チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Billboard(US) 動向 3月号 【月の後半に動いたHot 100上位】

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 こんばんは!

 

目次:

 

 

 

1 後半に動いたHot 100上位 / 複数の首位候補

 

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 先月は”drivers license”が全ての週を制し、動きが無かったHot 100の\。しかし今月の後半、上位が激しく動きました。

 3/20にチャートを席巻したのはDrake。リリースした3曲が、そのまま1位2位3位に収まり、トップ3を独占。The Beatles、Ariana Grandeに次ぐ史上3回目の快挙を成し遂げました。Drakeにとって43-45曲目のトップ10で、首位は8曲目です。

 この3曲は“Scary Hours 2”というEPのような形式でリリースされており、それらがアルバムのような熱量で受容され、3曲全てが圧倒的な再生数を叩き出したことが大きかったと考えています。(ストリーミングではアルバムが強い)

 とはいえこの3曲はシングル扱いで、アルバムチャートには登場していません。仮にアルバム扱いならば、アルバムチャート首位獲得相当の成績を収めています。(Rolling Stone Charts等に記載されている3曲の数字を合算すると、この週のアルバム1位を上回ります)

 この3曲のうち“What’s Next”がラジオシングルで、今後は主にこの曲がHot 100で上位に残りそうです。ただ”Wants and Needs”も非シングルながらストリーミングでの調子が良いため、この曲にも期待がかかります。

 

 同週にこの3曲に次ぐ4位に登場したのはBruno MarsとAnderson .Paakによるユニット、Silk Sonicの”Leave the Door Open”。前者は17曲目の、後者は初のトップ10。Anderson. PaakはHot 100エントリー自体もまだ2曲目です(1曲目は客演を務めた、昨年のEminemのアルバム曲)

 DL、ストリーミング、ラジオ全てで優秀な成績。特にラジオはリリースから即座に大きな上昇を見せています。Bruno Marsはポップ、アダルトポップ、リズミック、RMS(Mainstream R&B/Hip-Hop)と広い系統でオンエアされるのが強み。リズミック&アダルトポップの組み合わせも珍しいのに、RMSまでカバーできるタレントは他にあまり浮かびません。(RMSでのオンエアが本格的に始まるのは来月からですが)

 リリース直後の注目度が大きすぎる反動で、2週目は大きくポイントが減少するのが近年の一般的なチャートアクションですが、この曲は2週目にHot 100首位獲得のチャンスがありました。引き続きのラジオの大幅な上昇に加え、グラミーでパフォーマンスを行い、注目度も向上。DrakeのEP3曲が初週よりは大きく数字を落としたこともあり、首位の有力候補の1つでした。

 しかし“Leave the Door Open”との僅差の争いを制し、Hot 100首位を獲得したのはCardi Bの”Up”でした。Cardi Bにとって5曲目の首位に。

 リリース以降ストリーミングの調子をあまり落とさなかったこと、こちらもラジオの調子が良かったこと(この週リズミック/RMSの2系統で首位)。この従来の2点の好調に加えて、この週DLが伸びた(+96%)ことも、僅差を制する上では効いたかと思います。この曲もグラミーでパフォーマンスを行ったため、その恩恵もあったでしょう。

 ちなみにこの次の週、“Up”はUSのSpotifyでの週間再生数のピークを更新しています。グラミーでのパフォーマンスやHot 100首位獲得のニュースもプラスに働いたのでしょうか。有名アーティストの曲は、ストリーミングでリリース初日にピークが来ることが多いので、このような追い上げ型は珍しいです。

 来月以降は”Leave the Door Open”、”Up”の2曲に加え、新たにリリースされたJustin Bieberの”Peaches”、この3曲で首位争いが繰り広げられるでしょう。

 

 

2 動かないアルバムチャート

 

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 一方、アルバムチャートは1位が変わらず。Morgan Wallenが10週まで、その1位滞在を伸ばしています。先月はまだ売上が10万を超えていて、新規アルバムの1位チャレンジを阻んでいるという印象がありましたが、今月は売上も下がってきていて、競合がいなかった点が1位キープの要因として強いかと思います。

