チャート・マニア・ラボ

音楽チャート・ポップス研究者(自称) ポップス音楽と食べることが好きなオタク

Billboard 動向・12月号 【Taylor Swiftの"evermore"、BTSとBad Bunnyなど】

f:id:djk2:20201231020551p:plain

 こんばんは!2020最後のビルボード月末まとめとなります!(いつもより短めですが、よろしくお願いします!)

 

 

目次:

 

 

 

1 動きが激しいトップ10

f:id:djk2:20201231020633j:plain

 全ての週で首位が入れ替わっています。初週は販売戦略によるBTSの“Life Goes On”が、2週目は一般的なラジオヒットの”Mood”、3週目はクリスマス曲、4週目は再び販売戦略の“willow”が首位に立っています。

 月を通してトップ10に入り続けた曲がわずか2つ(”Mood”と”positions”)と、首位以外の枠もかなり入れ替わりが激しい月となりました。(先月このような曲は6つ)

 要因となったのは今年のチャートを左右し続けた販売戦略に加え、クリスマス曲が上位に多く入ってきたからです。以下のように、クリスマス曲の勢いはさらに強まっています。*1

 この2つの要因によって既存のヒット(主にラジオヒット)がトップ10から押し出され、週ごとの変動は大きくなりました。

 

クリスマス曲のトップ10入り数(12月)

2019:0→3→5→6

2020:0→2→3→4

 

 

2 Taylor Swift

f:id:djk2:20201231020952j:plain

 

 今月クリスマス曲以外で最も際立つ成績を残したTaylor Swiftについて見ていきます。”folklore”の姉妹作にあたる”evermore”を急遽リリース。さすがのスターパワーを発揮し、大きな注目を集めて余裕のアルバム1位を獲得。(32.9万の売上)

 そして複数リミックスなどの戦略を駆使し、シングルでも”willow”が首位を獲得。勢い増す“All I Want for Christmas Is You”が強力なライバルとして存在していたので、このような戦略無しでは1位に立たなかった可能性があります。ただしこの曲には、次週悲劇が……(来月号で説明します)

 このアルバムで際立つ数字は2.2億という再生数です。これで彼女にとって2億再生超えの作品は3枚目。2億超えを複数枚で記録している女性アーティストは彼女が唯一でしたが、その記録をさらに伸ばすことに。

 

f:id:djk2:20201231020659j:plain

f:id:djk2:20201231020715j:plain


  ファンベースの強さを表しているセールスに対し、ストリーミングはファンの広さを主に表していると思います。この2つを両立しているTaylor Swiftからは唯一無二のスターパワーを感じます。

 この作品はTaylor Swiftにとって初めてストリーミングの数字が全体の過半数を上回った作品に(総合売上32.9万のうち、ストリーミングは16.7万) 初週の時点ではまだCD等がリリースされておらず、DLに限定されていたことがセールスの数字が控えめだった理由です。そのストリーミングの強さによって全曲がHot 100入りを果たしています。

 彼女はこれでHot 100総エントリー数を128まで伸ばし、Nicki Minajを抜き返して女性で最多になりました。

 

 

3 BTS → Bad Bunny

 初週にBTS、そして2週目にBad Bunnyがアルバム1位を獲得。これにより(主に)非英語のアルバムが続けて1位を獲得することとなり、史上初の出来事となりました。2018年にBTSがUSでアルバム1位を獲得以降強まる、非英語圏の躍進を象徴する出来事です。

 BTSは5枚目のアルバム1位。総合売上は24.2万で、うち純セールスは17.7万。先行シングルの“Dynamite”こそ英語シングルですが、それ以外はほぼ韓国語で歌われています。

 その韓国語シングルの一つ、”Life Goes On”が1位を獲得。セールスの高さが飛び抜けていました。しかし他の数値に優れず、わずか3週でHot 100から外れることに。“TROLLZ”の記録を上回り、最短記録を更新してしまいました。クリスマス曲大量登場によってHot 100のボーダーラインが急浮上したことも多少は影響しているでしょうが、そうでなくても短いことには変わりないでしょう。

 ただしビデオを除くと、まだシングル単位でのプロモーションはそれほど行われていないため、今後リミックスやラジオでのシングルカットが行われ、滞在を伸ばすかもしれません。もしかすると、チャートにも熱心なファンたちが自発的に動いてセールスを特定の週に集めてHot 100入りを狙う、なんてことも考えられるかもしれません。

 

 Bad Bunnyは初のアルバム1位。前作もかなり優秀な数字(売上17.9万、11曲がHot 100入り)でしたが、Lil Babyという強力なライバルがいたため1位になれず。今作では前作よりもやや数字を落としたものの、強力なライバル不在によって見事アルバム1位に輝きました。彼は主にストリーミングで人気。アルバムから11曲がHot 100に入っています。

 

 

4 Megan Thee Stallion、Kid Cudi等アルバムチャート

 今月は興味深いアルバムリリースが多く見られました。まずはMegan Thee Stallion。昨年から徐々に頭角を現し、今年に入ってからは勢いが加速。“Savage”で初のHot 100首位(かつ初のトップ10)を獲得すると、続いてCardi Bとの”WAP”で2回目の1位も獲得!“Savage”以上の大ヒットになりました。

 そんな彼女の念願のデビュー作はBTSと被ったこともあり、アルバム2位に。ただ売上は10.5万とアルバム1位も射程範囲内の成績を記録。ストリーミング数1.16億と優秀で、Hot 100には7曲が登場しました。さらにその後は複数曲がTikTokで人気を得たこともあり、複数曲がHot 100に残留。来年以降も活躍に期待が持てそうです。

 もう一人似たような成績を残したのはKid Cudi。Taylor Swiftと同じ週のリリースだったため、アルバムチャートでは2位でしたが、14.4万と好成績を記録。10曲がHot 100入りを果たしました。クリスマス曲+Taylor Swiftと他にイレギュラーな曲がかなり多く存在した週のリリースでなければ、もっと多くの曲がHot 100入りしていたでしょう。

 彼は2009年のデビュー作が、今年のアルバム年間チャートに入った(186位、2010年以来の年間入り)ように、彼への支持は厚く、それが新作の数字にも表れたということでしょう。

 

 次に紹介するのはShawn Mendes。デビューから4作連続のアルバム1位を獲得したものの、売上は8.9万で上記のMegan Thee StallionやKid Cudiを下回っています。また、彼にとっても10万未満の売上は今回が初です。昨年は“Señorita”で初のHot 100首位を獲得し、さらなる飛躍への期待感がありましたが、あまり満足の行く成績は得られませんでした。

 

 そしてMiley Cyrus。6.0万の売上で2位。前作の4.5万/アルバム5位よりは成績を盛り返しています。比較的評判が良く、TikTokで密かに人気を得ている曲がちらほら見られるため、来年に収録曲等が注目を集める可能性もある程度考えられます。

 

 

5 短評

 

 今月は外れた曲が多いですが、クリスマス後に特例でHot 100に復活する可能性があります。(昨年からその特例がHot 100に為されました)

 

Harry Styles – Adore You

 12月の初週に外れる。滞在は50週と超ロングヒットでした。この効果で週間ピークは6位ながらも、年間チャートではなんと6位に。

 外れた時期が早く、あまりクリスマス曲とは関係なく外れているため、クリスマス後の復活とは関係無さそうにも思えますが、ポップ系ラジオは年末にその年のヒットのオンエアを再浮上させるため、この恩恵を受ける形でクリスマス後の復活も少し可能性があります。

 

・Pop Smoke – The Woo / Mood Swings

 Pop Smokeのアルバムの収録曲が、リリース後1度も外れることなく20週を迎え、リカレントに。“The Woo”は通常のラジオシングルでしたが、”Mood Swings”は非ラジオシングル。しかしTikTok等で人気を得たこともあり、ストリーミングのプレイリストでは常にシングルのような立ち位置に。結局チャート滞在を全て非シングルのまま過ごし、20週を迎えました。ラジオ抜きながら、年間チャートにも入っています。

 

・Juice WRLD – Come & GO / Wishing Well

 こちらもアルバムリリースから1回も外れず、20週を迎えてチャートから外れました。“Come & Go”は主にポップ系、”Wishing Well”は主にリズミック系と、系統を分けてシングルの同時カットという戦略を取っていました。ただいずれもストリーミングほどの人気は得られず、ちょうど20週でチャートを後にしました。

 

Travis Scott feat. Young Thug & M.I.A. – Franchise

 1位デビューを果たすも、結局は9週の滞在でチャートから外れてしまいました。ストリーミングはそれなりの数字を記録しましたが、彼の今年の他シングルほどでは無かったです。ラジオの数字は他シングルより良い滑り出しでしたが、長くは続かず。

 再び販売戦略による1位が尻すぼみに終了し、この制度で1位を取ることは「1位」のブランド性に値するのか?という疑問が再び突きつけられました。

 

・DJ Khaled feat. Drake – POPSTAR

 8/1に3位でデビューし、その後ラジオ&ビデオなどで再加勢し9/19にトップ10復帰。しかしそこからは勢いを落とし、最終的に滞在が19週と、リカレントまで届きませんでした。リリース後に強く、さらにラジオもガンガンかかるが最終的には尻すぼみ気味、というのはDJ Khaledの曲に見られがちな傾向。

 

・Saweetie – Tap In

 TikTok起点に注目され、ラジオヒットに。ピークが20位と、昨年の“My Type”の21位を1だけ上回りました。しかし滞在は19週とリカレントまで足りず。

 

・Morgan Wallen – Somebody’s Problem

 6位デビューとロケットスタートを切った”7 Summers”のように、彼の新シングルも好スタートを切っています。同時に3曲をリリースし、全てがHot 100入り。メインの“Somebody’s Problem”は25位スタート。前シングル同様、カントリー曲としては珍しくリリース直後からストリーミングで高い人気を誇ります。

 来月にリリースされるアルバムもかなり期待が持てます。リリース時期も良いことから、来年の年間アルバムチャートでかなり上位も見えそうです。

 

・Morgan Wallen – Cover Me Up

 彼はもう一つ驚きの動きが。この3曲のリリースに引っ張られる形で、元からストリーミングで人気を得ていた過去曲もHot 100入りを果たしました。Jason Isbellのカバー曲。久々に見られたストリーミングらしい動き、という印象を抱きました。

 

・The Kid LAROI – WITHOUT YOU

 先月のアルバムデラックス版リリース以降、調子を上げるオーストラリア出身のラッパー、The Kid LAROI。TikTok等の影響を受け、ストリーミングでは自発的なシングルカットが相次ぎ、複数曲が人気に。今月新しく“WITHOUT YOU”がHot 100入りを果たしています。

 彼は自身のアルバムからの曲以外にも、Juice WRLDとのコラボ“Reminds Me of You”もHot 100入り。この2人が共にHot 100入りするのはこれで3曲目。

 

 

今月のデータ

 

主に外れた曲(🗻トップ40以上 / ⏰10週以上)

 

12/5

41 Jason Aldean – Got What I Got (🗻16位 /⏰25週)

49 Harry Styles – Adore You (🗻6位 /⏰50週)

53 Pop Smoke feat. 50 Cent & Roddy Ricch – The Woo (🗻11位 /⏰20週)

61 Pop Smoke feat. Lil Tjay – Mood Swings (🗻17位 /⏰20週)

82 Matt Stell – Everywhere But On (🗻48位 /⏰11週)

88 Conan Gray - Heather (🗻46位 /⏰14週)

89 Money Man feat. Lil Baby - 24 (🗻49位 /⏰14週)

91 21 Savage & Metro Boomin - Runnin (🗻9位 /⏰7週)

92 Sech, Daddy Yankee & J Balvin feat. ROSALÍA & Farruko - Relación (🗻64位 /⏰11週)

96 Saweetie – Tap In (🗻20位 /⏰19週)

98 YoungBoy Never Broke Again – Kacey Talk (🗻50位 /⏰14週)

 

12/12

38 HARDY feat. Lauren Alaina & Devin Dawson – One Beer (🗻33位 /⏰25週)

40 Lee Brice – One Of Them Girls (🗻17位 /⏰26週)

43 Parker McCollum – Pretty Heart (🗻36位 /⏰20週)

60 Juice WRLD & Marshmello – Come & Go (🗻2位 /⏰20週)

78 Travis Scott feat. Young Thug & M.I.A. - Franchise (🗻1 /⏰9週)

80 Megan Thee Stallion – Girls In The Hood (🗻28位 /⏰18週)

91 Juice WRLD – Wishing Well (🗻5位 /⏰20週)

93 Jameson Rodgers – Some Girls (🗻29位 /⏰16週)

96 DJ Khaled feat. Drake – POPSTAR (🗻3位 /⏰19週)

 

12/19

31 Kane Brown, Swae Lee & Khalid – Like That (🗻19位 /⏰21週)

42 Lewis Capaldi – Before You Go (🗻9位 /⏰44)

43 Surf Mesa - ily (🗻23位 /⏰28週)

44 Moneybagg Yo – Said Sum (🗻17位 /⏰22週)

50 Harry Styles – Watermelon Sugar (🗻1 /⏰37週)

 

12/26

44 Jawsh 685 & Jason Derulo – Savage Love (🗻1 /⏰26週)

49 Morgan Wallen – More Than My Hometown (🗻15位 /⏰26週)

57 Blake Shelton feat. Gwen Stefani – Happy Anywhere (🗻36位 /⏰20週)

69 Morgan Wallen – 7 Summers (🗻6位 /⏰17週)

70 Shawn Mendes - Wonder (🗻18位 /⏰10週)

73 Miley Cyrus – Midnight Sky (🗻14位 /⏰17週)

82 SZA feat. Ty Dolla $ign – Hit Different (🗻29位 /⏰14週)

85 Ariana Grande - pov (🗻40位 /⏰6週)

86 Megan Thee Stallion feat. Young Thug – Don’t Stop (🗻30位 /⏰10週)

92 Morgan Wallen – Somebody’s Problem (🗻25位 /⏰3週)

93 BTS – Life Goes On (🗻1 /⏰3週)

94 Polo G – Martin & Gina (🗻61位 /⏰19週)

95 Conan Gray - Heather (🗻46位 /⏰15週)

 

 

アルバムチャートキリ番

 

12/5

1周年:Nat King Cole – The Christmas Song (30位)

150週目:Kid Cudi – Man On The Moon: The End Of Day (154位)

250週目:The Notorious B.I.G. – Greatest Hits (147位)

350週目:2Pac – Greatest Hits (127位)

400週目:Fleetwood Mac – Rumours (36位)

500週目:NirvanaNevermind (137位)

 

12/12

1周年:Roddy Ricch – Please Excuse Me For Being Antisocial (70位)

500週目:Creedence Clearwater Revival – Chronicle The 20 Greatest Hits (85位)

 

12/19

1周年:Justin Bieber – Under The Mistletoe

1周年:Harry Styles – Fine Line

450週目:The Beatles - 1

 

12/26

100週目:My Chemical Romance – The Black Parade (172位)

 

 

・各指標の1位推移

f:id:djk2:20201231021122j:plain

 

・Rolling Stone Chartsのトップ10

f:id:djk2:20201231021148j:plain

 

 

・各週の動向メモ

f:id:djk2:20201231021221j:plain

 

f:id:djk2:20201231021237j:plain

 

f:id:djk2:20201231021253j:plain

 

f:id:djk2:20201231021310j:plain

 

 

・リンク

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

・TokBoard:https://tokboard.com/

Spotify Charts:Spotify Charts

 

 

2020年の毎月号のまとめ

 

 

*1:クリスマス曲のもっと深い考察は来月号でやると思います、多分

My Best Albums 2020

f:id:djk2:20201229213246p:plain

 こんばんは!毎年恒例、ベストアルバムの記事です。まずは選考基準を紹介します。(Tracksの基準と似ていますが、新たに説明を追加した部分もあります)

 

・対象期間はおおまかに2020年。ただし12/25以降のアルバムは来年の選考に回します。

 

・同一アーティストがアルバムを年に複数した場合は、どれか1つに絞って選出しますが、その複数アルバムも評価の参考材料にはしています。

 

・主に「自分の好み」「その曲の影響力/意義」の2大要素で構成されています。比率はやや「自分の好み」に寄っています。「影響力/意義」の部分にはチャート観察で得た見識も存分に含まれています

 

サウンド重視で聞く習慣が強いため、歌詞よりもサウンドにかなり重点を置いています

 

・もちろん作品の質的な高さ、が選考の基準ですが、それだけで絞り切るのは難しいため、「仮に自分がメディアだとしたら、どのような“路線”を推すのか?」という視点を導入しています。わかりやすい話をすると、音楽の質的な高さでは30位前後だと感じたとしても、全体のバランスを考えて外されるような場合もあります。

 例えばNMEは、ジェネラルな視点を導入しつつも、結局ランキングからはNMEイズムのようなものを強く感じるので、イメージ的にはそのような感じです。余談ですが今年のロキノンの年間ベストはそのジェネラル/独自色の使い分けが巧みでした。

 ここで言う「私の路線」を言葉に変えると「アウトサイド/ネクスト・ポップ」みたいなイメージです。あとはもちろん、音楽チャートブログなのでそれも重要な要素の一つではあります。

 

・昨年は各種「グローバルランキング」で、上位ならばどの作品もなるべく平等に扱うべき、という考えが私の中であり、それがある程度ベスト選考にも反映されていました。

 しかしそれは「界」が異なり、全く交わりが無く、同じ音楽というフォーマットを取っていても相互の影響が全く皆無なケースもあるように最近では考えるようになりました。そのため、場合によってはいくらグローバルランキングでは上位と言っても、局地的な受容では、突然違う「界」の話をしだす、考えようによっては突然「議題を変えた」ようなことになってしまうため、昨年ほどディグをグローバルまでは広げず、ランキングの統一感を重視しました。(昨年と今年の考え方、どちらが正しいかの結論は出ないと思いますが、メディアやリスナーの考え方を観察し、今後も柔軟に考えていきたいです)

 

(ここら辺はソングにも当てはまることなのですが、選考している段階で書きたいと感じたので追加しました)

 

・既に完成した物を言葉に直すのは難しく、説明の長さはまちまちです。(上記の通り、サウンド重視で聞いているため、なんとなく「フィーリングが良い」みたいな場合もある)

 

以下ランキングです!Go!

