チャート・マニア・ラボ

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Hot 100 1/27 見どころ 【Dua LipaがUSトップ10 / カミラのシングル&アルバム両取り】

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 今週はDua Lipa、Camila Cabelloと女性シンガー2人が活躍。前者はイギリスの女性シンガーとしては珍しいUSトップ10を記録、後者はシングルとアルバムの両方で1位を獲得しています。

*1

 また、The Cranberriesのボーカルが亡くなったことを受けて、何曲かがダウンロードを伸ばしていましたが、Hot 100には1曲も入りませんでした。

 

 

98 Enrique Iglesias feat. Bad Bunny – El Baño [New]

 スペイン出身のシンガーEnrique IglesiasがBad Bunnyを迎えたEl Bañoが98位で登場。既にラテン系ラジオでは8位まで到達しており、ラジオで人気のようです。

客演のBad Bunnyは昨年、ラテン系の楽曲で多く客演を担当。今週Hot 100に入っているMayores (93位)、Krippy Kush(95位)のほか、J Balvin、Prince RoyceのSensualidadも115位(相当)にランクイン。今年も多く名前を見かけそうです。もしかしたら英語圏のラッパーとの絡みも多くなるかもしれません。

ちなみにEl Bañoは「お風呂」または「バスルーム」の意味で、時と場合によっては「トイレ」のニュアンスが出るようです。

 

92 Dua Lipa – IDGAF [New]

 Dua LipaのIDGAFがビデオリリース効果*2により、92位で登場。New Rulesのビデオに対する評価が高かった流れから、これもなかなか凝ったビデオになっています。彼女のデビューアルバムからは7曲目のシングルに当たるこのシングルですが、まだラジオではかかっていないようでヒットになるにはまだ少し時間がかかるかも(New Rulesがまだシングルとしてバリバリ活躍中のため) 母国イギリスでは既に14位まで上昇しています。

 この曲はイギリスのシンガー/プロデューサーMNEKがソングライトに携わっています。彼はBeyoncéのアルバムにも関わった経験を持ち、イギリスではLittle MixのTouch、Jax JonesのYou Don’t Know、StormzyのBlinded By Your Grace Pt.2など多くのUKトップ10に関与しています。アメリカでもZara LarssonのNever Forget Youを13位に導き、成功を収めています。

 

91 Jay Rock, Kendrick Lamar, Future & James Blake – King’s Dead [New]

 映画ブラックパンサーのサントラからの1曲。Jay RockらのKing’s Deadが91位で登場。先週Hot 100に登場したAll the Starsに続くリリースです。ヒップホップグループBlack Hippy、レーベルTDEなどでKendrick Lamarと関わりの深いJay Rockは初のHot 100に。

イギリス人シンガーのJames BlakeはKendrick LamarのELEMENT.に関与しており、今回は再タッグということに。彼はBeyoncéのForwardにも関与するなど、USヒップホップ/R&B界隈でも近年活躍しています。

 

80 Troye Sivan – My My My! [New]

 オーストラリアのシンガーTroye SivanのMy My My!が80位で登場。Happy Little Pill (92位)、Youth (23位)、Martin GarrixとのThere For You (94位)に次ぐ4曲目のHot 100入りです。

 チャートの集計が始まる金曜日よりも少し前のリリースで、リリース後数時間のポイントが先週に回ったためか、思ったよりは少し低い順位での登場に。今後はラジオでのポイントを活かしての上昇が期待されます。セクシーな一面もあるビデオにも注目です。Lordeはこのビデオを”Spicy”と評しています。

 

 

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https://twitter.com/lorde/status/951994023253745664ps://twitter.com/lo
https://twitter.com/lorde/status/951994023253745664rde/status/951994023253745664

 

71 YoungBoy Never Broke Again – Outside Today [New]

 ルイジアナのラッパー、YoungBoy Never Broke AgainのOutside Todayが71位で登場。このシングルはアルバムUntil Death Call My Nameに収録されると考えられているようです。Apple Musicでは14位、Soundcloudでは9位と好調な一方、Spotifyでは200位圏外とストリーミングサービスによって人気が分かれています。

 

64 6ix9ine, Fetty Wap & A Boogie Wit da Hoodie – KEKE [New]

 昨年末から勢いよくチャートを駆け上がり、一気に注目を集めている6ix9ine。Fetty Wap、A Boogie Wit da Hoodieと組んだKEKEが64位で登場。彼の人気が高いSoundCloudでは現在1位を獲得。それだけでなくApple Musicで8位、Spotify56位と他のサービスでの人気も上昇中。勢いが増してきているように思います。この曲は日曜日リリースで、今週の集計は5日分だったため、7日集計の来週のチャートではさらに順位を上げる可能性も。

 またFetty WapはFifth Harmonyの客演を務めた2016年のAll In My Head以来の久々のHot 100に。

 

47 Carrie Underwood feat. Ludacris – The Champion [New]

 Carrie UnderwoodのThe Championが47位で登場。今週3番目に多いダウンロード数により、高い順位でのHot 100登場を達成しています。Carrie Underwoodのパワフルな歌声が炸裂するかなりポップな1曲で、カントリー系ラジオでどのような評価を受けるのかが気がかりです。また、このシングルが次のアルバムからのシングルなのか、またそもそもシングルなのか(ラジオにかかるのか?)もまだ不明みたいです。

※テレビ局のスーパーボウル冬季オリンピックのテーマみたいです

 ほか今週はカントリーデュオ、Dan+ShayのTequilaも84位で登場。

 

36 Kodak Black feat. XXXTentacion – Roll in Peace [↑]

 ビデオリリースの効果で少し順位を上げたKodak BlackのRoll in Peace。トップ40入りを成し遂げています。Kodak BlackもXXXTentacionもこれで3曲目のトップ40です。 (Tunnel Vision, Drowning / Look At Me!, Jocelyn Flores) 既に22週目のチャート滞在ですが、Hip-Hop / R&B系ラジオで上昇中 (今週42位 → 38位)なので、もう少し伸びシロがあるかも。

 また、幅広い系統のラジオでかかっているN*E*R*DとRihannaのLemonも今週40位とトップ40入りを達成。N*E*R*Dは初のトップ40に。

 

18 Taylor Swift feat. Ed Sheeran & Future – End Game [↑]

 こちらもビデオリリースによる上昇。Taylor SwiftらのEnd Gameが36位 → 18位と上昇。ビデオの効果がHot 100でも表れたと言えますが、Taylor Swiftがこの水準で満足できるか?という気もします。ビデオのリリースによって一気に1位を獲得したBad Bloodほどまでは行かずとも、トップ10には入りたかったのでは?とも思います。

 Hot 100の順位を上げるためのプロモーション戦略は主に3つあると思います。その3つはビデオ、ラジオ、iTunes割引です。このEnd Gameはビデオをリリースし、またラジオでは停滞中なので、残る手段はiTunes割引のみに。一見ビデオのリリースで勢いづいたようにも見えますが、チャンスだった今週トップ10に入れなかったことにより、トップ10入りに黄色信号が灯ったように思います。

 

8 Dua Lipa – New Rules [↑]

 好調をキープしていたDua LipaのNew Rulesが遂にトップ10入り!2010年代では5人目のイギリス人女性シンガーのトップ10入りです(客演は除く) 

 

Adele (Rolling in the Deep, Someone Like You, Set Fire to the Rain, Skyfall, Hello, Send My Love)

Jessie J (Domino, Bang Bang)

Ellie Goulding (Lights, Love Me Like You Do)

Charli XCX (Boom Clap)

Dua Lipa (New Rules)

 

客演

Lauren Bennett (Party Rock Anthem)

Lily Allen (5 O'clock)

M.I.A. (Give Me All Your Luvin')

Florence Welch (Sweet Nothing)

Charli XCX (I Love It, Fancy)

Foxes (Clarity)

Rita Ora (Black Widow)

Jess Glynne (Rather Be)

Kyla (One Dance)

Anne-Marie (Rockabye)

 

 このNew Rulesはビデオが人気を博し、Spotifyなどでも人気を得ていた1曲で、昨年の夏頃ピークを迎えていました。母国イギリスでは昨年8月に1位を獲得しています。アメリカでもSpotifyではその時期にそこそこ人気があったのですが、ラジオでかかっておらずポイントが足りずにHot 100に入れず。このように、ストリーミングのピークとラジオのピークがズレるとポイントが分散してしまい、Hot 100で思うような成績が出ないこともありますが、New Rulesはストリーミングの数字をキープしつつラジオで上昇することに成功。今週ラジオ4位にまで浮上しています。

 さらに、この曲のヒットにより彼女のデビューアルバムが注目を集めています。リリース時はアルバムチャートで86位でしたが、今週はアルバムチャート32位にまで上昇。ピークを更新しています。

 

1 Camila Cabello feat. Young Thug – Havana [↑]

 Camila CabelloのHavanaがついに1位に浮上!アルバムリリースの効果でダウンロードとストリーミングが伸びたことが大きかったです。歴代で7番目*3に長い23週目での1位獲得を達成した遅咲きシングルです。最初は正式なシングルではなかったのですが、ストリーミングでの人気を受けてシングル化(ラジオでかける)してみたところ、見事1位を獲得しました。

