チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Billboard(US) 動向 2月号 【シングル/アルバム1位が不動の月】

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 こんばんは。2月のHot 100 / Billboard 200の動向を観察していきます。イベントの多い先月とは違い、シングル/アルバム1位に変化がないなど、動きの少ない月でした。

 

目次:

 

 

1 シングル/アルバム1位が不動

 

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 共に1位が変わらず、”drivers license”とMorgan Wallenが独占。月を通して、シングル1位が変わらないのは昨年の7月以来(”ROCKSTAR”)、アルバム1位が変わらないのは昨年4月以来(The Weeknd)です。レア度が高いのはアルバムの方で、その一つ前の事例は2016年6月のDrake - ”Views”まで遡ります。シングル/アルバムの両方が月を通して変わらないのもその時以来です。

 “drivers license”はストリーミングが徐々に減少するものの、ラジオの急上昇でそれをカバー。トータルでは少しずつポイントを落としているものの、1位をキープするには十分な成績を維持しています。”34+35”や”Up”、”Blinding Lights”など複数の曲が1位に迫りましたが、そのチャレンジにことごとく勝ってきました。

 ビルボードでは先週比ポイントが上昇した曲にはAwardsの欄に”Gain in Performance”という表記がされます。(◎か☆が付いている曲です) 逆に無ければポイントはマイナスということなのですが、何かしらのジャンルで伸び幅が最大の場合は、ポイントに関わらずGain in Performanceと表記されます。”drivers license”はここ数週続けて「ラジオの伸び幅最大」を記録しているため、ずっとGain in Performanceという扱いになっています。ただしストリーミング等の数字を見ると、ポイント自体は若干減少していると推測されます。

 

 そしてアルバム1位のMorgan Wallen。Nワードを発したことにより、ラジオやプレイリストでのサポートが終了。リスナーからも「キャンセル」されてしまう可能性がありましたが、この1件の直後はむしろ売上がアップしました。

 この1件の動きが大きく反映された2/13付のチャートでは総合売上が14%アップ(14.9万枚)。ストリーミングは3%のみの上昇ですが、セールスは102%、シングルDLは67%と著しく上昇。ファンが彼をサポートするために行動したことが伺えます。

 続く2/20付けチャートでは、セールスがさらに向上し、売上も微増の15万枚まで到達しました。この2週に関して、「伸びた理由」を説明するとセールスになりますが、この2週でも引き続き総合売上の2/3以上はストリーミングが占めているので、「売れている要因」はストリーミングということになります。

 ちなみにこの週は前アルバムの”If I Know Me”も10位に浮上。それまでのピークを更新し、滞在124週目にして初のトップ10入りを果たしました。

 2/27になるとアルバムのセールスが落ち着き、売上は まで減少。初めて10万を割りました。しかし競合となるようなアルバムが存在しないため、1位はキープしています。(3月もしばらくそうかも)

 

 

2 ハーフタイムショー

 

 今年のハーフタイムショーは一定のチャート効果を発揮。2/20付のHot 100では”Save Your Tears”は8位→4位に、”Blinding Lights”は3位キープですが著しい上昇を見せました。その他ベスト盤の”The Highlights”がアルバムチャート2位に登場。

 ベスト盤とオリジナル作品の曲は一部重複していますが、そのような場合は実セールスが高い方にストリーミング(とシングルDL)がカウントされます。この週最も売上が高かったThe Weekndの作品は”The Highlights”なので、該当シングルはすべてこちらに集計。稼ぎ頭のシングルをある意味「奪われた」”After Hours”は?位から37位に順位を落としています。次の週にはセールスが”After Hours” > “The Highlights”となり、元のような順位に戻っています。

 ちなみに昨年のハーフタイムショーはYouTubeでの再生数が過去最大を記録するなど、かなり評判が良かったですが、チャート効果でいうと存在感希薄でした。Hot 100への関連曲の登場はゼロ。アルバムチャートでも関連作品が50位以内にも入っていませんでした。ShakiraJennifer Lopezの現行ヒットが少なかったことが理由に挙げられそうです。(このことからチャート効果と評判/注目度がイコールではないことが伺えます)

 

 

3 その他のトップ10

 

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 ・Dua Lipa feat. DaBaby - Levitating