 とはいえ、ストリーミングでここまで安定した強さを維持しているのは見事でしょう。複数の曲がストリーミング内でシングルとして成立したこと、曲数の多さなどが強さの理由と思われます。

 

 数少ない新たな動きだったのはAriana GrandeとGiveon。Ariana Grandeはデラックス版をリリース。5曲を新たに追加したものの、そこまでストリーミングが伸びず2位止まりに。デラックス版で大きく伸びるのは、Apple Musicでの人気が高いタイプのアーティストに限られているような気もします。(正統系のラッパーなど)

 Giveonは昨年のEP2つを合体したコンピレーションをリリース。アルバムチャート5位に入りました。

 この2つにしても、正式な新作ではないので、本当にリリースが少い月だったことが伺えます。

 

(参考:先月のアルバムチャート)

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  The Weekndのベスト盤や、Foo Fightersの新譜は今月のリリースならアルバム1位を獲得していたかもしれません。

 

 

(以下長尺のアルバムに関する余談)

 今のリスナーが、どこまで真面目にアルバムという単位で音楽を聞くかは不明ですが、仮に真面目に最後まで聞くとすれば、長尺アルバムは2つの恩恵を受けると思います。まずは単純に曲数の多さの分だけ再生数が伸びる点。再生数を伸ばすために、ストリーミング以降で長尺の作品が増えた、という問題はストリーミング初期から指摘されています。

 もう一つ、私が最近感じたのはリコメンドで有利になるという点です。私はそこまでMorgan Wallenを好んで聞いているわけではない(流行っているから、勉強として少し聞こうぐらいの感覚、Nワードの一件の前に)ですが、ちょいちょいApple Musicの個人用リコメンドプレイリストに登場してきます。

 この理由を考えたところ、再生時間が長め=この人はMorgan Wallenが好き、と判断された可能性が浮かびました。今回のMorgan Wallenの作品は1時間37分で、30分くらいのアルバムの3周に相当します。「流し」で聞いたとしても、聴取時間では上位に行きやすいすいのです。個人用プレイリストの選曲アルゴリズムは、詳しくは分かりませんが、再生時間がマイナスに働くことはまずないでしょう。

 

(ただ、これは私のApple Musicの使い方も関係するのかもしれないです。私は「ラブ」も「これと似たおすすめを減らす」も、ライブラリ追加も全くしていないので、再生時間しかアルゴリズム的な判断材料が無いです。これを積極的にする人はこの限りではないのかもしれません。この機能が一般的にどれくらい使われているか、は分かりませんが)

 

 

3 グラミーはどうだった?

 

 昨年は主要4部門を独占したBillie Eilishの楽曲が浮上。それがきっかけでラジオも上向くなど、継続的な向上が見られました。(その曲が今年のRecord of the Yearを受賞した”everything i wanted”) ほかパフォーマンスされた曲が4つHot 100入りしましたが、それらは全て1週or2週でチャートから外れてしまいました。

昨年:Hot 100・Billboard 200まとめ 2月号 【アルバム激戦区・不動のシングル上位など】 - チャート・マニア・ラボ

 

 今年は新規登場が無かったものの、上位には影響を及ぼしました。パフォーマンスが行われた”Up”はグラミー後に一定のストリーミング/iTunesの伸びが見られたので、僅差の首位レースを制する要因の1つになったかと思われます。また、同じくパフォーマンスされたDua Lipaの“Levitating”はセールス/ストリーミングが増加。トップ10に返り咲きました。

 昨年グラミー効果でHot 100入りした曲がすぐに外れたように、新たにヒットを作り出すような影響力はグラミーには望みづらいです。しかし依然広い層にアピールできる貴重なイベントではあるので、既存の曲を上向かせるプロモーションの場、とくに僅差を制する必要がある時には有効な方法だと思います。

 ただグラミーはそんな単純な場所ではなく、アーティスト側の思い通りにプロモーションを出来るとも限りませんが。(あとタイミングの問題もあります)

 

