チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Hot 100 4/6 見どころ 【NAVがアルバム1位 + MabelがHot 100に登場】

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 こんばんは。今週のHot 100は動きが静かめだった印象です。その中で際立ったのはNAVのアルバム1位と、イギリスに拠点を置くR&Bシンガー・MabelのHot 100初登場ですかね
 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・”7 rings”が8週目の首位。”thank u, next”(7週1位)より長い首位滞在に

・NAVがアルバム1位に。週の後半にリリースしたデラックス版と絡めた、チケットやグッズ+音源戦略が首位争いを制した決め手

・先週Hot 100に登場したJojiの“SLOW DANCING IN THE DARK”は今週チャートから外れる(滞在は1週間だった)

 

・今週のトップ10

      4月6日   R D S
-   1 Ariana Grande 7 rings 2 5 3
2 Post Malone Wow. 7 2 2
-   3 Post Malone & Swae Lee Sunflower ✅ 11 3 1
  4 Halsey Without Me 1 8 9
-   5 Cardi B & Bruno Mars Please Me  6 12 8
-   6 Marshmello & Bastille Happier 8 17 12
7 J. Cole MIDDLE CHILD  31 26 6
8 Blueface Thotiana 40 27 5
9 Jonas Brothers Sucker  12 4 14
  10 Lady Gaga & Bradley Cooper Shallow 10 1 25

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

◎ は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

(今週の🍎=Old Town Road、🚩=Murder On My Mind)

 

 

1~100位までの順位表は↓

  

 

曲の個別解説

 

☆98 Bebe Rexha – Last Hurrah

 Bebe Rexhaの“Last Hurrah”が98位に登場。Bebe Rexhaにとって10曲目のHot 100エントリーです。

 リリース時から一定の再生数を記録していたSpotifyに加え、ポップ系ラジオでの伸びがHot 100入りの要因です。

 

☆97 Mabel – Don’t Call Me Up

 Mabelの“Don’t Call Me Up”が97位に登場。スペイン生まれ、スウェーデン育ち、そして現在はイギリスに拠点を置くR&BシンガーMabelは初のHot 100エントリーに。

 この曲も同じくSpotifyとポップ系ラジオで人気。US以外の地域で人気の曲はこの2つの媒体で人気になる傾向があります。R&Bスタイルな1曲なので、今後はリズミック系ラジオでも伸びるかもしれません。

 現在拠点を置くイギリスではこの曲はピークに3位まで到達。ほかMabelは“Finders Keepers”がイギリスでトップ10入りし、”Fine Line”や“Ring Ring”などもヒットしています。(それぞれUK11位、12位) 

 Spotifyでは世界的な人気を集めており、一時期グローバル再生数が9位まで到達しました。(現在はBillie Eilishのアルバム曲に押される形で若干順位を落としている)

 ポップ系ラジオ + Spotifyで人気の“Last Hurrah”、”Don’t Call Me Up”はいずれもSpotifyの有力プレイリストToday’s Top Hitsの上のほうに配置されています。(Bebe Rexhaは3週間前、このプレイリストの表紙だった)

 

 Mabelは母親(Neneh Cherry)も叔父(Eagle-Eye Cherry)もHot 100入りしたことがあります

Mabel Scores First Billboard Hot 100 Hit With 'Don't Call Me Up' | Billboard

 

△96 Billie Eilish & Khalid – lovely

 滞在21週目で96位と、本来ならばチャートから外れてしまう水準にいるBillie EilishとKhalidの“lovely”が今週も特例でHot 100に残りました。ポイントの伸びを表す「◎」のアイコンがあるので、今後も伸びていくと予想のもとチャートに残すと判断されたのだと思われます。

 しかし来週は自身のアルバム曲の大量登場によって、チャート圏外に落ちてしまう可能性が高いです。(”lovely”はそのアルバムに収録されていない)

 “lovely”を特例でチャートに残すのであれば、アルバムリリース時のストリーミングの伸びが予想され、さらにはここ数週ラジオの再生数も上向いている”when the party’s over”のほうを特例でチャートに残したほうが良かったのでは?と思います。(この曲は2週間前に滞在20週を迎えてチャートから外れた)

 この”when the party’s over”は来週50位以上の順位に入ればHot 100に復帰できます。アルバムリリースによるストリーミングの伸びがあるので、再登場の可能性はある程度ありそうです。

 

☆95 Polo G feat. Lil Tjay – Pop Out

 Apple MusicやYouTubeで人気を集めている“Pop Out”が95位に登場。Polo GもLil TjayもHot 100初登場です。

 ラジオでのオンエアも始まり、またSpotifyでもRapCaviarに入ったことから少しずつ人気が出ています。

 

◇80 Rich The Kid – Splashin

 Rich The Kidが2枚目のアルバム“The World Is Yours 2”をリリース。総合売上4.2万でアルバムチャートの4位に入りました。純セールスは2000のみでした。

 収録曲のうち、“Splashin”が80位に再登場。ピークを更新しています。Hot 100に登場したのはこの曲のみです。Spotifyでの注目度がやや低めでした。

 

☆78 Logic – Confessions of A Dangerous Mind

 Logicの“Confessions of A Dangerous Mind”が78位に登場。この曲と同タイトルのアルバムが今年リリースされるのでは?と考えられています。主にダウンロードやSpotifyからポイントを得ています。

 彼はこれとは別に、自身の小説の「サウンドトラック」として“Supermarket”をリリース。アルバムチャートで56位に登場しています。

 

☆72 NAV feat. The Weeknd – Price On My Head

 カナダ出身のラッパーNAVが初のアルバム1位を獲得。先週の時点ではAriana GrandeかJuice WRLDのアルバム1位が予想されていましたが、週の途中にリリースされたデラックス版、またそれと絡めたチケット・グッズ戦略によってセールスを稼いでアルバム1位争いを制しました。総合売上は8.2万で、純セールスは2.4万でした。残りの多くをストリーミングから稼いでいます。

 アルバムの収録曲のうち2曲がHot 100に登場。NAVが所属するレーベルのボスに当たるThe Weekndとコラボした“Price On My Head”が72位、Meek Millを迎えた”Tap”が89位に登場しました。

 このアルバムはApple Musicでは注目を集めましたが、Spotifyでの注目度は若干低めでした。特に“Tap”はApple Musicでは5位前後を推移していたものの、Spotifyでは週間79位でした。

 

 今週の「スタッフによるチャート議論」のテーマはこのアルバムについてでした。少し珍しいのは5個目の質問でPitchforkの話をしていることですかね…… (PitchforkがしたNAVのインタビューについて)

 

△57 Lil Baby – Close Friends

 チャート滞在22週目で57位と、本来ならばHot 100から外れてしまう水準の順位にいるLil Babyの“Close Friends”ですが、上昇の見込みがあるとしてチャートに残っています。判断材料になっているのはおそらくラジオです。

 曲のリリースからは時間が経過しておりチャートには既に長く滞在していますが、ラジオでかかり始めたのはここ数週でラジオは今がまさに伸び盛り。Hot 100は伝統的にラジオを基調としている傾向があるので、ラジオで伸びていれば今後も伸びると判断されたのでしょうか。

 

△40 Khalid – Talk

 Khalidの“Talk”が41位→40位と浮上。リリース時から常に中位に滞在していますが、トップ40に入るのは今週が初です。

 ストリーミングの数字を維持しつつ、ラジオ(特にリズミック系)のポイントも少しずつ増えてきています。Khalidの曲はロングヒットになる傾向が強く、今後もじわじわ少しずつ順位を伸ばしていきそうな予感がします。

 今週16位の前シングル“Better”もチャート滞在28週目ながらも現在伸び盛りで、少しずつ順位を上げています。この調子をキープできればストリーミングが伸びるアルバムリリースのタイミングでトップ10入りできそうです。(彼のセカンド”Free Spirit“は今週末にリリース予定。これが反映されるのは2週後のチャートです)

 

▽24 Dean Lewis – Be Alright

 オーストラリア出身のSSW、Dean Lewisがデビュー作“A Place We Knew”をリリース。アルバムチャートで31位に入りました。母国オーストラリアでは1位を獲得しています。

 そのアルバムにも収録されたヒット、“Be Alright”は今週24位。先週の23位(ピーク順位)から一つ順位を落としましたが、ポイントは上昇しています。

 この曲は主にアダルトポップ系ラジオで人気。2週間前にはこの系統で1位になっています。今週この系統で1位に立っているのは“Eastside”です。

 

△15 Lil Nas X – Old Town Road

 Hot Country Songsのチャートから外されたことも話題になった“Old Town Road”が好調をキープ。32位→15位と大きく順位を上げています。今週Hot Country Songsで1位のLuke Combsの”Beautiful Crazy”が25位なので、Hot Country Songsに残っていたとしたら、“Old Town Road”はこのチャートの首位に立っていた、ということになります。

 

(この「ジャンル変更」に関しては個別記事にしました)

簡潔にまとめると

・Hot ○○ Songsにおけるジャンル変更は以前から多くあったので、今回のケースだけ大きく話題になったのが意外(=そこまで重要度の高いイベントではない)
・Hot ○○ Songsはそこまで重要度の高いチャートではないと私は考えている
・ただし、ビルボードには説明責任が存在する!?

