チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Spotifyグローバルトップ10曲を4パターンに分類 [2019]

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  この記事では昨年(2019年)のSpotifyグローバルのトップ10曲を分類し、そのうち「上昇した曲」について特に深く見ていきたいと思います。

※特に断りが無い限り、この記事での順位はSpotifyグローバルの週間チャートの順位を指しています。

https://spotifycharts.com/regional/global/weekly/latest (←直近の週のランキング)

 

 昨年、新たに*1Spotifyグローバルトップ10に入った曲は76ありました。これらを「ヒットの仕方」に注目して4つのタイプに分類していきます。

 

①:登場時からトップ10でスタート 

②:(先行曲が)アルバムリリース時にトップ10入り 

③:下位から上昇してのトップ10 (アルバム以外) 

④:その他(クリスマスなど)

 

(表の見方)

週:トップ10に入った週 

型 → ①:無印 ②:ア ③:☆ 黄色背景:非英語曲 

 

アーティスト 曲名
1/3 Post Malone Wow.  
1/3 Ava Max Sweet but Psycho
1/3 Pedro Capo & Farruko Calma
1/17 Sam Smith & Normani Dancing With A Stranger  
1/17 Panic! At the Disco High Hopes
1/24 Ariana Grande 7 rings  
1/31 J. Cole MIDDLE CHILD  
2/7 Billie Eilish bury a friend  
2/14 Ariana Grande break up with your girlfriend, i'm bored  
2/14 Ariana Grande needy  
2/14 Ariana Grande NASA  
2/14 Ariana Grande bloodline  
2/14 Ariana Grande bad idea  
2/21 Daddy Yankee feat. Snow Con Calma
3/7 Jonas Brothers Sucker  
4/4 Billie Eilish bad guy  
4/4 Billie Eilish wish you were gay
4/4 Lil Nas X Old Town Road
4/4 Billie Eilish when the party's over
4/11 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus Old Town Road (Remix)  
4/11 BLACKPINK Kill This Love  
4/18 BTS feat. Halsey Boy With Luv  
4/18 Avicii feat. Aloe Blacc SOS  
4/25 Khalid Talk
5/2 Taylor Swift feat. Brendon Urie ME!  
5/9 Logic feat. Eminem Homicide  
5/9 Shawn Mendes If I Can't Have You  
5/16 Ed Sheeran & Justin Bieber I Don't Care  
5/23 Sech feat. Darell Otro Trago
5/23 Tyler, the Creator EARFQUAKE  
5/23 Lunay feat. Daddy Yankee & Bad Bunny Soltera
5/30 Young Thug feat. Travis Scott & J. Cole The London  
5/30 Ed Sheeran feat. Chance the Rapper & PnB Rock Cross Me  
6/6 Lewis Capaldi Someone You Loved
6/13 Bad Bunny & Tainy Callaita
6/20 Taylor Swift You Need To Calm Down  
6/20 Drake feat. Rick Ross Money in the Grave  
6/27 Shawn Mendes & Camila Cabello Señorita  
6/27 Lil Nas X Panini  
6/27 Katy Perry Never Really Over
7/4 Ed Sheeran feat. Khalid Beautiful People  
7/11 Post Malone feat. Young Thug Goodbyes  
7/18 Ed Sheeran & Travis Scott Antisocial  
7/18 Billie Eilish & Justin Bieber bad guy (Remix)  
7/18 Ed Sheeran feat. Camila Cabello & Cardi B South of the Border  
7/25 Anuel AA, Daddy Yankee & Karol G feat. J Balvin & Ozuna China  
7/25 Sam Smith How Do You Sleep?  
7/25 DJ Snake & J Balvin feat. Tyga Loco Contigo
8/1 Lil Tecca Ransom
8/8 Ariana Grande & Social House boyfriend  
8/22 Taylor Swift Lover
8/22 Taylor Swift The Man  
8/29 Tones And I Dance Monkey
8/29 Post Malone Circles  
9/5 Post Malone Saint-Tropez  
9/5 Post Malone Hollywood's Bleeding  
9/5 Post Malone feat. Ozzy Osbourne & Travis Scott Take What You Want  
9/5 Post Malone feat. DaBaby Enemies  
9/12 Ariana Grande, Miley Cyrus & Lana Del Rey Don't Call Me Angel  
9/12 Y2K & bbno$ Lalala
10/10 Travis Scott HIGHEST IN THE ROOM  
10/10 Dan + Shay & Justin Bieber 10,000 Hours  
10/10 Maroon 5 Memories
10/17 Harry Styles Lights Up  
10/24 blackbear hot girl bummer
10/31 Selena Gomez Lose Yo To Love Me  
10/31 Kanye West Follow God  
10/31 Selena Gomez Look At Her Now  
11/7 Dua Lipa Don't Start Now  
11/7 The Black Eyed Peas & J Balvin RITMO
11/14 Arizona Zervas ROXANNE
11/21 Billie Eilish everything i wanted  
11/28 Bad Bunny Vete  
12/5 The Weeknd Heartless  
12/5 The Weeknd Blinding Lights  
12/19 Harry Styles Adore You
12/19 Trevor Daniel Falling
12/19 KAROL G & Nicki Minaj Tusa

 

 集計:

①:登場時からトップ10でスタート → 51曲

②:(先行曲が)アルバムリリース時にトップ10入り → 4曲

③:下位から上昇してのトップ10 (アルバム以外) → 21曲

④:その他(クリスマスなど) → 0曲

 

 

 

 一番多いのは登場時から既にトップ10に入っていたパターン①です。つまり元からヒットが見込まれる曲がそのまま順当にヒットした、ということです。ここにはアルバムと同時にリリースされたシングルも含みます。(2/14のAriana Grandeや9/5のPost Maloneなど)

 ②は先行でリリースされた時点ではトップ10に入っていなかったものの、アルバムのタイミングでトップ10に浮上するというものです。現在のストリーミングではアルバムが強力なフォーマットであり、アルバム効果で順位を上げる現象が度々見られます。ただし、この恩恵を受けられるクラスのアーティストはそもそも曲の登場時から既にトップ10に入っていることが多いです。

 ③はリリース・アルバム以外の要因で大きな上昇を見せ、最終的にトップ10まで「浮上」した曲のことです。一般的に「ヒット」として想定されやすいパターンはこれだと思いますが、意外とあまり数は多くないです。

 ④に関しては、クリスマス曲が5つ、そしてその他の要因(訃報)が1つトップ10入りを昨年成し遂げたのですが、いずれも一昨年以前に既にトップ10入りしていた曲なので、「新たに」トップ10入りした曲は0でした。 

 

※参考

2019年にトップ10入りした曲のうち、2018年以前にもトップ10入りしていた曲

1/3 Travis Scott SICKO MODE  
1/3 Marshmello & Bastille Happier
1/3 DJ Snake, Ozuna, Selena Gomez & Cardi B Taki Taki  
1/3 Bad Bunny feat. Drake MIA  
1/3 Post Malone & Swae Lee Sunflower  
1/3 Halsey Without Me
1/3 Ariana Grande thank u, next  
2/28 Lady Gaga & Bradley Cooper Shallow
12/5 Mariah Carey All I Want for Christmas Is You
12/12 Juice WRLD Lucid Dreams
12/26 Wham! Last Christmas
12/26 Ariana Grande Santa Tell Me
12/26 Michael Buble It's Beginning to Look a Lot like Christmas
12/26 Bobby Helms Jingle Bell Rock

 

  ①と②に関してはヒットの理由は「元から知名度・期待感があった」で説明できると思います。このパターンがストリーミングで多いことからから、現在「人への注目度・期待感」がヒットの資本になっている、という印象があります。

 一方で新たなヒットが生まれるとしたら、③が有力です。今回はその③に当てはまる21の曲を分析し、「次なるヒット」はどのような経路で生まれるのかを考えていきます。この21曲をさらに分類しました。

 

 

パターン1:ラテン(8)

Pedro Capó & Farruko – Calma

Daddy Yankee feat. Snow – Con Calma

Sech feat. Darell – Otro Trago

Lunay feat. Daddy Yankee & Bad Bunny – Soltera

Bad Bunny & Tainy – Callaita

DJ Snake & J Balvin feat. Tyga – Loco Contigo

The Black Eyed Peas & J Balvin - RITMO

KAROL G & Nicki Minaj - Tusa

 

 ラテン曲は、リリース時に一気に食いつかれるよりは、じわじわ定着して徐々に浮上していくパターンが目立ちます。順位をグラフにすると山なりになるようなイメージです。ラテン圏のトップ10は、ほとんどがこの下位からの上昇パターンです。(登場時からいきなりトップ10なのは”China”と”Vete”の2曲)

 さらにトップ10を果たしたラテン曲のうち、リリースの週がピークになっている曲はBad Bunnyの”Vete”のみでした。これは彼が最も新曲に食いつくアメリカでも人気があることが理由の一つかと思われます。(同様にラテン圏でもメキシコで登場から1位などロケットスタートだった) この「食いつくタイミング」の地域・アーティストの差も面白そうなテーマです。

(※”China”はトップ10圏内で登場後もさらに順位を伸ばした)

 

 また、上昇にはもちろんプレイリストが寄与していると思います。ラテン系のプレイリストは¡Viva Latino!とBaila Reggaetonはそれぞれサービス内で3番目・4番目に人気のリストであると2018年末に発表されています。(おそらく現在も)

 

  名前 説明 Like
  Today's Top Hits 総合ヒットリスト(英語曲メイン) 25,655,673
  RapCaviar 主にUS方面のラップ 12,616,329
  ¡Viva Latino! ラテン曲総合ヒットリスト 10,540,418
  Baila Reggaeton レゲトン(ラテンアーバン)特化 9,921,456
  Songs to Sing in the Car ノリやすい過去曲で構成 100曲 9,078,737

※Like数は執筆時(2020年の2/11)の数字

 

 ただしSpotifyで最も人気のあるプレイリスト、Today’s Top Hitsでのラテン曲の扱いは微妙で、グローバル順位の割にリストの下の方に配置される傾向にあります。“Callaita”に関してはリストに入りすらしませんでした。

 英語圏アクトも共演している”Loco Contigo”と”RITMO”はラテン曲としては少し扱いが良かった印象です。またヒット度が優秀だった”Con Calma”もリストに残る期間が長めでした。

 

 

パターン2:TikTok(4)

Lil Nas X – Old Town Road

Y2K & bbno$ - Lalala

Arizona Zervas – ROXANNE

Trevor Daniel – Falling

 

 今年多く見られたパターンです。TikTokで発掘された後、「曲」としての評価も確立して順位をグングン伸ばすというパターンです。TikTokでよく使われるだけでは、ヒットするか微妙で、実際に「曲」としてのポテンシャルが無いとヒットまではたどり着かない印象です。

 “Old Town Road”や”Lalala”は比較的ワールドワイドにヒットした印象です。特に”Lalala”は英語曲があまり流行しないブラジルで9位まで到達することに成功しました。(USの12位よりも高い順位)

 2020年も同様にTikTok発のヒットは生まれるでしょうか?現状でトップ10入りが期待できそうなのはDoja Catの”Say So”でしょうか。(直近の週25位)

 

TikTokのヒットについて考えた記事

  

パターン3:実は「元から知名度」型(3)

Khalid – Talk (アルバムから2週後で到達)

Katy Perry – Never Really Over (最初から11位、4週目)

Maroon 5 – Memories (3週目 最初29位)

 

 定義上は上昇ながらも、チャート動向を観察すると「じわじわ」よりも「知名度による」上昇に近い曲です。これらはリリース時(orアルバム時)から順位が高めで、その流れでトップ10まで到達したような曲です。

