今月も先月に引き続き、動きが激しく賑やかな月だったのではないでしょうか!
- 1:首位推移
- 2:トップ10の曲
- 3:今月のアルバムチャート
- 4:各系統のラジオ首位を見る
- 5:年間チャートのトップ10予想
- 6:TikTok関連
- 7:外れた曲(とその魅力)
- その他:短評
- 今月のデータ
- ・リンク / 参照
1:首位推移
1週目:Polo G – RAPSTAR
4月ラストの週から継続での1位。それまでは目まぐるしく首位が入れ替わっており、同一曲が連続して1位をキープするのは3/6→3/13以来(”drivers license”)でした。
ストリーミングでは高い人気を誇りますが、ラジオの伸びがそれと比べると遅いです。
2週目 / 3週目:The Weeknd & Ariana Grande – Save Your Tears
2週目にAriana Grandeリミックス効果で首位獲得!両者ともに6曲目のHot 100首位。DLがその週1位、ストリーミングとラジオも同週2位とすべての指標で好成績。
この曲はラジオでヒットしており、Hot 100におけるポイントの「基盤」がしっかりしていたため、少しプラスがあれば首位を獲得できる状況でした。そこにリミックスが加わり首位獲得、という流れです。昨年からの鉄板の戦略。
セールスやリミックスでブーストをかけて首位を狙うタイミングは、初週かラジオが強くなった時が多いです。両方ともセールス以外のポイントがある程度「計算できる」というのが鍵です。
ちなみにラジオが集計に入らないRolling Stoneチャートでは首位を獲得していません(2位)
4週目:Bruno Mars & Anderson. Paak – Leave The Door Open
ラジオの強さもあり、Hot 100首位復帰。累計2週目の1位に。この週は“Levitating”に分があると考えられていましたが、不発でした。
(2位) Dua Lipa feat. DaBaby – Levitating
全指標で好調を維持していることもあり、1位獲得の可能性も噂されましたが2位。一応ピーク更新に成功しています。この週以降は強力なライバルが続々と登場するので、取るならこの週だったのかもしれません。
この週はHot 100の発表が遅れていました。その理由をビルボードは、「データの異常への対処」としています。1位と予想されていた“Levitating”が2位だったことと、もしかしたら関係しているかもしれません???
ちなみにDua Lipaは以下のようなツイートをしており、Dua Lipa陣営にも1位獲得が間近という自覚があったようですが、実現ならず。
I can't believe we're so close to #1 in the US with Levitating. Thank you all so much for your love & support. Keep listening and watching the video ❤️❤️❤️ https://t.co/1Sd7BwQSDw pic.twitter.com/yM62JErcnU
— DUA LIPA (@DUALIPA) 2021年5月13日
その1位獲得間近、という根拠が内部データに基づくものなのか、それともTalk of the Chartsなど一般のファンが行っている予想なのかは個人的に気になりますね。
仮に後者ならば、一般ファンによるチャート分析が公式にも影響を及ぼし、価値を認められているということになります。Stan以外のファンダムが、影響を持つという点で少し珍しい気もします
ちなみにこの曲は1回トップ10を後にし、ピークが終わったかと思われていましたが、グラミーの週でトップ10に復帰。これはグラミー限定の現象かと思いきや、その後も好調を維持。5月の1週目にはついに元のピークと同じ順位まで到達。
TikTokで「一人会話」を演出する曲として有効利用*1されたことなどもあり、ストリーミングが再上昇していました。
当初、ラジオは既に下降線だったのですが、このヒットを受けてラジオまでもが再浮上を果たしています。これは非常にレアな現象で、Mediabaseというラジオ系チャートでは、再浮上した曲は復帰できるという新ルールが作られました。そしてこの曲が同チャートに復帰しています。
ラジオが落ちたタイミングにTikTokでヒットし、そこからストリーミングで返り咲きというパターンは過去にEllie GouldingとJuice WRLDの“Hate Me”がありましたが、その時はラジオの返り咲きは見られませんでした。
その時はラジオが本格的に落ちた後のヒットでしたが、今回は「落ちかけ」くらいのタイミングでヒットしたことがラジオ再浮上の手助けになりましたかね。このケースのように、ストリーミングの動きに柔軟にラジオも対応できるようになると良いですね。
5週目:Olivia Rodrigo – good 4 u
“drivers license”のヒットが全く偶然ではないことを証明し続けるOlivia Rodrigo。リリース以降再生数がみるみる伸び、ストリーミングでJ. Coleに負けない数字を叩き出して2曲目のHot 100首位獲得に成功。来週のチャートではデビュー作の動向が反映されます