 次に実際に受賞した曲に目を向けます。今年のRecord / Song of the YearはHot 100でのピークが低いことが特徴です。Songを受賞したH.E.R.の”I Can’t Breathe”はHot 100に入ってもいない曲です。Record / Song受賞曲でHot 100入りもしていないのは、2009年の”Please Read the Letter”以来です。(Robert PlantAlison Kraussによる / Record受賞)

 またSongの”everything i wanted”の8位ピークも順位が低い部類に入る曲で、そのHot 100に入らなかった2曲以外では、その2009年以降では最もピークが低い曲です。ただし、2008年以前だと8位より低いRecord / Song受賞曲は多く見られます。

 

 

4 トップ10周り

 

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Chris Brown & Young Thug - Go Crazy

 ちょうどラジオで1位だったタイミングでFuture, Lil Durk, Mulattoのリミックスをリリース。この効果で3位とピークを更新しました。(リミックス勢はクレジットされず)

 42週目でピークを更新するというかなり遅咲きの曲。しかし月の後半になるとラジオが減少し、トップ10を後にしました。

 

・Doja Cat – Streets

 ビデオが注目を集め、16位まで浮上。ただしラジオのサポートが現在手薄なため、トップ10は近いようで遠いかもしれません。

 

Olivia Rodorigo - drivers license

 ラジオで1位を獲得。ただしその週に新曲が大量リリースされたため、5位に順位を下げました。今月上位に登場した“Up”、”Leave the Door Open”のほか、来月はJustin Bieberの“Peaches”という新たな競合も登場するため、今後1位に復帰するかは微妙なところです。

 

 

5 Kali Uchis大躍進、今月のTikTok関係

 

 TikTokに関連しそうな曲では、“Astronaut In The Ocean”、”telepatía”、”No More Parties”の3曲が今月トップ40入り。それぞれのヒット経路は様々。

 “Astronaut~”は、TikTokから直接ヒットしたというよりは、まずヨーロッパ圏(ドイツなど)で先に火がついた曲が、TikTokの力を借りつつUSでもヒットしたような印象。このヨーロッパ圏でのヒットの効果もあり、ラジオのオンエアも順調に伸びています。来月にはトップ10に届くかもしれません。

 ”telepatía”はTikTokによって「発掘」されたシングルと思います。発掘以降順調にストリーミングを伸ばしていったものの、既にかなり上位のため、これ以上伸ばすのは難しい気がします。またラジオのサポートが遅いため、現状でこれ以上順位を伸ばすのは難しそうです。TikTokストリーミングで伸びたものの、ラジオのサポートが遅いという点で、Doja Catの“Streets”と似ています。

 “No More Parties”は一般的なTikTokヒットとは違い、Apple MusicとYouTubeに人気が偏っており、Spotifyでは圏外です。Lil Durkのリミックス追加によって大きく順位を伸ばしました。

 Mooskiの“Track Star”にも似たような傾向が見られます。(Spotifyで圏外ではないですが、100位以下)

 

 来月以降、TikTok関連曲でヒットが期待されるのはBeach Bunnyの“Cloud 9”。現在Spotifyを中心に数字を伸ばしていて、このペースが続けばHot 100にも手が届きそう。

 

 

TikTok関連の余談×2)

 

・SugarCrash!の謎

 TikTokの人気曲を計測するサイト、Tokboardでは1位まで浮上。さらにはSpotifyのGlobalランキングでは53位まで到達するなど、TikTok内外でヒットになっているElyOttoの“SugarCrash!”。USのSpotifyでも51位につけるなどし、Bubbling Underまで到達しました。

 しかしこの曲には謎の点が1つあり、それはSpotifyでの成績の割に一向に最大手プレイリストToday’s Top Hitsに入らないことです。

 

 Today’s Top Hitsはその名の通り、ヒット曲全般を扱うプレイリストです。50曲の編成なので、Global50位以上の曲が主にリスト入りの対象と自然に考えられますが、一定期間経った曲は上位でも外されるので、このリスト入りするためのボーダーラインは50位よりもかなり低いです。