 

Talk”の推移

1週目:25位

2週目:18位

~~~~~

9週目:13位(アルバムリリース週)

10週目:14位

11週目:10位

※9週目に一旦Today’s Top Hitsから外された(他のKhalidのアルバム曲が入れられた)が、10週目に戻り、11週目はリストの上位に配置された

 

“Never Really Over”の推移

1週目:11位

2週目:16位

3週目:14位(Today’s Top Hitsの表紙に 配置は10番目)

4週目:10位

※だいたい表紙アーティストはリスト1番目、またはそれ近くに配置されており、10番目で表紙になっているのは珍しい

 

“Memories”の推移

1週目:29位

2週目:17位

3週目:10位

 

 

パターン4:ナチュラル上昇型 (6)

Ava Max – Sweet but Psycho

Panic! At the Disco – High Hopes

Lewis Capaldi – Someone You Loved

Lil Tecca – Ransom

Tones And I - Dance Monkey

Blackbear – hot girl bummer

 

 曲が後から浮上するのがベースになっているラテン曲以外で、下位からの上昇を見せた曲たちです。

 もともと知名度が高くないアーティストでもヒットする可能性があるのはTikTokと、そしてこの「ナチュラル上昇」です。これはリリースから長い時間をかけてプレイリストなどを上昇し、最終的にはヒットになる……というパターンです。

 従来の「ヒット」のイメージに合うのはこのパターンかもしれませんが、ストリーミング環境ではどちらかというと少数派のヒットの仕方です。

 何がヒットするかが偶発的で全く読めないTikTokと比べると少し再現性があると思います。これらをさらに細かく分類し、ヒットのパターンを追っていきます。

 

☆US外から型

Lewis Capaldi – Someone You Loved (イギリス)

Tones And I – Dance Monkey (オーストラリア)

 

 地元でヒットの兆しを見せ、プレイリスト採用などによってそれが世界に広まっていくというパターンです。このタイプの曲は、USでヒットするのは遅くなりやすいので、USでヒットすることに成功すればピークが分散し、ロングヒットになります。

 

 Lewis Capaldiはまず2018年のBBC Sound of…にノミネートされるなど地元UKで徐々に頭角を現していきます。(1位~5位には選ばれなかった。ちなみにBillie Eilishもこの年ノミネートされ、同様に1位~5位外だった)

 そして2018年の11月に”Someone You Loved”がToday’s Top Hits入り。当時イギリスでヒットしかけていたのは”Grace”という別の楽曲だったのですが、なぜ”Someone~”の方が選ばれたのかはよく分かりません。ただ結果的にリスト加入から少しして、UKで”Someone~”も上昇し成功を収めました。

 1回はヒットが終わったとみなされて2019年の4月にリストを外されるものの、その後も継続して順位を上げたことによって、5月にリスト復帰。そこからUSでもロングヒットになったこともあり、年明けまでリストに残っていました。USのラジオでオンエアが始まったのもその5月辺りでした。

 Today’s Top Hitsでは、ヒット中であっても「ピークが終わった」と判断されれば早めのタイミングでリストから外されます。その中で1年以上リストに居座るという、異例な曲です。

 

 “Dance Monkey”はオーストラリア → ヨーロッパ → アメリカ含むその他エリアと3段階でヒットし、かなりロングヒットに。Spotifyグローバル首位の累計滞在日数は歴代1位タイの113日。(この曲にタイで並ぶのは”rockstar”)

 

(主要国+オーストラリアでのピーク)

オーストラリアのピーク週:2019年9月5日

イギリスのピーク週:2019年10月24日

ドイツのピーク週:2019年10月17日

メキシコのピーク週:2020年1月16日

ブラジルのピーク週:2020年1月16日

アメリカのピーク週:2020年1月9日

 

グローバルチャートのピーク週:2020年1月16日

*ピーク=再生数が最も多い週

 

 英語圏でヒットすれば、ローカルヒットの段階でもToday’s Top Hitsには採用されやすいので、そこからワールドワイドになるチャンスは大きく広がります。そこからどこまで飛躍するか?はその曲のポテンシャル次第ですね。

 一方で非英語圏曲の場合はなかなかToday’s Top Hitsには入らないので、ローカルヒットからの飛躍は別ルートを探す必要がありますね。

 

☆USラジオ連携型

Panic! At the Disco – High Hopes

 ラジオの上昇とともにSpotify順位を上げていったパターンです。 タイミング・選曲の両面でラジオとストリーミングの人気曲はここ数年乖離しているので、珍しく感じます。

 この曲が初めてSpotifyのトップ10に入ったのは1/3の週だったのですが、USのラジオ再生数で首位に立ったのはこれより前でした。

 

 ただし、彼*2ロック系アクトとしては珍しく、アルバム曲がすべてUSのSpotifyランキング100位以内に入るなど、元からストリーミングでの注目度も高かったです。(ただ"High Hopes"単品ではシングルカット後の方が順位は高かった)

 つまりラジオがすべての要因ではないということです。

 

 

☆US「非」ラジオ型

Lil Tecca – Ransom

blackbear – hot girl bummer

 

 USの地域でヒットした曲のうち、ラジオでかかる前にヒットし、そしてTikTokでヒットしたという記述があまり見られないものです。

 “Ransom”のヒットの理由として考えられるのは曲が高く評価されたことが大きいかもしれません。その評価の高さから彼への期待度は高く、デビューアルバムから計5曲をHot 100にエントリーさせることに成功しました。またPitchforkはこの曲を年間ベストリストに掲載しています。

 ただし”Ransom”はミームで使われていた?という捉え方もできます。Hot 100で公式ビデオ以外のYouTube再生数のポイントが大きく低下した週に大きく順位を落としています。つまりYouTubeで公式ビデオ以外の再生が大きい=ミーム的人気があった?とも考えられます。

この週についての詳しい解説:Hot 100 1/18 特集 【ルール変更:YouTubeの集計は公式ビデオが中心に】 - チャート・マニア・ラボ

 

 “hot girl bummer”はMegan Thee Stallionの”Hot Girl Summer”をもじったタイトルで注目を集めたことが大きいでしょう。

 

 

☆その他

Ava Max – Sweet but Psycho

 

 US出身のシンガーながらもヨーロッパでヒットし、アメリカに逆輸入されました。プレイリストなどで曲が発掘されて、最終的に大ヒットになる……というSpotifyでよく想定されるパターンに一番あてはまる曲かもしれないです。

 別に地元でヒットしたというわけはなく、さらにTikTok発でもなさそうなので、本当に「曲」のパワーでチャートを駆け上がった、ナチュラルヒットです。

 

 

 

 

*1:一昨年=2018年以前にもトップ10入りの経験がある曲は除く

*2:Panic! At the Discoの正式メンバーは現在Brendon Urie1人らしい

2019 ドイツの年間チャートを5つのポイントで

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 実は世界有数の音楽消費大国、ドイツの年間チャートを昨年に引き続き紹介しようと思います。 ※この記事を書いているのは2020年ですが便宜上、今年=2019年・昨年=2018年とします

 

昨年版はこちら↓ 昨年の記事にドイツの大まかな過去の傾向などを書いています。

 

 ドイツのチャートといってもピンと来ない方も多いと思うので、まずは手始めに年間トップ10を紹介します。100位までのフルリストは下記のリンク、または5章にある表を参照してください。

https://www.offiziellecharts.de/charts/single-jahr/for-date-2019

 

1 Lil Nas X – Old Town Road

2 Tones And I – Dance Monkey

3 Apache 207 – Roller

4 Juju feat. Henning May – Vermissen

5 Ava Max – Sweet but Psycho

6 Billie Eilish – bad guy

7 Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita

8 Ed Sheeran & Justin Bieber – I Don’t Care

9 Capital Bra & Samra – Tilidin

10 Samra & Capital Bra – Wieder Lila

 

1 US以上の人気!?ドイツ圏ラッパーたちの圧倒的な活躍

 

 まずは誰が多くチャート入りしたか?を見てきいきます。

 

12曲:Capital Bra

8曲:Samra

5曲:Apache 207、Mero

4曲:Loredana、Summer Cem

3曲:Post Malone、KC Rebell、Shindy

 

 おそらく多くの人がPost Malone以外誰?と感じると思います。彼らは全員ドイツ圏で活躍するラッパーたちです。圧倒的なラップ人気が際立ちます。ドイツ「圏」でラップもドイツ語で行いますが、出自はそれぞれ微妙に違います。

 

Capital Bra:ロシア出身&ベルリン育ち

Samra:レバノン出身

Apache 207:トルコにルーツを持つ

MERO:トルコにルーツを持つ

Loredana:スイスのラッパー

Summer Cem:トルコにルーツを持つ

KC Rebell:トルコ出身

Shindy:ドイツ出身

(Geniusで調べています)

 

 Capital Braは昨年に引き続き年間チャートへのエントリーが最多。(昨年は6曲エントリー) ただし彼の凄さがより際立つのは週間チャートかもしれません。

 今年だけで11曲も週間シングル1位を獲得。昨年自身が記録した1年での最多1位シングル記録(8曲)を更新しました。また通算1位曲数を19まで伸ばし、ドイツのシングルチャートでの通算1位曲数の記録を大きく更新しました。(それまではThe Beatlesの12曲) 短期間ながらも凄まじい活躍を見せ、数々の記録を更新することに成功しています。

 ただ回転率の早さ・客演も活用したリリースの多さなど、条件が違うことは一応考慮に入れておいた方が良さそうです。彼が今年1位を獲得した曲は長くても2週しか1位に立っていません。 (4曲が2週、7曲が1週で1位)

 その要素を差し引いても、彼が現在ドイツの音楽シーンの圧倒的な王様であることは疑いありません。

 

 話を年間チャートへのエントリー数に戻します。彼に続く8曲を送り込んだのはSamra。Capital Braとのコラボが多く、なんと年間チャートにエントリーした曲のうち7曲は彼とのコラボ曲です。この2人で“Berlin lebt 2”というコラボアルバムも昨年リリースしています。

 次ぐのはいずれもトルコ系のMEROとApache 207。前者は弱冠19歳の気鋭。後者は“Roller”が回転率の高いドイツのラップ界では珍しいロングヒットになっています。来年以降も引き続きヒットしそうです。

 4曲がエントリーしたLoredanaは上記のリストでは唯一の女性ラッパーです。ほか年間4位に入ったJuju、2曲が入ったShirin Davidなど、女性ラッパーの活躍も今年は見られました。

 

 

さらにジャンル別の割合を見ると……

 

ラップ51 (ドイツ47 US4)

ダンス 21

ポップ 24

ラテン2 

ロック3 *1

 

 ここでもラップの強さが圧倒的です。ラップの独占率はUS以上です。うちドイツ圏の曲が47をも占めており、地元圏のラップでほとんどを占めています。昨年はドイツ語のラップのエントリーは23曲だったので、2倍以上増加したということになります!一方で昨年は11曲エントリーしていた英語圏ラップは4曲まで減少しました。

 

ちなみに昨年は……

ラップ:34 (ドイツ23 グローバル11)

ポップ:26

ダンス:28

ロック:6

ラテン:5

 

2 “Old Town Road”が年間1位! 上位はグローバルな曲が多め?

 

 ドイツ語ラップがチャートを席巻して約半分を占めていますが、年間トップ10を見ると意外と一般的なグローバルヒット曲が多く並んでいます。

 最後の5章でも説明しますが、グローバルヒットはドイツ圏のラップよりも長く上位に残る傾向があるので、年間チャートでは週間チャートの印象よりも強くなる場合が多いです。

 年間トップ10のうち6曲は英語曲。この6曲はすべてUKでも年間トップ10で入っています。USでも同様にかなりヒットしていた曲たちです。(“Dance Monkey”のみUSの年間チャートには入っていないですが、これは集計時期の問題で十分ヒットはしている)

 昨年も書きましたが、ラップは地元圏のものが流行り、ポップスは輸入というのがドイツの基本的な傾向でしょう。

 “Old Town Road”はラップではありますが、USでも十分ポップリスナーにも波及しており「ポップス」という捉え方も十分できると思います。カントリーやヒップホップ、そしてビルボードがヒットの秘訣と、「アメリカっぽい」要素が多いですが、非英語圏でも年間1位を獲得するようなグローバルヒットになりました。

 英語圏ラップは4つランクインしていますが、残り3つはすべてPost Maloneの曲です。これも同様にポップス的な人気があるので、うまくポップスとして受容されたのでしょう。

 

 

3 何を輸入して何を輸入しない?

 