アルバムもThe Greatest Showmanとのレースを制して見事1位を獲得しています。セールスではCamila Cabelloの方が下だったのですが、ストリーミングやシングルセールスで逆転しました。ストリーミングの面では女性シンガーとしては珍しく、Spotifyのランキングにアルバム全曲が入っていたことが印象的でした。

シングル / アルバムの1位を同時に獲得したのは昨年のKendrick Lamar以来、女性では2016年のRihanna以来です。また昨年のZaynと同じように、グループ時代は成し遂げられなかったHot 100の1位を、脱退してソロになって初めて成し遂げました。またFifth Harmonyはアルバム1位をまだだ取っていないので、Camila Cabelloにとってはアルバム1位も初です。*4

 また、同様に次シングルのNever Be The Sameも30位まで浮上しています。ほかConsequencesが119位相当、Real Friendsが106位相当にランクインしました。

詳しい記録についてはビルボードが記事にしています↓


  この曲はCamila Cabello、Young Thugにとって初の1位なだけではなく、この曲のソングライターの多くも初の1位。Frank Dukes、Starrah、Andrew Watt、Brian Leeは過去に複数曲のトップ10を記録していたものの、今回のHavanaまでは1位がありませんでした。ほかのソングライター、Ali Tamposi、アディショナルボーカルも担当しているPharrellは過去に1位歴あり。

 ただし、アルバム効果が無くなる来週は1位から落ちてしまう見込み。元々1位だったPerfect、もしくは後述のDrake のGod’s Planあたりが候補と思われています。

 

× Bruno Mars – That’s What I Like [↓]

 1位も獲得したBruno MarsのThat’s What I Likeが1年(52週)の滞在の末、遂にチャートから外れました。ロングヒットの理由はラジオでの活躍。以前まではポップ系ラジオで主に活躍していたBruno Marsでしたが、アルバム24K Magic以降はR&B系のラジオにも進出。このThat’s What I Likeでは見事Hip-Hop / R&B系ラジオの1位を獲得。より幅広いリスナーに受け入れられたという意味で、この曲は彼のキャリアで重要な一曲であると言えそうです。

 

× Luis Fonsi & Daddy Yankee feat. Justin Bieber – Despacito [↓]

 That’s What I Likeと同じく、Despacitoも1年のチャート滞在の末、チャートから外れました。昨年の大ヒットが2つ今週大往生を遂げています。ちなみにShape of Youは54週目にして21位と粘りを見せています。

 上のThat’s What I Likeはラジオの粘りでロングヒットを実現しましたが、このDespacitoは2曲の連携を活かしてのロングヒットだったと思います。この曲はJustin Bieberリミックスがリリースされてヒットしたことが広く知られていますが、実はリミックスのリリース以前からピーク49位 / 13週、さらにこの時点で既にShape of Youよりも多くYouTubeで再生されるなど、かなりヒットしていました。そこにJustin Bieberのリミックスが加わり、「力のある曲が2曲をまとめて1曲として扱う」ような状態が出来上がりました。特にダウンロード、ストリーミングは原曲 / リミックスとダブルで加算されるため抜群の成績を誇っていました。(ラジオは原曲のほうがそこまでかかっていないのでダブルとまでは言えない)

 かつてリミックスといえば、原曲かリミックスかのどちらかが際立ち、両立することは少なかったように思いますが、ストリーミングのプレイリストの発展の影響かDespacitoは両立に大きく成功しました。今後も原曲 / リミックスの両立が相次ぐようなら、このDespacitoはその初の事例として今後も記憶されていくでしょう。

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Bruno Mars & Cardi B – Finesse

今週最もダウンロードが上昇した曲 Camila Cabello feat. Young Thug – Havana

今週最もストリーミングが伸びた曲 Camila Cabello feat. Young Thug – Havana

最も高い順位で新登場した曲          Carrie Underwood feat. Ludacris – The Champion

 

 

今週チャートから外れた曲 (8曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

100 Yo Gotti – Juice (🗻90位 /⏰6週)

97 Machine Gun Kelly, X Ambassadors & Bebe Rexha – Home (🗻90位 /⏰5週)

93 Niall Horan – Too Much To Ask (🗻66位 /⏰12週)

92 Clean Bandit feat. Julia Michaels – I Miss You (🗻92位 /⏰1週)

82 Liam Payne & Rita Ora – For You (🗻82位 /⏰1週)

56 Maren Morris – I Could Use A Love Song (🗻56位 /21週)

38 Bruno Mars – That’s What I Like (🗻1位 /52週)

34 Luis Fonsi & Daddy Yankee feat. Justin Bieber – Despacito (🗻1位 /52週)

 

 

来週以降にHot 100に入るポテンシャルを持った曲をピックアップしました

 

Drake – God’s Plan

土曜日に急遽リリースされたビッグな1曲。今週のHavanaを持ってしても抜けなかったPerfectを上回りそうなダウンロードと、アメリカでのSpotifyでの1日の再生数記録を更新するような大量のストリーミングを記録。一気に来週のHot 100の1位候補に浮上しています。不安材料はラジオのポイントがあまり期待できないこと(リリースから間もないこと、一番規模の大きいポップ系ラジオとは相性が悪そうなこと)、集計が6日分なことでしょうか。

 

Zedd & Maren Morris – The Middle

 Zeddが意外なゲストを迎えたThe Middle。こちらは火曜日リリース。つまり来週は3日分の集計なのですが、集計の短さを翻せるほどのダウンロードは記録していません。Hot 100に入るのは再来週と思われます。ちなみに粘りを見せていたMaren MorrisのI Could Use A Love Songでしたが、今週チャートから外れてしまいました。

 

 今週のプレイリスト

 

 

✫半年前のHot 100


✫1年前のHot 100

 

 

*1:サムネイル画像をチョイスするのが密かに楽しいのですが、2択で困った時は2ショットを探しています。Camila Cabelloは何か2ショットが多いのでサムネイル選びで助かっています

*2:今週のYouTubeビデオ世界ランキング20位に入っています

*3:タイ

*4:アルバムでは1位を獲得していたOne Directionと比較して、ということです。

UKシングル・2017年間チャートを10のポイントで振り返る

  イギリスの年間シングルチャート、ベスト100から読み取れるポイントを10個取り上げて、考察しました。ちなみにその100曲はこちら↓

 

 ちなみにこの記事を書いているのは2018年ですが、便宜上この記事では「今年」=2017年としています。

 

・ルールを変更させた? Ed Sheeranによるチャート支配 

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【Ed Sheeran】

 

 シングル年間1位、アルバム年間1位を両取りし、さらに年間シングル100位以内に11曲を輩出するなど、今年圧倒的な活躍だったEd Sheeran。SpotifyでShape of Youが世界で最も再生された曲(歴代)になるなど、世界的に主役だった彼ですが、母国イギリスでの活躍具合は群を抜いていたという印象があります。

 特にアルバムのリリースが反映された週のシングルチャートは衝撃的でした。

 

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2017/3/10付けのチャート。ちなみに18位、19位もEd Sheeranの曲です。

 

 Ed Sheeranのアルバムは12曲+ボートラ4曲の計16曲で構成されていて、当時はそのうちのShape of You、Castle on the Hillがシングルのような扱いを受けていました。つまり、残りの14曲はいわゆる「アルバム曲」で、それらの非・シングル曲がストリーミング数でほかのシングル曲を圧倒してチャート上位にのし上がったという現象が発生したのです。トップアーティストの持つ力の強大さがストリーミングで増しているともいえます。

 このようなEd Sheeranの衝撃的なチャート成績を見て、2017年半ばにイギリスのシングルチャートに新たなルールが追加されました。それは1アーティストにつき3曲までしか同時にシングルチャートに入れない、というもので、狙いはアルバム曲よりも「シングル」を重視するチャート作りを目指したものだと思われます。他にもこの数的制限により、有名アーティストがシングルチャートの枠を支配することを防ぎ、新しいアーティスト・新しい曲が多く入るチャートを目指すという狙いもあるようです。

 

(ここからチャートマニア向けの難しい内容)ーーーーー

 ストリーミングのチャートでの比率が増していく昨今、Spotifyのランキングとシングルチャートがかなり似通ったものになっていく傾向があります。その中で、「チャート」の独自性を出すために、様々なルールを新しく付けたという点は良いと思うのですが、実際に聞かれている新曲をチャートから除外することは正しいのか?という疑問はあります。Ed Sheeranの事例でいえば、シングルチャート4位相当の曲がチャートから除外されてしまうということなので、そこまでの人気曲をチャートで無視するのはかなり違和感があります。さらに、このルール変更は新しいアーティストのサポートになっているとも限らないという点も一つのポイントです。2017年はStormzy、J Husといったイギリスのラッパーが活躍。彼らはアルバムリリース時にストリーミングで凄まじい人気を得て、それぞれ15曲、9曲がシングルチャートに登場。この2人のアルバムはデビュー作で、彼らは間違いなく「新しいアーティスト」に該当するのですが、このルールが適用されたあとは、新人アーティストが一気にチャートに反映されることも無くなってしまいます。幸い(?)、彼らはこのルール適用前のアルバムリリースでしたが。