この曲はポップパンク系の作風で、特に似ているとされているParamoreの“Misery Business”は、この曲の効果なのかUSのSpotifyランキング下位に登場しています。(初登場)
ちなみに今年にかけて過去曲の再生はSpotifyで盛んなようで、去年の同時期と今年の同時期の過去曲(5年以上前)のランキング入り数を比較すると、明確な違いがあります。さらには現代ポップアクトへの影響力も語られるParamore(およびHayley Williams)の曲なので、再注目を浴びやすい条件は揃っていたように思います。
・年初~20週目までの、USのSpotify週間チャートにおける5年以上前*2のランキング曲数(週平均)
2021:26.45曲
2020:2.05曲
2:トップ10の曲
・The Kid LAROI & Miley Cyrus – WITHOUT YOU
Miley Cyrusリミックス効果でトップ10入り。LAROIは2曲目のトップ10(1曲目は客演で参加したJuice WRLDのアルバム曲)、Mileyは10曲目のトップ10
The Kid LAROIは「ラッパー」と分類されることの多いアーティストですが、ポップやアダルトポップ系、そしてオルタナティブ系ラジオでの順位が高めです。(リズミック系でもオンエアはされているが順位が高くない)
昨年の”Mood”と並び、オルタナティブ系でのオンエアが意外に感じる曲の一つです。
・Billie Eilish – Your Power
Billie Eilish新曲がトップ10スタート。特にYouTubeやSpotifyで人気。5曲目のトップ10を記録しています。そこまでキャッチーではない曲調、そしてラジオのサポートもゆるやかなことから、あまりヒットには期待していないシングルという可能性もあります。
・Doja Cat feat. SZA – Kiss Me More
7位で登場以降、トップ10に残り続ける安定性の高さ。ラジオ、ストリーミングともに優秀で今後も期待ができそうです。5位まで到達し、SZAはKendrick Lamarとの“All the Stars”で記録したキャリアハイを更新しています。
3:今月のアルバムチャート
1週目:Young Stoner Life - Slime Language 2
Young Thug率いるYoung Stoner Lifeのコンピレーションがアルバム1位を獲得。11.3万の売上のほとんどがストリーミングから。7曲がHot 100入り。最高位はDrakeを迎えた“Solid”(12位)。次点はTikTokで人気の”Ski”で18位
媒体によってはYoung Thug & Gunna両者のアルバムと表記されていることもありますが、ビルボードのクレジットはYoung Thugだけで、Gunnaのチャートヒストリーにはこの作品は載っていません。
このアルバムの客演のうち、Yung Kayo、YTB Trench、Yak Gottiが初のHot 100入りだと思われます。ビルボード公式が運営するTwitter、Billboard Chartsでは普段初のHot 100エントリーを果たしたアーティストには、その旨がツイートされるのですが、この作品に関しては、アルバムからのHot 100は以下の通りです、という記述のみで誰が初のHot 100入りかは明言されていません。(ですが過去のリリースのデータ等を参照するに、初のHot 100だと思われます)
2週目 / 4週目:Moneybagg Yo - A Gangsta’s Pain
11.0万の売上で初のアルバム1位を獲得のMoneybagg Yo。9曲がHot 100入り。うち2曲がトップ40圏内。人気はかなりApple Musicに偏っています
目立ったリリースが無かった今月4週目にもアルバム1位の座を獲得。リリース以降、TikTokで“Wockesha”が人気を得て、ストリーミングでも浮上しています。
3週目:DJ Khaled - Khaled Khaled
9.4万の売上でアルバム1位獲得(3枚目の1位) 7曲がHot 100入り。客演が豪華で、シングル候補っぽい曲は多いですが、Lil BabyとLil Durk(とTay Keith)が参加の“EVERY CHANCE I GET”がシングルに決まっています。
5週目:J. Cole – The-Off Season
6枚目のアルバム1位を獲得。28.2万の売上はTaylor Swift(29.1万)に次ぐ今年2番目の数字。ストリーミング人気がずば抜けて高く、収録曲がすべてトップ40入り。うち4曲はトップ10圏内。この週に2位だった、21 SavageとMorrayを迎えた”m y . l i f e”がシングルとして運用される模様。
J. Coleは2016年の”4 Your Eyez Only”に次ぐ、全曲トップ40達成。2018年の前作もトップ40に入らなかったのはInterludeやIntro等が中心(14曲中10曲がトップ40に)で、アルバムのパワーが毎回凄まじいのが分かります。