 また、過去曲以外にもこのような場合にはリストに入りません。

1:アルバム曲(=アルバムの4番手以下)の場合

2:英語曲ではない場合 (入らない訳わけではないが、基準が厳しくなる)

3:アーティストの素行に問題がある場合(レアケース)

 

 この“SugarCrash!”は53位と順位的にも十分で、かつ1-3にも当てはまりません。リスト入りは時間の問題!と思っていたのですが、まだ入りません。

 入らない理由として思い当たるとすれば、その作風です。この曲はHyperpopというジャンル(大まかに説明すると”未来志向のポップス”)なのですが、その作風は現行メインストリームの一員としては相応しくない、離れすぎていると考えられた可能性があります。 

 また昨年も、Indian Style Remixのミームで知られるDripReportによる”Skechers”がリスト入りしないという似たようなケースがありました。一方で、順位的には足りなさそうな特定のシンガーの曲が、複数回に渡ってリスト入りするようなこともあります。(このタイプのシンガーは、SpotifyだけではなくAppleのリストにも入ることが多い)

 ラジオよりはジャンルの壁が下がったプレイリストですが、それでも「これはメインストリーム向き」「これは不向き」といった、暗黙の了解、基準があるのでは?と感じました。

 

 ちなみに同じくHyperpopとしてカウントされているCharli XCX(とKim Petras、Jay Park)の“Unlock It”もTokboardで1位まで到達し、同ランキングの1位&2位をHyperpopが占めている期間もありました。”Unlock It”はメジャーなランキングには今のところ入っておらず、具体的なヒットはまだ観察されていません。

 

(こうやってヒット系プレイリストを観察していると、自分ならこの選曲をする、という考えが色々湧いくるので、作った私作成のヒット系プレイリスト →トコの「トコ Today's Hits」をApple Musicで

 

 

・日本関連のコンテンツ?

 ストリーミングやDLでは圏外で、Hot 100に接近しているわけではないですが、TikTok内で日本関連のコンテンツの英語圏での躍進が今月見られました。

 最も際立ったのはLizz Robinett(日本だと核のリズという名前)による「恋愛サーキュレーション」の英語カバー。この曲はアニメ「化物語」のOPで、オリジナルは声優の花澤香菜によって歌われています。この音源はTokboardで11位まで一時期浮上しています。オリジナルの曲はもともと、英語圏でも「人気のミーム曲」として受容されていて、一部では根強い人気があった曲なのだと思います。その人気が今回花開いたということでしょうか。

 もう一つここ数日で大きな浮上を見せているのは桃黒亭一門(ももいろクローバーZの別名義)による「ニッポン笑顔百景」です。こちらは主にコスプレイヤーの間で人気が出ています。(日本関連のコンテンツが海外圏に広がる時、コスプレイヤーを中心に人気になるというのはパターンの1つです)

 日本関連のコンテンツを積極起用する有名TikTokerのBella Poarch(最多Like動画記録の保持者)もこの「ニッポン笑顔百景」を使用していました。「恋愛サーキュレーション」は今回人気が出た英語版ではなく、日本語版(だけどオリジナルではなくカバー)を以前使っていたことがあります。ほか以前に楽天パンダのCMを踊っていたこともあります。

 

 

6 Hot 100デビューを果たしたアーティスト

 

Clinton Kane – Chicken Tendies (🗻88位 /⏰1週)

Mooski – Track Star (🗻55位 /⏰4週)  ※継続中

Lil Baby feat. EST Gee – Real As It Gets (🗻34位 /⏰2週)  ※継続中

ROSÉ – On The Ground  (🗻70位 /⏰1週) ※継続中/ソロ名義として初

NF feat. Hospin - LOST  (🗻79位 /⏰1週) ※継続中

Machine Gun Kelly feat. CORPSE – DAYWALKER!   (🗻88位 /⏰1週) ※継続中

 

 太字のほうが初登場アーティストです。(客演等で複数アクト名義の場合) 後ろ3つは最後の週に登場したので、継続中という表記にしましたが、おそらく次の週には外れるでしょう。