 良い点もあるこのルール変更ですが、実際のヒットを反映できないケースがあることや、新しいアーティストをサポートするとも限らないという点から、個人的には少しこのルールに懐疑的です。「枠を空ける」という目的ならば、古い曲に制限をかけるUS方式にすれば良い気もするので……ちょっとマニアックな領域となりましたが、今後このルールがチャートにどのような影響を与えるか?観察してきたいと思います。

※UKチャートはUSのチャートよりも、「わかりやすさ」を重視しているように思えます。

(チャートマニア向け終わり)ーーーーー

 

 

・リリースから13年!Mr.Brightsideの年間リスト入り 

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The Killers

 

 Ed Sheeranと並んで衝撃的だったのは、Mr.Brightsideが2017年の年間チャートに入ったこと。この曲はもともと2004年リリースで、その時は週間10位に入るものの2004年の年間チャートには入れず。しかし、2017年の今となって大復活を遂げました。

 リリースは最近ではないものの、2017年の年間チャートに入った曲としては他にAriana GrandeのOne Last Timeがあります。この曲は彼女のマンチェスターのコンサートでの爆発事件に対しての曲として話題となり、その後行われたOne Love Manchesterを象徴する一曲に。このように、One Last Timeは新たにシングルとして最注目された過程があっての今年の年間チャート入りでしたが、Mr.Brightsideはそのような理由以外でのチャート入りだと思います。

 The Killersは今年アルバムをリリースし、見事イギリスでもアルバム1位を獲得しましたが、シングルのThe Manは65位ピークで、そこまで存在感を発揮できず。また、Mr.Brightsideの2017年内ピークがアルバムリリースのタイミングではなく、それよりも前という点から「新譜に誘発されての再ヒット」という理由ではないことが分かります。

 この衝撃の13年越しの年間チャート入りの理由はストリーミングサービスにあります。Spotifyのイギリスのランキングを眺めると、だいたいMr.Brightsideは直近の新曲に混ざっておおよそ50位-70位に入っています。シングルチャートでは2017年内週間最高45位と爆発力はありませんが、それが1年ずっと続くとなるとかなり強力になります。ほかの新曲たちがそれぞれのピークを終え、チャートを下がっていくのを側にMr.Brightsideは定位置をキープし、気づいたら年末には今年のヒットを上回るまでのポイントを稼いでいた、ということなのです。

 おそらく、元々イギリスでかなり人気のある曲だったとは思われるのですが、それがストリーミングの拡大、またSpotifyなどのプレイリスト機能によって再発掘されたことによって、その人気が今年はじめて可視化されたということなのでしょう。

 2018年もMr.Brightsideは定位置をゆっくりキープして、もしかしたらまた年間チャートに入ってしまうかもしれません!?ただ、ルール変更で見られたようにUKチャートが「新しい曲の発掘」を目指すのならば、この曲をチャートでどうするのか?は避けられないテーマですね。

 

・2年連続の年間トップ10入り f:id:djk2:20180122221041j:plain

Zara Larsson】

 

 2016年→2017年の2年連続で年間チャートにトップ10入りしているアーティストが3人(組)います。

 まずはJustin Bieber。彼は2015年(What Do You Mean, Sorry)、2016年(Love Yourself)、2017年(Despacito)と3年連続でトップ10入りしていて、いかに近年のポップスを牽引しているかが分かります。2017年は客演仕事が多かったですが、2018年も同じように客演を受け持って、Despacitoのように誰かをスターダムに導くでしょうか。

 そして、The Chainsmokers。昨年はCloserで、今年はSomething Just Like Thisでの年間トップ10入りを果たしました。2016年末~2017年初頭にかけての彼らの勢いは凄まじく、Ed Sheeranと並んで今年のポップス界の顔ともいえる活躍を見せていたと思います。客演無しでここまでヒットを連発できたのは快挙といえます。

 最後に注目したいのは、Zara Larsson。昨年はLush Life、今年はClean Banditの客演を務めた*1Symphonyでの年間トップ10入り。まだ彼女はアメリカでは週間のトップ10入りの経験無し、さらにイギリスでも2017年にリリースしたアルバムが週間7位など、まだアーティストとしての地位が上がりきっていない段階なので、少し意外な記録なような印象もあります。しかし、この2年連続の年間トップ10入りは、それだけここ2年の彼女に対する期待感が相当高かったということを証明していると思います。また彼女はスウェーデン出身で、イギリスや北米以外のシンガー*2がここまで躍進しているという点でも注目すべき点だと思います。

 Zara Larssonのアルバムの評論メディアから注目は薄く、さらにアルバムリリース後のシングルは不発に終わってしまいましたが、ここ2年の熱量を再び取り戻すかのような大活躍を今後期待したいです。

 

・Dua Lipaがついに飛躍 +ほかのイギリスシンガー 

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【Dua Lipa】

 

 昨年から注目を受けていたDua Lipaがスターダムへ。New Rulesが夏頃に週間1位に上り詰め、年間11位まで食い込みました。また、YouTubeでは再生数が9億以上にまで達し、2017年にリリースされた英語曲のビデオの中では5番目*3に多い、と世界的にもブレイク。一気に「イギリス代表シンガー」という立ち位置にまでなったような気もします。彼女は他にもMartin GarrixとのScared To Be Lonely(年間42位)、Be The One(年間50位)、Sean PaulとのNo Lie(年間67位)と年間チャートに4曲をも送り込んでいて、今年かなり存在感がありました。

 ほかにも飛躍したUKシンガーは多く、また昨年末から大きな注目を受けていたRag’n’Bone ManはHumanがシングル年間9位にランクイン。ほかSkinも年間41位にランクインしましたが、彼はアルバムチャートでも大活躍しています。これらの曲が収録されたアルバム”Human”が今年の年間アルバム2位に!UKの大型新人ここにあり!という立派な成績をシングル、アルバムの両方で叩き出しています。

 R&BシンガーRAYEはJax Jonesの客演で年間10位入り。現在Ja RuleのAlways On Timeを大幅にサンプリングしたDeclineがシングルチャートを駆け上がっており、来年以降のさらなる飛躍に期待が持てそうです。

 ほかClean Banditの客演と、自身のAlarmが年間チャートに入ったAnne-Maire、客演を含む2曲が年間チャートに入ったRita Oraなど多様なUK女性シンガーが活躍していました。

 

・さらに勢いを増すLittle Mix 

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【Little Mix】

 

 昨年年間チャートに4曲がエントリーしたLittle Mixでしたが、今年は昨年よりも多い5曲が年間チャートに。自身のアルバムからの4曲(Touch、Power、No More Sad Songs、Shout Out To My Ex)に加えラテン系ボーイズグループの客演として参加したReggaeton Lentoのリミックス版が入っています。One Directionは活動休止し、Fifth Harmonyはメンバー脱退ならびに、今年のシングルはチャートで不調に終わるなど、他のポップグループ今年目立った活躍がなかったなか、Little Mixの今年の好調ぶりは際立ちます。今後USのヒットさえあれば、「世界代表・ポップグループ」にもなり得るかもしれません。

 

 

アメリカの歌手がイギリスで飛躍? 

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【Maggie Lindemann】

 

 アメリカのシンガーがUSよりもUKで飛躍するケースが数曲でありました。その代表例はMaggie LindemannのPretty Girl。この曲はCheat Codes, Cadeによるリミックスがストリーミングで人気を博し、躍進。イギリスでは週間8位まで達し、年間チャートでも28位に食い込みました。しかし一方母国アメリカでは、週間の100位にすら入れずあまり存在感を発揮できませんでした。アメリカのストリーミングではほぼラップ/R&B1強状態が続いており、Shape of Youなど一部を除いては、ポップスはそこまでストリーミングで数字を稼いでいません。また、アメリカのシングルチャートHot 100ではラジオも集計しているため、相対的にストリーミングの比率が低いこともあって、「ストリーミング発のポップス」は軒並みHot 100で苦戦する傾向にあります。

 他にもCamila CabelloのCrying in the Clubが年間74位に入り(アメリカでは年間チャートには入れず)、P!nkJason Deruloなども母国USよりは高い成績を記録。

もしかしたらUS出身の新人シンガーは母国USよりもUKを意識すると良いのかもしれませんね!?

 

アメリカと同じで元One Direction勢は…… 

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Harry Styles + Zayn】

 

 イギリスに限らず、世界的な人気を誇ったOne Direction。グループとしては活動休止し、それぞれがソロ活動に移行しましたが、グループ時と変わらず人気をキープしています。今年の年間チャートにはZaynがI Don’t Wanna Live Forever(52位)、Dusk Till Dawn(78位)の2曲、Liam PayneがStrip That Down(20位)、Niall HoranがSlow Hands(45位)、Harry StylesSign Of The Times(56位)でそれぞれ登場。しかしLouis Tomlinsonだけは年間チャート入りならず。彼のBack To YouやJust Hold Onは週間のトップ10に入ったものの失速して年間チャートに入らず……来年以降のリベンジが期待されます。

 ちなみに、アメリカでも同じくLouis Tomlinsonのみ年間チャートに入らず、残りのメンバーが年間チャートに入っていました。

 

 

・USヒップホップの浸透具合は? 

