チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

My Best Tracks 2020

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 こんばんは。毎年恒例、私のベストトラックを発表します。ランキングの前に、選考基準を紹介します。

 

・なるべく2020年の曲を選びますが、厳密には定めず、昨年の曲を選んでいる場合もあります。12/25以降のリリースは対象外です

 

・主に「自分の好み」「その曲の影響力/意義」の2大要素で構成されています。比率はやや「自分の好み」に寄っています。「影響力/意義」の部分にはチャート観察で得た見識も存分に含まれています。

 

サウンド重視で聞く習慣が強いため、歌詞よりもサウンドにかなり重点を置いています

 

・おそらくこのような企画の中で、最もTikTokヒットに肯定的/寛容(?)な気がします

 

・あまり上手く説明できないけれど、リストには入れたいみたいな場合も多いので、コメントは基本的に手短です。なんというか、既に完成しているものを敢えて言葉に直すって難しい作業ですね。ただし長く説明したい曲もあるので、その場合は表外に補足を付けています。(黄色背景の曲)

 

・説明等に参照した、メディアのベストソングリストのまとめ:https://www.albumoftheyear.org/songs/best/2020/

 

・プレイリストは最後に載せています

 

 

・100位~51位

アーティスト ひとことコメント
100 Jawsh 685 & Jason Derulo Savage Love 鮮やかなプロモーション (補足)
99 Jack Gilinsky feat. Don Toliver My Love Justin Bieberがやりたかった?ことを本家よりも巧みに体現したと個人的に感じた曲
98 The Neighbourhood Lost in Translation 今年過去シングルが再注目*1。そんな彼らの最新作より
97 LiSA cancellation グローバル8位!? (補足)
96 AJ Tracey Hikikomori 興味深いテーマ。彼のEPには”Yumeko"という曲も
95 The Killers feat. k.d. lang Lightning Fields 魅力的なボーカルが響く
94 Unghetto Mathieu Plastic いわば"Barbie Girl"版の”That Way"
93 Kero Kero Bonito It's Bugsnax! Kero Kero Bonitoのサウンドが存分に味わえる、ゲーム向けの曲
92 Grimes My Name is Dark 今作はダークなムードが漂うカナダの鬼才
91 MORGENSHTERN ICE TikTokを通してロシアの覇権ラッパーがUSに。独自のマンブル&ハードなサウンドが特徴
90 Romy Lifetime The xxメンバーの、ソロデビュー曲
89 Octavian & Skepta Papi Chulo ”Old Town Road"のプロデューサー、Young Kioを迎えた耳馴染みの良い曲
88 Awich feat. NENE Poison Consequence of Soundが"Shook Shook"をBest Songリストに選んだ沖縄のラッパーAwich。個人的にはこっちの曲の方が印象的でした
87 Gorillaz feat. Beck The Valley of The Pagns 信頼のGorillazBeck
86 TWICE UP NO MORE 新機軸のダンスポップを提示したTWICEの新作で光る1曲
85 Juice WRLD Righteous 最初は地味だと考えていましたが、次第に染み渡った訃報後初のシングル
84 Lil Baby & 42 Dugg We Paid 新星42 Duggと共に、個性を出し合うヒット
83 Taylor Swift gold rush "folklore"の姉妹アルバム、"evermore"より
82 SZA feat. Ty Dolla $ign Hit Different R&B界を牽引する2人のタッグ
81 JUJU & Loredana feat. Miksu / Macloud Kein Wort 今年の前半に、女性ラッパー同士のタッグでドイツ1位を獲得
80 Calry Rae Jepsen Now I Don't Hate California After All 彼女の作る曲の層の厚さを感じる、”Side B"より
79 XIX Kismet メインストリームとは一味違う、Alt TikTokという界隈が発掘した曲
78 Bad Bunny HOY COBRÉ X100 PRE期っぽさも感じる今年2枚目のアルバムより
77 Chris Stapleton Cold 他のカントリー歌手とは大きく異る空気を放つ彼
76 Jessie Ware Soul Control これも今年高く評価されたディスコアルバムの一つ
75 Kehlani feat. James Blake Grieving R&B色が強い今作において、独自の声を他のフィールドから導入
74 Oneohtrix Point Never Long Road Home 荘厳なエレクトロニックとして高い評価を得る
73 The Used To Feel Something ポップパンクバンドの最新作より。絶叫のボーカルが輝くアルバムラスト曲
72 jxdn Angels & Demons TikTokerの曲…… (補足)
71 Cardi B feat. Megan Thee Stallion WAP 批評メディアで圧倒的な支持…… (補足)
70 Allie X June Gloom インディーポップシンガーの2枚目より
69 青葉市子 Porcelain 年末リリースでリストにはあまり入りませんでしたが、海外からの評価がかなり高いフォークシンガー
68 Rina Sawayama Who's Gonna Save U Now? 氏のアルバムからのお気に入り③
67 K/DA & Maddison Beer feat. Kim Petras VILLAIN 今年の曲の中でKim Petrasのボーカルが最も光る曲。このEPのコンセプトも面白いですね
66 Charli XCX party 4 u 私も行った2017年の日本のイベントで初公開された曲らしい。長い時間をかけて正式リリース
65 Troye Sivan Take Yourself Home 物憂げな雰囲気からの後半の歪な展開へのチェンジアップが印象に残る曲
64 Tkay Maidza You Sad ミックステープでは様々な色を見せた、4ADのラッパー
63 ppcocaine Ddlg TikTokで台頭。クィアラップの新星とも称されるタレント
62 Travis Scott feat. Young Thug & M.I.A. FRANCHISE 1位曲の割に影が薄いですが、私はM.I.A.が再び活躍をする所を見られて嬉しいです
61 Dua Lipa Love Again 氏のアルバムからのお気に入り③ もう一つは昨年選んだ”Don't Start Now"
60 Run the Jewels feat. Greg Nice & DJ Premier ooh la la 鋭さに磨きがかかる、ラップデュオ
59 Bad Bunny, Duki & Pablo Chill-E Hablamos Mañana アルバム全体の印象を大きく変える、終盤のパンキッシュな1曲
58 Megan Thee Stallion feat. Young Thug Don't Stop アルバム内の配置からしてボートラ的存在かもしれませんが、Hyperpopとも言えるプロダクションが印象的な曲
57 Lil Uzi Vert & 21 Savage Yessirskiii 2枚組の、ラッププロジェクトと思しき方の作品より
56 Flo Milli Pussycat Doll 気鋭の女性ラッパーの作品より
55 Rico Nasty IPHONE ラップとプロダクション、2つの鋭さの融合
54 Arca feat. ROSALÍA KLK レゲトンの新しい姿を目指す
53 Powfu feat. beabadoobee death bed Pitchforkの予言… (補足)
52 A.G. Cook Oh Yeah PC Musicの長の(2連の)デビュー作より。温かいサウンド
51 CJ Whoopty ボリウッドをサンプリングのドリル曲。現在チャートで躍進中、来年さらにヒットにも期待

 

追記:私の確認ミスにより、Kali Uchisの楽曲を入れようとしていたものの、入れ忘れてしまいました。“//aguardiente y limón %ᵕ‿‿ᵕ%”を51位相当だと思っておいてください……!(プレイリストには入れました)

 

 

~補足~

 

100 Jawsh 685 & Jason Derulo – Savage Love

 曲の質的には正直物足りなさも感じるのですが、そのプロモーションの見事さから、紹介すべき曲と考えました。Jason Derulo有名アーティストの中でも熱心にTikTokに取り組み、そこで人気を獲得。そしてTikTokでヒットしていたインスト曲にボーカルを乗せた曲をリリースすると大ヒットに。US、UK、ドイツと主要国で1位を獲得。

 キャリアのあるシンガーが若者の新しい文化に熱心に取り組み、それが最終的に自身の本職にもプラスをもたらすという素晴らしい結末に。

 後にBTSとのリミックスでHot 100首位も獲得。最初から最後までプロモーション戦略の巧みさが際立ちました。

 

97 LiSA – cancellation

 新設されたBillboard Global 200では8位を獲得したLiSA。ヒットの分布を見ると、東アジアに偏っており、「グローバル8位」の字面のイメージとは少し異なるとは思うのですが、それでも彼女には海外ヒットを期待させるような可能性はあると考えています。

 アニメという世界中で愛されるフォーマットに加え、力強いポップパンク系の音楽スタイルという2つの個性は海外圏にも馴染みやすいと考えています。個人的に「ポップパンク」という部分に評価の重点を置いているため、ポップパンク成分が薄いと感じたグローバル8位の「炎」より、彼女のアルバムに収録されていたこの曲を選びました。

 

72 jxdn – Angels & Demons

 有名TikTokerのロックエナジー溢れるデビュー曲。彼はBlink-182のTravis Barkerのレーベルに所属し、この楽曲にも彼がクレジットされています。

 VineのShawn Mendesなど、ネットのプラットフォームの有名人が歌手デビューするのは別に珍しいことでは無いのですが、TikTokではそのサイクルの1周目から彼のようなタイプが存在するのは大変興味深いです。

 

71 Cardi B feat. Megan Thee Stallion – WAP

 その「女性による下ネタエンパワメント」には意義があり、大きくヒットしていたことから、今年を象徴する曲の一つという点に関しては疑問の余地が無いです。ただし、ここまで批評メディアの評価が高いのはかなり不思議でした。PitchforkRolling StoneNMEと大手メディアが軒並み今年のベストソング1位に認定しています。

 上記のような点では意義はありますが、両者にとっても初のHot 100首位ではないし、「女性ラッパー同士の首位曲」もビルボード曰く、“Say So”の方らしいです。また初期からストリップ出身という出自を誇っていたCardi Bがこのような系統の曲をリリースするのは驚きではないお感じるので、各メディアで「軒並み」「独走」になるのはやはり不思議です。

 そして曲の内容的にもMegan Thee Stallionのラップの上手さ以外は、さほど特筆すべき物を個人的に感じなかったので、このくらいの順位にしました。

 あとすごく個人的な感想になるのですが、このタイプのヒットはすぐにメディア等に承認されるよりも、民衆の間で長く支持をされ続け、数年後にようやく認められるみたいな流れの方が似合う気はします。

 

53 Powfu feat. beabadoobee – death bed

 Pitchforkは「2020年代に起こること」という記事において、Lo-Fi Hip-HopがUSでナンバーワンのジャンルになると予言。仮にそれが実現するとなれば、間違いなくジャンルのベンチマークとして語られ続けるであろう1曲。(実現するかは分かりませんが)

 

 

50位~1位

アーティスト ひとことコメント
50 BTS UGH! Hot 100初の首位など今年も大活躍した彼らのリリースの中で、格が違うと感じた曲
49 Phoebe Ryan A Thousand Ways キュートな歌声を持つシンガーのデビュー作より
48 Yaeji feat. Nappy Nina MONEY CAN'T BUY ハウス~ヒップホップのプロデューサー、初のミックステープから
47 Ariana Grande 34+35 彼女のボーカルが映える、R&B的センスもある美メロディーなポップス
46 YUKIKA Soul Lady シティポップを導入した、日本出身K-Popシンガーの光り輝く1曲
45 Don Toliver feat. Travis Scott & Kaash Paige Euphoria 彼のボーカルの「味」を活用し、引き込まれる雰囲気を持つ曲
44 Ashnikko Daisy 力強さを見せる1曲。ロック的要素も感じるラップ曲
43 BENEE feat. Grimes Sheesh アルバムでは様々な方向性を試みたBENEE
42 春ねむり Pink Unicorn ポエトリー&パンクなサウンドで、エネルギーの強さを感じる彼女
41 100 gecs feat. Fall Out Boy, Craig Owens & Nicole Dollanganger hand crushed by mallet (Remix) 激しさという観点では今年屈指の存在。Fall Out Boyを迎え、パンクに曲を進化させる
40 Rina Sawayama Bad Friend R&B的エッセンスも見せたデビュー作
39 Charli XCX visions アウトロで魅せる1曲
38 Miley Cyrus feat. Stevie Nicks Midnight Sky (Edge of Midnight) Andrew WattとFleetwood… (補足)
37 LIL NAS X HOLIDAY キャッチーな曲。曲単位というよりは、LIL NAS Xという存在への期待感からチョイス
36 Phoebe Bridgers I Know the End 今年屈指のインディーアンセム
35 The Chicks Gaslighter 10年以上のブランクを経ての復活を力強く印象づける1曲
34 The Avalanches feat. MGMT & Johnny Marr The Divine Chord The Avlanchesの温かみあるサウンドを、豪華客演と共に
33 Hayley Williams Sudden Desire アルバムでは様々な取り組みを見せる中で、光り輝く彼女のボーカル
32 Kylie Minogue Say Something 変わらず素晴らしいダンスポップを生み出す、名シンガー
31 Shygirl FREAK 破壊力のあるサウンドを見せつけたUKのプロデューサー
30 Yves Tumor Kerosene! サイケデリック・ロックバンドの新作より
29 Bad Bunny Yo Perreo Sola この曲のビデオの彼の姿を見て、彼に魅了された人も多いと思います
28 HAIM Up From A Dream HAIMの新作より。どの収録曲も粒ぞろいで、曲を一つに選ぶ作業で迷いました
27 Christine and the Queens People, I've been sad 今年の時勢/感情がうまく表現されているとの評
26 Joji Gimme Love ポップ→甘美なバラードへのスイッチが魅力的
25 The Weeknd After Hours アルバムの方向性を知らしめた長尺の先行曲
24 Tame Impala One More Year アルバムの世界観へと誘う、完璧な1曲目
23 Lil Uzi Vert That Way 名曲を現代に蘇らせる
22 Pop Smoke feat. 50 Cent & Roddy Ricch The Woo 今年大活躍のPop Smoke… (補足)
21 21 Savage & Metro Boomin Runnin 4年ぶりのシリーズ2作目より。2人の相性の良さは色褪せず
20 070 Shake Guilty Conscience シンガーのデビュー作で、ひときわ大きな輝きを放つ1曲
19 Mac Miller Blue World アルバムの深淵へと誘う少し不思議な世界観。Disclosureがプロデュース
18 Chloe x Halle Do It 今年屈指のR&Bアンセム。女性ラッパー大集合のリミックスもナイス
17 Fiona Apple Newspaper アルバムで一番迫力を感じた曲
16 Dorian Electra feat. Rebecca Black Edgelord Rebecca Blackという意義深いゲストを担ぎ出す
15 Polo G, Stunna 4 Vegas & NLE Choppa feat. Mike-WiLL Made It Go Stupid 2人の豪華プロデューサー(Mike-WiLLとTay Keith)の元、3人の気鋭ラッパーが大きく躍動
14 Lady Gaga & Ariana Grande Rain On Me 今年の暗い状況を打破するために、光り輝く「明るいヒット曲」
13 Doja Cat feat. Nicki Minaj Say So "Savage"と共にHot 100首位を争い、今年の女性ラッパー大活躍を印象づける
12 Perfume Genius Jason 美しさという点で傑出した存在
11 Taylor Swift feat. Bon Iver exile 彼女の今年の方向性を象徴する曲
10 Ava Max Kings & Queens ここ3年のダンスポップの星 (補足)
9 Lil Uzi Vert You Better Move 昔のウィンドウズのピンボール… (補足)
8 Rina Sawayama Akasaka Sad アルバムの中で最も印象的な曲。日本語の組み込み方が非常に巧み*2
7 Dua Lipa Physical USでは非シングル設定も、その存在感・影響力は格別
6 Poppy BLOODMONEY 破壊力は随一。*3
5 Charli XCX claws 先鋭さ、ポップさが高次元で融合
4 Troye Sivan Easy 個人的今年屈指のアンセム系。Kacey MusgravesとMark Ronsonを迎えたリミックスも◎
3 Bad Bunny, Jowell & Randy & Ñengo Flow Safaera 声に特徴のある客演を従え、絶え間ない最高のパーティーレゲトン曲を完成させた
2 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé Savage 今年のヒット曲で最も際立つ… (補足)
1 100 gecs feat. Charli XCX, Rico Nasty & Kero Kero Bonito ringtone それぞれのボーカリストが個性を発揮し、最高のポップソングが完成

 

~補足~

 

38位 Miley Cyrus feat. Stevie Nicks – Midnight Sky (Edge of Midnight)

 評価も高かった1曲。純粋に曲としても良いと思いますし、何より今年再注目されたFleetwood Macのボーカル、Stevie Nicksをリミックスで呼び寄せた点も個人的にはポイントが高いです。

 その彼女らの“Dreams”なんですが、Rolling Stoneが今年の曲では無いにも関わらず、今年のベストリストに入れていたのが面白かったです。

 ちなみに、彼女は長いことAndrew Wyattと組んで曲をリリースしてきましたが、この曲ではAndrew Wattとタッグ。Wattは現行シーンでヒットを「量産」していますが、ここまで批評家に評価されるのは少し珍しいような気がします。

 

22 Pop Smoke feat. 50 Cent & Roddy Ricch

 アルバムは大ヒットし、複数シングルが人気を得て自らの才能を証明したPop Smoke。その収録曲の中でも、彼のボーカルが輝いていると感じたのでこの曲をチョイスしました。

 私はその活躍ぶりから、Pop Smokeはアルバム/シングル共に批評家のリストに多く掲載されるかと考えていましたが、さほど取り上げられず。特にこの曲は同じく今年大活躍のRoddy Ricchもいるので、「昨年はRoddy Ricchを取り上げなくてゴメン!」というニュアンスも同時に出せるので、批評メディアの間で需要があるかな?とも考えていたのですが、それをしたい場合は普通に昨年末の”The Box”を選ぶようですね。(Pitchforkは両方選んでいます) 

 “The Box”はかなり年末のリリースだったので、今年のリストに入るのもまあ納得ではあるのですが、今年のリストではこれ以外に、昨年11月リリースの“Blinding Lights”がかなり多くのリストに取り上げられました。他に昨年10月リリースの”Don’t Start Now“も。

 私は「去年の先行で外したのに!後出し厳禁!」ということが言いたいのでは全くなく、それだけ現行の批評メディアが曲の受容、つまりはヒットチャート的要素を重視していることが伺えるな、という発見を伝えたかったのです。

 

10 Ava Max – Kings & Queens

 現代では珍しさも感じる、ダンスポップを極め続けるAva Max。その彼女が見せたロック成分を含有した新境地。地道に勢力を拡大していき、USのラジオでは“Sweet but Psycho”以上のヒットに。あまり注目されませんが、ポップスに新鮮さをもたらしつつ、ヒットも安定して飛ばし続ける彼女の活躍に私は大きな拍手を贈りたいです。

 

9 Lil Uzi Vert – You Better Move

 私は彼と同じ1994年生まれ、ということもあってなのか、この曲でサンプリングされたウィンドウズのピンボール効果音はノスタルジーのツボにドンピシャでした。客演が少なく、彼の世界観/ボーカルを全面に押し出した“Eternal Atake”のハイライトだと感じました。

 ちなみに歌詞には遊戯王も登場しますが、残念ながら私は遊戯王をやったことは無いです。周りの人はけっこうやっていたので、「世代」ではあるのですが。

 

2 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé – Savage

 各メディアのベストリストが出るまでは、この曲が“WAP”的な立場になると思っていました。この曲もかなり評価は高いですが。

 この曲はMegan Thee Stallionにとって初の首位(かつ初のトップ10)。さらに今年メインストリームで最も盛り上がった感じた瞬間は“Savage”対”Say So”のHot 100首位争いと思っているので、そこに参加した“Savage”はやはり意義があるかなと感じました。両者のラップの巧みさも際立ちます。

 

 

プレイリスト

Spotifyは無料会員がプレイリストを作ると、違う曲をリストに勝手に入れるようになったので、今回は無しで😅

 

 

 

ベストアルバム編

 

*1:"The Sweater Weather"は今年過去最大のOn-Demand Streamsを記録

*2:余談なんですが、非日本語圏のリスナーの中には、”Alaska Sad"と思っている人もいるらしいです

*3:2019年11月のリリースですが、アルバムまでこの曲を聞かないようにしていたので、今年の選考に入れています

Billboard Hot 100 Year-End / 年間チャート・2020を10のポイントで見る

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 12月初旬に発表されたビルボードの年間チャートを振り返っていこうと思います!年間チャートは以下のリンクから閲覧できます。

 2019の11/23付~2020/11/14付のチャートまでが集計期間と考えられています。(=2019の11/15~2020の11/5までの動向が集計の対象)

 

Hot 100:Hot 100 Songs - Year-End | Billboard

アルバムチャート:Billboard 200 Albums - Year-End | Billboard

Year-End窓ページ:Charts - Year End | Billboard

 

 

 

 