 ラジオとストリーミングを両立したヒットで、かつての“New Rules”=6位を上回り、5位まで到達。ピーク順位で見るとキャリア2番目のヒットに。さらなる浮上なるか?と思いましたが、月末あたりからラジオがマイナスに転じ始めたので、これ以上の上昇は難しいでしょう。

 

・Ariana Grande - 34+35

 先月のリミックスに引き続き、ビデオ効果で再び2位に浮上。どこかで1位を取る算段だったのかもしれませんが、”drivers license”の壁は高かったです。ちなみにリミックスをリリースした週以外は、オリジナルの方がメインと見なされ、リミックス勢(Doja CatとMegan Thee Stallion)はクレジットされず。とはいえ個々のChart Historyにはクレジットは残ります。

 

・CJ - Whoopty

 ストリーミングで芽が出たドリル曲。ラジオも素早く追随し、見事トップ10に。1週でトップ10を後にしましたが、現在もラジオがまだ伸びているのでトップ10復帰の芽もあります。

 この曲のヒットによって、昨年のPop Smokeでも見られたドリル・ムーブメントがさらに強化されたような印象です。TikTokではこの曲に絡めたUS Drill vs. 他の国のDrillの比較動画が登場し、各種ドリルリミックス(”Just Dance”や”Smells Like Teen Spirit”)なども流通しました。(ただ不安定なプラットフォームの宿命なのか、何個か動画が消えているような気もします)

個人的なお気に入り: https://vt.tiktok.com/ZSJRQePFC/

 

TikTokはそれぞれに合わせたFor Your Pageの機能が充実しており、そこがメインで使われているようです。しかし「それぞれに合わせた」ものなので、自分のFYPに出てくるコンテンツが全国区ではない可能性もあります。個人的にはこのDrill Songs比較シリーズ、めちゃくちゃ見かけた印象なのですが、どこまでの規模なのか全体像を把握することは難しいです。ただDrill Remixの2曲に関してはある程度の規模をTokboard等で確認しています)

 

・Cardi B - UP

 Cardi B新曲。“WAP”の再現を狙いましたが、2位スタートに。ストリーミング、セールス共に”WAP”の半分以下でした。(もちろん”WAP“が比較対象としては異例なのですが)

 セールスはこの週で最多の3.7万。うち0.3万はCDから計上されています。

 ストリーミングは3120万。ビルボードのStreaming Songsでは首位を獲得しましたが、Spotifyでは週間5位、YouTube週間2位、Apple Musicでも週の半分くらいは2位(残り半分は1位)になるなど、必ずしも覇権を握っていたわけではないです。

 初週1位を逃したとはいえ、このような初週ブーストを狙うタイプの曲としては2週目以降の下降が最小限なのは朗報です。2週目も5位をキープし、各指標で上位に残っています。

 

・Pop Smoke - What You Know Bout Love

 TikTok→ストリーミング→ラジオの順で人気に。そのラジオが伸びてきて、23週目にしてトップ10入り。ストリーミング→ラジオへと人気がスライドする曲は、ピークが分かれてしまう故にあまり順位が伸びないことも多いですが、この曲はトップ10に届きました。

 

・Lil Tjay feat. 6LACK - Calling My Phone

 リリースと共に、ストリーミングで予想外の注目を集め、見事上位デビュー。両者にとって初のトップ10となりました。6LACKはトップ40も初。一方Lil TjayはPolo Gとの“Pop Out”で11位まで到達した経験があります。

 このような2人が予想外の大ヒットを遂げた要因としてビルボードが指摘するのは、TikTokにあったスニペット。(=曲の一部の切り取り)正式リリース前にこれが流通したことにより、リスナーに浸透して期待度が高まっていたということです。これはMorgan Wallenの”7 Summers”でも指摘されていたことです。

 この2曲はいずれもTikTok内で覇権クラスのヒットというわけではないのですが、リスナーにうまく届けば規模はあまり関係ないのかもしれません。先述のようにTikTokはおすすめ機能(For Your Page)に力が注がれており、規模が大きくない動画でもFYPに一定数現れます。

 ちなみにビルボードは6LACKを客演表記にしていますが、多くの他媒体ではLil Tjay & 6LACKの表記になっています。

 

・Billie Eilish - Therefore I Am

 今月トップ10には入っていませんが、そのうち復帰しそう(リリース週は2位だった)な曲です。初週のようなストリーミングはもう無いですが、代わりにラジオで浮上中。オルタナティブ系ラジオでは自身4曲目の1位を達成しています。