 

 ストリーミングでの勢いを見る限り、来週はトップ10まで到達しそうです。他のトップ10付近の曲に勢いが無い(ポイントの上昇を表す「◎」のアイコンが無い曲が多い)ので、一気に順位を伸ばしていきそうな予感。この曲はストリーミングだけでなくDLやラジオもここ数週伸びてきています。

 

△8 Blueface – Thotiana

 Bluefaceの“Thotiana”が8位に順位を上げ、トップ10返り咲きを果たしています。原曲もリミックスが両方とも人気を集めているという点が特徴的。どのストリーミングでも好調ですが、特にYouTubeでの人気が高いです(今週4位)

 そのストリーミング人気に加え、ここ数週はラジオでも好調。リズミックやアーバン系などラップ関連の局以外にも、ここ最近はポップ系のラジオでもかかり始めているようです。

 

×× Anuel AA & Romeo Santos – Ella Quiere Beber

 Anuel AAの“Ella Quiere Beber”(英語で”She Wanna Drink”)がチャートから外れました。ピークは61位、チャート滞在は20週でした。この曲はリミックスでRomeo Santosを迎えたことによって人気が出ました。

 ラテン系ラジオで1位を獲得するなど、ラテンのリスナーの間では人気でしたが、他のジャンルのリスナーには波及せず、Hot 100では低空飛行には終わりました。

 主要ではないジャンルの曲がそのジャンルの界隈のみでヒットした場合、Hot 100では低いピークながらも長めにチャート滞在を果たす傾向があります。これは近年ラテンに多く見られる現象です。

 ほかのジャンルでは2014年のArctic Monkeysの“Do I Wanna Know”=ピーク70位で滞在20週などが当てはまります。ちなみにこの曲がArctic Monkeys唯一のHot 100エントリーです。

 

 今週はチャートの入れ替わりがやや少なく、外れた曲が7曲。先週初登場した”SLOW DANCING IN THE DARK"、”Sally Walker"、”Numb Numb Juice"は1週間でチャートから姿を消しています。

 

今週チャートから外れた曲 (7曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

99 Khalid – My Bad (🗻77位 /⏰2週)

97 Alec Benjamin feat. Alessia Cara – Let Me Down Slowly (🗻79位 /⏰6週)

96 Joji – SLOW DANCING IN THE DARK (🗻96位 /⏰1週)

86 Juice WRLD – Fast (🗻47位 /⏰2週)

83 Anuel AA & Romeo Santos – Ella Quiere Beber (🗻61位 /20週)

62 Iggy Azalea – Sally Walker (🗻62位 /⏰1週)

55 ScHoolboy Q – Numb Numb Juice (🗻55位 /⏰1週)

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 NAV – Bad Habits 🎫👕

4 Rich The Kid – The World Is Yours 2

10 Mötley Crüe – The Dirt (Soundtrack)

31 Dean Lewis – A Place We Knew

34 Jenny Lewis – On The Line

56 Logic – Supermarket

75 Wallows – Nothing Happens

141 Andrew Bird – My Finest Work Yet

185 Flume – Hi This Is Flume (Mixtape)

 

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

☆Jonas Brothers – Sucker

・Sam Smith & Normani – Dancing With A Stranger

・Cardi B & Bruno Mars – Please Me

Lady Gaga & Bradley Cooper – Shallow

・Mitchael Ray – One That Got Away

(参考:Billboard Radio Songs Estimates

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Billie Eilish – bad guy

 アルバムの大半が来週のHot 100に登場する見込み。中でも”bad guy”はトップ10に入りそう。2位の可能性も?

 

・Ariana Grande & Victoria Monét – MONOPOLY

 週の途中にリリースされた楽曲。注目度が高く、数日分の集計で来週のチャートに登場しそう

 

・Nipsey Hussle feat. Roddy Ricch & Hit-Boy – Racks in the Middle

 彼の突然の訃報を受け、関連作品のストリーミング再生数が上向いています。特に“Racks in the Middle”はApple Music、Spotifyのラッププレイリストの両方で先頭に配置されていることもあり、高い再生数を記録しています。

 (ちなみにApple Musicのプレイリストではこの曲は訃報の前から入っていたが(配置は先頭ではない)、Spotifyのプレイリスト=RapCaviarでは訃報の後に追加された)

 

・Megan Thee Stallion – Big Ole Fleak

・NLE Choppa – Shotta Flow

・DaBaby – Suge

ストリーミングで人気を集め、Hot 100に接近中の新進ラッパーたちの曲です。

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

“Old Town Road” ジャンル変更問題を読み解く

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 Lil Nas Xによるトラップとカントリーを混ぜ合わせヒット、“Old Town Road”。この曲がビルボードのHot Country Songsというチャートから除外され話題になっています。(Rolling Stone、Pitchforkなど多くのサイトがこれについて報じている)

How Lil Nas X’s ‘Old Town Road’ Got So Popular – Rolling Stone

Billboard Removes Lil Nas X’s Viral Song “Old Town Road” from Country Chart - Pitchfork

Country Trap Song “Old Town Road” Causes Controversy on Billboard Charts | Music News | Consequence of Sound

 

 これに対する個人的な見解を簡潔にまとめると以下の通りです。

・Hot ○○ Songsにおけるジャンル変更は以前から多くあったので、今回のケースだけ大きく話題になったのが意外(=そこまで重要度の高いイベントではない)

・Hot ○○ Songsはそこまで重要度の高いチャートではないと私は考えている

・ただし、ビルボードには説明責任が存在する!?

 

なぜそう考えるのに至ったのか、今回の事例について説明していきます。

 

1 Hot ○○ Songsとは何か?

 

 今回話題になったHot Country Songsとは、その名の通り現在のカントリーのヒットが掲載されているチャートです。カントリーだけでなくEDM、R&B/Hip-Hop、Rock、Latin、Christianという計6つのジャンルでHot ○○ Songsが存在します。(R&B/Hip-Hopはそれぞれを個別に分けたHot R&B Songs、Hot Rap Songsも存在する)この記事ではこれらをまとめて“Hot ○○ Songs“称することにします。

 ちなみにPop Songsはこれらとは違うジャンルのチャートです。Pop Songsはポップ系ラジオのチャートを指しており、ポップスのジャンル別Hot ○○ Songsはありません。(別にジャンル分けしなくともポップスはHot 100で上位に入り、Hot 100を見るだけでポップスの人気曲がすぐに分かるからだと思います)

 これらのチャートはジャンルによって開始した時期などは微妙に違い、ある程度の紆余曲折がありますが、従来の集計方法はラジオに基づく集計でした。

 そのジャンルのラジオに定着したリスナーによるチャートだったので、そのジャンルのリスナーが何を好んで聞いているか?がよく分かるものでした。

 

 しかし、そのHot ○○ Songsに大きなメスが入ります。2012年10月20付けのチャートから、これらのHot ○○ Songsの集計方法がHot 100準拠に変わり、従来のラジオチャートはHot ○○ Airplayという新設されたチャートで見ることができるようになりました。

 

 この変化により、そのジャンルの界隈で流行っていなくてもメインストリームで大流行していればそのジャンルの○○ Songsでは上位に入るようになりました。このことはHot Country SongsのWikipediaでも以下のように説明されています。

 “Following the change, songs that were receiving airplay on top-40 pop were given a major advantage over songs popular only on country radio, and as an unintended consequence, such songs began having record-long runs at the top of the chart.”

(この変化により、ポップ系ラジオでかかっている曲はカントリー系ラジオで“のみ”人気の曲に対して大きなアドバンテージを持つようになった。その結果、以下のような曲がこのチャートで長期的に1位を支配するようになった。)

Hot Country Songs - Wikipedia

 

※例として挙げられているのはTaylor Swiftの“We Are Never Ever Getting Back Together、Florida Georgia Lineの”Cruise”、Sam Huntの“Body Like A Back Road”、Bebe Rexhaの”Meant To Be”

 

 ほかジャンルでもラップのラジオ系統の一部ではあまり人気が出ていなかったMacklemore & Ryan Lewisがポップ系ラジオなどメインストリームでの人気によってHot R&B / Hip-Hop Songsの1位を長くキープするなどの現象が起こりました。(ちなみに“Thrift Shop”はラップ系ラジオ(Hot R&B / Hip-Hop Airplay)よりもオルタナティブロック系ラジオでの人気のほうが高かったです)

(ただしもう一つのラップ系ラジオ系統、リズミックでは大人気(複数が1位)だったので、Hot R&B / Hip-Hop Songsには残ったのだと推測される)

 

 このように集計方法の大改革以降は、Hot 100からジャンル分けして抜き出しただけのチャートに変化し、「いかにメインストリームで成功しているか」がこのチャートで上位に入るかのポイントとなったのです。

 このような大きな変化があったので、Hot ○○ Songsは2012年10/20以降、以前では別物として考えたほうが良いと考えています。

 

 個人的な考えを述べると、このチャートはHot 100をそのまま抜き出しただけで、あまり重要度が高いチャートではないと考えています。わざわざジャンル別に分けて考えなくても、Hot 100だけ見ていれば十分だと考えているからです。私はHot ○○ Songsは「Jリーグ順位(関西のみ)」のようなものだと考えています。*1

 

 ただし、このチャートを有効活用する方法もあります。

 1つ目はHot 100に入らなかった曲では何が人気か?ということが分かるという手法です。多くのジャンルではHot 100に入っているのはそのジャンルで一部の曲だけなので、下位になればHot 100に入っていない曲もチャートに入っています(Hot ○○ Songsは多く50位まで閲覧できる) 下位であってもその順位から、この曲はHot 100に入っていないけど、どれくらいヒットしているのか?ということをある程度推測することが可能です。

 2つ目は、Hot 100から既に外れた曲が現在はどれくらいヒットしているのか?を判断できる手法です。古い曲を制御するリカレントルールによって一定の週数が経過した曲はHot 100から外れてしまいます。しかしHot 100では既に外れていたとしても、そのジャンルのHot ○○ Songsで上位に残っていれば、Hot ○○ Songsのほうではチャートに残っているケースもあります。そのような場合は、実際にHot 100入りしている曲の順位と見比べて、「まだHot 100に残っていれば△△位くらいなのかな?」ということが推測できます。

 ちなみに、Hot R&B / Hip-Hop Songsは50位すべてがHot 100に入っているということも多いのであまりこの手法を適用できません。

 

2 Hot ○○ Songsにおけるジャンルの変更

 

 ラジオでの再生数をベースにチャートに反映させれば良かった2012年以前とは違い、現在Hot ○○ Songsのジャンル分けはビルボードの「判断」によって行われています。今回はその「判断」が焦点になったということでしょう。

 そのジャンル分けの判断は現在もラジオをベースに行われている模様です。そのラジオのオンエア次第ではジャンル変更がチャート入り後に行われるケースがあります。

 例えばBebe RexhaとFlorida Georgia Lineの“Meant to Be”はポップ寄りのアプローチで、最初にかかったラジオもポップだったことから、最初はHot Country Songsに入っていませんでした。しかし、曲がヒットするにつれてカントリー系ラジオでのオンエアも開始。Country Airplayチャートに初めて入った翌週から、ついにHot Country Songs入りを果たしました。

(↓その週のチャート)

Country Radio Music Chart | Billboard

Country Music: Top Country Songs Chart | Billboard

 

 その後この曲はカントリー系のチャートでも大ヒットになり、Country Airplayでも見事一位を獲得し、さらにはHot Country Songsで歴代最長の1位(50週)を記録しました。

 

 逆にHot ○○ Songsを外れるケースもあります。Tove Loの“Habits”は最初にかかっていたラジオがオルタナティブロック系統だったことから、Hot Rock Songsチャートに入っていましたが、後にポップ系ラジオでの人気のほうが高いと判断されHot Rock Songsから除外されました。(最終的にオルタナティブロック系ラジオでのピークは19位、ポップ系ラジオでは1位まで到達)

Top Rock Songs Chart | Billboard (←Prev. Weekを押してこの週と見比べると消えたことが分かる)

(※ただし、系列の人気度の差があまり大きくなければ元のジャンルから消えないこともあります。超厳密にジャンル分けしているわけでもないので、ある程度はケースバイケースです)