2016年当初、彼はトップ10曲が無かったにも関わらず、アルバム曲で全曲トップ40入りと初のトップ10を記録。その時の衝撃は大きく、「アルバムによるHot 100支配」の幕開けを予想させる出来事でした。それ以前にもDrake等がアルバム曲を多くHot 100入りさせたことがありましたが、彼らは大規模なシングルヒットが多かったため、その延長線上のような感覚がありました。しかし一方でJ. Coleは、それまでトップ10ヒットが無かったという点がポイントです。
その他:Nicki Minaj – Beam Up Scotty
2009年のミックステープが再リリースされ、ストリーミングのプラットフォームに登場。8.0万の売上で、アルバムチャートでは2位。Hot 100には4曲が登場。“Seeing Green”はこの週DL1位で、Hot 100で12位と好成績。
4:各系統のラジオ首位を見る
・Justin Bieber feat. Daniel Caesar & Giveon – Peaches
“Leave the Door Open”並に広い系統でオンエアされる曲。今月リズミック系とポップ系で1位獲得。ラジオ、Hot 100の両方でそのSilk Sonicを追いかけます。
・Lil Tjay & 6LACK – Calling My Phone
ストリーミングでロケットスタートを切った後は、11位~20位帯に位置してきた曲。今月リズミック系で1位を獲得するなど、ラジオでピークを迎えつつあり、逆に考えるとこれが終わるとHot 100での順位も落ちていきそうです。
・Yung Bleu feat. Drake – You’re Mines Still
RMSでは今月初頭まで1位を獲得していましたが、今月の5週目にHot 100から姿を消してしまいました。ラジオヒットになったのは、客演のDrakeの効果が大きいでしょうが、今後Yung Bleuは単独でどこまで活躍できるでしょうか。彼は最近、後述の“Track Star”のリミックスに参加したようです。
・Mooski – Track Star
ストリーミングでド派手にヒットしているわけではないですが、ラジオで地味に勢力を拡大している曲。今後はポップ系でもオンエアされるようで、さらなるラジオヒットを目指します。
5:年間チャートのトップ10予想
ここ数年、5月頃に年間チャート半年前予想を行ってきた私ですが、今年は単独記事でではなく、ここでひっそりと予想します。Talk of the Chartsがまとめた、これまでの推定ポイントの集計表を参照すると分かりやすいと思います:https://www.talkofthecharts.org/hot-100/year-end
2020年以降、YouTubeのポイントの順次カットなどもあり、ストリーミングによる独走/短期間での逆転が難しくなりました。そのことから、ラジオの力を借りつつ、長い期間で満遍なくポイントを集めることが年間チャートで上位入りするうえで重要になります。
予想:
1 Levitating
2 Mood
3 Blinding Lights
4 drivers license
5 Peaches
6 Save Your Tears
7 Leave the Door Open
8 Butter
9 Forever After All
10 good 4 u
1:Dua Lipa feat. DaBaby – Levitating
上記項目で書いた通り、今月週間の1位を取り逃した“Levitating”ですが、「年間」の1位獲得レースでは最有力候補かと考えています。集計の初期からしっかりとポイントを稼いでいる上に、現在も異例のラジオ再浮上によってまだ伸びる余地があることから、集計期間の終盤までしっかりとポイントを稼ぎ続けそうと予想。年間1位予想としました。
ちなみに週間の1位にならずも、年間1位を獲得したケースは過去にも3回あります。(1965年、2000年、2001年)
2 24kGoldn feat. iann dior – Mood
集計序盤から上位を走り、最も安定してポイントを稼いできた曲。現在滞在は41週目で、順位ももうあまり高くないため、52週のタイミングでチャートを後にするでしょう。そうなると終盤の数週はポイントがゼロになってしまいますが、前半の貯金が大きく年間2位と考えました。(※チャート圏外の期間は年間チャートにおける集計ポイントがゼロになる)
3 The Weeknd – Blinding Lights
26位以下ならば外れる、という高いハードルを乗り越え、チャートに残留し続ける“Blinding Lights”(クリスマス期を除く)。J. Coleのアルバム曲大量登場、という厳しい状況をも乗り越え、粘っています。次の週のOlivia Rodrigoのアルバム週も乗り切れば、また安全圏に戻るでしょうか。(仮にこの週で外れると、一気に予想順位が落ちる)
比較的ポイントは安定しているため、一気にポイントが落ちることは考えづらいですが、次に何かしらのアルバム曲大量登場が来たら、危ないかもしれません。
集計の終盤には、さすがに外れてしまいそう。その期間の分はマイナスになりますが、それまでの蓄積が大きく、かなり上位だと考え3位。