 この章ではUS、UK、ドイツの年間チャートの比較を行います。3カ国すべてでランクインする曲、USとドイツのみ、UKとドイツのみ、そしてUSとUKのみでランクインする曲の4つに区分します。

 

3カ国共通:Old Town Road、Sweet but Psycho、bad guy、Señorita、I Don’t Care、Someone You Loved、Shallow、Beautiful People、High Hopes、Wow.、7 rings、Without Me、Sucker、Happier、Circles、Goodbyes (16曲)

 

USとドイツのみで共通:Con Calma、Be Alright、Taki Taki  (3曲)

※USとドイツの合計一致数:19曲

 

UKとドイツのみで共通:Dance Monkey、Piece Of Your Heart、Don’t Call Me Up、Giant、SOS、Higher Love、Nothing Breaks Like A Heart、Body、Ride It、3 Nights、So Am I (11曲)

※UKとドイツの合計一致数:27曲

 

USとUKのみで共通:Sunflower、SICKO MODE、thank u, next、Truth Hurts、Dancing With A Stranger、break up with your girlfriend, i’m bored、bury a friend、Eastside、Talk、Baby Shark、Ransom、How Do You Sleep、No Guidance、Good As Hell、ME!、when the party’s over、Going Bad、If I Can’t Have You、Swervin、Girls Like You、(20曲)

 

 こう見るとドイツはUSよりもUKの方が近いです。UKに無いUSとの共通点はラテンくらいでしょうか。(”Be Alright”はUKでもそれなりにヒットしていましたが、年を跨いだことなどにより年間チャートには入らず)

 UKとドイツのみで共通している曲は、毎年いくつか存在している「US以外の国では軒並みヒットしている曲」がそのまま当てはまっている印象です。このような曲はポップやダンスに多いです。昨年は一部UKのローカルヒットもドイツの年間チャートに入っていましたが、今年はそのような枠はありませんでした。

 

 そしてUSとUKでのみ共通、つまりドイツでは入らなかった曲たちです。この中で意外だったのは“Sunflower”、”thank u, next”あたり。他にもLizzoやSam Smith辺りがドイツではランクインしていません。ただしこのような枠でも、多くの曲は週間チャートにはランクインしており全くヒットしなかった曲は少ないです。

(週間でも圏外だったのは”Truth Hurts”と“Baby Shark”。 前者はUSでのラジオ人気がヒットの要因の一つで意外と国外ではヒットしていない 後者はポイントの取り方が特殊でチャートシステム依存)

 

 ちなみにドイツの今年の年間チャートはUSとUKよりも、オーストラリアの年間チャートとの一致数がより多かったです(30曲)

 

 

4ドイツ独自のヒット

 USでもUKでも年間チャートに入らなかったものの、ドイツで年間チャートに入った曲「ドイツ独自のヒット」について見ていきます。既にドイツ語ラップは紹介したので、それ以外についてリストにします。

 

ドイツ語ポップ:Vincent、Hoch、Better、Regenbogenfarben、Yapma

ドイツ語ロック:Deutschland

ダンス:In My Mind、Speechless、Stars、Narcotic、Fading、Monster、All Around The World、Later Bitches、All This Love、Moonlight、Viva la Dealer、Summer Days、Takeaway

英語曲:Bad Liar、Let Me Down Slowly、Rescue Me

ラテン:Loco Contigo

 

 ポップは輸入がメイン、といえども昨年に引き続き一定数ドイツ語のポップは存在しています。

 ドイツ語ロックでランクインしたのは大御所Rammsetin。シングルがヒットしただけではなく、アルバムチャートでは年間1位に輝いています。セールスだけなく、リリース時にはストリーミングでも人気でした。アルバム全曲がその週のシングルチャートに入りました。

 ダンス曲はドイツ語圏出身のDJの曲もありますが、それらのほとんどが英語歌詞です。Capital Braが客演した“Viva la Dealer”が唯一のドイツ語ダンス曲です。

 

 英語曲3つはSpotifyなどで「グローバルヒット」になっていた曲。爆発的なヒットにはならないもののSpotifyグローバルの50位前後に長く留まっているようなイメージです。”Higher Love”などの「US以外で流行っているポップス」枠に近いですが、この3曲はたまたまUKでは流行らなかったみたいな感じですかね。

 

 残り一つのラテン曲=“Loco Contigo”はラテン圏と同時にヨーロッパで流行していた曲。スペイン語圏ではないイタリア、オランダ辺りでも年間チャート入りを果たしています。一方、イギリスではあまり非英語がヒットしない傾向にあります。

 

 昨年はドイツ圏37、グローバル63という比率でしたが、今年はドイツ圏61、グローバル39と大きく逆転します。これは偶然なのかドイツ語ラップの増加数(+24)とちょうど合致します。

 

 

5 短命曲もあるラップ、長持ちのポップ?

 

 最後にトップ100リストを眺めながら、ジャンル別のチャートアクションの特徴を探ります。クリーム色背景はドイツ圏のラップ曲です

 

Pos Artist Song Peak
1 Lil Nas X Old Town Road 1
2 Tones And I Dance Monkey 1
3 Apache 207 Roller 1
4 Juju feat. Henning May Vermissen 1
5 Ava Max Sweet but Psycho 1
6 Billie Eilish bad guy 4
7 Shawn Mendes & Camila Cabello Señorita 1
8 Ed Sheeran & Justin Bieber I Don't Care 2
9 Capital Bra & Samra Tilidin 1
10 Samra & Capital Bra Wieder Lila 1
11 Daddy Yankee feat. Snow Con Calma 6
12 Lewis Capaldi Someone You Loved 18
13 Meduza feat. Goodboys Piece of Your Heart 4
14 Capital Bra, Samra & Lea 110 1
15 Sarah Connor Vincent 9
16 Lady Gaga & Bradley Cooper Shallow 4
17 Bonez MC & RAF Camora 500 PS 14*
18 Mabel Don't Call Me Up 9
19 Dynoro & Gigi D'Agostino In My Mind 5*
20 Rammstein Deutschland 1
21 Capital Bra Cherry Lady 1
22 Apache 207 200 km/h 4
23 Capital Bra Benzema 2*
24 Capital Bra Prinzessa 1
25 Ed Sheeran feat. Khalid Beautiful People 5
26 Bausa Mary 8
27 Robin Schulz feat. Erika Sirola Speechless 7
28 Panic! At The Disco High Hopes 5
29 Mero Wolke 10 1
30 DJ Snake & J Balvin feat. Tyga Loco Contigo 3
31 Sido Tausend Tattoos 2
32 Imagine Dragons Bad Liar 16
33 Calvin Harris & Rag'n'Bone Man Giant 6
34 Loredana feat. Mozzik Eiskalt 2
35 Mero Baller los 6*
36 Avicii feat. Aloe Blacc SOS 8
37 Shirin David Gib ihm 1
38 C Arma Yapma 29
39 Post Malone Wow. 16
40 Loredana Jetzt rufst du an 2
41 Ariana Grande 7 rings 4
42 KC Rebell feat. Summer Cem & Capital Bra DNA 1
43 Apache 207 Wieso tust Du dir das an? 1
44 Summer Cem feat. Capital Bra Diamonds 3
45 Dardan Coco Mama 4
46 Vize feat. Laniia Stars 18
47 Mero Hobby Hobby 1
48 Younotus & Janieck & Senex Narcotic 16
49 Halsey Without Me 11
50 Capital Bra feat. Summer Cem & KC Rebell Rolex 2
51 Jonas Brothers Sucker 20
52 Sido feat. Apache 207 2002 6
53 Shindy Nautilus 2
54 Shindy Affalterbach 3
55 Alec Benjamin Let Me Down Slowly 40
56 Capital Bra & Samra Wir ticken 1
57 KitchKrieg feat. Trettmann, Gringo, Ufo361 & Gzuz Standard 10*
58 Kygo & Whitney Houston Higher Love 22
59 OneRepublic Rescue Me 24
60 Loredana feat. Mero Kein Plan 1
61 Alle Farben & Ilila Fading 16
62 Shindy Dodi 1
63 Mark Ronson feat. Miley Cyrus Nothing Breaks Like A Heart 16
64 Tim Bendzko Hoch 10
65 LUM!X & Gabry Ponte Monster 20
66 Dean Lewis Be Alright 10*
67 R3hab & A Touch of Class All Around The World 29
68 The Prince Karma Later Bitches 36
69 Loud Luxury feat. Brando Body 26*
70 Shirin David feat. Maître Gims On Off 3
71 Eno feat. MERO Ferrari 1
72 Luciano La haine 4
73 Samra & Capital Bra Huracan 3
74 Regard Ride It 4
75 Eno Blackberry Sky 2
76 Robin Schulz feat. Harloe All This Love 24
77 The Cratez & Bonez MC Honda Civic 5
78 Gaullin Moonlight 24
79 Lena & Nico Santos Better 15
80 Marshmello & Bastille Happier 15*
81 Samra & Capital Bra Zombie 1
82 Kerstin Ott & Helene Fischer Regenbogenfarben 20
83 Dominic Fike 3 Nights 36
84 DJ Snake feat. Selena Gomez, Ozuna & Cardi B Taki Taki 8
85 Fero 47 Jaja 8
86 Post Malone Circles 17
87 Samra Harami 1
88 RIN & Bausa Keine Liebe 5
89 Loredana Genick 3
90 Post Malone feat. Young Thug Goodbeys 16
91 SDP feat. Capital Bra Viva la Dealer 38
92 Summer Cem feat. Luciano Summer Cem 6
93 Apache 207 Kein Problem 17
94 KC Rebell Alleen 4
95 Martin Garrix feat. Macklemore & Patrick Stump Summer Days 24
96 Ava Max So Am I 21
97 Kontra K feat. Veysel Blei 6
98 Capital Bra & Samra Nummer 1 1
99 Ufo 361 feat. Data Luv Shot 4
100 The Chainsmokers & Illenium feat. Lennon Stella Takeaway 30

※ピークは2019年内での最高順位を指します。*付きの曲は違う年により高い順位を記録している曲(ここで表示しているのは2019年の最高位)

 

  傾向として、ドイツ圏のラップは年間チャートで下位でも週間ピークが高い曲が多いです。一方でその他の曲、ポップやグローバル曲などは順位相応(または低め)の順位が付いています。今年の週間1位曲を見てさらにこのテーマについて調べていきます。

 

年間
1月4日 Ava Max - Sweet but Psycho 2 5
1月18日 Shindy - Dodi   62
1月25日 Mero - Hobby Hobby   47
2月1日 Capital Bra - Prinzessa 2 24
2月15日 Eno feat. Mero - Ferrari 2 71
2月22日 KC Rebell feat. Summer Cem & Capital Bra - DNA   42