 ROSÉはBLACKPINKのソロプロジェクト、第二弾。2018年の第一弾、JENNIEの“SOLO”はBubbling Underにも届きませんでしたが、今回は見事Hot 100入り。それぞれの曲やメンバーの違いというよりは、この約2年半でBLACKPINKがグループとして、勢力を伸ばしたことが大きいでしょう。

 

 

7 1年滞在の曲2つなど。今月のリカレントたち

 

 今月、計11曲がリカレントルールによってチャートを去りました。うち2曲が53週目/26位以下のルールによって外れています。Drake等の上位デビューが多かった3/20の週は、一挙に6曲がリカレントで外れています。(詳しいデータは下の「主なデータ」欄にあります) そのうちのいくつかをこの章で紹介します。

 

・Lewis Capaldi – Before You Go (🗻9 /52)

 2曲のHot 100エントリーが、両方とも滞在52週に到達する、ロングヒットのエキスパートLewis Capaldi。アダルトポップ系ラジオに適した作風を持ち、ラジオでのオンエアがかなり長いことが特徴。ストリーミングも弱くはないです。

 

・Gabby Barrett feat. Charlie Puth – I Hope (🗻3 /62)

 ゆったりとしたラジオの系統移行(カントリー → ポップ)が功を奏し、46週目でピークを更新していた遅咲きの曲。この曲もアダルトポップ系に適した作風で、ピーク後のラジオ減少もゆるやかでした。2015年に新リカレント(53週/26位)が適用されてからは、”Blinding Lights”に次いで2番目に滞在が長いです。

 

・AJR – Bang!  (🗻8 /35)

 ピークに到達するまでは遅かったですが、その後はラジオが急落して、下降が思いの外早かった曲です。

 

・Internet Money & Gunna feat. Don Toliver & NAV - Lemonade (🗻6 /29)

 ポップさも兼ね備えたラップ曲。全員US外でのヒットはこれまで少なかったですが、この曲はUK1位、ドイツ2位などUS外でも大ヒットでした。

 

・Drake feat. Lil Durk – Laugh Now Cry Later (🗻2 /29)

 自身がトップ3を独占した週に外れる。ピークが高く、上位にいた期間も長いものの、トータルの滞在週数があまり長くないのはDrakeっぽいチャートアクションです。

 

・Justin Bieber & benny blanco - Lonely (🗻12 /20)

・Justin Bieber feat. Chance the Rapper - Holy (🗻3 /25)

 4月の1週目にアルバムのリリースがチャートに反映されるJustin Bieber。しかしその前に先行シングルが2つチャートから外れてしまいました。近年のヒットシングルは滞在が長めなので、アルバム前に2つもシングルがリカレントしているのは、なんだか懐かしい感じがします。

 

Harry Styles - Golden (🗻57位 /20)

 20週滞在と、シングルとして一定の存在感は示したものの、ピークは57位で前2つのシングルほどにはならなかったです。

 

・Jack Harlow – Tyler Herro (🗻34 /20)

 ブレイク後の次シングル。下位の滞在が長かったものの、20週まで到達。さすがに前シングル”WHATS POPPIN”ほどのヒットを望むのは難しいので、20週まで到達するだけでも健闘だと思います。

 

 

8 短評

 

・SpotemGottem feat. Pooh Shiesty Or DaBaby – Beat Box

 アーティストに優しい表記をしている曲。リミックスが存在しても、原曲を上回ってメインにならない限り、ビルボードのクレジットに載らないのが定番。ほかリミックスがリリースされた週だけはクレジットされても、次の週にはすぐクレジットが外される、ストリーミング媒体ではリミックスが上でもラジオ等の関係かリミックスが認識されない、などリミックスで活躍した人の名義がイマイチ反映されていないことが多いです。

 しかしこの“Beat Box”では複数のリミックスが “Or”の表記で両方掲載される、というリミックスならびにアーティストに優しい表記になっています。

 この曲自体は一時期15位と、その多くのリミックスの恩恵を受けて好調です。

 