 

 

4 Hot 100に初登場 or 2~3曲目のアーティスト

 

・Giveon

 今月面白い登場の仕方をしたシンガー。2/3曲目のHot 100入りを果たしました。昨年Drakeのミックステープに収録された“Chicago Freestyle”で初のHot 100入りを達成。この作品には多くの豪華ゲストが参加していましたが、それらの曲を上回り、アルバム曲の中では最大のヒットになっていました。(12週滞在、シングルの”Toosie Slide”に次ぐ成績)

 そのDrakeのミックステープよりも前に、彼はEPをリリースしていたのですが、そこに収録されているシングルが今になって注目されはじめました。2/27付のHot 100で、ストリーミングヒットの“HEARTBREAK ANNIVERSARY”、そしてラジオシングルの”LIKE I WANT YOU“が同時に登場しました。

 ちなみに前者は”Anniversary”の名をなぞるかのように、リリースからほぼ1周年のタイミングでHot 100入りを果たしています。後者はアダルトR&Bという系統での人気に加え、“Anniversary”人気に引っ張られたストリーミングの浮上も生きてのHot 100入りだと思われます。

 このような過去曲の急な浮上は、おそらくTikTokの影響もあるとは思うのですが、彼に対しては以前からプレイリストのサポートも充実していました。

 SpotifyではGlobal / USランキングに入る前から最大手プレイリストToday’s Top Hitsに。このリストに入って以降、大きな躍進を果たしました。Apple Musicでは、この曲がプレイリスト入りしたのはヒットしてからでしたが、12月末に彼のクリスマス曲がToday’s Hits(US版)に入るということがありました。特別クリスマス曲の中でも目立つセールスだったわけではないので、彼に期待してのプレイリスト入りだったと思われます。

 ちなみにAppleiTunesではGIVĒONという表記で、SpotifyではGiveonです。ビルボードは技術的な問題なのか、発音記号を表記しないので、Giveonです。

 

・Brent Faiyz & DJ Dahi feat. Tyler, the Creator - Gravity

 Brent FaiyazはGoldlinkの客演を務めた“Crew”以来2曲目のHot 100。DJ Dahiは自身の名義では初のHot 100に。(名前が表に出ない裏方としては数曲のHot 100入り歴があります) Tylerは13曲目のHot 100。

 この曲はTikTokでも注目されていますが、曲のヒットよりも少し後に注目されたような気もするので、因果関係は不明。1週でチャートから外れてしまいましたが、今後TikTokで勢力を伸ばせば、再登場の可能性もあるかも?

 

・Masked Wolf - Astronaut In The Ocean

 オーストラリア出身ラッパーの曲がグローバルヒットに。おそらくTikTokから恩恵を受けてのヒット。現在世界的に急浮上中で、今後の順位上昇が大いに期待されます。

 どちらかというとポップラップという曲調で、オンエアされるラジオはおそらくポップやリズミック系で、RMSビルボードでのMainstream R&B/Hip-Hop Airplay)ではかからないタイプの曲だと思います。

 

・Coi Leray – No More Parties

 フィメールラッパーが初のHot 100入り。主にApple MusicやYouTubeで人気の曲。オリジナルだけではなく、Lil Durkリミックスも注目を集めており、今後飛躍するかも。ただしSpotifyでは両バージョンとも圏外です。(この曲はTikTokでヒットしたのような記述もありますが、仮にそうだったとしても、TikTokの影響がより出やすいSpotifyでは圏外のため、一般的にイメージされるようなTikTokヒットとは少し違うかと思います)

 ちなみに日本のApple Musicでカタカナ表記だったため、自分が知らないだけで有名な人なのかな?と思ったのですが、英語版のWikipediaもまだ無かったです。Trippie Reddの元カノらしいです。

 

・Morray - Quicksand

 彼は初のHot 100入り。どちらかというとラジオヒットタイプの曲。

 

・YBN Nahmir feat. 21 Savage - Opp Stoppa

 YBN Nahmirは2017年の”Rubbin Off The Paint”、2018年の”1942”(メインはG-Eazy)以来、3曲目のHot 100入りです。TikTokでも注目されていたので、その影響もあるのかもしれません。

 

・Tom McDonald - Fake Woke

 Tom McDonaldは初のHot 100入り。DLがその週の1位。しかし他の媒体ではYouTubeくらいでしか注目されなかったので、DLが1位でもHot 100では96位という結果に。

