今月もチャートは活発でした。Hot 100では“Butter”が4週連続1位でしたが、2位の”good 4 u”もかなりの規模のヒットを遂げ、ハイレベルな首位争いを繰り広げました。アルバムチャートでは、全ての週で違う作品が首位に立ち、かつどれも売上が10万を超えました。
~目次~
- 1 Butterが4週連続1位
- 2 トップ10:3位堅持の”Levitating"、突き上げの"Kiss Me More"など
- 3 3週目まで全曲Hot 100入り Olivia Rodrigoのアルバム
- 4 アルバムチャート:10万超え続出
- 5 ラジオ:"Forever After All"に注目
- 6 外れた曲
- 7 ロックの波?
- その他:短評
- 主なデータ
- リンク/参照
1 Butterが4週連続1位
熱心なファンダムで知られるBTS。2018年に初めてアルバム1位を獲得すると、以降はその常連に。さらにシングルでも昨年に首位を獲得して以降、一気に1位の数が増えました。今回の”Butter”は、“Dynamite”、”Savage Love”、“Life Goes On”、に次ぐ4曲目の首位。アルバムだけではなく、シングルもリリースすれば即1位というのが鉄板になってきました。
彼らの躍進を支えるのはやはりセールス。今月は”good 4 u”というかなり強い競合がいましたが、この曲を出し抜けたのは桁違いのセールスが効いたと思います。この“Butter”はリリース以降、DLは24.3万→14.0万→13.9万→11.2万と推移。
今年はここまでDLが5万を超えた曲は無く、DL1位の中央値は2.3万ということを踏まえると、スケールの違いが分かると思います。
このようなセールスの異次元の高さがBTSのチャートアクションでの特徴ですが、この“Butter”はストリーミングとラジオの数字も決して悪くありません。特にラジオは、かなり快調なスタートを切っており、”Dynamite”よりも早いペースで数字を伸ばしています。
また、セールスの比率が低く、一部セールス(D2C)が含まれないRolling Stone Chartsでも2位(4週連続)には入っていることから、セールス「だけ」でヒットしている曲ではないということは伺えます。
現在のHot 100ルールではセールスが「重く」設定されており、ここを稼ぐとHot 100順位が一気に跳ね上がります。BTSはその恩恵を最も受けるアーティストの一つでしょう。
ただ昨年あたりからこれを活用し、1位をファンの力で「取りに行く」アクションが増えたため、ビルボードはこれへの制限を示唆しています。その記事がリリースされたのが昨年の10月だったため、なんとなく今年の始めからこのルールが適用されるのかと思っていましたが、まだ適用されていませんね。1位を取れるのであれば、取りに行かない理由は無いので、このようにブーストを狙いに行くのは当然でしょう。ただしこの曲のヒット中にルールの変更があれば、順位を大幅に落とす可能性があります。
2 トップ10:3位堅持の”Levitating"、突き上げの"Kiss Me More"など
トップ10を見ていきます。Olivia Rodrigoの曲は、次の章で触れます。
・Dua Lipa feat. DaBaby – Levitating
“Butter”と”good 4 u”のリリース前は1位獲得にも接近した1曲。今月は3位の座を確保し、この2曲以外では首位なのですが、いかんせんこの2曲の壁が高かったです。ライバルが落ちてくるまで、この調子を保てるでしょうか?下からも”Kiss Me More”が突き上げてきます。
・Doja Cat feat. SZA – Kiss Me More
勢力を着実に伸ばしている1曲。ここ最近ラジオが大きく伸びているうえ、さらにアルバムのリリースというブースト要因(反映されるのは7月2週目)もあるため、首位獲得の可能性も。
ラジオのピークとアルバムのリリースが重なる絶好の機会のため、何かしらの他戦略を仕込んでいる可能性も考えられます。
・Lil Nas X – MONTERO (Call Me By Your Name)
ラジオでの好調により、トップ10復帰。特にポップ系やリズミック系で人気。リリース直後はそれほどラジオのオンエアがありませんでしたが、少し遅れて再生が増加しました。
USだけでなく、UKやオーストラリアでも首位を獲得*1するなど、文句なしの世界的ヒットになっている曲で、それに見合うラジオを得た格好。
・Bad Bunny - Yonaguni
Bad Bunnyの新曲がトップ10スタート。キャリア4曲目のトップ10です。曲のほとんどはスペイン語で歌われていますが、終盤に少し日本語が登場します。ビデオでは、その箇所でアニメ調に切り替わります。また、曲名も日本の与那国島のことを指しているようです
日本語歌詞とはいえ、イントネーション等を工夫して巧みに元の曲調と合わせているため、ボーッと聞いていると意外と日本語であることに気づかないかもしれません(個人的な感想)
Bad Bunnyは日本関連のワードを歌詞に登場させることが多く、昨年Hot 100に登場した曲に限っても、3曲もそのような事例がありました。(関連:Hot 100に登場した日本関連の曲 2020 - チャート・マニア・ラボ)
Safaera:Honda
Pera Ya No:Pokémon
BOOKER T:Hadoken
この曲のヒット具合は彼の近年の活躍からして納得の成績なのですが、不思議だったのは前シングルの”100 Millones”です。Hot 100にも入らず、プレイリスト等での扱いも悪く、謎に「空気」でした。どういう扱いのシングルだったんですかね?
