チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Billboard(US) 動向 4月号 【週替りの1位:Justin Bieber→Lil Nas X→Silk Sonic→Polo G】

 

f:id:djk2:20210427053407p:plain こんばんは!今月はHot 100もBillboard 200も新規の1位が続々と生まれ、彩り豊かな月となりました!

 

 

 

1 毎週交代!シングル首位

 

f:id:djk2:20210427053700j:plain

 こうして月を通して、毎週Hot 100首位が交代するのは昨年12月以来です。昨年は12月のほか、5月も毎週首位が交代していました。

 

 

・Justin Bieber feat. Daniel Caesar & Giveon – Peaches

 Justin Bieberの新作がアルバム単位でストリーミング上で人気を獲得。その中で最も注目を集めた“Peaches”がHot 100でも首位を獲得しました。Bieberは7曲目、客演陣は初。ほかラジオやセールス面でも好成績。

 他にもシングル候補が多く、この曲が注目されたのは意外と感じるかもしれませんが、リリース時から有力プレイリストにも入っており、最初からシングル想定の曲だったようです。Apple MusicのToday’s Hitsでは最初からプレイリストの先頭に配置されていました。SpotifyのToday’s Top Hitsでも、彼の曲の中では3番手の配置でしたが、リスト入りはしっかりとしていました(一番手はKhalidとの“As I Am”)

 そのためか、ストリーミング人気と一致したラジオでのシングルカットが即座に行えたのだと思います。

 

 そのアルバムは15.4万の売上で1位に。うち11.9万枚(相当)はストリーミングから来ています。既にリカレントで外れていた“Holy”と”Lonely”、そしてInterlude以外の曲がすべてHot 100入りしました。

 ”Purpose”の時は1つのボートラ除く全曲が、“Changes”の時は6曲がHot 100入りしていました。前回の“Changes”のHot 100エントリー数から、彼はキャリアの曲がり角にいるのかな?という気もしましたが、今回のアルバムでしっかりと巻き返すことに成功した印象です。

 今回のアルバムに客演で参加したBEAM、Dominic Fike、Burna Boyは初のHot 100入りを記録。

 Dominic FikeはUS出身のインディーポップ系シンガーで、2019年に”3 Nights”がヒット。UKとオーストラリアで3位など、US以外では注目を集めていた曲なのですが、Hot 100には登場しませんでした。

 Burna Boyはナイジェリア出身のラッパー。近年は有名アーティストとのコラボが増加中で、UKでは3曲のトップ10(うち1曲は首位)の実績があります。

 BEAMはこの2人と比べるとまだ実績が少ないですが、Justin Bieberが今月半ばにリリースしたEP、“Freedom”にも参加しています。

 

 2週目にはデラックス版を追加でリリース。Lil Uzi Vert、DaBabyなど豪華ゲストが参加していましたが、あまり注目を集めず。そこからの新規Hot 100エントリーは0曲で、アルバムチャートでもRod Waveに1位の座を譲りました。しかし特に新規要素は無かった3週目に1位に復帰しています。

 

 

・Lil Nas X – MONTERO

 次に1位を獲得したのはLil Nas X。リリース初日の時点でもトップ10クラスの成績で、好調な滑り出しを切ったこの曲ですが、週の後半にさらに注目度が向上。DLやストリーミングでの上昇が見られ、見事1位の座を射止めました。

 YouTube(公式ビデオ)ではこの週に2800万もの再生数を記録。2位が670万、3位が638万、ということを念頭に入れると独走ぶりが分かります。*1ただし“Old Town Road”の時と比べると、かなりYouTube関連の数字のレートがHot 100では下げられているので、1位獲得への寄与度はそこまで高くないと思われます。しかし、それだけ話題を呼んだということを証明していると思います。

 ほかSpotifyでも週間1位に。(USでは初週から、グローバルでは2週目から)Apple Musicでは週の後半にトップ10に入るくらいの成績でした。DLもBTSに次ぐ2位と好調。一方ラジオはほぼ無し。