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【French Montana + Swae Lee】

 

 イギリスの年間チャートにおいて、2015:7曲、2016:9曲、2017:11曲と着実に数を増やしているUS(北米含む)のラップ曲。なかでも、イギリスで年間4位にまで食い込んだFrench Montana、Swae LeeのUnforgettableは特筆すべきチャート成績を残したといえます。Swae Leeは昨年末のBlack Beatlesに引き続きグローバルヒットを達成し、才能を世界に知らしめました。French Montanaもこの曲のヒット以降、イギリス出身のStefflon Donやフィンランド出身のALMAの客演を務めるなど、活躍の場をかなり広げた印象があります。

 また、今年は単にUSのラップ曲が増えただけでなく、Quavoが客演でも活躍し4曲が年間チャートに入り、Calvin HarrisがUSのヒップホップを強く意識した曲をリリースし、それが複数年間チャートに入るなど、USヒップホップの影響力がかなりイギリスの年間チャートにも現れるようになったといえます。また、2015年はFlo Ridaなどポップ系ラジオで主に人気なラッパーが多かったですが、2017年に入ったラップ曲はポップ系ラジオよりもヒップホップ色の強いラップが多く(ポップ系ラジオ人気のラップは1-800-273-8255くらい)、数以上にUSラップがイギリスで浸透しているとも言えると思います。

 

 

・UKヒップホップ元年になるか? 

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【Stormzy】

 

  上記の項目でUSラップが浸透してきたと述べましたが、UKラップ/ヒップホップはどうでしょうか。昨年年間チャートに入ったUKヒップホップ系の曲は4曲、そして今年の年間チャートに入ったUKヒップホップ系の曲は5曲なので、数の面からはあまり変化が見られません。しかし、USヒップホップの項目で述べたように「脱・ポップ」はUKヒップホップでも進んでいます。

 例えば昨年の年間チャートで、UKヒップホップでは最高位の26位に入ったTinie TempahのGirls Likeは客演Zara Larssonを活かしたポップ寄りのアプローチをした一曲。しかし今年の年間チャートに入った5曲(21位Did You See、44位Big For Your Boots、70位Bestie、92位Man’s Not Hot、94位Hurtin’ Me)はどれもヒップホップ寄りのアプローチをしており、サウンド面で「ヒップホップのヒップホップ化」しているように思います。ちなみにHurtin’ Meは最近USのヒップホップ系ラジオのお墨付きも得ています(かかりはじめている)

 中でもStormzyの躍進は目を引くものもあり、イギリスでアルバム1位を獲得し、グライムのアルバムとしては初の1位を達成。またLittle MixのPower(年間33位)でも客演を務め、メインストリームでも活躍。またイギリスティーンの選ぶ「首相になってほしい人ランキング」では3位に名を連ねています!(1位はEd Sheeran)

 

 他にもイギリスのR&BシンガーのMabelがラッパーのKojo Fundsと組んだFinders Keepersが年間76位に、またStormzyのBig For Your Bootsのビデオにも出演したイギリスのR&BシンガーRAYEが客演で年間10位にまで入るなど、関連ジャンルも活躍。来年は今年以上にUKヒップホップのヒットが生まれるかもしれません!

 

・昨年よりは流動的? 

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【Drake】

 

 昨年は週間1位を獲得したシングルが14曲でしたが、今年は18曲に増加。またトップ10シングルも昨年75曲から、今年は98曲に増加。年間チャートでもその「流動」ぶりは反映されており、昨年はトップ10に入らずとも年間チャートに入った曲は27曲でしたが、今年はそのような曲は16曲にまで減少。ヒットが週間チャートで目立つ成績を残せるようになったといえます。

 このことの一つ目の理由としては、ストリーミングのパワー増加で非シングル曲がトップ10に達するようになったこと。Ed Sheeranの項目で説明したように、超人気アーティストの曲であればシングルではなくても、一時的にその他のシングルを上回ることもあります。*4しかし、それらの「非シングル」は、ビデオ・iTunes割引などの継続的なプロモーションが無いため、リリース時のインパクトをそこまで維持できません。このことにより、短命のトップ10が生まれ、トップ10が流動的になるのです。

 もう一つの理由は、チャートのルール変更です。「1アーティスト3曲ルール」がチャートに適用された時、同時に「古い曲の制限」というルールも適用されました。このルールについて詳しい説明は無いので、何を基準に「古い」なのかは不明ですが、たしかにSpotifyiTunesの数字などと比べるとチャート順位が低い曲が最近増えたような気がします。このルールについての詳しい説明が無いため、はっきりとは言えませんが、このルールもトップ10の流動化に寄与している可能性が高いです。*5

 

・関連記事

2017 アメリカ年間チャートについて

 

2018 年間チャートについて

 

 

 

*1:客演ですが、Zara Larssonのアルバムに収録されている

*2:デンマーク出身のMØも2015年Lean Onがイギリス年間7位、2016年のCold Waterがイギリス年間14位と惜しかったです。両方とも客演ですが

*3:全体的には13番目、YouTube再生数上位はラテン系が多い

*4:他にDrakeの非シングル(KMT)も今年イギリスのトップ10に入っていました

*5:トップ10に10週滞在すると露骨にマイナスがつく傾向がある気がする……

1/19 リリース新曲/新作の初動を観察 【DJたちのシングルリリース / アルバム1位はバンド or サントラ?】

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今週はDJ/プロデューサーのシングルリリースが目立ちました!写真は今週シングルをリリースしたCashmere CatとDiplo。この2人はポップスのプロデューサーとしても近年大活躍していますね。

 

Spotify デイリーのアメリカトップ10 (金曜日)

1 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
2 G-Eazy feat. A$AP Rocky & Cardi B No Limit
3 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse (Remix)
4 Camila Cabello feat. Young Thug Havana
5 Post Malone I Fall Apart
6 Offset, Metro Boomin Ric Flair Drip
7 Cardi B feat. 21 Savage Bartier Cardi
8 Camila Cabello Never Be the Same
9 Kendrick Lamar & SZA All The Stars
10 The Chainsmokers Sick Boy

 

 引き続き1位はrockstar。18週連続で アメリカのSpotify 週間ランキングの1位に居座り続けています。*1 この座を脅かす曲はいつ現れるのか? また先週アルバム効果で上昇したNever Be The Sameが引き続きSpotifyトップ10に残っています。

 そして最大のトピックはThe Chainsmokersの新曲が10位にまでジャンプアップしたことです。アルバムリリース後以降のシングルでは、そこまでヒットは生まれませんでしたが、やはり流石The Chainsmokersといった人気でしょうか。緊急リリースのようで、次アルバムからのシングルなのか、シングル単品のリリースなのかは不明ですがこの水準のストリーミングを今後もキープできるかに注目です。

 

 サウンド面については、アルバムに引き続きThe Chainsmokersの趣味=ロック系サウンドを重視したシングルであると思いました。トラップ寄りのDon't Let Me Down、正統派ポップスCloserなどでスターダムにのし上がったThe Chainsmokersですが、彼らが目指しているのは、「ロックとエレポップの融合」ではないか?と私は推測しています。

 昨年のアルバム、Memories Do Not OpenではヒットしたDon't Let Me Down、Closerなどを外して、代わりにColdplayを迎えたSomething Just Like Thisなどロック寄りのサウンドの曲が増えていました。また彼らは昨年Ultra Japanで来日した時、最終盤にDon't Let Me DownをかけてDJセットのフィナーレを迎えようとした時にPapa RoachのLast Resort(ハードロック系の曲)をかけて、良くも悪くも雰囲気をぶち壊していました。要所要所にロック系サウンドへのリスペクトが見え隠れする彼らは、Closerなどの正統派ポップスのイメージから、ロックに接近した「オルタナティブ系DJ」を目指す第一歩としてこのSick Boyをリリースしたのではないか?と私は思いました。少しTwenty One PilotsのHeathensに近いかな?とも感じました。ビデオの雰囲気も少し近い気がしますし……

 ただ、このSick BoyではソングライターにDon't Let Me Downなど複数曲で携わったEmily Warren、Closerで携わったShaun Frankが起用されるなど、ポップス要素も多少は残っています。アルバム以降、「自分の趣味=ロックサウンド」と「Closer路線の正統派ポップ」の合間に挟まれ、The Chainsmokersは苦悩しているようにも思えますが、果たしてこのSick Boyの行く末は……

 

② 新曲/新アルバムからのシングル アメリカSpotifyデイリー順位 (金曜日)

■13 Famous Dex feat. A$AP Rocky Pick It Up
32 6ix9ine, Fetty Wap & A Boogie wit da Hoodie KEKE
54 Justin Timberlake Supplies
■64 Maroon 5 Wait
80 Troye Sivan The Good Side
85 Cashmere Cat, Major Lazer & Tory Lanez Miss You
103 Carnage & Lil Pump i Shyne
115 Fall Out Boy Church
118 J Balvin, Jeon & Anitta Machika
※161 LANCO Greatest Love Story
180 Russ Alone
191 Rudimental feat. Jess Glynne, Macklemore & Dan Caplen These Days