3月1日 Shirin David - Gib ihm 2 37
3月15日 Mero - Wolke 10   29
3月22日 Capital Bra & Samra - Wir ticken   56
3月29日 Capital Bra - Cherry Lady   21
4月5日 Rammstein - Deutschland 2 20
4月12日 Samra - Harami   87
4月26日 Lil Nas X - Old Town Road 4 1
5月10日 Juju feat. Hanning May - Vermissen 2 4
5月24日 Samra & Capital Bra - Wieder Lila 2 10
6月21日 Kalazh44, Capital Bra & Samra feat. Nimo & Luciano - Royal Rumble   圏外
6月28日 Capital Bra & Samra - Tilidin 2 9
7月12日 Shawn Mendes & Camila Cabello - Señorita 6 7
7月19日 Samra & Capital Bra - Zombie   81
8月30日 Capital Bra & Samra - Nummer 1   98
9月6日 Apache 207 - Roller   3
9月13日 Loredana feat. Mero - Kein Plan   60
9月20日 Tones and I - Dance Monkey 9 2
9月27日 Capital Bra, Samra & Lea - 110 2 14
10月25日 Apache 207 - Wieso tust du dir das an?   43
12月6日 Capital Bra - Der Bratan bleibt der gleiche   圏外
12月13日 Nimo feat. Hava - Kein Schlaf   圏外
12月27日 Mariah Carey - All I Want for Christmas Is You   圏外

※週に何も書いていない曲は1週のみ1位

 

  時期的に不利になる12月リリースの曲は致し方ないですが、年の中盤で1位になった“Royal Rumble”も年間チャートで圏外になっています。この曲は1位獲得曲ながらも滞在10週でチャートから外れてしまった短命の曲だったため、十分なポイントを取ることができなかったのです。

 

 ドイツ圏のラップはまずリリース時に圧倒的な注目を集めます。有名ラッパーが曲をリリースすればSpotifyApple等ですぐに上位を争います。そして初週はかなり高い順位に登場します。今年の年間チャートに入った曲のほとんどが週間チャートで1位~6位までにランクインしています。(例外は2つのみ。*付きの曲は昨年に1位になっている) しかし、その後の経緯はまちまちです。

 Apache 207の”Roller”ように9月リリースながらも上位をキープして年間3位まで入るケースもあれば、”Royal Rumble”のように急降下する曲もあります。

 ドイツ圏のラップは週間チャートの順位が高くとも、最終的に順位相応のヒットになるかどうか?は案外微妙なのです。ドイツの週間チャートを見る際の注意点ですかね。

 どの国もチャートにも急降下する曲・じわじわヒットする曲の両方が存在していますが、ドイツではその2分割が特に際立つ印象です。

 

 

 

*1:ジャンル分けはビルボード準拠。複数ジャンルに属している場合はポップとしてカウントする。 しかしドイツの曲はビルボードに入っていないことも多いので、自分で判断している部分もあります

Hot 100 2020年1月まとめ 【激動の1ヶ月、Roddy Ricch大活躍など】

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 今年からHot 100の記事は週ごとではなく、テーマ別で記事をまとめようと考えています。毎週の記事はテーマがある週のみまとめ、代わりに月末にその月の動向を振り返るというスタイルにしようと考えています。理由はテーマ別の方が後から参照しやすい、記事を書くほどテーマが無い週もある……などです。まあ今月はテーマが多くて結局毎週更新していたのですが! 

 

・今月のトップ10(シングル)推移

  1月4日 1月11日 1月18日 1月25日
1 All I Want for … Circles The Box The Box
2 Rockin' Around … Memories Yummy Life Is Good
3 Jingle Bell Rock The Box Circles Circles
4 A Holly Jolly … Someone You Loved Memories Memories
5 Circles ROXANNE 10,000 Hours Lose You to Love Me
6 ROXANNE Good As Hell Someone You Loved Someone You Loved
7 It's The Most Dance Monkey Dance Monkey 10,000 Hours
8 Someone You Loved Highest in the Room
Good As Hell Dance Monkey
9 Memories 10,000 Hours ROXANNE ROXANNE
10 Good As Hell Lose You to Love Me Lose You to Love Me Yummy

※表の都合で一部曲名を短縮しています

 

 

・今月のアルバムトップ5推移

  1月4日 1月11日 1月18日 1月25日
1 Fine Line / Harry Styles
89,000
JACKBOYS / JACKBOYS
154,000 👕
Please Excuse me for… / Roddy Ricch 97,000 Rare / Selena Gomez
112,000 🎫👕
2 Christmas / Michael Bublé
77,000
Please Excuse me for… / Roddy Ricch 74,000 Hollywood's Bleeding / Post Malone 65,000 Please Excuse me for… / Roddy Ricch 110,000
3 Please Excuse me for… / Roddy Ricch 73,000 Hollywood's Bleeding / Post Malone 64,000 Fine Line / Harry Styles
49,000
Time Served / Moneybagg Yo 66,000
4 Merry Christmas / Mariah Carey 71,000 Fine Line / Harry Styles
54,000
JACKBOYS / JACKBOYS
47,000
Hollywood's Bleeding / Post Malone 60,000
5 WHEN WE ALL FALL… / Billie Eilish 64,000 Soundtrack / Frozen 2
46,000
Soundtrack / Frozen 2
42,000
Kirk / DaBaby
43,000

※緑背景はその週にリリースされたアルバム

 

 

~各週のハイライト~

 

1/4のハイライト◇

・クリスマス曲が1位~4位を独占。全体で25曲がランクイン。(うち24曲がトップ50)

・”All I Want for Christmas Is You”が1位キープ。再生数は7270万

・集計対象は昨年12月ながらも、チャート日付は新年1月のため、Mariah Careyは4Decade連続での1位獲得を達成。史上初の快挙

・アルバム1位は2週連続でHarry Styles

 

1/11のハイライト◇

・クリスマス曲が全て去る。合計27曲が新登場/再登場する出入りの激しい週に

・1位がPost Maloneの”Circles”、2位がMaroon5の”Memories”、3位がRoddy Ricchの”The Box”(初のトップ10入り)

・アルバム1位はTravis Scott率いるJACKBOYS。インスト曲一つを除き、全曲がHot 100入り

・クリスマス期に1度はリカレントで外されたヒットが7曲再登場

 

1/18のハイライト◇

・Roddy Ricchの”The Box”がJustin Bieberを退け首位浮上!ストリーミングの数字が圧倒的(6820万)。彼はアルバムも1位

・Justin Bieberの”Yummy”は2位。セールスとラジオで抜群の成績も、ストリーミングは”The Box”の半分以下

・BROCKHAMPTONが初のHot 100入り!”SUGAR”が70位

YouTubeに関する集計変更で”Old Town Road”が15位→46位に。”Ransom”は33位から圏外に

 

1/25のハイライト◇

・FutureとDrakeの“Life Is Good”が2位に登場。Futureにとってはキャリア最高位

・DrakeのHot 100エントリー数が207に。歴代最多のGlee Castと並ぶ

・”The Box”が首位を守る。ストリーミング数は7720万まで到達

・Selena Gomezがアルバム1位。リリース6週目のRoddy Ricchとは僅差(2000枚)

・上位デビューが相次ぐ。Mac Miller、Lil Baby、Halsey、Selena Gomezの新曲がトップ40圏内に登場

 

 

今月トップ40(以上)に入った曲

(☆=新登場 ◇=再登場 △=順位上昇 初はトップ40入りが初のアーティスト)

 

1/4

◇36 Chuck Berry – Run Rudolph Run

◇31 Kelly Clarkson – Underneath the Tree

◇29 Derlene Love – Christmas (Baby Please Come Home)

△24 Andy Williams – Happy Holiday / The Holiday Season

 

1/11

☆38 JACKBOYS feat. Young Thug – OUT WEST

△36 Maren Morris – The Bones 

△32 blackbear – hot girl bummer

△31 Trevor Daniel – Falling (初)

 

1/18

△40 Lady Antebellum – What If I Never Get Over You

△35 Roddy Ricch feat. Mustard – High Fashion

☆2 Justin Bieber – Yummy

 

1/25

△39 YNW Melly – Suicidal

☆30 Selena Gomez – Rare

☆29 Halsey – You should be sad

☆17 Mac Miller – Good News 

☆16 Lil Baby – Sum 2 Prove

☆2 Future feat. Drake – Life Is Good 

 

今月Hot 100から外れた主な曲 

※滞在が10週以上、またはピーク順位が高い曲

 

1/4

87 Matt Stell – Prayed For You (🗻36位 /⏰20週)

45 Jonas Brothers – Only Human (🗻18位 /⏰27週) ※のちに再登場

22 Juice WRLD – Lucid Dreams (🗻2位 /⏰48週)

 

1/11

92 DaBaby feat. Offset – Baby Sitter (🗻59位 /⏰20週)

79 Ellie Goulding & Juice WRLD – Hate Me (🗻56位 /⏰20週)

+すべてのクリスマス曲

1 Mariah Carey – All I Want For Christmas Is You (🗻1位 /⏰37週) など

 

1/18

98 Anuel AA, Daddy Yankee, 等... - China (🗻43位 /⏰18週)

80 Joji – SLOW DANCING IN THE DARK (🗻69位 /⏰13週)

47 Lil Baby & DaBaby – Baby (🗻21位 /⏰21週)

33 Lil Tecca – Ransom (🗻4位 /⏰31週)

 

1/25

89 Post Malone feat. DaBaby – Enemies (🗻16位 /⏰18週)

50 DaBaby – Suge (🗻7位 /⏰37週)

46 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus – Old Town Road (🗻1位 /⏰45週)

45 Ed Sheeran feat. Khalid – Beautiful People (🗻13位 /⏰26週)

 

 

主なトピックス

 

・Roddy Ricchの“The Box”が大躍進

 今月の主役は彼。昨年にアルバム1位を獲得して以降、徐々にシングルもヒット。そしてクリスマス後に本格的に花開きました。新鋭のラッパーがビッグスター(Justin Bieber)の1位を阻むという構図は昨年の“Old Town Road”を彷彿とさせるものがあります。どこまで1位支配が続くか見ものです。ビデオが未リリース、さらにラジオも伸びている途中と、まだまだポイントが上昇する余地が残っています。

 “High Fashion”などその他のシングルも好調。”The Box”も”High Fashion”もTikTokでよく使われているようです

  

・クリスマス後の特別措置。ただし……

 今年は過去最大の25のクリスマス曲がランクイン。そのぶんチャートから外れた曲が多く、このクリスマスが曲のチャート入り「最後」になったと思われた曲がいくつかありました。

 しかしクリスマス明けの週、これらの曲を特別に再登場させました。「リカレントルール」でチャートから外れた曲は、何か特別な再浮上が無い限り再登場しないのですが、「クリスマス曲に押し出されるのは不当」と考えたのでしょうか。特別措置が取られました。これは昨年までは無かったことです。