3 3週目まで全曲Hot 100入り Olivia Rodrigoのアルバム
デビュー作をリリースした、今年の顔Olivia Rodrigo。競合が強かったため、シングル/アルバムともに1位の期間は短いですが、そうでなければ両方で今月4タテを狙えそうなヒットを記録しています。
そのデビュー作は今年最大の29.5万の売上を記録。さらに非ラップアルバムとしては2回目の3億再生超えを達成しました。
Olivia Rodrigo – SOUR 3億73万再生(11曲)
Ariana Grande – thank u, next 3億707万再生(12曲)
(曲が1つ少なく、曲あたりの再生数ならばOliviaが上回ります。しかし2019年とは違い、2021はストリーミングにビデオも含まれるので、その点に留意する必要があります。)
さらに持続性について、このアルバムとの比較を行います
1週目 A:360,000 O:295,000
2週目 A:151,000 O:186,000
3週目 A:116,000 O:143,000
4週目 A:86,000 O:122,000
初週こそセールスの差*2で”thank u, next”の方が高い成績を記録していますが、2週目以降の持続性では”SOUR”に分があります。
Hot 100でもこの成績は現れており、3週目まで全収録曲がHot 100に残留しています。これは(おそらく)史上初のことです*3。”thank u, next”の場合は全曲が残ったのは2週目まででした。(Hot 100のルールは適宜微調整されているため、この場合も僅かですが条件が異なります)
(それぞれのHot 100残留数)
“SOUR”:11、11、11、10
“thank u, next”:12、12、8、4
(1週目、2週目、3、4の数)
元々はEPをリリースする計画があったようですが、「自身が何を出来るかを表明するには、フルの長さのアルバムしかない」として、"SOUR"リリースに至ったそうです。このチャートアクションはその判断が大正解だったことを表していますね!
一つのヒットに甘えることなく、熱があるうちに次の手を打ち続けた結果、わずか半年で大スターの地位を確立することに成功しました。
そんな成功を収めたアルバムなので、曲単体でも語りがいのあるものも多いです。いくつかの曲を取り上げます
()内は今月の順位推移(1、2、3、4週目の順位)
・good 4 u (2、2、2、2)
ポップパンク感じる作風が大きく受け、”drivers license”にも劣らない規模でヒットしている曲。アルバムリリースの週(今月1週目)には、USで6270万再生を記録。これは“drivers license”のリリース週に次ぐ、今年2番目の数字。
さらにUS外に目を移すと、Spotify Global(=サービス全体)では8413万の再生を記録し、週間再生数の記録を更新しています。ちなみにこの記録をこれまで持っていたのは”drivers license”(8076万再生)でした。
しかしセールスで異次元のポイントを稼ぐ“Butter”に届かず、2週目以降は2位になっています。(先月ラストの週=リリース1週目では1位でした)
ストリーミングの比率が高めなRolling Stone Chartsでは現在4週連続1位です。(逆にHot 100で首位だった先月最後の週は、J. Coleの”m y . l i f e”がRS首位でした)
・deja vu (3、8、9、10)
アルバムリリースの週にピークを更新。アルバムきっかけで勢いが増し、上位に定着しました。”good 4 u”と並行してラジオシングル運用されています。
・traitor (9、12、19、25)
次シングル候補とされる曲。アルバムの週は、先行の”drivers license”よりも高い順位に入っています。SpotifyのToday’s Top Hitsに入ったほか、ラジオでも少しずつオンエアを得ているようです。Spotify、Appleともに上記の2強に次ぐ順位を記録しています。
・drivers license (11、13、17、19)
すでにメインシングルの座は”good 4 u”や” deja vu”に譲ったため、ラジオは下り調子。アルバムから間もないため、現在は高めの順位を維持していますが、これからのロングヒットは望みづらいと考えています。
・favorite crime (18、16、26、43)
唯一2週目に順位を上げた曲。TikTokで一時期注目をされたため浮上しました。
・happier (15、20、28、40)
“favorite crime”の次にTikTokで注目された曲。4週目にはその”favorite”を上回りました。アルバムの流れで聞くと、シングル想定の曲な気がするのですが、どうでしょうか。
・brutal (12、19、35、52)
アルバムの1番に配置されたギターをかきならす曲。その作風が評価されたのか、オルタナティブ系ラジオでオンエアされています!