4 Olivia Rodrigo – drivers license
年の序盤に登場+大ヒットで、一見すると年間1位の最有力候補にも思えますが、既にトップ10から外れ下降線に入っているため、このくらいと予想。アルバムの週で一旦持ち直すとは思いますが、集計の最後までは残留しないような気がします。
年の序盤にはリリースされましたが、年間チャートの集計が11月半ばに始まる都合上、最初の数週でポイントが無い点も少し痛いです。
5 Justin Bieber feat. Daniel Caesar & Giveon – Peaches
かかっているラジオの系統が広い上、ロングヒット向きの落ち着いた曲調を持っている点から、終盤までポイントが安定しそうと読んで5位に。リリース時期が少し遅いため、終盤までポイントを稼ぎ続けないと上位入りは厳しいですが、それを成し遂げそうな気はします。
6 The Weeknd (&Ariana Grande) – Save Your Tears
序盤から地道にポイントを稼ぎ、Ariana Grandeリミックスで週間の1位を獲得。そこまで大規模なヒットにはならない気がしますが、長い期間ポイントを安定して稼いでおり、上位の有力候補でしょう。
7 Bruno Mars & Anderson. Paak (Silk Sonic) – Leave the Door Open
リリース時期もヒットの仕方も“Peaches”と近いです。しかし、Bruno Marsの楽曲は一定の時期からラジオがガクッと急落することもあり、今後その現象が発生するとなると、年間トップ10入りが厳しくなる可能性も考えられます。それが無ければ、安定したラジオで年間上位は確実
8 BTS – Butter
ストリーミングが制限され、週間チャートで他の曲に大差をつけて後半に大逆転、というシナリオが難しいという説明を上に記しましたが、その唯一の例外となりうるのはBTSです。セールスは現状、制限がかかっていないため、これを活用すれば天井知らずの成績を記録することが可能です。
一般的なアーティストの場合、セールスにブーストがかかるのは、特定の週で1位を狙いに行く場合です。短い期間でしか数字が増えないため、年間のスケールで見るとセールスの影響力は限定的なのですが、BTSは長くに渡り「買い支える」ことが可能なファンダムが存在しているため、年間チャートのスケールで見ても、高い効果を発揮するポテンシャルがあるのです。(“Dynamite”はDLチャートで最長1位滞在の記録を持っている)
この“Butter”はラジオやストリーミングでも好調なスタートを切っており、そこに他を圧倒するセールスが加われば、年間で見ても上位の成績を記録するかもしれません。現在のセールスの「比重の重さ」を考えると、年間1位も決して不可能ではありません。
ただし、ビルボードは以前セールスに関するルールを仄めかしたことがあり、これが適用されてしまうと、セールスが生命線の一気に窮地に陥ります。
これらを踏まえると、年間1位の可能性も、年間100位圏外の可能性もある先が読めない1曲です。どこまで気合を入れて「売るか」、またルールがどうなるかに左右されます。現状はルールが変更されていない以上、そのままだと仮置し、トップ10圏内予想に。
ちなみに“Dynamite”は9月に初めてHot 100入りし、年間38位でした。この”Butter”がチャートに登場するのは6月です。
9 Luke Combs – Forever After All
少し挑戦的な予想。リリース後、しばらくラジオでカットされていませんでしたが、ストリーミング(パンドラ等)で奮闘し、下位ながらもHot 100に残り地道にポイントを稼いでいました。そして最近ようやくシングルカットされ、ラジオを得て順位を上げてきた、という流れです。
このままカントリー系ラジオの再生が減れば、すぐにHot 100から外れてしまいますが、この曲はポップ系ラジオへのクロスオーバーが期待できると思います。この曲はAriana Grandeの”positions”と同じ週のリリースながらも、同等の初週の成績を記録するという経歴の持ち主で、そのポテンシャルを考えるとポップ系ラジオでもヒットする素質は十分だと思います。
仮にポップ系のクロスオーバーを成功させれば、現在の20位前後の順位を保ったまま、集計の終盤まで進むと思うので、その成績ならば年間トップ10入りも可能です。初週2位だったこと以外は、“The Bones”に近いチャートアクションです。(実現すれば)
10 Olivia Rodrigo – good 4 u
“drivers license”をも上回る勢いでストリーミングを稼いでいる、今年後半の主役候補。勢いがどこまで続くかは分かりませんが、ストリーミングの現在の強さを見る限り、リリース時期の遅さを覆し、ギリギリで年間トップ10に届くと考えました。
(その他の候補)
? Doja Cat feat. SZA – Kiss Me More
リリース以降の安定感が高い曲。ストリーミングもラジオも優秀なため、このペースを持続できればトップ10に手が届くか?