 この特別措置で再登場した曲はほとんど既にピークを過ぎた曲で、「新しい曲の枠のために古い曲を外す」というリカレントルールの目的に反するもので、この特別措置による再登場はあまり賛成できない、というのが私の意見です。

 またここで再登場した曲はほとんどラジオで人気の曲だったので、Hot 100における「ラジオの濃さ」が増すことにもなります。

 ここで再登場した7曲のうち、3曲が2週のうちにチャートから再び外れています。他の曲はどこまでチャートに残留するでしょうか。

 

☆クリスマス週に関する詳細な記事

Hot 100 1/4 特集 [チャート上では2020] 【クリスマス2019特集】 - チャート・マニア・ラボ

 

☆クリスマス後の再登場に関する詳細な記事

Hot 100 1/11 特集 【クリスマス後のリフレッシュ / 新方針?一度外れた曲を戻す】 - チャート・マニア・ラボ

 

 

・ルール変更によって弾かれた“Old Town Road” グラミーに向けて残念?

 集計期間が2020年に入り、1/18付けのチャートからHot 100でルール変更がありました。YouTubeでユーザーが作成したビデオを減算するように。具体的には、複数曲が含まれるコンピレーションなどが対象外に、ユーザーによる曲単体のアップロードは3/4に減算されました。詳しくは↓の記事に。

Hot 100 1/18 特集 【ルール変更:YouTubeの集計は公式ビデオが中心に】 - チャート・マニア・ラボ

 

 これの影響を受けた曲の数は少ないですが、その影響を受けた一部の曲はかなり順位を落としました。特にミームで人気だった曲はマイナスが大きいようです。

 “Old Town Road”はその週15位→46位と順位を落としました。そして次の週にはチャートから外れてしまいました。(=51位以下相当)

 個人的にはこれはグラミーに向けて少し残念です。なぜかというと、久々にグラミーがチャートに影響を与える現象が発生するかも?と考えていたからです。

 インターネットでの話題作りに定評のある彼の“Old Town Road”ならばグラミーで再浮上するかな?と考えていたのですが、チャートから外れてしまった以上その現象をチャートで観察することは難しそうです。

 他にも若者への影響力が強そうな”bad guy”も同様に再浮上するかもしれませんが、この曲もグラミー前にチャートから外れてしまう可能性があります。(”bad guy”も同様にルール変更で順位を大きく落とした) ※次のHot 100が勝負所です。

 

 

・短評①:”Life Is Good”

 Drakeを迎えたFutureの”Life Is Good”が2位にランクイン!Futureは“Mask Off”=5位を上回りキャリアピークを更新しました。Drakeのヴァースで始まり、ダイナミックに展開していく、という近年のfeat. Drakeでの黄金パターンを採用した1曲です。

 この曲はストリーミングでかなり人気を集め、セールスもその週の1位になるなど優秀な成績を収めたのですが、“The Box”の壁はとても高く2位スタートに。

 とはいえSpotifyではUSの週間再生数が歴代15位の約1986万を記録するなど、成功を収めたと言える成績を収めています。ちなみに“The Box”は歴代5位の約2497万再生。Apple Musicでは瞬間的に1位を獲得することはありましたが、週トータルで見ると”The Box”の方が1位に立っている期間が長かったです。

  DrakeはこれでHot 100エントリー数を207まで伸ばし、歴代最多のGlee Castと並びました。彼が次の曲をリリース次第、この記録を打ち破るでしょう。

 

・短評②:”Yummy”

 注目デビューながらも①の“Life Is Good”と同様に”The Box”に敗れ、2位スタートとなった“Yummy”。この曲はアルバムチャートで行われているような手法を採用して本気で1位を奪いに来ました。サイン入りヴァイナルなどを活用してセールスを伸ばし、さらにはJustin Bieber当人のインスタグラムで国外のファン向けに居住地偽装すればUS1位を取れる!などの画像を一瞬投稿して物議を醸しました。

 アルバムチャートでこのようなグッズ戦略を用いた作品は2週目に大きく数字を落とします。シングルでも同様に過去にこの戦略を行ったTravis Scottの“HIGHEST IN THE ROOM”が1位→6位に、The Weekndの”Heartless”が1位→17位、そして“Yummy”は2位→10位と順位を落としました。

 ここまでなんかネガティブな情報だらけですが、ラジオでは大成功を収めており成績自体はさほど悪くはないと考えています。この曲の評価は今後どこまで長持ちするか?という点、具体的にはトップ10に何週残るか?で下したいと思います。トップ10滞在は10週までは伸ばしたいところです。

 

・短評③:”Suicidal”

 YNW Mellyは現在殺人容疑で収監中。その素行を問題視されているのか、ラジオでほとんどオンエアされていません。しかしストリーミングでは安定した人気を得ており、ここまで”Murder On My Mind”、”223’s”、そして今回の”Suicidal”と3曲がトップ40まで到達。ラジオの割合が高いHot 100でかなり健闘しています。

 ラジオとセールスが低いので、かつてのHot 100ではランクインしていなかったタイプの曲です。

 “Suicidal”は最近Spotifyの最大手プレイリストToday’s Top Hitsに入りました。(よりヒットしていた”Murder On My Mind”は入っていなかった)

 Spotifyは以前、素行面に問題のあったR. Kellyをプレイリストから削除したことがあったので、この追加は意外でした。

 

短評④:”Hate Me”

 TikTok効果で再浮上を果たした“Hate Me”ですが、20週の満期を迎えてチャートから外れました。チャート入り第一期はラジオ効果、第二期はTikTokによるストリーミング効果。第一期での最高位は72位、第二期での最高位は56位とTikTok後にピークが来ています。

 仮に第二期にラジオのピークが来ていれば相乗効果でもっと高い順位まで到達するのですが、TikTokでのヒットは未知の曲 or 意外な過去曲が多いので、狙ってラジオとTikTokのヒット周期を合わせるのは現実的ではないでしょう。

 

 

短評⑤:”Enemies”

 Post Maloneの「サブシングル」の曲がピーク16位、18週という成績でチャートを後に。彼のメインシングルは“Circles”ですが、主にオンエアされていたのはポップ系ラジオです。こちらの”Enemies”は”Circles”があまり広がらなかったラップリスナー向けのシングルです。(リズミック系で1位)

 ストリーミングでアルバム単位の人気が出た場合、アルバムのリリースから時間を置いてカットされるシングルは奮わない傾向が強いので、サブシングルも活用して適切な時期にシングルをカットするのは良い戦略だと思います。彼のように複数ジャンルのシングルを使い分けられるアーティストは希少ですが。

 

 

・来月以降

 まずは来週に大きく動きます。EminemMac Millerのアルバム曲が大量に登場し、どの曲がチャートに残るか?が大きなテーマでしょう。古い曲が2020の年間チャートに入るためには、ここで粘ってチャートに残る必要性があります。

 

 注目の既存シングルは”Don’t Start Now”、”BOP”、”High Fashion”、”Blinding Lights”あたり。“Don’t Start Now”は現在14位で、キャリア2曲目のトップ10が間近に迫っています。

 “BOP”も同様にトップ10入りの可能性がある曲。ビデオリリース時に大きな上昇を見せたものの、クリスマス曲に阻まれてトップ10入りならず。そこから現在に至るまでトップ10の壁を破れていませんが、果たして?

 “High Fashion”は非シングルながらもストリーミング人気によって27位まで到達。この曲がどこまで順位を伸ばすのか、いつシングルカットされるのか、などに注目。

 “Blinding Lights”はストリーミングでの人気を受けてシングルカットされ、浮上中。SpotifyでもAppleでもこっちの方の順位が上。SpotifyのToday’s Top Hitsでは”Heartless”の方は既にリストから外されています。

 この”Blinding Lights”はドイツでThe Weekndにとって初のシングル1位を獲得、ほかオーストラリアで1位、イギリスで4位などUS以外で絶賛ヒット中です。

 

 

・各週のHot 100順位リンク

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-01-04

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-01-11

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-01-18

https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-01-25

 

 

イギリス 2019年間シングルチャートを6のポイントで振り返る

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こんばんは。この記事ではUKの年間チャートを6つのポイントで振り返っていきます!まずは年間チャートの表から!  

※この記事を書いているのは2020年ですが、便宜上今年=2019年、昨年=2018年とします。

 

Peak = 週間チャートの最高位 (2019年内での最高週間順位。*印付きの曲はそれ以外の年でこれよりも高い順位を記録しているもの)

LY=昨年の年間チャートでの順位

 

Pos Artist Song Peak LY
1 Lewis Capaldi Someone You Loved 1  
2 Lil Nas X Old Town Road 1  
3 Ed Sheeran & Justin Bieber I Don't Care 1  
4 Billie Eilish bad guy 1  
5 Calvin Harris & Rag'n'Bone Man Giant 2  
6 Ava Max Sweet but Psycho 1  
7 Stormzy Vossi Bop 1  
8 Tones And I Dance Monkey 1  
9 Mabel Don't Call Me Up 3  
10 Shawn Mendes & Camila Cabello Señorita 1  
11 Meduza feat. Goodboys Piece of Your Heart 2  
12 George Ezra Shotgun 7 3
13 Dave feat. Burna Boy Location 6  
14 Lewis Capaldi Hold Me While You Wait 4  
15 Post Malone & Swae Lee Sunflower 3  
16 Ariana Grande 7 rings 1  
17 Post Malone Wow. 3  
18 AJ Tracey Ladbroke Grove 3  
19 Tom Walker Just You And I 3  
20 Lady Gaga & Bradley Cooper Shallow 1 87
21 Ed Sheeran feat. Khalid Beautiful People 1  
22 Sam Smith & Normani Dancing With A Stranger 3  
23 Ed Sheeran feat. Stormzy Take Me Back To London 1  
24 Dominic Fike 3 Nights 3  
25 Lewis Capaldi Bruises 6  
26 Kygo & Whitney Houston Higher Love 2  
27 Lewis Capaldi Grace 9  
28 Mark Ronson feat. Miley Cyrus Nothing Breaks Like A Heart 2  
29 Jonas Brothers Sucker 4  
30 Ariana Grande thank u, next 2* 68
31 Panic! At The Disco High Hopes 37* 90
32 NSG feat. Tion Wayne Options 7  
33 Ariana Grande break up with your girlfried, i'm bored 1  
34 Avicii feat. Aloe Blacc SOS 6  
35 Russ & Tion Wayne Keisha & Becky 7  
36 Billie Eilish bury a friend 6  
37 Marshmello & Bastille Happier 26* 62
38 Regard Ride It 2  
39 Young T & Bugsey Malone feat. Aitch Strike A Pose 9  
40 Halsey Without Me 10*  
41 Joel Corry Sorry 6  
42 benny blanco, Halsey & Khalid Eastside 29* 19
43 Khalid Talk 9  
44 Ed Sheeran feat. Chance the Rapper & PnB Rock Cross Me 4  
45 Aitch Taste (Make It Shake) 2  
46 Ed Sheeran Perfect 40* 6
47 Calvin Harris & Sam Smith Promises 21* 25
48 Pinkfong Baby Shark 6  
49 Sigala & Becky Hill Wish You Well 8  
50 Wiley, Stefflon Don & Sean Paul Boasty 11  
51 Jess Glynne Thursday 3  