1 奇妙な週間順位と年間順位の関係

 まずは総括的なテーマから始めます。年間チャートを見る意義として挙げられるのは、「総合的なヒット度」を一挙に確認できるということです。「週間チャートで1位を獲得!というニュースは聞いたけど、その後はどうなったの?」、「逆に目立ってないけどじわじわヒットしていた曲は無い?」のような点が年間チャートでは可視化されます。

 近年は週間ピークとその後のヒット具合が一致しないことも多く、この年間チャートを確認する意義は大きいと考えていたのですが、今年は特に週間順位と年間チャートの順位の乖離が大きく、その意義が際立つ年になりました。

 週間と年間の順位がここまで離れた理由は主に2つあります。1つ目は今年チャートを席巻した「販売戦略」です。これは特定の週に曲の購入を呼びかけ、圧倒的なセールスパワーによってHot 100首位の座を「狙いに行く」というものです。

 現在セールスのアベレージは低いものの、依然Hot 100でのセールスのポイントは重めに設定*1されているため、セールスをある程度稼ぐとストリーミングやラジオの差をひっくり返すことが可能なのです。この構図を上手に利用してチャート実績を積み上げていくのが販売戦略なのです。

 7月頃まではCDやヴァイナル等の物理媒体にDL権利を付け、そのDLが集計に入るというパターンが定番でしたが、ビルボードはこの「付属DL」を規制。CD等の実物が配送されるまで集計されないようになりましたが、このルール変更は焼け石に水。その後もD2Cなどが台頭し、販売戦略による「狙った」1位獲得は繰り返されました。(D2C=直接顧客販売、つまりアーティスト自身のウェブサイトで音源を売るような手法)

 これが今後も続くか、それともビルボードが根本からの解決策を提示して止まるかは分かりませんが、今年のチャートに大きな影響を及ぼしたことは変わりありません。今年は1992年以降では最多の累計19曲の1位が誕生。さらに「デビュー1位」に限るとぶっちぎり最多の11曲が生まれています。(これまでは4曲が最多)

 しかし中には1位としてはヒット度が物足りない曲も多く、滞在が20週にも届かずチャートから外れてしまう曲も見られました。このような曲は必然的に年間チャートでも順位は低くなります。(ただこの中にはストリーミングで人気だった曲も多く、ストリーミングの人気曲をラジオがあまりかけていないという捉え方もできます)

 さらに滞在が10週に届かなかった“TROLLZ”、”cardigan”、”Franchise”の3曲は年間チャート入りを逃してしまいました。これまで年跨ぎではない1位シングルで、年間チャート入りを逃したのはFantasiaの“I Believe”のみと伝えられているので、今年のようなチャートアクションが歴史的に見ても異質なことが分かります。

 (”Franchise”は集計の終盤というリリース時期の問題もありますが、最終的なチャート滞在はわずか9週なので、集計時期の問題が無くても年間チャートには入らなかったと思われます)

 

 2つ目はラジオヒットが際立つようになったことです。特定の曲がオンエアされ続けることが増加し、週間のピークは低めでも年間チャートでは高くなるような事例が見られました。中でもMaren Morrisの“The Bones”は週間ピーク12位ながらも、年間チャート9位に。(おそらく)史上5曲目の週間トップ10を逃しながらも年間トップ10入りを果たした曲となりました。*2

1957 Patsy Cline – I Fall To Pieces (週12、年2)
1973 Kris Kristofferson – Why Me (週16、年5)
1974 Mac Davis – One Hell of A Woman (週11、年10)
1998 Paula Cole – I Don’t Wat To Wait (週11、年10)
2020 Maren Morris – The Bones (週12、年9)
 

 この特定の曲の集中オンエアはポップ系、アダルトポップ系で見られるようです。ポップ系のラジオチャートのWikipediaのロングヒット系記録の項目を見ると、近年の曲で多く埋め尽くされています。これは感染症の影響もあるのかもしれませんが、昨年以前もこの傾向はあったので、今年ほどでは無いにせよ、来年以降もラジオが特定の曲をオンエアするという現象は続きそうな気はします。

 

 

2 年間トップ10の「50」「61」

 

1 The Weeknd – Blinding Lights (1✕4)

2 Post Malone – Circles (1✕3)

3 Roddy Ricch – The Box (1✕11)

4 Dua Lipa – Don’t Start Now (2)

5 DaBaby feat. Roddy Ricch – ROCKSTAR (1✕7)

6 Harry Styles – Adore You (6)

7 Future feat. Drake – Life Is Good (2)

8 Maroon 5 – Memories (2)

9 Maren Morris – The Bones (12)

10 Lewis Capaldi – Someone You Loved (1✕3) ※今年の集計分では1週
()内は週間のピーク

 

 続いて、年間チャートで最も際立つ上位帯:トップ10を見ていきます。1位~3位には“Blinding Lights”、”Circles”、“The Box”の三大巨頭が。これらの3曲は序盤からヒットを飛ばしており、年の前半からいずれも年間チャート1位の有力候補でした。

 次いで大ヒットの印象が強い“Don’t Start Now”と”ROCKSTAR”。ほか粘りの“Adore You”、Futureキャリア最大のヒット”Life Is Good”、ラジオで相変わらず強いMaroon 5の“Memories”、ロングヒットのThe Bones”、”Someone You Loved“と並びます。

 この中で異質なのは、週間でトップ10に入らなかったのに年間ではトップ10の“The Bones”です。この曲のヒットについて、今年のRadio / Digital Sales / Streamingチャートの年間成績から考えていきます。

2020   Radio    Digital     Streaming
1 Blinding Lights 2 2 3
2 Circles 1 4 5
3 The Box 15 22 1
4 Don't Start Now 3 10 18
5 ROCKSTAR 19 12 4
6 Adore You 4 29 33
7 Life Is Good 35 37 2
8 Memories 5 5 50
9 The Bones 6 23 61
10 Someone You Loved 7 17 9

 

 それぞれに強み・弱みがありますが、私が注目したのは“Memories”と”The Bones”のストリーミング年間順位の低さです。Streaming Songsが通年で導入されて以降(2014~)、年間トップ10入り(Hot 100の)した曲でストリーミング年間順位が最も低かった曲は2018年の”The Middle”の34位で、ストリーミングがここまで低い曲が年間トップ10入りすることがいかに珍しいことが分かります。

 

2019   Radio    Digital    Streaming
1 Old Town Road         20 1 1
2 Sunflower 9 3 2
3 Without Me 2 4 3
4 bad guy 14 7 5
5 Wow. 10 8 7
6 Happier 6 14 8
7 7 rings 16 12 6
8 Talk 4 26 19
9 SICKO MODE 23 24 4
10 Sucker 3 10 28

 昨年の同データは上の通りです。全体のストリーミングの高さもそうですが、驚くべきはラジオ年間1位の曲がHot 100の年間トップ10にも入らなかったことです。ラジオ年間1位の“High Hopes”はストリーミング年間71位という成績が足を引っ張り、年間トップ10に入ることができませんでした。(11位) 

 

 このように、昨年はラジオヒットが弱く出ていましたが、今年はラジオが巻き返しを果たしています。2014年以降のHot 100年間トップ10曲のRadio / Digital Sales / Streamingの平均値は以下の通りです。このデータを読み取ると、ラジオは例年並ですが、DLとストリーミングの値が大きく下落しており、今年はラジオが相対的に強くなった=年間の順位と近づいたことが分かります。

 

  Radio    Digital    Streaming
2020 9.7 16.1 18.6
2019 10.7 10.9 8.3
2018 9.5 6.6 9.4
2017 12.6 10.2 11.4
2016 12.2 7.2 8.1
2015 9.3 7.9 8.2
2014 8.5 7.2 7.4

※2017年、2015年はラジオが年間(75位まで)圏外の曲が一つずつ入っています。(”Watch Me”と”Congratulations”)これらは平均に含んでいないので、含めるとすればこの数字はガクンと落ちます。

 

 これは前述のラジオでのロングヒットがとても大きな要因ですが、ビルボードのルール変更も多少は影響していると思います。今年YouTubeに関するルールを何回か変更。その内容は……

①ユーザー作成のビデオに関して、複数曲が含まれる○○まとめのような動画は対象外に。

②リリックビデオ等、曲を扱うものでもユーザー作成のものは大きくポイントを落とす → 後にユーザー作成のビデオは全て対象外に

③非ログインリスナーの再生を対象外にしたと思われる(これはサイレントの変更)

 

 と、かなりYouTube関連の数字が制限されました。ストリーミングの有力勢力であったYouTubeの減衰により、ストリーミング自体が数字を落とし、相対的にラジオが強化された、という構図です。(ただしビルボードがポイント内訳を公開していないため、一概にそうとも言い切れない部分もあります。年半ばには感染症を考慮してラジオの数字がやや落とされたため、ラジオもラジオでポイントを落としたとも考えられています。(表記される再生数は落ちたものの、内部のポイント計算式が不明な以上、実際にラジオのポイントが落ちているかは推測の域を出ない)上記のYouTubeの変更は年初、ラジオの変更は5月~です。)

 その上で、ストリーミングに恵まれない曲でもラジオでロングヒットになった曲がいくつか存在したため、今年の年間トップ10のストリーミング平均順位は落ちたのです。(このラジオとストリーミングのズレというのは近年続くHot 100の興味深いテーマの一つ)

 ストリーミング人気曲と比べると、ラジオはじわじわ長い期間をかけてヒットするものも多いので(特に今年は)、Hot 100でのピークの低い曲が年間チャートで上位に入ったのだと考えました。

 この傾向は来年も続くのかは、ラジオやストリーミングの実際の動向もそうですが、それ以上にビルボードの手綱捌き次第だと考えています。このラジオ偏重になったチャートをビルボードはどう捉えているのか、その動向に私は注目しています。

 

 DLの順位が乖離したのは販売戦略の影響に加え、DLの数値が下がり販売戦略以外での影響力低下が理由でしょうか。今年のDL年間1位はBTSの“Dynamite”(年間38位)でした。2014年~2019年の間で、DL年間1位の曲はHot 100年間1位か2位のいずれかでした。

 

 

3 エントリーの多いアーティスト

 次にジェネラルなスタッツから年間チャートを見ていきます。まずはアーティストごとのHot 100年間チャートのエントリー数です。

 

6:Roddy Ricch、Lil Baby

5:DaBaby、Drake、Juice WRLD

4:Justin Bieber、Pop Smoke

3:Luke Combs

 

 6曲でエントリーを果たしたRoddy Ricchは間違いなく今年の顔の一人。自身の“The Box”、そして客演を務めた”ROCKSTAR”の2曲でHot 100首位を獲得しています。この2曲はいずれも販売戦略を用いずに首位を獲得しており、"販売戦略抜きで"複数Hot 100首位を獲得した今年唯一のアーティストです。アルバムチャートでもデビュー作が年間3位に入るなど、今年一気に頭角を表しました。

 もう一人6曲エントリーを果たしたのはLil Baby。Roddy Ricchとは違い、首位曲は無く、今年の累計トップ10滞在週は6(“For the Night”が3、”The Bigger Picture”が2、”We Paid”が1)と上位に入った期間は短いため、シングルヒットを飛ばしている印象は薄いかもしれませんが、地道にヒットを飛ばし続けています。これまでポップ系ラジオチャートへのエントリーが無いなど、クロスオーバーには欠けますが、ラップコミュニティーでの人気はとても根強いようです。特にApple Musicでは年間ランキングに彼の曲が15も入る(客演含む)など高い人気が伺えます。そのストリーミング人気もあり、アルバムチャートでは年間2位を記録。(“My Turn”)

 

 次点はDaBaby、Drake、Juice WRLDの3人。DaBabyはリリースペースの早さもあって自身の曲でヒットを量産。それぞれの作品から毎回ヒットが生まれることに、高い人気ぶりを感じます。“ROCKSTAR”では初のHot 100首位獲得にも成功しました。客演でも高い人気を誇り、Camila Cabelloの“My Oh My”(年間37位)などポップ方面への進出も果たしています。クレジットはされていませんがMoneybaggYoの”Said Sum”(年間98位)のヒットにも彼はリミックスで大きく寄与しています。

 Drakeは相変わらずの人気。“Life Is Good”と”No Guidance”はロングヒット、“Toosie Slide”と”Popstar”はリリース直後集中型、とヒットのパターンも様々。

 Juice WRLDは昨年末の訃報以降も、ストリーミングで人気。一方ラジオではオンエアに恵まれず、年間チャートに入った5曲のうち、週間のラジオトップ50に入った曲は“Come & Go”の1曲のみでした。

 

 続いて4曲エントリーを果たしたのはJustin BieberとPop Smokeの2人。Justin Bieberは“Yummy”がHot 100首位を取り逃した末に尻すぼみになるなど、あまりうまく行っている印象はありませんでしたが、なんだかんだ人気に安定感があるということが分かります。(その”Yummy”も年間チャート入り)。時期的に今年の年間チャートには入りませんが、“Holy”や”Lonely”といった直近のシングルも好調。

 Pop Smokeは特に今年のアルバムからヒット連発。ラジオでオンエアされていない曲も含め、ストリーミングでは複数曲がシングルのような立場を確保し、人気を得ました。Juice WRLDにも言えることですが、この活躍ぶりを見ていると、改めて亡くなった事を惜しく思います。

 最後にカントリーシンガーのLuke Combs。彼はデビュー以降全てのシングルがトップ40入りするなど、ヒットの安定性が抜群。カントリー歌手としては珍しく、SpotifyApple Musicでも人気が高いです。

 

 

4 ジャンル別エントリー

 次にジャンル別の割合を見ていきます。ジャンル分けはビルボード準拠(例:Hot Country Songsに入っていればカントリーとカウント)。ポップのジャンル別チャートは無いので、ジャンル別チャートに入らない曲はポップとみなします。複数ジャンルでランクインしている曲はポップに分類します。

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 R&B/Hip-Hopが引き続き覇権。半数超えとは行かないものの、他のジャンルに大差を付けていることは変わりません。

 次に、ポップスは大きく曲数を減らしました。これはビルボードのジャンル分けの影響もあるかもしれません。例えばJustin BieberのYummy”や“Intentions”はR&B扱いとなっているため、このポップには含まれていません。他にもR&B/Hip-Hopの項目にはポップっぽい曲はいくつか見られるため、この数字ほどポップスは少なくは感じないかもしれません。

 そして3番目はカントリー。9→14→18と2年連続で大きく数字を伸ばし続けています。前章で述べたようなラジオ偏重の恩恵を最も受けうるジャンル、ということが大きいでしょうか。しかしストリーミングも少しずつ克服しているようにも思えます。以前よりも週間ストリーミングトップ50に入るカントリー曲が格段に増えた印象です。

 SpotifyAppleではあまり上位に入らないですが、Amazon Musicではカントリー人気が際立ちます。Amazonは再生数の実数を公開していないため、どれくらいの割合を占めているかは分かりませんが、このAmazon等でカントリーのリスナーの間でストリーミングの浸透度が上昇した、ということがストリーミング改善の理由かと推測しています。Luke CombsやMorgan Wallenのような、AppleSpotifyでも人気を得る存在も一部います。

 

 4番目はRock & Alternative系。今年からビルボードはジャンル名をRock & Alternativeとしたため、少しジャンルの解釈が広がりましたが、そこまで数は増えませんでした。この変更で新たに含まれるようになったのは“Dance Monkey”など。

 5番目はダンス曲。昨年までと同様に、USでの注目度は低いです。Lady Gagaのシングルはここに含まれています。

 そしてエントリーが0曲だったのはラテン。厳密にはThe Black Eyed PeasとJ Balvinの“RITMO”がエントリーしたのですが、この曲はダンスのチャートにも入ったため、「複数ジャンルにエントリーした場合はポップ」というルールにより、ここでは0になりました。アルバム単位で躍進したBad Bunnyのシングル、ほかKarol Gの“Tusa”などヒット候補はいくつかありましたが、いずれも年間チャートには手が届かず。YouTubeのルール変更の煽りを受けたという可能性も

 

 

5 N年連続エントリー

 続いて年間チャートへの連続エントリーから、誰がコンスタントにヒットを飛ばしているか?を見ていきます。

 

12年連続:Drake

8年連続:Ariana Grande

6年連続:Shawn Mendes、Justin Bieber、Selena Gomez、Camila Cabello※

5年連続:Post Malone、Travis Scott、Halsey、Young Thug
4年連続:J Balvin、Kane Brown、Maroon 5、Cardi B、Luke Combs、Khalid、Quavo※、Swae Lee※
3年連続:Marshmello、Juice WRLD、Lil Baby、Chris Brown、Dan + Shay

※グループでの成績も含む

 

 最長は安定のDrake。彼がヒットを飛ばさなくなる光景は現状、想像しにくいです。現在“Laugh Now Cry Later”が絶賛ヒット中で、来年の年間チャート入りもほぼ手中におさめています。

 次点はAriana Grande。今年のアルバムリリースが年間チャートの集計期間の後だったため、自身のアルバムからのシングルは入りませんでしたが、“Stuck With You”・”Rain On Me”とコラボレーションで「つなぎ」ました。現在”positions”がヒット中で、Drakeと同様に来年の年間チャート入りも確実です。

 6年連続の4人はラジオヒットが絶えないという印象があります。Justin Bieber以外は、昨年のシングルが(主に)ラジオの成績で年間チャート入りをしました。Justin Bieberもラジオヒットの“Intentions”が彼の今年最大のヒットになっています。この4人に中では、Justin Bieberが”Holy”で来年の年間チャート入りが既に有力。

 

 その他で印象に残ったのはJ BalvinとKhalid。純粋なラテン曲は前述のように、今年年間チャートに入らないなか、J Balvinはクロスオーバーヒットによりラジオヒットを成し遂げ、年間チャート入りしました。J Balvinの存在によってラテン圏でヒットし、The Black Eyed Peasの英語ヴァースの存在によってラジオのオンエアを得るという、フィールドによって共に力を貸し合う関係でヒットした曲です。ラテン曲は英語ヴァースの有無でポップ/リズミック系ラジオのオンエア数が大きく変わる傾向が見られます。

 Khalidは登場から昨年まで複数曲が年間チャートに入り続けていましたが、今年は1曲のみ。ゲストのような形でKane Brownのポップラジオ向けシングルの“Be Like That”が唯一のエントリー。自身のシングルでは今年は少し苦戦した印象です。また共に客演で参加したSwae Leeも年間入りはこの曲のみ。Kane Brownのポップ系へのチャレンジが結果的に2人の記録を継続させるという結果に。(ちなみには通常のカントリーラジオ向けシングル”Homesick”も年間入り)

 

 次いで、昨年までは連続で年間チャートに入っていたものの今年は入らなかったアーティストを紹介します。()内は年数

Taylor Swift(13)、Nicki Minaj(10)、Ty Dolla $ign(4)、Ed Sheeran(3)、OffsetとTakeoff [Migos](3)、Bruno Mars(3)、21 Savage(3)、Gucci Mane(3)、Sam Smith(3)、Daddy Yankee(3)

 

 Taylor SwiftはHot 100首位を獲得するも、年間チャートには入らず。今作はアルバム志向が強く、シングルとして聞くような曲ではないため、あくまで単体では再生数が伸びづらい曲だったことが理由かと考えています。戦略上の理由とはいえ、1位を獲得したのならば年間チャートくらいには滑り込みたかったかもしれませんが。

 Nicki Minajも同様に奇妙な形で年間チャート入りを逃しました。今年は悲願のHot 100首位を2つの曲で獲得しましたが、いずれも「彼女の名義では」年間チャート入りせず。“Say So”は当該週こそNicki Minajリミックスの功績が認められ、クレジットが載りましたが、トータルで見るとオリジナルがメインと判断され、年間チャートのリストにはNicki Minajの名は掲載されず。そしてもう一つの”TROLLZ”は、初週のセールス以外の成績に乏しく、わずか4週の滞在で外れるという年間チャートからは程遠い結末を迎えました。これはタッグを組んだ6ix9ineの素行不良の影響が大きいです。

 ほか、Karol Gとの“Tusa”も年間チャートに近い成績を記録していましたが惜しくも入りませんでした。

 

 

6 男女比

 Hot 100における男女比を見ていきます。複数アーティストがメイン名義になっている場合は、ビルボードの表記で一番先頭に表記されているアーティストの性を採用しています。

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 比率は昨年と変わらず。今年は女性ラッパーが非常に活躍した印象がありますが、R&B/Hip-Hopにおける女性のエントリーは7。昨年(8)と似たような数字でした。