 

 過去の傾向から、Hot ○○ Songsのジャンル分けはかかっているラジオによって判断されていることが伺えます。そして他ジャンルのラジオへクロスオーバーした場合は、途中でジャンルが変わることもあるのです。

 

 実は“Old Town Road”のジャンル分けもこのラジオで判断できます。“Old Town Road”はまだ先週のタイミングでは各ラジオ系統に入っていませんでしたが、ポップ系やリズミック系(ポップとラップの中間にあたる系統)で既に浮上の兆しを見せていました。(Hits Daily Doubleなどのサイトで確認できます) そして今週、正式にポップ系ラジオチャートやリズミック系ラジオチャートにエントリーしています。しかしカントリー系ラジオチャートには入っていません。

 ビルボードはポップ系とリズミック系でのラジオの人気から、カントリー以外のリスナーに人気を集めた曲と判断し、「カントリーではない」としたのです。仮に今後カントリー系ラジオでも再生数を獲得できれば再びHot Country Songsに舞い戻る可能性もあります。

 

4/21追記

 ビルボードはこの曲のジャンル分けについての記事を発表。

 この記事内ではジャンル分けの理由を説明しています。その「理由」とは以下の理由でした。

① トラップビート

② カントリー系ラジオの再生不足

③ レーベルのジャンル分け

④ プレイリストのジャンル分け

 

 上記の要素、①(=曲の特徴)、③は頻繁に変わるものではないので、ビルボードがHot ○○ Songsのジャンルを変更させる時は②か④を理由にしているということが分かります。このことから”Old Town Road"がHot Country Songsに戻るためには②か④に変化があれば良いと考えられます。

 この曲はリミックスのリリース直後に、一時期カントリー系局での「お試し放送」で再生が伸びたものの、その後この系統のリスナーの心を掴めず、再生数が減少してしまったので、今後②のカントリー系ラジオが伸びることは考えづらいです。

 また④に関してもApple Music、Spotifyなどでこの曲をカントリー系のリストに載せる動きは見られません。この曲のジャンル分けはプレイリストでも苦慮しているようで、ラップのプレイリストにすら入っていないケースもあります。

 Spotifyの公式プレイリストRapCaviarはこの曲をリストにまだ含んでいません。(Apple MusicのThe A-List: Hip-Hopも先週まで同じくリストにこの曲を入れていなかったが、今週から追加された)

 この②と④の動向を見る限り、今後この曲がHot Country Songsに復帰する可能性は低そうですが、果たして……???

 

3 ビルボードは説明する必要あり!? ビルボードのHot ○○ Songsの扱い方

 

 過去の傾向を読み解くと、ビルボードは明確な判断基準を持ってジャンル分けを行っており、今回”Old Town Road”がHot Country Songsから外れたのも「過去にもよく見られた現象」だったのです。私が今回“だけ”話題になったのが意外だったと考えたのはこのようなことからです。

 

 今回の件に関して、ビルボードをかなり懐疑的に見る記事もありました。例えばConsequence of Soundは、記事のタイトルを“Billboard says Lil Nas X’s “Old Town Road” not country enough to be on country charts”、そして副題を“Billboard says its decision had nothing to do with the Atlanta artist's race” としています。

 

 これはビルボードのジャンル分け判断に偏見が入ったのでは?と読者を誘導するような意図を感じますが、あまり的を射たものでは無いと感じます。

 

 ビルボードは元から持っていた判断基準を適用しただけなので、今回特に変わったことをしたわけではありません。しかし、ビルボードはこのことを多少なりとも説明をする必要もあるかもしれない!?とも私は考えています。(ここからマニアックな内容が増えます)

 

「1位ビジネス」 私がこう呼んでいる現象があります。これはメインのチャートでの中途半端な順位よりも、区分けされたチャートでの1位(または上位)の方が見栄えがよく、これをニュースにすると注目を集めやすいという現象です。

 これは日本の事例を見ると分かりやすいと思います。

 全米No.1!?しかし、これは一時期のiTunesのチャート、さらにはJazzというジャンル別での1位であって、総合の1位ではありません。iTunes総合での順位はそれほど高くはないので、ジャンル別の1位を見出しに起用し、注目を集めようという意図です。

 このアルバムは週間のチャートでは、Hot Jazz Albumsでは5位、全ジャンルの総合アルバムチャート(Billboard 200)では圏外でした。

(圏外でしたが、日本人としては大健闘の成績であることは間違いないです)

 

 上記の日本の記事は極端な例で、「ジャズチャートで」というフレーズがきちんと入っている記事の方が多いです。ただし多くの記事でiTunes Jazzでの「1位」、ビルボード Jazzでの「5位」がかなり強調されている、という印象がありました。(参考:全米デビューした主な日本人の現状!

 

 この重要度の高い全ジャンルのチャートでの中途半端な順位よりも、細かく区分けされたチャートでの1位(上位)を優先する傾向はビルボードにも見られます。

 

(この現象については以前、↓の記事で詳しく説明しました ※マニアック記事です)

ビルボードの報道の傾向:トップ○○「デビュー」の記録強調に関する疑問について - チャート・マニア・ラボ

 

 その記事では私はビルボードが何を重要視しているかを垣間見ようとする調査を行いました。BillboardTwitterから“History”という言葉で検索をかけ、ビルボードがどのようなことを「歴史的」と称して報道していたのかを調べました。(期間:2018/1/1 ~ 2018/10/16)

 

・Lil Wayne 史上初のトップ5に2曲デビュー (2回配信)

Carrie Underwood女性カントリー歌手として最多のアルバム1位

・Drake 同じ年における累計1位週数を更新 (29週)

Eaglesの“Their Greatest Hits 1971-1975”が史上最も売れたアルバムに

・Meant To BeがHot Country Songsでの1位滞在が歴代最長に (2回配信)

・Meant To BeがHot Country Songsでの1位滞在が歴代最長タイに

・Camila Cabelloが史上初めてデビューアルバム最初の2シングルでPop & Adult Pop系ラジオを制する

・BLACKPINKが韓国語で歌うガールズグループとしては初のHot 100

・Florida Georgia Lineが史上初めてHot Country Songsのトップ10に3曲エントリー 

Kanye Westが歴代最長タイの8連続アルバム1位 (後にEminemに抜かれる)

・Imagine Dragonsが史上初めてアルバムから3曲がAlt、HAC系統のラジオ両方を制す 

・Meant To BeがHot Country Songsでの1位滞在がデュオで歴代最長に(2回配信)

・Imagine Dragonsの曲が4曲1年以上Hot 100に滞在=史上最多

・J. Coleが史上初めてトップ10圏内に3曲が「デビュー」する

BTS・EXO・NCTがSocial 50トップ3支配。K-Popがトップ3を支配するのは史上初

BTS・EXO・Wanna One・Got 7 4組がSocial50のトップ10に入る (3回配信)

・Bruno MarsがUsherを抜いて男性としてラジオ最多1位を記録 (2回配信)

・MigosがHot 100に14曲同時エントリー グループとして史上最多タイ

・Cardi B、最初のHot 100エントリー3曲が全てトップ10入り (ラッパーとして初)

 

 

 実際に重要度の高い項目もありますが、ジャンル名や組分けなどを「工夫」して区分がニッチすぎる記録など、あまり重要でもない項目もあります。

 その一つとして浮かび上がるのはHot Country Songs関連です。①の項目で説明したように、2012年にほぼチャートが別物になったので、事実上まだ6年目と歴史の浅いチャートですが何度もこれに関して「歴史的」と称しています。特に「デュオで歴代最長のHot Country Songs1位支配」はニッチに細かく区切りすぎと感じました。

 

 上記の調査はあくまで一つの手法にすぎず、これだけでビルボードの報道の傾向が掴めるわけでもないことは思います。ただ、他の記事でもビルボードがHot ○○ Songsを好んで報じる傾向が見られます。(ビルボードのサイトのChart Beatという項目をクリックすると、いくつかジャンル別の1位のニュースが出てくる)

 昨年末にリリースされた「数字で振り返る今年のチャート」という記事では、このHot ○○ Songs関連の記録を二つ取り上げ、このチャートを重要視していることが伺えました。

(参考:それに対する私が「選び直した」 数字で振り返る今年のチャート:数字で振り返る今年のチャート 【ビルボードの記事をアレンジ】 - チャート・マニア・ラボ

 

 “Old Town Road”はHot Country Songsから外されていた翌週、Hot 100で15位までジャンプアップしました。そのままHot Country Songsに残っていたとすれば、Luke Combsの”Beautiful Crazy”を抜いてこのチャートの首位に立っています。

 この曲は現在ストリーミングで絶好調で、今後も順位を伸ばしそうです。30位前後が関の山になることが多い(カントリー系ラジオでしかかからない曲はそれくらいの順位になる)他のカントリー曲を尻目にHot Country Songsの首位に立ち続ける可能性が非常に高かったのです。これが実現すれば、ビルボードは過去の傾向からこの“Old Town Road”の記録を多く報道する可能性が高かったです。

 

 今回の“Old Town Road”のジャンル変更は、ビルボードは従来通りの理論に基づいてジャンルを変更しているという点から特に問題は無いと考えました。さらに、今回焦点となったHot ○○ SongsはHot 100を見ていればあまり参照する必要が無いと考えており、やや優先度が低いチャートと私は捉えています。

 ただしビルボードは今後もHot ○○ Songsに関する報道を多く行っていくのであれば、それ相応の説明が必要ではないか?とも感じています。今回の問題にきちんと向かい合い、ジャンル分けの理論などの説明を行う必要もあるのかなと考えました。

 

 

☆ さらなる議論 ~真犯人はラジオ!?~

 

 今回の記事でジャンル分けの判断の理由になったのはラジオということを述べました。最初にリンクを貼った記事の中では、Rolling Stone誌は唯一ラジオについて言及しています。それは、「そもそもラジオにかける / かけない」の時点でバイアスがかかっているのではないか?という内容でした。ポップ系ラジオではブラック系のアーティストをかけるのを躊躇うと認める者がいた、ということなどを例に挙げ、Hot ○○ Songsにおける判断基準となっているラジオの選曲への疑問を提示したのです。

 

 この“Old Town Road”に代表されるようなジャンルレスな曲も台頭し始めた昨今、たしかにジャンルで曲を分けるという習慣も考え直す時期なのかもしれません。仮に今後、そのような議論が進んだ時には、多くのジャンル別チャートをリリースしてきたビルボードがどのような対応を見せるかに注目したいです。

 

 

 

 

*1:「関東のみ」はここだと最メジャー=Hot ○○ Songsが無いポップにあたるので例として不適切……???

