょうか。

 

・Sam Smith – How Do You Sleep?

 ピーク24位、滞在20週。ストリーミングでも人気を得てトップ40圏内で登場した後、徐々にラジオへポイントが移行。そしてラジオの減少とともに下降……という流れです。“Dancing With A Stranger”より規模が劣るものの、ストリーミングもラジオも一定の人気を確保し続けているのは優秀だと思います。

 

・Lil Baby & DaBaby – Baby

 ピーク21位、滞在20週。ストリーミングで人気を確保し、次第にラジオでもオンエア。現在もまだラジオが伸びていますが(来週アーバン系で1位になるかも)、特例は適用されずに外されました。もしかしたらクリスマス後に再登場するかも。

 

・Ed Sheeran & Justin Bieber – I Don’t Care

 ピーク2位で滞在30週。上位にいた期間も長いので、大ヒットに間違いはないのですが、1位&滞在50週超えのモンスターヒットを前作では2曲も生み出しているので、それと比べるとかなり見劣りしますね。ストリーミングの数字が若干物足りなかったでしょうか。

 

 

 他にも多くの曲がチャートから外れる危機に陥っていますが、ポップ系の曲は年末にラジオで再浮上を果たすので、来週もチャートに残ることができればその恩恵を受けることで持ちこたえられる可能性が上がります。(この恩恵が発生するのは再来週のチャート)

 

 

今週チャートから外れた曲 (15曲)

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

100 J Balvin & Bad Bunny – LA CANCIÓN (🗻84位 /⏰8週)

99 Panic! At the Disco – Into the Unknown (🗻98位 /⏰2週)

97 Tory Lanez & T-Pain – Jerry Sprunger (🗻44位 /⏰4週)

96 YoungBoy Never Broke Again – Make No Sence (🗻57位 /⏰8週)

95 Karol G & Nicki Minaj – Tusa (🗻78位 /⏰3週)

93 Lil Tjay – F.N (🗻56位 /⏰14週)

91 Kanye West – Follow God (🗻7位 /⏰6週)

82 Trippie Redd – Who Needs Love (🗻58位 /⏰2週)

79 Billie Eilish – all the good girls go to hell (🗻46位 /⏰7週)

58 NF – Time (🗻41位 /20週)

54 Sam Smith – How Do You Sleep?  (🗻24位 /20週)

51 Lil Baby & DaBaby – Baby (🗻21位 /20週)

50 Ed Sheeran & Justin Bieber – I Don’t Care (🗻2位 /30週)

49 Khalid – Talk (🗻3位 /43週)

48 Gene Autry – Here Comes Santa Claus (Right Down Santa Claus Lane)  (🗻28位 /⏰4週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Roddy Ricch – Please Excuse Me For Being Antisocial

2 The Who – WHO 🎫

3 Camila Cabello – Romance 🎫👕

5 XXXTENTACION – Bad Vibes Forever

25 French Montana – MONTANA

58 Bobby Helms – The Best Of Bobby Helms

65 The Chainsmokers – World War Joy

81 Fat Joe & Dre – Family Ties

111 Liam Payne – LP1

173 Chuck Berry – Berry Christmas (EP)

 

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆The Weeknd – Heartless

・Arizona Zervas – Roxanne

・Selena Gomez – Lose You to Love Me

・Tones And I – Dance Monkey

・Dan + Shay & Justin Bieber – 10,000 Hours

 

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

🍎 Roddy Ricch feat. Mustard – High Fashion (今週9位程度)

✅ Juice WRLD – Lean Wit Me (今週34位)

🚩 YoungBoy Never Broke Again – Bring ‘Em Out (今週7位) 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

 

 

関連 / 参考記事

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

・各指標の順位

Spotifyhttps://spotifycharts.com/regional/us/weekly/2019-12-06--2019-12-13

Apple Music:【魚拓】Top 100: USA on Apple Music

YouTubehttps://charts.youtube.com/charts/TopSongs/us/20191206-20191212

・ラジオなど:https://kworb.net/

 

 

 

 

 

*1:有料会員と無料会員の再生の区別 たいてい有料会員優位で以前よりも再生あたりの枚数が増加

*2:一応Amazon にもDLの機能はあるので、もう少し低いと推定されます

*3:XXXTENTACIONが亡くなったのは正確には20歳

*4:客演含む

*5:手元のHTML変換ツールの調子がおかしいので表を画像で貼り付けました