 

40 Polo G – THE GOAT

 昨年のデビュー作で見せたクールなラップスタイルはそのままに、スケール感を拡大することに成功。豪華プロデューサー(Mike-WiLL Made ItとTay Keith)の激しいビートを気鋭のラッパーと共にラップする“Go Stupid”や、アルバムを締めくくる”Wishing For A Hero”などが印象的。複数曲がストリーミングで人気を得たこともあり、長い期間存在感を放っていました。

 

 

39 Ariana Grande – positions

 前作で商業的にも批評的にも頂点を迎えたため、その反動により今作への反応は微妙でした。たしかに商業的にも前作よりは数字を落とし、特別な意義も見出しづらいのは事実ですが、それでも彼女が従来から得意とする、R&B的なセンスを持つ美しいメロディーのポップスという魅力は健在。また前作よりも数字を落としたとはいえ、複数シングルがしっかりヒットしており、次第にこのアルバムの魅力も多く見いだされそうです。

 

 

38 Flo Milli – Ho, why is you here?

 Nicki Minaj、Megan Thee Stallionの初のHot 100首位に湧いた今年。女性ラッパーのスターが格段に増加していますが、その中でもフレッシュで印象的なデビューを飾ったのが彼女。プロダクションに面白さのある1枚です。また“In the Party”や”May I“と複数曲がTikTokでも人気を得ました。来年以降の飛躍に期待。

 

 

37 Rico Nasty – Nightmare Vacation

 Pitchforkによると、「今までの成功を全て突っ込んだような作品でゴチャゴチャしている:74点」だそう。たしかに、「通してのカラー」がややボヤケているような印象もありますが、それでも彼女の鋭いラップやバラエティ豊かなラインナップの魅力が上回るように思います。新境地の“iPhone”が主に注目されました。”Smack A Bitch”のリミックスでは次代の女性ラッパーを複数起用。(ppcocaine, Sukihana & Rubi Rose)

 

 

36 Arca – KiCk i

 「脱構築されたポップスとレゲトンが交差する」というコンセプトの作品。Björk、ROSALÍA、Sophieと豪華かつそれぞれカラーの強い客演を迎え、それらをまとめ上げた作品。ロボットと肉体が融合したようなアートワークも目を引きます。

 

 

35 Yaeji - What We Drew 우리가 그려왔던

 ハウス~ヒップホップのプロデューサー初のミックステープ。韓国系という出自もあり、韓国語/英語を織り交ぜて歌います。アルバムの途中には客演のYonYonによる日本語ヴァースも。多彩なサウンドプロダクションで、彼女の才能を感じる一枚です。登場以来、複数EP→今回のミックステープと来ましたが、今後来るであろうアルバムではどのような姿を見せてくれるでしょうか。

 

 

34 Joji – Nectar

 幅広いフィールドからゲストを迎えつつ、彼のスタイルであるオルタナティブR&Bの幅を広げたセカンドアルバム。“Gimme Love”、”Run”、”Sanctuary”とシングルが連続する中盤は聞き応えあり。Spotify等で高い人気を得る一方、伝統的なR&Bが人気なフィールド、例えばApple MusicやMainstream R&B/Hip-Hopラジオ(かつてアーバン系と呼ばれた)等での反応は極めて薄いですが、それだけ彼のやろうとしていることが挑戦的ということでしょうか。

 

 

33 Run the Jewels – RTJ4

 変わらずの質の高いハードなアルバムを完成させたRun the Jewels。今年はその怒りのようなエネルギーが時勢とマッチしていたこともあり、高く評価されました。Pitchfork曰く、「支配階級や警察を正すためのカムバック」

 

 

32 A.G. Cook – Apple

 少し前に出した約2時間半の”7G”と合わせて、ある意味「2連」のデビューアルバム。温かくアコースティックな“Oh Yeah”など新たな可能性も見せつつ、PC Musicの長が才能を証明する一歩目を踏み出します。

 

 

31 Yukika – Soul Lady

 日本出身のK-Popシンガー(歌唱は韓国語でされている)。元は「けいおん!」等にも出演歴のある声優だったらしいです。そんな複雑な経歴を持つ彼女のデビュー作はシティポップからの影響を感じる1枚で、夜のネオンを連想とさせる綺羅びやかな曲が並びます。海外の批評空間でもそれなりの注目を集めました(AOTYやRate Your Music等の)

 

 

30 Pop Smoke - Shoot for the Stars, Aim for the Moon

 アルバム自体もヒットした上、収録曲もそれぞれシングルとして大ヒットしたPop Smoke。TikTokでの人気が高かったこともあり、ストリーミング上ではかなりの曲が「疑似シングルカット」をされ、非常に愛されている作品だと感じました。SpotifyのRapCaviarでは、アルバムから計8曲がリスト入りを果たしました。*1

 客演の数が多いですが、その豪華なゲストにも押されず、声の魅力によりPop Smokeがアルバムの主役を張り続ける様もこのアルバムの魅力です。

 

 

29 BENEE – Hey u x

 彼女はシンガーと分類されますが、個人的にはラッパーのようなアプローチを感じる1枚。粘るようなボーカルを使いこなし、リズミカルにライム。幅広いフィールドからの客演、そして多様なプロダクションから遊び心を感じる作品です。オルタナティブなフィールドから、ラップの可能性を試しているような作品だと感じました。彼女は今年Jojiのアルバムにも参加しましたが、今後もこのようなクロスオーバーの客演にも期待。

 

 

28 The Avalanches – We Will Always Love You

 年末にリリースされた都合で、あまりメディアのリストには載りませんが、見逃せない作品と感じました。豪華客演と共に、彼らの温かみのある世界観を作り上げます。

 私は2017年のフジロックで彼らを見たのですが、その時に「ボーカルをどうするんだろう?」と思っていたら、ライブ用のシンガー(Eliza Wolfgrammという人)が登場し、力強い歌唱でライブを盛り上げました。その様子がこのアルバムでも再現されているような気がして、なんだか感慨深いです。

 

 

27 Phoebe Bridgers - Punisher

 メディアから高い評価を得たインディー/フォークシンガー。私はこのジャンルにそこまで明るいわけではないですが、そんな私でも楽しむことのできる作品でした。“I Know the End”と”Kyoto”と、複数曲がAOTYの「ベストソング集計リスト」のトップ10に入ったことから分かるように、今後インディーアンセムになりそうな曲も多いです。

 

 

26 The Weeknd – After Hours

 シングルヒットを飛ばし続けたブレイク以降期、そして不気味な雰囲気が強かった初期の合致点をうまく見つけたと好評な作品。ヒット&評価を両立し、今後の彼のキャリアに大きくプラスに働きそうな1枚に。特大ヒットとなった“Blinding Lights”はもちろんのこと、先行シングルで、アルバムの方向性を印象づけた長尺の“After Hours”もインパクトがありました。

 

 

25 Phoebe Ryan – How It Used To Feel

 キュートなボーカルを持つシンガーのデビュー作。台頭からデビュー作まで時間がかかっていたので、何よりもアルバムをリリースできたことが良かったです。個別記事に詳しく書きました:連載⑪ Phoebe Ryanとは? 【デビュー作の役割】|トコトコ (チャート)|note

 

 

24 Kali Uchis - Sin Miedo (del Amor y Otros Demonios) ∞

 今作ではスペイン語で歌唱。やはり言語が変わると響きも変わり、これまでとは違った味を出すことができます。ほかレゲトン的な要素も導入。従来からの魅力と新しい要素が混じり合う作品です。

 

※どの曲をソングの方に選ぼうかなと迷っていたら、ベストアルバムに選んだのに収録曲をベストトラックの方に曲を入れ忘れてしまいました……確認ミス失礼いたしました!“//aguardiente y limón %ᵕ‿‿ᵕ%” を51位相当という扱いにします(ベストトラックの記事にも記載しました)

 

 

23 Don Toliver – Heaven or Hell

 どうしても自身の師でもあるTravis Scottと比較されがちですが、彼のボーカルには独特の魅力があり、その味をうまく活かした曲が並びます。ヒットした“No Idea”や“After Party”のパーティーソングから、ゆったりとした”Cardigan”や”Euphoria”まで、一人のアーティストとしての高い可能性を示した1枚。年の後半には、客演ながらも彼が主役と言っても良い“Lemonade”がヒットを飛ばし、飛躍の時を迎えています。

 

 

22 Lady Gaga – Chromatica

 アコースティックな“Shallow”のヒットからは一転、ダンスポップへの回帰は私含め多くの人を喜ばせました。最大のヒットの”Rain On Me”はもちろんのこと、先行シングルの”Stupid Love”もなかなか好み。あまりヒットしなかったのは残念でしたけど。ほかElton Johnを迎えたSebastian Ingrossoプロデュースの“Shine From Above”も○。

 もう一つ面白いと感じたのは、アルバムでインタールード的な役目を果たす“Chromatica II”がTikTokで人気を得ていたこと。単体での運用が従来は考えづらいインタールードがこのような使用法をされたのはとても興味深いです。アルバムの細部へのこだわりが光り輝いた、ということでもあると思います。

 

 

21 Yves Tumor – Heaven To A Tortured Mind

 ネオサイケデリック・ミュージシャンの新作。ジリジリしたサウンドにどっぷりと浸ることができます。私のお気に入り曲、“Kerosene!”でボーカルを担当している女性シンガーは、Diana Gordon(別名義:Wynter Gordon)という方で、Beyoncéの”Lemonade”にプロデューサーとして参加した経歴の持ち主

 

 

20 Kylie Minogue - DISCO

 キャリアは約40年、そしてこのアルバムは15枚目と大ベテランと呼べる域に入るシンガーですが、今回も非常に高いダンスポップを提示し、我々を非常に楽しませてくれました。

 アルバムの名前の通り、ディスコ系のポップスが並ぶ作品。特別メディアに取り上げられそうな新奇性があるわけではないですが、とても楽しめるアルバムでした。彼女はUKでの人気が高く、2作連続8枚目のアルバム1位獲得。

 

 

19 070 Shake – Modus Vivendi

 2018年に続けてリリースされたKanye West関連作品で大きな存在感を放ったG.O.O.D Music所属のシンガー/ラッパー。そこで披露したボーカルやラップ、そして骨のあるサウンドプロダクションと融合。その中で“Guilty Conscience”が特に際立つ曲で、Dummyというサイトの「将来のカラオケクラシック」という評が好きです。

 

 

18 Mac Miller - Circles

 訃報後初のアルバム。ふやけるような彼のボーカル、そして淋しげなプロダクションが合わさって、味があり染み渡る世界観が広がる1枚。Eminem、Halseyと競合が激しい週のリリースながらも高いストリーミング人気を得て、10曲がHot 100入り。USアルバムチャートでは3位だったものの自己最高売上を記録しました。

 

 

17 Hayley Williams – Petals for Armor

 Paramoreのボーカリストによるソロデビュー作。バンドメンバーのTaylor Yorkプロデュースの元、広い方向性を試みつつも、彼女のボーカルの魅力は健在。“Sudden Desire”ではジリジリとしたプロダクションに、彼女の叫び声が響き渡ります。

 

 

16 Chloe x Halle – Unghodly Hour

 R&Bデュオ。プロダクションの幅を大きく広げ、スケールがグンとアップ。R&Bアンセム“Do It”はTikTokの恩恵も受け、ヒットに。リミックスでの女性ラッパー大集合(Doja Cat、City Girls、Mulatto)も素晴らしかったです。ほか、その”Do It”から続く4~6曲目(“Tipsy”と”Unghodly Hour”)、そして最終曲の“ROYL”あたりが印象的でした。

 

 

15 Ava Max – Heaven & Hell

 ダンスポップの新星として2018年末から登場。以降一貫してダンスポップへの挑戦を続け、2020年ついにアルバムリリース。瑞々しいダンスポップ曲が多く並び、私のようなダンスポップ愛好家にとってはまさに「夢の国」。あまりアーティストとしての注目度は高くないですが、彼女の行っていること、そしてそれを確実にヒットに結びつけていることはもう少し評価されても良いと考えています。

 

 

14 Dorian Electra – My Agenda

 メディアやAOTYのレビューを見ると、「掴みどころが無く混乱させる点が長所」のような記述が多く見られました。Hyperpopを超えた「カオス系ポップ」の領域。ですがうまくまとめられており、作品全体も不思議と高いです。

 Pussy Riot、Village Peopleと独自の客演で私が一際目を引いたのはRebecca Black。2011年にリリースした“Friday”がかつてJustin Bieberの”Baby”とYouTubeの最多低評価数争いをしていた彼女。彼女はJustin Bieberほどは有名ではないので、人に対するヘイトではなく、本当に曲が質的に批判されているのだと思います。

 逆にそういう評価から私は興味を持ち、以前からちょくちょく聞く曲だったのですが、感想は一貫して「今でも未来の曲に聞こえる」というものでした。「いつか評価されたら面白いなぁ」と思っていたところ、それが思ったよりも早く来てびっくりした、というわけです。

 Dorian Electraのレビューなのに、Rebecca Blackの話ばっかりしてすいません!

 

 

13 Megan Thee Stallion – Good News

 昨年以上にヒットを飛ばし、今年の顔となったMegan Thee Stallion念願のデビュー作。遊び心あるビートが並び、“Body”、”Cry Baby”とラジオシングルでは無いながらも、TikTokで人気を得てストリーミングでシングルのような地位を確保する曲も。それだけ魅力的な曲が多いということでしょう。

 競合が強く(BTS)、アルバム1位は獲得出来ませんでしたが7曲がHot 100入りなどストリーミングで人気。ヒットの面でも結果を残し、スターであることを受容/質の両面から証明した1枚であると言えます。

 初の首位となった“Savage”はもちろんのこと、個人的には”Don’t Stop”がお気に入り。バキバキしたプロダクションが際立つシングルです。(アルバムの配置的に、ボートラ的な扱いかもしれませんが)

 

 

12 Fiona Apple - Fetch the Bolt Cutters

 久々のアルバムリリースで健在ぶりを示し、今年最も高い評価を得た作品。自らの飼い犬がクレジットされるなど、プロダクションの多芸さという「アートポップ的要素」以外にも、迫力のようなものもこのアルバムの魅力の一つだと思います。

 

 

11 Perfume Genius – Set My Heart on Fire immediately

 終始美しい作品。アルバムを通した時の「読後感」ならぬ「聴後感」という観点では今年屈指の存在です。正直申すと、私はこのアルバムをうまく説明する語彙を持ち合わせていないのですが、そのような人間でも上位に入れたくなるような魅力がある作品ということです!

 

 

10 HAIM - Women in Music Pt. III

 とにかくアベレージが高いと感じた作品。Best Tracksのほうで書いたように、いくつものベスト収録曲候補がありました。そこで選んだ“Up From A Dream”のほか、“3AM”や”Another Try”あたりも良かったです。統一感/完成度が高い中にも、幅広さのようなものも見られた作品だったと思います。

 

 

9 Taylor Swift – folklore / evermore

 The NationalのAaron DessnerやBon Iverを制作に迎え、インディー調でアルバム志向路線に振り切ったことが大きな話題を読んだTaylor Swift。そんな新境地でも彼女のソングライトの才能は輝き、質の高い作品に。売上でも優秀な数字を残し、再生数(週間)はUS2億超え。複数アルバムで2億を超えた唯一の女性アーティストです。

 年末には姉妹アルバムの”evermore”もリリース。このアルバムも負けず劣らず良い作品でした。むしろ私含めてこちらの方が好きな人も多いかも。この作品の存在により、私のベストアルバム企画では順位を上げました (ちなみにこちらも2億再生超えを果たしています)

 

 

8 21 Savage & Metro Boomin - Savage Mode 2

 4年ぶりのシリーズ2作目。2人の相性の良さは健在で、従来からのダークなプロダクションを存分に味わえます。さらにそれだけではなく、シングルとして存在感を放つ“Mr. Right Now”、スクラッチする”Steppin on Ni**as”、そして最後の甘美な”Said N Done”など、異なるムードの曲を差し込むことで、緩急をつけて、全体の完成度を大きく高めている点が素晴らしいです。

 

 

7 Tame Impala – The Slow Rush

 前作と比べるとギターの割合が減り、サイケ度が増したとの評。悪くはない評価を得ていますが、前作ほどの評判は得られず。私はその路線の象徴である“Posthumous Forgiveness”がたいへんお気に入り(昨年のベストトラックで7位に選出)だったため、この作品も非常に好みでした。

 もちろん前作“Currents”の壁は高いですが、この作品の魅力も多いように思います。際立つ”Posthumous~“のほか、アルバム先頭トラックの役目を高水準で果たす”One More Year”がお気に入り。

 

 

6 Lil Uzi Vert – Eternal Atake

 前作から3年ぶり。ファンが渇望した作品がついにリリース。1週目にリリースされた“Eternal Atake”は、ゲストは最小限に抑えられ、彼のボーカルや世界観の魅力を全面的に押し出された作品になっています。そんな彼の世界観にリスナーは熱狂し、歴代で5番目に高い、4億再生をリリース週に記録しました。

 個人的にこの作品をインディー系シンガーのようなものと捉えています。まず、最小限のゲストとボーカルや世界観を重視した作風という質的な要素。そしてシングルヒット(主にラジオでの)が少なく、彼が「アーティスト」という単位で突出した存在であるということ。Hot 100エントリーも大量にあるので、意外と感じるかもしれませんが、彼はシングルヒットが近年はとても少ないです。その理由はラジオでほとんどかからない点にあるのです。

 このようにラッパーで、シングルヒット無くともアーティストでの存在感は突出するインディーアーティストのような売れ方をするのは非常に面白いと感じました。

 あと触れられない気がしますが、ラッププロジェクトと思わしき2枚目もなかなかお気に入りです。

 

 

5 Bad Bunny – YHLQMDLG

 スペイン語作品ながらも、Spotifyで今年最も再生されたアルバムに輝きました……この事実がこの作品の際立つ功績であるように思います。おそらく今後も続くであろう英語曲/非英語曲の枠組み破壊という歴史を語る上でベンチマークとなりそうな作品です。USでも2億再生超え/11曲がHot 100入りするなど大きくヒット。USでも大きな存在感を示していることは、メディアにも高く評価される要因の一つだと推測しています。(「グローバル」のランキングでヒットしていても、人気が特定のエリアに集中しているとメディアにそんな取り上げられないので、「真にグローバル」になるにはUS人気が必要という仮説)