Hot 100 3/30 見どころ 【Jojiの”SLOW DANCING IN THE DARK"がついにHot 100デビュー】

 

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 こんばんは!今週最大のトピックはJojiの“SLOW DANCING IN THE DARK”がついにHot 100に入ったことでしょうか!

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Jojiの“SLOW DANCING IN THE DARK”がついにHot 100に登場!(96位)彼にとって初のHot 100、88risingメンバーがHot 100入りするのも初

・Iggy Azaleaの“Sally Walker”が62位に登場

・“Old Town Road”が好調(52位→31位)

・アルバム1位は引き続きJuice WRLD

 

・今週のトップ10

      3月30日   R D S
-   1 Ariana Grande 7 rings 2 6 1
  2 Halsey Without Me 1 7 8
  3 Post Malone & Swae Lee Sunflower 10 4 2
4 Post Malone Wow. 7 2 4
  5 Cardi B & Bruno Mars Please Me  8 9 7
  6 Marshmello & Bastille Happier 6 17 11
  7 Lady Gaga & Bradley Cooper Shallow 12 1 24
8 Jonas Brothers Sucker  19 3 12
  9 J. Cole MIDDLE CHILD 🍎✅ 34 24 6
10 Meek Mill feat. Drake Going Bad 18 32 10

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

(※🚩の“Murder On My Mind”は今週Hot 100でトップ10に入っていない)

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

(※ラジオで伸びが大きいと曲自体のポイントはマイナスでも◎がつくことがあります。今週の“Sucker”はそれに該当します)

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆96 Joji – SLOW DANCING IN THE DARK

 Jojiの“SLOW DANCING IN THE DARK”が96位に登場!リリースから約半年が経過。100位に近づいたことはありましたが、Hot 100デビューは今週が初です!彼にとって初のHot 100、また88risingメンバー内でも初のHot 100入りです。

 電子レンジのように低速で回転するというムーブメント、#microwavechallenge の効果によるストリーミング増がHot 100入りの理由と思われます。また、このムーブメントが無くとも元から一定のストリーミングは記録しており、リリース以降アメリカのSpotifyランキング圏内に入り続けています。(ただしクリスマス曲にストリーミングが集中するクリスマス期は除く)つまり、元からの曲への支持に加えミームがプラスされ、Hot 100に入るような規模の再生を記録した、ということでしょうか。

 

 日本のアーティストとしては歴代で12回目のHot 100入り。2016年にピコ太郎が久々にHot 100入りして以降は比較的ハイペースで日本人シンガーがHot 100入りを果たしています。(そしてピコ太郎以来の日本人男性シンガーのHot 100入り)

(彼の出身は大阪ですが、音楽キャリアを始めたのはアメリカです。)

 

☆歴代の日本人Hot 100エントリー

1963年 坂本九Sukiyaki (🗻1位・⏰14週)

1963年 坂本九 – China Nights (🗻58位・⏰3週)

1979年 ピンクレディー – Kiss in the Dark (🗻37位・⏰11週)

1980年 YMO – Computer Game Theme from The Circus (🗻60位・⏰9週)

1981年 横倉裕 feat. Patti Austin – Love Light (🗻81位・⏰3週)

1981年 オノ・ヨーコ – Walking On Thin Ice  (🗻58位・⏰10週)

1990年 松田聖子 feat. Donnie Wahlberg – The Right Combination (🗻54位・⏰13週)

2016年 ピコ太郎 – PPAP (🗻77位・⏰4週)

2018年 Sofi Tukker feat. Nervo, The Knocks & 植野有砂 – Best Friend (🗻81位・⏰5週)

2018年 John & Yoko/The Plastic Ono Band With The Harlem Community Choir - Happy Xmas (War Is Over) (🗻42位・⏰2週) 

2019年 宇多田ヒカル & Skrillex - Face My Fears (🗻98位・⏰1週)

2019年 Joji – SLOW DANCING IN THE DARK (🗻96位・⏰1週)

 

🗻ピーク順位 ⏰チャート滞在週数

※ただしビルボードはこのコラムで、“Happy Xmas”を日本人のHot 100エントリーとみなしていなかった(宇多田ヒカルのHot 100エントリーを「植野有砂以来の日本人によるHot 100入り」と表記)

 

☆62 Iggy Azalea – Sally Walker

 Iggy Azaleaの“Sally Walker”が62位に登場。SpotifyApple Musicでは注目が薄いですが、ダウンロードとYouTubeで高い数値を記録してHot 100入りを果たしました。彼女の昨年のシングル、”Kream”と似たようなチャートアクションですが、今回はその時よりもDLが高めです。

 この曲で話題になっているのは、Cardi Bの“Money”と似ているという点です。私も聴いてみて、出だしのサウンドで「マジか~~」と思いました。

 興味深いのはこの2曲は同じプロデューサーが担当しているということです。この2曲を担当したJ. Whiteは以前からCardi Bとタッグを組むことが多く、彼女がHot 100で首位を取った“Bodak Yellow”、”I Like It”はいずれも彼がプロデュースを担当しています。

 これに対しては一般人も多くこのことをツイートしています。プロデューサーのJ. Whiteは一般人のツイートのひとつを引用リツイートする形でこの説を否定しています。

 

☆55 ScHoolboy Q – Numb Numb Juice

 ScHoolboy Qの“Numb Numb Juice”が55位に登場。昨年のBlack Pantherのサントラに収録されていた”X”の時以来、約1年ぶりのHot 100です。この曲は主にApple MusicとSpotifyで人気です。

 

▽35 Juice WRLD – Robbery

 先週に引き続き、Juice WRLDがアルバム1位の座を確保しています。トータル売上は7.4万で、その多くをストリーミングから記録しています。うち純セールスは4000程度でした。(Hits Daily Double調べ)

 Hot 100には収録曲4つが今週はランクイン。順位が高いのは先行リリースされていた“Robbery”と”Hear Me Calling”の2曲です。

 次の週も目立ったアルバムリリースが無かったため、このアルバムは次週もアルバム1位になる可能性あり。今週2位の”thank u, next”と次週のアルバム1位の座を争っています。

 

△32 Lil Nas X – Old Town Road

 Lil Nas Xの“Old Town Road”が52位→31位と浮上。ストリーミング・DLを大きく伸ばしています。

 現在Apple Musicの1位まで到達(今週のチャートの集計期間内ではない)しており、今後もストリーミングでの好調は続きそうです。あとはラジオもある程度伸びてくれば、トップ10入りの可能性が高そうです。

 

 そして、今週この曲が「ビルボードスタッフが答える」シリーズのテーマに。質問項目は①このヒットの何が興味深いか? ②どこまでヒットするか? ③彼は今後も成功が続くか? ④この曲が彷彿とさせるのは? ⑤純粋に「曲」としては何点か?

 ビルボードが最近毎週リリースしている「スタッフに聞いてみた」シリーズ、純粋に内容が参考になるだけではなく、「ビルボードが今週のチャートで何を重要と考えているのか」が垣間見えて面白いです。(特に今週のような目立ったテーマが無い週は、「何を選ぶか」に個性が表れるかも……?)

 

△27 Post Malone – Better Now

 ここ数週、Hot 100はダイナミックな動きが少なく、変化があまり無い印象です。そのことから、気づいたらロングヒットになっている曲が多くHot 100に残っています。今週、Hot 100滞在が40週を超えている曲は6つありました。

 

22位 Girls Like You 43週目

27位 Better Now 47週目

33位 Youngblood 42週目

38位 Tequila 46週目

40位 Lucid Dreams 45週目

44位 I Like It 50週目

 

 これらの曲は今後Hot 100滞在が1年=52週まで到達する可能性がありそうです。(53週を越えると、25位以上でなければチャートから外れてしまうため、52週以上チャートに残るのは一気にハードルが上がるため、厳しい)

 特に47週目ながらも比較的上位にいる“Better Now”はチャート滞在1年に最も近い存在と言えそうです。ストリーミングを稼ぎつつ、ラジオでも人気が出たことがロングヒットの要因でしょうか。この曲はラジオ再生が一時期2位まで到達しており、これは昨年Spotify(US)で週間1位になった曲の中では最も高いです。(参考

 また、30週目を超えて上位に残っている曲もいくつかいます。これらの曲もこのペースを保てれば滞在が52週まで到達しそうです。

 

6位 Happier 31週目

12位 Eastside 36週目

13位 SICKO MODE 33週目

14位 High Hopes 33週目

 

 うち“High Hopes”はラジオでロングヒットとなっており、今週アダルトポップ系統で15週目の1位を記録しています。これは2010年代では最長、歴代では7番目の長さです。この系統で最も長く1位を記録していた曲はSantanaの”Smooth”(25週)です。

 

△16 YNW Melly – Murder On My Mind

 少し前に殺人の容疑が浮上したYNW Melly。その結果、容疑とクロスオーバーする曲名の“Murder On My Mind”がストリーミングでヒット。4週前にHot 100で14位まで到達していました。

 その後もApple Musicで1位になり、今週もYouTubeで1位を記録するなど高いストリーミングをキープしていますが、トップ10には届かない状況が続いています。これはストリーミング以外のポイントがあまり無いからです。

 DLの数字もあまり高くないですが、もっと低いのはラジオ。ストリーミングで人気を集めHot 100でも上位に入る曲ながらもラジオでかかっている形跡があまり確認されません。これは殺人容疑のかかった人物の、さらにそれを彷彿させる曲をかけたくないという倫理的な理由からかかっていないのだと思われます。SpotifyApple Musicのプレイリストも同じくこの曲をプレイリストに入れていません。

 Hot 100では複数の分野からバランスよくポイントを得ている曲が評価されやすいので、ポイントに偏りがあるこの曲は上位に入ることができないのです。

 Hot 100の複合的な集計システムが、図らずも倫理的に問題のある曲の上位進出を阻むことになりました。(いくら状況にマッチしているとはいえども、殺人容疑が再生数増につながる、という点がそもそも個人的にかなり不思議でしたが……)

 

 

△10 Meek Mill feat. Drake – Going Bad

 Meek MillとDrakeの“Going Bad”が10位へ浮上。アルバムのリリース時に6位で登場して以来のトップ10入りです。リリース以降、ストリーミングで高い数値をキープしたままある程度ラジオが伸びてきたことが要因です。今週リズミック系統で1位になっています。

 また、今週のトップ10が若干「デフレ」だったのも理由かもしれません。今週のトップ10のうち「登り調子」なのは2曲のみ(“Going Bad”と”Wow.”)で、それ以外の曲は下がり調子です。先のLil Nas Xの記事でもビルボードのスタッフが「現在のトップ10は弱め」と発言しています。(それを理由に”Old Town Road"の将来的なトップ10入りを示唆している)

 

 アルバムリリースのタイミングでストリーミングを集め、高い順位で登場するものの、その後は勢いをキープできず尻すぼみに終わってしまうシングルもありますが、この曲は「アルバムの曲」としても「ラジオのシングル」としても2回ピークを迎え、どちらでも成功を収めました。

(ストリーミングではアルバムがリリースされるタイミングで再生数のピークが来る場合が多い。ラジオでシングルカットされていても、あまりストリーミングの再生数に影響を及ぼさない場合も多いです。例えばDrakeの“Mob Ties”はアルバムリリースから時間が経ってからシングルカットされたが、アルバムリリース時の再生数に及ばないどころか、ストリーミングのランキング圏内にもあまり入らなかった)

 

▽8 Jonas Brothers - Sucker

 2週連続でラジオ再生数の伸び幅が最大となったJonas Brothersの“Sucker”。しかしストリーミングの数値が落ちていることからHot 100では1位→6位→8位と少しずつ順位を落としています。

 Spotifyでは現在もトップ10を保っているものの、Apple Musicでは20位前後。むしろリリース時のストリーミング成績(SpotifyAppleYouTubeすべてで1位)が出来過ぎだったので、このストリーミング数でもポップスとしては十分好成績だと思います。

 ストリーミングが落ち着いてきた以上、1位への再浮上は厳しいかもしれませんが、ラジオで好調な以上ある程度は上位に留まりそうです。そろそろ順位の下降も止まりそうです。

 

△4 Post Malone – Wow.