※ 新アルバムに登場

■ ビデオが新しく公開された曲

 

 Justin Timberlake、Troye Sivanの新曲が登場。それぞれ前シングルのフォローアップのような立ち位置の曲で、前シングルほどの注目は集めていませんが、そこそこの順位に入っています。ただし、Filthyが58位にまで落ちているJustin Timberlakeは元々の知名度を考慮すると、来月のアルバムリリースに向けて少し不安が残ります。また、今週半ばにリリースされた6ix9ineなどのKEKEも好調です。

 またそれぞれビデオがリリースされたPick It Up、Waitも上々の成績を収めています。ビデオ効果というよりも、シングル化によって多くのプレイリストに入り始めた効果だとは思いますが。ちなみに先週ビデオがリリースされたEnd Gameは先週と似たような順位に留まっています。

 ほか、今週は上記のThe Chainsmokers以外にもDJたちのアルバムリリースが多かった点が特徴的です。

 まずはCashmere CatとMajor Lazer、そしてTory LanezによるMiss You。ポップスのプロデューサーとしても活躍両者による注目のコラボです。Tory LanezはCahsmere Catの昨年のアルバムにも参加していました。ダンスホール風のサウンドにTory Lanezの甘さ、Cashmere Catのサウンドセンスが足された一曲でストリーミングとの相性が良さそうです。Major Lazerは今年のアルバムリリースが噂されていますが、この曲がアルバムに入るかは不明です。

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Major Lazer – Music Is The Weapon (Album Tracklist + Lyrics) – Song Lyrics

 ↑アルバムのトラックリストの噂の一例です。他にCamila Cabelloが3曲で客演に入るのでは?という説も。The Weeknd、Ariana Grande、Justin Bieberなど超大物や、Benny Blanco、Siaなどポップスの名参謀もが参加する「2018ポップスの超大作」が出来上がるかもしれません。

 このSpotifyのランキングに入っていませんが、DiploのレーベルMad Decentによるシンガー、LIZが今週リリースした2曲が良かったのでおすすめです。上記のトラックリストにはいませんが、アルバムにはMad Decentのシンガーが何人か参加する可能性もありそうですね。


 

 また、トラップ系DJのCarnageがLil Pumpとタッグ。昨年はYoung Thugと組んでEPをリリースした彼ですが、ラップ界隈とのタッグに熱心ですね。Carnageの曲は、ハードめなトラップが多めです。BossやD Roseなどハードな曲も多いLil Pumpとは相性が良いと思います。Gucci GangでブレイクしたLil Pumpが今年どのような界隈と組み、キャリアを進めていくのかにも注目したいです。Lil Yachtyとのコラボアルバムの噂も。

Lil Yachty and Lil Pump Promise to Drop a Collaborative Tape Next Year | Complex

 

 あとDJとは少し違いますが、UKのドラムンベース系プロデューサー、RudimentalがJess Glynne、Macklemoreなどを迎えたシングルをリリースしています。

 

 ほかJ Balvin + Anittaが連続でタッグを組んだ新曲などが登場。ラテン+ブラジルのタッグが今年は進みそうな予感がします。また、今週アルバムをリリースしたFall Out Boy、LANCOはそれぞれ200位圏内に1曲が登場しています。

 

 

 iTunesアメリカップ10+新曲の順位 (金曜日)

1 Ed Sheeran Perfect
2 Justin Timberlake Supplies
3$ Bebe Rexha & Florida Georgia Line Meant to Be
4 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse (Remix)
5 Camila Cabello feat. Young Thug Havana
6 Imagine Dragons Thunder
7 Justin Timberlake Filthy
8 Carrie Underwood feat. Ludacris The Champion
9 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
10 Direks Bentley Woman, Amen

 

11 The Chainsmokers Sick Boy
12 NF No Name
21 Troye Sivan The Good Side
35 Keith Urban Parallel Line
39 Tinashe feat. Offset No Drama
※42 LANCO Greatest Love Story
43 Z.TAO Beggar
55 Zac Brown & Sir Rosevelt It Goes On
60 Daddy Yankee Dura
65 Kylie Minogue Dancing
69 Carnage & Lil Pump i Shyne
80 J Balvin, Jeon & Anitta Machika
81 Cashmere Cat, Major Lazer & Tory Lanez Miss You
84 Bad Wolves Zombie
85 Mat Kearney  Kings & Queens
■93$ Maroon 5 Wait
95 Remy Ma feat. Chris Brown Melanin Magic

 

 首位にはPerfectが返り咲き。ほかBebe RexhaのMeant To Beの最近の奮闘ぶりが光ります。ほかLet You Downが絶好調のNFの新曲、Tinasheの久々のシングル、中国出身のZ.Taoの新曲などが注目を集めています。

 

iTunes アルバム順位 (アメリカ)

1 Fall Out Boy M A N I A
2 Various Artists The Greatest Showman
3 LANCO Hallelujah Nights
4 Rend Collective Good News
5 Devin Dawson Dark Horse
6 Of Mice & Men Defy
7 KIDZ BOP Kids Kidz Bop 37
8 Black Label Society Grimmest Hits
9 EDEN vertigo
10 First Aid Kit Ruins

 

 Fall Out BoyiTunesアルバムが1位。息の長いバンドなので、店頭セールスもある程度期待できそうですが、ストリーミングやシングルセールスの数字が期待できないため、アルバムチャートでThe Greatest Showmanに勝てるかは微妙です。ほかスウェーデンのフォークバンド、First Aid Kitや、カントリー5人組のLANCOが上位に入っています。

 

⑤現在ラジオで上り調子の10曲

12 Bruno Mars & Cardi B Finesse
7 Dua Lipa New Rules
28 G-Eazy & Halsey Him & I
187 Luke Bryan Most People Are Good
45 Bebe Rexha & Florida Georgia Line Meant to Be
263 Enrique Igelesias feat. Bad Bunny El Baño
8 Charlie Puth How Long
1 Ed Sheeran Perfect
27 Chris Young Losing Sleep
39 Old Dominion Written In The Sand

 

 Bruno Mars+Cardi BのFinesseが他を圧倒するスピードで急上昇中。また、ダウンロードで好調のMeant To Beにラジオの伸びが加われば、Hot 100のトップ10も見えてきそうです。

 

⑥各ラジオ局で今週かかりはじめた曲

✫ポップ系

46 Liam Payne & Rita Ora For You

 Rita OraはYour SongやLonely Togehterでは、USポップ系ラジオに登場するのはUKでのヒットから少し時間が経ってからでしたが、今回のFor Youではリリース早々にポップ系ラジオに登場。Hot 100での躍進に期待できそうでしょうか。

 

✫アダルトポップ系

45 Gavin James Hearts On Fire
47 Anderson East All On My Mind
49 Beck Up All Night
50 Camila Cabello Never Be The Same

 ロック系ラジオで絶好調のBeckのUp All Nightがロック以外の系統にも登場。Feel It Stillのようなヒットになるかもしれないです。

 

✫リズミック系

49 Lil Xan Betrayed
50 French Montana Famous

 French Montanaの新シングルが登場。

 

✫アーバン系

41 Daniel Caesar feat. Kali Uchis Get You
45 Quality Control feat. Quavo & Lil Yachty Ice Tray

 Hot 100にもエントリーしたIce Trayがラジオでもかかり始めています。

 

 

⑦ その他のストリーミングのトップ10

 

 データが充実している、規模が大きい、リスナーのジャンルが比較的バラけているなどという点でこの記事ではSpotifyを主な観察対象にしていますが、他のストリーミングサービスも興味深い動きを見せています。今回からは3つのストリーミングサービスのトップ10を定点観察していきます。

 

Apple Music

1 Cardi B feat. 21 Savage Bartier Cardi
2 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse
3 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
4 Migos, Nicki Minaj & Cardi B MotorSport
5 Offset & Metro Boomin Ric Flair Drip
6 6ix9ine, Fetty Wap & A Boogie wit da Hoodie KEKE
7 G-Eazy feat. A$AP Rocky & Cardi B No Limit
8 Lil Skies feat. Landon Cube Red Roses
9 Post Malone I Fall Apart
10 Kodak Black feat. XXXTentacion Roll in Peace

 

 Apple Musicの特徴は圧倒的なHip-Hop / R&B人気。これは2016年にDrake、Frank Ocean、DJ Khaledなどのアルバム独占配信でユーザーを集めたことが理由と思われます。Spotifyよりもデータが反映されるまでにタイムラグがあり、現時点ではまだ今週のリリースは反映されていないと思います。(デイリーランキングです)

 ヒップホップの中でも、新しくアルバムがリリースされたもの、一番人気のプレイリストHip-Hop A Listに入っている曲が人気という印象があります。

 

↑これが「アメリカ」のHip-Hop A Listです。日本のHip-Hop A Listとは微妙に違います。(USのヒップホップ曲も微妙に選曲が違う)

 

・パンドラ

1 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
2 NF Let You Down
3 Camila Cabello feat. Young Thug Havana
4 Ed Sheeran & Beyoncé Perfect Duet
5 G-Eazy & Halsey Him & I
6 Bebe Rexha feat. Florida Georgia Line Meant to Be
7 Halsey Bad At Love
8 Migos, Cardi B & Nicki Minaj MotorSport
9 Eminem feat. Ed Sheeran River
10 G-Eazy feat. A$AP Rocky & Cardi B No Limit