 ゲスト少なめで統一感が重視された前作からは一転、今作は各シングルが際立つパーティー作品に。“Safaera”を筆頭に、彼がミニスカートやブーツを履くビデオが印象的だった”Yo Perreo Sola”、このジャンルを常に牽引してきたDaddy Yankeeとのコラボとなった“La Santa”など、単体でのパワーは前作より力強いです。このシングルのパワーがヒットを大きく牽引したのは確かでしょう。

 分量的にやや長い気もしますが、終盤の“Hablamos Mañana”~”<3”の締めくくり方は見事で、「聴後感」をとても良くします。

 彼はこの作品以外にも、アルバムから漏れた曲を集めた“LAS QUE NO IBAN A SALIR”、そして年末に“EL ÚLTIMO TOUR DEL MUNDO”と別のアルバムもリリース。こちらも人気を集めました。“EL ÚLTIMO~”は”X 100PRE”期イズムも感じられる作品。

 

 

4 Rina Sawayama - SAWAYAMA

 新潟出身、イギリス育ちのシンガー。2017年にリリースしたEP、“RINA”で高い評価を得ると徐々に注目度が向上。念願のデビュー作となった今作では、その高い期待度を上回る出来を披露し、各メディアで絶賛。スターとなりました。

 ニューメタルやR&B的な要素を取り入れた、ハイブリッドなポップス作品。怒りを表現した先行シングルの“STFU!”や”XS”がニューメタル的、“Bad Friend”や”Akasaka Sad”がR&B的。Pitchfork曰く、ここでのニューメタルに当たる部分はEvanescence等で、R&B的なポップがBritney Spears等のため、Y2Kフラッシュバックだそう。

 このようなユニークな所からインスピレーションを得て完成したアルバムは、自身の素質を伝えるというデビュー作の役割を高次元で果たしています。

 

 

3 Dua Lipa – Future Nostalgia

 ディスコ的なテーマを元に、色鮮やかで個性あふれ曲が並び、それでいて統一感もバッチリ。売上と質の高さを高次元で両立したこともあり、早くも2020年代を代表するアルバムになった気がします。

 シングルがカットされれば、どれも逃さず人気に。正直シングルだった“Braky My Heart”が弱く感じるくらい(?)には、シングル候補の層がとても厚いアルバムです。(”I Wanna Stay At Home”の部分が時勢にめちゃくちゃ合っていたので、シングル選定自体は必然な気がしますが)

 このアルバムはフォローアップも面白かったです。Missy ElliottMadonna等のシンガー、ハウス系プロデューサーを多く呼び寄せたClub Future Nostalgiaでは曲間をつなぐミックス仕様で、クラブの空気感を再現。

 ほかフランスのシンガーAngèleとコラボした“Fever”もリリース。自らの境界を広げる意欲的なコラボレーションを多く実行しました。

 

 

2 Charli XCX – how i’m feeling now

 私は密かに、アルバムには点数を付けていて、今年の1位とも前作(昨年1位)とも同じ点数です。ほぼ同率1位みたいなものです。

 感染症に苛まれる状況を鑑みて急遽リリースが決まった今作は、ファンとのミーティング(私が普段見ているStan Twitterみたいな人が会議に参加していた)も経由して完成。「この状況下にアーティストが出来ること」への一つのアイデアとして、素晴らしいものを提示したと思います

 このように短期間で作られたものの、アルバム自体は安心と信頼の高品質。昨年のスタジオアルバムよりも「鋭さ」や「パワー」のような物は増していています。最初の曲からいきなり飛ばし、そして後ろ2曲で激しく終わるという配置もナイスです。

 最近のアルバムは、デラックス版等その後にフォローアップをリリースすることが多いですが、この作品では自身のDJイベントを音源化した物をリリース。これが素晴らしかったです。(Apple Music限定みたいですが)

 

 

1 Poppy – I Disagree

 前作で垣間見せたメタルポップを、メインテーマに据えたのが今回の作品。統一感/聴後感のようなものが特に優れており、アルバム全体のパワーは個人的には今年屈指、いや歴代有数でした。メタルというパワーのある音楽を軸に、曲単位でも強/弱を使い分けることで、通しで聞いた時の強度と聞きやすさを両立。そして終盤にかけて次第にムードある曲へとシフトしていくことで、理想的なアルバムの締め方をしています。前半では“Concrete”と“BLOODMONEY”、後半では”Sick of the Sun”が印象的。

 また、このアルバムを通しての完成度こそが、おそらく誰もが比較対象として持ち出すBabymetalとの大きな違いだと考えています。彼女らはライブアクト(?)ということが関係しているのか、アルバムではシンガロングを目指すような曲が多く並んでいます。(「META!メタ太郎」が個人的に好みでした)ただ、そのような結果なのか曲ごとにプツプツ切れるような印象があり、アルバムを通すには向いていないと感じるのです。

 メタル+ポップという組み合わせ自体はBabymetalが確立したものかもしれませんが、メタル+ポップを「アルバム」に落とし込んだという点でPoppy、そしてこの作品から特筆すべき点を感じたのです。

 

 Poppyは今年アルバム外でも精力的に活動。自身のメタルポップスタイルを用い、“All the Things She Said”や”Pokemon Theme”をカバー。そのチョイスに私は大喜び。さらに、このアルバムとは違うスタイルのノイズアルバムもリリース。アーティストとして様々なことに挑戦しています。この革命的なポップシンガーに、もう少しスポットライトが当たればなぁ、と私は考えました。

 

 

今年の選出アルバムをまとめた画像

f:id:djk2:20201230183344p:plain

 

 

ベストトラック編!

 

 

*1:Make It Rain, The Woo, For The Night, Creature, Aim For The Moon, Got It On Me, Mood Swings, Hello。これ以外にも“What You Know Bout Love”がポップ系のToday’s Top Hitsに入っています

My Best Tracks 2020

f:id:djk2:20201226195231p:plain

 こんばんは。毎年恒例、私のベストトラックを発表します。ランキングの前に、選考基準を紹介します。

 

・なるべく2020年の曲を選びますが、厳密には定めず、昨年の曲を選んでいる場合もあります。12/25以降のリリースは対象外です

 

・主に「自分の好み」「その曲の影響力/意義」の2大要素で構成されています。比率はやや「自分の好み」に寄っています。「影響力/意義」の部分にはチャート観察で得た見識も存分に含まれています。

 

サウンド重視で聞く習慣が強いため、歌詞よりもサウンドにかなり重点を置いています

 

・おそらくこのような企画の中で、最もTikTokヒットに肯定的/寛容(?)な気がします

 

・あまり上手く説明できないけれど、リストには入れたいみたいな場合も多いので、コメントは基本的に手短です。なんというか、既に完成しているものを敢えて言葉に直すって難しい作業ですね。ただし長く説明したい曲もあるので、その場合は表外に補足を付けています。(黄色背景の曲)

 

・説明等に参照した、メディアのベストソングリストのまとめ:https://www.albumoftheyear.org/songs/best/2020/

 

・プレイリストは最後に載せています

 

 

・100位~51位

アーティスト ひとことコメント
100 Jawsh 685 & Jason Derulo Savage Love 鮮やかなプロモーション (補足)
99 Jack Gilinsky feat. Don Toliver My Love Justin Bieberがやりたかった?ことを本家よりも巧みに体現したと個人的に感じた曲
98 The Neighbourhood Lost in Translation 今年過去シングルが再注目*1。そんな彼らの最新作より
97 LiSA cancellation グローバル8位!? (補足)
96 AJ Tracey Hikikomori 興味深いテーマ。彼のEPには”Yumeko"という曲も
95 The Killers feat. k.d. lang Lightning Fields 魅力的なボーカルが響く
94 Unghetto Mathieu Plastic いわば"Barbie Girl"版の”That Way"
93 Kero Kero Bonito It's Bugsnax! Kero Kero Bonitoのサウンドが存分に味わえる、ゲーム向けの曲
92 Grimes My Name is Dark 今作はダークなムードが漂うカナダの鬼才
91 MORGENSHTERN ICE TikTokを通してロシアの覇権ラッパーがUSに。独自のマンブル&ハードなサウンドが特徴
90 Romy Lifetime The xxメンバーの、ソロデビュー曲
89 Octavian & Skepta Papi Chulo ”Old Town Road"のプロデューサー、Young Kioを迎えた耳馴染みの良い曲
88 Awich feat. NENE Poison Consequence of Soundが"Shook Shook"をBest Songリストに選んだ沖縄のラッパーAwich。個人的にはこっちの曲の方が印象的でした
87 Gorillaz feat. Beck The Valley of The Pagns 信頼のGorillazBeck
86 TWICE UP NO MORE 新機軸のダンスポップを提示したTWICEの新作で光る1曲
85 Juice WRLD Righteous 最初は地味だと考えていましたが、次第に染み渡った訃報後初のシングル
84 Lil Baby & 42 Dugg We Paid 新星42 Duggと共に、個性を出し合うヒット
83 Taylor Swift gold rush "folklore"の姉妹アルバム、"evermore"より
82 SZA feat. Ty Dolla $ign Hit Different R&B界を牽引する2人のタッグ
81 JUJU & Loredana feat. Miksu / Macloud Kein Wort 今年の前半に、女性ラッパー同士のタッグでドイツ1位を獲得
80 Calry Rae Jepsen Now I Don't Hate California After All 彼女の作る曲の層の厚さを感じる、”Side B"より
79 XIX Kismet メインストリームとは一味違う、Alt TikTokという界隈が発掘した曲
78 Bad Bunny HOY COBRÉ X100 PRE期っぽさも感じる今年2枚目のアルバムより
77 Chris Stapleton Cold 他のカントリー歌手とは大きく異る空気を放つ彼
76 Jessie Ware Soul Control これも今年高く評価されたディスコアルバムの一つ
75 Kehlani feat. James Blake Grieving R&B色が強い今作において、独自の声を他のフィールドから導入
74 Oneohtrix Point Never Long Road Home 荘厳なエレクトロニックとして高い評価を得る
73 The Used To Feel Something ポップパンクバンドの最新作より。絶叫のボーカルが輝くアルバムラスト曲
72 jxdn Angels & Demons TikTokerの曲…… (補足)
71 Cardi B feat. Megan Thee Stallion WAP 批評メディアで圧倒的な支持…… (補足)
70 Allie X June Gloom インディーポップシンガーの2枚目より
69 青葉市子 Porcelain 年末リリースでリストにはあまり入りませんでしたが、海外からの評価がかなり高いフォークシンガー
68 Rina Sawayama Who's Gonna Save U Now? 氏のアルバムからのお気に入り③
67 K/DA & Maddison Beer feat. Kim Petras VILLAIN 今年の曲の中でKim Petrasのボーカルが最も光る曲。このEPのコンセプトも面白いですね
66 Charli XCX party 4 u 私も行った2017年の日本のイベントで初公開された曲らしい。長い時間をかけて正式リリース
65 Troye Sivan Take Yourself Home 物憂げな雰囲気からの後半の歪な展開へのチェンジアップが印象に残る曲
64 Tkay Maidza You Sad ミックステープでは様々な色を見せた、4ADのラッパー
63 ppcocaine Ddlg TikTokで台頭。クィアラップの新星とも称されるタレント
62 Travis Scott feat. Young Thug & M.I.A. FRANCHISE 1位曲の割に影が薄いですが、私はM.I.A.が再び活躍をする所を見られて嬉しいです
61 Dua Lipa Love Again 氏のアルバムからのお気に入り③ もう一つは昨年選んだ”Don't Start Now"
60 Run the Jewels feat. Greg Nice & DJ Premier ooh la la 鋭さに磨きがかかる、ラップデュオ
59 Bad Bunny, Duki & Pablo Chill-E Hablamos Mañana アルバム全体の印象を大きく変える、終盤のパンキッシュな1曲
58 Megan Thee Stallion feat. Young Thug Don't Stop アルバム内の配置からしてボートラ的存在かもしれませんが、Hyperpopとも言えるプロダクションが印象的な曲
57 Lil Uzi Vert & 21 Savage Yessirskiii 2枚組の、ラッププロジェクトと思しき方の作品より
56 Flo Milli Pussycat Doll 気鋭の女性ラッパーの作品より
55 Rico Nasty IPHONE ラップとプロダクション、2つの鋭さの融合
54 Arca feat. ROSALÍA KLK レゲトンの新しい姿を目指す
53 Powfu feat. beabadoobee death bed Pitchforkの予言… (補足)
52 A.G. Cook Oh Yeah PC Musicの長の(2連の)デビュー作より。温かいサウンド
51 CJ Whoopty ボリウッドをサンプリングのドリル曲。現在チャートで躍進中、来年さらにヒットにも期待

 

追記:私の確認ミスにより、Kali Uchisの楽曲を入れようとしていたものの、入れ忘れてしまいました。“//aguardiente y limón %ᵕ‿‿ᵕ%”を51位相当だと思っておいてください……!(プレイリストには入れました)

 

 

~補足~

 

100 Jawsh 685 & Jason Derulo – Savage Love

 曲の質的には正直物足りなさも感じるのですが、そのプロモーションの見事さから、紹介すべき曲と考えました。Jason Derulo有名アーティストの中でも熱心にTikTokに取り組み、そこで人気を獲得。そしてTikTokでヒットしていたインスト曲にボーカルを乗せた曲をリリースすると大ヒットに。US、UK、ドイツと主要国で1位を獲得。

 キャリアのあるシンガーが若者の新しい文化に熱心に取り組み、それが最終的に自身の本職にもプラスをもたらすという素晴らしい結末に。

 後にBTSとのリミックスでHot 100首位も獲得。最初から最後までプロモーション戦略の巧みさが際立ちました。

 

97 LiSA – cancellation

 新設されたBillboard Global 200では8位を獲得したLiSA。ヒットの分布を見ると、東アジアに偏っており、「グローバル8位」の字面のイメージとは少し異なるとは思うのですが、それでも彼女には海外ヒットを期待させるような可能性はあると考えています。

 アニメという世界中で愛されるフォーマットに加え、力強いポップパンク系の音楽スタイルという2つの個性は海外圏にも馴染みやすいと考えています。個人的に「ポップパンク」という部分に評価の重点を置いているため、ポップパンク成分が薄いと感じたグローバル8位の「炎」より、彼女のアルバムに収録されていたこの曲を選びました。

 

72 jxdn – Angels & Demons

 有名TikTokerのロックエナジー溢れるデビュー曲。彼はBlink-182のTravis Barkerのレーベルに所属し、この楽曲にも彼がクレジットされています。

 VineのShawn Mendesなど、ネットのプラットフォームの有名人が歌手デビューするのは別に珍しいことでは無いのですが、TikTokではそのサイクルの1周目から彼のようなタイプが存在するのは大変興味深いです。

 

71 Cardi B feat. Megan Thee Stallion – WAP

 その「女性による下ネタエンパワメント」には意義があり、大きくヒットしていたことから、今年を象徴する曲の一つという点に関しては疑問の余地が無いです。ただし、ここまで批評メディアの評価が高いのはかなり不思議でした。PitchforkRolling StoneNMEと大手メディアが軒並み今年のベストソング1位に認定しています。

 上記のような点では意義はありますが、両者にとっても初のHot 100首位ではないし、「女性ラッパー同士の首位曲」もビルボード曰く、“Say So”の方らしいです。また初期からストリップ出身という出自を誇っていたCardi Bがこのような系統の曲をリリースするのは驚きではないお感じるので、各メディアで「軒並み」「独走」になるのはやはり不思議です。

 そして曲の内容的にもMegan Thee Stallionのラップの上手さ以外は、さほど特筆すべき物を個人的に感じなかったので、このくらいの順位にしました。

 あとすごく個人的な感想になるのですが、このタイプのヒットはすぐにメディア等に承認されるよりも、民衆の間で長く支持をされ続け、数年後にようやく認められるみたいな流れの方が似合う気はします。

 

53 Powfu feat. beabadoobee – death bed

 Pitchforkは「2020年代に起こること」という記事において、Lo-Fi Hip-HopがUSでナンバーワンのジャンルになると予言。仮にそれが実現するとなれば、間違いなくジャンルのベンチマークとして語られ続けるであろう1曲。(実現するかは分かりませんが)

 

 