 Post Maloneの“Wow.”が5位→4位と少し浮上でピーク更新。Roddy RicchとTygaが参加したリミックスや、火曜日にリリースされたビデオなどの効果です。

 Roddy Ricchはコンプトン出身のラッパー。昨年12月にMeek Millの客演としてHot 100に初登場。自身の曲ではHot 100に登場したことがないものの、“Die Young”、”Every Season”、“Project Dreams”など複数曲がストリーミングで結果を残しています。この曲ではリミックスではなく、オリジナルの方がメインと判定されHot 100でfeat.などのクレジットはされていません。

 この曲は現在ストリーミング、ラジオ共に「脂が乗っている」まさにピークといった状況。現在ポップス系ラジオでの再生数は増加、リズミック&アーバン系では減少、トータルで見ると若干ラジオ再生数が減っているようですが、規模が大きいポップス系で伸びている以上、まだラジオの伸びしろはあります。ラジオ次第ではHot 100首位の可能性も……?

 

×× Kehlani feat. Ty Dolla $ign – Nights Like This

 Kehlaniの“Nights Like This”が今週チャートから外れました。ピークは67位、チャート滞在は9週でした。Kehlani自身の曲では、映画Suicide Squadのサントラに収録されていた”Gangsta”に次いで2番目に長いチャート滞在です。(客演だとCardi Bとの“Ring”が20週目まで滞在していた)

 この曲は海外でもヒットし、イギリスでは自己最高位を記録しています。(25位)また、Hot 100での順位が落ち始めたタイミングからラジオでかかり始めています。(現在リズミック系ラジオで23位) もしかしたらそのラジオの伸びによってHot 100に再登場するかもしれません。

 

Kehlaniは先日、初の子どもを授かりました。

 

×× Billie Eilish – when the party’s over

 Billie Eilishの”when the party’s over”が今週チャートから外れました。ピークは52位、チャート滞在は20週です。

 ラジオでのオンエアはあまり無かったものの、ストリーミングの熱狂的な支持に支えられチャート滞在20週に到達。この曲だけでなく、過去曲を含む他の曲もストリーミングで人気を得ており、Billie Eilishというアーティストに対しての熱意が大きな要因だと思います。(Chartdataのブログに寄稿するAlexander氏は「ストリーミングではどのアーティストが人気を集めているのかが浮かびやすい」と分析

 そんなストリーミングの熱狂に支えられたこの曲ですが、20週と「満期」を迎えたためチャートから外れました。今週末に彼女のデビューアルバムがリリースされるのですが、そのストリーミング数次第ではチャートへの再登場の可能性(=50位以上の成績を記録)もありそうです。このアルバムがチャートに反映されるのは2週間後です。30万程度のトータル売上でのアルバムチャート首位デビューが予想されています。

 

 ちなみにこの曲はこのタイミングでようやくポップ系ラジオのチャートに登場しました。(せっかくラジオでかかり始めたのにHot 100であまり恩恵を受けられず……)今まで彼女の曲はオルタナティブロック系ラジオでかかっていたのですが、ポップ系ラジオに登場するのはこれが初です。

 

×× Gucci Mane, Bruno Mars & Kodak Black – Wake Up in the Sky

 Gucci ManeがBruno Mars、Kodak Blackとタッグを組んだ“Wake Up in the Sky”がチャートから外れました。ピークは11位、チャート滞在は26週でした。

 リリース時からストリーミングで好調。さらにリズミック、アーバンなどのラジオで注目を集めて上位へ浮上。Bruno Mars効果か、ある程度ポップ系ラジオでもかかっていました。しかしトップ10にはわずかに及ばず11位止まりでした。

 11位はGucci Mane自身の曲としては”I Get the Bag”と並んで最高位。客演ではRae Sremmurdの“Black Beatles”で1位に立っています。

 

 

今週チャートから外れた曲 (7曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Lady Gaga – Always Remember Us This Way (🗻41位 /⏰9週)

95 Kehlani feat. Ty Dolla $ign – Nights Like This (🗻67位 /⏰9週)

94 Billie Eilish – when the party’s over (🗻52位 /20週)

91 Juice WRLD – Flaws And Sins (🗻91位 /⏰1週)

90 Luke Bryan – What Makes You Country (🗻54位 /⏰11週)

65 Juice WRLD – Maze (🗻65位 /⏰1週)

48 Gucci Mane, Bruno Mars & Kodak Black – Wake Up in the Sky (🗻11位 /⏰26週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

153 Chief Keef & Zaytoven – Glotoven

154 Jerry Garcia Band – Electric On The Eel

 

 新登場がとても少ない週です。今週は長期滞在関連の節目を迎えた作品もありあませんでした。

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

 

総合:Jonas Brothers – Sucker

ポップ:Jonas Brothers – Sucker

アダルトポップ:Jonas Brothers – Sucker

リズミック:2 Chainz feat. Ariana Grande – Rule the World

アーバン:2 Chainz feat. Ariana Grande – Rule the World

カントリー:Chris Stapleton - Millionaire

 

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

Polo G feat. Lil Tjay – Pop Out

 現在ストリーミングで支持を得ている曲。ラジオでもかかり始めており、今後のHot 100入りに大きな期待が。 

 

・NAV feat. Meek Mill – Tap

・Rich the Kid feat. Young Thug & Gunna – Fall Threw

 今週ストリーミングで人気を集めたアルバム曲。NAVのアルバムからは複数曲がHot 100に登場しそうです。

 

・Bebe Rexha – Last Hurrah

・David Guetta feat. Bebe Rxha & J Balvin – Say My Name

 101位~125位相当のチャート、Bubbling Underに複数曲が登場したBebe Rexha。前者はポップ系ラジオとSpotify、後者はYouTubeで人気。

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

あと今週はHits Daily Doubleというサイトも多く参照しました

 

 

Hot 100 3/23 見どころ 【Juice WRLDがアルバム1位 + CHVRCHESがHot 100入り】

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  こんばんは!

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

CHVRCHES、Marshmelloとのコラボで初のHot 100入り

・Juice WRLDがアルバム1位、7曲がHot 100に

SICKO MODEがトップ10に残り、32週目のトップ10滞在に。歴代3位タイの長さ

・”7 rings”が首位返り咲き。先週1位の“Sucker”は6位へ

・“Mo Bamba”、”Leave Me Alone”などがチャートから外れる

 

・今週のトップ10

      3月23日   R D S
  1 Ariana Grande 7 rings 3 5 1
  2 Post Malone & Swae Lee Sunflower 9 4 2
  3 Halsey Without Me 1 10 8
  4 Cardi B & Bruno Mars Please Me 🚩 11 6 4
5 Post Malone Wow. 6 3 10
6 Jonas Brothers Sucker ✅ 27 2 9
  7 Marshmello & Bastille Happier 5 15 14
  8 J. Cole MIDDLE CHILD 41 20 5
  9 Lady Gaga & Bradley Cooper Shallow 14 1 21
-   10 Travis Scott SICKO MODE 25 30 7

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

🍎=Apple Musicで1位 ✅=Spotifyで1位 🚩=YouTubeで1位

(今週のApple Music1位はHot 100で17位のYNWの“Murder On My Mind”)*1

 

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

※◎はポイントが総合的に落ちていても、ラジオの伸びが大きいとつくケースがあります。今週の“Sucker”はそれに当てはまると思います。(1-4位が全てマイナスで、先週1位だった”Sucker”がポイント増ならば6位に落ちているのは整合性が取れない)

 つまり、実際にポイントが増えたトップ10曲は“Wow.”のみで、かなりデフレな週ということが分かります。

 

1~100位までの順位表は↓

 

 

曲の個別解説

 

☆96 Lil Peep & iLoveMakonnen feat. Fall Out BoyI’ve Been Waiting

 故Lil Peep、iLoveMakonnenとFall Out Boyによる“I’ve Been Waiting”が96位に登場。この面々だとポップパンクの精神を受け継いだラップ、エモラップ調の曲か?と連想されますが、そうではなくエレポップ調の1曲です。

 かかっているのもポップ系のラジオで、そこから大きくポイントを得ています。ストリーミング等ではまだあまり数字が伸びていません。

 Lil Peepにとって、訃報の直後にエントリーした“Awful Things”、XXXTENTACIONとの”Falling Down”に次ぐ3曲目のHot 100エントリーです。

 iLoveMakonnennは2014年の“Tuesday”以来2回目のHot 100エントリー。Fall Out Boyは20曲目のHot 100です。

 

 

☆92 Pedro Capó & Farruko – Calma

 ラテン界隈の大ヒット、“Calma”が92位に登場。Pedro Capóの原曲にFarrukoがリミックスで加わったことによって大ヒットしました。この曲は今年の1月~2月に合計4週間、YouTubeのグローバル再生数の週間1位に立っています。ほかSpotifyでもグローバル再生数で最高5位まで到達しています。

 アメリカでは若干人気が出るまでタイムラグがありましたが、ラテン系ラジオの再生数が増えたことなどによってHot 100に到達しました。Pedro Capóは初のHot 100入りです。Farrukoは“Krippy Kush”に次いで2曲目。

 

☆88 Lee Brice – Rumor

 今週のカントリーラジオの浮上曲。Lee Briceの“Rumor”が88位に登場しています。カントリー曲はポイントの多くをラジオから得ているため、ラジオの動向とHot 100順位がかなり比例します。