シングルによってラジオ系統を使い分ける手法は、Post MaloneやTaylor Swiftも過去にやっていました。
4 アルバムチャート:10万超え続出
全ての週で売上10万超えアルバムがあるのは去年の8月以来です。その時はマーチ+音源抱き合わせ戦略が有効で、その効果で10万に乗ったような週もありました。
(1週目)twenty one pilots – Scaled And Icy
2015年の“Blurryface”では1位、2018年の”Trench”では2位、今作では3位と推移。ただし売上は14.7万→17.5万→7.5万で、”Trench”の方が売上は良かったです。ただ“A Star Is Born”に敗れてアルバムチャートで2位でした。今作はそのリベンジが期待されましたが、3位。
(2週目)Taylor Swift - evermore
売上大幅増でアルバム1位に復帰。これでアルバム1位の通算週数が53まで伸び、単独3位に浮上しました。
132週 The Beatles
67週 Elvis Presley
53週 Taylor Swift
52週 Garth Brooks
総合売上20.2万のうち、19.2万はセールスから記録。効果として大きかったのはヴァイナルのリリースで、10.2万枚を売り上げました。これはNielsen以降(1991~)では最大のヴァイナルの売上です。これまで記録を持っていたのは2014年のJack Whiteです(4万枚)
その他、サイン入りを含むCDでは6.9万、割引が実施されたDLでは2.1万のセールスを記録しました。僅かですがカセットの販売も行っていたようです。
(3週目)Lil Baby & Lil Durk – The Voice of the Heroes
Lil BabyとLil Durkのコラボ作が15.0万の売上でアルバム1位獲得。前者は2枚目、後者は初の1位。Apple Musicを中心にストリーミング人気が高く、16曲がHot 100入り。うちTravis Scottを迎えた16位の“Hats Off”が最高順位です。
ともにクロスオーバーヒットはあまり無いラッパーですが、ラップリスナー間での人気は非常に高いです。Apple Musicのランキングを見ると2人の根強い人気を感じます。
(4週目)Polo G – Hall of Fame
初のアルバム1位を獲得。売上もファーストから3.8万(6位)、9.9万(2位)、そして今回の14.3万と伸び続けています。ちなみに、作を追うごとにゲストの数が増加しているという特徴が見られます。
13曲がHot 100入り。この週順位が最も高かったのは先行シングルの“RAPSTAR”。次いでThe Kid LAROIとLil Durkが参加した“No Return”(26位)
この収録曲の中で、面白かったのは”GANG GANG”。今月1週目に登場した時は、なぜかビルボードでは”you”という曲名表記でした。2週目からは直りましたが。
(4週目)Migos – Culture III
13.05万の売上でアルバム2位に入ったMigos。6曲がHot 100入り。Migosは“Culture”、”Culture II”と続いた連続アルバム1位が途切れました。競合が強いだけで、悪い成績ではないのですが、一時期ほどの勢いが無いのもまた事実でしょうか。
収録曲のうち、Drakeとの“Having Our Way”(15位)、先行曲の”Straigtenin“(23位)、”Avalanche”(27位)あたりが好調です。
このアルバムで気になったのは、13.”05”万という単位の区切り方。通常は1000単位で発表されているので、500という単位は登場しないはずです。今後はこの区切りになるのか?とも思ったのですが、この週に他の500区切りのアルバムは無かったので、詳細は不明です。
このようにラップアルバムからHot 100エントリーが大量にあると、客演でHot 100デビューを果たすアーティストがいることも多いですが、ここで述べた今月の3作品からはいませんでした。(有名所の客演起用が多かったです)
(その他上記の表に載ってはいないアルバム)
・TWICE – Taste of Love (EP)
4週目に、アルバムチャートで6位と躍進。これまでの最高位が”Eyes Wide Open”での72位だったので、大幅な記録更新に成功しました。
要因として大きいのは金曜日リリースになったこと。これまでは韓国に標準を合わせた月曜日リリースだったため、US基準だと初週の成績が中途半端に分かれてしまい、条件的に不利でした。
それを金曜日リリースに変更したということは、本格的な世界進出を視野に入れているということでしょう。音楽の面でも最近の作品では変化を感じ、新境地開拓への意欲を感じるTWICEに注目です。
・Maroon 5 – Jordi
シングルの“Beautiful Mistakes”は14位浮上と好調ですが、アルバムチャートでは8位(4週目)と微妙な成績。セカンド以降、アルバムチャートでは2位か1位を記録していましたが、今回は順位を落としました。現行アルバムチャートではストリーミングが最重要項目ですが、彼らはシングル以外の再生数が少なかったため、苦戦を強いられました。