 

 ラジオ型のストリーミングサービス、パンドラの週間ランキングです。Spotifyのようにリスナーのジャンルが分かれておりポップスもヒップホップも上位に入る点が特徴的。また、ラジオをベースとしてサービスなので新曲が上位に入るまである程度時間がかかります。

 

・サウンドクラウド

1 Lil Skies feat. Landon Cube Nowadays
2 6ix9ine GUMMO
3 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
4 TM88, Southside & Lil Uzi Vert Mood
5 6ix9ine, Fetty Wap & A Boogie wit da Hoodie KEKE
6 XXXTentacion feat. Trippie Redd Fuck Love
7 6ix9ine KOODA
8 Lil Pump Gucci Gang
9 Lil Skies feat. Landon Cube Red Roses
10 Queen  Medicine

 アンダーグラウンドな曲も多いSoundcloud。規模としては影響力が低めですが、珍しいアーティストが上位に名を連ねるなど面白い動きもあると思います。最近ブレイク中の6ix9ineはサウンドクラウド出身と言われています。

 週間ランキングで、Apple Music以上のヒップホップ人気が特徴的です。

 

*1:デイリーではクリスマス期は1位でなかった

Hot 100 1/20 見どころ【イギリスポップ勢からの挑戦状 / リカレントを避けた2曲】

 

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 今週はイギリスポップ勢のHot 100登場、ビッグリリース×2のトップ10浮上が目立ったトピックだと思います。その他、リカレントルールを避けた2曲がチャート好き目線では注目でした。

↑の写真は久々のHot 100入りを成し遂げたRita Oraと、3位にジャンプアップしたBruno Mars。ちなみに……

 

※微妙にレイアウトを変えました。

 

92 Clean Bandit feat. Julia Michaels – I Miss You

 Clean Bandit のI Miss Youが92位で登場。Clean Banditにとっては3曲目*1、客演のJulia Michaelsにとっては2曲目のHot 100です。主にポップ系ラジオで人気です。Spotifyでもそこそこ人気です。(Spotify 69位、Apple Musicは200位圏外)

 Clean Banditの前シングル、Zara LarssonとのSymphonyはイギリスで1位を記録しただけでなく、イギリス年間7位と大ヒット。しかしアメリカでは週の100位にも入らないなどかなりヒット度合いにギャップがありました。今回のシングルでは客演のアメリカ人シンガー・Julia Michaelsの人気も借りてどこまで上がれるでしょうか。彼女はグラミーの新人賞候補にもノミネートされているので、その効果を多少は受けることができるか?

 

85 Lil Skies feat. Landon Cure – Nowadays

 1/10にリリースのLil Skiesのアルバムがストリーミングで好調。アルバムチャートでは初登場の中で最高位の23位を記録しています。そのアルバムから98位にRed Roses、85位にNowadaysが登場しています。いずれも客演はLandon Cureです。両者とも初のHot 100です。

まだウィキペディアのページが無いくらい知名度は低い新人ですがApple Musicでトップ10に入るなどのストリーミングでの好調でHot 100のエントリーを成し遂げました。リリースが少ない時期、かつ不規則なアルバム水曜日リリースだったことにより競合相手がほとんどいなかったことがプラスに働いたのでしょうか。

 

82 Liam Payne & Rita Ora – For You

 Fifty Shadesシリーズの3作目、Freedのサントラからの1曲、For Youが82位で登場。担当はLiam PayneとRita Ora。2作目のDarkerと同様に元One Directionのシンガーを起用しています。

 Rita Oraにとっては2014年のIggy AzaleaとのBlack Widow*2以来の久々のHot 100に。イギリスでは2017年、3曲トップ10が出る(Your Song、AviciiとのLonely Together、Anywhere)など絶好調でしたが、アメリカのポップ系ラジオであまりかからなかったことなどでHot 100入りが出来ませんでした。今回は組んだLiam Payneの効果もあってその3曲よりもラジオではかかりそうなので、そこそこ上昇が期待できそうです。2012年のHow We Do (62位)越えをまずは期待したいです。

 Rita OraはCharli XCX、Bebe Rexha、Cardi Bを迎えたGirls Girlsが噂されていますが、最近Charli XCXがInstagramのストーリーにこのような画像を上げており、この曲は実在しそうです。Bebe Rexha、Cardi Bがいるかはまだ不明ですが(Lonely Together、Anywhere、For YouとRita Oraと組むことが多いAndrew WattとCharli XCXが一緒にいるため、Charli XCXとAndrew Wattは今まで組んだことが無いので、Charli XCXの曲の可能性は低め)

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ちなみにFifty Shades シリーズのメイン曲は、「シンガー / ソングライター分離性」が多いことが特徴に挙げられます。詳しくは……↓

 

 

 

78 Zac Efron & Zendaya – Rewrite The Stars

 先週に引き続き、アルバムチャート1位を記録したThe Greatest Showmanのサントラ。ストリーミングでの好調により、数曲がHot 100で上昇。The Greatest Showが95位→88位、Rewrite the Starsが85位→78位、This Is Meが83位→64位に。唯一Never Enoughは88位→99位と下降しました。

 セールス、ストリーミングの両方で安定した成績を記録しているため今後しばらくアルバムチャートの上位に居座りそうです。来週はCamila Cabelloを打ち破ってのアルバム1位の可能性も。

 

56 Maren Morris – I Could Use A Love Song

 今週カントリーラジオの1位に浮上したMaren MorrisのI Could Use A Love Song。Hot 100でも62位→56位と順位を上げています。今週21週目のチャート滞在で、「21週目以降の曲は51位以下に落ちるとチャートから除外」というリカレントルールが今週適用される可能性がありましたが、「上昇している曲はこのルールを適用しない」という例外に該当し、見事リカレントを回避しました。ロングヒットを成し遂げたということです。

ただし、ラジオの伸びシロがあまり無いため、来週以降はリカレントを回避できず、チャートから外れてしまうかも。

 

43 Kendrick Lamar & SZA – All The Stars

 Kendrick Lamarがプロデュースした、ブラックパンサーのサントラからの1曲。Kendrick LamarとSZAのAll The Starsが43位で登場しています。ダウンロード・ストリーミングの両方で高めの成績を記録しています。このブラックパンサーのサントラは全曲Kendrick Lamarのプロデュースと報じられており、SZA、Jay Rock、Future、James Blake、Vince Staplesなど多様なゲストが参加することもあって、Kendrick Lamar版 “More Life”のようなアルバムが完成する予感がします。誰を起用するのか?どこまでの売上/ストリーミングを記録するのか、など注目の作品です。

 

39 Thomas Rhett – Marry Me

 カントリー系ラジオでの急上昇や、ダウンロードでの高い数字を記録しているThomas RhettのMarry Me。今週44位→39位とトップ40入りを成し遂げました。昨年のアルバム、Life ChangesからはCraving You・Unforgettableなどポップなシングルカットが多かったですが、今回のMarry Meは彼のヒットDie A Happy Manのようなバラード系カントリーです。

 

22 Ed Sheeran – Shape of You

 今週53週目のチャート滞在を迎えたShape of You。つまり1年越えを達成しています。1年を越えた曲には「53週目以降の曲は26位以下に落ちたらチャートから外れる」という厳しいリカレントルールがあるのですが、Shape of Youは今週22位でこれを回避しました。1年越えのリカレントルールが適用されて(2015年末~)から、これを回避したのはUptown FunkとShape of Youの2曲のみです。途中Hip-Hop / R&B系ラジオでもかかるなど、幅広く根強いラジオでの支持がロングヒットに繋がったのだと思います。

 ただし、今週13位→22位と落ちているので来週もこのルールを回避するのは厳しそうです。また、今週52週目のチャート滞在を迎えた34位のDespacito、38位のThat’s What I Likeもこのルールが来週適用され、Hot 100から外れそうです。

 ちなみに「1位デビューをした曲の中で最長チャート滞在」というマイナーな記録を更新しています。(今まではCan’t Stop The Feeling!の52週が最長、それまではShake It Offの50週)

 

12 Lil Pump – Gucci Gang

 今週トップ10から外れたLil Pump のGucci Gang。ピーク3位の曲としてはやや早いトップ10からの陥落な気もします。ストリーミングでの数字は抜群ですが、リズミックやHip-Hop/R&B系ラジオのいずれでもトップ10に入らないなどラジオのサポートが少なめだったことが、今週トップ10から外れた要因かと思われます。

 意外にもこのGucci Gang以外Hot 100に入った経験の無いLil Pumpですが、今後またヒットに恵まれるでしょうか。まだ客演への参加が少ないので、客演でのヒットにも今後期待したいです。ちなみに彼の新曲Designerが今週のチャートに反映されましたが、Bubbling Under (125位以上相当)にも入らず。

 