 また今年躍進したジャンルであるカントリーにも目を向けます。ヒップホップと同様に、男性優位と言われているジャンルですが、このジャンルから5曲女性のエントリーが。昨年は0曲だったので、大きく躍進したことになります。“The Bones”と”I Hope”の2曲はポップ系への飛び火で大ヒットとなったので、この曲数以上に存在感はあったかなと感じます。ただ、カントリーはアーティスト単位で人気が出るわけではなく、「ジャンル聞き」の印象が強く、ラジオでオンエアされるかどうかにヒットの命運が握られているので、この現象が来年も見られるかと言われると微妙です。実際”I Hope”のGabby Barrettもまだ2曲目のHot 100エントリーを果たしていません。

 

ここまでジェネラルなデータから年間チャートを見てきましたが、ここからはディープなポイントを見ていきたいと思います。

 

 

7 非ラジオシングルの研究

 ラジオのオンエアをあまり得ていない曲について考えていきます。年間チャートに入った曲のうち、年間ラジオチャート(75位まで)に入っていない曲は34曲。その中で週間ラジオチャートの50位以内にも入っていない曲は11曲。

 

57 Lil Baby & 42 Dugg – We Paid
62 Eminem feat. Juice WRLD – Godzilla
63 Juice WRLD & YoungBoy Never Broke Again – Bandit
64 StaySolidRocky – Party Girl
75 YNW Melly & Juice WRLD – Suicidal
81 Pop Smoke feat. Lil Tjay – Mood Swings
83 Pop Smoke – Dior
86 Travis Scott & Kid Cudi – THE SCOTTS
90 Rod Wave feat. ATR Son Son – Rags2Riches
92 Juice WRLD – Wishing Well
100 NLE Choppa feat. Roddy Ricch – Walk Em Down

 

 全てラップ曲でした。ラジオに恵まれずとも、ストリーミングの数字でひっくり返すのはラップのお家芸なのでしょうか。さらにこれらの曲のジャンル別ラジオチャートの成績を観察すると、“Suicidal”と”Mood Swings”はここにすら入っていませんでした。つまりラジオではシングルに指定されなかったものの、年間チャートにまで到達したということです。

 “Suicidal”がオンエアされなかったのはYNW Mellyの存在。殺人の容疑がかけられている彼の素行を考慮して、ラジオのオンエアは控えられているようです。しかしストリーミングでは人気を確立しており、オリジナル版・Juice WRLDリミックス共に人気を得たため、再生数を多く稼いで年間チャート入りまでこぎ着けました。

 もう一つの“Mood Swings”はシングルが重複していたからです。この曲はTikTok等の影響で、非シングルながらストリーミングではシングルのような立場(プレイリスト等)を確保していました。しかし、ラジオではかかりませんでした。

 ラジオはたいてい、同一アーティストから1~2曲しか同時にはシングルカットしません。”Mood Swings”が人気を得た時には“The Woo”がシングルに指定されていたため、オンエアされず。このような場合には前シングルのサイクルが終了するのを待ち、ストリーミングからは遅れたタイミングでシングルカットされるのが定番のパターンですが、今回のPop Smokeの場合は、サイクルが終わる頃には”For The Night”や“What You Know Bout Love”など他のシングルも人気を得ていたため、結局ラジオでオンエアされないままシングルとしてのサイクルを終えました。しかしそのストリーミング人気は高かったため、年間チャートには入ることに成功しました。

 

 

8 ストリーミングが苦手な曲?

 上記のラジオと同様の作業をストリーミングで。まずストリーミングの年間チャートに入らなかった曲は30。さらにそのうち、週間のトップ50にも入らなかったのは以下の8曲。

 

50 The Black Eyed Peas & J Balvin – RITMO
56 JP Saxe feat. Julia Michaels – If The World Was Ending
73 Carly Pearce & Lee Brice – I Hope You’re Happy Now
77 Jonas Brothers – Only Human
89 Kane Brown – Homesick
95 Surf Mesa feat. Emilee – ily
97 Luke Combs – Lovin’ On You
99 H.E.R. feat. YG – Slide

 

 ラジオが強いポップ/カントリーの曲が多め。H.E.R.の“Slide”は唯一それに当てはまらない曲です。(R&B系の曲も、ストリーミングよりもラジオで強さが際立つ曲がそれなりに見られる)

 “If The World Was Ending”は変わっている曲で、このStreaming Songsの週間チャートには入らないながらも、Apple Music・Spotify両方の年間トップ100に入り、トータルで見ると実は再生数があった曲。Spotifyでは週間のピークが47位ながらも、年間では49位と、粘りのヒットでした。

 その他“RITMO”も、ラテン圏でヒットしている時はストリーミングヒットだったのですが、USに上陸したらラジオヒットになるという不思議な経緯を経ています。

 

 

9 ルール変更?の妙

 2019年のクリスマス後の週のHot 100で、突如複数曲が再登場を果たしました。一度リカレントでHot 100を外れた曲は、後に別サイクルでヒットするまでは再登場しませんが、クリスマス曲に押し出された曲は特例で再登場が認められたのです。(これに関するビルボードからの説明は見当たらない)クリスマス曲が多くのHot 100の枠を占めることは、現行ヒットのチャート入りを阻害しているという側面もあるので、それの埋め合わせということなのでしょう。

 これらのクリスマス曲によって外れる曲は既にピークを過ぎた曲が中心。そのため復活した曲の多くはすぐに外れてしまうのですが、“Sucker”、”I Don’t Care”、“Only Human”といったラジオヒットは長くHot 100に残留。というのも、年末にはポップ系ラジオではその年のヒット曲のオンエアが再び増加するため、この3曲はその効果でこの期間に再浮上していたのです。

 中でも”Only Human”はこの特例による復活で、今年の年間チャート入りを達成。このようなビルボードの微妙なルールの妙で、年間チャートの運命が左右されることもあるのです。

 あとはルールの妙といえば、クリスマス曲もそうでしょう。2011年まではルールでHot 100入りすらできなかった曲が、ストリーミングの拡大に伴い年々規模を拡大。今年ついにMariah Careyの"All I Want for Christmas Is You"が異例の年間チャート入りを達成しました。従来以上のストリーミングでの強さに加え、追加のプロモーション、TikTokでの人気なども印象的でした。

 しかし現行ヒットを阻害するまでにチャートを占めるようになったクリスマス曲を見て、再びビルボードが何かしらの規制をかける可能性も否定はできません。一番ルールの妙で動きそうなジャンルではあります。(ただ来年はまだ普通にチャート入りしそう)

 

 

10 アルバムチャート

 

1 Post Malone – Hollywood’s Bleeding

2 Lil Baby – My Turn

3 Roddy Ricch – Please Excuse Me For Being Antisocial

4 Harry Styles – Fine Line

5 Taylor Swift – folklore

6 Lil Uzi Vert – Eternal Atake

7 Pop Smoke – Shoot For The Stars Aim For The Moon

8 The Weeknd – After Hours

9 Juice WRLD – Legends Never Die

10 Luke Combs – What You See Is What You Get

 

 最後にアルバムチャートに触れていきます。トップ10は以下の通り。軒並みストリーミングで強いアルバムが並んだ印象。1位の戴冠に輝いたのはPost Malone。ロングヒットでかつ、リリースが昨年だったため52週全てが集計の対象になったことが大きいでしょうか。ビルボードの集計では、仮に先行シングルがヒットしてストリーミングを得ていたとしても、アルバムがリリースされるまでは集計の対象外になるため、リリースが早い方が集計上は有利になりやすいです。(他の媒体では先行シングルの分も集計されることも多く、リリース前の時点で既に“アルバム”がある程度売れていると計上される場合もある)

 2位と3位にはストリーミングで人気が高かったLil BabyとRoddy Ricch。シングル人気も高く、Hot 100の年間チャートにも複数曲が入りました。この2作品はいずれも、セールスが年間のトップ100にすら入っていません。

 4位はHarry Styles。シングルとアルバム両方でのトップ10入り。非ラップの最上位に。セールスでは年間2位。

 5位Taylor Swift、6位Lil Uzi Vertはシングルでは年間チャート入りが無いながらもアルバムチャートでは上位。個々のシングルが際立つことはあまり無かったですが、それぞれリリースの初週にはストリーミングで抜群の存在感を示しました。(Taylor Swiftはリリース時期が遅めなこともあり、成績はセールス中心ですが ※セールスは年間1位)

 7位~10位にはシングルでも存在感のあった面々が。この4人のうち、Pop Smoke以外はセールスでも年間トップ10に入っています。

 

年間アルバムチャートの各スタッツ

 

・エントリー数が多いアーティスト

6:Drake(28:Dark Lane Demo Tapes, 40:Scorpion, 85:Take Care, 98:Views, 120:More Life, 159:Nothing Was The Same)
4:YoungBoy Never Broke Again
3:Post Malone, Lil Baby, Taylor Swift, The Weeknd, Juice WRLD, Bad Bunny, DaBaby, Eminem

 

・Hot 100の年間チャート入りが無いアルバムチャート上位

5 Taylor Swift – folklore
6 Lil Uzi Vert – Eternal Atake
12 Original Broadway Cast – Hamilton: An American Musical
13 Soundtrack – Frozen II
14 Bad Bunny – YHLQMDLG
15 Taylor Swift – Lover
17 Summer Walker – Over It
18 Juice WRLD – Goodbye & Good Riddance
20 BTS – MAP OF THE SOUL:7
22 Luke Combs – This One’s For You
25 Queen – Greatest Hits

 

2017年以前にリリースされた作品(上位)

22 Luke Combs – This One’s For You (2017)
25 Queen – Greatest Hits (1981)
42 Billie Eilish – dont smile at me (2017)
44 Elton John – Diamonds (2017)
45 Post Malone – Stoney (2016)
53 Fleetwood Mac – Rumours (1977)
60 Bob Marley And The Wailers – Legend (1984
63 Creedence Clearwater Revival Featuring John Fogerty – Chronicle The 20 Greatest Hits (2005)
66 The BeatlesAbbey Road (1969)
67 Chris Stapleton – Traveller (2015)
68 Khalid – American Teen (2017)
71 Journey – Journey’s Greatest Hits (1988)
74 Lil Uzi Vert – Luv Is Rage 2 (2017)
 

ベストアルバム以外の、2009年以前の作品

53 Fleetwood Mac – Rumours (1977)
66 The BeatlesAbbey Road (1969)
89 AC/DC – Back In Black (1980)
111 Michael Jackson – Thriller (1982)
129 NirvanaNevermind (1991)
162 Eminem – The Eminem Show (2002)
166 Guns N’ Roses – Appetite For Destruction (1987)
169 Mariah Carey – Merry Christmas (1994)
177 MetallicaMetallica (1991)
186 Kid Cudi – Man On the Moon: The End Of Day (2009)
187 Nat King Cole – The Christmas Song (1960)
198 Vince Guaraldi Trio – A Charlie Brown Christmas (1965)

 

 

メモ+おまけ+リンク

 

おまけ1:今年のTikTokヒット

 

 昨年に引き続き、TikTokが曲のヒットに一役買いました。しかし一口にTikTokヒットといえども、様々なバリエーションがあるので、そこを解説していきたいと思います。

 まず、TikTokでの流通量がイコール曲のヒットの規模とはならないです。TikTokでの使用数が多くても曲としてはヒットしない物も多いですし、もちろんTikTok無しでヒットする曲も多く存在します。「TikTok内と外のギャップ」や「時期」等に着眼して説明していきます。

 

・2020 Year-Endに入ったいわゆるTikTokヒット

◎:TikTok無しでは考えづらい曲

○:ヒットの過程でTikTokが寄与した曲

△:TikTokの影響はさほど大きくないと感じる曲

 

1 The Weeknd – Blinding Lights △

3 Roddy Ricch – The Box ○

4 Dua Lipa – Don’t Start Now △

5 DaBaby feat. Roddy Ricch – ROCKSTAR ○

11 Doja Cat – Say So ○

14 Tones And I – Dance Monkey △

15 Megan Thee Stallion – Savage ○~◎

16 Arizona Zervas – Roxanne ◎

19 SAINt JHN - Roses ○

22 Trevor Daniel – Falling ◎

24 Cardi B feat. Megan Thee Stallion – WAP ○

27 Lil Mosey – Blueberry Faygo ○

32 Drake – Toosie Slide △

43 Powfu feat. beabadoobee – death bed ◎

47 24kGoldn feat. iann dior – Mood ○

49 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby – For The Night ○

58 Justin Bieber – Yummy △

61 Surfaces – Sunday Best ◎

64 StaySolidRocky – Party Girl ◎

67 Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You △

81 Pop Smoke feat. Lil Tjay – Mood Swings ○~◎

84 BENEE feat. Gus Dapperton – Supalonely ◎

90 Rod Wave feat. ATR Son Son – Rags2Riches ○~◎

 

TikTokヒットかの判定基準は、TokboardというTikTokでの再生数を測るサイト、私が実際に有名TikTokerの動画を見る企画等を参考にしています)

 

 

パターン1:無名から大ヒットへ

16 Arizona Zervas – Roxanne ◎

22 Trevor Daniel – Falling ◎

43 Powfu feat. beabadoobee – death bed ◎

61 Surfaces – Sunday Best ◎

64 StaySolidRocky – Party Girl ◎

84 BENEE feat. Gus Dapperton – Supalonely ◎

 

 一般的に想定されやすいパターン。元々無名だったアーティストが、TikTokのパワーで一気にスターダムを駆け上がりヒットを飛ばすというパターン。この場合、ヒットにおけるTikTokに依る割合が大きく、TikTok無しではヒットも考えられないと言っても過言ではないです。

 昨年Lil Nas Xが“Old Town Road”でこのヒットを成し遂げ、TikTokのヒットへの影響力が認識されたため、TikTokヒット=このパターンと考えられている気がしますが、このパターンが全てというわけではないです。

 

 

パターン2:シングルカットをTikTokが規定する

15 Megan Thee Stallion – Savage ○~◎

81 Pop Smoke feat. Lil Tjay – Mood Swings ○~◎

90 Rod Wave feat. ATR Son Son – Rags2Riches ○~◎

 

 ここで取り上げたアーティストは、アルバム単位でストリーミング上位を独占するような人気の持ち主で、これらの曲もアルバムの一部としてTikTok無しでもある程度ヒットしていました。しかし、TikTokで人気を得る前はシングルのような扱いではなく、必ずしもアルバムの中で目立つ曲では無かったです。これらの曲は、アーティスト単位ではTikTok無しでヒットを飛ばせていたが、曲単位ではTikTok無しでは考えづらいようなタイプです。

 

 

3:TikTokでヒットが加速

3 Roddy Ricch – The Box ○

5 DaBaby feat. Roddy Ricch – ROCKSTAR ○

11 Doja Cat – Say So ○

19 SAINt JHN - Roses ○

24 Cardi B feat. Megan Thee Stallion – WAP ○

27 Lil Mosey – Blueberry Faygo ○

47 24kGoldn feat. iann dior – Mood ○

49 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby – For The Night ○

 

 彼らは元々ヒットを飛ばせるクラスの知名度のあるアーティスト。TikTok無しでもそれなりのヒットになったであろう物曲を、TikTokの効果でさらに規模を広げたようなもの。

 例えばTikTokの恩恵で大ヒットとされることもある“The Box”も、リリース初日からApple Musicで1位を獲得しています。ただそれだけではHot 100首位を何週にもわたり支配するような特大ヒットにはならないので、その拡大にTikTokが一役買ったということです。

 この中で“Roses”は変わり種。彼のUSでの知名度は必ずしも高くは無かったですが、USでのヒット以前にヨーロッパ圏ではヒット。USで人気が微妙なダンスポップだったため、ヨーロッパでのヒット時にはUSで人気は出ませんでしたが、TikTokでの人気が出たあたりから急浮上。これ以外の曲のヒットのポテンシャルの源は「アーティストの注目度」にありましたが、この曲だけはその源が「ヨーロッパ圏でのヒット」にあるということです。

 

 

4:大物のTikTok向け曲とその成果?

32 Drake – Toosie Slide △

58 Justin Bieber – Yummy △

 

 個人的に一番興味深いと感じたのはこのタイプのヒットです。昨年のTikTokヒット大流行を経て、大物もその波に乗り始めました。これら2人はTikTokを意識したプロモーションを行い、実際にTikTokで人気を得ることに成功。Tokboardによると共に月間4位に入っています。

 しかし曲のヒット度は必ずしもうまく行かず。両者とも初週1位、2位と良いスタートを切ってはいますが、それは彼らのスター性を考えればさほど難しくはないこと。両方とも長くは持たず、彼らのポテンシャルからすれば年間順位はあまり満足のいくものではないでしょう。さらに、両者とも別のシングルでこれらの曲以上のヒットを成し遂げている点も興味深いです。(“Laugh Now Cry Later”の年間順位は”Toosie Slide”よりも低いですが、これは集計時期をまたぐヒットであるため)

 先に述べたように、TikTokでの人気と曲としての人気は決してイコールにはなりません。昨年の“Old Town Road”の結果を受けて、大物がもしTikTokヒットを飛ばしたらどれだけ巨大な規模のヒットになるだろう?という実験は興味深かったですが、あまりうまく行きませんでした。結局は、奇をてらずに良い曲を作り続けることがヒットを生み出す最大の方策なのかもしれません。

 

 

5 曲のヒットの方が先の曲

1 The Weeknd – Blinding Lights △

4 Dua Lipa – Don’t Start Now △

14 Tones And I – Dance Monkey △

67 Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You △

 

 曲のヒットの経緯を探ると、曲のヒットの方が早く、むしろTikTokがヒットの影響を受けているというパターンです。もちろんプロモーションには一役買っているとは思いますが、既に曲としての評価は確率した後なので、TikTokの影響力は小さいと判断した曲です。

 

 

 

 

 おまけ2:年間チャート予想の答え合わせ

  今年はトップ10正答数7 / ピタリ1と、予想を始めた2017年以来ワーストの成績を記録してしまいました。ラジオがここまで特定シングルを引っ張る点が予想外で、それが予想を外した要因にもなったかなと感じます。精進致します……

年間チャート トップ10 半年前予想 2020 (Hot 100) - チャート・マニア・ラボ

 

 

リンク

 昨年度版:Hot 100(USシングル) 2019年間チャートを10のポイントで振り返る - チャート・マニア・ラボ

 

2018年度版:Hot 100(USシングル) 2018年間チャートを10のポイントで振り返る - チャート・マニア・ラボ

 

2017年度版:Hot 100(USシングル)・2017年間チャートを10のポイントで振り返る - チャート・マニア・ラボ

 

 

メモ

 

・年間チャートとその週間チャートでの成績
(集計期間内での成績  *付きの曲は集計外に別のピーク/滞在があることを示す)
(昨年、は昨年の年間チャートでの順位)

 