 

 このように今月はTikTok系のヒットが多く見られました。来月最大の注目株はKali Uchisの“telepatía”。Doja Catの”Streets”のような勢いでストリーミングを浮上中。

 

 

5 正統派 Hip-Hop / R&B

 

 ラップと一口に言っても、その中で受容のされ方に多少の違いが見られます。今回紹介するのは他のジャンルからの影響が薄いラップ、またはR&B曲についてです。このようなタイプの曲はApple MusicやYouTubeで人気を得るものの、Spotifyでの影が薄い傾向にあります。ほかラジオではRMS(=Mainstream R&B/Hip-Hop)系統で主にかかり、次いでリズミック、ポップにはほぼかかりません。

 このような曲はクロスオーバー的な人気を得る見込みは薄いですが、熱心なラップリスナーに支えられており、根強い人気があります。またアルバム人気の高いApple Musicでの人気が高いことにより、アルバムリリース時にはHot 100大量登場することが多いです。(アルバム志向の強いリスナーがApple Musicに集まっているのか、それともApple Musicがシステム的にアルバム志向なのか、どっちが先かは分かりません。ただ、Apple MusicはSpotifyと比べてリコメンドが控えめなので、システム的にアルバム志向になりやすいというのは納得できます)

 

・BRS Kash - Throat Baby

 AppleYouTubeRMS系ラジオで人気。DaBabyとCity Girlsのリミックスという強力な援護もあり、トップ40入り。一方Spotifyでは100位に入らず。典型的なこのジャンルのヒットになっている印象です。

 

・Pooh Shiesty feat. Lil Durk - Back in Blood

 AppleYouTube中心に頭角を表す。今月は新ミックステープをリリースし、Apple Musicでは大人気。アルバムチャートでは4位に入り、3曲がHot 100入りを果たしました。その週にシングルの“Back In Blood”は17位まで到達しています。(次の週は16位とさらに浮上)

 Spotifyではアルバム単位の人気を得ることはなかったのですが、“Back In Blood”単体では人気を得ました。直近のデータだとトップ10まで到達しています。

 

・Lil Durk

 昨年末にリリースした“The Voice”のデラックス版を今月リリース。オリジナルと同様にApple Musicで人気を集めました。このデラックス版リリースの週では、オリジナル版リリースの週の売上を上回ることに成功しています。

 

・Moneybagg Yo - Time Today

 Apple Musicで人気。どの媒体でもそこまで派手な順位ではなかったので、Hot 100登場順位が高め(37位)で少し意外でした。

 

・Megan Thee Stallion – Body / Cry Baby

 元来はこのジャンルのラッパーだったMegan Thee Stallionですが、既にこの枠を超えた大スターに。2019年の”Hot Girl Summer”あたりからポップへのクロスオーバーを意識しはじめ、現在では3曲がポップ系ラジオチャート入りを果たしています。(”Savage”, ”Hot Girl Summer”, ”Body”)

 直近のシングルだった。“Body”はリズミックとRMSで1位に。ポップ系でも20位に入りました。月末からシングルが“Cry Baby”に切り替わり、”Body”は大きくラジオを落としています。

 

 

6 短評

 

・Sabrina Carpenter – Skin

 “drivers license”へのアンサーとされる曲。その効果もあり、46位でHot 100入り。Sabrina CarpenterはこれまでBubbling Under止まりの曲が2つあって、Hot 100に到達したことが無かったので、念願のHot 100入りと言えるでしょう。

 しかし本格的にはヒットせず、3週でHot 100を後にしています。ラジオのオンエアも多少はあるので、まだ復活の可能性もありますが。

 

・Cardi B feat. Megan Thee Stallion – WAP

 ピーク1位、しかし滞在は23週と短めの期間で外れました。ミームも含めた特大ヒットからの短めの滞在というチャートアクションは、Drakeの“In My Feelings”に通じるものを感じます。

 リリース初週における記録を更新するなど、ストリーミングでは特大ヒットでしたが、ラジオが週間最高19位止まりだったことが滞在の短い理由でしょうか。上記のMegan Thee Stallionの項目にあるように、ポップ系ラジオチャートにはエントリーしていません。歌詞の内容的には致し方ないのでしょうか?その歌詞がヒットの要因でもあるので、この曲のラジオの少なさとストリーミングでのヒットはトレードオフ関係なのかもしれません。