 順位が落ちる時もラジオと「運命共同体」です。Midlandの“Burn Out”は先週Hot 100で63位でしたが、ラジオの数値が一気に落ちたため今週Hot 100圏外になってしまいました。

 

☆85 FLETCHER – Undrunk

 ここ数週ポップ系ラジオで人気を集めていたUS出身のポップシンガー、FLETCHERの“Undrunk”が85位でHot 100に登場。彼女にとって初のHot 100入りです。

 あまりヒットの実績が無いながらも、彼女は昨年Spotifyの有名プレイリストNew Music Fridayのサムネに抜擢された経験があります。現在Spotifyはヒットの兆しを見せたこの曲を有力プレイリスト“Today’s Top Hits”のリスト上部に浮上させています。この恩恵か、ここ数日Spotifyでの再生数が大きく伸びています。

 

☆77 Khalid – My Bad

 Khalidの“My Bad”が77位に登場。これでKhalidはHot 100にエントリーした曲数が20まで到達しました。

 彼は最近アルバムのリリースも発表。タイトルは“Free Spirit”でリリースは4/5です。既にリリースされたシングルの中ではこの”My Bad”、“Better”、”Talk”、“Saturday Nights”がアルバムに収録されるようです。

 リリース時はどこまでストリーミングで人気を集めるか?にも注目です。競合次第ですが、アルバム1位も十分射程圏内だと思います。

 

☆75 Marshmello feat. CHVRCHES – Here With Me

 MarshmelloとCHVRCHESのコラボ、“Here With Me”が75位に登場。CHVRCHESは初のHot 100入りです。

 “Happier”の成功を受けてMarshmelloは再びイギリスのバンドとタッグ。CHVRCHESを初のHot 100入りに導きました。この曲は主にポップ系ラジオ、Spotifyで人気です。ほかCHVRCHESがいる効果からか、オルタナティブロック系のラジオでもかかっています。

 この現象は“Happier”でも見られました。幅広い系統のラジオでかかると人気が長持ちし、ロングヒットになる傾向があります。”Happier”は今週30週目ながらも8位と上位をキープしています。

 

◇72 Lil Baby – Pure Cocaine

 Lil Babyの“Pure Cocaine”がビデオ公開で72位に再登場しています。この曲はリリース以降Apple Musicで高い人気をキープしています。

 ラジオでのLil Babyのメインのシングルは長く“Drip Too Hard”ですが、それ以外の曲もビデオをリリースするなどして、プロモーションを行っています。

 ”Close Friends”はアルバムのリリース以降、ストリーミング上における「裏シングル」のような立ち位置を確保し、今週チャート滞在20週目の「完走」を迎えています。(チャート滞在の最後のほうになってようやくラジオでかかり始めた)

 ラジオとストリーミングのヒットの周期、リズムはかなりズレているのでこのようにラジオ以外での場面用のシングルを用意することが得策になるケースもあります。この戦略は昨年Juice WRLDも行っていました(ラジオでのシングルは長く“Lucid Dreams”のみだった)

 ただし、ストリーミングで複数の曲が人気になるアーティストにしかできない芸当です。

 

◇61 Maren Morris – GIRL

 Maren Morrisがセカンドアルバム“GIRL”をリリース。その表題シングルがHot 100で61位に再登場しています。元からラジオで人気だったことに加え、アルバムリリースの効果でDLやストリーミングが伸びました。

 アルバムは4.6万の総合セールスで4位にランクイン。うち純セールスは2.5万枚。ストリーミングでもある程度は人気を得ていたようです。

 

☆41 Juice WRLD – Empty

 Juice WRLDのセカンド、“Death Race For Love”がアルバムチャートで首位に!総合セールスは16.5万で、うちストリーミングから12.0万、純セールスは4.3万でした。(残りはシングルDL)

 ストリーミングの数字は再生数に直すと1億7644万で、Ariana Grandeの"thank u, next"に次いで今年2番目に多い数字です。

 ラッパーとして純セールス4.3万は若干多い部類に入ります。今年アルバムチャートで1位を獲得した21 Savage、Futureのアルバムの初週の純セールスは2万未満でした。

 アルバムからは7曲がHot 100に。主に人気だったのは先行シングルで、“Robbery”が27位に、”Hear Me Calling”が38位に。それに次ぐのが新登場の“Empty”(41位)、”Fast”(47位)です。

 

 ビルボードはこのアルバムに対して5人のスタッフがJuice WRLDについて語る記事を作成。(これ、シリーズ化するんでしょうか??)

 

 質問項目は ①アルバム首位はJuice WRLDがスーパースターと証明するか? ②代表シングルはどれか? ③22曲アルバムが常態化するのをどう考えるか? ④2019年の彼は?年の誰に相当するか? ⑤次に彼のようにブレイクするのは誰か?

 ④はちょっと分かりづらい質問ですが、一つ回答例を挙げると「Juice WRLDは1999年のBlink-182に相当する」、これを5人がそれぞれ挙げています。

 

 個人的に注目したのは③の項目。「22曲を正当化できるアルバムはほとんど無い」など、5人中4人が「ストリーミング時代特有の長いアルバム」に懐疑的な意見を述べていますが、Andrew Unterbergerさんは昨年“SR3MM”、”Culture Ⅱ“、”Scorpion”などの長尺アルバムを気に入っていたことを例に挙げ、22曲でもこれは良いアルバムだったと述べています。

 

△40 Mustard & Migos – Pure Water

 (DJ)MustardとMigosの“Pure Water”が40位へ浮上。Mustardは、プロデューサーとして既に10曲以上のトップ40ヒットを生み出してきましたが、自身の名義の曲でのトップ40入りは初です。

 この曲はストリーミング全般で人気(AppleSpotifyYouTubeでいずれも20位前後まで到達)のほか、ラップ系のラジオでも人気浮上中です。

 

―10 Travis Scott – SICKO MODE

 Travis Scottが10位をキープ。これでトップ10滞在が32週目を迎え、歴代3位の長さまで到達しました。

(トップ10滞在週数)

33週:Ed Sheeran – Shape of You

33週:Maroon 5 feat. Cardi B – Girls Like You

32週:Travis Scott – SICKO MODE

32週:The Chainsmokers feat. Halsey – Closer

32週:LeAnn Rimes – How Do I Live

31週:Mark Ronson feat. Bruno Mars – Uptown Funk!

 

 トップ10滞在週数が長い曲はラジオの規模が大きいポップスが多く、ラップながらもロングヒットの“SICKO MODE”はレアな存在であることが分かります。ストリーミングは流行サイクルが早いことから、ストリーミングでの人気曲は若干トップ10滞在が短いことも多いですが、この曲はかなり長持ちです。(”YOSEMITE”などの他シングルがあまり際立たたず、長く“SICKO MODE”がシングルで1強の状態が続いたのが大きかったのかも?)

 この曲は今年に入ってからポップ系ラジオでも人気を得ていました。

 

今週の他の上位の動き:Ariana Grandeの”7 rings”が首位に復帰。先週1位だったJonas Brothersの“Sucker”は6位に。ほかPost Maloneの”Wow.”が7位→5位で好調

 

×× Sheck Wes – Mo Bamba

 Sheck Wesの“Mo Bamba”が今週チャートから外れました。ピークは6位、チャート滞在は28週でした。新鋭のラッパーとしてはかなりの成績を残しました。

 彼の表向きのHot 100エントリーはこの曲だけですが、Travis Scottの”No Bystanders"にfeat.表記無しで参加しています。

 Kanye West率いるGood Musicに参加するなど、他のラッパーとの結びつきもありそうなので、今後の活躍に期待です。

 

×× Flipp Dinero – Leave Me Alone

 Flipp Dineroの“Leave Me Alone”がチャートから外れました。ピークは20位、チャート滞在は25週でした。

 ストリーミングで人気を得た後、ラップ系のラジオでも人気を得ましたが、トップ10までは手が届きませんでした。滞在25週はピーク20位の曲としては少し長めだと思います。

 ちなみに今週取り上げたSheck WesもFlipp Dineroも、さらにはJuice WRLDもビルボードで個別ページが用意されておらず、ビルボードのサイト上で細かい過去のチャート遍歴を振り返ることは(現在)できません。(代わりにウィキペディアで閲覧)

 新人アーティスト、特にラッパーの場合は個別ページが無いケースもあります。どういう方針で個別ページを作成しているのかは不明。Juice WRLDはビルボード誌の表紙にもなっているのに、個別ページが無いのは謎……

 

 

今週チャートから外れた曲 (13曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 2 Chainz feat. Kendrick Lamar – Momma I Hit A Lick (🗻100位 /⏰1週)

99 Cody Johnson – On My Way To You (🗻91位 /⏰5週)

98 Carrie Underwood – Love Wins (🗻83位 /⏰8週)

96 Lukas Graham – Love Someone (🗻70位 /⏰10週)

94 2 Chainz feat. Ariana Grande – Rule the World (🗻94位 /⏰1週)

92 Ariana Grande – needy (🗻14位 /⏰4週)

88 P!nk – Walk Me Home (🗻54位 /⏰2週)

82 Juice WRLD – Armed And Dangerous (🗻44位 /⏰17週)

75 2 Chainz feat. Travis Scott – Whip (🗻75位 /⏰1週)

73 Offset – Red Room (🗻49位 /⏰3週)

63 Midland – Burn Out (🗻63位 /⏰9週)

47 Sheck Wes – Mo Bamba (🗻6位 /28週)

45 Flipp Dinero – Leave Me Alone (🗻20位 /25週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Juice WRLD – Death Race For Love

4 Maren Morris – GIRL

21 Tesla – Shock

45 Dido – Still On My Mind

58 Foals – Everything Not Saved Will Be Lost, Part 1

169 Amanda Palmer – There Will Be No Intermission

186 David Gray – Gold In A Brass Age

 

 

チャート滞在関連

1周年:XXXTENTACION - ? (今週31位)

100週目:Kendrick Lamar – DAMN. (今週59位)

200週目:twenty one pilots – Blurryface (今週138位)

300週目:The Rolling Stones – Hot Rocks 1964-1971 (今週170位)

300週目:The BeatlesAbbey Road (今週156位)

 

 

その他

 

・各系統のラジオで最も伸びた曲

 

☆総合 :Jonas Brothers - Sucker

・ポップ:Jonas Brothers - Sucker

・アダルトポップ:Jonas Brothers - Sucker

・リズミック:21 Savage – a lot

・アーバン:2 Chainz feat. Ariana Grande – Rule the World

・カントリー:Brett Young – Here Tonight

 

(この5系統がラジオの中で規模が大きいです。ちなみに「アーバン」とはHip-Hop / R&B系統を指しています)

 Ariana Grandeがアーバン系ラジオのチャートに登場するのはこれが初めて。彼女は自身のシングル”7 rings”もこの系統でかかり始めており、ヒップホップリスナーの間でも浸透し始めるか!?