・Juice WRLD, Clever & Post Malone – Life’s A Mess II

 この曲は昨年のJuice WRLD & Halseyの“Life’s A Mess”のリミックスに相当する曲なのですが、新たに”II”と銘打ってリリースしたことからか、別の曲としてチャート入りしました。リミックスに関する名義は時と場合によってさまざまな扱いが見られます。

 

・Pop Smoke feat. A Boogie Wit da Hoodie – Hello

 Pop Smokeの新たなシングルカット。ストリーミングでもある程度調子をキープしているところに、ラジオ再生が加わりHot 100入り。

 彼は昨年のアルバム曲のうち、オリジナル版に入っていた曲は全てリリース週にHot 100入りしたのですが、デラックス版の曲は当時入らず(Juice WRLDのアルバムとバッティングしたため) この“Hello”はデラックス版の曲で、シングルカットのタイミングで初めてHot 100に入りました。

 

Tiesto – The Business

 イギリスとドイツで3位など、ヨーロッパ圏でヒットしているダンス曲。この手の曲はUSにあまり縁が無い印象なので、現在の69位でも健闘の部類だと思います。

 

・CJ – Whoopty

 まだHot 100には残っていますが、下落のスピードがものすごく早い曲。20週くらいの滞在で外れそうです。ラジオ&ストリーミングを両立する曲としては珍しい下落だと感じます。

 

・Machine Gun Kelly & blackbear – my ex’s best friend

 滞在が20週を超えてからもラジオの粘りによって、Hot 100ピークを更新していた曲。そのポップパンク的な作風が認められ、Alternative系ラジオで1位を獲得しています。

 

・Shawn Mendes & Justin Bieber – Monster

 滞在は14週に終わる。最初の週は8位だったものの、長続きはせず。キャリア初期は30週を超えるようなロングヒットのシングルが多かったですが、直近の”Wonder”と”Monster”はいずれも20週未満の滞在に終わってしまいました。

 初めてHot 100首位の獲得に成功した”Señorita”が良くも悪くもキャリアの変換点になった印象です。

 

・Ed Sheeran – Afterglow

 彼が本来持っていたアコースティック系のサウンドを試みたシングルも、20週に満たない滞在でHot 100を後にしました。

 直近のアルバムでは“Sing”、”Shape of You”、“I Don’t Care”とアップテンポなシングルを先行曲として持ってくることが多いので、そのような傾向を踏まえると、この曲はアルバム宣伝用の曲ではなく、彼の作風を取り戻す等の、ヒット以外の意図のあった曲なのではないかと私は考えています。

 

Maroon 5 & Megan Thee Stallion – Beautiful Mistakes

 ストリーミングの反応がイマイチだったものの、ラジオに安定感があり、Hot 100中位デビュー。その後ラジオが順調なうえ、Spotifyでの数字が改善してきたため、2週目に順位を上げるという珍しいチャートアクションに。今後もまだ伸びそうです。

 

・Selena Gomez & Rauw Alejandro – Baila Conmigo

 自身のルーツも意識した、スペイン語EPという意欲的な試みも、アルバムチャート22位、Hot 100入りは1曲のみと、大きなインパクトは残せませんでした。

 

・Luke Combs – Forever After All

 ストリーミングでの人気もあり、リリース週に2位を記録していた曲。その後もPandoraで1位など、ストリーミングの数字で粘りチャートに残っていましたが、このタイミングでようやくラジオでシングルカット。21週目、かつ51位以下ながらもHot 100に残っているのは、そのラジオの伸びが理由です。

 

・Lil Durk – Hellcats & Trackhawks

 昨年2つアルバムをリリース。今年1月末にはそのデラックス版もリリースしているLil Durkですが、今月は自身のレーベルOnly the Familyの作品もリリース。多作です。

 

 

主なデータ

 

・外れた曲

 

3/6

11 Taylor Swift – Love Story (Taylor’s Version)  (⏰1週)

33 Lewis Capaldi – Before You Go (🗻9位 /⏰52)

77 The Kid LAROI – SO DONE (🗻59位 /⏰15週)

83 Kenny Chesney – Happy Does (🗻47位 /⏰14週)

89 Chris Lane – Big, Big Plans (🗻42位 /⏰20週)

92 Karol G - BICHOTA (🗻72位 /⏰12週) ※

97 Saweetie feat. Jhené Aiko – Back To The Streets (🗻58位 /⏰13週)

98 Juice WRLD & Young Thug – Bad Boy (🗻22位 /⏰5週)

 