 

・Jawsh 685 & Jason Derulo - Savage Love (Laxed – Siren Beat)

 ピーク1位、滞在31週の成績で外れました。TikTokで名を馳せたJason Deruloが同サービス内で人気のインスト曲にボーカルを乗せ、ヒットに。さらに上位に入った所でBTSリミックスを追加し、セールス効果で1位を獲得するという、現代音楽マーケティングの教科書のような1曲でした。

 この曲は本来無いはずの31週目の滞在がありました。2/6付の週、51位ながらもビルボードのミスによってチャートに残っていましたが、2/13に正式に外れました。元来は50位以上だったところ、ポイントの修正が入り51位に落ちたものの、反映が間に合わずに残留のようなことだと思われます。

 2013年の8/31付けHot 100で、51位/29週目の”I Love It”が残留していたのも同様の理由かと思われます。

 

・Ava Max - My Head & My Heart / Kings & Queens

 Ava Maxの新シングル。過去の彼女のシングルでは、ヨーロッパのヒットから遅れてUSラジオのオンエアが始まる、のようなパターンでしたが、今回のシングルではタイムラグなくUSラジオでのオンエアが始まりました。2連続ラジオヒットで信頼を掴んだということでしょうか。

 この新曲が伸びた代わりに、前のシングル“Kings & Queens”のラジオが落ち、Hot 100から外れました。ピーク13位、滞在27週でした。

 

・Lil Nas X - HOLIDAY / Blanco Brown

 “HOLIDAY”がピーク37位、滞在12週で外れました。クリスマス曲と被ってしまったこと、また2020年初頭に大きく削減された公式ビデオ以外でのYouTubeポイントで数字を稼いでいた可能性の2つを考慮すると、時期が違えばもう少し良い成績を期待できるポテンシャルのある曲だと考えています。

 ちなみに彼の影響を受け、カントリー&ラップのスタイルでヒットを飛ばしたBlanco BrownはLil Nas Xとは違ってカントリー系ラジオに定着。Parmaleeとの”Just The Way”が今月トップ40入りを果たしています。

 

・Jack Harlow - WHATS POPPIN

 ピーク2位、滞在51週の特大ヒットでチャートを去りました。原曲→リミックスへの切り替えが非常にうまくいったことで、ロングヒットとなりました。(リミックス効果で2位まで到達したのは21週目) 51週の滞在はラップとしてかなり長い部類です。

 

・Taylor Swift – Love Story (Taylor’s Version)

 過去ヒットの再録音源ながらも、DL&ストリーミングで人気を集めて11位に登場。彼女のアーティストとしての注目度の高さが垣間見えました。元曲は既にリカレントで外れた曲ですが、再録音源は別物として滞在1週目からカウントされています。

 ちなみに“Love Story”は昨年Discolinesという非公式リミックスがTikTok内で大流行していました。この効果で、少しだけSpotifyランキング下位に登場していました。そのヒットがこの曲の人気に影響を及ぼしているかは不明ですが。

 

・Dua Lipa - We’re Good

 2/27に49位に登場。Future Nostalgiaのデラックス版からの新曲。リリースと共にラジオで多くオンエアされており、”Don’t Start Now”、”Break My Heart”、”Levitating”に次ぐ4連続のラジオヒットを目指します。

 

・DaBaby feat. Roddy Ricch - ROCKSTAR

 ピーク1位、滞在42週の成績で外れる。DaBabyの初の1位で、ポップ系やUS外などの従来にないフィールドでも注目を集めることに成功しました。例えばUKでは、それまで彼自身の曲ではトップ40も無かったですが、この曲で一気に1位獲得を果たしました。

 USでは2019年にブレイクしたDaBabyですが、その他の地域ではこの曲の存在により2020年にブレイクしたと言えそうです。彼もタイプ的には正統派ラッパー寄りで、曲によっては人気がAppleYouTubeに偏っていることもあります。

 

・Ritt Momney - Put Your Records On

 Corinne Bailey Raeのカバー。元々TikTokで人気を集め、ストリーミングで人気になっていた曲。Spotifyでのピークは10月~11月でしたが、ラジオでは今がまさに旬。Hot 100でもトップ40入りをこのタイミングで果たしています。

 