50位~1位

アーティスト ひとことコメント
50 BTS UGH! Hot 100初の首位など今年も大活躍した彼らのリリースの中で、格が違うと感じた曲
49 Phoebe Ryan A Thousand Ways キュートな歌声を持つシンガーのデビュー作より
48 Yaeji feat. Nappy Nina MONEY CAN'T BUY ハウス~ヒップホップのプロデューサー、初のミックステープから
47 Ariana Grande 34+35 彼女のボーカルが映える、R&B的センスもある美メロディーなポップス
46 YUKIKA Soul Lady シティポップを導入した、日本出身K-Popシンガーの光り輝く1曲
45 Don Toliver feat. Travis Scott & Kaash Paige Euphoria 彼のボーカルの「味」を活用し、引き込まれる雰囲気を持つ曲
44 Ashnikko Daisy 力強さを見せる1曲。ロック的要素も感じるラップ曲
43 BENEE feat. Grimes Sheesh アルバムでは様々な方向性を試みたBENEE
42 春ねむり Pink Unicorn ポエトリー&パンクなサウンドで、エネルギーの強さを感じる彼女
41 100 gecs feat. Fall Out Boy, Craig Owens & Nicole Dollanganger hand crushed by mallet (Remix) 激しさという観点では今年屈指の存在。Fall Out Boyを迎え、パンクに曲を進化させる
40 Rina Sawayama Bad Friend R&B的エッセンスも見せたデビュー作
39 Charli XCX visions アウトロで魅せる1曲
38 Miley Cyrus feat. Stevie Nicks Midnight Sky (Edge of Midnight) Andrew WattとFleetwood… (補足)
37 LIL NAS X HOLIDAY キャッチーな曲。曲単位というよりは、LIL NAS Xという存在への期待感からチョイス
36 Phoebe Bridgers I Know the End 今年屈指のインディーアンセム
35 The Chicks Gaslighter 10年以上のブランクを経ての復活を力強く印象づける1曲
34 The Avalanches feat. MGMT & Johnny Marr The Divine Chord The Avlanchesの温かみあるサウンドを、豪華客演と共に
33 Hayley Williams Sudden Desire アルバムでは様々な取り組みを見せる中で、光り輝く彼女のボーカル
32 Kylie Minogue Say Something 変わらず素晴らしいダンスポップを生み出す、名シンガー
31 Shygirl FREAK 破壊力のあるサウンドを見せつけたUKのプロデューサー
30 Yves Tumor Kerosene! サイケデリック・ロックバンドの新作より
29 Bad Bunny Yo Perreo Sola この曲のビデオの彼の姿を見て、彼に魅了された人も多いと思います
28 HAIM Up From A Dream HAIMの新作より。どの収録曲も粒ぞろいで、曲を一つに選ぶ作業で迷いました
27 Christine and the Queens People, I've been sad 今年の時勢/感情がうまく表現されているとの評
26 Joji Gimme Love ポップ→甘美なバラードへのスイッチが魅力的
25 The Weeknd After Hours アルバムの方向性を知らしめた長尺の先行曲
24 Tame Impala One More Year アルバムの世界観へと誘う、完璧な1曲目
23 Lil Uzi Vert That Way 名曲を現代に蘇らせる
22 Pop Smoke feat. 50 Cent & Roddy Ricch The Woo 今年大活躍のPop Smoke… (補足)
21 21 Savage & Metro Boomin Runnin 4年ぶりのシリーズ2作目より。2人の相性の良さは色褪せず
20 070 Shake Guilty Conscience シンガーのデビュー作で、ひときわ大きな輝きを放つ1曲
19 Mac Miller Blue World アルバムの深淵へと誘う少し不思議な世界観。Disclosureがプロデュース
18 Chloe x Halle Do It 今年屈指のR&Bアンセム。女性ラッパー大集合のリミックスもナイス
17 Fiona Apple Newspaper アルバムで一番迫力を感じた曲
16 Dorian Electra feat. Rebecca Black Edgelord Rebecca Blackという意義深いゲストを担ぎ出す
15 Polo G, Stunna 4 Vegas & NLE Choppa feat. Mike-WiLL Made It Go Stupid 2人の豪華プロデューサー(Mike-WiLLとTay Keith)の元、3人の気鋭ラッパーが大きく躍動
14 Lady Gaga & Ariana Grande Rain On Me 今年の暗い状況を打破するために、光り輝く「明るいヒット曲」
13 Doja Cat feat. Nicki Minaj Say So "Savage"と共にHot 100首位を争い、今年の女性ラッパー大活躍を印象づける
12 Perfume Genius Jason 美しさという点で傑出した存在
11 Taylor Swift feat. Bon Iver exile 彼女の今年の方向性を象徴する曲
10 Ava Max Kings & Queens ここ3年のダンスポップの星 (補足)
9 Lil Uzi Vert You Better Move 昔のウィンドウズのピンボール… (補足)
8 Rina Sawayama Akasaka Sad アルバムの中で最も印象的な曲。日本語の組み込み方が非常に巧み*2
7 Dua Lipa Physical USでは非シングル設定も、その存在感・影響力は格別
6 Poppy BLOODMONEY 破壊力は随一。*3
5 Charli XCX claws 先鋭さ、ポップさが高次元で融合
4 Troye Sivan Easy 個人的今年屈指のアンセム系。Kacey MusgravesとMark Ronsonを迎えたリミックスも◎
3 Bad Bunny, Jowell & Randy & Ñengo Flow Safaera 声に特徴のある客演を従え、絶え間ない最高のパーティーレゲトン曲を完成させた
2 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé Savage 今年のヒット曲で最も際立つ… (補足)
1 100 gecs feat. Charli XCX, Rico Nasty & Kero Kero Bonito ringtone それぞれのボーカリストが個性を発揮し、最高のポップソングが完成

 

~補足~

 

38位 Miley Cyrus feat. Stevie Nicks – Midnight Sky (Edge of Midnight)

 評価も高かった1曲。純粋に曲としても良いと思いますし、何より今年再注目されたFleetwood Macのボーカル、Stevie Nicksをリミックスで呼び寄せた点も個人的にはポイントが高いです。

 その彼女らの“Dreams”なんですが、Rolling Stoneが今年の曲では無いにも関わらず、今年のベストリストに入れていたのが面白かったです。

 ちなみに、彼女は長いことAndrew Wyattと組んで曲をリリースしてきましたが、この曲ではAndrew Wattとタッグ。Wattは現行シーンでヒットを「量産」していますが、ここまで批評家に評価されるのは少し珍しいような気がします。

 

22 Pop Smoke feat. 50 Cent & Roddy Ricch

 アルバムは大ヒットし、複数シングルが人気を得て自らの才能を証明したPop Smoke。その収録曲の中でも、彼のボーカルが輝いていると感じたのでこの曲をチョイスしました。

 私はその活躍ぶりから、Pop Smokeはアルバム/シングル共に批評家のリストに多く掲載されるかと考えていましたが、さほど取り上げられず。特にこの曲は同じく今年大活躍のRoddy Ricchもいるので、「昨年はRoddy Ricchを取り上げなくてゴメン!」というニュアンスも同時に出せるので、批評メディアの間で需要があるかな?とも考えていたのですが、それをしたい場合は普通に昨年末の”The Box”を選ぶようですね。(Pitchforkは両方選んでいます) 

 “The Box”はかなり年末のリリースだったので、今年のリストに入るのもまあ納得ではあるのですが、今年のリストではこれ以外に、昨年11月リリースの“Blinding Lights”がかなり多くのリストに取り上げられました。他に昨年10月リリースの”Don’t Start Now“も。

 私は「去年の先行で外したのに!後出し厳禁!」ということが言いたいのでは全くなく、それだけ現行の批評メディアが曲の受容、つまりはヒットチャート的要素を重視していることが伺えるな、という発見を伝えたかったのです。

 

10 Ava Max – Kings & Queens

 現代では珍しさも感じる、ダンスポップを極め続けるAva Max。その彼女が見せたロック成分を含有した新境地。地道に勢力を拡大していき、USのラジオでは“Sweet but Psycho”以上のヒットに。あまり注目されませんが、ポップスに新鮮さをもたらしつつ、ヒットも安定して飛ばし続ける彼女の活躍に私は大きな拍手を贈りたいです。

 

9 Lil Uzi Vert – You Better Move

 私は彼と同じ1994年生まれ、ということもあってなのか、この曲でサンプリングされたウィンドウズのピンボール効果音はノスタルジーのツボにドンピシャでした。客演が少なく、彼の世界観/ボーカルを全面に押し出した“Eternal Atake”のハイライトだと感じました。

 ちなみに歌詞には遊戯王も登場しますが、残念ながら私は遊戯王をやったことは無いです。周りの人はけっこうやっていたので、「世代」ではあるのですが。

 

2 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé – Savage

 各メディアのベストリストが出るまでは、この曲が“WAP”的な立場になると思っていました。この曲もかなり評価は高いですが。

 この曲はMegan Thee Stallionにとって初の首位(かつ初のトップ10)。さらに今年メインストリームで最も盛り上がった感じた瞬間は“Savage”対”Say So”のHot 100首位争いと思っているので、そこに参加した“Savage”はやはり意義があるかなと感じました。両者のラップの巧みさも際立ちます。

 

 

プレイリスト

Spotifyは無料会員がプレイリストを作ると、違う曲をリストに勝手に入れるようになったので、今回は無しで😅

 

 

 

ベストアルバム編

 

*1:"The Sweater Weather"は今年過去最大のOn-Demand Streamsを記録

*2:余談なんですが、非日本語圏のリスナーの中には、”Alaska Sad"と思っている人もいるらしいです

*3:2019年11月のリリースですが、アルバムまでこの曲を聞かないようにしていたので、今年の選考に入れています

Billboard Hot 100 Year-End / 年間チャート・2020を10のポイントで見る

f:id:djk2:20201214153911p:plain

 

 12月初旬に発表されたビルボードの年間チャートを振り返っていこうと思います!年間チャートは以下のリンクから閲覧できます。

 2019の11/23付~2020/11/14付のチャートまでが集計期間と考えられています。(=2019の11/15~2020の11/5までの動向が集計の対象)

 

Hot 100:Hot 100 Songs - Year-End | Billboard

アルバムチャート:Billboard 200 Albums - Year-End | Billboard

Year-End窓ページ:Charts - Year End | Billboard

 

 

 

 

1 奇妙な週間順位と年間順位の関係

 まずは総括的なテーマから始めます。年間チャートを見る意義として挙げられるのは、「総合的なヒット度」を一挙に確認できるということです。「週間チャートで1位を獲得!というニュースは聞いたけど、その後はどうなったの?」、「逆に目立ってないけどじわじわヒットしていた曲は無い?」のような点が年間チャートでは可視化されます。

 近年は週間ピークとその後のヒット具合が一致しないことも多く、この年間チャートを確認する意義は大きいと考えていたのですが、今年は特に週間順位と年間チャートの順位の乖離が大きく、その意義が際立つ年になりました。

 週間と年間の順位がここまで離れた理由は主に2つあります。1つ目は今年チャートを席巻した「販売戦略」です。これは特定の週に曲の購入を呼びかけ、圧倒的なセールスパワーによってHot 100首位の座を「狙いに行く」というものです。

 現在セールスのアベレージは低いものの、依然Hot 100でのセールスのポイントは重めに設定*1されているため、セールスをある程度稼ぐとストリーミングやラジオの差をひっくり返すことが可能なのです。この構図を上手に利用してチャート実績を積み上げていくのが販売戦略なのです。

 7月頃まではCDやヴァイナル等の物理媒体にDL権利を付け、そのDLが集計に入るというパターンが定番でしたが、ビルボードはこの「付属DL」を規制。CD等の実物が配送されるまで集計されないようになりましたが、このルール変更は焼け石に水。その後もD2Cなどが台頭し、販売戦略による「狙った」1位獲得は繰り返されました。(D2C=直接顧客販売、つまりアーティスト自身のウェブサイトで音源を売るような手法)

 これが今後も続くか、それともビルボードが根本からの解決策を提示して止まるかは分かりませんが、今年のチャートに大きな影響を及ぼしたことは変わりありません。今年は1992年以降では最多の累計19曲の1位が誕生。さらに「デビュー1位」に限るとぶっちぎり最多の11曲が生まれています。(これまでは4曲が最多)

 しかし中には1位としてはヒット度が物足りない曲も多く、滞在が20週にも届かずチャートから外れてしまう曲も見られました。このような曲は必然的に年間チャートでも順位は低くなります。(ただこの中にはストリーミングで人気だった曲も多く、ストリーミングの人気曲をラジオがあまりかけていないという捉え方もできます)

 さらに滞在が10週に届かなかった“TROLLZ”、”cardigan”、”Franchise”の3曲は年間チャート入りを逃してしまいました。これまで年跨ぎではない1位シングルで、年間チャート入りを逃したのはFantasiaの“I Believe”のみと伝えられているので、今年のようなチャートアクションが歴史的に見ても異質なことが分かります。

 (”Franchise”は集計の終盤というリリース時期の問題もありますが、最終的なチャート滞在はわずか9週なので、集計時期の問題が無くても年間チャートには入らなかったと思われます)

 

 2つ目はラジオヒットが際立つようになったことです。特定の曲がオンエアされ続けることが増加し、週間のピークは低めでも年間チャートでは高くなるような事例が見られました。中でもMaren Morrisの“The Bones”は週間ピーク12位ながらも、年間チャート9位に。(おそらく)史上5曲目の週間トップ10を逃しながらも年間トップ10入りを果たした曲となりました。*2

1957 Patsy Cline – I Fall To Pieces (週12、年2)
1973 Kris Kristofferson – Why Me (週16、年5)
1974 Mac Davis – One Hell of A Woman (週11、年10)
1998 Paula Cole – I Don’t Wat To Wait (週11、年10)
2020 Maren Morris – The Bones (週12、年9)
 

 この特定の曲の集中オンエアはポップ系、アダルトポップ系で見られるようです。ポップ系のラジオチャートのWikipediaのロングヒット系記録の項目を見ると、近年の曲で多く埋め尽くされています。これは感染症の影響もあるのかもしれませんが、昨年以前もこの傾向はあったので、今年ほどでは無いにせよ、来年以降もラジオが特定の曲をオンエアするという現象は続きそうな気はします。

 

 

2 年間トップ10の「50」「61」

 

1 The Weeknd – Blinding Lights (1✕4)

2 Post Malone – Circles (1✕3)

3 Roddy Ricch – The Box (1✕11)

4 Dua Lipa – Don’t Start Now (2)

5 DaBaby feat. Roddy Ricch – ROCKSTAR (1✕7)

6 Harry Styles – Adore You (6)

7 Future feat. Drake – Life Is Good (2)

8 Maroon 5 – Memories (2)

9 Maren Morris – The Bones (12)

10 Lewis Capaldi – Someone You Loved (1✕3) ※今年の集計分では1週
()内は週間のピーク

 

 続いて、年間チャートで最も際立つ上位帯:トップ10を見ていきます。1位~3位には“Blinding Lights”、”Circles”、“The Box”の三大巨頭が。これらの3曲は序盤からヒットを飛ばしており、年の前半からいずれも年間チャート1位の有力候補でした。

 次いで大ヒットの印象が強い“Don’t Start Now”と”ROCKSTAR”。ほか粘りの“Adore You”、Futureキャリア最大のヒット”Life Is Good”、ラジオで相変わらず強いMaroon 5の“Memories”、ロングヒットのThe Bones”、”Someone You Loved“と並びます。

 この中で異質なのは、週間でトップ10に入らなかったのに年間ではトップ10の“The Bones”です。この曲のヒットについて、今年のRadio / Digital Sales / Streamingチャートの年間成績から考えていきます。

2020   Radio    Digital     Streaming
1 Blinding Lights 2 2 3
2 Circles 1 4 5
3 The Box 15 22 1
4 Don't Start Now 3 10 18
5 ROCKSTAR 19 12 4
6 Adore You 4 29 33
7 Life Is Good 35 37 2
8 Memories 5 5 50
9 The Bones 6 23 61
10 Someone You Loved 7 17 9

 

 それぞれに強み・弱みがありますが、私が注目したのは“Memories”と”The Bones”のストリーミング年間順位の低さです。Streaming Songsが通年で導入されて以降(2014~)、年間トップ10入り(Hot 100の)した曲でストリーミング年間順位が最も低かった曲は2018年の”The Middle”の34位で、ストリーミングがここまで低い曲が年間トップ10入りすることがいかに珍しいことが分かります。

 

2019   Radio    Digital    Streaming
1 Old Town Road         20 1 1
2 Sunflower 9 3 2
3 Without Me 2 4 3
4 bad guy 14 7 5
5 Wow. 10 8 7
6 Happier 6 14 8
7 7 rings 16 12 6
8 Talk 4 26 19
9 SICKO MODE 23 24 4
10 Sucker 3 10 28

 昨年の同データは上の通りです。全体のストリーミングの高さもそうですが、驚くべきはラジオ年間1位の曲がHot 100の年間トップ10にも入らなかったことです。ラジオ年間1位の“High Hopes”はストリーミング年間71位という成績が足を引っ張り、年間トップ10に入ることができませんでした。(11位) 

 

 このように、昨年はラジオヒットが弱く出ていましたが、今年はラジオが巻き返しを果たしています。2014年以降のHot 100年間トップ10曲のRadio / Digital Sales / Streamingの平均値は以下の通りです。このデータを読み取ると、ラジオは例年並ですが、DLとストリーミングの値が大きく下落しており、今年はラジオが相対的に強くなった=年間の順位と近づいたことが分かります。

 

  Radio    Digital    Streaming
2020 9.7 16.1 18.6
2019 10.7 10.9 8.3
2018 9.5 6.6 9.4
2017 12.6 10.2 11.4
2016 12.2 7.2 8.1
2015 9.3 7.9 8.2
2014 8.5 7.2 7.4

※2017年、2015年はラジオが年間(75位まで)圏外の曲が一つずつ入っています。(”Watch Me”と”Congratulations”)これらは平均に含んでいないので、含めるとすればこの数字はガクンと落ちます。

 

 これは前述のラジオでのロングヒットがとても大きな要因ですが、ビルボードのルール変更も多少は影響していると思います。今年YouTubeに関するルールを何回か変更。その内容は……

①ユーザー作成のビデオに関して、複数曲が含まれる○○まとめのような動画は対象外に。

②リリックビデオ等、曲を扱うものでもユーザー作成のものは大きくポイントを落とす → 後にユーザー作成のビデオは全て対象外に

③非ログインリスナーの再生を対象外にしたと思われる(これはサイレントの変更)

 

 と、かなりYouTube関連の数字が制限されました。ストリーミングの有力勢力であったYouTubeの減衰により、ストリーミング自体が数字を落とし、相対的にラジオが強化された、という構図です。(ただしビルボードがポイント内訳を公開していないため、一概にそうとも言い切れない部分もあります。年半ばには感染症を考慮してラジオの数字がやや落とされたため、ラジオもラジオでポイントを落としたとも考えられています。(表記される再生数は落ちたものの、内部のポイント計算式が不明な以上、実際にラジオのポイントが落ちているかは推測の域を出ない)上記のYouTubeの変更は年初、ラジオの変更は5月~です。)

 その上で、ストリーミングに恵まれない曲でもラジオでロングヒットになった曲がいくつか存在したため、今年の年間トップ10のストリーミング平均順位は落ちたのです。(このラジオとストリーミングのズレというのは近年続くHot 100の興味深いテーマの一つ)

 ストリーミング人気曲と比べると、ラジオはじわじわ長い期間をかけてヒットするものも多いので(特に今年は)、Hot 100でのピークの低い曲が年間チャートで上位に入ったのだと考えました。

 この傾向は来年も続くのかは、ラジオやストリーミングの実際の動向もそうですが、それ以上にビルボードの手綱捌き次第だと考えています。このラジオ偏重になったチャートをビルボードはどう捉えているのか、その動向に私は注目しています。

 

 DLの順位が乖離したのは販売戦略の影響に加え、DLの数値が下がり販売戦略以外での影響力低下が理由でしょうか。今年のDL年間1位はBTSの“Dynamite”(年間38位)でした。2014年~2019年の間で、DL年間1位の曲はHot 100年間1位か2位のいずれかでした。

 

 

3 エントリーの多いアーティスト

 次にジェネラルなスタッツから年間チャートを見ていきます。まずはアーティストごとのHot 100年間チャートのエントリー数です。

 