 

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Bebe Rexha – Last Hurrah

・Mabel – Don’t Call Me Up

 ポップ系ラジオ+Spotifyで人気、という比較的よく見られるパターンのヒットをしている曲。Mabelはスペイン生まれスウェーデン育ちで現在はイギリスをベースに活動しているR&B~ポップスのシンガーです。これらの2曲はSpotifyの有力プレイリスト“Today’s Top Hits”で比較的上位に入っています

 

※“Today’s Top Hits”は昨年「世界」で最も再生されたプレイリストだそうです。

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

 

*1:Apple Musicでは週間チャートが確認できないので、週で最も1位滞在日数が長かった曲を週間1位と扱っている

Hot 100 3/16 見どころ 【Jonas Brothers新曲がHot 100首位に!2003年以来のボーイバンド首位】

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 こんばんは!今週の最大のトピックはJonas Brothersの首位!これはかなり驚きの動向でした。今年のチャートは首位が多く入れ替わり、見応えがある印象です。

 

◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Jonas Brothersの“Sucker”が首位デビュー。彼らにとって初のHot 100首位。2003年のB2K以来、16年ぶりのボーイバンドによるHot 100首位

・“Please Me”がビデオ効果で3位へ浮上

・カントリー風ラップ?の新ミーム候補、“Old Town Road”が83位に登場

・Lil Skiesの“I”が39位と高順位に登場

 

・今週のトップ10

      3月16日   R D S
1 Jonas Brothers Sucker 46 1 1
-   2 Ariana Grande 7 rings 4 5 3
3 Cardi B & Bruno Mars Please Me 11 3 2
-   4 Post Malone & Swae Lee Sunflower 10 4 5
  5 Halsey Without Me 1 10 9
6 Lady Gaga & Bradley Cooper Shallow 22 2 14
7 Post Malone Wow. 8 8 12
  8 Marshmello & Bastille Happier 5 17 16
  9 J. Cole MIDDLE CHILD 43 18 6
- 10 Travis Scott SICKO MODE 16 25 8

 R=Radio、D=Download、S=Streaming

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

1~100位までの順位表は↓

 

曲の個別解説

 

☆93 benny blanco, Tainy, Selena Gomez & J Balvin – I Can’t Get Enough

 Benny blancoなどによる“I Can’t Get Enough”が93位に登場。この曲は主にSpotifyで人気。DLも一定の数字(今週31位)を集めています。

 DJ Snakeの“Taki Taki”のような英語圏シンガー + ラテン系シンガーの組み合わせ。再生数上でメジャーな言語2つを融合させ、両方のリスナーからのヒットを狙う参段でしょうか。(実際”Taki Taki”は4週にわたりSpotifyで世界1位になり、早々にYouTubeで10億再生に到達するなど大ヒットだった。)

 ラテンコラボシングルでSelena Gomezが多く起用されるのは、ラテン系の血を引いているからでしょうか?(イタリア系やメキシコ系) “Taki Taki”で共演したCardi Bも同様にラテン(トリニダード・トバゴ)にルーツを持っています。

 個人的には“Taki Taki”の成功に倣い、プロデューサー + 英語圏シンガー + ラテン系シンガーを組み合わせる曲が今後もいくつか出てくるのでは?と考えています。特にSpanglish(英語とスペイン語のミックス)を歌ったことがあるシンガーに注目しています。例えば……

・David Guetta feat. Ariana Grande, Nicki Minaj & Becky G *1

・Marshmello feat. Camila Cabello, Natti Natasha & Bad Bunny

…… などでしょうか???Ariana Grandeは“The Way”にSpanglishバージョンが存在し、Camila CabelloはPitbullやJ Balvinとの”Hey Mama”でスペイン語ヴァースを担当しています。

 

 この曲に参加しているTainyはレゲトンのプロデューサー。彼は過去にCardi Bの“I Like It”などを担当し、現在はRoc Nationと契約しているそうです。

Tainy Interview: Producer Signs To Roc Nation, Talks Working With J Balvin & More | Billboard

 

☆83 Lil Nas X – Old Town Road

 新ミーム候補!カントリー風ラップなLil Nas Xの“Old Town Road”が83位に登場。この曲は各種ストリーミングで人気(Apple Music、SpotifyYouTubeで100 - 50位程度にランクインしている)

 ビルボードはこの曲に関して単独記事を作成し、ヒットはTikTokの影響が大きいと分析しています。この曲に合わせて、突然カウボーイ姿になるというミームが流行しているようです。

 

 この曲は現在、ストリーミングだけでなくiTunesのダウンロードでもメキメキと伸びを見せており来週以降も順位を伸ばしそうな予感。

 

☆77 City Girls – Act Up

 City Girlsの“Act Up”が77位に登場。主にApple MusicやYouTubeで人気。Spotifyでもギリギリランキング圏内に入っています。

 この曲をプレイリストに先に取り込んだのはSpotify(RapCaviar)でしたが、人気が出たのは違う媒体でした。City Girlsは以前から人気がApple MusicとYouTube > Spotifyな印象です。

 この曲はラジオでかかる、ビデオがリリースされる……などの明確な「シングル化」の動きがあったわけではないですが、シングルのような人気を得始めているようです。

 

☆75 2 Chainz feat. Travis Scott – Whip

 今週のストリーミング人気作品。2 Chainzの新作“Rap or Go to the League”がアルバムチャート4位に登場。3つの収録曲がHot 100に登場しています。

 Kendrick Lamarとの“Momma I Hit A Lick”が100位、Ariana Grandeとの”Rule the World”が94位、そしてTravis Scottとの“Whip”がアルバム内最高位の75位に登場しています。

 先週のチャートに登場したOffsetのアルバムでも、Travis Scottが客演した曲が収録曲の中で一番Hot 100順位が高かったです。彼の勢いを感じます。

(ただし“Rule the World”はビデオがリリースされたので、来週以降順位がこれよりも高くなるかも?)

 

☆74 Billie Eilish – wish you were gay

 Billie Eilishの新曲”wish you were gay”が74位に登場。月曜リリースで今週のチャートでは約4日分の集計です。

 来週は7日分フルで集計されますが、DLやストリーミングの値がそこまで伸びていなそうで(あまりシングルっぽい曲ではないので)、そこまで順位は伸びないかも。

 Billie Eilishは今週“lovely”と”when the party’s over”がHot 100に再登場。いずれも下位で粘った期間が長くチャート滞在が20週近くまで伸びています。(つまりそろそろチャートから外れるかも?”when the party’s over”のほうはアルバムリリース週にチャートに入れない可能性も?)

 

◇72 Imagine Dragons – Bad Liar

 先週まで大量エントリーしていたOffset、Gunnaのアルバム収録曲が全てHot 100から去り、またAriana Grandeのアルバム曲も減少(8曲→4曲)したことから、その空いた枠に入る形で多くの曲が再登場。(計8曲)

 このうち注目はImagine Dragonsの新シングル“Bad Liar”です。この曲はアダルトポップ系などのラジオで注目を集めているほか、SpotifyやDLでもそれなりに人気です。

 この曲は最初のポコポコ音に象徴されるようなポップ寄りのアプローチが強い曲です。Imagine Dragonsは直近の作品では“Zero”などポップ化が進行している印象です。

 しかしその結果、「メインストリームの売れているロックバンドがポップ化」と、「叩かれやすい要素」がそろってしまい、一部で「Imagine DragonsはWorst Band Everなのか?」という議論が盛り上がっています。

Is Imagine Dragons the Worst Band Ever? | SPIN

Are Imagine Dragons really more hated than Nickelback? We suss it out - NME

など……

 

☆56 Juice WRLD – Hear Me Calling

 Juice WRLDがアルバムに先駆けてリリースした“Hear Me Calling”が56位に登場。この曲は主にApple MusicやSpotifyで人気です。

 Juice WRLDのアルバム“Death Race For Love”は来週のアルバムチャートで1位獲得見込みです。ストリーミングで大人気なだけでなく、セールスもそれなりの数字を記録している模様です。(グッズ+音源戦略の可能性もありそうです)

 アルバムリリース以降、SpotifyではJuice WRLD関連曲がランキングに30曲前後登場するなど盛況しています。(Apple Musicでも同様に人気)

 

☆52 Thomas Rhett – Look What God Gave Her

 Thomas Rhettの新曲、“Look What God Gave Her”が52位に登場。この曲はダウンロードを多く集めた(今週7位)ほか、リリース直後からカントリー系ラジオでも人気を集めました。DLでの人気とラジオの人気を早い段階で両立させたことが、1週目から高めな順位に登場した要因だと思われます。

 今週はほか6曲のカントリー曲が再登場or新登場しています。多くは再登場ですが、Morgan Wallenの“Whiskey Glasses”(85位)は新登場。

 

△40 Calboy – Envy Me

 ここ数週中位にランクインしていた新鋭ラップヒット、Calboyの“Envy Me”が40位へ浮上。トップ40入りを成し遂げました。ここ数週で若干ラジオを伸ばしたことによる順位上昇だと思われます。(ストリーミングはあまり変化なし)

 

 ほか先週途中から集計され、今週7日分フルに集計されたSummer WalkerとDrakeの“Girls Need Love”も37位で同様にトップ40入りを果たしています。Drakeは95曲目のトップ40ヒットで、自身が持つ最多トップ40ヒット数の記録を伸ばしています。

 

☆39 Lil Skies – I

 今週ストリーミングで人気だったアルバムその2。Lil Skiesの“Shelby”がアルバムチャート5位に登場しています。そのうち”I”が人気を集めてHot 100の39位に登場しました。アルバムからHot 100に登場したのはこの曲のみでした。

 過去作の“Life Of A Dark Rose”もロングヒットになっており、61週目でアルバムチャート120位につけています。

 

 今週のアルバムチャートで1位だったのはHozierの“Wasteland, Baby!”です。この作品はツアーチケット+音源戦略でセールスを稼いだほか、ストリーミングでも1.0万枚相当と一定の数字を得ています。Hozierは2014年の前作(セルフタイトル)も今週175位に再登場。この作品のピークは2位、滞在は174週目です。

 ほか今週のアルバムチャートではSolangeの“When I Get Home”が7位に登場しています。

 

△3 Cardi B & Bruno Mars – Please Me

 Cardi BとBruno Marsの“Please Me”がビデオリリースの効果で3位に浮上。ビデオの再生が伸びただけでなく、DLも伸びを見せました。

 この曲はYouTubeで今週1位、Apple Musicでも5位前後などストリーミングで高い人気をキープしています。ほかラジオでもかなり数字を伸ばしているため、数週のうちにHot 100首位を獲得する可能性もあるかも?