52 Jax Jones & Martin Solveig feat. Madison Beer All Day And Night 10  
53 Lil Tecca Ransom 7  
54 Keala Settle This Is Me 16* 4
55 Ed Sheeran feat, Camila Cabello & Cardi B South Of The Border 4  
56 Marshmello feat. CHVRCHES Here With Me 9  
57 P!nk Walk Me Home 8  
58 Mabel Mad Love 8  
59 Mist feat. Fredo So High 7  
60 Freya Ridings Lost Without You 9 81
61 Tom Walker Leave A Light On 31* 36
62 Sam Smith How Do You Sleep 7  
63 The Killers Mr. Brightside 54* 80
64 Queen Bohemian Rhapsody 48*  
65 Loud Luxury feat. Brando Body 39* 33
66 Post Malone Circles 3  
67 Chris Brown feat. Drake No Guidance 6  
68 Lizzo Good As Hell 7  
69 Dermot Kennedy Outnumbered 6  
70 Calvin Harris & Dua Lipa One Kiss 22* 1
71 Taylor Swift feat. Brendon Urie ME! 3  
72 Lauv & Troye Sivan i'm so tired.. . 8  
73 Steel Bangles feat. AJ Tracey & Mostack Fashion Week 7  
74 Billie Eilish when the party's over 61*  
75 Travis Scott SICKO MODE 33* 94
76 Ed Sheeran Shape of You 82* 31
77 George Ezra Hold My Girl 8  
78 Dave feat. Fredo Funky Friday 38*  
79 Post Malone feat. Young Thug Goodbeys 5  
80 George Ezra Paradise 46* 8
81 Meek Mill feat. Drake Going Bad 13  
82 Ava Max So Am I 13  
83 Shawn Mendes If I Can't Have You 9  
84 Mariah Carey All I Want for Christmas Is You 2 再※
85 Rudimental feat. Jess Glynne & Macklemore These Days 53* 5
86 A Boogie Wit da Hoodie feat. 6ix9ine Swervin 27  
87 Maroon 5 feat. Cardi B Girls Like You 34* 26
88 Anne-Marie 2002 37* 12
89 Cadet & Deno Driz Advice 14  
90 Hugh Jackman, Keala Settle, Zac Efron & Zendaya The Greatest Show 25* 18
91 Sigrid Don't Feel Like Crying 13  
92 Tyga feat. Offset Taste 67* 40
93 Lizzo Truth Hurts 29  
94 Sam Feldt feat. Rani Post Malone 10  
95 Wham! Last Christmas 3*  
96 Rita Ora Let You Love Me 23* 88
97 Stormzy Crown 4  
98 Little Mix feat. Nicki Minaj Woman Like Me 18*  
99 Queen Don't Stop Me Now 79*  
100 Jonas Blue feat. Theresa Rex What I Like About You 16  

 (アーティスト表記はサイト準拠。Billy Ray Cyrusはクレジットされず)

※再=1994年、2007年に次ぐ再登場

☆UKチャートでは週間チャートで古い曲にマイナス補正をかけることがあり、順位の割に実はヒットしているようなパターンも見られます。(年間チャートではそのマイナス補正は受けないと思われる)

 

 

☆年間シングルトップ100のリンク↓

 

☆年間アルバムトップ100のリンク↓

 

 

1 今年の主役:Lewis Capaldi

 UKの主役は彼。シングル・アルバムともに年間1位を獲得した、まさしく今年のUKの顔です。代表曲”Someone You Loved”が昨年末からじわじわと浮上、それに伴い彼自体への注目度も向上し、それ以外の曲の人気も増しました。

 その他の曲も含めた総合的な注目度、また同胞の超ビッグスターEd Sheeranが同年にアルバムをリリースしながらもそのレースに打ち勝ったことはインパクトがありました。(時期的に有利だったという側面もありますが)*1

 

 昨年このようなポジションにいたGeorge Ezra(シングル3位・アルバム2位)と大きく違うのはUSでの躍進具合。EzraはUKでの大活躍の一方で、USでは週間の100位にも入れませんでしたが、Capaldiは“Someone You Loved”が見事首位を獲得。UKのアーティストでは今年唯一のUSシングル首位獲得です。

 しかし、CapaldiもHot 100エントリーはまだこの曲のみなので、USでの地位を確立しているのかは不明です。これ以降のシングルでどこまで活躍できるでしょうか。今年の後半にリリースされた新曲”Before You Go”はラジオで人気を得始めているようですが。(この曲はリリースが遅かったため、UKでヒットしているものの今年の年間チャートには入っていない)

 

2 Ed Sheeranは7曲もエントリー

 この章では誰が多く年間チャートに入ったか?を見ていきます。

 

7曲:Ed Sheeran

4曲:Lewis Capaldi・Post Malone

3曲:Billie Eilish・Calvin Harris・Stormzy・George Ezra・Ariana Grande・Khalid・Sam Smith

 

 リリースした時期の問題もあって年間シングル1位の座はLewis Capaldiに譲りましたが、エントリーの曲数ではEd Sheeranが上回っています。今年のアルバムから5曲が入ったほか、2017年のアルバム”÷”からも2曲が入りました。超絶ロングヒット。

 UKの毎週のシングルチャートでは、「ランクインするのは1アーティスト3曲まで」という規制がありますが、年間チャートの集計ではその「毎週入っているかどうか」ではなく、純粋な合計の売上数(セールス+ストリーミング)で計算されるため、このルールは年間チャートには影響を及ぼしません。例えば”Shape of You”は自身の他のシングルに押し出される形で今年3週しかチャート入りしていないのですが、年間チャートには余裕で入っています。

 後の章でも説明しますが、Ed Sheeran・Lewis CapaldiタイプのSSWがUKでは際立っています。

 

 昨年は5曲が入り、Hugh Jackmanと並んで年間チャート最多エントリーだったPost Maloneは今年4曲がエントリー。今年のアルバム”Hollywood’s Bleeding”からのシングルがすべて年間チャート入り。また当人の曲ではないですが、Sam Feldtによる“Post Malone”(曲名)も94位に入っています。

 

 その他7名が3曲エントリー。USでも大活躍だったBillie Eilish・Ariana Grande・Khalid・Sam Smith、昨年のシングルが長持ちだったCalvin Harris、George Ezra。そしてコラボでも数字を伸ばしたUKラッパーのエース格Stormzy。

 

 

3 年間トップ10クラスの大ヒットは?多様な面々がランクイン

 

1 Lewis Capaldi – Someone You Loved

2 Lil Nas X – Old Town Road

3 Ed Sheeran & Justin Bieber – I Don’t Care

4 Billie Eilish – bad guy

5 Calvin Harris & Rag’n’Bone Man - Giant

6 Ava Max – Sweet but Psycho

7 Stormzy – Vossi Bop

8 Tones And I – Dance Monkey

9 Mabel – Don’t Call Me Up

10 Shawn Mendes & Camila Cabello – Señorita

 

 UKの覇権を取ったLewis Capaldiに次ぐ2位を記録したのは“Old Town Road”。ラップ&カントリーというUS人気が際立つ2ジャンルの融合、そしてヒットのきっかけがUSのチャートという、US特有の要素が強めな1曲でしたが、国外でも曲としてしっかり受容され特大ヒットになっています。昨年の途中からビデオ再生(公式ビデオのみ)がUKチャートでも集計の対象になったのですが、その恩恵もある程度受けているかもしれません。

 3位はEd SheeranとJustin Bieberの豪華タッグ。年の中盤のリリースで集計期間的な問題もあり3位止まりに。

 アーティスト単位で人気を高めたBillie Eilishの”bad guy”が4位、そしてUKでの人気が根強いCalvin HarrisとRag’n’Bone Manの”Giant”が5位。

 年始めに広い地域でヒットした”Sweet but Psycho”が6位、UKラップの巨星Stormzyが7位。UKラップに関しては次の章で詳しく説明します。

 年の後半に世界的ヒットとなった“Dance Monkey”と”Señorita”がそれぞれ8位と10位にランクイン。

 そしてUKに拠点を置くシンガーMabelの“Don’t Call Me Up”が9位。彼女はこの曲で初のHot 100入りも果たしています。Mabelは"Mad Love"も続いてヒットし(年間58位)存在感を発揮しました。

 

 トップ10曲には合計13名のアクトが参加していますが、一人も重複していません。トップ10にかぶりがいないのは少し珍しく、2010年代では2014年以来2回目。*2

 

UK年間トップ10に複数入ったアーティスト(客演含む)

2019:なし

2018:George Ezra、Drake

2017:Ed Sheeran(4曲)

2016:Drake

2015:Justin Bieber

2014:なし

2013:Pharrell

2012:Sia

2011:Adele、Pitbull

2010:Rihanna

 

 

4  UKラップのさらなる躍進

 次に、年間チャートをジャンル別に区分します。

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↑UK・USそれぞれの2019年間シングルチャートでのジャンルの割合

 

UKは ラップ / R&B 25 ダンス 13 ロック 6 ポップ 56 ラテン・カントリー 0

※ジャンル分類はビルボードを参考にしています

※George Ezraはロック扱い

 

 USと比較するとラップ/R&Bが減少して、ポップが増加。そしてカントリーの代わりにダンス曲といった印象でしょうか。ほかロックがやや多くて、ラテンが皆無です。この中で注目したのはラップ、その中でもUKラップのさらなる躍進です。昨年7曲だったUKラップのエントリーが今年は13曲まで増加しました。特筆すべき活躍を見せたのはStormzy・Daveの2人です。

 

7位:Stormzy – Vossi Bop

13位:Dave feat. Burna Boy – Location

18位:AJ Tracey – Ladbroke Grove

32位:NSG feat. Tion Wayne

35位:Russ & Tion Wayne – Keisha & Becky

39位:Young T & Bugsey Malone feat. Aitch – Strike A Pose

45位:Aitch – Taste (Make It Shake)

50位:Wiley, Stefflon Don & Sean Paul – Boasty *3

59位:Mist feat. Fredo – So High

73位:Steel Banglez feat. AJ Tracey & Mostack – Fashion Week

78位:Dave feat. Fredo – Funky Friday

89位:Cadet & Deno Driz – Advice

97位:Stormzy - Crown

 

 StormzyはUKラッパーの中で最多エントリー数を記録したうえ、“Vossi Bop”が年間7位と上位入り。またEd Sheeranとの”Take Me Back To London”も週間で1位を獲得し、年間23位に入りました。もう一つのエントリーは”Crown”の97位。

 年末にリリースされた彼のアルバムはその週に1位を獲得できなかったものの、2020年に入ってから週間1位を獲得しました。

 ラップは基本的に地産地消の傾向があり、UKラップはあくまでUK圏内(とアイルランド程度)に留まることが多いですが、”Vossi Bop”はオーストラリアでもトップ40まで到達し、国外でも一定の人気を得ることに成功しました。(ただしUSでは芽が出ず。USで人気のあるリスト、SpotifyのRapCaviarに名を連ねたものの人気は出ず)

 また年末にリリースされたシングル”Own It”はEd Sheeranという強力な客演を擁することもあって、同様に豪州トップ40など国外での人気も得始めています。(こっちはRapCaviarよりも規模が大きいSpotifyの総合ヒットリストToday’s Top Hitsに入った) 今後さらに伸びることはあるのでしょうか。

 