9 Justin Timberlake – Filthy

 Justin TimberlakeのFilthyが9位で登場。n’sync時代を入れて24曲目のトップ10。ダウンロード、ストリーミングで高次元の成績を記録しただけでなく、ラジオも早々に35位まで伸ばすなど、3つの指標全てで好調でした。ラジオは今後も順調に伸びていきそうですが、ストリーミングが既に落ちてきている点が気がかりです。(Spotify 60位、Apple Musicは200位圏外) ダウンロードはそこそこです。

 Can’t Stop the Feelingが1位で登場し、長く2位をキープしたものの1位に再浮上できなかったように、このFilthyも次週以降の大幅な浮上は期待できないかもしれません。ラジオの数字は優秀なので、そこまで悪いチャート成績にはならないと思いますが、ストリーミングの低さが足を引っ張って、Hot 100では5位ぐらいが現実的な目標でしょうか。

 

3 Bruno Mars & Cardi B – Finesse

 先週の1日集計から今週は7日分フル集計となり、大幅に順位を伸ばしたBruno MarsとCardi BのFinesse。24K Magicで記録した4位を上回る、3位まで到達しました。ダウンロード2位、ストリーミング1位、ラジオ14位と全てで高い数字を記録しています。ポップ系・リズミック系・Hip-Hop / R&B系など幅広いラジオでかかっており、今後かなりのラジオのポイントが期待できそうです。ダウンロード、ストリーミングがそこまで調子を落とさなければ、長く上位に留まりそうです。時期が良いので2018年間1位の候補の一つと考えて良い気もします。

ラジオでの好調、複数バージョンでのダウンロードを稼いでいるなどによって、現在Hot 100の1位はPerfectですが、いずれその1位の座を奪うのが当面の目標です。ただし、来週はアルバムリリースの効果でダウンロードをかなり伸ばしたHavanaが1位を獲得する可能性も!

ちなみにCardi Bは今週4曲が同時にトップ10に入る可能性がありましたが、Bodak Yellowが今週17位に落ちたため、今週も引き続き3曲同時トップ10入りに。Bartier Cardiが今週14位に上昇したため、引き続き4曲同時トップ10の可能性は残っています。

 

× Taylor Swift – Look What You Made Me Do

 Taylor SwiftのLook What You Made Me Doが今週チャート圏外へ。一時期76位まで沈んだものの終盤巻き返して、最後の週は55位に。ただし尻すぼみの印象がかなり強いです。1位を記録した曲としては近年屈指の急落下で、ストリーミング導入以降1位を記録した曲では最短のトップ10滞在(8週)で、その同じトップ10に8週だったHarlem Shakeの一番低い順位が70位だったことを考えると、いかに後半不調だったかが分かると思います。

 ちなみに次シングルReady For Itも今週80位/19週目とボロボロ。ビデオがリリースされたEnd Gameに期待がかかりますが、果たして……

 

× P!nk – What About Us

 What About Usがオーストラリア1位、イギリス3位、ドイツ3位などを記録し、世界各国で健在ぶりをアピールしたP!nk。母国アメリカでもテイラーに次いで2番目に高いアルバム「セールス」を記録するなど好調でした。しかし、ダウンロード・ラジオの好調に対して、ストリーミングでは人気が低く、Hot 100ではトップ10に入れませんでした(ピーク13位)。セールスやラジオでは健在ぶりをアピールしましたが、ストリーミングでの不調が今後どう響くかに注目です。今週95位で再登場した次シングルBeautiful Traumaは今後どうなるか。

 

P!nkの健在ぶりを表すツイート?

 

 

 

チャートで今週伸びを見せた曲たち

今週最もラジオで伸びた曲          Bruno Mars & Cardi B – Finesse

今週最もダウンロードが上昇した曲 Bruno Mars & Cardi B – Finesse

今週最もストリーミングが伸びた曲 Kendrick Lamar feat. ZACARI – LOVE.

最も高い順位で新登場した曲          Justin Timberlake – Filthy

 

 

今週チャートから外れた曲 (7曲)

【左の数字は先週の順位、右(ピーク順位🗻/チャート滞在週数⏰)】

98 XXXTentacion feat. Trippie Redd – F**k Love (🗻41位 /⏰19週)

97 NAV feat. Lil Uzi Vert – Wanted You (🗻64位 /⏰7週)

96 Tank – When We (🗻86位 /⏰6週)

94 Zayn feat. Sia – Dusk Till Dawn (🗻44位 /⏰17週)

69 Luke Bryan – Light It Up (🗻57位 /⏰19週)

55 Taylor Swift – Look What You Made Me Do (🗻1位 /20週)

43 P!nk – What About Us (🗻13位 /22週)

 

 

来週以降にHot 100に入るポテンシャルを持った曲をピックアップしました

 

6ix9ine, Fetty Wap & A Boogie Wit da Hoodie – KEKE

日曜日にリリースされた一曲。ストリーミングでは既に急浮上しており、来週のチャートにはもう登場しそうです。Fetty Wapは久々のHot 100入りなるか。

 

The Chainsmokers – Sick Boy

 水曜日にリリースされたThe Chainsmokersの新曲。ただしまだダウンロードやストリーミングが伸び切っていないため、来週のHot 100には登場しなさそう。(再来週に持ち越し)、ちなみにこの曲はCloserに携わったShaun Frank、Don’t Let Me Downなど複数曲に携わったEmily Warrenの両者がソングライトを担当しており、The Chainsmokersオールスター集合といったところでしょうか。

 

The Cranberries – Linger

The Cranberries – Dreams

The Cranberries - Zombie

 ボーカルが亡くなったことに対して追悼の意を込めてダウンロード増。ただし過去のヒット曲で、50位以上に入る必要がありハードルが高いのでHot 100エントリーは厳しいかも。ただしHot 100エントリー歴が無いZombieは51位以下でもHot 100に入ることができるかもしれません。Zombieがこの中ではHot 100入りの可能性があるでしょうか。

 ちなみにEminemの直近のアルバムに収録されたIn Your HeadはZombieをサンプリングしています。

 

今週のプレイリスト

 

 

✫半年前のHot 100


✫1年前のHot 100


*1:メンバーが参加したDo They Know It’s Christmas? 2014は除く

*2:自身が参加したDo They Know It’s Christmas? 2014は除く

1/12 リリース新曲/新作の初動を観察 【Troye SivanやCamila Cabello、評論とセールス両方で躍進??】

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 先週はBruno Mars、Justin Timberlakeなどの大物シンガーのリリースが多かったですが、今週際立ったのはTroye Sivan・Camila Cabelloという若手シンガーたちです!

 Camila CabelloのアルバムはそのTroye Sivanが太鼓判を押しています。

 

 

Spotify デイリーのアメリカトップ10 (金曜日)

1 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
2 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse (Remix)
3 G-Eazy feat. A$AP Rocky & Cardi B No Limit
4 Camila Cabello feat. Young Thug Havana
5 Cardi B feat. 21 Savage Bartier Cardi
6 Camila Cabello Never Be the Same
7 Post Malone I Fall Apart
8 Offset, Metro Boomin Ric Flair Drip
9 Kendrick Lamar & SZA All The Stars
10 G-Eazy & Halsey Him & I

 

 Bruno Mars・Cardi BのFinesseがrockstarに迫るものの、rockstarが1位をキープ。そしてアルバムをリリースしたCamila Cabelloのシングルが2曲Spotifyトップ10に浮上。各国でヒットの実績を既に残しているHavanaが4位、次シングルのNever Be the Sameが6位まで浮上しています。Havanaはアルバムリリース前からSpotifyのトップ10にいましたが、Never Be the Sameはこのタイミングで大幅な浮上を成し遂げました。アルバムリリースのタイミングで「発掘」され、今後はシングルとしても成功を収めることができるでしょうか。
 ほか先週リリースのKendrick Lamar・SZAのAll the StarsがSpotifyトップ10をキープする一方、Justin TimberlakeのFilthyは40位まで順位を落としています。

 

② 新曲/新アルバムからのシングル アメリカSpotifyデイリー順位 (金曜日)

13 Troye Sivan My My My!
※34 Camila Cabello Real Friends
■35 Taylor Swift feat. Ed Sheeran & Future End Game
44 Camila Cabello In the Dark
50 Jay Rock, Kendrick Lamar, Future & James Blake King's Dead
55 Marshmello & Lil Peep Spotlight
■58 Dua Lipa IDGAF
74 Camila Cabello Into It
77 Camila Cabello She Loves Control
81 Camila Cabello All These Years
92 Eminem feat. 2 Chainz & Phresher Chloraseptic (Remix)
107 Camila Cabello Consequences
115 Camila Cabello Inside Out
123 Camila Cabello Something's Gotta Give
162 Carrie Underwood feat. Ludacris The Champion
175 Enrique Iglesias feat. Bad Bunny EL BAÑO

※ 新アルバムに登場

■ ビデオが新しく公開された曲

 