3/13

94 Ed Sheeran - Afterglow (🗻29位 /⏰10週)

98 Shawn Mendes & Justin Bieber - Monster (🗻8位 /⏰14位)

 

3/20

24 Gabby Barrett feat. Charlie Puth – I Hope (🗻3位 /⏰62)

35 AJR – Bang!  (🗻8位 /⏰35週)

38 Internet Money & Gunna feat. Don Toliver & NAV - Lemonade (🗻6位 /⏰29週)

41 Justin Bieber & benny blanco - Lonely (🗻12位 /⏰20週)

47 Drake feat. Lil Durk – Laugh Now Cry Later (🗻2位 /⏰29週)

89 Kelsea Ballerini – Hole In The Bottle (🗻39位 /⏰20週)

100 Karol G – BICHOTA (🗻72位 /⏰13週)

 

3/27

49 Justin Bieber feat. Chance the Rapper - Holy (🗻3位 /⏰25週)

65 Harry Styles - Golden (🗻57位 /⏰20週)

93 DDG – Moonwalking in Calabasas (🗻81位 /⏰11週)

94 Jack Harlow – Tyler Herro (🗻34位 /⏰20週)

95 Morgan Wallen – Somebody’s Problem (🗻25位 /⏰13週)

96 Morgan Wallen – Cover Me Up (🗻52位 /⏰10週)

 

 

・アルバムチャート キリ番

 

3/6

1周年:Lil Baby – My Turn (10位)

1周年:Bad Bunny – YHLQMDLG (31位)

1周年:A Boogie Wit da Hoodie – Artist 2.0 (184位)

1周年:Jason Aldean – 9 (193位)

100週目:Billie Eilish – WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO? (28位)

250週目:Drake – Views (108位)

 

3/13

1周年:Lil Uzi Vert – Eternal Atake (32位)

1周年:Jhené Aiko – Chilombo (55位)

100週目:Khalid – Free Spirit (117位)

200週目:Hozier – Hozier (144位)

 

3/20

150週目:Post Malone – beerbongs & Bentleys (41位)

200週目:Drake – More Life (120位)

400週目:Tom Petty And The Heartbreakers – Greatest Hits (83位)

 

3/27

1周年:The Weeknd – After Hours (4位)

100週目:Lizzo – Cuz I Love You (115位)

350週目:The Rolling Stones – Hot Rocks 1964-1971 (168位)

 

 

各指標の1位

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 それぞれで人気曲が異なります。

 

 

Rolling Stone Chartsのトップ10

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 こちらでは"Back in Blood"と"telepatía"がトップ10に入っています。

 

Spotifyチャートのトップ10

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◇各週の動向メモ◇

 

3/6

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3/13

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3/20

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3/27

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・リンク / 参照

 

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

Spotify Charts:Spotify Charts

Apple Music Top 100 (US):Top 100: USA on Apple Music

YouTube楽曲ランキング(US):YouTube music charts

・Tokboard:Tokboard - Top TikTok Songs This Week

Spotify - Today's Top Hits:Today's Top Hits | Spotify Playlist

 

 

(過去の月へのリンク)

2月号:Billboard(US) 動向 2月号 【シングル/アルバム1位が不動の月】 - チャート・マニア・ラボ

1 シングル/アルバム1位が不動
2 ハーフタイムショー
3 その他のトップ10
4 Hot 100に初登場 or 2~3曲目のアーティスト
5 正統派 Hip-Hop / R&B

 

1月号:Billboard 動向・1月号(2021) 【予想外の1位独走など】 - チャート・マニア・ラボ

1 予想を超える1位:"drivers license"
2 期待通りの1位:Morgan Wallen
3 期待ほどではない(?)1位
4 超圧倒的だったクリスマス曲、去る
5 クリスマス後の特別復活ルール
6 その他のトップ10 + 今後