近年のメガスターはアルバムも破格のストリーミング成績を誇ることが多いですが、Maroon 5はそうではないです。しかし彼らはそれでも、最終的にはシングルがヒットするので不思議なものです。
個人的には、ラジオにしっかりフィットするシングルを作り続けていることが理由の一つかと考えています。このラジオ(=ヒット)重視の方向性は、アーティスト性に対してプラスに働くとは限らず、批評家からの評価も低くなりがちですが、そこを嫌がらず(?)にしっかり出来るからこそのシングルヒット連発なのかと思います。
ただしアーティスト性のパワー、それに付随するファンダムが際立つ現行シーンで、この手法がいつまで通用するかは不明……という側面もあります。
5 ラジオ:"Forever After All"に注目
(※RMS=Mainstream R&B / Hip-Hop)
・Bruno Mars & Anderson. Paak - Leave The Door Open
ここまで10週連続ラジオ1位。主要系統ではリズミックでしか1位になっていませんが、かかる系統が広いため、再生が突出した系統が無くとも、ラジオ総合1位にはなるのです。とはいえオンエアは減少傾向で、7月の1週目には“Peaches”か”Levitating“のどちらかにラジオ1位を譲りそうです。
・Justin Bieber feat. Daniel Caesar & Giveon - Peaches
同じくかかる系統は広く、さらにポップ系とリズミック系で1位を獲得したこの曲ですが、ラジオのピークが“Leave the Door Open”と丸かぶりだったため、その人気の割にラジオ1位を獲得せずに終わる可能性も?
・Dua Lipa feat. DaBaby - Levitating
ポップ系とアダルトポップ系で1位を獲得するなど、上り調子。Hot 100で1位を取るかは分かりませんが、ラジオでの1位は取れそう。
・Lil Tjay & 6LACK - Calling My Phone
リズミックに続いて、RMSでも1位を獲得。ストリーミングだけでなく、ラジオでも成功を収めました。
・Luke Combs - Forever After All
既にHot 100滞在31週目を迎えたタイミングで、カントリー系ラジオで1位獲得。この曲はまだ他系統へのクロスオーバーをしていませんが、単純にカントリー系ラジオでの人気の高さにより、Hot 100(12位)やラジオチャート(10位)で高い順位につけています。
Talk of the Chartsによるとカントリー系のオンエアのみで、Radio Songsで10位まで到達するのは1998年12月以降では初だそうです。
6 外れた曲
ビルボードは取り上げることがほとんど無いですが、「曲の成績発表」がされるタイミングとして、個人的には重要と考えている外れた曲について取り上げていきます。その週に主に外れた曲を見ながら、振り返っていきます。
※主に外れた曲=ピークがトップ40以上 or 滞在が10週以上。ただし滞在が10週未満のアルバム曲は除く。後に再登場する曲も除く。
6/5 (全部で16曲が入れ替わり)
84 Rod Wave – Street Runner (🗻16位 /⏰10週)
88 Bad Bunny & ROSALÍA – LA NOCHE DE ANOCHE (🗻53位 /⏰17週)
98 Brett Young - Lady (🗻52位 /⏰19週)
・Bad Bunny & ROSALÍA - LA NOCHE DE ANOCHE
“DÁKITI”のようにクロスオーバーはなりませんでしたが、ラテン系ラジオで首位獲得など、一定の結果は残しています。
6/12 (全:9曲)
71 J. Cole – i n t e r l u d e (🗻8位 /⏰3週) *4
79 Doja Cat - Streets (🗻16位 /⏰20週)
・Doja Cat - Streets
ピーク16位、滞在20週の成績で外れる。TikTokで注目され、ストリーミングで浮上。予期せぬヒットを遂げてシングルカットされましたが、そのストリーミングに似合ったラジオのサポートを得られませんでした。
しかし、このタイミングで前アルバムからのシングルを切ってしまうと、先行シングルを含めた新作のリリーススケジュールに影響が出てしまう可能性もあるので、これはこれで賢明な判断かもしれません。
6/19 (全:19曲)
40 Gabby Barrett – The Good Ones (🗻19位 /⏰23週)
44 Eric Church – Hell Of A View (🗻28位 /⏰21週)
46 Lil Baby – On Me (🗻15位 /⏰26週)
83 Travis Scott & HVME - Goosebumps (🗻47位 /⏰20週)