 この曲は事前からある程度の認知度があったことで、リリース直後のバズにつながったと言われています。実際私もリリース前から、曲の一部や曲名(”MONTERO”ではなく“Call Me By Your Name”のほう)をちらほら耳にしていました。

 

 Lil Nas Xは登場以降、曲をプロモーションする巧みさが際立っています。Complexは” Lil Nas X Is Even Better at the Internet Than We Thought”というタイトルの記事で、彼のことを称賛しつつ、この曲のヒットの経緯を説明しています。この記事で印象的だった部分を引用して紹介します。

 

「Lil Nas Xは、2021年現在のファンが“ただ“音楽を聞きたいわけではないということを誰よりも理解している。ファンは関与し、解釈し、そして自分なりの何かを想像したいと考えている」

 

「もちろん、ソーシャルメディア重視のアーティストにも欠点はあります。誰もが安直なギミックが音楽それ自体を上回ることを望んでおらず、私たちは6ix9ineのようなインターネットトロールという“ダークサイド”も見てきました。しかしながら、Lil Nas Xの”Montero”は重要な政治的メッセージを伝えながら、ビデオの芸術性をマーケティングに落とし込むことが出来ているので、魅力的なのです」

 

 私はよくブログで「曲をヒットさせるには、アーティスト自体への期待度/注目度/評価が重要」との旨の記述をよくしますが、彼はそれをよく満たしていると考えています。それだけに、前シングル“HOLIDAY”の成績=ピーク37位/滞在12週は、少し不本意な数字に感じていました。(ピークがクリスマスと被っているため、時期が違えばもう少し良い順位を記録していたとは思いますが)

 それだけに、今回のヒットは私の考えていた通りの評価がチャートに表れていて嬉しいですね。正直1位まで獲得するとは思っていませんでしたが!(トップ10くらいかな?と考えていました)

 

おまけ:ファンによる「Lil Nas Xを構成する要素」の動画(を紹介するLil Nas X)

→ https://vt.tiktok.com/ZSJSRn76A/

曰く、”Strange”、”Good Representation of LGBTQ Community”、”Gay”の要素が強いらしいです

 

 

・Bruno Mars & Anderson. Paak – Leave the Door Open

 この週は目立った新リリースが無かったため、既に1位を獲得した曲を中心とした首位レースとも考えられていました。しかしその週をうまく活用し、1位を獲得したのは”Leave the Door Open”でした。この週にCDをリリースするなどし、セールス戦略を展開。その結果セールスが138%増加となり、それが効いて1位を獲得することに成功しました。もちろんセールスだけでなく、リリースから継続して高いラジオ/ストリーミングの貢献度も大きいです。

 昨年からセールス戦略を打ち出して1位を獲得するパターンがいくつか見られますが、その中でも初週勝負型と、元来のヒットに上乗せ型の2パターンがあると感じます。今回の“Leave the Door Open”は上乗せ型で、昨年だと”Say So”、”Savage”、”Watermelon Sugar”、”Savage Love”がこれです。

 

 

Polo G – RAPSTAR

 リリース前から大きく期待されるような曲は無かった4月の4週目ですが、Polo Gの“RAPSTAR”が想像以上の人気を得て、Hot 100首位デビューに成功しました。5360万再生は、”drivers license”の1週目、2週目に次いで今年3番目に高い数字でした。初週からAppleSpotifyYouTubeで1位に立っています。同様に初週からストリーミングで高い人気を得たLil Nas Xの”MONTERO”と比較すると、Apple Music人気に優れています。

 彼はキャリア初の1位獲得に。これまではトップ10も、客演を務めたJuice WRLDのアルバム曲(“Hate the Other Side”)のみでした。自身の曲での最高位は”Pop Out”での11位。2019年に彼がブレイクしたきっかけとなったと曲です。

 

 彼は昨年のアルバムの時点でも飛躍の兆しを見せていました。Futureと被ったことによりアルバムチャートでは2位だったものの、ファン層がかぶるであろう競合がいながらも、9曲がHot 100入りと好成績を残していました。

 そのアルバムは現在も人気が持続しており、今月もアルバムチャート28→30→21位と推移。さらに次の週は、新シングルの影響が出て19位まで浮上しています。これらはリリース週に1位を争ったFuture(今月80位程度)のアルバムよりも高い順位です。

 また、その昨年のアルバムに収録された“Martin & Gina”はこの曲に引っ張られる形でストリーミングで再浮上中。まだ滞在が19週なので、Hot 100再登場の可能性も??