アーティスト 曲名 ピーク 週数 昨年
1 The Weeknd Blinding Lights 1 *49  
2 Post Malone Circles 1 *51 62
3 Roddy Ricch The Box 1 38  
4 Dua Lipa Don't Start Now 2 *51  
5 DaBaby feat. Roddy Ricch ROCKSTAR 1 *29  
6 Harry Styles Adore You 6 *48  
7 Future feat. Drake Life Is Good 2 38  
8 Maroon 5 Memories 2 *34  
9 Maren Morris The Bones 12 *45  
10 Lewis Capaldi Someone You Loved 1 *26 27
11 Doja Cat Say So 1 38  
12 Gabby Barrett feat. Charlie Puth I Hope *5 *45  
13 Jack Harlow feat. DaBaby, Tory Lanez, & Lil Wayne Whats Poppin 2 *39  
14 Tones And I Dance Monkey 4 *31  
15 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé Savage 1 28  
16 Arizona Zervas Roxanne 4 *25  
17 Justin Bieber feat. Quavo Intentions 5 31  
18 Billie Eilish everything i wanted 8 33  
19 Saint Jhn Roses 4 *33  
20 Harry Styles Watermelon Sugar 1 *33  
21 Lewis Capaldi Before You Go 9 *40  
22 Trevor Daniel Falling 17 38  
23 Dan + Shay & Justin Bieber 10,000 Hours *5 *25  
24 Cardi B feat. Megan Thee Stallion WAP 1 *13  
25 Mustard feat. Roddy Ricch Ballin' 11 *28  
26 Blackbear hot girl bummer 11 *34  
27 Lil Mosey Blueberry Faygo 8 33  
28 The Weeknd Heartless 1 23  
29 DaBaby BOP 11 *24  
30 Selena Gomez Lose You to Love Me *5 *20  
31 Lizzo Good as Hell 3 *19  
32 Drake Toosie Slide 1 20  
33 Dua Lipa Break My Heart 13 32  
34 Morgan Wallen Chasin' You 16 36  
35 Jawsh 685 & Jason Derulo Savage Love (Laxed – Siren Beat) 1 *21  
36 Chris Brown feat. Drake No Guidance *7 *24 21
37 Camila Cabello feat. DaBaby My Oh My 12 27  
38 BTS Dynamite 1 *11  
39 Chris Brown & Young Thug Go Crazy 9 *26  
40 Roddy Ricch feat. Mustard High Fashion 20 28  
41 Drake feat. Lil Durk Laugh Now Cry Later 2 *12  
42 Lil Baby Woah 15 21  
43 Powfu feat. Beabadoobee death bed 23 26  
44 Shawn Mendes & Camila Cabello Señorita *3 *17 15
45 Travis Scott Highest in the Room *8 *17  
46 Billie Eilish bad guy *13 *17 4
47 24kGoldn feat. Iann Dior Mood 1 *13  
48 Lady Gaga & Ariana Grande Rain on Me 1 20  
49 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby For the Night 6 *18  
50 Black Eyed Peas & J Balvin RITMO (Bad Boys for Life) 26 27  
アーティスト 曲名 ピーク 週数 昨年
51 Rod Wave Heart on Ice 25 27  
52 Blake Shelton & Gwen Stefani Nobody but You 18 25  
53 Shaed Trampoline 13 *16 70
54 Juice WRLD & Marshmello Come & Go 2 *17  
55 Lizzo Truth Hurts *6 *15 13
56 JP Saxe feat. Julia Michaels If the World Was Ending 27 29  
57 Lil Baby & 42 Dugg We Paid 10 22  
58 Justin Bieber Yummy 2 15  
59 Old Dominion One Man Band 20 *17  
60 Jason Aldean Got What I Got 16 *23  
61 Surfaces Sunday Best 19 21  
62 Eminem feat. Juice WRLD Godzilla 3 20  
63 Juice WRLD & YoungBoy Never Broke Again Bandit *22 *15  
64 StaySolidRocky Party Girl 21 20  
65 Maddie & Tae Die from a Broken Heart 22 25  
66 DJ Khaled feat. Drake Popstar 3 *16  
67 Mariah Carey All I Want for Christmas Is You 1 *37  
68 Lee Brice One of Them Girls 17 *23  
69 Sam Hunt Hard to Forget 26 20  
70 Luke Bryan One Margarita 19 20  
71 Lil Nas X Panini *9 *12 40
72 Young Thug feat. Gunna Hot *16 *14  
73 Carly Pearce & Lee Brice I Hope You're Happy Now 27 25  
74 Lil Baby Emotionally Scarred 31 25  
75 YNW Melly feat. Juice WRLD Suicidal 20 20  
76 Lil Baby The Bigger Picture 3 20  
77 Jonas Brothers Only Human 18 *15 78
78 Pop Smoke feat. 50 Cent & Roddy Ricch The Woo 11 *18  
79 Lil Baby Sum 2 Prove 16 20  
80 Ariana Grande & Justin Bieber Stuck with U 1 18  
81 Pop Smoke feat. Lil Tjay Mood Swings 17 *18  
82 Halsey you should be sad 26 18  
83 Pop Smoke Dior 22 21  
84 Benee feat. Gus Dapperton Supalonely 39 22  
85 Luke Combs Even Though I'm Leaving 11 *14  
86 The Scotts, Travis Scott, & Kid Cudi THE SCOTTS 1 13  
87 Doja Cat & Tyga Juicy 41 *18  
88 Kane Brown feat. Swae Lee & Khalid Be Like That 19 *17  
89 Kane Brown Homesick 35 21  
90 Rod Wave feat. ATR Son Son Rags2Riches 12 *19  
91 Miranda Lambert Bluebird 26 20  
92 Juice WRLD Wishing Well 5 *17  
93 Luke Combs feat. Eric Church Does to Me 20 19  
94 Jhené Aiko Pussy Fairy (OTW) 40 25  
95 Surf Mesa feat. Emilee ILY (I Love You Baby) *25 *24  
96 Morgan Wallen More Than My Hometown 23 *21  
97 Luke Combs Lovin' on You 23 19  
98 Moneybagg Yo Said Sum 17 *18  
99 H.E.R. feat. YG Slide 43 20  
100 NLE Choppa feat. Roddy Ricch Walk Em Down 38 20  
アーティスト 曲名 ピーク 週数 昨年

 

 

・Hot 100年間チャート入り曲のそれぞれの年間Radio / Digital Sales / Streaming
(黃背景は年間圏外)

 

アーティスト 曲名 R D S
1 The Weeknd Blinding Lights 2 2 3
2 Post Malone Circles 1 4 5
3 Roddy Ricch The Box 15 22 1
4 Dua Lipa Don't Start Now 3 10 18
5 DaBaby feat. Roddy Ricch Rockstar 19 12 4
6 Harry Styles Adore You 4 29 33
7 Future feat. Drake Life Is Good 35 37 2
8 Maroon 5 Memories 5 5 50
9 Maren Morris The Bones 6 23 61
10 Lewis Capaldi Someone You Loved 7 17 9
11 Doja Cat Say So 9 18 20
12 Gabby Barrett feat. Charlie Puth I Hope 8 6 29
13 Jack Harlow feat. DaBaby, Tory Lanez, & Lil Wayne Whats Poppin 37   6
14 Tones And I Dance Monkey 28 3 8
15 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé Savage 29 7 11
16 Arizona Zervas Roxanne 22 34 7
17 Justin Bieber feat. Quavo Intentions 13 20 25
18 Billie Eilish Everything I Wanted 17 14 26
19 Saint Jhn Roses 25 16 15
20 Harry Styles Watermelon Sugar 18 15 32
21 Lewis Capaldi Before You Go 11 24  
22 Trevor Daniel Falling 39   14
23 Dan + Shay & Justin Bieber 10,000 Hours 10 26 52
24 Cardi B feat. Megan Thee Stallion WAP   9 10
25 Mustard feat. Roddy Ricch Ballin' 26   16
26 Blackbear Hot Girl Bummer 21 42 60
27 Lil Mosey Blueberry Faygo 48   13
28 The Weeknd Heartless 20 57 65
29 DaBaby Bop 41   17
30 Selena Gomez Lose You to Love Me 16 41 68
31 Lizzo Good as Hell 14 13  
32 Drake Toosie Slide 40 47 23
33 Dua Lipa Break My Heart 12    
34 Morgan Wallen Chasin' You 30 49 74
35 Jawsh 685 & Jason Derulo Savage Love (Laxed – Siren Beat) 32 11 35
36 Chris Brown feat. Drake No Guidance 23   57
37 Camila Cabello feat. DaBaby My Oh My 24 74  
38 BTS Dynamite   1  
39 Chris Brown & Young Thug Go Crazy 31   38
40 Roddy Ricch feat. Mustard High Fashion 64   22
41 Drake feat. Lil Durk Laugh Now Cry Later 54   27
42 Lil Baby Woah     19
43 Powfu feat. Beabadoobee Death Bed 45 75 42
44 Shawn Mendes & Camila Cabello Señorita 34 52 69
45 Travis Scott Highest in the Room 70   28
46 Billie Eilish Bad Guy 65 28 46
47 24kGoldn feat. Iann Dior Mood 60 54 43
48 Lady Gaga & Ariana Grande Rain on Me 51 21 75
49 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby For the Night     21
50 Black Eyed Peas & J Balvin Ritmo (Bad Boys for Life) 36    
アーティスト 曲名 R D S
51 Rod Wave Heart on Ice     59
52 Blake Shelton & Gwen Stefani Nobody but You 49 8  
53 Shaed Trampoline 27    
54 Juice Wrld & Marshmello Come & Go     41
55 Lizzo Truth Hurts 38 40  
56 JP Saxe feat. Julia Michaels If the World Was Ending 47    
57 Lil Baby & 42 Dugg We Paid     24
58 Justin Bieber Yummy   31 70
59 Old Dominion One Man Band 44 32  
60 Jason Aldean Got What I Got 67 33  
61 Surfaces Sunday Best   48 64
62 Eminem feat. Juice Wrld Godzilla   62 44
63 Juice Wrld & YoungBoy Never Broke Again Bandit     30
64 StaySolidRocky Party Girl     34
65 Maddie & Tae Die from a Broken Heart 68    
66 DJ Khaled feat. Drake Popstar     51
67 Mariah Carey All I Want for Christmas Is You   60 48
68 Lee Brice One of Them Girls 63 43  
69 Sam Hunt Hard to Forget 73 35  
70 Luke Bryan One Margarita 53 19  
71 Lil Nas X Panini 69   71
72 Young Thug feat. Gunna Hot     45
73 Carly Pearce & Lee Brice I Hope You're Happy Now 71    
74 Lil Baby Emotionally Scarred     73
75 YNW Melly feat. Juice Wrld Suicidal     31
76 Lil Baby The Bigger Picture     63
77 Jonas Brothers Only Human 33    
78 Pop Smoke feat. 50 Cent & Roddy Ricch The Woo     62
79 Lil Baby Sum 2 Prove     36
80 Ariana Grande & Justin Bieber Stuck with U   27  
81 Pop Smoke feat. Lil Tjay Mood Swings     40
82 Halsey You Should Be Sad   65  
83 Pop Smoke Dior     39
84 Benee feat. Gus Dapperton Supalonely      
85 Luke Combs Even Though I'm Leaving 50 64  
86 The Scotts, Travis Scott, & Kid Cudi The Scotts   63 58
87 Doja Cat & Tyga Juicy      
88 Kane Brown feat. Swae Lee & Khalid Be Like That   50  
89 Kane Brown Homesick 58    
90 Rod Wave feat. ATR Son Son Rags2Riches     47
91 Miranda Lambert Bluebird   51  
92 Juice Wrld Wishing Well     49
93 Luke Combs feat. Eric Church Does to Me 43 72  
94 Jhené Aiko Pussy Fairy (OTW)      
95 Surf Mesa feat. Emilee ILY (I Love You Baby) 74    
96 Morgan Wallen More Than My Hometown   71  
97 Luke Combs Lovin' on You 52    
98 Moneybagg Yo Said Sum     54
99 H.E.R. feat. YG Slide      
100 NLE Choppa feat. Roddy Ricch Walk Em Down     55
アーティスト 曲名 R D S

 

Apple Music / Spotify年間ランキングとの比較
Apple Musicは100位まで、Spotifyは50位まで、黃背景は年間圏外)
(両方とも集計期間は不明だが、12月初旬に発表されたランキングなので、ビルボードの集計期間とは大きくは違わないはず)
(Sp週はSpotifyでの週間チャートのピーク。()内の数字は今年の集計期間内でのピークを指す)

アーティスト 曲名 Ap年 Sp年 Sp週
1 The Weeknd Blinding Lights 7 2 1
2 Post Malone Circles 11 6 1(2)
3 Roddy Ricch The Box 1 1 1
4 Dua Lipa Don't Start Now 27 12 5
5 DaBaby feat. Roddy Ricch Rockstar 3 4 1
6 Harry Styles Adore You 31 16 3
7 Future feat. Drake Life Is Good 4 5 2
8 Maroon 5 Memories 85   9
9 Maren Morris The Bones     60(182)
10 Lewis Capaldi Someone You Loved 28 27 6
11 Doja Cat Say So 84 15 3
12 Gabby Barrett feat. Charlie Puth I Hope 56   72
13 Jack Harlow feat. DaBaby, Tory Lanez, & Lil Wayne Whats Poppin 40 11/41 2
14 Tones And I Dance Monkey 18 25 7
15 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé Savage 70/100   5
16 Arizona Zervas Roxanne 16 7 1
17 Justin Bieber feat. Quavo Intentions 36 14 2
18 Billie Eilish Everything I Wanted 22 31 1
19 Saint Jhn Roses 57 13 5
20 Harry Styles Watermelon Sugar 38 8 4
21 Lewis Capaldi Before You Go 88 39 42
22 Trevor Daniel Falling 37 10 5
23 Dan + Shay & Justin Bieber 10,000 Hours 53   2(17)
24 Cardi B feat. Megan Thee Stallion WAP 12 9 1
25 Mustard feat. Roddy Ricch Ballin' 5 23 11
26 Blackbear Hot Girl Bummer 47 30 4(8)
27 Lil Mosey Blueberry Faygo 29 3 2
28 The Weeknd Heartless 30   1
29 DaBaby BOP 9 26 3(4)
30 Selena Gomez Lose You to Love Me 43   2(5)
31 Lizzo Good as Hell     22(45)
32 Drake Toosie Slide 23 17 1
33 Dua Lipa Break My Heart     14
34 Morgan Wallen Chasin' You 59   55
35 Jawsh 685 & Jason Derulo Savage Love (Laxed – Siren Beat)     9
36 Chris Brown feat. Drake No Guidance 13   5(21)
37 Camila Cabello feat. DaBaby My Oh My     15
38 BTS Dynamite     4
39 Chris Brown & Young Thug Go Crazy 42   20
40 Roddy Ricch feat. Mustard High Fashion 6 18 5
41 Drake feat. Lil Durk Laugh Now Cry Later 55 42 2
42 Lil Baby Woah 2   11
43 Powfu feat. Beabadoobee death bed   19 9
44 Shawn Mendes & Camila Cabello Señorita     1(35)
45 Travis Scott Highest in the Room 14 35 1(3)
46 Billie Eilish Bad Guy 82   1(18)
47 24kGoldn feat. Iann Dior Mood   34 1
48 Lady Gaga & Ariana Grande Rain on Me     2
49 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby For the Night 20 33 2
50 Black Eyed Peas & J Balvin Ritmo (Bad Boys for Life)     87
アーティスト 曲名      
51 Rod Wave Heart on Ice 44   47
52 Blake Shelton & Gwen Stefani Nobody but You     185
53 Shaed Trampoline     33
54 Juice Wrld & Marshmello Come & Go   40 1
55 Lizzo Truth Hurts 99   3(24)
56 JP Saxe feat. Julia Michaels If the World Was Ending 87 49 47
57 Lil Baby & 42 Dugg We Paid 15   9
58 Justin Bieber Yummy 96   3
59 Old Dominion One Man Band     71
60 Jason Aldean Got What I Got     105
61 Surfaces Sunday Best 75 22 14
62 Eminem feat. Juice Wrld Godzilla 77 21 2
63 Juice Wrld & YoungBoy Never Broke Again Bandit 10 28 2
64 StaySolidRocky Party Girl 91 36 2
65 Maddie & Tae Die from a Broken Heart     101
66 DJ Khaled feat. Drake Popstar     4
67 Mariah Carey All I Want for Christmas Is You     2
68 Lee Brice One of Them Girls     64
69 Sam Hunt Hard to Forget     162
70 Luke Bryan One Margarita     119
71 Lil Nas X Panini     2(39)
72 Young Thug feat. Gunna Hot 60   10(12)
73 Carly Pearce & Lee Brice I Hope You're Happy Now     163
74 Lil Baby Emotionally Scarred 24   45
75 YNW Melly feat. Juice Wrld Suicidal 45 44 6
76 Lil Baby The Bigger Picture 64   5
77 Jonas Brothers Only Human     12(外)
78 Pop Smoke feat. 50 Cent & Roddy Ricch The Woo     8
79 Lil Baby Sum 2 Prove 8   18
80 Ariana Grande & Justin Bieber Stuck with U     3
81 Pop Smoke feat. Lil Tjay Mood Swings 48   10
82 Halsey You Should Be Sad     12
83 Pop Smoke Dior 41   18
84 Benee feat. Gus Dapperton Supalonely     23
85 Luke Combs Even Though I'm Leaving     60
86 The Scotts, Travis Scott, & Kid Cudi The Scotts 93 29 1
87 Doja Cat & Tyga Juicy     66
88 Kane Brown feat. Swae Lee & Khalid Be Like That     25
89 Kane Brown Homesick    
90 Rod Wave feat. ATR Son Son Rags2Riches     15
91 Miranda Lambert Bluebird     200
92 Juice Wrld Wishing Well   38 1
93 Luke Combs feat. Eric Church Does to Me     99
94 Jhené Aiko Pussy Fairy (OTW) 35   110
95 Surf Mesa feat. Emilee ILY (I Love You Baby)     49
96 Morgan Wallen More Than My Hometown     57
97 Luke Combs Lovin' on You     113
98 Moneybagg Yo Said Sum     114
99 H.E.R. feat. YG Slide 95   159
100 NLE Choppa feat. Roddy Ricch Walk Em Down   46 11
アーティスト 曲名      

リンク:Top Songs of 2020: USA on Apple MusicTop Tracks of 2020 USA on Spotify

 

 

 

*1:RIAA等の媒体と比べて高い 詳細:この記事

*2:ビルボード年間チャート60年の記録 1955▶2014』という本には週ピークと年間の表が載っているので、それを活用しています

Billboard 動向・11月号 【Ariana Grandeの新作 / 新タイプの販売戦略?】

 

f:id:djk2:20201130201741p:plain

 こんばんは。11月のUSビルボードチャートを7のポイントで見ていきます!*1

 あと、そろそろ年間チャートの時期です。年間チャートが発表されたら、それについての記事も出す予定です。

 

 

 

1 Ariana Grandeの成績をどう捉える?

 今月最大のテーマはAriana Grandeの新譜。先行シングル”positions”はHot 100で首位を獲得することに成功。その次週にリリースされたアルバムも1位を獲得し、しっかりノルマは達成しました。しかし、これが期待に沿った結果だったか?は微妙なところです。

 まずはアルバム1位を獲得するも、売上は前作の半分以下だったという点です。内訳を見ると以下の通りです。純セールス、ストリーミングともに前作ほどではないです

 

・Yours Truly (2013) 総合:13.8万

・My Everything (2014) 総合:16.9万

・Dangerous Woman (2016) 総合:17.5万 純セールス:12.9万

・Sweetener (2018) 総合:23.1万 純セールス:12.7万

・thank u, next (2019) 総合:36.0万 純セールス:11.6万

・positions (2020) 総合:17.4万 純セールス:4.2万

 

※“Dangerous Woman”以外はアルバム1位を獲得

※現行アルバムチャートは純セールス+ストリーミング+シングルDLで構成されていますが、シングルDLの数字は低いため、純セールス以外の総合売上はほとんどストリーミングから来ていると考えて良いです。

※ただし2016年の段階では、まだDLが大きいので、シングルDLも一定の数字があったと推測されます。*2

 

 “positions”の収録曲は、前作と同様に全曲Hot 100入りしましたが、順位は落としています。前作は11曲がトップ40入りしましたが、今回は5曲。また、初週は1位だった”positions”も、アルバムの週にはラジオヒットの“Mood”に抜かされてHot 100の首位を明け渡しました。前作ではアルバム週に1位~3位を独占していたことを考えると、チャートの制圧度が大幅に下がっていることが分かります。

 

 たしかに前作よりは数字を落としていますが、それ以外の作品とはあまり変わらないことを考えると、むしろ前作が特別な「確変」だったというイメージでしょうか。また、純セールスの変化に関しては、ビルボードがマーチの集計方法を変更したこと関係しているのかもしれません。

 ほか高いストリーミングの数字をもとに、決して難易度が低くない全収録曲Hot 100入りを2作連続で成し遂げた、という快挙も見逃せません。リリース週にすぐさまアルバムに飛びつく、という習慣はどちらかというとラップのリスナーに強く見られる現象なので、ポップアクトのAriana Grandeが成し遂げることにも意義がある記録なような気がします。ストリーミング時代に、ポップアルバムで全曲Hot 100入りを果たしたのはAriana Grande2回、Taylor Swift2回のみです。(ただしデラックス版の曲を除くと、Justin BieberとEd Sheeranもこれに当てはまる)

 また、その後にも好材料が見られます。全曲がHot 100入りするようなアルバムでも、その後は勢いを保てず順位をガンガン落としてしまうのが一般的です。Ariana Grandeの今作も多くの非シングルはそのルートですが、唯一”pov”はTikTokの効果等でHot 100中位に残留。ストリーミングでも好調を保ち、ラジオシングルには認定されていないものの、シングルのような立ち位置を確保しています。

 また、ラジオシングルの”positons”や”34+35”も悪くはない成績をキープしています。

 

 

2 アーティスト力を示す?初動で見るトップ10

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 今月のシングルトップ10を見ていきます。まずはリリース直後からトップ10に登場した曲についてです。9月号の「ヒットの4メトリクス」で詳しく書きましたが、リリース直後は曲としての評価が確立されていないため、アーティストへの期待度が曲のヒット度によく反映されやすいです。*3

 そのため、仮に次週以降で順位を落としてしまったとしても、上位デビューを果たしていれば、「アーティストとしてのパワー」はあり、それ以降のヒットにも再現性があると評価できるのです。

 