6:Roddy Ricch、Lil Baby

5:DaBaby、Drake、Juice WRLD

4:Justin Bieber、Pop Smoke

3:Luke Combs

 

 6曲でエントリーを果たしたRoddy Ricchは間違いなく今年の顔の一人。自身の“The Box”、そして客演を務めた”ROCKSTAR”の2曲でHot 100首位を獲得しています。この2曲はいずれも販売戦略を用いずに首位を獲得しており、"販売戦略抜きで"複数Hot 100首位を獲得した今年唯一のアーティストです。アルバムチャートでもデビュー作が年間3位に入るなど、今年一気に頭角を表しました。

 もう一人6曲エントリーを果たしたのはLil Baby。Roddy Ricchとは違い、首位曲は無く、今年の累計トップ10滞在週は6(“For the Night”が3、”The Bigger Picture”が2、”We Paid”が1)と上位に入った期間は短いため、シングルヒットを飛ばしている印象は薄いかもしれませんが、地道にヒットを飛ばし続けています。これまでポップ系ラジオチャートへのエントリーが無いなど、クロスオーバーには欠けますが、ラップコミュニティーでの人気はとても根強いようです。特にApple Musicでは年間ランキングに彼の曲が15も入る(客演含む)など高い人気が伺えます。そのストリーミング人気もあり、アルバムチャートでは年間2位を記録。(“My Turn”)

 

 次点はDaBaby、Drake、Juice WRLDの3人。DaBabyはリリースペースの早さもあって自身の曲でヒットを量産。それぞれの作品から毎回ヒットが生まれることに、高い人気ぶりを感じます。“ROCKSTAR”では初のHot 100首位獲得にも成功しました。客演でも高い人気を誇り、Camila Cabelloの“My Oh My”(年間37位)などポップ方面への進出も果たしています。クレジットはされていませんがMoneybaggYoの”Said Sum”(年間98位)のヒットにも彼はリミックスで大きく寄与しています。

 Drakeは相変わらずの人気。“Life Is Good”と”No Guidance”はロングヒット、“Toosie Slide”と”Popstar”はリリース直後集中型、とヒットのパターンも様々。

 Juice WRLDは昨年末の訃報以降も、ストリーミングで人気。一方ラジオではオンエアに恵まれず、年間チャートに入った5曲のうち、週間のラジオトップ50に入った曲は“Come & Go”の1曲のみでした。

 

 続いて4曲エントリーを果たしたのはJustin BieberとPop Smokeの2人。Justin Bieberは“Yummy”がHot 100首位を取り逃した末に尻すぼみになるなど、あまりうまく行っている印象はありませんでしたが、なんだかんだ人気に安定感があるということが分かります。(その”Yummy”も年間チャート入り)。時期的に今年の年間チャートには入りませんが、“Holy”や”Lonely”といった直近のシングルも好調。

 Pop Smokeは特に今年のアルバムからヒット連発。ラジオでオンエアされていない曲も含め、ストリーミングでは複数曲がシングルのような立場を確保し、人気を得ました。Juice WRLDにも言えることですが、この活躍ぶりを見ていると、改めて亡くなった事を惜しく思います。

 最後にカントリーシンガーのLuke Combs。彼はデビュー以降全てのシングルがトップ40入りするなど、ヒットの安定性が抜群。カントリー歌手としては珍しく、SpotifyApple Musicでも人気が高いです。

 

 

4 ジャンル別エントリー

 次にジャンル別の割合を見ていきます。ジャンル分けはビルボード準拠(例:Hot Country Songsに入っていればカントリーとカウント)。ポップのジャンル別チャートは無いので、ジャンル別チャートに入らない曲はポップとみなします。複数ジャンルでランクインしている曲はポップに分類します。

f:id:djk2:20201214162358p:plain

 

 R&B/Hip-Hopが引き続き覇権。半数超えとは行かないものの、他のジャンルに大差を付けていることは変わりません。

 次に、ポップスは大きく曲数を減らしました。これはビルボードのジャンル分けの影響もあるかもしれません。例えばJustin BieberのYummy”や“Intentions”はR&B扱いとなっているため、このポップには含まれていません。他にもR&B/Hip-Hopの項目にはポップっぽい曲はいくつか見られるため、この数字ほどポップスは少なくは感じないかもしれません。

 そして3番目はカントリー。9→14→18と2年連続で大きく数字を伸ばし続けています。前章で述べたようなラジオ偏重の恩恵を最も受けうるジャンル、ということが大きいでしょうか。しかしストリーミングも少しずつ克服しているようにも思えます。以前よりも週間ストリーミングトップ50に入るカントリー曲が格段に増えた印象です。

 SpotifyAppleではあまり上位に入らないですが、Amazon Musicではカントリー人気が際立ちます。Amazonは再生数の実数を公開していないため、どれくらいの割合を占めているかは分かりませんが、このAmazon等でカントリーのリスナーの間でストリーミングの浸透度が上昇した、ということがストリーミング改善の理由かと推測しています。Luke CombsやMorgan Wallenのような、AppleSpotifyでも人気を得る存在も一部います。

 

 4番目はRock & Alternative系。今年からビルボードはジャンル名をRock & Alternativeとしたため、少しジャンルの解釈が広がりましたが、そこまで数は増えませんでした。この変更で新たに含まれるようになったのは“Dance Monkey”など。

 5番目はダンス曲。昨年までと同様に、USでの注目度は低いです。Lady Gagaのシングルはここに含まれています。

 そしてエントリーが0曲だったのはラテン。厳密にはThe Black Eyed PeasとJ Balvinの“RITMO”がエントリーしたのですが、この曲はダンスのチャートにも入ったため、「複数ジャンルにエントリーした場合はポップ」というルールにより、ここでは0になりました。アルバム単位で躍進したBad Bunnyのシングル、ほかKarol Gの“Tusa”などヒット候補はいくつかありましたが、いずれも年間チャートには手が届かず。YouTubeのルール変更の煽りを受けたという可能性も

 

 

5 N年連続エントリー

 続いて年間チャートへの連続エントリーから、誰がコンスタントにヒットを飛ばしているか?を見ていきます。

 

12年連続:Drake

8年連続:Ariana Grande

6年連続:Shawn Mendes、Justin Bieber、Selena Gomez、Camila Cabello※

5年連続:Post Malone、Travis Scott、Halsey、Young Thug
4年連続:J Balvin、Kane Brown、Maroon 5、Cardi B、Luke Combs、Khalid、Quavo※、Swae Lee※
3年連続:Marshmello、Juice WRLD、Lil Baby、Chris Brown、Dan + Shay

※グループでの成績も含む

 

 最長は安定のDrake。彼がヒットを飛ばさなくなる光景は現状、想像しにくいです。現在“Laugh Now Cry Later”が絶賛ヒット中で、来年の年間チャート入りもほぼ手中におさめています。

 次点はAriana Grande。今年のアルバムリリースが年間チャートの集計期間の後だったため、自身のアルバムからのシングルは入りませんでしたが、“Stuck With You”・”Rain On Me”とコラボレーションで「つなぎ」ました。現在”positions”がヒット中で、Drakeと同様に来年の年間チャート入りも確実です。

 6年連続の4人はラジオヒットが絶えないという印象があります。Justin Bieber以外は、昨年のシングルが(主に)ラジオの成績で年間チャート入りをしました。Justin Bieberもラジオヒットの“Intentions”が彼の今年最大のヒットになっています。この4人に中では、Justin Bieberが”Holy”で来年の年間チャート入りが既に有力。

 

 その他で印象に残ったのはJ BalvinとKhalid。純粋なラテン曲は前述のように、今年年間チャートに入らないなか、J Balvinはクロスオーバーヒットによりラジオヒットを成し遂げ、年間チャート入りしました。J Balvinの存在によってラテン圏でヒットし、The Black Eyed Peasの英語ヴァースの存在によってラジオのオンエアを得るという、フィールドによって共に力を貸し合う関係でヒットした曲です。ラテン曲は英語ヴァースの有無でポップ/リズミック系ラジオのオンエア数が大きく変わる傾向が見られます。

 Khalidは登場から昨年まで複数曲が年間チャートに入り続けていましたが、今年は1曲のみ。ゲストのような形でKane Brownのポップラジオ向けシングルの“Be Like That”が唯一のエントリー。自身のシングルでは今年は少し苦戦した印象です。また共に客演で参加したSwae Leeも年間入りはこの曲のみ。Kane Brownのポップ系へのチャレンジが結果的に2人の記録を継続させるという結果に。(ちなみには通常のカントリーラジオ向けシングル”Homesick”も年間入り)

 

 次いで、昨年までは連続で年間チャートに入っていたものの今年は入らなかったアーティストを紹介します。()内は年数

Taylor Swift(13)、Nicki Minaj(10)、Ty Dolla $ign(4)、Ed Sheeran(3)、OffsetとTakeoff [Migos](3)、Bruno Mars(3)、21 Savage(3)、Gucci Mane(3)、Sam Smith(3)、Daddy Yankee(3)

 

 Taylor SwiftはHot 100首位を獲得するも、年間チャートには入らず。今作はアルバム志向が強く、シングルとして聞くような曲ではないため、あくまで単体では再生数が伸びづらい曲だったことが理由かと考えています。戦略上の理由とはいえ、1位を獲得したのならば年間チャートくらいには滑り込みたかったかもしれませんが。

 Nicki Minajも同様に奇妙な形で年間チャート入りを逃しました。今年は悲願のHot 100首位を2つの曲で獲得しましたが、いずれも「彼女の名義では」年間チャート入りせず。“Say So”は当該週こそNicki Minajリミックスの功績が認められ、クレジットが載りましたが、トータルで見るとオリジナルがメインと判断され、年間チャートのリストにはNicki Minajの名は掲載されず。そしてもう一つの”TROLLZ”は、初週のセールス以外の成績に乏しく、わずか4週の滞在で外れるという年間チャートからは程遠い結末を迎えました。これはタッグを組んだ6ix9ineの素行不良の影響が大きいです。

 ほか、Karol Gとの“Tusa”も年間チャートに近い成績を記録していましたが惜しくも入りませんでした。

 

 

6 男女比

 Hot 100における男女比を見ていきます。複数アーティストがメイン名義になっている場合は、ビルボードの表記で一番先頭に表記されているアーティストの性を採用しています。

f:id:djk2:20201214162445p:plain

 

 比率は昨年と変わらず。今年は女性ラッパーが非常に活躍した印象がありますが、R&B/Hip-Hopにおける女性のエントリーは7。昨年(8)と似たような数字でした。

 また今年躍進したジャンルであるカントリーにも目を向けます。ヒップホップと同様に、男性優位と言われているジャンルですが、このジャンルから5曲女性のエントリーが。昨年は0曲だったので、大きく躍進したことになります。“The Bones”と”I Hope”の2曲はポップ系への飛び火で大ヒットとなったので、この曲数以上に存在感はあったかなと感じます。ただ、カントリーはアーティスト単位で人気が出るわけではなく、「ジャンル聞き」の印象が強く、ラジオでオンエアされるかどうかにヒットの命運が握られているので、この現象が来年も見られるかと言われると微妙です。実際”I Hope”のGabby Barrettもまだ2曲目のHot 100エントリーを果たしていません。

 

ここまでジェネラルなデータから年間チャートを見てきましたが、ここからはディープなポイントを見ていきたいと思います。

 

 

7 非ラジオシングルの研究

 ラジオのオンエアをあまり得ていない曲について考えていきます。年間チャートに入った曲のうち、年間ラジオチャート(75位まで)に入っていない曲は34曲。その中で週間ラジオチャートの50位以内にも入っていない曲は11曲。

 

57 Lil Baby & 42 Dugg – We Paid
62 Eminem feat. Juice WRLD – Godzilla
63 Juice WRLD & YoungBoy Never Broke Again – Bandit
64 StaySolidRocky – Party Girl
75 YNW Melly & Juice WRLD – Suicidal
81 Pop Smoke feat. Lil Tjay – Mood Swings
83 Pop Smoke – Dior
86 Travis Scott & Kid Cudi – THE SCOTTS
90 Rod Wave feat. ATR Son Son – Rags2Riches
92 Juice WRLD – Wishing Well
100 NLE Choppa feat. Roddy Ricch – Walk Em Down

 

 全てラップ曲でした。ラジオに恵まれずとも、ストリーミングの数字でひっくり返すのはラップのお家芸なのでしょうか。さらにこれらの曲のジャンル別ラジオチャートの成績を観察すると、“Suicidal”と”Mood Swings”はここにすら入っていませんでした。つまりラジオではシングルに指定されなかったものの、年間チャートにまで到達したということです。

 “Suicidal”がオンエアされなかったのはYNW Mellyの存在。殺人の容疑がかけられている彼の素行を考慮して、ラジオのオンエアは控えられているようです。しかしストリーミングでは人気を確立しており、オリジナル版・Juice WRLDリミックス共に人気を得たため、再生数を多く稼いで年間チャート入りまでこぎ着けました。

 もう一つの“Mood Swings”はシングルが重複していたからです。この曲はTikTok等の影響で、非シングルながらストリーミングではシングルのような立場(プレイリスト等)を確保していました。しかし、ラジオではかかりませんでした。

 ラジオはたいてい、同一アーティストから1~2曲しか同時にはシングルカットしません。”Mood Swings”が人気を得た時には“The Woo”がシングルに指定されていたため、オンエアされず。このような場合には前シングルのサイクルが終了するのを待ち、ストリーミングからは遅れたタイミングでシングルカットされるのが定番のパターンですが、今回のPop Smokeの場合は、サイクルが終わる頃には”For The Night”や“What You Know Bout Love”など他のシングルも人気を得ていたため、結局ラジオでオンエアされないままシングルとしてのサイクルを終えました。しかしそのストリーミング人気は高かったため、年間チャートには入ることに成功しました。

 

 

8 ストリーミングが苦手な曲?

 上記のラジオと同様の作業をストリーミングで。まずストリーミングの年間チャートに入らなかった曲は30。さらにそのうち、週間のトップ50にも入らなかったのは以下の8曲。

 

50 The Black Eyed Peas & J Balvin – RITMO
56 JP Saxe feat. Julia Michaels – If The World Was Ending
73 Carly Pearce & Lee Brice – I Hope You’re Happy Now
77 Jonas Brothers – Only Human
89 Kane Brown – Homesick
95 Surf Mesa feat. Emilee – ily
97 Luke Combs – Lovin’ On You
99 H.E.R. feat. YG – Slide

 

 ラジオが強いポップ/カントリーの曲が多め。H.E.R.の“Slide”は唯一それに当てはまらない曲です。(R&B系の曲も、ストリーミングよりもラジオで強さが際立つ曲がそれなりに見られる)

 “If The World Was Ending”は変わっている曲で、このStreaming Songsの週間チャートには入らないながらも、Apple Music・Spotify両方の年間トップ100に入り、トータルで見ると実は再生数があった曲。Spotifyでは週間のピークが47位ながらも、年間では49位と、粘りのヒットでした。

 その他“RITMO”も、ラテン圏でヒットしている時はストリーミングヒットだったのですが、USに上陸したらラジオヒットになるという不思議な経緯を経ています。

 

 

9 ルール変更?の妙

 2019年のクリスマス後の週のHot 100で、突如複数曲が再登場を果たしました。一度リカレントでHot 100を外れた曲は、後に別サイクルでヒットするまでは再登場しませんが、クリスマス曲に押し出された曲は特例で再登場が認められたのです。(これに関するビルボードからの説明は見当たらない)クリスマス曲が多くのHot 100の枠を占めることは、現行ヒットのチャート入りを阻害しているという側面もあるので、それの埋め合わせということなのでしょう。

 これらのクリスマス曲によって外れる曲は既にピークを過ぎた曲が中心。そのため復活した曲の多くはすぐに外れてしまうのですが、“Sucker”、”I Don’t Care”、“Only Human”といったラジオヒットは長くHot 100に残留。というのも、年末にはポップ系ラジオではその年のヒット曲のオンエアが再び増加するため、この3曲はその効果でこの期間に再浮上していたのです。

 中でも”Only Human”はこの特例による復活で、今年の年間チャート入りを達成。このようなビルボードの微妙なルールの妙で、年間チャートの運命が左右されることもあるのです。

 あとはルールの妙といえば、クリスマス曲もそうでしょう。2011年まではルールでHot 100入りすらできなかった曲が、ストリーミングの拡大に伴い年々規模を拡大。今年ついにMariah Careyの"All I Want for Christmas Is You"が異例の年間チャート入りを達成しました。従来以上のストリーミングでの強さに加え、追加のプロモーション、TikTokでの人気なども印象的でした。

 しかし現行ヒットを阻害するまでにチャートを占めるようになったクリスマス曲を見て、再びビルボードが何かしらの規制をかける可能性も否定はできません。一番ルールの妙で動きそうなジャンルではあります。(ただ来年はまだ普通にチャート入りしそう)

 

 

10 アルバムチャート

 

1 Post Malone – Hollywood’s Bleeding

2 Lil Baby – My Turn

3 Roddy Ricch – Please Excuse Me For Being Antisocial

4 Harry Styles – Fine Line

5 Taylor Swift – folklore

6 Lil Uzi Vert – Eternal Atake

7 Pop Smoke – Shoot For The Stars Aim For The Moon

8 The Weeknd – After Hours

9 Juice WRLD – Legends Never Die

10 Luke Combs – What You See Is What You Get

 

 最後にアルバムチャートに触れていきます。トップ10は以下の通り。軒並みストリーミングで強いアルバムが並んだ印象。1位の戴冠に輝いたのはPost Malone。ロングヒットでかつ、リリースが昨年だったため52週全てが集計の対象になったことが大きいでしょうか。ビルボードの集計では、仮に先行シングルがヒットしてストリーミングを得ていたとしても、アルバムがリリースされるまでは集計の対象外になるため、リリースが早い方が集計上は有利になりやすいです。(他の媒体では先行シングルの分も集計されることも多く、リリース前の時点で既に“アルバム”がある程度売れていると計上される場合もある)

 2位と3位にはストリーミングで人気が高かったLil BabyとRoddy Ricch。シングル人気も高く、Hot 100の年間チャートにも複数曲が入りました。この2作品はいずれも、セールスが年間のトップ100にすら入っていません。