・Miley Cyrus feat. Dua Lipa - Prisoner

 ピーク54位、滞在12週の成績でチャートを後に。先月の“Midnight Sky”で久々(2014年初頭以来)に滞在20以上の「完走」を達成しましたが、この曲は滞在12週に終わりました。ラジオのサポートが終わってしまったことが下落の要因です。ピークが思いっきりクリスマスと重なってしまったため、そうでなければピークはトップ40に入っていたと思います。

 

・SZA feat. Ty Dolla $ign - Hit Different

 ピーク29位、滞在20週で外れる。リリース直後以外は、長く下位にいた曲ですが、ラジオでの粘りもあり滞在20週の「完走」を果たしています。この曲の存在があってなのか、ストリーミングでの人気シングル“Good Days”のラジオオンエアがやや遅れました。

 

 

 データ等

 

主に外れた曲

 

2/6

38 Dan + Shay – I Should Probably Go To Bed  (🗻28位 /⏰24週)

50 Cardi B feat. Megan Thee Stallion - WAP (🗻1 /⏰24週)

56 Russell Dickerson – Love You Like I Used To (🗻31位 /⏰20週)

 

2/13

51 Jawsh 685 & Jason Derulo – Savage Love (Laxed – Siren Beat)  (🗻1 /⏰31週)

83 SZA feat. Ty Dolla $ign – Hit Different (🗻29位 /⏰20週)

93 Lady A – Champagne Night (🗻33位 /⏰14週)

94 Future & Lil Uzi Vert – Drankin N Smokin (🗻31位 /⏰4週) ※

98 YoungBoy Never Broke Again – Kacey Talk (🗻50位 /⏰16週)

※のちに再登場

 

2/20

35 Morgan Wallen – 7 Summers (🗻6位 /⏰24週)

38 Morgan Wallen – More Than My Hometown (🗻15位 /⏰32週)

49 Jack Harlow feat. DaBaby, Tory Lanez & Lil Wayne – WHATS POPPIN (🗻2位 /⏰51)

59 Sam Smith - Diamonds (🗻39位 /⏰20週)

80 Lil Nas X - HOLIDAY (🗻37位 /⏰12週)

100 21 Savage & Metro Boomin feat. Drake – Mr. Right Now (🗻10位 /⏰18週)

 

2/27

48 Ava Max – Kings & Queens (🗻13位 /⏰27週)

49 DaBaby feat. Roddy Ricch - ROCKSTAR (🗻1 /⏰42)

98 Miley Cyrus feat. Dua Lipa – Prisoner (🗻54位 /⏰12週)

 

 

アルバムキリ番

 

2/6

1周年:Mac Miller – Circles (97位)

150週目:XXXTENTACION - ? (54位)

150週目:Foo Fighters – Greatest Hits (132位)

 

2/13

1周年:Pop Smoke – Meet The Woo, V.2 (83位)

100週目:Juice WRLD – Death Race For Love (29位)

500週目:Adele – 21 (173位)

 

2/20

200週目:Kendrick Lamar – DAMN. (69位)

400週目:The BeatlesAbbey Road (116位)

450週目:AC/DC – Back In Black (76位)

 

2/27

1周年:BTS – MAP OF THE SOUL:7 (108位)

150週目:Cardi B – Invasion Of Privacy (100位)

 

 

各指標の1位

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 "drivers license"一色とまではいかず

 

・Rolling Stone Chartsのトップ10

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 ラジオが減少したぶん、Hot 100では一部の曲が順位を落としたMorgan Wallenの曲ですが、ラジオの影響が無いこちらでは上位に。

 

今月のSpotify(US)トップ10

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※日付はHot 100準拠。新コーナーです。

 

 

◇各週の動向まとめ◇

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・リンク

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard *1

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

Spotify Charts:Spotify Charts

・Tokboard:Tokboard - Top TikTok Songs This Week *2

 

 

1月号:Billboard 動向・1月号(2021) 【予想外の1位独走など】 - チャート・マニア・ラボ

1 予想を超える1位:"drivers license"
2 期待通りの1位:Morgan Wallen
3 期待ほどではない(?)1位
4 超圧倒的だったクリスマス曲、去る
5 クリスマス後の特別復活ルール
6 その他のトップ10 + 今後
7 短評

 

 

*1:従来なら当月くらいは遡って記事閲覧できたのですが、Paywallが激しくなって直近の週しか見られなくなりました。このペースで行くと直近の週も見られなくなりそうで、恐怖です。

*2:更新再開!