 

☆1 Jonas Brothers – Sucker

 Jonas Brothersの“Sucker”が驚きのHot 100首位デビュー。彼らにとって初の首位で、ボーイバンドとしては2003年のB2Kの”Bump Bump Bump”以来のHot 100首位です。

 ほかのボーイバンドの代表例はOne Directionですが、彼らはHot 100の首位を獲得したことがなく、“Best Song Ever”での2位が最高位です。(後にZaynはソロの”Pillowtalk”で首位を獲得。 ちなみに、Louis Tomlinsonの新曲“Two of Us”がチャートに反映されるのは今週ですが、Hot 100に登場せず)

 ほかビルボードはThe Wantedが“Glad You Came”での3位、5 Seconds of Summerが”Youngblood”での7位、BTSが“FAKE LOVE”での10位……などを近年のボーイバンドでの目立った活動実績として挙げています。

 Jonas Brothersは2013年以来、6年ぶりのHot 100エントリー。ここ数年はNick Jonasがソロ、Joe JonasはDNCEというバンドを組んで活動していましたが、久々の再結成ということで注目を集めたようです。ただNick Jonasのソロ曲、そしてDNCEの曲はここ最近Hot 100にも登場しないことが多かったので、再結成で一気にここまで盛り返すのは完全に予想外でした。

 彼らは今までトップ10を何曲か獲得したことはありましたが、いずれも初週がピークで次第に順位を落としています。この曲は次週以降どのようなチャートアクションになるでしょうか?既にポップ、アダルトポップなどの複数ラジオ系統で人気が出てきているのである程度は長持ちしそうです。

 

 ビルボードはこの曲に関する話題にスタッフが答える、という記事を作成。

 

質問項目は、

① この曲のヒットの驚きを10段階で表すと?

② ヒットの要因として考えられるのは?

③ “Sucker”はJonas Brothersのヒットの中でベストかどうか?

④ 今後もJonas Brothersは成功を収めるか?

⑤ One Directionはいつ活動再開するか? (ボーイバンド関連という理由で)

 

 個人的に注目したのは②でChris Payne氏が答えた内容。彼はこの曲のヒットについて、「大人っぽい曲を聞きたい25歳くらいのポップリスナーによくハマった」と分析。おそらくこの世代はティーンの時にJonas Brothersにハマっていた世代なので、「ティーンの時のアイドルが驚きの進化を遂げて今のムードにハマる存在になった」ということでしょうか。

 

「ボーイバンドの女性ファンたちは、 少年たちの芸能活動や豪華なセレブ・ライフとともに、若者特有のアナーキーな行動や失敗の乗り越え、搾取的契約の下の我慢や努力といった通過儀礼を経て少年から青年へ、大人の男性へと 成長していく過程を同時代的に体験すること自体を楽しんでいる(Brabazon, 2012:57)」

 という記述における、「大人になったJonas Brothers」を体現しているような曲だと思います。自分たちと共に成長をしたJonas Brothersに感慨深さを感じているのかもしれません。 (ここの引用は孫引きです、すいません。 この論文で見つけました。)

 

 この曲は数々のヒットを担当してきたRyan Tedderがソングライト。そしてプロデューサーはFrank Dukes、Louis Bellと「いま風」な面々が担当。盤石な布陣で、現代へのポップ環境への融合を先行させたことが成功の要因でしょうか。

 

  今年はこの曲など、ポップス曲が絶好調。1週”Sunflower”が首位を獲得した週を除き、2019年に入ってからはそれ以外の週でポップスがHot 100首位を独占しています。(10/11週) ちなみに2018年は計18週でポップスが1位でした。

 

 

☆(おまけ)Offsetのツッコミ?

 OffsetはTwitterのチャート情報をツイートするアカウント、@Chartdataに対して以下のようなリプライを送りました。

 

「”Sucker”は今世紀初のHot 100首位デビューを果たしたグループの曲です」

「違う、Migosの“Bad and Boujee”を忘れたのか?」

 

 これ、どちらが間違っているか分かりますか?正解なのは@Chartdataのほうで、Offsetは「デビュー」の文字を見落としています。(“Bad and Boujee”は次第にチャートを駆け上がって首位になった)

 Offsetは「ひっかけ問題(?)」に引っかかってしまったということです。*2

 ちなみに1998年にAerosmithが“I Don’t Want to Miss a Thing”で首位デビューを成し遂げているので、「初」ではなく「今世紀初」になります。

 Offsetが一般リスナーと同じように一般アカウントの@Chartdataを見て情報を追っているのは興味深いです。(公式アカウントではなく、非公式のソースのほうを見ているという点で)Cardi Bも以前、@Chartdataで自身のHot 100首位を確認するという様子が上げられていたので、夫婦そろってこのアカウントをチェックしているのかもしれません。 (謎の親近感)

 

×× The Chainsmokers & Kelsea Ballerini – This Feeling

 The ChainsmokersとKelsea Balleriniによる“This Feeling”が今週チャートから外れました。ピークは50位、チャート滞在は20週でした。

 この成績だとThe Chainsmokersの曲としては不足感があるかもしれませんが、ここ最近のシングルだと最高の成績です。2018年以降のシングルはこの曲以外はいずれも10週未満でHot 100から姿を消しています。

 ほかのシングルと比べるとこの曲はラジオである程度人気を集めていたので長持ちだったのかもしれません。次シングルの“Who Do You Love”も現在ラジオで好調なので、それなりにヒットするかもしれません。

 ほか今週は“Nothing Breaks Like A Heart”や”Backin’ It Up”などがチャートから外れています。

 “Nothing Breaks Like A Heart”はピーク43位、チャート滞在13週という成績。Mark Ronson + Miley Cyrusという注目アクトの曲ということで、リリース直後は注目を集めましたが、ストリーミングの調子が長く続かずラジオも落ちてきたので今週チャートから外れてしまいました。

 “Backin’ Up”はピーク40位、チャート滞在20週でした。Pardison Fontaineという新鋭ラッパーの曲ですが、Cardi Bが客演ということで注目を集めトップ40まで到達。ラジオ人気も伴いヒットになりました。新鋭としては上々の記録を残しましたが、年間チャートには少し手が届かなさそうです。

 

今週チャートから外れた曲 (20曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

97 Gunna feat. Playboi Carti – Same Yung N***a (🗻97位 /⏰1週)

94 John Mayey – I Guess I Just Feel Like  (🗻94位 /⏰1週)

93 Ariana Grande – bloodline (🗻22位 /⏰3週)

91 Gunna – Speed It Up (🗻91位 /⏰1週)

90 Ariana Grande – bad idea (🗻27位 /⏰3週)

86 Offset – Lick (🗻86位 /⏰1週)

85 Ariana Grande – imagine (🗻21位 /⏰8週)

84 Mark Ronson feat. Miley Cyrus – Nothing Breaks Like A Heart (🗻43位 /⏰13週)

78 Gunna – One Call (🗻56位 /⏰2週)

77 The Chainsmokers & Kelsea Ballerini – This Feeling (🗻50位 /20週)

75 Gunna – Wit It (🗻75位 /⏰1週)

74 Gunna feat. Lil Baby – 3 Headed Snake (🗻74位 /⏰1週)

72 Lil Pump feat. Lil Wayne – Be Like Me (🗻72位 /⏰1週)

70 Gunna – Outstanding (🗻70位 /⏰1週)

68 Ariana Grande – NASA (🗻17位 /⏰3週)

65 Offset feat. J. Cole – How Did I Get Here (🗻65位 /⏰1週)

64 Offset feat. Cardi B – Clout (🗻64位 /⏰1週)

62 Lady Gaga – I’ll Never Love Again (🗻36位 /⏰7週)

49 Offset feat. Travis Scott & 21 Savage – Legacy (🗻49位 /⏰1週)

48 Pardison Fontaine feat. Cardi B – Backin’ It Up (🗻40位 /20週)

 

 

・アルバムチャート(Billboard 200)に新登場した作品

1 Hozier – Wasteland, Baby! 🎫

4 2 Chainz – Rap Or Go To The League

5 Lil Skies – Shelby

7 Solange – When I Get Home

16 Tom Petty And The Heartbreakers – The Best Of Everything; The Definitive Career Spanning Hits Collection

19 Weezer – Black Album

25 DaBaby – Baby On Baby

55 Demon Hunter – War

61 Demon Hunter – Peace

74 Highlands Worship – Jesus You Alone

110 Queensryche – The Verdict

115 T-Pain – 1UP

121 In Flames – I, The Mask

140 TOMORROW X TOGETHER – The Dream Chapter: Star (EP)

 

・アルバムチャート長期滞在関連

1周年:Lynyrd Skynyrd – All Time Greatest Hits (今週161位)

 

その他

 

・今週ラジオで伸びた曲

Lady Gaga & Bradley Cooper – Shallow

(Kworb~~戻ってきてくれ~~)

 

・来週以降Hot 100に入るかもしれない?曲

 

・Joji – SLOW DANCING IN THE DARK

 今週再びHot 100に接近(103位相当)。DLやストリーミングで分かりやすい伸びは見せていませんが、最近この曲を使った#microwavechallenge というムーブメント(電子レンジのごとくゆっくり回転する)が盛り上がっており、これの効果だと推測されます。

 この調子で念願のHot 100デビューなるか???

 

・Juice WRLD – Empty

・Juice WRLD – Fast

 来週はJuice WRLDのアルバム曲が多く登場する見込み。上記の2曲は有力そうな新曲。ストリーミングの数値から見て、収録曲のうち7曲程度がHot 100に入るでしょうか??

 

※アルバムと最後の曲について

 ストリーミングで人気のアルバムといえど、(特に長尺作品での)最後の曲ともなると再生数が伸び悩む傾向にあります。しかしこのアルバムの最後の“Make Believe”はSpotifyで有力プレイリストのRapCaviarに入ったこともあり、長尺アルバムの最後の曲としてはかなり奮闘しています。プレイリストの有効な利用法の一つかも?

 Ariana Grandeのアルバムは最後にシングルが固まって配置されていましたが、これはアルバムが通しで聞かれないのを改善するための作戦だったのかもしれません。

 

 

ビルボードによる今週のHot 100 / アルバムチャート解説(記事を書くうえで参考にしています)

 

 

  

 

*1:この3人は何らかの形でDavid Guettaとの共演歴がる。Ariana Grandeは“One Last Time”がDavid Guettaのプロデュース

*2:個人的には「デビュー」かどうかはそこまで拘ることでもないと考えています……たしかに、デビューという言葉を足すことで新しい「初」の記録を生み出すことができますが、些末な記録が多すぎると混乱が生じるのでは?と考えています