 

 

2 トップ10

 

f:id:djk2:20210427053700j:plain

 続いてその他のトップ10について見ていきましょう。

 

・Dua Lipa feat. DaBaby – Levitating

 グラミーの週に浮上して以降、再びトップ10に定着。ラジオのピークは過ぎましたが、代わりにストリーミングが好調を維持しており、これが巻き返しの要因となっているようです。

 先月の記事で言及するのを忘れてしまったのですが、グラミーの週にはリリースから50週目にしてアルバムチャートのピークを更新していました。(従来4位→3位) ただし売上自体はリリース週の方が高かったです。

 

Olivia Rodrigo – deja vu

 大ヒットの次シングルもトップ10から登場と、上々の滑り出しに。新規アーティストが大ヒットを飛ばした場合、その次が出ずに苦労することも多いですが、そうはならず新曲もこの順位で登場したということは、それだけ彼女がアーティストとして期待されているということなのでしょうか。来月リリースのアルバムがどこまで伸びるか、要注目です。(実際に反映されるのは6月付のチャート)

 

・Masked Wolf – Astronaut In The Ocean

 オーストラリアのラッパーによる曲がトップ10まで到達。ラジオ、DL、ストリーミングで満遍なく人気。Amazon MusicやPandoraでは1位に到達しています。

 ダンサブルなラップ、ヨーロッパ圏で先にヒット、TikTokがヒットの一因……など、昨年の“Roses”を彷彿とさせる部分が多いです。ヒットの規模もそれと同じくらいになるのではないでしょうか。

 

・Doja Cat feat. SZA – Kiss Me More

 Doja CatとSZAのコラボレーションが注目を集め、トップ10スタートを切りました。Doja Catは3曲目、SZAは4曲目のトップ10で、ブラックパンサーのサントラの”All The Stars”と並んでキャリアハイの順位です。

 ラジオ / ストリーミングの両方が継続的な好成績を収めているため、今後も期待が持てそうな1曲。

 

・The Weeknd – Blinding Lights

 4月ラストの週にトップ10を後に。それまでのトップ10滞在は57週にもわたります。数々のロングヒット記録を塗り替えたこの曲を象徴する記録の一つに。2番目の記録が39週、3番目の記録が33週と考えると、いかに破格の数字かが分かります。

 

57週 The Weeknd – Blinding Lights (2020-21)
39週 Post Malone – Circles (2019-20)
33週 Ed Sheeran – Shape of You (2017)
33週 Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You (2018-19)
33週 Post Malone & Swae Lee – Sunflower (2018-19)

(このように、ストリーミング時代によく更新される記録です)

 

 次に目指すのはトータルのHot 100滞在週数でしょうか。2015年末から、53週目以降は26位に落ちると外れるというルールが実行されたことから、この記録を達成する難易度が上昇しましたが、どこまで記録を伸ばせるでしょうか。

 

87週 Imagine Dragons – Radioactive (2012-14)
79週 Awolnation – Sail (2011-12 / 13-14)
76週 Jason Mraz – I’m Yours (2008-09)
71週 The Weeknd – Blinding Lights (2019-)

 

 

3 新作が増加、アルバムチャート

 

f:id:djk2:20210427054147j:plain

 

・Rod Wave - SoulFly

 Rod Waveが初のアルバム1位を獲得。売上は13万で、14の収録曲がHot 100入り。リリース週に8曲がHot 100入りした前作以上に飛躍を遂げました。ただし現状Apple / Spotifyでの人気に差があり、クロスオーバーという点ではまだまだかもしれません。もちろんアルバム1位なので、コアなラップリスナーには人気ということですが。

 

Demi Lovato - Dancing With the Devil: The Art of Starting Over

 3週目のJustin Bieberに1000枚差の僅差で破れ、アルバム2位に。売上7.4万のうち、セールスが3.8万、ストリーミングが3.3万(残りシングルDL)と均等に数字を獲得。セールスに関しては、CDの販売も行っていたようです。