 4位はHarry Styles。シングルとアルバム両方でのトップ10入り。非ラップの最上位に。セールスでは年間2位。

 5位Taylor Swift、6位Lil Uzi Vertはシングルでは年間チャート入りが無いながらもアルバムチャートでは上位。個々のシングルが際立つことはあまり無かったですが、それぞれリリースの初週にはストリーミングで抜群の存在感を示しました。(Taylor Swiftはリリース時期が遅めなこともあり、成績はセールス中心ですが ※セールスは年間1位)

 7位~10位にはシングルでも存在感のあった面々が。この4人のうち、Pop Smoke以外はセールスでも年間トップ10に入っています。

 

年間アルバムチャートの各スタッツ

 

・エントリー数が多いアーティスト

6:Drake(28:Dark Lane Demo Tapes, 40:Scorpion, 85:Take Care, 98:Views, 120:More Life, 159:Nothing Was The Same)
4:YoungBoy Never Broke Again
3:Post Malone, Lil Baby, Taylor Swift, The Weeknd, Juice WRLD, Bad Bunny, DaBaby, Eminem

 

・Hot 100の年間チャート入りが無いアルバムチャート上位

5 Taylor Swift – folklore
6 Lil Uzi Vert – Eternal Atake
12 Original Broadway Cast – Hamilton: An American Musical
13 Soundtrack – Frozen II
14 Bad Bunny – YHLQMDLG
15 Taylor Swift – Lover
17 Summer Walker – Over It
18 Juice WRLD – Goodbye & Good Riddance
20 BTS – MAP OF THE SOUL:7
22 Luke Combs – This One’s For You
25 Queen – Greatest Hits

 

2017年以前にリリースされた作品(上位)

22 Luke Combs – This One’s For You (2017)
25 Queen – Greatest Hits (1981)
42 Billie Eilish – dont smile at me (2017)
44 Elton John – Diamonds (2017)
45 Post Malone – Stoney (2016)
53 Fleetwood Mac – Rumours (1977)
60 Bob Marley And The Wailers – Legend (1984
63 Creedence Clearwater Revival Featuring John Fogerty – Chronicle The 20 Greatest Hits (2005)
66 The BeatlesAbbey Road (1969)
67 Chris Stapleton – Traveller (2015)
68 Khalid – American Teen (2017)
71 Journey – Journey’s Greatest Hits (1988)
74 Lil Uzi Vert – Luv Is Rage 2 (2017)
 

ベストアルバム以外の、2009年以前の作品

53 Fleetwood Mac – Rumours (1977)
66 The BeatlesAbbey Road (1969)
89 AC/DC – Back In Black (1980)
111 Michael Jackson – Thriller (1982)
129 NirvanaNevermind (1991)
162 Eminem – The Eminem Show (2002)
166 Guns N’ Roses – Appetite For Destruction (1987)
169 Mariah Carey – Merry Christmas (1994)
177 MetallicaMetallica (1991)
186 Kid Cudi – Man On the Moon: The End Of Day (2009)
187 Nat King Cole – The Christmas Song (1960)
198 Vince Guaraldi Trio – A Charlie Brown Christmas (1965)

 

 

メモ+おまけ+リンク

 

おまけ1:今年のTikTokヒット

 

 昨年に引き続き、TikTokが曲のヒットに一役買いました。しかし一口にTikTokヒットといえども、様々なバリエーションがあるので、そこを解説していきたいと思います。

 まず、TikTokでの流通量がイコール曲のヒットの規模とはならないです。TikTokでの使用数が多くても曲としてはヒットしない物も多いですし、もちろんTikTok無しでヒットする曲も多く存在します。「TikTok内と外のギャップ」や「時期」等に着眼して説明していきます。

 

・2020 Year-Endに入ったいわゆるTikTokヒット

◎:TikTok無しでは考えづらい曲

○:ヒットの過程でTikTokが寄与した曲

△:TikTokの影響はさほど大きくないと感じる曲

 

1 The Weeknd – Blinding Lights △

3 Roddy Ricch – The Box ○

4 Dua Lipa – Don’t Start Now △

5 DaBaby feat. Roddy Ricch – ROCKSTAR ○

11 Doja Cat – Say So ○

14 Tones And I – Dance Monkey △

15 Megan Thee Stallion – Savage ○~◎

16 Arizona Zervas – Roxanne ◎

19 SAINt JHN - Roses ○

22 Trevor Daniel – Falling ◎

24 Cardi B feat. Megan Thee Stallion – WAP ○

27 Lil Mosey – Blueberry Faygo ○

32 Drake – Toosie Slide △

43 Powfu feat. beabadoobee – death bed ◎

47 24kGoldn feat. iann dior – Mood ○

49 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby – For The Night ○

58 Justin Bieber – Yummy △

61 Surfaces – Sunday Best ◎

64 StaySolidRocky – Party Girl ◎

67 Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You △

81 Pop Smoke feat. Lil Tjay – Mood Swings ○~◎

84 BENEE feat. Gus Dapperton – Supalonely ◎

90 Rod Wave feat. ATR Son Son – Rags2Riches ○~◎

 

TikTokヒットかの判定基準は、TokboardというTikTokでの再生数を測るサイト、私が実際に有名TikTokerの動画を見る企画等を参考にしています)

 

 

パターン1:無名から大ヒットへ

16 Arizona Zervas – Roxanne ◎

22 Trevor Daniel – Falling ◎

43 Powfu feat. beabadoobee – death bed ◎

61 Surfaces – Sunday Best ◎

64 StaySolidRocky – Party Girl ◎

84 BENEE feat. Gus Dapperton – Supalonely ◎

 

 一般的に想定されやすいパターン。元々無名だったアーティストが、TikTokのパワーで一気にスターダムを駆け上がりヒットを飛ばすというパターン。この場合、ヒットにおけるTikTokに依る割合が大きく、TikTok無しではヒットも考えられないと言っても過言ではないです。

 昨年Lil Nas Xが“Old Town Road”でこのヒットを成し遂げ、TikTokのヒットへの影響力が認識されたため、TikTokヒット=このパターンと考えられている気がしますが、このパターンが全てというわけではないです。

 

 

パターン2:シングルカットをTikTokが規定する

15 Megan Thee Stallion – Savage ○~◎

81 Pop Smoke feat. Lil Tjay – Mood Swings ○~◎

90 Rod Wave feat. ATR Son Son – Rags2Riches ○~◎

 

 ここで取り上げたアーティストは、アルバム単位でストリーミング上位を独占するような人気の持ち主で、これらの曲もアルバムの一部としてTikTok無しでもある程度ヒットしていました。しかし、TikTokで人気を得る前はシングルのような扱いではなく、必ずしもアルバムの中で目立つ曲では無かったです。これらの曲は、アーティスト単位ではTikTok無しでヒットを飛ばせていたが、曲単位ではTikTok無しでは考えづらいようなタイプです。

 

 

3:TikTokでヒットが加速

3 Roddy Ricch – The Box ○

5 DaBaby feat. Roddy Ricch – ROCKSTAR ○

11 Doja Cat – Say So ○

19 SAINt JHN - Roses ○

24 Cardi B feat. Megan Thee Stallion – WAP ○

27 Lil Mosey – Blueberry Faygo ○

47 24kGoldn feat. iann dior – Mood ○

49 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby – For The Night ○

 

 彼らは元々ヒットを飛ばせるクラスの知名度のあるアーティスト。TikTok無しでもそれなりのヒットになったであろう物曲を、TikTokの効果でさらに規模を広げたようなもの。

 例えばTikTokの恩恵で大ヒットとされることもある“The Box”も、リリース初日からApple Musicで1位を獲得しています。ただそれだけではHot 100首位を何週にもわたり支配するような特大ヒットにはならないので、その拡大にTikTokが一役買ったということです。

 この中で“Roses”は変わり種。彼のUSでの知名度は必ずしも高くは無かったですが、USでのヒット以前にヨーロッパ圏ではヒット。USで人気が微妙なダンスポップだったため、ヨーロッパでのヒット時にはUSで人気は出ませんでしたが、TikTokでの人気が出たあたりから急浮上。これ以外の曲のヒットのポテンシャルの源は「アーティストの注目度」にありましたが、この曲だけはその源が「ヨーロッパ圏でのヒット」にあるということです。

 

 

4:大物のTikTok向け曲とその成果?

32 Drake – Toosie Slide △

58 Justin Bieber – Yummy △

 

 個人的に一番興味深いと感じたのはこのタイプのヒットです。昨年のTikTokヒット大流行を経て、大物もその波に乗り始めました。これら2人はTikTokを意識したプロモーションを行い、実際にTikTokで人気を得ることに成功。Tokboardによると共に月間4位に入っています。

 しかし曲のヒット度は必ずしもうまく行かず。両者とも初週1位、2位と良いスタートを切ってはいますが、それは彼らのスター性を考えればさほど難しくはないこと。両方とも長くは持たず、彼らのポテンシャルからすれば年間順位はあまり満足のいくものではないでしょう。さらに、両者とも別のシングルでこれらの曲以上のヒットを成し遂げている点も興味深いです。(“Laugh Now Cry Later”の年間順位は”Toosie Slide”よりも低いですが、これは集計時期をまたぐヒットであるため)

 先に述べたように、TikTokでの人気と曲としての人気は決してイコールにはなりません。昨年の“Old Town Road”の結果を受けて、大物がもしTikTokヒットを飛ばしたらどれだけ巨大な規模のヒットになるだろう?という実験は興味深かったですが、あまりうまく行きませんでした。結局は、奇をてらずに良い曲を作り続けることがヒットを生み出す最大の方策なのかもしれません。

 

 

5 曲のヒットの方が先の曲

1 The Weeknd – Blinding Lights △

4 Dua Lipa – Don’t Start Now △

14 Tones And I – Dance Monkey △

67 Mariah Carey – All I Want for Christmas Is You △

 

 曲のヒットの経緯を探ると、曲のヒットの方が早く、むしろTikTokがヒットの影響を受けているというパターンです。もちろんプロモーションには一役買っているとは思いますが、既に曲としての評価は確率した後なので、TikTokの影響力は小さいと判断した曲です。

 

 

 

 

 おまけ2:年間チャート予想の答え合わせ

  今年はトップ10正答数7 / ピタリ1と、予想を始めた2017年以来ワーストの成績を記録してしまいました。ラジオがここまで特定シングルを引っ張る点が予想外で、それが予想を外した要因にもなったかなと感じます。精進致します……

年間チャート トップ10 半年前予想 2020 (Hot 100) - チャート・マニア・ラボ

 

 

リンク

 昨年度版:Hot 100(USシングル) 2019年間チャートを10のポイントで振り返る - チャート・マニア・ラボ

 

2018年度版:Hot 100(USシングル) 2018年間チャートを10のポイントで振り返る - チャート・マニア・ラボ

 

2017年度版:Hot 100(USシングル)・2017年間チャートを10のポイントで振り返る - チャート・マニア・ラボ

 

 

メモ

 

・年間チャートとその週間チャートでの成績
(集計期間内での成績  *付きの曲は集計外に別のピーク/滞在があることを示す)
(昨年、は昨年の年間チャートでの順位)

 

アーティスト 曲名 ピーク 週数 昨年
1 The Weeknd Blinding Lights 1 *49  
2 Post Malone Circles 1 *51 62
3 Roddy Ricch The Box 1 38  
4 Dua Lipa Don't Start Now 2 *51  
5 DaBaby feat. Roddy Ricch ROCKSTAR 1 *29  
6 Harry Styles Adore You 6 *48  
7 Future feat. Drake Life Is Good 2 38  
8 Maroon 5 Memories 2 *34  
9 Maren Morris The Bones 12 *45  
10 Lewis Capaldi Someone You Loved 1 *26 27
11 Doja Cat Say So 1 38  
12 Gabby Barrett feat. Charlie Puth I Hope *5 *45  
13 Jack Harlow feat. DaBaby, Tory Lanez, & Lil Wayne Whats Poppin 2 *39  
14 Tones And I Dance Monkey 4 *31  
15 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé Savage 1 28  
16 Arizona Zervas Roxanne 4 *25  
17 Justin Bieber feat. Quavo Intentions 5 31  
18 Billie Eilish everything i wanted 8 33  
19 Saint Jhn Roses 4 *33  
20 Harry Styles Watermelon Sugar 1 *33  
21 Lewis Capaldi Before You Go 9 *40  
22 Trevor Daniel Falling 17 38  
23 Dan + Shay & Justin Bieber 10,000 Hours *5 *25  
24 Cardi B feat. Megan Thee Stallion WAP 1 *13  
25 Mustard feat. Roddy Ricch Ballin' 11 *28  
26 Blackbear hot girl bummer 11 *34  
27 Lil Mosey Blueberry Faygo 8 33  
28 The Weeknd Heartless 1 23  
29 DaBaby BOP 11 *24  
30 Selena Gomez Lose You to Love Me *5 *20  
31 Lizzo Good as Hell 3 *19  
32 Drake Toosie Slide 1 20  
33 Dua Lipa Break My Heart 13 32  
34 Morgan Wallen Chasin' You 16 36  
35 Jawsh 685 & Jason Derulo Savage Love (Laxed – Siren Beat) 1 *21  
36 Chris Brown feat. Drake No Guidance *7 *24 21
37 Camila Cabello feat. DaBaby My Oh My 12 27  
38 BTS Dynamite 1 *11  
39 Chris Brown & Young Thug Go Crazy 9 *26  
40 Roddy Ricch feat. Mustard High Fashion 20 28  
41 Drake feat. Lil Durk Laugh Now Cry Later 2 *12  
42 Lil Baby Woah 15 21  
43 Powfu feat. Beabadoobee death bed 23 26  
44 Shawn Mendes & Camila Cabello Señorita *3 *17 15
45 Travis Scott Highest in the Room *8 *17  
46 Billie Eilish bad guy *13 *17 4
47 24kGoldn feat. Iann Dior Mood 1 *13  
48 Lady Gaga & Ariana Grande Rain on Me 1 20  
49 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby For the Night 6 *18  
50 Black Eyed Peas & J Balvin RITMO (Bad Boys for Life) 26 27  
アーティスト 曲名 ピーク 週数 昨年
51 Rod Wave Heart on Ice 25 27  
52 Blake Shelton & Gwen Stefani Nobody but You 18 25  
53 Shaed Trampoline 13 *16 70
54 Juice WRLD & Marshmello Come & Go 2 *17  
55 Lizzo Truth Hurts *6 *15 13
56 JP Saxe feat. Julia Michaels If the World Was Ending 27 29  
57 Lil Baby & 42 Dugg We Paid 10 22  
58 Justin Bieber Yummy 2 15  
59 Old Dominion One Man Band 20 *17  
60 Jason Aldean Got What I Got 16 *23  
61 Surfaces Sunday Best 19 21  
62 Eminem feat. Juice WRLD Godzilla 3 20  
63 Juice WRLD & YoungBoy Never Broke Again Bandit *22 *15  
64 StaySolidRocky Party Girl 21 20  
65 Maddie & Tae Die from a Broken Heart 22 25  
66 DJ Khaled feat. Drake Popstar 3 *16  
67 Mariah Carey All I Want for Christmas Is You 1 *37  
68 Lee Brice One of Them Girls 17 *23  
69 Sam Hunt Hard to Forget 26 20  
70 Luke Bryan One Margarita 19 20  
71 Lil Nas X Panini *9 *12 40
72 Young Thug feat. Gunna Hot *16 *14  
73 Carly Pearce & Lee Brice I Hope You're Happy Now 27 25  
74 Lil Baby Emotionally Scarred 31 25  
75 YNW Melly feat. Juice WRLD Suicidal 20 20  
76 Lil Baby The Bigger Picture 3 20  
77 Jonas Brothers Only Human 18 *15 78
78 Pop Smoke feat. 50 Cent & Roddy Ricch The Woo 11 *18  
79 Lil Baby Sum 2 Prove 16 20  
80 Ariana Grande & Justin Bieber Stuck with U 1 18  
81 Pop Smoke feat. Lil Tjay Mood Swings 17 *18  
82 Halsey you should be sad 26 18  
83 Pop Smoke Dior 22 21  
84 Benee feat. Gus Dapperton Supalonely 39 22  
85 Luke Combs Even Though I'm Leaving 11 *14  
86 The Scotts, Travis Scott, & Kid Cudi THE SCOTTS 1 13  
87 Doja Cat & Tyga Juicy 41 *18  
88 Kane Brown feat. Swae Lee & Khalid Be Like That 19 *17  
89 Kane Brown Homesick 35 21  
90 Rod Wave feat. ATR Son Son Rags2Riches 12 *19  
91 Miranda Lambert Bluebird 26 20  
92 Juice WRLD Wishing Well 5 *17  
93 Luke Combs feat. Eric Church Does to Me 20 19  
94 Jhené Aiko Pussy Fairy (OTW) 40 25  
95 Surf Mesa feat. Emilee ILY (I Love You Baby) *25 *24  
96 Morgan Wallen More Than My Hometown 23 *21  
97 Luke Combs Lovin' on You 23 19  
98 Moneybagg Yo Said Sum 17 *18  
99 H.E.R. feat. YG Slide 43 20  
100 NLE Choppa feat. Roddy Ricch Walk Em Down 38 20  
アーティスト 曲名 ピーク 週数 昨年

 

 

・Hot 100年間チャート入り曲のそれぞれの年間Radio / Digital Sales / Streaming
(黃背景は年間圏外)

 