 Daveは2019年内にUKラッパーで唯一アルバム1位の獲得に成功。純セールスでは11位ながらもストリーミングでの人気によって逆転しました。USでは日常茶飯事のパターンですが、UKではかなりレアです。今年UKで週間アルバム1位を獲得した作品は、Post Malone*4とDaveの2つを除いてすべてセールスでも週間1位に立っており、USと比べると純セールスがそのまま順位に反映されるケースが多いのです。

 理由として考えられるのは、規模の問題、USと違い新作がアルバム単位ではさほど再生されないこと、純粋な再生数が反映されない*5ことなどでしょうか。*6

 このアルバムでの人気をきっかけに、シングルの”Location”は長くヒットし、最終的に年間13位まで食い込みました。UKではレアな、USのラッパーっぽいヒットをしたといえる曲です。(アルバムの人気曲がそのままヒットというパターン。その他のUKラップは単体でヒットしていることが多い)

 

 あとUKのラッパーではないですが、もう一人注目したいのはBurana Boy。ナイジェリア出身のラッパーですが、”Location”以外にStormzyの客演をつとめた”Own It”が同様にUKでヒット。(2020年に入ってからUK1位に) 

 海外の勢力も巻き込むことで、UKラップの市場自体を大きくし、いずれUSのように他国も巻き込む影響力を持つことができるでしょうか。

 

 

5 Hot 100との比較

 続いてUSチャートとの曲の違いを探っていきます。UKの年間チャートに入りながらも、週間のHot 100に入らなかった曲は42曲ありました。ジャンル別にまとめると以下の通りです。

(Hot 100に入らなかった曲数 / UK年間チャートに入った曲の総数)

 

・UKラップ(13曲/13曲)

(4章に掲載)

 

・UK産男性SSW(10曲 /19曲)

Shotgun・Hold Me While You Wait・Just You And I・Take Me Back To London・Bruises・Grace・Leave A Light On・Outnumbered・Hold My Girl・Paradise

 

・ダンス(9曲 /13曲)

Giant・Piece Of Your Heart・Ride It・Sorry・Wish You Well・All Day And Night・These Days・Post Malone・What I Like About You

 

・女性ポップ(8曲 /20曲)

Thursday・Mad Love・Lost Without You・So Am I・2002・Don’t Feel Like Crying・Let You Love Me・Woman Like Me

※Showmanとクリスマス曲は除く、”Señorita”はShawn Mendesメインととらえる

 

・その他 (2曲)

3 Nights・The Greatest Show

 

 

 ラップは前の章で語った通り、「地産地消」の傾向が強いためすべてUSでランクインせず。Stormzyはある程度海外進出を果たしたものの、USのチャートには入らず。

 

 UK産男性SSWは近年UKでの花形ポジション的存在。このジャンルを牽引しているのは、もちろんEd Sheeran。彼の世界的大ブレイクに続く形で、昨年のGeorge Ezra、今年のLewis Capaldiなど大スターが多く登場しています。この3人以外では、Tom Walker、Dermot Kennedyがランクイン。USでのブレイクはラジオでのオンエア次第といったところでしょうか。

 USではこのポジションに当てはまるような「ポップスの」男性SSWの年間チャートへのエントリーは少ないですが(7曲*7)、カントリー界から多くの男性SSWがエントリーしています。(ただしカントリー界には自ら曲を書かないシンガーも一部いる)

 

 ダンスはUSであまり人気の無いジャンル。一時期EDMの大ブレイクでUSでも人気が出ましたが、2010年代終盤では勢いが衰え、ダンス系のヒットは減少しました。UKでは従来から人気のジャンルで、現在も地位を確保しています。UK発のダンス系曲が「US以外の」あらゆる地域で人気を得るようなケースが例年いくつか見られます。今年は”Giant”など。”Piece of Your Heart”のMeduzaはイタリア出身ですが、UKでの順位の方が上です。

 

 女性ポップ人気は、UKでの全体的なポップ人気の高さに基づきます。Anne-MarieやRita OraのようなUKのシンガー故、USとUKでの人気にギャップがあるパターンもありますが、Ava MaxのようにUSシンガーながらもUKの方が大規模ヒットになるケースもあります。(昨年だとJason Deruloがこのパターン)

 

 

 

6 レガシーソングスたち

 2017年以降、”Mr. Brightside”が連続で年間チャート入りするなど、UK年間チャートでは古い曲のエントリーが際立ちます。今年はそのような曲が7つもありました。(ほかLizzoの2曲も元のリリースはかなり前)

 古い曲を整備するルールを週間チャートで導入している点はUSと同じですが、UKではそれが年間チャートに導入されないため、このような曲がランクインします。

 

46位 Ed Sheeran - Perfect

63位 The Killers – Mr. Brightside

64位 QueenBohemian Rhapsody

76位 Ed Sheeran – Shape of You

84位 Mariah Carey – All I Want For Christmas Is You

95位 Wham! - Last Christmas

99位 Queen – Don’t Stop Me Now

 

 2章で触れたように、UKの年間チャートでは週間チャートのポイントではなく、純粋な年間の合計売上量でランキングが作られるので毎週の数字が地味でも、積み重ねで年間チャートまで到達するケースもあります。”Don’t Stop Me Now”はわずか1週の滞在で年間チャートに入っています。それだけ年間で通して聞かれていたということでしょう。

 クリスマス曲以外の5つの特徴は、特に今年は浮上のきっかけが無かったものの、元のヒットをベースにその人気がとても長持ちになった、ということですかね。映画の効果が薄れそうなQueenの2曲は微妙ですが、Ed Sheeranの“÷”の2曲と“Mr. Brightside”は来年も年間チャートに入るかもしれません。

 ちなみに”Mr. Brightside”は2010年代通して驚異的な粘りを見せており、この年代での週間ピークは28位ながらも、Decade-Endのチャートでは12位に入っています。特筆すべきリバイバルが無くとも、安定して人気が継続すれば積み重ねでいつの間にか巨大になる、というデジタル時代の特徴が顕著に現れた1曲です。ストリーミング時代になって、アクセスの容易性が下がったことから、この傾向はさらに強化されるような予感です。

(↑Decade-Endチャート)

 この曲以外に1994年の”All I Want for Christmas Is You”が77位に、1995年Oasisの”Wonderwall”が78位に、1982年Journeyの”Don’t Stop Believin’”が87位にランクインしています。”Believin’”はGlee Castのカバーという再注目のトリガーがありました。

 

 

 話を今年の年間チャートに戻します。2つのクリスマス曲は逆に短期間で集中してポイントを得て年間チャートに入っています。クリスマスムードに入るのは11月~12月とそこまで長くはないですが、その短期間で爆発的な人気を得ているのです。UKのSpotifyでは、一日の再生数が多い曲の歴代トップ5をクリスマス曲が独占しています。クリスマス期間は再生数の規模が全体的に伸びるということです。

 

 とても古い曲以外にも、継続してヒットするような曲が今年は多く見られ、以前も年間チャートに登場したことのある曲数が昨年12→今年24と大きく増加しています。

 

 

 

 

おまけ 予想の答え合わせ

年間チャート トップ10 半年前予想! 2019 (USシングル) - チャート・マニア・ラボ

 

  予想 結果
1 Someone You Loved Someone You Loved
2 I Don't Care Old Town Road
3 7 rings I Don't Care
4 Sweet but Psycho bad guy
5 Giant Giant
6 Old Town Road Sweet but Psycho
7 Don't Call Me Up Vossi Bop
8 bad guy Dance Monkey
9 Ed Sheeranのアルバム曲 Don't Call Me Up
10 Hold Me While You Wait Señorita

 

 昨年ほどは当たらず。昨年はトップ10が8曲正解・ピタリは4曲でしたが、今年はトップ10が7曲・ピタリは2曲に。

 ただUSと違ってラジオが無く、その分後半の調子が読みづらいため、USよりも予想の難易度が高いと思います。去年の予想がちょっとラッキーで、今年は「こんなもんかな~」ぐらいに思っていただけると幸いです。(個人的には満足です!)

 

 

関連記事

 

・この記事の昨年版

 

・この記事のUS版

 

*1:リリースが遅ければ、その分集計される期間も短くなるということ

*2:あと余談ですが、USの年間チャートでトップ10かぶりが無かったのは2012年の1回のみです

*3:feat. Idris Elbaの表記が他の媒体ではされているが、UKチャートではクレジットされていない

*4:セールス週間4位

*5:12曲まで・上位2曲は減算など 参考:Official Albums Chart to include streaming data for first time

*6:ストリーミングを制限するにしても、ルールはどちらか一つで良い気がしますけどね。USと比べてアルバム単位でストリーミングがやや少ないUKでは上位2曲の減算は効果抜群でしょう。

*7:Ed Sheeran2、Sam Smith2、Lewis Capaldi1、Dean Lewis1、Bazzi1

Hot 100 1/18 特集 【ルール変更:YouTubeの集計は公式ビデオが中心に】

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 今週YouTubeに関するルール変更がありました。面白そうなので、記事にまとめることにしました!公式ビデオ・ユーザー作成ビデオに関するルール変更です。

 ↑の画像は今週のYouTube「楽曲」ランキング。↓の「ビデオ」ランキングと比較すると数字にギャップがあることが分かります。(=公式ビデオ以外からの再生数も一定数あるということを示す) *1

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◇今週のHot 100 ハイライト◇

・Roddy Ricchの”The Box”がJustin Bieberを退け首位浮上!ストリーミングの数字が圧倒的(6820万)。彼はアルバムも1位

・Justin Bieberの”Yummy”は2位。セールスとラジオで抜群の成績も、ストリーミングは”The Box”の半分以下

・BROCKHAMPTONが初のHot 100入り!”SUGAR”が70位

YouTubeに関する集計変更で”Old Town Road”が15位→46位に。”Ransom”は33位から圏外に

 

 

1~100位までの順位表は↓

  

 

1 YouTubeのルール変更について

 突如ルール変更が来ました。今週のトップ10解説記事の後半に記載されています。

 

まとめると……

YouTubeからの再生を公式ビデオ・非公式ビデオで別々のカウントにする

・ユーザーが作成した非公式ビデオのうち、「曲」の体裁を成しているものは再生数のカウントをラジオ型ストリーミングと同じ水準に(=3/4引き下げる*2

・ユーザーが作成した非公式ビデオのうち、「曲」ではないもの、例えば複数曲が集められたコンピレーションなどは集計の対象外になる

 

 下記のアルバムチャートでの変更と合わせて「公式ビデオ重視」の路線を打ち出しました。「歌の体裁を成している」で主に該当するのは、ユーザーによる独自のリリックビデオなど。「成していない」で主に該当するのは、複数曲が含まれるコンピレーションなどです。

 勘違いされやすいのですが、「ユーザーに作成された」といっても後ろめたいものではなく、コネクトidというシステムで曲を使用した際には、権利の管理者側が収益を受け取る or ブロックなどの選択肢を取ることができます。

 

 この変更で大きな下降を見せた曲がいくつかあります。

・Old Town Road 15位 → 46位

・bad guy 15位 → 34位

・Ransom 33位 → チャート外(=51位以下相当)

・SLOW DANCING IN THE DARK 80位 → チャート外(=101位以下相当)

・ROXANNE 5位 → 9位 (順位の下降は地味ですが、ラジオが大幅に伸びながらも順位が下降しているのは変更のダメージを受けたと推測される)

 

 影響を受けた曲の数はそこまで多くないものの、その一部の曲はかなりの下落幅を記録しています。他の集計方法に関する記述はなく、据え置きのままと思われるので、他の指標で人気な曲が相対的に少し比重を上げたことになります。従来から強かったラジオやApple/Spotifyが今後もチャート上位を占めるものと思われます。

 

 

2 非公式ビデオの除外について考える

 1で紹介したルール変更の良い点、悪い点について考えていきます。まず、良い点として挙げられるのは「深追いしすぎ」だったのを改善できたという点です。

 YouTubeは収益が他の媒体と比べて収益が低すぎる点を指摘されています。それが非公式ビデオともなれば、さらに収益が下がるかもしれません。またコンピレーションであれば、アーティストの文脈からは「かなり離れた」コンテンツであります。