 

Lil Tjay - Destined 2 Win

 2月に6LACKとの“Calling My Phone”がロケットスタートを切ったLil Tjay。その動向から、アルバムもかなりヒットするかな?とも思っていましたが、アルバムチャート5位(売上6.2万)とそこそこの成績に留まりました。シングルは際立っていましたが、アルバム曲がストリーミングのトップ10に多数登場、とはならなかったです。

 

Taylor Swift - Fearless (Taylor's Version)

 “Fearless”の再録バージョンが29.1万の売上でアルバム1位に。キャリア9枚目の1位。(デビュー作だけアルバム1位ではない) 特殊な形態でのリリースでしたが、他に大差をつけてのアルバム1位に。

 29.1万の売上のうち、17.9万をセールスが占めていますが、ストリーミングでも人気で8曲がHot 100入り。これでHot 100エントリー数を136まで伸ばし、女性アーティスト最多Hot 100エントリー数の座を維持しています。

 

231曲 Drake
207曲 Glee Cast
170曲 Lil Wayne
136曲 Taylor Swift
122曲 Future
114曲 Nicki Minaj

 

 

4 ラジオ動向

 

f:id:djk2:20210427054357j:plain

RMS = Mainstream R&B / Hip-Hop

 

 各ラジオ系統でどの曲が1位になっているか?ということについて取り上げていきます。上記の5つが規模の大きいメジャーな系統です。大まかなイメージとしては、ポップ>カントリー>アダルトポップ=リズミック=RMSの順番に大きいです。Radio Songsとはラジオ全体での再生数を測るチャートです。このラジオ動向をもとに、いくつかの曲について見ていきましょう。

 

・drivers license (Olivia Rodrigo)

 4/17付のランキングまで5週間ラジオ再生数が1位に。ポップ系とアダルトポップ系で1位を獲得しています。現在は”deja vu”という有力な次シングルが登場したため、ラジオ・ストリーミングともにそちらへシフトしており、それに伴いdriversの方は徐々に順位を落としそうです。

 

・Leave the Door Open (Bruno Mars & Anderson. Paak)

 ポップ、アダルトポップ、リズミック、RMSと広い系統でオンエアされていることもあり、4/24付のランキングでラジオ1位を獲得。Bruno Marsにとっては9曲目のラジオ1位で、これはHot 100首位曲数(8つ)よりも多い数字です。(ラジオ1位曲のうち、”Finesse”だけHot 100首位を獲得できなかった)

 前述のように、このラジオでの好調、ストリーミングとセールス戦略を合わせてHot 100首位を獲得することに成功しました。まだラジオでの伸びしろがあるため、しばらくはHot 100上位に残るでしょう。競合が少ない週が来れば、また1位獲得のチャンスもあるかも?

 

・Therefore I Am (Billie Eilish)

 “bad guy”に次いで2曲目のポップ系首位。ただしここをピークに、ラジオ再生数は落ち始めており、Hot 100での浮上はもう望めなさそうです。長い間11位~20位のゾーンに留まっていましたが、結局トップ10に入っていたのはリリース直後の週だけでした。(ただ上位には長く残っているので、総合ヒット度はそれなりに高い)

 

・Save Your Tears (The Weeknd)

 ポップ系で1位を獲得。ほかアダルトポップ系でも浮上中。このラジオが高まってきたタイミングでAriana Grandeリミックスがリリースされる予定。額面通りにヒットすれば、元々の高いヒット度も合わさって、Hot 100首位が獲得できそうです。

 ちなみにリズミック系ではすでにピークを終えて、下降中です。

 

・The Good Ones (Gabby Barrett)

 昨年“I Hope”が特大ロングヒットになったGabby Barrett。その時のようなポップ系への飛び火はまだしていませんが、カントリー系ラジオではしっかり1位を獲得(2週) AppleSpotify等では存在感がやはり薄めですが、AmazonやPandora等のストリーミング、ほかDLが高いこともあって、Hot 100では19位まで到達しました。