ただDoja Catは昨年、“Say So”がかなりの規模のヒットに見えて、トップ10を逃してしまった経歴があります。この時は持続性に課題があったので、今回もそれが続くと厳しいかも。ラジオがどこで落ち始めるかが注目ポイントか。
? Lil Nas X – MONTERO
既に順位を落としているため、厳しいか?と思いきや、予想外にラジオを伸ばし始めたため、素質はあるかも。ただ、リリース時期が遅めであることを考えると基本的には厳しそう。
? The Kid LAROI (& Miley Cyrus) – WITHOUT YOU
序盤から安定してポイントを稼いでいるため、もしかしたら枠ですが、既にラジオがマイナスに転じそうなので、さすがに厳しいか。オルタナティブ系でオンエアされるなど、ラジオの幅広さは魅力ですが。
6:TikTok関連
・Bella Poarch – Build A Bitch
個人的には一大イベントだった、この曲のHot 100エントリー。有名TikTokerによるシングルで、他の同業者Dixie D’AmelioやAddison Raeが出来なかったHot 100入りを達成しました。この曲は本格的にヒット街道に乗っており、以降も安定してHot 100に残りそうです。
TikTokerたちは昨年前半頃から知名度を獲得しているように感じたので、TikTokerによるシングルが今月Hot 100に初登場!というのは、個人的には意外と遅かったような気もします。
この曲のヒットの要因は、とにかく耳に残りやすい点だと思います。私も少ない聴取回数でこの曲のメロディーが頭に流れ始めました。この点が他の同業者の曲よりも優れているように思いました。
この曲のソングライトにはSub Urbanやsalem ileseなどが参加しています。前者は”Cradels”が、後者は”mad at disney”がTikTok内で流行したことがあります。
ちなみに外部からソングライターを招くのは他の有名TikTokerの曲も同じで、Addison Raeの“Obsessed”には著名なBenny Blancoが参加しています。またDixie D’Amelioの”FUCKBOY”にも、Hot 100でトップ10の経歴があるOlivia O’Brienが参加しています。(gnashとの”i hate u, i love u”)
(その他のTikTok関連曲)
・Cico P – Tampa
Hot 100の下位に登場。TikTok発ラップ、最新版です。
・Tion Wayne & Russ Millions feat.(7人のラッパー)- Body
UKのラップながらも、Hot 100入りに接近中。昨年同様にTikTokでヒットし、Hot 100入りした“Don’t Rush”とは違い、ストリーミング主体のヒット。珍しいUKラッパーのHot 100入りが期待されましたが、ピークがJ. Cole / Olivia Rodrigoのアルバム曲大量登場週とかぶり、結局Hot 100に入らないかも?
・Starboi3 feat. Doja Cat – Dick
Hot 100に接近中。TikTokヒットの多いDoja Catの最新ヒット。ストリーミングで一定のヒットになっていますが、プレイリストやラジオでのサポートはまだありません。やはり、「直球すぎる」曲名はプロモーションの足かせとなってしまうのでしょうか?
7:外れた曲(とその魅力)
個人的な話をすると、Hot 100から外れるところが一番チャートで興味のある所かもしれません。古い曲が去り、新陳代謝が徐々に進んでいく点が、チャートのダイナミズムや循環、息吹を感じ、惹かれるんですよね。
まあ、個人的な「フェチ」は置いといても、曲が最終的にどういう成績を残したのか?は重要な項目なので、曲が外れた瞬間を丁寧に観察することは大切だと考えています。(あまり触れられませんが)今月外れた曲のうち、一部を解説します。
(5/8に外れた曲)
× Chris Stapleton – Starting Over
ストリーミングのピークは1月、ラジオは4月とピークが分かれていたため、滞在が34週まで伸びました。成績:(🗻25位 /⏰34週)
・Megan Thee Stallion feat. DaBaby – Cry Baby
🗻28位、⏰20週で外れる。前シングルの“Body”と同様、TikTok起因でストリーミングの注目 → ラジオでも人気に、で一定の成績を残す流れ。両方とも20週で終わっているので、後半は少し失速しています。ただ、この短い滞在は、ラジオがストリーミングの動きに付いていっているということでもあります。
・All Time Low feat. Demi Lovato & blackbear – Monsters
オルタナティブ系ラジオで大ヒットを遂げ、ポップ系にも進出。予想外の12年ぶりHot 100入りを成し遂げたAll Time Low。最終的に (🗻55位 /⏰17週)という成績でチャートを後に。
客演のblackbearは今年Machine Gun Kellyとの“my ex’s best friend”でもオルタナティブ系1位を獲得しています。
ただしこの曲は、別の点でも予想外でした。この“Monsters”はラジオで大ヒットの一方で、SpotifyやAppleで奮わず。代わりにこれらの媒体で人気だったのは、TikTokで注目された2008年の”Dear, Maria Count Me In”でした。ヒットの経路が複雑化した今っぽい現象で見ていて面白かったです。
(5/15に外れた曲)
× Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby – For The Night