・Luke Combs – Forever After All

 ここ数年、存在感を示すカントリーシンガーが初のトップ10入り。Ariana Grandeの”positions”と接戦を繰り広げ2位デビュー。つまり、この強力なライバルがいなければHot 100首位を獲得できたということです。Apple Musicやダウンロードでは”positions”の成績を上回り、Rolling Stoneチャートでは首位を獲得しています。ただラジオやYouTube等、RSチャートには無い要素では”positions”が有利だったため、Hot 100ではそっちが首位に立ちました。

 彼はこの週に前アルバムのデラックス版をリリースし、アルバムチャートで1位返り咲きも果たしています。この効果で計6曲がHot 100に入っています。

 Luke Combsの他のカントリーアーティストとの違いは、SpotifyAppleでも人気があること、そしてアーティスト単位で曲が聞かれていることだと思います。

 現在カントリー曲は、ストリーミングのサービスごとでの偏りが見られます。Amazon MusicやPandoraでは人気があるものの、SpotifyAppleでの存在感は非常に薄いです。しかし彼はカントリーとあまり縁のないフィールド=SpotifyAppleでも常に存在感を示しています。

 また、カントリー曲はラジオとストリーミングで似たような曲が同時にヒットする傾向にあります。他ジャンルはそれぞれ独自の選曲眼を持っており、ラジオとストリーミングの人気曲が大きく異なることも多いですが、カントリーはそうでもないです。これは「カントリーというジャンルを聞く」という習慣が強いことが理由だと推測しています。

 しかしLuke Combsはアーティストとしても人気があり、現在「カントリー・ヒット」のラインに乗らない過去曲も含めて、ストリーミングのランキングに名を連ねています。

 この2つの説明はMorgan Wallenにも当てはまります。この2人が他のカントリーシンガーとどこが違い、なぜここまで評価されるのか?という点は正直分かりづらいですが、もう少しメディア等に注目されても良い存在とは考えています。

 

・Bad Bunny & Jhay Cortez - Dakiti

 ラテン・アーバンのトップスターBad Bunny。数ある英語アルバムを押しのけて「今年Spotifyで最も再生されたアルバム」の立ち位置を守る彼の新曲。

 彼はCardi B、Drake等の既存の英語圏スターとのコラボでトップ10を記録してきましたが、今回は彼が「引っ張る」側。彼のスターパワーによって、Jhay Cortezを初のトップ10へ導きました。

 この曲はデビュー週の次も調子を維持。2週目に9位→8位と順位を上げたのですが、トップ10にデビューした曲が2週目に順位を上げるのは今年初のことでした。(昨年の“Circles”以来)

 

・Billie Eilish – Therefore I Am

 Billie Eilishの新曲“Therefore I Am”が2位にランクイン。チャートでは「先週からの急浮上」ということになっていますが、これはリリース時期が少しだけ先週に入って起きたもので、実質的なリリース週で2位に登場したと捉えて良いでしょう。

 彼女にとって4曲目のトップ10で、昨年に1位を獲得した”bad guy”に次ぐ順位。”bad guy”は初週7位スタートだったため、初動の勢いで見ると過去シングルで最大ということになります。

 “dont smile at me”期のバイブスを感じるこの曲はTikTokでも人気。Tokboardの直近のデータ*4では2位、9位、53位にこの曲がランクインしています。

 

 

3 曲の力を示す?ラジオヒットとトップ10 + 今後のトップ10

 

 次に曲としての評価が伺える、「上昇したトップ10」 = 主にラジオヒットについて見ていきます。

 

・24kGoldn feat. iann dior – Mood

 ラジオヒットがそのままHot 100の首位になるというパターン。ストリーミングで出た芽を見逃さず、素早くラジオに移行できたことがHot 100首位獲りの要因だと思います。イギリス、ドイツでは先に1位も獲得していたグローバルヒット曲。

 “positions”がリリースされた初週以外は今月中1位を確保。ラジオで好調を維持しているほか、途中にはJustin Bieber、J Balvin参加のリミックスもリリースし、首位の座を固めています。

 ラジオでの人気は際立ち、ポップ系ラジオでは「スピン数」が2017年の“Shape of You”以降で最大の数字を記録したようです。ただ、Hot 100でのポイントの基準となるのは、スピン数ではなくオーディエンスの数。さらにその計測法も変化しているため、Hot 100でのポイント数が2017年以降で最大かどうかは別の話です。

 

・The Weeknd – Blinding Lights

 未曾有のラジオのロングヒットは続き、Hot 100上位に残り続ける。今月はトップ10滞在の最長記録を更新(40週目)

 この曲はこのように特大のヒットを飛ばしながらも、グラミーのノミネートで無視されたことが話題に。Spotifyの最大手プレイリスト、Today’s Top Hitsはこの動向を受けて、この曲をリストに再登場させました。(およそ2ヶ月ぶり)

 また、ChartDataの以下のツイートは今年このアカウントで2番目のいいね数を集めました。

 

リプ欄に登場するTinashe

 

※今年いいねが1番多いのは、BTSがはじめてグラミーにノミネートされたことを伝えるツイート

 

 

・Gabby Barrett – I Hope

 粘りのラジオヒットで、46週目にして3位まで浮上。これ以上順位を伸ばすのはさすがに厳しいかもしれませんが、上位にはこれからも残りそう。

 上記の“Blinding Lights”と共に、Hot 100長期滞在記録の更新も期待できそうな1曲。(26位/53週ルールが適用されて以降の最長記録は”Circles”の60週)

 

・Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby – For the Night

 この曲がリリースされた7月以来のトップ10入りを達成。リリース以降、ストリーミングで高い人気を保ち続け、最近はそこにラジオのオンエア数が加わったことによりトップ10返り咲きを果たしました。このようなタイプの曲は、ラジオでオンエアが始まる頃にはストリーミングが落ちており、当初ほどHot 100での順位が期待できない事も多いですが、この曲はラジオのオンエアまでストリーミング数を維持していた点がすごいです。

 

・Justin Bieber feat. Chance the Rapper – Holy

 好調を維持。トップ10に定着し始め、“Yummy”ではなく”Intentions”コースに。“Yummy”は尻すぼみでしたが、彼はその後のシングルで調子を取り戻している印象。

 

・Ava Max – Kings & Queens (※来月以降のトップ10候補)

 直近の週で13位。ラジオでの躍進が続き、ラジオ3位・ポップ系2位まで浮上。“Sweet but Psycho”のピークはラジオ3位、ポップ系3位だったため、それと同等以上のラジオヒットになっています。

 あともう少しラジオを伸ばせば、トップ10まで手が届きそうですが、ピークがクリスマスと重なりそうな点が懸念材料。昨年はクリスマス曲がトップ10に複数入り、現行ヒットをトップ10から弾き出しました。(昨年はピークがクリスマス中だったDaBabyの“BOP”がこの影響でトップ10入りを逃す)

 

 

4 そこそこ盛り上がる?アルバムチャート

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 10万超えの作品が5つ、それなりに盛り上がりました。4週目には同時に3つのアルバムが10万を超えました。

 

 オーストラリアの大御所ロックバンド、AC/DCがこの週の1位。総合売上11.7万のうち、11.1万が純セールス。6年ぶりのリリースでしたが、安定したファンベースを保っていることが伺えます。ただ一方ストリーミングの数字は低め。Spotifyでは6億再生超えの曲が3つ("Back In Black", "Highway to Hell", "Thunderstruck")ある等、定評を確立する過去曲は多いだけに、ここまでストリーミングで注目度が低いのは少々意外でした。

 次点はFutureとLil Uzi Vertのコラボ作。ストリーミングで高い人気を得て10曲がHot 100入り。しかし2週目からは収録曲が軒並みストリーミングで順位を落とし始め、シングルヒット等の望みは薄いです。

 3位はChris Stapleton。Luke CombsやMorgan Wallen程ではないものの、彼も「アーティスト」としての存在感を示すカントリーシンガーの一人です。批評方面からの評価も高めで、アルバムからは他のカントリーとはひと味違った雰囲気が感じ取られます。

 

 その他の注目点。オーストラリア出身のラッパー、The Kid LAROIは7月のアルバムのデラックス版が好評。元のリリース時よりも高いアルバム3位にランクインしました。Hot 100にも4曲がエントリー。USで活躍するラッパーは専ら北米出身ですが、オーストラリア出身の彼がどこまでUSに食い込むかは見もの。

 もう一つの注目はSam Smith。過去2作は2位・1位と推移してきましたが、今回は5位止まり。ブレイク以降高い注目度を集めてきましたが、今回のアルバムの成績を見る限り、以前よりもアーティストとしての影が少し薄くなってきたことは否めません。

 

 

5 クリスマス?

 最終週にはクリスマス曲が登場。昨年の同時期と比べると以下の通り。

 

2019年

11/23:1曲(39位) 11/30:1曲(31位)

 

2020年

11/21:0曲 11/28:2曲(29位、43位)

 

  “All I Want~”の登場は昨年よりも1週遅かったものの、直近の週では昨年を上回る成績。この調子だと例年通りチャートを大きくかき回しそうですが、現行ヒットのチャート入りを妨げてしまうという点は気になるところではあります。来月以降は、否が応でも注目のテーマになります。

 

6 投げ銭式によるインディー系アクトのHot 100入り

 興味深かったのはPhoebe BridgersとMaggie Rogersによる、Goo Goo Dolls - ”Iris”のカバー。この曲はBandcampで1日限定販売を投げ銭方式で行い、そのセールスによりHot 100入りを果たしました。両者とも初のHot 100入り。

 この曲は3.8万のセールスを記録し、この週のDL1位に。3.8万は今年のDL1位の中央値よりも高い数字です。

 

 現在セールスの平均値は低いものの、Hot 100が依然としてセールスのポイントを重くしているため、局地的な注目でもセールスを集められればHot 100で好成績が期待できます。(参照:先月の【その販売戦略の今後?】)

 これを意図的に活用したのはHot 100で首位を狙う販売戦略の数々で、今年1位が頻繁に入れ替わる要因にもなりました。

 今回のヒットはこれらと違い、必ずしもHot 100を意識したものではないと思われますが、ファンへの求心力が高いインディー系アクトのこのような販売法による初のHot 100入りは再現性のある手法だと感じました。(ビルボードがセールスのレートをいじらない限り)

 まあ、このようなアクトが「Hot 100入り」にブランド性を感じるかは微妙ですがね。

 

 

7 その他の短評

 

・DaBaby – PRACTICE

・CJ – Whoopty

・DJ Chose & BeatKing – THICK

 今月のTikTok枠(と思しき)Hot 100エントリーたち。

 

・Joel Corry feat. MNEK – Head & Heart

 ヨーロッパ系ダンスヒットがポップ系ラジオのオンエアでHot 100入りする、というよく見られるパターン。ラジオの選曲者はヨーロッパのヒットをよく観察しているようで、時間差はありますが、次第にラジオのオンエアを得る印象。

 

Harry Styles – Golden

 シングルカットが上手く決まりづらい現代に、華麗なシングルカットを“Watermelon Sugar”で決めたHarry Styles。今回のシングルカットも、カット直後にHot 100再登場を成し遂げました。ただ過去シングルほどの勢いはまだありません。

 

・BLACKPINK & Selena Gomez – Ice Cream

 8週でHot 100から去る。BLACKPINKにとっては最長の滞在となりましたが、ロングヒットとは言い難い成績です。ラジオのオンエアがすぐに終わってしまったことが痛かったでしょうか。

 彼女らでもう一つ気になるのは“Bet You Wanna”の運用法。10/28にシングル化が発表されるものの、11/10にはレーベルが「それを保留する」とし、以降オンエアされていません。

 

 なぜ保留したのか?も気になる所ですが、個人的に興味深かったのは、レーベル側がこんなにラジオのオンエアをコントロールできるのか、という点です。

 シングルも非シングルも区別なくアクセスできる現代では特に、シングルを指定しないとラジオでかかる曲がバラバラになる可能性があるので、シングルの「指定」 = “Officially Impacted”まではまだ分かるのですが、「保留」 = “On Hold”まで出来てしまうと、ラジオはレーベル側のコントロールによって動いているのかという印象です。

 ラジオの賄賂を批判するような記事が上がることもありますが、このレーベルによる”Officially Impacted”や”On Hold”も、「ラジオの選曲をレーベルがコントロールしすぎている」という点では似通ったものを感じます。個人的に、もう少し「独立した」選曲をするラジオが増えたら面白いとは考えています。

 

・Taylor Swift – cardigan

 1位登場から、14週の滞在でチャートから外れる。アルバムでは大きなインパクトを残しましたが、シングルではうまく行かず。ただ現在アーティストへの注目が重要な指標となり、そしてアルバムとシングルの境目が曖昧になってきた現在において、このようにシングルヒットよりもアルバムという単位に重点を置く戦略は、個人的に支持しています。

 

Fleetwood Mac – Dreams

 1976年の曲の異例の再登場の旅は4週で終える。

Bohemian Rhapsody(2018):33位→40→50位

Dreams(2020):21位→12位→21位→33位

 とシングル単位で見ると、Queen以上のインパクトを残しました。(アルバムチャートではQueenの方が高かったですが)

 

・Dua Lipa – Don’t Start Now

・Dua Lipa – Break My Heart

 シングルヒットを安定して連発。US外のシンガーとしてはかなりの成績だった、前作のシングル郡をさらに上回る成績を残してチャートを外れました。

New Rules:(🗻6位 /⏰48週)

IDGAF:(🗻49位 /⏰23週)

Don’t Start Now:(🗻13位 /⏰32週)

Break My Heart:(🗻2位 /⏰52週)

 

 ヒット面だけではなく、批評方面からの評価もすこぶる高いため、この2曲が収録される“Future Nostalgia”は既に2020年代を代表する名盤の有力候補といえる存在だと思います。

 

・Lil Nas X – HOLIDAY

 初週トップ40と良いスタートを切る。初日は鈍い反応だったものの、週の後半にかけて注目度が上がるという珍しいチャートアクションを見せました。

 様々な戦略を駆使して曲をヒットさせてきた実績を持つ彼だけに、今後どのように調子を上げてくるかは見ものです。

 

・Post Malone – Circles

 ラジオの粘り等により、異例のロングヒットに。60週の滞在は26位/53週ルール以降では最長の滞在です。(次点は"Shape of You"の59週。ただし以前からこのルールがあったと仮定すると、2013年-2014年の"Radioactive"は69週残っていたことになる)

 外れる直近の週が18位だったため、いきなり外れたのは少し意外でした。

 

 

今月のデータ

 

主に外れた曲

 

11/7

80 Marshmello & Demi Lovato – OK Not To Be OK (🗻36位 /⏰6週)

82 21 Savage & Metro Boomin – Glock In My Lap (🗻19位 /⏰3週)

84 BLACKPINK & Selena Gomez – Ice Cream (🗻13位 /⏰8週)

86 Juice WRLD & The Weeknd – Smile (🗻8位 /⏰10週)

87 Topic & A7S – Breaking Me (🗻53位 /⏰13週)

89 Megan Thee Stallion – Girls in the Hood (🗻28位 /⏰17週)

90 Lil Durk feat. Lil Baby & Polo G – 3 Headed Goat (🗻43位 /⏰16週)

91 Tim McGraw – I Called Mama (🗻53位 /⏰12週)

92 Machine Gun Kelly – Bloody Valentine (🗻50位 /⏰14週)

95 Nio Garcia, Anuel AA, Myke Towers, Brray & Juanka – La Jeepeta (🗻93位 /⏰10週)

96 Ozuna, Karol G & Myke Towers - Caramelo (🗻76位 /⏰10週)

99 Gunna feat. Young Thug – DOLLAZ ON MY HEAD (🗻38位 /⏰19週)

 

11/14

18 Post Malone - Circles (🗻1位 /⏰61)

33 Fleetwood Mac - Dreams (🗻1 /⏰23週)

38 Dua Lipa – Don’t Start Now (🗻2位 /⏰52)

82 Lil Baby – The Bigger Picture (🗻3位 /⏰20週)

88 Sada Baby feat. Nicki Minaj – Whole Lotta Choppas (🗻35位 /⏰3週)

91 DJ Khaled feat. Drake - GREECE (🗻8位 /⏰15週)

94 J Balvin, Dua Lipa, Bad Bunny & Tainy – Un Dia (🗻63位 /⏰14週)

95 Chloe X Halle – Do It (🗻63位 /⏰11週)

96 Taylor Swift - cardigan (🗻1 /⏰14週)

 

11/21

48 Michael Jackson - Thriller (🗻4位 /⏰20週) 

50 Dua Lipa – Break My Heart (🗻13位 /⏰32週)

 

11/28

35 Mike WiLL Made-It, Nicki Minaj & YoungBoy Never Broke Again – What That Speed Bout?  (🗻35位 /⏰1週)

42 Rod Wave feat. ATR Son Son – Rags2Riches (🗻12位 /⏰20週)

46 SAINt JHN - Roses (🗻4位 /⏰34週)

51 Luke Combs – Lovin’ On You (🗻23位 /⏰20週)

80 Ariana Grande feat. Doja Cat - motive (🗻32位 /⏰2週)

95 Ariana Grande feat. The Weeknd – off the table (🗻35位 /⏰2週)

 

 

アルバムチャートのキリ番

 

11/7

1周年:Doja Cat – Hot Pink (79位)

1周年:Rod Wave – Ghetto Gospel (86位)

350週目:Eagles – Their Greatest Hits 1971-1975 (169位)

400週目:Drake – Take Care (75位)

500週目:Eminem – Curtain Call: The Hits (60位)

650週目:Bob Marley And The Wailers – Legend: the Best Of... (70位)

 

11/14

1周年:Luke Combs – What You See Is What You Get (4位)

150週目:Billie Eilish – dont smile at me (79位)

 

11/21

1周年:Soundtrack – Frozen II (73位)

 

11/28

1周年:Trippie Redd – A Love Letter To You 4 (171位)

100週目:Bad Bunny – X 100PRE (148位)

 

 

・上位デビュー曲

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◇は再登場

 

・大幅ジャンプアップ

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・各指標の1位

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・Rolling Stone Chartsのトップ10

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・各週の動向メモ

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参照リンク

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

・TokBoard:https://tokboard.com/

Spotify Charts:Spotify Charts

 

 

過去の月の記事

 

10月:Billboard 動向・10月号 【販売戦略の行く末 + オルタナティブ系 など】 - チャート・マニア・ラボ

 

9月:Billboard 動向・9月号 【BTS / ロングヒット記録 / ヒットの4メトリクスなど】 - チャート・マニア・ラボ

 

8月:Billboard 動向・8月号 【圧巻の"WAP"、アルバムはTaylor Swift】 - チャート・マニア・ラボ

 

7月:Billboard 動向・7月号 【Pop SmokeとJuice WRLDの活躍 販売戦略のその後……】 - チャート・マニア・ラボ

 

6月:Billboard動向・6月号 【コラボ曲の首位が相次ぐ / アルバムチャートはリリース減少?】 - チャート・マニア・ラボ

 

5月:5月まとめ 【首位が全て異なる月 / 販売戦略が躍動】 - チャート・マニア・ラボ

 

4月:Hot 100 / Billboard 200まとめ 4月号 【The Weekndがアルバム4タテなど無双】 - チャート・マニア・ラボ

 

3月:Hot 100・Billboard 200まとめ 3月号 【Lil Uzi Vert・Bad Buny・Lil Baby・BTSなど…アルバム大盛況】 - チャート・マニア・ラボ

 

2月:Hot 100・Billboard 200まとめ 2月号 【アルバム激戦区・不動のシングル上位など】 - チャート・マニア・ラボ

 

1月:Hot 100 2020年1月まとめ 【激動の1ヶ月、Roddy Ricch大活躍など】 - チャート・マニア・ラボ

 

 

*1:月によって見どころは多いことも、少ないこともあるので、ポイントの数は流動的にします

*2:2016年段階では、まだセールス以外の割合があまり大きくなかったため、ビルボードの記事には総合売上と純セールスの数字しか掲載されていませんでした。しかし、この時にAriana Grandeから1位の座を守ったDrakeがストリーミングの成績を中心にアルバムチャートを複数週にわたり制圧したため、ストリーミングがアルバムチャートを動かすとの認識が広まり、この少し後くらいからビルボードの記事内でもストリーミングの数字が記載されるようになりました

*3:アーティストへの期待度は高いものの、新曲がシングルとして聞くのに向いていないと、その週のうちに急激に数字を落とすケースもあります。J. Coleなどに見られます

*4:うまく魚拓取れなかったので、次の週になるとリンク先の順位が変わってしまいます

Billboard 動向・10月号 【販売戦略の行く末 + オルタナティブ系 など】

 

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 今月もありがとうございます! ↑の画像にバリエーションがあるように、今月は比較的動いた月かもしれません。

 

 

 