88 Pop Smoke feat. A Boogie Wit da Hoodie - Hello (🗻83位 /⏰11週)
90 Jazmine Sullivan – Pick Up Your Feelings (🗻75位 /⏰19週)
91 Tiësto – The Business (🗻69位 /⏰14週)
95 Future & Lil Uzi Vert – Drankin N Smokin (🗻31位 /⏰18週)
97 Justin Bieber – Hold On (🗻20位 /⏰13週)
98 Morgan Wallen – Wasted On You (🗻9位 /⏰19週)
・Gabby Barrett - The Good Ones
カントリー系ラジオでの下落により、チャートを後に。ただ、アダルトポップ系でのオンエアはが開始したため、将来的にチャートに復帰する可能性も?また、ちょうど外れたあたりのタイミングで、TikTokでも注目され始めています。
・HVME & Travis Scott - Goosebumps
HVMEによるハウスリミックスが人気を得て、正式シングルカット。🗻47位・⏰20週と、それなりの成績を残してチャートを後に。原曲を上回るには至らず。(原曲の成績は🗻32位・⏰35週)
アーティスト当人の予定には無い、このようなリミックスのヒットってどうなんでしょうか。Travis Scottは既に評価が確立されているので、この曲のヒットの影響は少ないでしょうが、昨年の”Roses”のSAINt JHNのような気鋭のアーティストの場合、その影響が大きく、アーティスト性を揺らがしかねません。
SAINt JHNは昨年のアルバムでは、ラップ回帰を目指すスタイルを披露しました。
・Justin Bieber - Hold On
🗻20位・⏰13週の成績で外れる。ラジオでオンエアされていた時期もありましたが、“Peaches”一本に絞ったため、この曲のオンエアは終了へ。ストリーミングの動きを見つつ、柔軟にシングル選定、という理想的なラジオのサポートが出来ています。
6/26 (全:22曲)
48 Pooh Shiesty feat. Lil Durk – Back In Blood (🗻13位 /⏰23週)
75 Billie Eilish – Your Power (🗻10位 /⏰6週)
77 Dua Lipa – We’re Good (🗻31位 /⏰17週)
93 42 Dugg & Roddy Ricch – 4 Da Gang (🗻67位 /⏰10週)
94 Rod Wave - Tombstone (🗻11位 /⏰12週)
95 Drake – What’s Next (🗻1位 /⏰14週)
100 Nicki Minaj, Drake & Lil Wayne – Seeing Green (🗻12位 /⏰4週)
・Pooh Shiesty feat. Lil Durk - Back In Blood
この曲をきっかけに、Pooh Shiestyは主にApple Musicのような層(=正統派ラップ)での人気を確立した印象です。この曲単体では、多少クロスオーバーも見られました。
・Billie Eilish – Your Power
わずか6週で外れる。(ピークは10位)ラジオのオンエアが止まり、一気に圏外へ。シングルっぽくないと判定されたのでしょうか?昨年の“my future” (🗻6位 /⏰6週)とそっくりなチャートアクションに。
どちらもリリース直後はラジオでオンエアされていたものの、早いタイミングでオンエアが終わっています。
・Dua Lipa – We’re Good
シングルを“Levitating”に一本化したことにより、この曲は役目を終えてラジオのオンエアが激減。(🗻31位 /⏰17週)の成績でチャートを後に。
・Drake – What’s Next
1位スタートながらも、わずか14週の滞在で外れました。早いタイミングでシングルが“Wants And Needs”(現在24位)に切り替えられたことが理由です。
この曲自体は微妙な成績に終わりましたが、ストリーミングの様子を見て素早くシングルをスイッチした判断は見事です。
【6/29 訂正】
"Wants And Needs"はプレイリストではシングル級の扱いで、かつ一時期ラジオでかかってもいましたが、正式にはシングルカットされておらず、「シングル」と称するには少し注釈が必要でした。その点を訂正致します。失礼しました。
(なので、シングルをスイッチした判断が見事、という評価も変わります。”What's Next"のシングル扱いを止めたこと自体はストリーミングを反映させています。しかし”Wants And Needs"のカットを同時に行えていないので、評価は「並」ぐらいですね)
ちなみに、ここで紹介した"We're Good"や”What's Next"は次の週にHot 100に復帰していますが、既に下り調子なのは変わらず、今後の上昇はほとんど考えづらいため、内容的には差支えないです。
7 ロックの波?