 

・willow (Taylor Swift)

 “folklore”からはラジオ1位が出ませんでしたが、”evermore”からは”willow”がアダルトポップ系1位を獲得。ただポップ系ではオンエアが終わりに近づいており、今後の浮上は望めないでしょう。

 

・Best Friend (Saweetie feat. Doja Cat)

 リズミック系で1位を獲得。Saweetieはこの系統を得意としており、”My Type”、”Back to the Streets”に次いで3曲目の1位。一方、彼女はRMSで1位を獲得したことがありません。客演のDoja Catも3曲目のRMS1位(”34+35”を含むならば*2、もう一つは“Say So”)

 この曲はHot 100で17位まで到達し、”Tap In”で記録したキャリアハイ(20位)を更新しています。

 

・You're Mines Still (Yung Bleu feat. Drake)

 客演Drakeのアシストもあって、ラジオ人気を得たYung Bleuの曲。先月のRMSに続き、今月リズミック系で1位を獲得。

 

・What’s Next (Drake)

 順当にラジオを伸ばし、まずはリズミック系で首位獲得。ただし“Wants And Needs”が既にシングルカットされる動きがあり、早いタイミングでシングルが交代するかもしれません。

 

・On Me (Lil Baby)

 RMS系統を得意とするLil Baby。この系統5曲目の1位。ちなみにリズミックの方では1位は3曲。自身のシングルの多さに加え、客演の活躍もあり、約3年間で29曲のシングルがRMSチャートにエントリーしています。

 

・What You Know Bout Love (Pop Smoke)

 1月にリズミック系で1位を獲得した後、今月はRMS系でも1位を獲得。基本的に他系統に飛び火しないカントリーを除くと、主要5系統の中で最も珍しい組み合わせはRMSとアダルトポップなのですが、この曲はそれを達成しています。(アダルトポップ系で38位)

 

・Cry Baby (Megan Thee Stallion feat. DaBaby)

 ラジオを順調に伸ばし、“Body”に次いで2連続でこの系統で1位に。Megan Thee Stallionにとっては3曲目、DaBabyにとっては6曲目のこの系統1位。

 ちなみに今年に入ってから、11曲がRMSで1位に。これは上記5系統の中では、カントリーと並んで最多タイ。元々はここまで入れ替わりが激しい系統ではありませんが、ここ数ヶ月限定の現象なのか、それともこのような方針へ今後変化していくのでしょうか?

 ただしこのRMSとAdult R&Bという系統が合算されたチャート、Hot R&B / Hip-Hop Airplayでは今月逆の現象が起きました。Chris BrownとYoung Thugの“Go Crazy”が29週で1位を記録し、この系統の最長記録を更新。ちなみに従来の記録もChris Brown(とDrake)による”No Guidance”(27週)でした。

 

 

5 BTSの「バトンタッチ」?

 

 BTSの日本語シングル、”Film Out”が81位でHot 100入り。日本市場向けの曲ではありますが、ファンの熱心さがセールスに現れ、Hot 100にも入ったということに。BTSによる日本語シングルのエントリーは今回が初です。ソングライトにはBTSのメンバーのほか、日本のバンドBack Numberのメンバーも参加しています。

 

 日本語のシングルはHot 100で珍しいです。これまで日本人によるHot 100エントリーは過去に何回かありましたが、英語詞の曲が多く、日本語詞がメインという曲はあまりありませんでした。今回の“Film Out”は坂本九の2つの曲に次いで、おそらく3曲目?の日本語シングルHot 100エントリーかと思います。

 

以下の2曲は日本語も英語もある曲です

2018年 Sofi Tukker feat. Nervo, The Knocks & 植野有砂 – Best Friend
2019年 宇多田ヒカル & Skrillex - Face My Fears

 

 “Best Friend”は、当の植野有砂は日本語で歌っているものの、その他のメンバーは英語です。

 “Face My Fears”は解釈が難しいです。iTunesのアルバムチャートで上位だった作品が、Hot 100に登場するという、不思議な経緯でのヒットだったので、日本語版も英語版も両方ヒットに寄与したとも考えられますが、英語版の効果が大きいと考えるのが自然な流れでしょうか。(ストリーミング等でも目立った数字が無く、入るならアルバムチャートと思っていたことも含め、かなり意外なHot 100入りだった記憶 )