 私はミームが発生しても、それがいかに実際的な評価=有料ストリーミングなどの「見える評価」に変わることが大切と考えていました。つまりミーム単体で成立している曲と実際にApple/Spotifyで伸びる曲の間には大きな壁があると考えています。

 そのことから、収益面でも、アーティストに対する評価面でも寄与率が低いと考えられるこのタイプの動画まで集計する「深追い」のバランスが改善された、という見方もできます。

 

 一方悪い点として挙げられるのは、現在音楽消費の中心にいるストリーミングが相対的に弱体化されることです。個人的にはこっちの方が気になります。ストリーミングの一部の比重が下げられ、他が据え置きということで、Hot 100では主にラジオ(とDL)の比重が相対的に上がっています。

 このラジオの「相対的な強化」は今回が初ではなく、以前もありました。2018年7月に「無料会員の再生は2/3、プログラム型=ラジオ型再生は1/2」という変更があり、他の指標は据え置きだったため、その週ラジオで人気の曲が多く登場しました。(その週の記事:Hot 100 7/14 見どころ 【チャートの微調整でラジオに追い風が吹く可能性も? / Drakeの週】 - チャート・マニア・ラボ

  現在音楽消費を牽引しているストリーミングが2連続で比重を落とされるのは疑問に感じるので、このような変更をするならば全体的なポイント比重のテコ入れをするべきと私は考えています。

 

☆個人的な案

セールス:ストリーミングの比率がアルバムチャートよりもはるかにセールス重視に設定されているので、その比率をアルバムチャートと同程度にします。(とはいっても規模が小さいのでそこまでチャートに影響を与えませんが。ただ最近はバンドル戦略をシングルにも持ち込むアーティストが増えたため、要注目かも)

セールスは現状「固定ファンによる初週ブースト」の数字になっており、ヒットを証明するものとは微妙に違う印象です。

 

ラジオ:これの比重が強いせいで、ストリーミングでの人気が既に下がった頃合いにHot 100でピークを迎えることが多発。ラジオは依然として重要な指標とは思っていますが、現状のHot 100ではラジオのパワーが強すぎると感じます。

 

このことから……

セールス:実数/6 → 実数/10に変更

ラジオ:従来のポイントを×0.9

ストリーミング:従来のポイントを×1.1

が良いと考えました。現行のチャートシステムはMusic Pulse Boardで考案されたものを参考にしています。

 

 

3 アルバムチャートにビデオが入ったことについて

 こちらは事前に告知がありました。アルバムチャートでビデオの再生数が適用。公式ビデオのみが対象。RIAA(プラチナ認定などをする機関)では元々ビデオのストリーミングも集計対象だったため、これに近づいたことになります。 (RIAAでも同様に公式ビデオのみ。ただし、無料/有料会員で区別をするという記述は見当たらず、ビデオの比率がビルボードと比べて高いと思われる) 

 ただしこれの効果は限定的なものになっています。主要なビデオ媒体であるYouTubeからの再生は「広告付き再生」に分類され、少なく計算されていることが大きいでしょう。また、YouTubeではアルバム単位での再生はあまりされず、一部の曲(特にビデオがある曲)のみに再生数が集まりやすく、「アルバム全体の再生数」が伸びづらいことも関係しているかもしれません。

  ちなみに全盛期の”Old Town Road”でもプラス分は+1万になるかどうか程度だと思います。

 

※現行アルバムチャート

有料会員のストリーミング再生は1250 = 1枚

無料会員(広告付き)のストリーミング再生は3750 = 1枚

 これはそれぞれの1再生あたりの収益、または無料会員はアルバム単位での再生が難しいことなどが理由として考えられます。(例えばSpotify無料会員はアルバムの曲順がシャッフルしてしまう)

 有料会員の再生数の方が多く、だいたい1再生=1300~1350程度になることが多いです。(従来はすべて1500再生 = 1枚だった)

 

 

4 “The Box” vs “Yummy”について

 これもビッグテーマの一つ。気鋭のRoddy RicchとJustin Bieberの激しい1位争いは前者に軍配。ストリーミングで圧倒的な数字を残しました。Apple MusicとSpotifyの両方で圧倒的な首位。ビデオ無しながらもYouTubeでも首位です。

 DLとラジオではJustin Bieberが大きく上回りましたが、ストリーミングでの差が非常に大きかったです。(”The Box”は6820万、”Yummy”は2930万)

 

 “The Box”はアルバムリリースとともに頭角を表し、プレイリスト入りやミームでその規模を拡大する、というストリーミングらしい手法でヒット。気鋭のラッパーがストリーミングの爆発的人気によってビッグスターの新曲を抑えて1位を獲得するのは昨年の“Old Town Road”を彷彿とさせます。Justin Bieberは昨年の”I Don’t Care”に引き続き連続でこのパターンで1位を防がれています。

 ヒットの要因で大きいのはアルバム単位での人気を集められたことですかね。それだけアーティストに対する期待度が高かったということです。現在のストリーミングでは(特にApple)ではアルバムリリース時に規模が伸びることも多く、アルバムで成功できるアーティストがそのままシングルでもヒットを飛ばしやすい傾向にあります。

 また、閑散期にリリースされたことも要因の一つでしょうか。新リリースが少ない12月では珍しい上昇曲だったので、SpotifyのToday’s Top Hitsにも2週目に追加され、そこからさらに再生数を伸ばしました。そこから雪だるま式に再生数を伸ばしていきました。 

 現在Roddy Ricchという存在に対して大きな注目が集まっているのか、その他の曲も上昇中。Mustardを迎えた”High Fashion”は35位まで上昇。ほか“Start Wit Me”、”Tip Toe”、“Peta”と合計5曲がHot 100入りを果たしています。また、彼が客演するMustardの”Ballin’”も今週11位とピークを更新しています。アルバムチャートでは1位に再浮上。

 

 一方“Yummy”もそこまで悪くない成績を残しています。セールスは7.1万を記録。昨年6月の”You Need To Calm Down”(7.9万)以来最高の数字です。この数字はアルバムチャートで見られるような「グッズ戦略」と似たような手法で稼がれています。公式サイトで販売されたヴァイナル・カセット(一部サイン付き)が人気で、これの占める分量がかなり多いと思われます。(おそらく過半数

 ラジオも同様に好調。1週目ながらも既に”The Box”を凌駕するオンエア。彼が本来得意とするポップ系だけでなく、アダルトポップ、リズミック、アーバンと幅広い系統でオンエアが始まっています。アダルトポップとアーバンが両立する曲はなかなか珍しいです。(例えばPost Maloneの“Circles”はアダルトポップでオンエアされるが、アーバンではオンエアされない)

 しかしストリーミングで“The Box”に及ばず。どの媒体でもトップ10には入っていて悪くはない成績ですが、Justin Bieberとしては物足りないといった印象でしょうか。ラップ曲天下のApple Musicで1位にならないのは想定通りなのですが、Spotifyで”Roxanne”にも負けて3位だったこと、ビデオも用意したのにYouTubeで2位だったことは少し予想外でした。(”The Box”はビデオ無し)

 複数種類用意されたビデオからは「何が何でも1位を獲得してやる!」という強い意思を感じましたが、そのストリーミングで思うような数字を残せませんでした。

 さらに公式インスタグラムで一瞬アップロードされた「どうやったら“Yummy”は首位になるのか?」というファン向け投稿では、VPNを偽装(=居住地偽装)してストリーミングを伸ばすことを奨励しており、ネガティブな印象を残しています。

 

ちなみにRoddy Ricchはこんな発言をTwitterでしています。

 

 一見ライバルを励ます?かのようなツイートにも見えますが、これが発信された1/11は既に”Yummy”が一番伸びやすい1週目の集計が終わった後なので、個人的には「励ましに見せかけた勝利宣言」なのでは?とも考えました。そこまで深いこと考えているかは不明ですが。

 

一見謎のツイートだったのですが、次の週のアルバム1位を争う関係でもあるんですね。これも競合相手をなぜか応援。関係ふぁぼ・RTが上のツイートを越えています。Roddy RicchはSNSの扱いがうまそうな予感。

 

 

5 その他の新規エントリーについてざっと説明

 

☆60 Moneybagg Yo feat. Lil Baby – U Played

 Tay Keithプロデュースの1曲。彼はアルバムを先日リリースし。次のチャートに反映されます。

 

☆70 BROCKHAMPTON – SUGAR

 グループ初のHot 100エントリー!AppleSpotifyで大きく上昇中。そしてポップ系ラジオでもオンエアされています。(ビルボードのポップ系ラジオチャートにはまだ入っていない)

 

☆95 Dpja Cat – Say So

 TikTokでの人気も確認される1曲。このようなタイプの曲は今週大きく順位を下げたと説明しましたが、この曲はしっかりSpotify / Appleでも人気なのでHot 100入り。

 

☆98 Baby Keem – ORANGE SODA

 初のHot 100エントリー。人気はSpotify > Apple。アーバン系ラジオでもオンエア。

 

 

Hot 100に入った曲 (☆新登場 ◇再登場)

◇99 Moneybagg Yo & Megan Thee Stallion – All Dat

☆98 Baby Keem – ORANGE SODA

◇96 YoungBoy Never Broke Again – Make No Sense

☆95 Doja Cat – Say So

☆94 Lil Tjay – 20/20

☆93 Carly Pearce & Lee Brice – I Hope You’re Happy Now

☆90 Olivia Rodrigo – All I Want

◇86 Roddy Ricch feat. Meek Mill – Peta

☆70 BROCKHAMPTON – SUGAR

☆60 Moneybagg Yo feat. Lil Baby – U Played

☆2 Justin Bieber - Yummy

 

 

今週チャートから外れた曲 (11曲)

【先週の順位、アーティスト名、曲名、🗻ピーク順位、⏰チャート滞在週数】

98 Anuel AA, Daddy Yankee, 等... - China (🗻43位 /⏰18週)

97 Diplo feat. Morgan Wallen – Heartless (🗻78位 /⏰4週)

96 Doja Cat – Candy (🗻86位 /⏰6週)

95 DJ Snake, J Balvin & Tyga – Loco Contigo (🗻95位 /⏰2週)

94 Juice WRLD – Let Me Know (🗻78位 /⏰3週)

92 Ant Saunders – Yellow Hearts (🗻81位 /⏰8週)

91 Trippie Redd feat. DaBaby – Death (🗻59位 /⏰7週)

80 Joji – SLOW DANCING IN THE DARK (🗻69位 /⏰13週)

69 JACKBOYS, Pop Smoke & Travis Scott - GATTI (🗻69位 /⏰1週)

47 Lil Baby & DaBaby – Baby (🗻21位 /21週)

33 Lil Tecca – Ransom (🗻4位 /31週)

 

 

~その他のHot 100情報~

 

・今週のトップ10

△1◎ Roddy Ricch – The Box 🍎✅🚩

☆2◎ Justin Bieber – Yummy

▽3  Post Malone – Circles

▽4  Maroon 5 – Memories

△5◎ Dan + Shay & Justin Bieber – 10,000 Hours

▽6  Lewis Capaldi – Someone You Loved

―7  Tones And I – Dance Monkey

▽8  Lizzo – Good As Hell

▽9◎ Arizona Zervas – Roxanne

―10◎ Selena Gomez – Lose You To Love Me

🍎=Apple Musicで1位、✅=Spotifyで1位、🚩=YouTubeで1位

 は先週と比べて曲のポイントが伸びていることを指す

 

 

・Hot 100圏外の曲のうち各サービスで最も人気のあった曲

🍎 Roddy Ricch feat. Ty Dolla $ign – Bacc Seat (今週17位程度)

✅ Harry Styles - Falling (今週42位)*3

🚩 YoungBoy Never Broke Again – Bring ’Em Out (今週24位) 

Apple Musicは週の最終日の順位を週間の“参考順位”としています(Apple Musicには週間チャートが無い)

 

 

 

・各指標の順位

Spotifyhttps://spotifycharts.com/regional/us/weekly/2020-01-03--2020-01-10

Apple Music:【魚拓】Top 100: USA on Apple Music

YouTubehttps://charts.youtube.com/charts/TopSongs/us/20200103-20200109

・ラジオなど:https://kworb.net/radio/

 

 

 

 

 

*1:"Yummy"はリリックビデオも11位にランクイン。しかし合計しても「楽曲」の再生数には少し及ばない

*2:有料会員の再生を1とすると、YouTubeなどの無料会員の再生は2/3、パンドラなどのラジオ型ストリーミングは1/2で集計される

*3:不正操作疑惑のFrench Montanaは除く