Olivia Rodrigoのアルバムでも注目された、メインストリームにおけるロックブーム。それに関する今月の動きを取り上げます
・WILLOW feat. Travis Barker – t r a n s p a r e n t s o u l (外、外、外、100)
WILLOWは10年ぶりのHot 100入り(3曲目)。”feat. Travis Barker”から分かる通り、最近勢いのあるポップパンク系統の1曲です。Travis Barker個人名義では2曲目、トータルでは10曲目です。(個人2、Blink-182で7、+44で1曲)
2000年代ロックスタイル*5を取り入れ、アルバムが大絶賛されたRina Sawayamaもこの曲を称賛しています。
ちなみにTravis Barkerの、Wikipediaのディスコグラフィー「客演」の欄で一番最初にあるのはSoulja Boy Tell’emの“Crank That”のTravis Barkerリミックスです。彼はインターネットミーム、そしてアニメなど現行シーンに見られる特徴をいち早く取り入れていたことが知られていますが、このポップパンクブームまで先取りしていたとは、驚きの一言です。
そんなSoulja Boy Tell’emですが、新シングル“She Make It Clap”がにわかにTikTokで注目を集め、一部のプレイリストやラジオに登場しています。
・Duncan Laurence – Arcade (88、85、86、74)
TikTokで再注目をされ、シングル運用もされてHot 100に入った曲。この曲での注目点はEurovisionというコンテストで優勝したこと。このコンテストからの曲がHot 100入りするのは25年ぶり*6でした。この曲もUSでの注目の理由は、このコンテストの影響ではなくTikTokだったので、少なくともHot 100観察者としては注目してこなかったイベントでした。
しかしそのコンテストの今年の優勝者がにわかに注目を集めています。イタリア出身のロックバンドMåneskin。ヨーロッパで現在一大旋風を巻き起こしています。ドイツでは3曲がトップ10入り、イギリスでも2曲がトップ10などイタリア以外でも高い人気です。
近年のEurovision曲は、優勝曲でもチャート上位入りするのはその演者の母国がメインで、それ以外の国では週間のトップ10入りが怪しいくらいなので、このように他国で複数曲がトップ10に入っているのは珍しく感じます。
ヨーロッパでそんな快進撃が続くMåneskin ですが、USでも最近ようやくヒットの兆しが。”Beggin’”と”I WANNA BE YOUR SLAVE”の2曲が直近の週のSpotifyチャートにエントリーしました。(※この動向が反映されるのは7月1週目付のビルボードチャート)
2017年のシングルながらも最も人気が高い前者、そして今年のアルバムからのシングルの後者、このどちらかがUSでもシングルとしてカットされる可能性があります。USラジオ局は、UKのヒットを取り入れることが少なくないため、UKでヒットしているという点は心強いです。
ちなみに“Beggn’”はthe Four Seasonsというグループの曲をカバーしたもの。この曲をMadconというアーティストがカバーしたバージョンが、昨年TikTokで流通していました。
その他:短評
()内は順位の推移。(1週目の順位、2週目、3、4)です。外は圏外、”-“はその時点ではまだリリースされていないことを指します
・City Girls – Twerkulator (51、82、外、外)
正式リリース前からTikTokで流通しており、期待感が高かった1曲。ですが3週目に外れるなど、今のところ微妙な成績。ラジオでもかかっているため、ここから巻き返す可能性もありますが。
・Lil Nas X – SUN GOES DOWN (66、外、外、外)
大ヒット“MONTERO”の次シングルは1週で外れるという結果に。ビデオも用意され、プレイリストでも扱いが良かったですが、ラジオにはかからず。もしかしたらシングルとしてそこまで期待されていない枠なのかもしれません。
https://vt.tiktok.com/ZSJXEaYgF/
↑ Lil Nas X当人が既存曲と混ぜつつ、まだ正式にリリースされていない曲を紹介する動画。”Industry Baby"の露出が多い気がするので、次の正式シングルはこれかもしれません。
・Marshmello & Jonas Brothers – Leave Before Love Me (85、72、69、58)
初動は鈍かったものの、徐々に勢力を伸ばす。私の聞く限り、ヒットしそうな雰囲気を感じました。ラジオやプレイリストで粘り強くプロモーションを続ければ、もっと伸びそうな気はします。
・Kali Uchis - telepatía (44、34、33、30)
ラジオの伸びにより、ストリーミングのパワーで記録した登場直後のピークを塗り替える。主にポップ系やリズミック系でオンエア。スペイン語ヴァースが過半数を占めている曲ですが、ラジオではリミックス無しで問題なくオンエア。英語ヴァースも含まれていることが関係していそうです。
ストリーミングとラジオのピークが少しズレているとはいえ、まだ勢いが残った時期にシングルカットできたため、悪くはない運用が出来ていると思います。
・Ariana Grande - pov (45、37、39、33)
TikTokで人気を得て、リリース直後にストリーミング主体で記録したピーク(40位)をラジオパワーによって更新する。ただその時とは違い、現在はあまりストリーミングに優れません。
ビデオという可能性を残す一方、ラジオは少し頭打ちになってきました。こちらはストリーミングとラジオのピークが離れすぎているため、そのポテンシャルをイマイチ発揮できていないような印象です。
ストリーミングでアルバムごと注目されていた作品の場合、そのリリースから時間を置いてカットされたシングルがあまりヒットしないのは最近よくある事例です。
ここで紹介した”telepatía”、”pov”の2曲はストリーミングのピーク時にRolling Stone Chartsでトップ10入りを果たしています。ラジオ抜きでもそのようなポテンシャルのある曲が、ラジオでどこまで評価を得るでしょうか。
・Eminem feat. Jack Harlow & Cordae - Killer (-、62、外、外)
Eminem昨年のアルバムの、”Side B”にあった曲のリミックス。客演のCordaeは初のHot 100です。彼は大坂なおみとデート報道があるラッパー。それ以外でもよく名前を聞くラッパーだったので、今回がHot 100初登場だったのは意外でした。
Roddy Ricchとの“Gifted”がBubbling Underの1位に到達したのがこれまでの最高位。
・Cochise & $NOT - Tell Em (-、64、92、外)
両者ともに初のHot 100。TikTokで正式リリース前から注目されていた曲。Cochiseによるスニペットの他、Varoon Ramesh*7という人物が作成したマッシュアップの音源もリリース前から人気を集めていました。
Cochiseは“Hatchback”が昨年TikTok内でヒットしたこともあるラッパー。Mario Judahと並び、Playboi Cartiとの類似性が指摘されることもあります。
$NOTも同様に、以前Flo Milliの”Weak”が以前TikTok内でヒットしていたことがあります。
・Rauw Alejandro - Todo de Ti (外、66、53、45)
ラテン圏で目下絶好調の1曲。従来のレゲトンは一線を画するサウンドの曲で、今後のクロスオーバーにも期待が持てそう。
英語ヴァースもあると、ラジオやプレイリストで有利に働くことが多いので、今後リミックスがリリースされるかも?