 

 この”Film Out”が登場した週には同時に“Dynamite”がHot 100を後にしました。ピーク1位、滞在32週という成績。22週目には40位台に落ちて、その時点でラジオのポイントが大きく減少していたので、そろそろ外れるかな?と思っていたのですが、そこから粘って滞在を32まで伸ばしていました。

 Digital Songsで1位に返り咲くなど、DLが伸びたので、ファンたちが滞在期間を伸ばすためにセールスで支えたのではないか、と推測しています。(滞在の終盤は、おそらくDL以外のポイントは低めだった)iTunesどではさほど上位に入っていなかったので、他の媒体でセールスを伸ばしたのだと考えられます。

 そのような形でHot 100に粘りの残留を果たしてきましたが、4/10付のチャートで、Digital Songs最長1位(18週)、またK-Pop史上最長のHot 100滞在(”Gangnam Style”を上回る)と複数の記録を達成し、次の週にチャートを後にしました。この週ちょうど“Film Out”がリリースされていたので、まさにバトンタッチといった感覚でしょうか。

 

 

6 その他の短評

 

Maroon 5 & Megan Thee Stallion – Beautiful Mistakes

 登場してからどんどん順位を伸ばしていく、というメジャーなリリースにしては珍しいチャートアクションを見せる1曲。メジャーなリリースの場合、初週にまず大きく注目されるので、高い順位に登場 → 一旦順位を落とす → そこから伸るか反るか という過程で順位が動いていくことが多いですが、この曲は初週の注目度が鈍かったです。初週の順位が悪い場合、短命で終わってしまうケースが多いのですが、この曲はその方向に行かず、順調にヒット。ラジオだけでなくストリーミングの数字も改善傾向に。

 この曲はポップ&アダルトポップ系でのオンエアがメインで、Megan Thee Stallionの元のファン層とはあまり被っていません。

 

・Megan Thee Stallion – Body

 ピークがクリスマスと被った関係でトップ10入りを逃した1曲。リリース直後にTikTokで人気を得て、ストリーミングが急上昇。そのタイミングで、仮にクリスマス曲抜きならばトップ10、という順位まで到達。ただしクリスマスが終わる前にストリーミングが落ち始め、後にラジオでのサポートも得ましたが、タイミングがうまく噛み合わずにトップ10にはどの期間でも到達しませんでした。滞在の最後の方は下位で過ごし、20週の滞在でチャートを後に。

 

・Coi Leray & Pooh Shiesty – Big Purr

 2シングル連続でTikTok人気を得たCoi Leray。AppleYouTubeで人気を集めています。下位ながらも、Spotifyのランキングにも登場しています。(客演以外では初)

 

・Erica Banks – Buss It

 Nellyの“Hot In Herre”使いの、キャッチーな1曲。TikTokで人気を得てHot 100に登場したのち、Travis Scottリミックスをリリースして本格的な飛躍を狙いましたが、あまり注目されず。ラジオではそれなりに人気でしたが、ピーク49位、滞在13週の成績でHot 100から外れました。

 

・24kGoldn feat. iann dior – Mood

 合計で31週もトップ10に残るなど、特大ヒットとなっている”Mood”。その24kGoldnがデビュー作をリリースしましたが、アルバムチャートでは22位。この曲以外はHot 100に入らないなど、あまり存在感を発揮できませんでした。

 

DMX – Ruff Ryders’ Anthem

 訃報のあったラッパーの過去曲が注目を集め、3曲(16位、40位、46位)がHot 100入り。またベスト盤がアルバムチャート2位に浮上しています。彼の従来のキャリアハイは1998年に記録された17位だったため、このタイミングでそれを更新したということになります。

 

・Duncan Laurence – Arcade

 おそらくTikTokが起因で、2019年のシングルながらも、今年に入ってからストリーミングで注目を集めた曲。この「ストリーミングで再発掘」タイプのヒットにしては珍しく、時間差なくラジオでのオンエアも得ています。FLETCHERを迎えたバージョンもラジオではかかっているようです。