🗻6位、⏰43週の成績で外れる。リリース直後の7月、そしてラジオが伸びてきた11月と、2回にわたりピークが来ていました。その結果、43週ととても長い滞在を達成。
× Taylor Swift – willow
🗻1位、⏰20週で外れる。”cardigan”とは違い、滞在が20週まで届きました
× H.E.R. – Damage
🗻44位、⏰20週で外れる。中下位ながらも20週まで滞在、というのはラジオが安定しているH.E.R.にありがちなチャートアクションです。
× Justin Bieber - Anyone
🗻6位、⏰17週。トップ10でスタートするも、滞在20週未満で外れる
Ava Max – My Head & My Heart
シングルカット直後からラジオでオンエアされ、期待されていた曲ですが、過去2シングルのようなヒットにはならず。成績: (🗻45位 /⏰12週)
(5/22)
× Chris Brown & Young Thug – Go Crazy
52週の滞在の末、大往生を遂げる。複数系統のラジオで人気を得て、そのピーク時期が分散したことによりロングヒットとなりました。Chris Brownが参加したR&B系の曲がラジオでロングヒットというのは2019年の“No Guidance”と共通しており、新たなヒットのパターン誕生でしょうか
(5/29に外れた曲)
この週はJ. Coleアルバム曲大量登場の効果もあり、10もの曲がリカレントによってチャートを後にしました。
アルバム曲が大量登場するようになってからでは、2018の2/10(Migosアルバム効果)、7/14(Drakeアルバム効果)での8曲が最多だったようです。上位に多くの曲が一気に登場するのが、ストリーミング時代固有の現象ということを踏まえると、正式には確認できませんがリカレントで外れる曲が最も多かった週かもしれません。
× Billie Eilish – Therefore I Am
(🗻2位 /⏰27週)と、「可もなく不可もなし」な成績でチャートを後に。実質リリース週に2位だった以外は、トップ10圏外でした。ただラジオでも人気を得て、滞在はそれなりに長くなりました。
× Bad Bunny & Jhay Cortez – DÁKITI
🗻5位、⏰28週の成績で外れる。スペイン語ヴァースのみで構成された曲ですが、リズミック系3位など、ラジオでも奮闘していた点が印象的。
かつてDrakeと組んだ“MÍA”(🗻5位、⏰27週)でも似たような成績を記録したBad Bunnyですが、当時はDrakeの効果でヒットしていた印象がありました。しかし現在は、彼が牽引する側に周り、英語圏リスナーもある程度巻き込みつつヒットを生み出すことに成功しています。
× Tate McRae – you broke me first
🗻17位、⏰38週の成績で外れる。トップ10には届きませんでしたが、滞在はかなり長かったです。ストリーミング→ラジオとじわじわ移行してのヒットに。
現在Regard、Troye Sivanと組んだ”You”が新たにポップ系ラジオ等でオンエアされています。
× Ariana Grande - positions
通常の週ならばまだ外れなさそうな、先週37位の”positions”と同36位の”34+35”が外れてしまったAriana Grandeは少し運が悪かったですね。
ちなみに”34+35”は、外れる一つ前の週にDoja CatとMegan Thee Stallionのクレジットが復活しました。リミックスの方が過半数を占めたと判断されたのでしょうか。
× SZA – Good Days
ストリーミングで先行し、後からラジオでオンエアされるも、ピーク時の期待ほどはヒットせず……といった曲。ストリーミングでは最高2位でしたが、ラジオでは50位圏内に入っていません。
ちなみに最終週は54位だったので、この曲に関しては大量登場とは関係の無いリカレントになります。成績:(🗻9位 /⏰20週)
その他:短評
・Dua Lipa – We’re Good (今月1週目にトップ40入り)
“Levitating”と並行して運用されているシングルが、ラジオを伸ばし、滞在10週目でトップ40に到達。
・Glass Animals – Heat Waves (1週目にトップ40入り)
14週目でトップ40入り。ラジオのほか、Spotifyでも上位
・Ariana Grande – pov (1週目にチャート再登場)
シングルカットにより、ラジオで浮上しHot 100に再登場。アルバムのリリース直後とは違い、現在ストリーミングでは現在ほとんど圏外です。
一見正解そうに見えて不正解なシングルカットかもしれません。ストリーミングではすでに一通りシングルとしての役目を果たしているので、今頃シングルカットです!と言われても、今更!?となって注目されづらいかもしれません。
“Watermelon Sugar”は似たような運用方でヒットしましたが、それは当時リリースが少なかったことも関係しているのかもしれません。
・Gera MX & Christian Nodal – Botella Tras Botella (2週目に60位)
メキシコ出身のラッパーとシンガーのタッグ。ともに初のHot 100。とくにYouTubeで上位
ビルボードが運営するTwitter、Billboard Chartsではこの曲がregional Mexicanというジャンルで初のHot 100入りとしています。簡単に訳すと「メキシコ式カントリー」となると思います
・Trippie Redd & Playboi Carti – Miss the Rage (今月4週目に11位)
J. Cole新曲と並んでストリーミングで注目を集めた1曲。Trippie Reddにとってはキャリアハイの順位