・Roddy Ricch - Late At Night (-、-、20、35)
Roddy Ricchのカムバック。過去に2曲のヒットを共に生み出したMustardがプロデューサー。しっとりしたR&Bで、“The Box”のようなスマッシュヒットを狙うよりは、主にラップ/R&Bのリスナーの心を射止めに来た印象です。堅実なシングルと言えます。
・Regard, Troye Sivan & Tate McRae - You (外、外、外、100)
主にポップ系ラジオで注目される曲。DJのRegard、Tate McRaeは2曲目のHot 100。Troye Sivanは6曲目。ストリーミングではそこまで良い成績が出せていませんが、ラジオでのサポートは充実していたため、Hot 100にたどり着きました。
Tate McRaeはKhalidとの“working”も現在ポップ系ラジオでかなりオンエアされています。(この曲がチャートに反映されるのは7月の1週目)
・Lorde - Solar Power (-、-、-、64)
Lorde2017年以来のシングル。ポップ系やアダルトポップ系などの大きな系統では今の所ほぼオンエアされておらず、そこまでシングルヒットを意気込んだ曲ではないと推測されます。オルタナティブ系ではしっかりオンエアされています。
・Nelly & Florida Georgia Line - Lil Bit (62、53、50、37)
4週目にトップ40入り。ラジオに加え、実はストリーミングでも人気な曲。特に人気なのはAmazonやPandoraですが、SpotifyやAppleでもある程度注目されています。
昨年にヒットした、DiploとMorgan Wallenの“Heartless”にチャートアクションが似ていると思います。
・Megan Thee Stallion - Thot Shit (-、-、-、16)
各ストリーミングで注目を集め、好スタートを切ったMegan Thee Stallionの新曲。YouTubeのSong ChartではUS1位になっています。(Song Chartでは曲が紐付けられたその他のビデオも含む。ただし、ビルボードでは公式ビデオの再生数しか含まれない)
2週目以降もストリーミングで好成績を維持しており、しばらくは上位に残りそう。
・Machine Gun Kelly & blackbear – my ex’s best friend (39、31、42、36)
かなりロングヒットになっているポップパンク曲。今月見られたようなポップパンクブームの影の立役者かもしれません。44週目で36位なので、もしかしたら滞在が1年まで届くかもしれません。
・The Weeknd – Blinding Lights (22、17、15、17)
J. ColeやOlivia Rodrigoのアルバム曲大量登場という難所を切り抜け、チャートに残留した“Blinding Lights”。その滞在週数を80まで伸ばし、歴代単独2位まで浮上しています。他の曲よりも不利な条件(26位以下で外れる)ながらも、記録更新も見えてきました。
87週:Imagine Dragons – Radioactive
80週:The Weeknd – Blinding Lights
79週:AWOLNATION - Sail
主なデータ
アルバムチャートのキリ番
6/5
100週目:BTS – Love Yourself: Answer (109位)
6/12
1周年:Tyler Childers – Purgatory (190位)
150週目:Arctic Monkeys – AM (143位)
150週目:Future – DS2 (162位)
6/19
100週目:Chris Brown – Indigo (146位)
300週目:Chris Stapleton – Traveller (59位)
450週目:Kendrick Lamar – good kid, m.A.A.d city (52位)
6/26
1周年:Gabby Barrett – Goldmine (112位)
1周年:George Strait – Strait Out Of The Box (164位)
100週目:Brooks & Dunn – The Greatest Hits Collection (187位)
150週目:Travis Scott – ASTROWORLD (49位)
Hot 100初エントリー
・Eminem feat. Jack Harlow & Cordae – Killer
・Cochise & $NOT – Tell Em
・MO3 & OG Bobby Billions – Outside
・Los Legendarios, Wisin & Jhay Cortez - Fiel
※先月号で書き忘れてしまったのですが、Nicki Minajの客演を務めていたSkillibengもおそらく初登場でした。失礼いたしました。(アルバム曲で、TwitterのBillboard Chartsで言及されないタイプの曲)
・各指標1位
強さを発揮する曲が、それぞれの媒体で異なります
【6/29 追記】