アーティスト 曲名 R D S
1 The Weeknd Blinding Lights 2 2 3
2 Post Malone Circles 1 4 5
3 Roddy Ricch The Box 15 22 1
4 Dua Lipa Don't Start Now 3 10 18
5 DaBaby feat. Roddy Ricch Rockstar 19 12 4
6 Harry Styles Adore You 4 29 33
7 Future feat. Drake Life Is Good 35 37 2
8 Maroon 5 Memories 5 5 50
9 Maren Morris The Bones 6 23 61
10 Lewis Capaldi Someone You Loved 7 17 9
11 Doja Cat Say So 9 18 20
12 Gabby Barrett feat. Charlie Puth I Hope 8 6 29
13 Jack Harlow feat. DaBaby, Tory Lanez, & Lil Wayne Whats Poppin 37   6
14 Tones And I Dance Monkey 28 3 8
15 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé Savage 29 7 11
16 Arizona Zervas Roxanne 22 34 7
17 Justin Bieber feat. Quavo Intentions 13 20 25
18 Billie Eilish Everything I Wanted 17 14 26
19 Saint Jhn Roses 25 16 15
20 Harry Styles Watermelon Sugar 18 15 32
21 Lewis Capaldi Before You Go 11 24  
22 Trevor Daniel Falling 39   14
23 Dan + Shay & Justin Bieber 10,000 Hours 10 26 52
24 Cardi B feat. Megan Thee Stallion WAP   9 10
25 Mustard feat. Roddy Ricch Ballin' 26   16
26 Blackbear Hot Girl Bummer 21 42 60
27 Lil Mosey Blueberry Faygo 48   13
28 The Weeknd Heartless 20 57 65
29 DaBaby Bop 41   17
30 Selena Gomez Lose You to Love Me 16 41 68
31 Lizzo Good as Hell 14 13  
32 Drake Toosie Slide 40 47 23
33 Dua Lipa Break My Heart 12    
34 Morgan Wallen Chasin' You 30 49 74
35 Jawsh 685 & Jason Derulo Savage Love (Laxed – Siren Beat) 32 11 35
36 Chris Brown feat. Drake No Guidance 23   57
37 Camila Cabello feat. DaBaby My Oh My 24 74  
38 BTS Dynamite   1  
39 Chris Brown & Young Thug Go Crazy 31   38
40 Roddy Ricch feat. Mustard High Fashion 64   22
41 Drake feat. Lil Durk Laugh Now Cry Later 54   27
42 Lil Baby Woah     19
43 Powfu feat. Beabadoobee Death Bed 45 75 42
44 Shawn Mendes & Camila Cabello Señorita 34 52 69
45 Travis Scott Highest in the Room 70   28
46 Billie Eilish Bad Guy 65 28 46
47 24kGoldn feat. Iann Dior Mood 60 54 43
48 Lady Gaga & Ariana Grande Rain on Me 51 21 75
49 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby For the Night     21
50 Black Eyed Peas & J Balvin Ritmo (Bad Boys for Life) 36    
アーティスト 曲名 R D S
51 Rod Wave Heart on Ice     59
52 Blake Shelton & Gwen Stefani Nobody but You 49 8  
53 Shaed Trampoline 27    
54 Juice Wrld & Marshmello Come & Go     41
55 Lizzo Truth Hurts 38 40  
56 JP Saxe feat. Julia Michaels If the World Was Ending 47    
57 Lil Baby & 42 Dugg We Paid     24
58 Justin Bieber Yummy   31 70
59 Old Dominion One Man Band 44 32  
60 Jason Aldean Got What I Got 67 33  
61 Surfaces Sunday Best   48 64
62 Eminem feat. Juice Wrld Godzilla   62 44
63 Juice Wrld & YoungBoy Never Broke Again Bandit     30
64 StaySolidRocky Party Girl     34
65 Maddie & Tae Die from a Broken Heart 68    
66 DJ Khaled feat. Drake Popstar     51
67 Mariah Carey All I Want for Christmas Is You   60 48
68 Lee Brice One of Them Girls 63 43  
69 Sam Hunt Hard to Forget 73 35  
70 Luke Bryan One Margarita 53 19  
71 Lil Nas X Panini 69   71
72 Young Thug feat. Gunna Hot     45
73 Carly Pearce & Lee Brice I Hope You're Happy Now 71    
74 Lil Baby Emotionally Scarred     73
75 YNW Melly feat. Juice Wrld Suicidal     31
76 Lil Baby The Bigger Picture     63
77 Jonas Brothers Only Human 33    
78 Pop Smoke feat. 50 Cent & Roddy Ricch The Woo     62
79 Lil Baby Sum 2 Prove     36
80 Ariana Grande & Justin Bieber Stuck with U   27  
81 Pop Smoke feat. Lil Tjay Mood Swings     40
82 Halsey You Should Be Sad   65  
83 Pop Smoke Dior     39
84 Benee feat. Gus Dapperton Supalonely      
85 Luke Combs Even Though I'm Leaving 50 64  
86 The Scotts, Travis Scott, & Kid Cudi The Scotts   63 58
87 Doja Cat & Tyga Juicy      
88 Kane Brown feat. Swae Lee & Khalid Be Like That   50  
89 Kane Brown Homesick 58    
90 Rod Wave feat. ATR Son Son Rags2Riches     47
91 Miranda Lambert Bluebird   51  
92 Juice Wrld Wishing Well     49
93 Luke Combs feat. Eric Church Does to Me 43 72  
94 Jhené Aiko Pussy Fairy (OTW)      
95 Surf Mesa feat. Emilee ILY (I Love You Baby) 74    
96 Morgan Wallen More Than My Hometown   71  
97 Luke Combs Lovin' on You 52    
98 Moneybagg Yo Said Sum     54
99 H.E.R. feat. YG Slide      
100 NLE Choppa feat. Roddy Ricch Walk Em Down     55
アーティスト 曲名 R D S

 

Apple Music / Spotify年間ランキングとの比較
Apple Musicは100位まで、Spotifyは50位まで、黃背景は年間圏外)
(両方とも集計期間は不明だが、12月初旬に発表されたランキングなので、ビルボードの集計期間とは大きくは違わないはず)
(Sp週はSpotifyでの週間チャートのピーク。()内の数字は今年の集計期間内でのピークを指す)

アーティスト 曲名 Ap年 Sp年 Sp週
1 The Weeknd Blinding Lights 7 2 1
2 Post Malone Circles 11 6 1(2)
3 Roddy Ricch The Box 1 1 1
4 Dua Lipa Don't Start Now 27 12 5
5 DaBaby feat. Roddy Ricch Rockstar 3 4 1
6 Harry Styles Adore You 31 16 3
7 Future feat. Drake Life Is Good 4 5 2
8 Maroon 5 Memories 85   9
9 Maren Morris The Bones     60(182)
10 Lewis Capaldi Someone You Loved 28 27 6
11 Doja Cat Say So 84 15 3
12 Gabby Barrett feat. Charlie Puth I Hope 56   72
13 Jack Harlow feat. DaBaby, Tory Lanez, & Lil Wayne Whats Poppin 40 11/41 2
14 Tones And I Dance Monkey 18 25 7
15 Megan Thee Stallion feat. Beyoncé Savage 70/100   5
16 Arizona Zervas Roxanne 16 7 1
17 Justin Bieber feat. Quavo Intentions 36 14 2
18 Billie Eilish Everything I Wanted 22 31 1
19 Saint Jhn Roses 57 13 5
20 Harry Styles Watermelon Sugar 38 8 4
21 Lewis Capaldi Before You Go 88 39 42
22 Trevor Daniel Falling 37 10 5
23 Dan + Shay & Justin Bieber 10,000 Hours 53   2(17)
24 Cardi B feat. Megan Thee Stallion WAP 12 9 1
25 Mustard feat. Roddy Ricch Ballin' 5 23 11
26 Blackbear Hot Girl Bummer 47 30 4(8)
27 Lil Mosey Blueberry Faygo 29 3 2
28 The Weeknd Heartless 30   1
29 DaBaby BOP 9 26 3(4)
30 Selena Gomez Lose You to Love Me 43   2(5)
31 Lizzo Good as Hell     22(45)
32 Drake Toosie Slide 23 17 1
33 Dua Lipa Break My Heart     14
34 Morgan Wallen Chasin' You 59   55
35 Jawsh 685 & Jason Derulo Savage Love (Laxed – Siren Beat)     9
36 Chris Brown feat. Drake No Guidance 13   5(21)
37 Camila Cabello feat. DaBaby My Oh My     15
38 BTS Dynamite     4
39 Chris Brown & Young Thug Go Crazy 42   20
40 Roddy Ricch feat. Mustard High Fashion 6 18 5
41 Drake feat. Lil Durk Laugh Now Cry Later 55 42 2
42 Lil Baby Woah 2   11
43 Powfu feat. Beabadoobee death bed   19 9
44 Shawn Mendes & Camila Cabello Señorita     1(35)
45 Travis Scott Highest in the Room 14 35 1(3)
46 Billie Eilish Bad Guy 82   1(18)
47 24kGoldn feat. Iann Dior Mood   34 1
48 Lady Gaga & Ariana Grande Rain on Me     2
49 Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby For the Night 20 33 2
50 Black Eyed Peas & J Balvin Ritmo (Bad Boys for Life)     87
アーティスト 曲名      
51 Rod Wave Heart on Ice 44   47
52 Blake Shelton & Gwen Stefani Nobody but You     185
53 Shaed Trampoline     33
54 Juice Wrld & Marshmello Come & Go   40 1
55 Lizzo Truth Hurts 99   3(24)
56 JP Saxe feat. Julia Michaels If the World Was Ending 87 49 47
57 Lil Baby & 42 Dugg We Paid 15   9
58 Justin Bieber Yummy 96   3
59 Old Dominion One Man Band     71
60 Jason Aldean Got What I Got     105
61 Surfaces Sunday Best 75 22 14
62 Eminem feat. Juice Wrld Godzilla 77 21 2
63 Juice Wrld & YoungBoy Never Broke Again Bandit 10 28 2
64 StaySolidRocky Party Girl 91 36 2
65 Maddie & Tae Die from a Broken Heart     101
66 DJ Khaled feat. Drake Popstar     4
67 Mariah Carey All I Want for Christmas Is You     2
68 Lee Brice One of Them Girls     64
69 Sam Hunt Hard to Forget     162
70 Luke Bryan One Margarita     119
71 Lil Nas X Panini     2(39)
72 Young Thug feat. Gunna Hot 60   10(12)
73 Carly Pearce & Lee Brice I Hope You're Happy Now     163
74 Lil Baby Emotionally Scarred 24   45
75 YNW Melly feat. Juice Wrld Suicidal 45 44 6
76 Lil Baby The Bigger Picture 64   5
77 Jonas Brothers Only Human     12(外)
78 Pop Smoke feat. 50 Cent & Roddy Ricch The Woo     8
79 Lil Baby Sum 2 Prove 8   18
80 Ariana Grande & Justin Bieber Stuck with U     3
81 Pop Smoke feat. Lil Tjay Mood Swings 48   10
82 Halsey You Should Be Sad     12
83 Pop Smoke Dior 41   18
84 Benee feat. Gus Dapperton Supalonely     23
85 Luke Combs Even Though I'm Leaving     60
86 The Scotts, Travis Scott, & Kid Cudi The Scotts 93 29 1
87 Doja Cat & Tyga Juicy     66
88 Kane Brown feat. Swae Lee & Khalid Be Like That     25
89 Kane Brown Homesick    
90 Rod Wave feat. ATR Son Son Rags2Riches     15
91 Miranda Lambert Bluebird     200
92 Juice Wrld Wishing Well   38 1
93 Luke Combs feat. Eric Church Does to Me     99
94 Jhené Aiko Pussy Fairy (OTW) 35   110
95 Surf Mesa feat. Emilee ILY (I Love You Baby)     49
96 Morgan Wallen More Than My Hometown     57
97 Luke Combs Lovin' on You     113
98 Moneybagg Yo Said Sum     114
99 H.E.R. feat. YG Slide 95   159
100 NLE Choppa feat. Roddy Ricch Walk Em Down   46 11
アーティスト 曲名      

リンク:Top Songs of 2020: USA on Apple MusicTop Tracks of 2020 USA on Spotify

 

 

 

*1:RIAA等の媒体と比べて高い 詳細:この記事

*2:ビルボード年間チャート60年の記録 1955▶2014』という本には週ピークと年間の表が載っているので、それを活用しています

Billboard 動向・11月号 【Ariana Grandeの新作 / 新タイプの販売戦略?】

 

f:id:djk2:20201130201741p:plain

 こんばんは。11月のUSビルボードチャートを7のポイントで見ていきます!*1

 あと、そろそろ年間チャートの時期です。年間チャートが発表されたら、それについての記事も出す予定です。

 

 

 

1 Ariana Grandeの成績をどう捉える?

 今月最大のテーマはAriana Grandeの新譜。先行シングル”positions”はHot 100で首位を獲得することに成功。その次週にリリースされたアルバムも1位を獲得し、しっかりノルマは達成しました。しかし、これが期待に沿った結果だったか?は微妙なところです。

 まずはアルバム1位を獲得するも、売上は前作の半分以下だったという点です。内訳を見ると以下の通りです。純セールス、ストリーミングともに前作ほどではないです

 

・Yours Truly (2013) 総合:13.8万

・My Everything (2014) 総合:16.9万

・Dangerous Woman (2016) 総合:17.5万 純セールス:12.9万

・Sweetener (2018) 総合:23.1万 純セールス:12.7万

・thank u, next (2019) 総合:36.0万 純セールス:11.6万

・positions (2020) 総合:17.4万 純セールス:4.2万

 

※“Dangerous Woman”以外はアルバム1位を獲得

※現行アルバムチャートは純セールス+ストリーミング+シングルDLで構成されていますが、シングルDLの数字は低いため、純セールス以外の総合売上はほとんどストリーミングから来ていると考えて良いです。

※ただし2016年の段階では、まだDLが大きいので、シングルDLも一定の数字があったと推測されます。*2

 

 “positions”の収録曲は、前作と同様に全曲Hot 100入りしましたが、順位は落としています。前作は11曲がトップ40入りしましたが、今回は5曲。また、初週は1位だった”positions”も、アルバムの週にはラジオヒットの“Mood”に抜かされてHot 100の首位を明け渡しました。前作ではアルバム週に1位~3位を独占していたことを考えると、チャートの制圧度が大幅に下がっていることが分かります。

 

 たしかに前作よりは数字を落としていますが、それ以外の作品とはあまり変わらないことを考えると、むしろ前作が特別な「確変」だったというイメージでしょうか。また、純セールスの変化に関しては、ビルボードがマーチの集計方法を変更したこと関係しているのかもしれません。

 ほか高いストリーミングの数字をもとに、決して難易度が低くない全収録曲Hot 100入りを2作連続で成し遂げた、という快挙も見逃せません。リリース週にすぐさまアルバムに飛びつく、という習慣はどちらかというとラップのリスナーに強く見られる現象なので、ポップアクトのAriana Grandeが成し遂げることにも意義がある記録なような気がします。ストリーミング時代に、ポップアルバムで全曲Hot 100入りを果たしたのはAriana Grande2回、Taylor Swift2回のみです。(ただしデラックス版の曲を除くと、Justin BieberとEd Sheeranもこれに当てはまる)

 また、その後にも好材料が見られます。全曲がHot 100入りするようなアルバムでも、その後は勢いを保てず順位をガンガン落としてしまうのが一般的です。Ariana Grandeの今作も多くの非シングルはそのルートですが、唯一”pov”はTikTokの効果等でHot 100中位に残留。ストリーミングでも好調を保ち、ラジオシングルには認定されていないものの、シングルのような立ち位置を確保しています。

 また、ラジオシングルの”positons”や”34+35”も悪くはない成績をキープしています。

 

 

2 アーティスト力を示す?初動で見るトップ10

f:id:djk2:20201130202620j:plain

 

 今月のシングルトップ10を見ていきます。まずはリリース直後からトップ10に登場した曲についてです。9月号の「ヒットの4メトリクス」で詳しく書きましたが、リリース直後は曲としての評価が確立されていないため、アーティストへの期待度が曲のヒット度によく反映されやすいです。*3

 そのため、仮に次週以降で順位を落としてしまったとしても、上位デビューを果たしていれば、「アーティストとしてのパワー」はあり、それ以降のヒットにも再現性があると評価できるのです。

 

・Luke Combs – Forever After All

 ここ数年、存在感を示すカントリーシンガーが初のトップ10入り。Ariana Grandeの”positions”と接戦を繰り広げ2位デビュー。つまり、この強力なライバルがいなければHot 100首位を獲得できたということです。Apple Musicやダウンロードでは”positions”の成績を上回り、Rolling Stoneチャートでは首位を獲得しています。ただラジオやYouTube等、RSチャートには無い要素では”positions”が有利だったため、Hot 100ではそっちが首位に立ちました。

 彼はこの週に前アルバムのデラックス版をリリースし、アルバムチャートで1位返り咲きも果たしています。この効果で計6曲がHot 100に入っています。

 Luke Combsの他のカントリーアーティストとの違いは、SpotifyAppleでも人気があること、そしてアーティスト単位で曲が聞かれていることだと思います。

 現在カントリー曲は、ストリーミングのサービスごとでの偏りが見られます。Amazon MusicやPandoraでは人気があるものの、SpotifyAppleでの存在感は非常に薄いです。しかし彼はカントリーとあまり縁のないフィールド=SpotifyAppleでも常に存在感を示しています。

 また、カントリー曲はラジオとストリーミングで似たような曲が同時にヒットする傾向にあります。他ジャンルはそれぞれ独自の選曲眼を持っており、ラジオとストリーミングの人気曲が大きく異なることも多いですが、カントリーはそうでもないです。これは「カントリーというジャンルを聞く」という習慣が強いことが理由だと推測しています。

 しかしLuke Combsはアーティストとしても人気があり、現在「カントリー・ヒット」のラインに乗らない過去曲も含めて、ストリーミングのランキングに名を連ねています。

 この2つの説明はMorgan Wallenにも当てはまります。この2人が他のカントリーシンガーとどこが違い、なぜここまで評価されるのか?という点は正直分かりづらいですが、もう少しメディア等に注目されても良い存在とは考えています。

 

・Bad Bunny & Jhay Cortez - Dakiti

 ラテン・アーバンのトップスターBad Bunny。数ある英語アルバムを押しのけて「今年Spotifyで最も再生されたアルバム」の立ち位置を守る彼の新曲。

 彼はCardi B、Drake等の既存の英語圏スターとのコラボでトップ10を記録してきましたが、今回は彼が「引っ張る」側。彼のスターパワーによって、Jhay Cortezを初のトップ10へ導きました。

 この曲はデビュー週の次も調子を維持。2週目に9位→8位と順位を上げたのですが、トップ10にデビューした曲が2週目に順位を上げるのは今年初のことでした。(昨年の“Circles”以来)

 

・Billie Eilish – Therefore I Am

 Billie Eilishの新曲“Therefore I Am”が2位にランクイン。チャートでは「先週からの急浮上」ということになっていますが、これはリリース時期が少しだけ先週に入って起きたもので、実質的なリリース週で2位に登場したと捉えて良いでしょう。

 彼女にとって4曲目のトップ10で、昨年に1位を獲得した”bad guy”に次ぐ順位。”bad guy”は初週7位スタートだったため、初動の勢いで見ると過去シングルで最大ということになります。