 この曲は2019年当初もSpotifyのToday’s Top Hits入りを果たしましたが、注目は長く続かなかったのでおよそ3週で外されていました。ただ今年の再注目を受けて、再びリストに復帰しています。

 彼はオランダ出身のシンガーで、2019年のユーロビジョンの優勝者。ユーロビジョンとは主にヨーロッパ圏を対象とする歌のコンテストです。このユーロビジョンの曲がHot 100入りを果たすのは珍しく、ChartData曰く1996年以来のことだそうです。(Gina Gの”Ooh Aah… Just a Little Bit”、ピーク12位)

 

・Kevin Gates – Big Gangsta

 少し前にTikTokで頭角を現し、以降ストリーミングを継続的に伸ばしてHot 100入り。AppleSpotifyYouTubeのいずれでも人気。元は2019年にリリースされた曲でした。

 

・CJ – Whoopty

 2月にトップ10に到達した曲でしたが、そこからストリーミングもラジオも急落下して、今月Hot 100から外れました。ピークは10位で滞在は22週。このような上昇してトップ10に到達するタイプの曲(リリース当初からトップ10ではない、ということ)がここまで一気に落ちるのは珍しい気がします。ラジオだけでなく、ストリーミングまでも一気に勢力を失うのが少し興味深いです。

 

・Doja Cat – Streets

 自身の新シングルの存在によって、こちらのラジオでのオンエアは終了してしまう見込み。リズミック系で31位に到達したのみと、ストリーミングに似合わないラジオ実績でした。ビデオも人気を得るなど、ストリーミングでは好成績だったので、ラジオがもう少し多ければトップ10にも届いたかもしれませんね

 

・Ritt Momney – Put Your Records On

 TikTokで発掘されてからのストリーミングでの人気、そこから少し遅れてのラジオ上昇と2段階でピークを迎えるタイプの曲。そのラジオの再生が落ちてきたため、Hot 100を後に。ピークは30位、滞在は25週という結果に。ピークが割れているため、ピーク順位の割に滞在が長めになっています。

 

・VEDO – You Got It

 ピーク75位、滞在15週で外れる。Erica Banksの”Buss It”と似たタイプのヒット。TikTokで人気を得てから、ラジオでもそれなりにオンエアを得たため、下位中心の滞在ながらもそれなりに長い滞在になりました。

 

 

今月のデータ

 

主に外れた曲

 

4/3

50 BRS Kash – Throat Baby (Go Baby)  (🗻24位 /⏰22週)🔃

96 Lil Durk & King Von – Still Trappin’  (🗻53位 /⏰12週)

97 Lil Durk feat. Lil Baby – Finesse Out The Gang Way (🗻39位 /⏰7週)

 

4/10

47 Luke Combs – Better Together (🗻15位 /⏰25週)🔃

49 Niko Moon – Good Time (🗻20位 /⏰25週)🔃

96 Morgan Wallen – Sand In My Boots (🗻32位 /⏰11週)

99 Future & Lil Uzi Vert – Drankin N Smokin (🗻31位 /⏰10週)

100 Darius Rucker – Beer And Sunshine (🗻42位 /⏰15週)

 

4/17

30 BTS - Dynamite (🗻1 /⏰32週)🔃

 

4/24

43 Ritt Momney – Put Your Records On (🗻30位 /⏰25週)🔃

48 CJ – Whoopty (🗻10位 /⏰22週) 🔃

70 Drake feat. Rick Ross – Lemon Pepper Freestyle (🗻3位 /⏰5週)

84 Megan Thee Stallion - Body (🗻12位 /⏰20週)🔃

87 VEDO – You Got It (🗻75位 /⏰15週)

94 Future & Lil Uzi Vert – Drankin N Smokin (🗻31位 /⏰11週)

98 Black Eyed Peas & Shakira – GIRL LIKE ME (🗻67位 /⏰13週)

99 Erica Banks – Buss It (🗻47位 /⏰13週)

 

 