両者ともTikTokでの人気があるアーティストで、この曲もイントロがTikTokで注目されたことがヒットの要因の一つとされています。
Trippie Reddはアルバムをリリースすれば、1位候補になる人気アーティストですが、意外とシングルヒットは少なく、自身の曲で滞在が最も長いのは“Dark Night Dummo”と”Death”の7週です。客演だとXXXTENTACIONの”Fuck Love”で21週まで到達したことがあります。
・Coldplay – Higher Power (4週目に53位)
Coldplay新曲。前アルバムの先行曲ではHot 100入りを逃しましたが、今回の曲ではそれを達成
・Don Toliver – What You Need (4週目に82位)
・Internet Money, Don Toliver & Lil Uzi Vert feat. Gunna – His & Hers (5週目に63位)
昨年躍進したDon Toliverが2つの曲をリリース。後者は昨年のヒット“Lemonade”からNAVを抜いてLil Uzi Vertを加えた布陣
・Migos – Straightenin (5週目に38位)
昨年のシングルではトップ40入り出来なかったMigosがそのリベンジを達成。昨年はそのように苦戦続きだったため、少し意外なチャートアクションでした。ただ、今後この調子が続くかは不明。
・Drake – What’s Next (5週目に62位)
早々と“Wants And Needs”にシングルをバトンタッチしたこともあり、こちらの”What’s Next”は急落中。11週目で62位と、滞在が20週まで行くか怪しいです。
今月のデータ
主な外れた曲
5/1
16 DMX – Ruff Ryders’ Anthem (🗻16位 /⏰5週)
40 DMX – Party Up (Up In Here) (🗻27位 /⏰22週)
46 DMX – X Gon’ Give It To Ya (🗻46位 /⏰17週)
52 Taylor Swift – Love Story (Taylor’s Version) (🗻11位 /⏰2週)
100 Lil Baby feat. EST Gee – Real As It Gets (🗻34位 /⏰6週)
5/8
45 Chris Stapleton – Starting Over (🗻25位 /⏰34週) 🔃
55 Megan Thee Stallion feat. DaBaby – Cry Baby (🗻28位 /⏰20週) 🔃
85 Dustin Lynch – Mommas’s House (🗻59位 /⏰15週)
90 Taylor Swift – Mr. Perfectly Fine (Taylor’s Version) (From The Vault) (🗻30位 /⏰3週)
95 VEDO – You Got It (🗻75位 /⏰16週)
98 All Time Low feat. Demi Lovato & blackbear - Monsters (🗻55位 /⏰17週)
5/15
45 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby – For The Night (🗻6位 /⏰43週)🔃
61 Taylor Swift - willow (🗻1位 /⏰20週)🔃
62 H.E.R. - Damage (🗻44位 /⏰20週)🔃
87 Justin Bieber - Anyone (🗻6位 /⏰17週)
88 Ava Max – My Head & My Heart (🗻45位 /⏰12週)
92 DaBaby - Masterpiece (🗻55位 /⏰14週)
93 Florida Georgia Line – Long Live (🗻45位 /⏰17週)
98 Morgan Wallen – Wasted On You (🗻9位 /⏰16週)
5/22
28 Chris Brown & Young Thug – Go Crazy (🗻3位 /⏰52週)🔃
30 DJ Khaled feat. Nas, JAY-Z & James Fauntleroy (⏰1週)
78 Tenille Arts – Somebody Like That (🗻50位 /⏰16週)
5/29
36 Ariana Grande feat. Doja Cat & Megan Thee Stallion – 34+35 (🗻2位 /⏰28週)🔃
37 Ariana Grande - positions (🗻1位 /⏰29週)🔃
39 Tate McRae – you broke me first (🗻17位 /⏰38週)🔃
43 Bad Bunny & Jhay Cortez - DÁKITI (🗻5位 /⏰28週)🔃
44 Yung Bleu feat. Drake – You’re Mines Still (🗻18位 /⏰23週)🔃
45 Billie Eilish – Therefore I Am (🗻2位 /⏰27週)🔃
46 Thomas Rhett – What’s Your Country Song (🗻29位 /⏰21週)🔃
54 SZA – Good Days (🗻9位 /⏰20週)🔃
62 Parmalee & Blanco Brown – Just The Way (🗻31位 /⏰20週)🔃
77 Luke Bryan – Down To One (🗻36位 /⏰20週)🔃
97 Rod Wave feat. Polo G - Richer (🗻22位 /⏰7週)
アルバムチャートのキリ番