 “dont smile at me”期のバイブスを感じるこの曲はTikTokでも人気。Tokboardの直近のデータ*4では2位、9位、53位にこの曲がランクインしています。

 

 

3 曲の力を示す?ラジオヒットとトップ10 + 今後のトップ10

 

 次に曲としての評価が伺える、「上昇したトップ10」 = 主にラジオヒットについて見ていきます。

 

・24kGoldn feat. iann dior – Mood

 ラジオヒットがそのままHot 100の首位になるというパターン。ストリーミングで出た芽を見逃さず、素早くラジオに移行できたことがHot 100首位獲りの要因だと思います。イギリス、ドイツでは先に1位も獲得していたグローバルヒット曲。

 “positions”がリリースされた初週以外は今月中1位を確保。ラジオで好調を維持しているほか、途中にはJustin Bieber、J Balvin参加のリミックスもリリースし、首位の座を固めています。

 ラジオでの人気は際立ち、ポップ系ラジオでは「スピン数」が2017年の“Shape of You”以降で最大の数字を記録したようです。ただ、Hot 100でのポイントの基準となるのは、スピン数ではなくオーディエンスの数。さらにその計測法も変化しているため、Hot 100でのポイント数が2017年以降で最大かどうかは別の話です。

 

・The Weeknd – Blinding Lights

 未曾有のラジオのロングヒットは続き、Hot 100上位に残り続ける。今月はトップ10滞在の最長記録を更新(40週目)

 この曲はこのように特大のヒットを飛ばしながらも、グラミーのノミネートで無視されたことが話題に。Spotifyの最大手プレイリスト、Today’s Top Hitsはこの動向を受けて、この曲をリストに再登場させました。(およそ2ヶ月ぶり)

 また、ChartDataの以下のツイートは今年このアカウントで2番目のいいね数を集めました。

 

リプ欄に登場するTinashe

 

※今年いいねが1番多いのは、BTSがはじめてグラミーにノミネートされたことを伝えるツイート

 

 

・Gabby Barrett – I Hope

 粘りのラジオヒットで、46週目にして3位まで浮上。これ以上順位を伸ばすのはさすがに厳しいかもしれませんが、上位にはこれからも残りそう。

 上記の“Blinding Lights”と共に、Hot 100長期滞在記録の更新も期待できそうな1曲。(26位/53週ルールが適用されて以降の最長記録は”Circles”の60週)

 

・Pop Smoke feat. Lil Baby & DaBaby – For the Night

 この曲がリリースされた7月以来のトップ10入りを達成。リリース以降、ストリーミングで高い人気を保ち続け、最近はそこにラジオのオンエア数が加わったことによりトップ10返り咲きを果たしました。このようなタイプの曲は、ラジオでオンエアが始まる頃にはストリーミングが落ちており、当初ほどHot 100での順位が期待できない事も多いですが、この曲はラジオのオンエアまでストリーミング数を維持していた点がすごいです。

 

・Justin Bieber feat. Chance the Rapper – Holy

 好調を維持。トップ10に定着し始め、“Yummy”ではなく”Intentions”コースに。“Yummy”は尻すぼみでしたが、彼はその後のシングルで調子を取り戻している印象。

 

・Ava Max – Kings & Queens (※来月以降のトップ10候補)

 直近の週で13位。ラジオでの躍進が続き、ラジオ3位・ポップ系2位まで浮上。“Sweet but Psycho”のピークはラジオ3位、ポップ系3位だったため、それと同等以上のラジオヒットになっています。

 あともう少しラジオを伸ばせば、トップ10まで手が届きそうですが、ピークがクリスマスと重なりそうな点が懸念材料。昨年はクリスマス曲がトップ10に複数入り、現行ヒットをトップ10から弾き出しました。(昨年はピークがクリスマス中だったDaBabyの“BOP”がこの影響でトップ10入りを逃す)

 

 

4 そこそこ盛り上がる?アルバムチャート

f:id:djk2:20201130202645j:plain

 10万超えの作品が5つ、それなりに盛り上がりました。4週目には同時に3つのアルバムが10万を超えました。

 

 オーストラリアの大御所ロックバンド、AC/DCがこの週の1位。総合売上11.7万のうち、11.1万が純セールス。6年ぶりのリリースでしたが、安定したファンベースを保っていることが伺えます。ただ一方ストリーミングの数字は低め。Spotifyでは6億再生超えの曲が3つ("Back In Black", "Highway to Hell", "Thunderstruck")ある等、定評を確立する過去曲は多いだけに、ここまでストリーミングで注目度が低いのは少々意外でした。

 次点はFutureとLil Uzi Vertのコラボ作。ストリーミングで高い人気を得て10曲がHot 100入り。しかし2週目からは収録曲が軒並みストリーミングで順位を落とし始め、シングルヒット等の望みは薄いです。

 3位はChris Stapleton。Luke CombsやMorgan Wallen程ではないものの、彼も「アーティスト」としての存在感を示すカントリーシンガーの一人です。批評方面からの評価も高めで、アルバムからは他のカントリーとはひと味違った雰囲気が感じ取られます。

 

 その他の注目点。オーストラリア出身のラッパー、The Kid LAROIは7月のアルバムのデラックス版が好評。元のリリース時よりも高いアルバム3位にランクインしました。Hot 100にも4曲がエントリー。USで活躍するラッパーは専ら北米出身ですが、オーストラリア出身の彼がどこまでUSに食い込むかは見もの。

 もう一つの注目はSam Smith。過去2作は2位・1位と推移してきましたが、今回は5位止まり。ブレイク以降高い注目度を集めてきましたが、今回のアルバムの成績を見る限り、以前よりもアーティストとしての影が少し薄くなってきたことは否めません。

 

 

5 クリスマス?

 最終週にはクリスマス曲が登場。昨年の同時期と比べると以下の通り。

 

2019年

11/23:1曲(39位) 11/30:1曲(31位)

 

2020年

11/21:0曲 11/28:2曲(29位、43位)

 

  “All I Want~”の登場は昨年よりも1週遅かったものの、直近の週では昨年を上回る成績。この調子だと例年通りチャートを大きくかき回しそうですが、現行ヒットのチャート入りを妨げてしまうという点は気になるところではあります。来月以降は、否が応でも注目のテーマになります。

 

6 投げ銭式によるインディー系アクトのHot 100入り

 興味深かったのはPhoebe BridgersとMaggie Rogersによる、Goo Goo Dolls - ”Iris”のカバー。この曲はBandcampで1日限定販売を投げ銭方式で行い、そのセールスによりHot 100入りを果たしました。両者とも初のHot 100入り。

 この曲は3.8万のセールスを記録し、この週のDL1位に。3.8万は今年のDL1位の中央値よりも高い数字です。

 

 現在セールスの平均値は低いものの、Hot 100が依然としてセールスのポイントを重くしているため、局地的な注目でもセールスを集められればHot 100で好成績が期待できます。(参照:先月の【その販売戦略の今後?】)

 これを意図的に活用したのはHot 100で首位を狙う販売戦略の数々で、今年1位が頻繁に入れ替わる要因にもなりました。

 今回のヒットはこれらと違い、必ずしもHot 100を意識したものではないと思われますが、ファンへの求心力が高いインディー系アクトのこのような販売法による初のHot 100入りは再現性のある手法だと感じました。(ビルボードがセールスのレートをいじらない限り)

 まあ、このようなアクトが「Hot 100入り」にブランド性を感じるかは微妙ですがね。

 

 

7 その他の短評

 

・DaBaby – PRACTICE

・CJ – Whoopty

・DJ Chose & BeatKing – THICK

 今月のTikTok枠(と思しき)Hot 100エントリーたち。

 

・Joel Corry feat. MNEK – Head & Heart

 ヨーロッパ系ダンスヒットがポップ系ラジオのオンエアでHot 100入りする、というよく見られるパターン。ラジオの選曲者はヨーロッパのヒットをよく観察しているようで、時間差はありますが、次第にラジオのオンエアを得る印象。

 

Harry Styles – Golden

 シングルカットが上手く決まりづらい現代に、華麗なシングルカットを“Watermelon Sugar”で決めたHarry Styles。今回のシングルカットも、カット直後にHot 100再登場を成し遂げました。ただ過去シングルほどの勢いはまだありません。

 

・BLACKPINK & Selena Gomez – Ice Cream

 8週でHot 100から去る。BLACKPINKにとっては最長の滞在となりましたが、ロングヒットとは言い難い成績です。ラジオのオンエアがすぐに終わってしまったことが痛かったでしょうか。

 彼女らでもう一つ気になるのは“Bet You Wanna”の運用法。10/28にシングル化が発表されるものの、11/10にはレーベルが「それを保留する」とし、以降オンエアされていません。

 

 なぜ保留したのか?も気になる所ですが、個人的に興味深かったのは、レーベル側がこんなにラジオのオンエアをコントロールできるのか、という点です。

 シングルも非シングルも区別なくアクセスできる現代では特に、シングルを指定しないとラジオでかかる曲がバラバラになる可能性があるので、シングルの「指定」 = “Officially Impacted”まではまだ分かるのですが、「保留」 = “On Hold”まで出来てしまうと、ラジオはレーベル側のコントロールによって動いているのかという印象です。

 ラジオの賄賂を批判するような記事が上がることもありますが、このレーベルによる”Officially Impacted”や”On Hold”も、「ラジオの選曲をレーベルがコントロールしすぎている」という点では似通ったものを感じます。個人的に、もう少し「独立した」選曲をするラジオが増えたら面白いとは考えています。

 

・Taylor Swift – cardigan

 1位登場から、14週の滞在でチャートから外れる。アルバムでは大きなインパクトを残しましたが、シングルではうまく行かず。ただ現在アーティストへの注目が重要な指標となり、そしてアルバムとシングルの境目が曖昧になってきた現在において、このようにシングルヒットよりもアルバムという単位に重点を置く戦略は、個人的に支持しています。

 

Fleetwood Mac – Dreams

 1976年の曲の異例の再登場の旅は4週で終える。

Bohemian Rhapsody(2018):33位→40→50位

Dreams(2020):21位→12位→21位→33位

 とシングル単位で見ると、Queen以上のインパクトを残しました。(アルバムチャートではQueenの方が高かったですが)

 

・Dua Lipa – Don’t Start Now

・Dua Lipa – Break My Heart

 シングルヒットを安定して連発。US外のシンガーとしてはかなりの成績だった、前作のシングル郡をさらに上回る成績を残してチャートを外れました。

New Rules:(🗻6位 /⏰48週)

IDGAF:(🗻49位 /⏰23週)

Don’t Start Now:(🗻13位 /⏰32週)

Break My Heart:(🗻2位 /⏰52週)

 

 ヒット面だけではなく、批評方面からの評価もすこぶる高いため、この2曲が収録される“Future Nostalgia”は既に2020年代を代表する名盤の有力候補といえる存在だと思います。

 

・Lil Nas X – HOLIDAY

 初週トップ40と良いスタートを切る。初日は鈍い反応だったものの、週の後半にかけて注目度が上がるという珍しいチャートアクションを見せました。

 様々な戦略を駆使して曲をヒットさせてきた実績を持つ彼だけに、今後どのように調子を上げてくるかは見ものです。

 

・Post Malone – Circles

 ラジオの粘り等により、異例のロングヒットに。60週の滞在は26位/53週ルール以降では最長の滞在です。(次点は"Shape of You"の59週。ただし以前からこのルールがあったと仮定すると、2013年-2014年の"Radioactive"は69週残っていたことになる)

 外れる直近の週が18位だったため、いきなり外れたのは少し意外でした。

 

 

今月のデータ

 

主に外れた曲

 

11/7

80 Marshmello & Demi Lovato – OK Not To Be OK (🗻36位 /⏰6週)

82 21 Savage & Metro Boomin – Glock In My Lap (🗻19位 /⏰3週)

84 BLACKPINK & Selena Gomez – Ice Cream (🗻13位 /⏰8週)

86 Juice WRLD & The Weeknd – Smile (🗻8位 /⏰10週)

87 Topic & A7S – Breaking Me (🗻53位 /⏰13週)

89 Megan Thee Stallion – Girls in the Hood (🗻28位 /⏰17週)

90 Lil Durk feat. Lil Baby & Polo G – 3 Headed Goat (🗻43位 /⏰16週)

91 Tim McGraw – I Called Mama (🗻53位 /⏰12週)

92 Machine Gun Kelly – Bloody Valentine (🗻50位 /⏰14週)

95 Nio Garcia, Anuel AA, Myke Towers, Brray & Juanka – La Jeepeta (🗻93位 /⏰10週)

96 Ozuna, Karol G & Myke Towers - Caramelo (🗻76位 /⏰10週)

99 Gunna feat. Young Thug – DOLLAZ ON MY HEAD (🗻38位 /⏰19週)

 

11/14

18 Post Malone - Circles (🗻1位 /⏰61)

33 Fleetwood Mac - Dreams (🗻1 /⏰23週)

38 Dua Lipa – Don’t Start Now (🗻2位 /⏰52)

82 Lil Baby – The Bigger Picture (🗻3位 /⏰20週)

88 Sada Baby feat. Nicki Minaj – Whole Lotta Choppas (🗻35位 /⏰3週)

91 DJ Khaled feat. Drake - GREECE (🗻8位 /⏰15週)

94 J Balvin, Dua Lipa, Bad Bunny & Tainy – Un Dia (🗻63位 /⏰14週)

95 Chloe X Halle – Do It (🗻63位 /⏰11週)

96 Taylor Swift - cardigan (🗻1 /⏰14週)

 

11/21

48 Michael Jackson - Thriller (🗻4位 /⏰20週) 

50 Dua Lipa – Break My Heart (🗻13位 /⏰32週)

 

11/28

35 Mike WiLL Made-It, Nicki Minaj & YoungBoy Never Broke Again – What That Speed Bout?  (🗻35位 /⏰1週)

42 Rod Wave feat. ATR Son Son – Rags2Riches (🗻12位 /⏰20週)

46 SAINt JHN - Roses (🗻4位 /⏰34週)

51 Luke Combs – Lovin’ On You (🗻23位 /⏰20週)

80 Ariana Grande feat. Doja Cat - motive (🗻32位 /⏰2週)

95 Ariana Grande feat. The Weeknd – off the table (🗻35位 /⏰2週)

 

 

アルバムチャートのキリ番

 

11/7

1周年:Doja Cat – Hot Pink (79位)

1周年:Rod Wave – Ghetto Gospel (86位)

350週目:Eagles – Their Greatest Hits 1971-1975 (169位)

400週目:Drake – Take Care (75位)

500週目:Eminem – Curtain Call: The Hits (60位)

650週目:Bob Marley And The Wailers – Legend: the Best Of... (70位)

 

11/14

1周年:Luke Combs – What You See Is What You Get (4位)

150週目:Billie Eilish – dont smile at me (79位)

 

11/21

1周年:Soundtrack – Frozen II (73位)

 

11/28

1周年:Trippie Redd – A Love Letter To You 4 (171位)

100週目:Bad Bunny – X 100PRE (148位)

 

 

・上位デビュー曲

f:id:djk2:20201130204417j:plain

◇は再登場

 

・大幅ジャンプアップ

f:id:djk2:20201130204458j:plain

 

・各指標の1位

f:id:djk2:20201130204536j:plain

 

・Rolling Stone Chartsのトップ10

f:id:djk2:20201130204631j:plain

 

 

・各週の動向メモ

f:id:djk2:20201130204731j:plain

 

f:id:djk2:20201130204749j:plain

 

f:id:djk2:20201130204802j:plain

 

f:id:djk2:20201130204817j:plain

 

参照リンク

・Hot 100:The Hot 100 Chart | Billboard

Billboard 200:Billboard 200 Chart | Billboard

・ChartBeatの記事:Chart Beat | Billboard

・Kworb(ラジオ等):https://kworb.net/

・TokBoard:https://tokboard.com/

Spotify Charts:Spotify Charts

 

 

過去の月の記事

 

10月:Billboard 動向・10月号 【販売戦略の行く末 + オルタナティブ系 など】 - チャート・マニア・ラボ

 

9月:Billboard 動向・9月号 【BTS / ロングヒット記録 / ヒットの4メトリクスなど】 - チャート・マニア・ラボ

 

8月:Billboard 動向・8月号 【圧巻の"WAP"、アルバムはTaylor Swift】 - チャート・マニア・ラボ

 

7月:Billboard 動向・7月号 【Pop SmokeとJuice WRLDの活躍 販売戦略のその後……】 - チャート・マニア・ラボ

 

6月:Billboard動向・6月号 【コラボ曲の首位が相次ぐ / アルバムチャートはリリース減少?】 - チャート・マニア・ラボ

 

5月:5月まとめ 【首位が全て異なる月 / 販売戦略が躍動】 - チャート・マニア・ラボ

 

4月:Hot 100 / Billboard 200まとめ 4月号 【The Weekndがアルバム4タテなど無双】 - チャート・マニア・ラボ

 

3月:Hot 100・Billboard 200まとめ 3月号 【Lil Uzi Vert・Bad Buny・Lil Baby・BTSなど…アルバム大盛況】 - チャート・マニア・ラボ

 

2月:Hot 100・Billboard 200まとめ 2月号 【アルバム激戦区・不動のシングル上位など】 - チャート・マニア・ラボ

 

1月:Hot 100 2020年1月まとめ 【激動の1ヶ月、Roddy Ricch大活躍など】 - チャート・マニア・ラボ

 

 

*1:月によって見どころは多いことも、少ないこともあるので、ポイントの数は流動的にします

*2:2016年段階では、まだセールス以外の割合があまり大きくなかったため、ビルボードの記事には総合売上と純セールスの数字しか掲載されていませんでした。しかし、この時にAriana Grandeから1位の座を守ったDrakeがストリーミングの成績を中心にアルバムチャートを複数週にわたり制圧したため、ストリーミングがアルバムチャートを動かすとの認識が広まり、この少し後くらいからビルボードの記事内でもストリーミングの数字が記載されるようになりました

*3:アーティストへの期待度は高いものの、新曲がシングルとして聞くのに向いていないと、その週のうちに急激に数字を落とすケースもあります。J. Coleなどに見られます

*4:うまく魚拓取れなかったので、次の週になるとリンク先の順位が変わってしまいます