 まずはTroye SivanのMy My My! 彼はまだHot 100エントリーが3曲でそこまで上位にも入っていない(Youthが23位、Happy Little Pillが92位、Martin GarrixとのThere For Youが94位)ですが、iTunesでも瞬間最高3位まで到達・そしてSpotifyでも13位まで食い込むなど躍進しています。評価が高く(批評メディアの多くで80点前後を記録)、ロングヒットだった(週ピークが7位ながらも、2016年間で53位)、前アルバムBlue Neighbourhoodでの熱量が一気にシングルリリースで昇華されたということでしょうか!
 そしてこの曲最大のサプライズはPitchforkがBest New Trackに選んだということ。Pitchforkは今まで彼を取り上げたことは無かったですが、近年のポップス重視の流れを受けて、このタイミングでのBest New Track選出に踏み切ったようです。
(Pitchforkのポップス化については↓の記事)


 そしてCamila Cabelloのアルバムからは全10曲が全てランクイン。女性シンガーとしてはかなり「ストリーミングで大成功」といえる成績で、Spotifyの記録が残る2015年以降、アルバムの全曲がSpotifyデイリーのランキングに入ったのはSelena Gomez (Revival)、Rihanna(Anti)、Lorde(Melodrama)、Taylor Swift (Reputation)、そしてCamila Cabello (Camila)の5名のみ。今回のCamilaは成績も全体的に高く、Lorde、Taylor Swiftを上回る成績*1を記録しています。 つまりここ2年弱くらいの女性シンガーのアルバムで「最もストリーミングで成功したアルバム」ともいえるかも。
 このアルバムには元々、Ed SheeranやChance the Rapper、Charli XCXなどの豪華ゲストの参加が噂されていましたが、結局ゲストはHavanaでのYoung Thugのみ。特にEd Sheeranがゲストにいれば、注目は容易に集められるだろうし、ヒットも確実でしょう。そのような豪華ゲストを切ってもここまでのストリーミング成績を収められたということは、それだけCamila Cabelloに対する期待感が高かった、そしてアルバムが良かったということが言えると思います。
 批評家からの評価はまだ出きっていませんが、NMEで4/5点など上々の評判。これから他のメディアが何点をつけるか気になります。
 
 上記した5アルバムのうち、Selena Gomez、Rihanna、Taylor Swiftは知名度が高いですが、その3人と比べるとLorde、Camila Cabelloはやや知名度低め(相対的に)。つまり、この2アルバムに今後「いかに女性シンガーがストリーミングで成功するか?」というヒントがあるようにも思います。
 この2アルバムでは両方ともFrank Dukesというプロデューサーが活躍。LordeのMelodramaでは6曲/11曲をプロデュース、そしてCamila CabelloのCamilaではメインのプロデューサーを務めています。この2アルバムは彼のもと、ゲストは少なく「アルバム単位としての構成」を意識した作品だと思います。(Camilaのほうはある程度Melodramaを意識した構成だと思います) この2つのアルバムは近年の女性シンガーのアルバムの成功例として一つの目安になると思います。

 ほか、映画ブラックパンサーからの、Kendrick Lamar、Future、Jay Rock、James BlakeのKing's Dead、MarshmelloとLil PeepのSpotlightなどが登場。両方とも独特なビートが特徴のラップ曲です。
 また、ビデオがリリースされたEnd Gameはそこまで上昇せず。効果が現れるのはこれから?Dua LipaのIDGAFはこれからシングル化でしょうか。

 

 iTunesアメリカップ10+新曲の順位 (金曜日)

($は割引)

1 Carrie Underwood feat. Ludacris The Champion
2 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse (Remix)
3 Ed Sheeran Perfect
4$ Camila Cabello feat. Young Thug Havana
5$ Bebe Rexha & Florida Georgia Line Meant to Be
6 Justin Timberlake Filthy
7 Dan + Shay Tequila
8 Troye Sivan My My My!
9 Imagine Dragons Thunder
10 Post Malone feat. 21 Savage rockstar

 

11$ Camila Cabello feat. Young Thug Havana (アルバム)
□12 Taylor Swift feat. Ed Sheeran & Future End Game
13 Camila Cabello Never Be the Same
21 Ansel Elgort Supernova
28 Marshmello & Lil Peep Spotlight
42 Blue October I Hope You're Happy
46 Enrique Iglesias feat. Bad Bunny EL BAÑO
51 Camila Cabello Consequences
63 Jay Rock, Kendrick Lamar, Future & James Blake King's Dead
73 Anderson East All On My Mind
77 Russ Flip
81 Scotty McCreery  Wherever You Are
91 Camila Cabello Something's Gotta Give
95 Hunter Hayes This Girl
97 Upchurh & Colt Ford Shoulda Named It After Me
98 Camila Cabello All These Years

 

 iTunes首位に立ったのはCarrie UnderwoodのThe Champion。カントリー歌手のCarrie Underwoodですが、この曲は彼女が客演を務めたKeith UrbanとのThe Fighterのようなポップ曲で、カントリー以外のリスナーにも人気になるかも。
 ほかTroye SivanのMy My My!が8位まで躍進、ほかカントリーデュオのDan + ShayのTequilaが上位につけています。

 End Gameはダウンロードもまだそこまで伸びていません。そしてもう一つ注目なのはCamila CabelloのアルバムからのiTunesでの人気曲で、iTunesで人気*2のConsequences、Something's Gotta Give、All These YearsはSpotifyではどちらかというと人気の無い曲でした。これはiTunesSpotifyのユーザーの趣味が違うということなのか、またSpotifyで聞きたい曲とiTunesでダウンロードしたい曲が違うということなのか、真相はよく分かりませんが、「サービスごとの分断」という点で興味深い現象な気がします。(ほかApple MusicとSpotifyで人気曲が違ったりする)

(参考 Apple MusicとSpotifyの違いの2記事)

 


 

iTunes アルバム順位 (アメリカ)

1 Camila Cabello Camila
2 Various Artists The Greatest Showman
3 Black Veil Brides Vale
4 Anderson East Encore
5 BØRNS Blue Madonna
6 Taylor Swift Reputation
7 Eminem Revival
8 Joe Satriani What Happens Next
9 Ed Sheeran ÷ (Deluxe)
10 Corrosion of Conformity No Cross No Crown

 

 iTunesでも首位に立ち、ストリーミングで上々の成績を記録しているCamila CabelloのCamilaですが、ライバルのThe Greatest Showmanのサントラもダウンロード・ストリーミングの両方で高い数字をキープしているため、アルバム首位争いで勝てるかは微妙です。
 ですが、仮にアルバム2位だとしても、古巣Fifth Harmony越えは達成できます。(Fifth Harmonyはセルフタイトル、7/27でのアルバム4位が最高位)

 ほかBlack Veil Brides、BØRNS、Joe Satriani、Corrosion o Conformityなどのアルバムが登場。

 

⑤現在ラジオで上り調子の10曲

25 Justin Timberlake Filthy
7 Dua Lipa New Rules
3 Halsey Bad At Love
187 Luke Bryan Most People Are Good
20 MAX feat. gnash Lights Down Low
4 Post Malone feat. 21 Savage rockstar
28 Migos, Nicki Minaj & Cardi B MotorSport
1 Ed Sheeran Perfect
26 NF Let You Down
6 Sam Smith  Too Good At Goodbyes

 

 Filthyが驚異的なスピードでラジオの数字を伸ばしています。ほかMAXのLights Down Lowの粘りにも注目です。

 

⑥各ラジオ局で今週かかりはじめた曲

✫ポップ系

14 Justin Timberlake Filthy
47 Maroon 5 Wait
48 Lil Pump Gucci Gang
49 Lost Kings feat. Sabrina Carpenter First Love
50 Alan Walker, Noah Cyrus & Digital Farm Animals All Falls Down

 Filthyはもう14位まで到達。Maroon 5の次シングルはWaitに。またLil PumpのGucci Gangがこのタイミングでポップ系ラジオに到達。ストリーミングは既に下り坂ですが……あと最近こんなリミックスも……(チャートへの影響はないです。)


 

✫アダルトポップ系

21 Justin Timberlake Filthy
45 Vance Joy Lay It On Me

 ここでもFilthyは強いです。オーストラリアのシンガーVance Joyが登場。

 

✫リズミック系

16 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse
31 Justin Timberlake Filthy
40 Kendrick Lamar & SZA All The Stars
49 Migos Stir Fry
50 Sofi Tukker feat. NERVO, The Knocks & Alisa Ueno Best Friend

 Bruno Mars、Justin Timberlakeの両者が急スピードで上昇中。この2名はかかる系統も広く、ラジオでの強さが伺えます。またSofi TukkerのBest Friendがリズミック系にも登場。ラジオの成績をさらに伸ばして、Hot 100でも順位を伸ばせるか。当面の目標はピコ太郎超え??? (PPAPはピーク77位/滞在4週)

 

✫アーバン系

27 Bruno Mars feat. Cardi B Finesse
39 Kendrick Lamar & SZA All The Stars
40 SZA Broken Clocks
49 Tank When We
50 H.E.R. Focus

 Bruno Marsは直近のアルバム、24K Magic以降はアーバン系ラジオでも人気。SZAの次シングルはBroken Clocksのようです。タイミングからいして、グラミー効果でのヒットも期待できるかも。
 またTANKやH.E.R.などのR&B系シンガーも登場しています。

 

 

*1:収録曲が全体的にSpotifyデイリーの順位でどこまで高いか?という観点において

*2:シングルのHavana、Never Be the Same以外で