Pandoraで首位を獲得したChris Stapletonの"You Should Probably Leave"は異質の存在。まだカントリー系ラジオでは「かかり始め」くらいの段階ですが、ラジオ系ストリーミングのPandoraでは1位まで到達。ラジオとPandoraでシングルの運用にズレが生じていることが分かります。
この曲はまだHot 100に登場していません。Pandora単体の成績では、Hot 100には届かないようです。
・Rolling Stone Charts トップ10
1週目だけでなく、2週目までOlivia Rodrigoの曲が多いです。1位と2位がHot 100とは逆。
・Spotifyチャート(US) トップ10
Olivia Rodrigoが異次元の強さ。初週はトップ10独占。以降8→6→5曲と推移。
※Rolling Stone Charts、Spotifyチャートの日付はHot 100準拠
・2021上半期 Hot 100首位推移
(こういう表の曲の色合いは、アルバム or シングルジャケ、もしくはビデオ等を参照にしています。他の曲との兼ね合いもあります)
リンク/参照
・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard
・Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard
・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard
・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/
・Spotify Charts:Spotify Charts
・Apple Music Top 100 (US):Top 100: USA on Apple Music
・YouTube楽曲ランキング(US):YouTube music charts
・Tokboard:Tokboard - Top TikTok Songs This Week (←今月も更新止まっている期間があった)
・Spotify - Today's Top Hits:Today's Top Hits | Spotify Playlist
・Apple Music - Today's Hits:Today’s Hits on Apple Music
・Genius(曲の情報等):Genius | Song Lyrics & Knowledge
(過去の月へのリンク)
5月号:Billboard(US) 動向 5月号 【活発な月。"Save Your Tears"、"good 4 u"、J. Coleなど】 - チャート・マニア・ラボ
1:首位推移
2:トップ10の曲
3:今月のアルバムチャート
4:各系統のラジオ首位を見る
5:年間チャートのトップ10予想
6:TikTok関連
7:外れた曲(とその魅力)
4月号:Billboard(US) 動向 4月号 【週替りの1位:Justin Bieber→Lil Nas X→Silk Sonic→Polo G】 - チャート・マニア・ラボ
1 毎週交代!シングル首位
2 トップ10
3 新作が増加、アルバムチャート
4 ラジオ動向
5 BTSの「バトンタッチ」?
3月号:Billboard(US) 動向 3月号 【月の後半に動いたHot 100上位】 - チャート・マニア・ラボ
1 後半に動いたHot 100上位 / 複数の首位候補
2 動かないアルバムチャート
3 グラミーはどうだった?
4 トップ10周り
5 Kali Uchis大躍進、今月のTikTok関係
6 Hot 100デビューを果たしたアーティスト
7 1年滞在の曲2つなど。今月のリカレントたち
2月号:Billboard(US) 動向 2月号 【シングル/アルバム1位が不動の月】 - チャート・マニア・ラボ
1 シングル/アルバム1位が不動
2 ハーフタイムショー
3 その他のトップ10
4 Hot 100に初登場 or 2~3曲目のアーティスト
5 正統派 Hip-Hop / R&B 曲
1月号:Billboard 動向・1月号(2021) 【予想外の1位独走など】 - チャート・マニア・ラボ
1 予想を超える1位:"drivers license"
2 期待通りの1位:Morgan Wallen
3 期待ほどではない(?)1位
4 超圧倒的だったクリスマス曲、去る
5 クリスマス後の特別復活ルール
6 その他のトップ10 + 今後
*1:ドイツでは2位
*2:当時はマーチやチケット戦略が有効でしたが、このアルバムはそれらを使ったとの記述は無い
*3:ビルボード公式では明言されていないものの、少なくともストリーミング時代には無かったです。この記録の性質上ストリーミング時代以外には考えづらいです。
*4:ラジオにはかかっていませんが、プレイリストには含まれていたので、ここではシングル扱いということにします
*5:ポップパンクとは少し違いますが
*6:Chart Dataより
*7:過去にBillie Jean x Boo x F*ck It Upというマッシュアップもヒットさせていた。ちなみにBillie JeanはLagloinskiというフィメールラッパーのビートジャックを使っています