5/1
1周年:Whitney Houston – I Will Always Love You: The Best Of Whitney Houston (184位)
200週目:Imagine Dragons – Evolve (141位)
200週目:Blake Shelton – Reloaded: 20 #1 Hits (185位)
300週目:twenty one pilots – Blurryface (143位)
5/8
1周年:Sam Hunt – SOUTHSIDE (99位)
1周年:Drake – Dark Lane Demo Tapes (120位)
250週目:The Beach Boys – Sounds Of Summer: The Very Best Of The Beach Boys (144位)
5/15
1周年:Lil Durk – Just Cause Y’all Wanted 2 (92位)
5/22
1周年:Polo G – The GOAT (22位)
1周年:Future – High Off Life (122位)
100週目:Polo G – Die A Legend (102位)
150週目:Drake – Scorpion (43位)
5/29
1周年:Gunna – WUNNA (115位)
Hot 100 デビュー
Young Thug feat. Lil Uzi Vert & Yung Kayo – Proud Of You (🗻59位、⏰1週)
Young Thug & Gunna feat. Lil Baby & YTB Trench – Paid The Fine (🗻77位、⏰1週)
Young Thug & Gunna feat. Yak Gotti & Lil Duke – Slatty (🗻99位、⏰1週)
Ryan Hurd & Maren Morris – Chasing After You (🗻87位、⏰4週、継続中)
Gera Mx & Christian Nodal – Botella Tras Botella (🗻60位、⏰3週)
Cico P – Tampa (🗻91位、⏰2週)
Bella Poarch – Build a Bitch (🗻58位、⏰1週、継続中)
Lainey Wilson – Things A Man Oughta Know (🗻94位、⏰1週、継続中)
・各指標1位
・Rolling Stone Chartsのトップ10
(最終週での、圧巻のJ. Coleの強さ)
・Spotifyチャート(US)のトップ10
※Rolling Stone Charts、Spotifyチャートの日付はHot 100準拠
・リンク / 参照
・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard
・Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard
・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard
・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/
・Spotify Charts:Spotify Charts
・Apple Music Top 100 (US):Top 100: USA on Apple Music
・YouTube楽曲ランキング(US):YouTube music charts
・Tokboard:Tokboard - Top TikTok Songs This Week (←今月更新が止まっている期間があった)
・Spotify - Today's Top Hits:Today's Top Hits | Spotify Playlist
・Apple Music - Today's Hits:Today’s Hits on Apple Music
・Genius(曲の情報等):Genius | Song Lyrics & Knowledge
(過去の月へのリンク)
4月号:Billboard(US) 動向 4月号 【週替りの1位:Justin Bieber→Lil Nas X→Silk Sonic→Polo G】 - チャート・マニア・ラボ
1 毎週交代!シングル首位
2 トップ10
3 新作が増加、アルバムチャート
4 ラジオ動向
5 BTSの「バトンタッチ」?
3月号:Billboard(US) 動向 3月号 【月の後半に動いたHot 100上位】 - チャート・マニア・ラボ
1 後半に動いたHot 100上位 / 複数の首位候補
2 動かないアルバムチャート
3 グラミーはどうだった?
4 トップ10周り
5 Kali Uchis大躍進、今月のTikTok 関係
6 Hot 100デビューを果たしたアーティスト
7 1年滞在の曲2つなど。今月のリカレントたち
2月号:Billboard(US) 動向 2月号 【シングル/アルバム1位が不動の月】 - チャート・マニア・ラボ
1 シングル/アルバム1位が不動
2 ハーフタイムショー
3 その他のトップ10
4 Hot 100に初登場 or 2~3曲目のアーティスト
5 正統派 Hip-Hop / R&B 曲
1月号:Billboard 動向・1月号(2021) 【予想外の1位独走など】 - チャート・マニア・ラボ
1 予想を超える1位:"drivers license"
2 期待通りの1位:Morgan Wallen
3 期待ほどではない(?)1位
4 超圧倒的だったクリスマス曲、去る
5 クリスマス後の特別復活ルール
6 その他のトップ10 + 今後