1 勢いが止まらない販売戦略

 

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 今月も販売戦略がHot 100首位獲得に大きく関与しました。10月の1週目は”Dynamite”、2週目は”Franchise”、3週目は”Savage Love”と販売戦略を使った曲が1位に。残り2週は一般的なヒット“Mood”でした。

 

 このうち、”Franchise”は事前の予想では1位ではなかったこともあり、意外がられました。(Complexはこの1位獲得を分析する記事で、ファンの間でも反応が微妙だった曲としています) ただ実は上記の曲のうち、唯一Rolling Stone Charts*1で1位を取っており、ストリーミングは優秀といえば優秀です。(ただ過去曲と比べると微妙) 他の曲はラジオでのヒット度が大きく、その恩恵を受けている節があるため、RS Chartsで1位でなくともHot 100では首位を獲得できます。

 ただ“Franchise”はストリーミングでも勢いを失い、2週目に25位まで落下。週の途中のリミックスが無ければもっと落ちていたかも?この落下は”Savage Mode II”の曲が上位に大量登場した煽りを受けたという部分もあります。

 

(1位からの落下幅が大きい曲)

1-34:6ix9ine & Nicki Minaj – TROLLZ (2020)

1-25:Travis Scott feat. Young Thug & M.I.A. – Franchise (2020)

1-17:The Weeknd – Heartless (2019)

1-15:Billy Preston – Nothing from Nothing (1974)

1-15:Dionne Warwicke & The Spinners – Then Came You (1974)

1-13:Ariana Grande & Justin Bieber – Stuck With U (2020)

※1-圏外:Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You (2020)

 

 とはいえこの曲、実は以前の曲よりもラジオが好調で、意外とうまくいく可能性も?2週目に25位に落下した次の週、ポイントはマイナスながらも順位は23位に上がっています。ストリーミングでは既に厳しいですが、ラジオヒットという新たな可能性を切り開くかもしれません。(Travis Scottはストリーミングの反応と比較するとラジオのオンエアに恵まれない傾向にある)

 

~補足~

M.I.A.の記録

 イギリス籍のラッパー、M.I.A.は初のHot 100首位、かつ3曲目のトップ10入りを達成。その3曲のヒットが2008年の”Paper Planes”、2012年のMadonnaの客演を務めた”Give Me All Your Luvin’”と2020年の“Franchise”とそれぞれDecadeが異なっており、ヒットの数こそ少ないものの、3Decade連続でのトップ10入りという記録を達成。総勢11人/組目の記録で、北米以外のアーティストでは初。(この2000~2020の期間では、という意味)

 彼女はHot 100エントリー数も4つのみと少なめ。(もう一つはスラムドッグ・ミリオネアのサントラからの”O…Saya” = 93位) 他に“Paper Planes”を大胆にサンプリングしたT.I.らの”Swagger Like Us”=Hot 100で5位というヒットもありますが、この曲では彼女はクレジットされていません

 

・“Kawasaki”

 この曲は“Kawasaki”というワードが含まれていますが、Geniusで調べる限りこのワードが含まれている曲では、初の首位&初のトップ10のようです。次点は11位だった”Taki Taki“(ただこの曲ではあまり好ましい使われ方をされていない)

 

・”Savage Love”

 もう一つの販売戦略首位曲、“Savage Love”について。BTSは”Dynamite“と連続で首位を獲得し、史上14人/組目の自身の曲同士でHot 100首位が交代したアーティストに。 また、この2曲で1位&2位同時独占を達成。(史上21人/組目) 

 だしラジオ等でオンエアされているバージョンは基本的にオリジナル版なので、次の週以降はクレジットから外されてしまいました。(ただし1位の記録は残る)

 Jason Deruloは”Watcha Say”以来、11年ぶり2回目の首位。M.I.A.の項目で述べた3Decade連続のトップ10を彼も達成しています。

 そしてこの曲を元々作り上げたJawsh 685は初のHot 100首位。もともと彼が作っていたインスト音源がTikTokで流行→それに目を付けたJason Deruloが歌を乗せたら大ヒット、という流れなのである意味2回のリミックスで躍進を果たしているような曲です。

 彼は2013年のLorde以来、7年ぶりのNZ出身のHot 100首位獲得に。またシンガー、ラッパー、グループではない、いわゆる「プロデューサー」が首位を獲得するのは2017年のDJ Khaledの”I’m the One”以来です。

 

 

2 その販売戦略の今後?

 このように販売戦略に基づく1位獲得が相次ぐ中、ビルボードはこの状況をまとめたレポートをリリース。

Why Have There Been So Many No. 1 Debuts This Year on the Hot 100? | Billboard

 

 この記事では1位デビューの変遷を追いつつ、昨年までは珍しい現象だったと説明。そして今年は昨年と比較して、販売戦略が増加したことにより1位デビューが頻発したと説明しています。そして記事のラストには気になるコメントが。

Is this just the new normal for the Hot 100's top spot? Perhaps, though if history has taught us anything in this respect, it's to not expect this or indeed any chart trend to just continue indefinitely; sooner or later, some change will come that alters a key variable in the race for No. 1, and mucks up the whole equation.

 

 これは相次ぐ販売戦略による1位を制限するルール変更を示唆していると考えて良いでしょう。

 ビルボードはそれまで主に用いられていた、物理媒体+DLのコンビ販売を制限する(=実物が発送されるまで集計されない)というルール変更を今年8月に行いましたが、全く歯止めが効かず、この現象は引き続き見られました。新ルールはこの二の舞になることを防げるでしょうか。

 考えられそうなのは、iTunes等を通さず、ウェブサイトなどで直接ファンに購入を促す、D2C(Direct to Customer)を集計しないことでしょうか。現在はこれが強力なセールスの源とされています。Rolling Stone Chartsでは既にD2Cは対象外で、販売戦略を使った曲が1位になる頻度がかなり少ないです。

 また、セールスのポイント比率を落とすことも有力な策でしょう。個人的にはこちらの方が根本的な解決につながると考えています。

 実は、Hot 100は他の媒体と比べるとセールスがやや高めに設定されていると考えられています。この比率をビルボードは公表していないので、推測にはなりますが Pulse Music Boardにある情報を参考にすると……

 

Hot 100:1セールス = 250再生(有料会員) = 375再生(無料会員)

RS Charts:1セールス = 120再生(有料会員) = 360再生(無料会員)

RIAA*2:1セールス = 150再生

 

 と、他の媒体と比べてセールスを2倍くらい高く評価していることが伺えます。そう考えると、セールスの比率を直す意義はある気がするのですが、果たして……?

 

 ちなみにビルボードが新設したGlobal 200では1セールス = 200再生(有料会員) = 900再生(無料会員)で構成されています。こちらもセールスに比重が寄っています。この比率の恩恵を受けてなのか、LiSAの「炎」が10/31付のランキングで、チャート誕生以降(先月~)最大のDL(9.7万)を記録して8位に入りました。セールスの比重の高さを活かし、上位進出を果たす日本の曲が今後も出るかもしれません。

 

 

3 ネクストPost Malone?24kGoldnとiann diorの可能性?

 

 ここでは販売戦略「ではない」形で1位を獲得した、24kGoldnとiann diorの”Mood”について触れていきます。TikTokでも人気があったとされる*3この曲は、イギリス、ドイツ、カナダなどで先に首位を獲得しており、世界的に大ヒットとなっています。

 彼らは2人ともラッパーと表記されることが多いものの、この曲はジャンルレスなポップのような雰囲気を持ちます。ポップ、R&Bオルタナティブの成分も感じます。

 この曲はラジオでポップ ≧ リズミック > オルタナティブ > アダルトポップの順で人気。また、RMS*4ではかからず、オルタナティブという珍しい系統でかかっているという点で、この曲はPost Maloneの“Circles”に似ています。ジャンルの枠を取っ払ったスタイルで世界的な存在となった彼のように、24kGoldnとiann diorの2人も今後規模の大きい存在になっていくでしょうか。ちなみにそれぞれ19歳、21歳と若いです。

 

◇Hot 100首位曲でオルタナティブ系ラジオに入った曲(2010年~)

・24kGoldn feat. iann dior – Mood (11位) / 2020年

・Post Malone – Circles (23位) / 2019年

・Billie Eilish – bad guy (1位) / 2019年

・Magic! – Rude (19位) / 2014年

・Lorde – Royals (1位) / 2013年

・Macklemore & Ryan Lewis feat. Wanz – Thrift Shop (14位) / 2013年

・Gotye feat. Kimbra – Somebody That I Used to Know (1位) / 2012年

・fun. feat. Janelle Monáe – We Are Young (1位) / 2012年

・Adele – Set Fire to the Rain (31位) / 2012年

・Adele – Rolling in the Deep (21位) / 2011年

 

 Katy Perry(”I Kissed A Girl”)やMaroon 5(Harder To Breathe”)など、ブレイクのきっかけとなった曲はオルタナティブ系ラジオでかかっていたものの、その後は縁が無くなるパターンもあります。Post Maloneはある程度キャリアを築いてからオルタナティブ系ラジオでかかったので、その逆。

 

 

4 その他のトップ 10 + 今後のトップ10候補

 

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 その他のトップ10、また今後のトップ10候補を見ていきます。

 

・Justin Bieber feat. Chance the Rapper – Holy

 初週に3位デビュー。Justin Bieberにとって20曲目のトップ10、Chance the Rapperにとっては3曲目でその全てがJustin Bieberとのコラボ。

 2週目にはトップ10から外れ、尻すぼみになっていく近年大物アクトにありがちな動きを見せるかな?と思っていましたが、10月の最終週にトップ10復帰。その週リリースされた”Lonely”と合わせてTVで披露された効果。ラジオで好調、ストリーミングでも悪くはない成績なので、“Yummy”よりは上手く行きそうな気配。

 

・Gabby Barett feat. Charlie Puth - I Hope

 カントリー系ラジオでのオンエアから始まった長旅を続ける曲。現在Hot 100滞在43週目。10月に入ってからはラジオ1位も獲得することに成功。現在最も人気があるラジオ系統はアダルトポップ。このラジオでの粘りは果たしていつまで続くのか……

 今月に入ってから、リミックス版がメインと見なされ、Charlie Puthのクレジットが追加されました。

 

・The Weeknd - Blinding Lights

 先月“Before You Go”に奪われたラジオ1位の座を取り返し、今月3週間ラジオ1位に。歴代最長のラジオ1位滞在を26週まで伸ばしました。(次点は18週)

 またトップ5滞在記録も歴代最長の30週まで伸ばしています。ビルボードがルールにテコ入れをしない限り、他の各種ロングヒットも破っていきそうです。トップ10滞在最長記録まではあと3週。

39週:Post Malone – Circles

36週:The Weeknd – Blinding Lights

33週:Shape of You / Girls Like You / Sunflower

 

・Internet Money & Gunna feat. Don Toliver & NAV – Lemonade *5

 TikTokでの人気も追い風となり、ヒット。最近ではむしろ珍しく感じる「上昇しての」トップ10入り。Gunna以外は初のトップ10。

 Roddy Ricchリミックスがリリースされた10/17は”Savage Mode II”の曲に阻まれトップ10入りならず。翌週はポイントを少し落としたものの、その”Savage Mode II”の2曲がトップ10圏外に落ちたことにより、代わりにトップ10へ。不思議な形でのトップ10入り。

 

◇トップ10候補

 考えられるのはPop Smokeの2曲、”For the Night”と”What You Know Bout Love”です。両方ともストリーミングの好調に加え、ラジオでもオンエアが開始。前者はラップ系、後者はポップ系のラジオが中心。

 ほかラジオで好調の”Kings & Queens”や”ily”にも多少の芽はありそうですが、ラジオ以外のポイントが足りなさそうなのがネック。

 ほか来月に入ると、クリスマス曲が上位に増えてトップ10の難易度が上がる可能性もあります。(ただの個人的な邪推ですが、一応過去曲を嫌う傾向のあるビルボードが何らかの策を用意する可能性も少しは考えられるかもしれません?)

 

 

5 今月のアルバムチャート

 

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 今月のアルバムチャートは盛り上がっていたと思います。特に2週目と3週目は注目作品が多かったです。

 今月一番の成績を残したのは21 SavageとMetro Boominによる”Savage Mode II”。前作が長く愛されていた作品だったこともあり、今作もストリーミングで絶大な支持を受け、Hot 100には全曲が登場しました。うち”Runnin”と”Mr. Right Now”の2曲はトップ10。両者とも2度目のアルバム1位です。この週競り合ったBLACKPINKに関しては、後の項目で述べます。

 

 この週と同様に盛り上がったのは2週目。1位を獲得したのはMachine Gun Kelly。初のアルバム1位。彼はラッパーとして分類されるも、オンエアされるラジオはオルタナティブ系。“Bloody Valentine”はこの系統の2位まで到達。このアルバムの内容も、エモラップという領域を飛び越え、もはやポップパンクそのものといった感じです。ちなみに3章で述べたiann diorがこの作品に参加しています。

 2位はSuperM。セールスとストリーミングの両方を稼いだ1位と3位(Joji)とは違い、ストリーミングからの売上は0.3万枚のみ。強固なファンベースの元、セールスのパワーを見せつけ10万超えを果たしましたが、前作のようにアルバム1位獲得ならず。

 

 3位はJoji。個人的にはアルバム1位をかなり期待していたのですが、惜しくもならず。ただ前作の売上を大幅に更新することに成功しています。(5.7万→9.2万)

 グッズ等でセールスを稼ぎつつ、ストリーミングでも存在感を示したという点はMachine Gun Kellyと似ていますが、違った点はApple Musicでの人気。Machine Gun KellyはSpotifyAppleの両方で好成績(初日にほとんどトップ100)でしたが、JojiはSpotifyでのみ好成績。(Spotifyでは全曲トップ100、Appleではトップ100に0曲)

 JojiのジャンルはR&Bと表記されることが多いですが、一般的にR&Bが人気なApple Musicで人気が無いということは、おそらくR&Bファンでは無い層に支持されていると推測されます。それはラジオのオンエア系統に表れており、彼のこのアルバムからのシングルはポップ(”Your Man”)やオルタナティブ(”Daylight”)でオンエアされているようです。

 またJojiはシングルでも惜しい成績を残しました。この週、Hot 100には1つも入りませんでしたが、101~125位相当のBubbling Underには5曲がランクイン。彼はこれまでHot 100入りした曲よりもBubbling Under止まりだった曲の方が多いです。(3曲と5曲)

 

 

6 Fleetwood現象

 

 今月最も目を引いたかもしれないテーマがFleetwood Macの“Dreams”の人気。TikTok経由で人気に火がつくと、ストリーミングやiTunesで大きく浮上。43年ぶりのHot 100再登場を果たしました。順位は21位→12位→21位と推移。トップ10には手が届きませんでしたが、見事な大健闘でした。アルバムチャートでは7位まで到達。またストリーミングでは、この曲以外のFleetwood Macの曲がランクインを果たしていました。

 ちなみに2018年のQueenの”Bohemian Rhapsody”は33位→40位→50位と推移していたので、それよりも好成績を残したということになります。アルバムチャートではQueenの方が好成績だったので、どっちの注目度が大きいかはまた別の話ですが。

 

 この曲が普通のTikTokヒットと違う点は特定のビデオがヒットの要因として挙げられている点だと思います。後にTikTokでも人気を得ましたが、ヒットの後追いのような形なので、ほぼこのビデオが単独で再浮上のきっかけになったという印象が強いです。つまりそのビデオがミュージックビデオのような効果が果たし、ヒットにつながったという感覚かなと思っています。

 

 彼らはもともとブレイク前から、アルバムチャートトップ50の定番で(この曲も収録される“Rumors”が)、かつ“Dreams”は何回かUSのSpotify圏内に入るなど、既に「アンセム」としては評価が確立されていました。

 このように元からFleetwood Macをヒットさせる下地が整っていたことが、小さなきっかけで大きなヒットになった要因かと思います。

 

 『ソーシャルメディアの生態系』という本には、人工頭脳学者のフランシス・ハイリゲンが語るミームがヒットする要因に関する記述があります。そこでは「ミームの重要性「独自性」「真新しさ」以外に、宿主の中にすでに存在する認識の枠組みにミームが適合するかという点だ」と説明されているのですが、この「枠組み」に当てはまるのは43年経ってなお高い、このアルバムへの評価なのかなと感じました。

(逆にこのような音楽としての枠組みに当てはまらない、「TikTokダンス用BGM」のような曲はTikTokで大ヒットしようとも、ストリーミングでのヒットにはならないのかもしれません)

 

 

7 Alt TikTok

 

 今月のTikTokヒットで印象的だったのは“Sofia”。昨年のアルバムが高く評価されるなど、基本的に「オルタナティブな批評」というフィールドで活躍していたClairoがTikTokの力を借りてHot 100初登場を果たしました。ちなみにClairoが昨年主に評価されていた楽曲は”Bags”でした。*6

  この曲は主にオルタナティブ系ラジオでオンエアされ始めたのですが、最近のオルタナティブ系ラジオのオンエア曲を見るとTikTokに関係するものがいくつか見られます。

 

(10/31 Alternative Airplay)

4 Wallows feat. Clairo – Are You Bored Yet?

8 Peach Tree Rascals – Mariposa

10 Royal & The Serpent – Overwhelmed

11 24kGoldn feat. iann dior – Mood

29 jxdn – So What! (関連曲というか、彼は有名なTikToker)

32 Ritt Momney – Put Your Records On

※“Sofia”はこの週の時点でまだ40位圏外、次週以降ランクイン見込み

 

 他にもTikTokがきっかけで注目された経歴を持つBeabadoobeeやGus Dappertonもランクインしています。またAshnikkoの“Daisy”がオルタナティブ系ラジオでオンエアが始まったという情報もあります。

 

 従来はリズミカルで踊りやすい曲がいわゆるTikTok曲という印象が強かったですが、”death bed”や”Supalonely”等のヒットを潮目に、今や「隠れたオルタナティブ曲」を見つけるメディアとしても機能し始めています。

 このTikTok発のオルタナティブ系ヒットの増加には、Alt TikTokという文化が関係しているのかもしれません。豪邸などを背景に、リズミカルな曲でダンスチャレンジをする一般的なTikToker = Straight TikTokとは対照的に、挑戦的な選曲・動画を配信する人物や文化圏を指すワードです。別名Elite TikTok。Straightの対義語なのでGay TikTokと呼ばれることもあるらしいです。

 このワードについてPitchforkやRolling Stoneが記事を書いたこともあります。(どちらも趣旨としては、Alt TikTokという文化を紹介しつつ、そのAlt TikTok発の曲をStraight TikTokが使ったら反発を買ったというもの)

Why Cringey Remixer Tiagz Is the Most Hated Producer on TikTok | Pitchfork

Alt TikTok Is Music's Latest Scene, and Straight TikTok Has Noticed - Rolling Stone

 

 TikTok発のヒットは、TikTok内の再生数と必ずしも一致しないことも多いですが、このTikTokオルタナティブ系ヒットの場合は、TikTok内再生数規模が小さいこともよくあります。(”Sofia"はそう、Tokboardのランキングであまり上位には進出していないながらもHot 100入りを成し遂げた) 同じTikTok内でも、再生数に繋がりやすい層と、繋がりにくい層が存在するのかもしれません。

 

◇その他のTikTokヒット

 

・Sada Baby feat. Nicki Minaj - Whole Lotta Choppas

 TikTokで注目を集め、Hot 100入り。1週間の滞在で終わるも、TikTokでの人気が落ち着いた後にNicki Minajリミックスをリリース。これで大きく注目を集め、最初のエントリーよりもはるかに高い35位でHot 100再登場を果たしました。

 ちなみにこの曲でNicki MinajはHot 100総エントリー数を113まで伸ばし、Taylor Swiftに追いつきHot 100エントリー数が女性最多タイになりました。

 

・YFN Lucci – Wet (She Got That…)

 TikTokのヒットから遅れること約3ヶ月、ラジオヒットによりHot 100入り

 

・Larray - Canceled

 TikTokerが他の同業者をディスる曲が注目を集め、YouTubeで週間1位を獲得。この効果でHot 100入りを果たす。現在ヒットを飛ばすInternet Moneyがプロデュースも、他ストリーミングでは存在感希薄

 ネット発セレブリティーのHot 100入りと言えば、2017年のJake Paul周りの楽曲を連想しました。

 

・Metro Boomin feat. Gunna – Space Cadet

 TikTokのヒットのタイミングが、そのアーティストの新作リリース時期と重なり、その相乗効果なのかストリーミングでもランキングに入るという動きを見せました。この動きは先月のTaylor Swift – Love Storyと完全に重なります。

 

 