・ アルバムチャート キリ番

 

4/3

200週目:Bon Jovi – Greatest Hits: The Ultimate Collection (153位)

250週目:Linkin Park – [Hybrid Theory] (164位)

600週目:MetallicaMetallica (101位)

 

4/10

1周年:Dua Lipa – Future Nostalgia (9位)

1周年:Rod Wave – Pray 4 Love (39位)

1周年:DaBaby – BLAME IT ON BABY (49位)

150週目:Juice WRLD – Goodbye & Good Riddance (32位)

200週目:Luke Combs – This One’s For You (34位)

350週目:Michael Jackson – The Essential Michael Jackson (93位)

 

4/17

200週目:SZA – Ctrl (54位)

 

4/24

1周年:DaBaby – BLAME IT ON BABY (52位)

100週目:Lewis Capaldi – Divinely Uninspired To A Hellish Extent (66位)

300週目:Zac Brown Band – Greatest Hits So Far... (122位)

 

 

・今月Hot 100デビューアーティスト

Justin Bieber feat. Dominic Fike – Die For You (🗻81位 /⏰1週)

Justin Bieber feat. BEAM – Love You Different (🗻84位 /⏰1週)

Justin Bieber feat. Burna Boy – Loved By You (🗻87位 /⏰1週)

Duncan Laurence – Arcade (🗻100位 /⏰1週)

 

 

・各指標1位

f:id:djk2:20210427055259j:plain

 

・Rolling Stone Chartsのトップ10

f:id:djk2:20210427055358j:plain

 個人的なポイントは、Olivia Rodrigoの"deja vu"が2週目もトップ10に残ったことですかね。

 

Spotifyチャート(US)のトップ10

f:id:djk2:20210427055523j:plain

 奮闘していた"telepatía"の勢いが止まってきています……

 

 

リンク / 参照

 

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

Spotify Charts:Spotify Charts

Apple Music Top 100 (US):Top 100: USA on Apple Music

YouTube楽曲ランキング(US):YouTube music charts

・Tokboard:Tokboard - Top TikTok Songs This Week (←今月更新が止まっている期間があった)

Spotify - Today's Top Hits:Today's Top Hits | Spotify Playlist

Apple Music - Today's Hits:Today’s Hits on Apple Music (※基本的にUSと日本で選曲は同じですが、リストが51曲以上になると、日本版では51番目以降の曲がカットされます。PCからリンクを踏むとUS版のページに飛ぶと思います)

 

 

(過去の月へのリンク)

 

3月号:Billboard(US) 動向 3月号 【月の後半に動いたHot 100上位】 - チャート・マニア・ラボ

1 後半に動いたHot 100上位 / 複数の首位候補
2 動かないアルバムチャート
3 グラミーはどうだった?
4 トップ10周り
5 Kali Uchis大躍進、今月のTikTok関係
6 Hot 100デビューを果たしたアーティスト
7 1年滞在の曲2つなど。今月のリカレントたち

 

2月号:Billboard(US) 動向 2月号 【シングル/アルバム1位が不動の月】 - チャート・マニア・ラボ

1 シングル/アルバム1位が不動
2 ハーフタイムショー
3 その他のトップ10
4 Hot 100に初登場 or 2~3曲目のアーティスト
5 正統派 Hip-Hop / R&B

 

1月号:Billboard 動向・1月号(2021) 【予想外の1位独走など】 - チャート・マニア・ラボ

1 予想を超える1位:"drivers license"
2 期待通りの1位:Morgan Wallen
3 期待ほどではない(?)1位
4 超圧倒的だったクリスマス曲、去る
5 クリスマス後の特別復活ルール
6 その他のトップ10 + 今後

 

 

*1:ビルボードは現在、公式のビデオのみをチャートに集計。しかしYouTubeチャートに表示される数字が額面通り集計されているわけではないようです。非ログインユーザーの再生数を抜かれていると考えられています。

*2:ビルボードのChart Historyにはこの曲が載っていませんが、リズミック系統で伸びを見せたのがDoja Cat参加のリミックスのリリース後なので、彼女もクレジットされるべきと判断しました