8 BLACKPINK

 今月の注目アクト、BLACKPINKについて書いていきます。英語圏アーティストとのコラボ+初アルバムで層の拡大に挑んだ彼女ら。競合が厳しく、アルバムチャート2位でしたが、11万とアルバム1位クラスの数字を獲得しました。

 前の週に2位だったK-PopグループのSuperMはストリーミングはが0.3万枚に対して、BLACKPINKは2.6万枚相当の数字を獲得し、ストリーミングでも存在感を示しました (BLACKPINKの方の曲数が少ないながらも)

 Spotifyではかなりの成績。Savage Mode IIの曲と競合しながら、初日のランキングでは全曲が61位以上に収まりました。Globalだと全曲25位以上だったので、初アルバムが及ぼした影響力は世界的に大きかったようです。

 BTSの前アルバム曲はSpotifyのGlobalで23位―81位のランクイン(新規追加曲)、これに対してBLACKPINKはトップ10圏内4曲を含む、全曲がトップ25と考えると勢いのすごさが分かるかと思います。

 このように初アルバムは成功に終わったと言えますが、“Ice Cream”も既にラジオのオンエアが落ちるなど、USでのシングルヒットは不発に終わったので、次の課題はそこですかね。

 

 

9 滞在が短い曲たち

 

 滞在が短い曲を取り上げていきます。まずは滞在が10週以下だった曲たち。

Maroon 5 – Nobody’s Love (🗻41位 /⏰10週)

Calvin Harris & The Weeknd – Over Now (🗻38位 /⏰5週)

Juice WRLD & The Weeknd – Smile (🗻8位 /⏰8週) ※のちに再登場し、10週まで滞在が伸びる

 

 Maroon 5は2018年の”Girls Like You”がラジオで特大ヒット。それに続く2019~2020年の“Memories”も成功させたので、ラジオでは外さないアクトのような印象がありましたが、今回のシングルは不発に。トップ40を逃したのは、2015年のシングル”Feelings”以来

 Calvin HarrisとThe Weekndはラジオヒットの名手同士のコラボということもあり、初週から注目を集めトップ40圏内に登場。ただその後はストリーミング、ラジオともに注目が続かず、わずか5週で外れるという結果に。プロデューサー+The Weekndの組み合わせで、かつ高順位デビュー → 尻すぼみという展開は、Gesaffelsteinとの“Lost in the Fire”を思い出します。

 Juice WRLDとThe Weekndの“Smile”が短期滞在に終わったのは単純にラジオでオンエアされなかったからです。逆にその位置づけのシングルなのにトップ10入りしていたことを称えるべきだと思います。

 

 次に、20週には到達したものの「思ったよりは」滞在が短かった曲。

 

Lady Gaga & Ariana Grande – Rain On Me (🗻1位 /⏰20週)

 1位デビューも、そこまでは長くもたず20週きっかりで外れる。一般的な1位としては短い滞在なのですが、他の販売戦略1位曲が20週も持っていないことを考えると、そこまで悪くはない成績な気がします。VMAなど、リリース以降も注目度はありました。

 

・Megan Thee Stallion feat. Beyoncé - Savage (🗻1位 /⏰28週)

 こちらもやや短い滞在。5月の“Say So”との首位争いが大きくチャートを盛り上げていましたが、”Say So”は38週滞在、こちらは28週滞在です。

  “Savage”が主にオンエアされていたラップ系ラジオ(リズミックやRMS)は入れ替わりが激しく、ヒット曲もすぐに他と入れ替わるため、ラジオが大きい割合を占めるHot 100でのロングヒットは厳しいです。また、入れ替わりが遅くHot 100上でのロングヒットの因子になりやすいアダルトポップ系とラップの相性が悪いことも痛いですね。

 これが理由でDrakeクラスでもHot 100滞在はそこまで長くないことも多いです。Post Maloneは主にオンエアされているのがポップ系なので、滞在は長いです。

 

 

10 その他の曲の短評

 

・Anitta, Cardi B & Myke Towers - Me Gusta

 ブラジルのスター、Anitta初のHot 100。彼女は普段ポルトガル語*7で歌っていますが、この曲ではスペイン語と英語で歌っています。グローバルヒットを目指してスペイン語歌唱に挑戦したことは過去にもありました。(J. Balvinとの“Downtown”)

 

・Maren Morris - The Bones

 歴代で74曲目の滞在が1年に到達した曲。カントリー曲では9曲目で、いずれもポップ系やアダルトポップ系への飛び火を果たした曲たちです。これらの曲はポップ系よりもアダルトポップ系の成績が高い傾向にあります。Gabby Barrettの“I Hope”も近いうちにこのリストに加わるでしょう。

 

・LeAnn Rimes – How Do I Live:69週(1998)

・Faith Hill – Breathe:53週(2000)

・Faith Hill – The Way You Love Me:56週(2001)

Carrie Underwood – Before He Cheats:64週(2007)

Lady Antebellum *8 – Need You Now:60週(2010)

・The Band Perry – If I Die Young:53週(2011)

・Florida Georgia Line feat. Nelly – Cruise:53週(2013)

・Bebe Rexha & Florida Georgia Line – Meant To Be:52週(2018)

・Maren Morris – The Bones:52週(2020)

 

 

・Ashe feat. Niall Horan - Moral of the Story

 TikTokでブレイクし、ストリーミングで人気を得て3月にHot 100入り。当時は2週でチャートから外れるも、その後じわじわとラジオヒットとなり、7ヶ月ぶりにHot 100再登場。ストリーミングでのヒットとラジオヒットにギャップがある、という現代にありがちなケースの一つです。

 また、シングル化に伴いNiall Horanのクレジットが追加されています。

 

・Doja Cat feat. Nicki Minaj - Say So

 ピーク1位、滞在38週という成績でチャートを後に。ストリーミングで勢いを付け、リミックスのセールス増で1位獲得。そしてピーク後はラジオで粘りも発揮し、3指標全てを味方に付けた印象のある1曲。

 Nicki Minajが悲願のHot 100首位を獲得したことでも印象深い1曲。もちろん、Doja Catもこの曲を機に注目度が向上し、客演等の出番が増加しています。またDr. Lukeが”Dark Horse”以来、6年ぶりのHot 100首位を獲得したという側面もあります。

 

・Lil Mosey - Blueberry Faygo

 (🗻8位 /⏰33週)という成績で外れる。TikTokでの人気もあり、Lil Moseyキャリア最大のヒットに。リズミック系で首位、RMSで5位、ポップ系で13位と広く人気を獲得していました。

 

・Why Don’t We - Fallin’

 販売戦略の小規模版。CDの販売を行い、グループ初のHot 100入りを達成。しかもトップ40圏内(37位) その後1週でチャートを後にしましたが、ラジオでは浮上中のため、再登場の芽もありそう。Kanye Westの”Black Skinhead”をサンプリングした意欲作。

 

・Lil Baby & 42 Dugg - We Paid

 7月にはほぼストリーミングのパワーのみでトップ10入りを達成。そこからラジオでオンエアされるも、ストリーミングでのピークほど勢いが出ず、中位に留まるというLil Babyにありがちなパターンのヒット。こうしてピークがズレることが曲のロングヒット化に一役買っているような側面もありますが、もしストリーミングとラジオが一致すればより順位が高くなるのでは……という気持ちもあります。

 

・Morgan Wallen - Chasin’ You

 先月リリースの”7 Summers”がいきなりトップ10に登場し、驚きを提供したMorgan Wallen。その彼の前シングルが、(🗻16位 /⏰36週)という好成績を残してチャートを後に。一般的なカントリー曲のチャート成績は、ピーク40位前後、滞在20週程度なので、彼が現行カントリーシーンで飛び抜けた存在であることが伺えます。特に他系統のラジオへの飛び火無しでの36週滞在が優秀です。

 

・Future feat. Drake - Life Is Good

 (🗻2位 /⏰38週)という成績でチャートを後に。“The Box”とピークが完全に被ってしまったため、1位を獲得できませんでしたが、ポイント的には1位クラスの曲。粘りも十分だったことから年間トップ10入りが有力です。ピークの2位、滞在38週ともにFutureのキャリアハイの成績。Drakeにとっても38週滞在は2番目に長い成績です。*9

 YouTubeでの人気が根強く、チャートから外れた週もビデオランキングで1位に立っていました。

 

・Maddie & Tae - Die From A Broken Heart

 カントリー曲は滞在が21週以上になったら、ロングヒット傾向と考えて良いと思います。女性デュオによるこの曲はピーク22位、滞在25週と優秀な成績を残しました。

 

・Yung Bleu feat. Drake - You’re Mines Still

 Drakeのアシストもあり、Yung Bleuは初のHot 100入りを達成。この曲で気になったのはラジオ型ストリーミングで1位を獲得したこと。ラジオ型ということで、あまり初週から1位という動きは以前まであまり見られなかったのですが、最近は初週から高順位デビューを果たす曲が増えてきたような印象があります。しかも、他のストリーミングとは少し違う曲が人気を得ることも多いので、ここから独自のヒットが生まれる現象が今後も見られるかも?

 

 

今月のデータ

 

・主に外れた曲

(ピーク=🗻が10位以上 or 滞在=⏰が10週以上)

 

10/3

29 Maren Morris – The Bones (🗻12位 /⏰52週)

59 Luke Bryan – One Margarita (🗻19位 /⏰20週)

90 Ashley McBryde – One Night Standards (🗻76位 /⏰15週)

100 Pop Smoke – Got It On Me (🗻31位 /⏰10週)

 

10/10

47 Doja Cat feat. Nicki Minaj – Say So (🗻1位 /⏰38週)

48 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé - Savage (🗻1位 /⏰28週)

50 Lil Mosey – Blueberry Faygo (🗻8位 /⏰33週)

 

10/17

41 Future feat. Drake – Life Is Good (🗻2位 /⏰38週)

46 Morgan Wallen – Chasin’ You (🗻16位 /⏰36週)

48 Maddie & Tae – Die From A Broken Heart (🗻22位 /⏰25週)

49 Lil Baby & 42 Dugg – We Paid (🗻10位 /⏰22週)

78 Gunna feat. Young Thug – DOLLAZ ON MY HEAD (🗻38位 /⏰17週)

81 Juice WRLD & The Weeknd – Smile (🗻8位 /⏰8週)

82 Doja Cat feat. Gucci Mane – Like That (🗻50位 /⏰18週)

86 Maroon 5 – Nobody’s Love (🗻41位 /⏰10週)

90 Lil Durk feat. Lil Baby & Polo G – 3 Headed Goat (🗻43位 /⏰14週) ※のちに再登場

 

10/24

65 Lady Gaga & Ariana Grande – Rain On Me (🗻1位 /⏰20週)

 

 

アルバムチャートのキリ番

 

10/3

1周年:DaBaby – KIRK (109位)

150週目:Elton John – Diamonds (44位)

150週目:H.E.R. – H.E.R. (193位)

200週目:Soundtrack – Moana (77位)

200週目:The Weeknd – Starboy (122位)

 

10/10

1周年:Summer Walker – Over It (44位)

100週目:Lynyrd Skynyrd – All Time Greatest Hits (133位)

200週目:Kane Brown – Kane Brown (172位)

 

10/17

1周年:YoungBoy Never Broke Again – Al YoungBoy 2 (123位)

1周年:Lil Tjay – True 2 Myself (137位)

200週目:Post Malone – Stoney (59位)

350週目:Bob Seger & The Silver Bullet Band – Greatest Hits (197位)

350週目:Drake – Nothing Was The Same (163位)

 

10/24

200週目:Frank Ocean – BLONDE (140位)

 

10/31

150週目:Soundtrack – The Greatest Showman (91位)

 

 

・各週の上位デビュー

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◇は再登場

 

・各週で順位の上げ幅が大きかった曲

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・各指標の1位推移

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・Rolling Stone Chartsのトップ10

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 こちらでは”Dreams"が3位まで到達しています。ほかストリーミングで再浮上しているPop Smokeのシングル2つもトップ10に。一方”Dynamite"はどの週もトップ10に入らず。違いが際立っています。

 

 

・各週の動向まとめ

 

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参照リンク

 

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

・TokBoard:https://tokboard.com/

Spotify Charts:Spotify Charts

 

過去の月の記事

 

9月:Billboard 動向・9月号 【BTS / ロングヒット記録 / ヒットの4メトリクスなど】 - チャート・マニア・ラボ

 

8月:Billboard 動向・8月号 【圧巻の"WAP"、アルバムはTaylor Swift】 - チャート・マニア・ラボ

 

7月:Billboard 動向・7月号 【Pop SmokeとJuice WRLDの活躍 販売戦略のその後……】 - チャート・マニア・ラボ

 

6月:Billboard動向・6月号 【コラボ曲の首位が相次ぐ / アルバムチャートはリリース減少?】 - チャート・マニア・ラボ

 

5月:5月まとめ 【首位が全て異なる月 / 販売戦略が躍動】 - チャート・マニア・ラボ

 

4月:Hot 100 / Billboard 200まとめ 4月号 【The Weekndがアルバム4タテなど無双】 - チャート・マニア・ラボ

 

3月:Hot 100・Billboard 200まとめ 3月号 【Lil Uzi Vert・Bad Buny・Lil Baby・BTSなど…アルバム大盛況】 - チャート・マニア・ラボ

 

2月:Hot 100・Billboard 200まとめ 2月号 【アルバム激戦区・不動のシングル上位など】 - チャート・マニア・ラボ

 

1月:Hot 100 2020年1月まとめ 【激動の1ヶ月、Roddy Ricch大活躍など】 - チャート・マニア・ラボ

 

 

 

 

*1:ストリーミングの比率が大きい ラジオが集計されない

*2:ゴールド認定などをする機関

*3:ただしTikTokでの使用数を調べるTokboardではトップ20には入っていない

*4:Mainstream R&B /Hip-Hop = 旧アーバン

*5:媒体によってはDon Toliverがメインアーティスト側に入っている表記の時もある。個人的には存在感でいうとDon Toliverが7割くらいを占めていると思うので、むしろメインではないのが少し意外です

*6:でも自分のベストソングでは“Sofia”の方を選んでいた、ということをアピールしておきます!?

*7:ブラジルの言語はポルトガル語

*8:現在はLady Aに改名。今月、改名後初のHot 100入りを果たす

*9:“No Guidance” = 46週に次ぐ。52週滞在ですが、彼がクレジットされていない”SICKO MODE”は除く

Billboard 動向・9月号 【BTS / ロングヒット記録 / ヒットの4メトリクスなど】

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 今月の最大のトピックはBTSのHot 100首位獲得でしょうか!そのビッグテーマや、ロングヒットに関する記録を深堀りしていきます! (記事遅くなってすいません)

 

 

 

 

1 セールスの制圧力 BTS初のHot 100首位

 

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 最初の2週はBTSの”Dynamite”が、残りの2週は”WAP”が首位に立ちました。悲願の1位達成となったBTSについて詳しく見ていきます。

 

 首位獲得の牽引車となったのはその高いセールスです。初週には30万のセールスを獲得。これは2018年以降で最多の数字。(2017年の”Look What You Made Me Do” =35.3万 以降最大の数字) 仮にストリーミングとラジオのポイントがなしでも、1位を取れるとも推定されるほどのセールスを強力なファンダムと共に成し遂げたのです。

 

 曲のリリースと同時にInstrumentalなど複数バージョンをリリース、ファンがそれに応えこの曲の複数バージョンがiTunesの上位を独占。後にリミックスが順次追加され、セールスの維持に役割を持ちました。

 またiTunesのような媒体だけではなく、D2C(直接販売)でもセールスがあった模様です。Rolling Stone ChartsではこのD2Cが集計されないので、こちらでは1位にはなりませんでした。(ほかHot 100よりもセールスの比重がやや低めという側面も)

 他に、初週は物理媒体のセールスも少し(3.5万)あったようです。

 

 この現象は、今年盛り上がった「ファンの力を活用したセールスによる首位狙い」の決定版という印象です。現在一般的なセールスの数字は低いものの、依然Hot 100ではポイントを効率的に稼げる指標ではあるので、ファンを呼び込み特定の週にセールスを集中させHot 100首位を「狙いに行く」という戦略です。このような戦略を利用して首位を獲得したと伝えられた曲は今年だけで10曲もあります。

 ビルボードはこれの対策として先月、それまで主に使われていた物理媒体(CDやヴァイナル)にDLの権利を付けるという手法を制限(DLされた週ではなく、実際の物理媒体が発送された週に集計)しましたが、今回BTSは異なるセールス戦略で1位を獲得することに成功しました。圧倒的なセールスを獲得し、ファンダムの強さを示しました。

 

 今後も一般的な曲のセールスが低く、一定のセールスで容易に他の曲を出し抜けるという状況は変わらないと思うので、仮に特定のセールス戦略が封じられても、また違う抜け道を探す……といういたちごっこが続くような気がします。ビルボードがこのセールス戦略を本気封じたいのならば、チャートにおけるセールスのポイント自体を抑えることが一番だと思います。

 しかしチャートの効果でセールスを増大させており、音楽市場拡大に寄与しているという意味では、実は歓迎すべきことではないか?という考え方も出来るので、このセールス戦略を受け入れるのも一つの手かもしれません。

 

 ここまで長くセールスについて述べてきましたが、この曲はその他の指標でも好調な成績を収めています。彼らの得意分野であったYouTube含まれないOn-Demand Streaming(要はSpotifyAppleなど)では史上最高の4位を記録。そしてラジオでのオンエアも稼ぎ、3週目には初めてRadio Songsチャートに入りました(=ラジオの再生数が50位以上*1) 初の英語シングルという試みが功を奏し、一般層への浸透度も向上している印象です。

 

 

2 歴史的ロングヒット”Blinding Lights”

 

 “Blinding Lights”がトップ5滞在最長記録を更新(28週)。先月のラジオ記録に続くロングヒット関連の快挙です。これらの2つは非常に深い関係にあり、このラジオの人気ぶりがトップ5記録の主要因と見て良いでしょう。

 

(トップ5最長滞在記録)

28週:The Weeknd – Blinding Lights (2020)

27週:Ed Sheeran – Shape of You (2017)

27週:The Chainsmokers feat. Halsey – Closer (2016-2017)

26週:Post Malone – Circles (2019-2020)

 

……と近年の曲が際立ちます。ビルボードには23週の記録までが掲載されていましたが、その23週~25週も近年(2017年~)の曲が過半数を占めていました。これはこの時期からストリーミングが存在感を示すようになり、指標が増えた分それらを全て取るような曲が減少し、「圧倒的に強い曲」が誕生しやすくなったことも理由の一つだと思います。

 

 もう一つ気になるのはラジオの循環率の低下です。Radio Songsのロングヒットに関するデータはあまり見つからなかったのですが、最大のラジオ系統であるMainstream Top 40 (Pop Songs)のデータを見ると、少し面白い点がありました。(記録は:Mainstream Top 40 - Wikipediaにまとめられています)

 

・Pop Songsで1位滞在が最も長い曲

14週:Ace of Base – The Sign (1994)

11週:Mariah Carey & Boyz II Men – One Sweet Day (1995-1996)

11週:Donna Lewis – I Love You Always Forever (1996)

11週:Natalie Imbuglia – Torn (1998)

11週:Nelly feat. Tim McGraw – Over and Over (2004-2005)

11週:The Chainsmokers feat. Halsey – Closer (2016)

 

 一番メジャーな記録、最も長く1位を獲得したという記録では近年の曲はほとんど際立ちません。ただしロングヒット関連では近年の曲が多く独占しています。

 

・最長トップ10滞在

35週:Circles 31週:Adore You* 29週:Blinding Lights* 

 

・最長チャート滞在

45週:New Rules, Love Lies, Eastside, Circles 42週:Adore You*, I Like Me Better

 

・1位到達までの期間が長い曲

37週:Before You Go 31週:Eastside 28週:Falling

 

・トップ10到達までの期間が長い曲

35週:I Like Me Better 31週:I’ll Be(1998) 27週:Lights Down Low, Before You Go

 

*=現在も継続中の記録 太字は今年のヒット

 

 下線を引いたEdwin McCainによる”I’ll Be”を除いて、全てストリーミング時代(2017~)の曲でした。その中でも太字になっている今年の曲の存在感が際立ちます。今年に限っては感染症の影響でリリース量が減少したという側面もありますが、近年ポップ系ラジオでは曲のロングヒット化という傾向が見受けられるようです。

 

 推測にはなりますが、ストリーミングの台頭で「ヒットしている」という感覚が多様化し、それぞれでピークが分散していることがこのラジオのロングヒット化の要因の一つだと考えています。*2

 このようなラジオシングルのロングヒット化、は近年相次ぐHot 100でのロングヒット記録(トップ10、5最長滞在など)の大きな要因として調べがいがありそうです。

 

 

3 アダルトポップの申し子Lewis Capaldi + その他のトップ10

 

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 前章で注目した”Blinding Lights”はもう一つ、ラジオ連続1位(計23週)という記録を持っていましたが、今月ストップ。(来月1位返り咲きの可能性あり)それを止めたLewis Capaldiの”Before You Go”について見ていきます。

 

 彼は2つのHot 100入りでいずれもトップ10入り。かつラジオ1位を獲得することを成功しています。彼のバラード調の曲はアダルトポップ系統との相性が良く、これがラジオヒットの要因だと考えられます。

 一般的にアダルトポップ系はポップ系よりも回転が遅めですがが、彼の曲はその適正の高さからか、2つともアダルトポップ系で先に1位を獲得しています。(また、そこから遅れてポップ系で人気を得たため、”Before You Go”はポップ系で1位獲得まで最も長い期間をかけた曲になりました)

 

 アダルトポップ系は規模の大きめな系統の中で比較的じっくり曲をオンエアしてくれるので、比較的「ラジオヒット」を狙うのに向いているかもしれません。ポップなどの系統と比較すると、ストリーミング人気にとらわれない選曲が多めな印象です。近年P!nkはこの系統をうまく活用し、ラジオヒットを飛ばしています。

 イギリスでは彼以外にも男性SSWが多く台頭しており、このアダルトポップ系はイギリス人にとってUSヒットを目指す上で狙い目になる可能性も?

 

 その他トップ10で目立った動きを見せたのは24kGoldnとiann diorの”Mood”。元々それなりの知名度があったラッパーが、TikTokの力を借りつつ、さらなるヒットを飛ばすのはLil Moseyの”Blueberry Faygo”と似ています。

 この”Mood”はさらに大規模なヒットになる予感。ストリーミングだけでなくラジオでも強く、将来的なラジオ1位も射程範囲内。ほか既にUKで1位獲得済みと海外でも大人気。

 

 もう一つ際立ったのは”POPSTAR”。ビデオ効果で再注目され、トップ10返り咲き。 Justin Bieberとスター出演とはいえ、ビデオでここまでの注目を集めたのはお見事。またその効果でラジオも浮上を果たし、リズミック系の1位を獲得。

 ただ直近のデータでは、シングルを”GREECE”の方にバトンタッチしており、ラジオが急降下。来月は順位を落とす見込み

 

 

4 来月以降のヒット候補

 

 毎月今後トップ10に「上昇」しそうな曲を挙げていますが、今月は”Lemonade”くらいで、候補は少なさそうです。既存の曲ではなく、新規リリースされる大物のシングルたちがトップ10付近を盛り上げそうです。

 既にトップ10入りしている曲ですが、再浮上という意味で”For the Night”と”Come & Go”にも注目です。前者はストリーミングの人気により、ビデオ&ラジオ無しで20位以上に居座る大健闘を見せており、何かしらのプラスがあればトップ10に返り咲きしそうです。どのような運用をするか注目です、と思ったら10/10付の集計分の時期くらいからラジオオンエアが始まりました。

 後者はどちらかというと逆。ストリーミングの減少分をラジオ増が補うような形で20位付近に居座っています。このストリーミング/ラジオのバランスがどこかで増加に転じればトップ10に届くかも。

 ほか“Tap In”も一応可能性がありますが、リミックスがそこまで盛り上がらなかったことやラジオにポイントが寄っていることを考えると、トップ10は少し厳しそう?

 ちなみにこのような順位帯(トップ10を目指す20位以上の帯)が盛り上がらなければ、”Circles”が長くHot 100に残りそうです。53週/26位*3ルールが出来て以降、最長の滞在となった”Shape of You” = 59週の記録も上回りそうです。

 

※仮に53週/26位ルールが以前から適用されていた場合の長期滞在ランキング

69週:Radioactive (実際には87週)

60週:Sail (実際には79週)

59週:Shape of You

 

 

5 比較的静かだったアルバムチャート

 

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 週10万超えはBig Sean、YoungBoy Never Broke Againの2つ。今年10万超えがのべ2つ以下だったのは6月のみ。その6月も20万を超えたLady Gagaのリリースがあったことを考えると、今月は今年最もアルバムチャートが静かだったと捉えることもできます。

 最初の2週はストリーミング+セールスの総合力に優れるTaylor Swiftがアルバム1位を獲得。残り2つはストリーミングを稼いだラッパーの新作が1位を獲得しました。Big SeanもYoungBoy Never Broke Againはいずれも3作目のアルバム1位。

 YoungBoy Never Broke Againはその3回の1位を全てここ1年で獲得。彼はリリースペースの早さが特徴的で、2017年以降15もの作品がBillboard 200入りを果たしています。この矢継ぎ早のリリースにファンも応え、毎回ストリーミングで人気を得ています。(特にAppleYouTubeで Spotifyではこの2つほど人気ではない)

 ちなみにそのリリース量の割にはラジオにあまり恵まれておらず、自身メインの曲でビルボードのラジオ系チャートに入ったのは3曲のみ(Make No Sense, I Am Who They Say I Am, No Smoke)です。(ちなみにMigosの客演を務めた”Need It”が最大のラジオヒット。ほかJuice WRLDと組んだ”Bandit”も一定のラジオオンエアを獲得)

 

 

6 TikTok流シングルカット

 

 9月ラストの週にPop Smokeの”What You Know Bout Love”が再登場。これはTikTokでの人気浮上に関連するもの。アルバム期から少し経過しての浮上、ということで擬似的なシングルカットとなりました。(この時点で)Pop Smokeの曲でラジオにかかっているのは”The Woo”のみですが、Hot 100では”For The Night”と”Mood Swings”も上位に。

 ラジオに加えてTikTokの勢力も加わることで、複数曲のHot 100入りを実現させています。これは単にTikTokの勢いだけではなく、Pop Smokeの人気がストリーミング高く、ヒットする土壌があったことも大きいです。(TikTokでヒットしたからといって、ストリーミングで人気が出ないことも多いです。逆に元々そのアーティストへの注目度があると小さなきっかけでも浮上を果たすこともあります。)

 

 この「TikTok流シングルカット」は、ラジオのシングルカットと比べて自由度が大きいです。ラジオでは同一アーティストの曲はなかなか複数かかりませんが、TikTokでは回転率の高さから、短期間で複数曲にスポットライトを当てることが可能です。またジャンルや知名度に囚われない選曲も可能で、ストリーミング世代に向いているラジオのような素質があります。

 

 ただしTikTokのランダム性もあり、「狙う」ことは難しいでしょうし、今回のPop Smokeクラスの大ヒットも今後もなかなか見られないでしょう。ただこのようにTikTokがラジオのような効果を持っていることは頭の片隅に置いて良いでしょう。

 

 

7 TikTok発の最終的な成績

 

 そのTikTok発の曲が今月そのヒットサイクルを終え、いくつかチャートから外れました。その成績を、先月外れた”Supalonely” “Sunday Best”と合わせて見ていきます。

 

StaySolidRocky - Party Girl  (🗻21位 /⏰20週)

Powfu feat. beabadoobee - death bed (🗻23位 /⏰26週)

Surfaces - Sunday Best  (🗻19位 /⏰21週)

BENEE feat. Gus Dapperton - Supalonely  (🗻39位 /⏰22週)

Don Toliver - After Party (🗻57位 /⏰20週)

 

 “After Party”を除き、これらの曲は中位まで到達 / 25週程度のヒットで、総合的に見ると「中ヒット」といえる成績を残しています。

 もちろん元々無名だったことを考えると大健闘なのですが、ただしほとんどが次シングルで存在感を示すことに失敗しています。上記のアーティストのうち、Don Toliver以外はHot 100にも再登場していませんし、ストリーミングでの順位も低いです。

 昨年はLil Nas Xという大スターを生み出しましたが、この上記の成績で「TikTok発」の天井?のような物も感じました。

 

 そんな中唯一Don Toliverは繰り返しの活躍。TikTok以前からTravis Scottの”CAN’T SAY”にクレジット無しで参加するなど、元々期待度があったということが大きいと思います。過去にHot 100入り歴のあったLil Moseyや24kGoldnはTikTokを経由して上記のアーティストよりも大きくヒットを飛ばしているので、TikTokで曲をヒットさせるにも、ある程度それまでの知名度が多少は関係するような印象を受けました。

 

 

8 Global 200

 

 ビルボードは9月の3週目からグローバルチャートを開始。200を越える国と地域から集計したGlobal 200、そしてアメリカを除外したGlobal Excl. USの2種類。それぞれの初代王者は”WAP”と”Hawái”に。

 このチャートでポイントとなるのは「遷都」かと思います。これまではあまり週間で集計される世界ランキングがほぼ無かったため、Hot 100が代わりに「世界のヒットの指標」のような役割を担ってきました。かつては国によってリリースの曜日も違い、販売店まで集計を行わなくてはならない負担などから週間の世界ランキングを作成するのは難しかったでしょう。その後世界的にリリース日が統一され、さらにSpotifyYouTubeなどのグローバル単位での数字を表示される媒体の台頭でグローバル単位のヒットを観察できる視座が誕生しましたが、いずれもHot 100ほどの影響を持つことは無かったと思います。

 その「世界」を上回る影響を持ち続けた「US」のHot 100を作成してきた、ビルボードによるGlobal 200。世界とアメリカでは、「世界」の規模が大きいため、純粋な考え方をするとこの世界ランキングの方が影響を持ちます。その純粋な考え方が実現されるのか、つまり実質的な「世界ランキング」がアメリカからグローバルに「遷都」するのか、ということがこのチャートの見どころかと思います。

 そのため、このチャートの「使われ方」に着目したいのですが、今の所とても影が薄いです。ChartDataやPopCraveなどの人気Twitterメディアを見てもHot 100の報道量よりもかなり少ないです。上位をチラッと触れて終了程度です。この程度は公式のBillboardChartsでも同じで、あまり本家本元もHot 100を上回るとは思っていない可能性があります。

 ほか、チャート関連のニュースを時折報じるPitchforkもこのランキングについては触れていません。(批評方面では、アメリカ vs 世界みたいな比較は注目テーマな気はしますが……)

 

(9/14-9/27) Global発表日から2週

ChartData Globalは12、Hot 100は109

PopCrave Globalは5、Hot 100は35

BillboardCharts Globalは7 Hot 100は26

 

 

9 ヒット曲の4メトリクス”my future“ / “Stuck with U”など

 

 初週は高順位でデビューしたものの、最終的には短い滞在でチャートを去ったBillie Eilishの”my future” (🗻6位 /⏰6週)やAriana GrandeとJustin Bieberの”Stuck with U” (🗻1位 /⏰18週)。このようなチャートアクションについて考えていこうと思います。

 

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 上の図は曲のヒットを「初動の注目」と「チャート滞在期間の長さ」の2つの基準でタイプ分けしたものです。右に行けば行くほどシングルとしては成功、上に行けば行くほどアーティストとしては成功、というのが私は考えています。

 最初の数字に関わらず、右に行けばシングルとしては成功できます(②)。ただシングルで成功を収めてもその後アーティストとして注目を集めるかは微妙です。上記で挙げたTikTok発のアーティストや、Tones And Iなどがこれに当てはまります。もちろんブレイク以前よりは格段に知名度は上がっていますが、シングルでのヒット度と比較すると?ということです。

 一方で、初動のみで尻すぼみのチャートアクション(③)は失敗と私も考えていたのですが、一概にそうとは言えない気がしてきました。アーティストとしての評価は急激には変化しづらいので、初動が強いということは今後も再現性があるということになります。アーティストの評価が高ければ、現在ストリーミングで強い媒体であるアルバムで一気に注目を集めることも可能です。他にも、以前よりもマニアックな表現が受け入れやすくなり、大物が全てのシングルで必ずしもシングルヒットを狙わなくなった、という点も重要でしょう。

 もちろん、シングルの不発が続けばこの「アーティストの評価」の部分が動くこともあれば、また逆もしかりです。

 

 

10 その他の曲の短評

 

・Roddy Ricch - The Box

 (🗻1位 /⏰38週) という成績でチャートを後に。11週連続1位と、ピーク時の強さは圧巻でしたが、チャート滞在期間は1位の曲としては「やや長い」程度です。ストリーミングでは強かったですが、ラジオはそこそこ(ピーク6位)。中でもポップ系ラジオでは不遇で、11位止まり。Hot 100で10週以上獲得した曲のうち、ポップ系ラジオでトップ10に入らなかったのは歴代3つ目の事例です。

 

Drake - Toosie Slide

 の成績でチャートから外れる。初週の1位など、登場直後はスターの貫禄を見せていますが、最後の方は下半分の順位まで落ちるなど、ペースダウン。TikTokを意識した策略が注目を集め、実際にTikTok内で人気を得たよう*4ですが、”In My Feelings”ほどはバズらなかったので可もなく不可もない成績に終わった印象です。

 

Lil Baby - Emotionally Scarred / We Paid (& 42 Dugg)

 ストリーミングの人気からは時間差でカットするため、Hot 100滞在20週目前後のタイミングでラジオが伸びる。これによりロングヒットを実現。Lil Babyはストリーミング、ラジオともに安定しており、このパターンが定番化しています。そしてストリーミングのピーク > ラジオのピークになりがちです

 

BLACKPINK & Selena Gomez - Ice Cream

 BLACKPINKキャリアハイの13位に登場。そして初めてラジオ系チャートに登場。目論見どおりUSではキャリア最大のヒットに。最長滞在(”Kill This Love”の4週)も更新間近。次シングルとの兼ね合いもありますが、滞在10週が目標?

 

Taylor Swift feat. Bon Iver - exile

 シングルごとにラジオ系統を使い分ける戦略を取ったTaylor Swift。そしてこの曲は彼女にとって発のTriple A(Adult album alternative、要はアルバム志向の玄人向け系統)ヒットに。

 その他”Betty”で久々にカントリー系ラジオを得るなど、ラジオ系統の使い分けは上手く言っているのですが、”cardigan”以外は早々にHot 100から去ってしまいシングルヒットにはつながりませんでした。アルバムのテイストからして、シングル単体で聞くような曲が少なかったので、路線的には致し方ないのかもしれません。

 

Justin Bieber feat. Quavo - Intentions

 ピーク5位、滞在31週で外れる。うち19週はトップ10圏内で過ごしており、十分な成績を残したと言えます。近年の彼の曲は20週に満たずにチャートから外れてしまうことも少なくないので、貴重なヒットだったとも言えます。

 

Morgan Wallen - More Than My Hometown

 SpotifyAppleでも存在感のあるMorgan Wallen。複数曲が同時にストリーミングで人気を得ていることもあり、現在複数曲がHot 100入りしていますが、現在カントリーラジオで盛んにかけらている曲はこれ。”7 Summers”もカントリー系、アダルトポップ系でオンエアが開始しています。

 

Luke Combs - Lovin’ on You

 1週ごとに首位が交代しがちなカントリー系ラジオで4週にわたり1位に。彼はデビュー以来ラジオシングルが全てトップ40入り(9曲連続)

 

Miranda Lambert - Bluebird

 (🗻26位 /⏰20週)という成績で外れる。Miranda Lambertがリカレントまで到達するのは2014年の”Somethin’ Bad”以来

 

 

今月のデータ

 

・主に外れた曲

(ピーク=🗻が10位以上 or 滞在=⏰が10週以上)

 

9/5

45 Lil Baby – Emotionally Scarred (🗻31位 /⏰25週)

64 Miranda Lambert - Bluebird (🗻26位 /⏰20週)

72 Drake – Toosie Slide (🗻1位 /⏰20週)

87 Black Eyed Peas, Ozuna & J. Rey Soul - MAMACITA (🗻62位 /⏰11週)

91 Juice WRLD - Conversations (🗻7位 /⏰6週)

96 Juice WRLD - Righteous (🗻11位 /⏰16週)

 

9/12

48 Roddy Ricch – The Box (🗻1位 /⏰38週)

98 Taylor Swift feat. Bon Iver - exile (🗻6位 /⏰5週)

 

9/19

42 Thomas Rhett feat. Reba McEntire, Hillary Scott, Chris Tomlin & Keith Urban – Be A Light (🗻42位 /⏰22週)

62 Florida Georgia Line – I Love My Country (🗻40位 /⏰20週)

66 Keith Urban – God Whispered Your Name (🗻60位 /⏰20週)

92 Taylor Swift – the 1 (🗻4位 /⏰6週)

94 Chris Janson - Done (🗻41位 /⏰12週)

96 Lil Durk feat. Lil Baby & Polo G – 3 Headed Goat (🗻43位 /⏰11週) ※

100 Rod Wave – Girl Of My Dreams (🗻65位 /⏰16週)

 

9/26

39 Powfu feat. beabadoobee – death bed (🗻23位 /⏰26週)

48 Justin Bieber feat. Quavo - Intentions (🗻5位 /⏰31週)

61 StaySolidRocky – Party Girl (🗻21位 /⏰20週)

90 Billie Eilish – my future (🗻6位 /⏰6週)

93 Justin Moore – Why We Drink (🗻50位 /⏰15週)

94 Don Toliver – After Party (🗻57位 /⏰20週)

99 Migos feat. YoungBoy Never Broke Again – Need It (🗻62位 /⏰15週)

100 Ariana Grande & Justin Bieber – Stuck with U (🗻1位 /⏰18週)

 

※=のちに再登場した曲

 

 

・アルバムチャートのキリ番

 

9/5

100週目:Morgan Wallen – If I Know Me (17位)

100週目:Daryl Hall John Oates – The Very Best Of … (169位)

 

9/12

1周年:Post Malone – Hollywood’s Bleeding (11位)

1周年:Elton JohnElton John (143位)

1周年:Harry StylesHarry Styles (182位)

100週目:Lady Gaga & Bradley Cooper – A Star Is Born (191位)

100週目:Lil Baby & Gunna – Drip Harder (181位)

300週目:J. Cole – 2014 Forest Hills Drive (106位)

 

9/19

300週目:Taylor Swift – 1989 (116位)

 

9/26

なし

 

 

・各週の上位デビュー

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◇は初登場

 

・よく順位を上げた曲

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・各指標の1位推移

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 "WAP"の強さが際立っています。この圧倒的な”WAP"をセールスで抑え込んだのが”Dyanamite"。

 

・Rolling Stone Chartsのトップ10

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 "Dynamite"の項目で説明したように、セールスの集計方法がHot 100とは異なります。その影響をモロに受け、"Dynamite"の順位がHot 100とは違います。

 

 

・各週の動向まとめ表

 

9/5

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9/12

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9/19

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9/26

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参考/関連リンク

 

各週のHot 100

9/5:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-09-05

9/12:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-09-12

9/19:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-09-19

9/26:https://www.billboard.com/charts/hot-100/2020-09-26

 

参照

Chart Beatの記事:Chart Beat | Billboard

Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

HitsDailyDouble:https://hitsdailydouble.com/mediabase_building_charts

Tikboard:https://tiktometer.com/

 

 

過去の月の記事

8月:Billboard 動向・8月号 【圧巻の"WAP"、アルバムはTaylor Swift】 - チャート・マニア・ラボ

 

7月:Billboard 動向・7月号 【Pop SmokeとJuice WRLDの活躍 販売戦略のその後……】 - チャート・マニア・ラボ

 

6月:Billboard動向・6月号 【コラボ曲の首位が相次ぐ / アルバムチャートはリリース減少?】 - チャート・マニア・ラボ

 

5月:5月まとめ 【首位が全て異なる月 / 販売戦略が躍動】 - チャート・マニア・ラボ

 

4月:Hot 100 / Billboard 200まとめ 4月号 【The Weekndがアルバム4タテなど無双】 - チャート・マニア・ラボ

 

3月:Hot 100・Billboard 200まとめ 3月号 【Lil Uzi Vert・Bad Buny・Lil Baby・BTSなど…アルバム大盛況】 - チャート・マニア・ラボ

 

2月:Hot 100・Billboard 200まとめ 2月号 【アルバム激戦区・不動のシングル上位など】 - チャート・マニア・ラボ

 

1月:Hot 100 2020年1月まとめ 【激動の1ヶ月、Roddy Ricch大活躍など】 - チャート・マニア・ラボ

 

 

 

*1:ここにもリカレントが存在するため、純粋な再生数が50位以上ではない可能性もある

*2:ちなみにここで多く登場する、”I Like Me Better”はもっとビッグヒットだと感じる曲の一つで、感覚的には5位くらいのヒット(実際には27位)、とチャート系サイトHeadline Planetの創始者Brian Cantorさんは語っています

*3:53週目以降に26位以下に落ちたらチャートから外れるルール

*4:Tokboard(旧Tiktometer)で4月4位